JP2001111170A - 光半導体装置及びその製造方法 - Google Patents

光半導体装置及びその製造方法

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JP2001111170A JP28702499A JP28702499A JP2001111170A JP 2001111170 A JP2001111170 A JP 2001111170A JP 28702499 A JP28702499 A JP 28702499A JP 28702499 A JP28702499 A JP 28702499A JP 2001111170 A JP2001111170 A JP 2001111170A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】光半導体装置に関し、スポットサイズ変換部の
出射端での光スポットを活性層の中心に重ねるととも
に、活性層とは異なる再結合層を有する場合に光スポッ
トが再結合層に影響されない構造を得ること。 【解決手段】半導体基板1上で利得領域とスポットサイ
ズ変換領域とに形成され、かつ、該スポット変換領域で
は光スポットサイズを拡大する形状に形成された活性層
3aと、前記活性層3aの上と下に形成されたクラッド
層9,10と、前記活性層3aの両側にpn接合を有し
て形成された埋込層6〜8と、前記スポットサイズ変換
領域の前端近傍を除く領域で、少なくとも前記利得領域
での前記埋込層3aの上又は下に形成され、前記クラッ
ド層9,10を構成する材料よりもバンドギャップの狭
い材料からなる再結合層6とを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光半導体装置及び
その製造方法に関し、より詳しくは、光スポットサイズ
変換器を備えた光半導体装置及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、光ファイバ通信の適用範囲が広が
っていくとともに、半導体レーザモジュールの小型化、
低コスト化、低消費電力化の観点から、半導体レーザを
温度制御せずに広い環境温度範囲で動作させることが必
要となってきており、諸特性のの温度依存性の低減が必
要となってきている。また、小型化、低コスト化の点で
は温度制御を無くすとともに、半導体レーザとファイバ
との間の結合系を簡略化することも求められており、ス
ポットサイズ変換器を集積した放射角の狭い光半導体素
子の開発が活発になっている。
【0003】スポットサイズ変換器と半導体レーザを集
積する理由は、半導体レーザではスポットサイズが1μ
m程度と小さいが、半導体レーザに結合される光ファイ
バのスポットサイズは4〜5μmと大きいので、スポッ
トサイズ変換器によって光出力端のスポットサイズを拡
大することにより、光ファイバのスポットサイズとの差
を小さくして結合効率を改善するためである。
【0004】スポットサイズ変換器を集積した半導体レ
ーザは、活性層の延長上でテーパ形状の導波路コアを半
導体クラッド層に埋め込んだ構造が主となっている。こ
こでは、特開平7-283490号公報に記載の半導体レーザを
例にとり説明する。以下、この半導体レーザをテーパ導
波路レーザと呼ぶ。テーパ導波路レーザは、原理的に図
1に示すような構造を有しており、光のコアとなる量子
井戸層101の膜厚がほぼ一定の第1の領域とその量子
井戸層101の膜厚がテーパ状に変化する第2の領域と
に機能的に区分される。
【0005】それらのうちの第1の領域は、電流が注入
されて光利得を持つレーザ部Iであり、第2の領域は、
スポットサイズ変換部IIとなる。そのレーザ部Iでは、
導波方向に垂直な面内の光分布は比較的小さく、コアを
中心に集中している。また、スポットサイズ変換部IIで
は、ダブルへテロ構造のコアの膜厚が出射方向に向かっ
て小さくなっている。このような構造によって、光分布
はレーザ部Iからスポットサイズ変換部IIの出射端に向
かって連続的に拡大される。
【0006】図1に示したテーパ導波路レーザにおい
て、量子井戸層101は、例えば、n-InP よりなるn型
クラッド層102とp-InP よりなるp型クラッド層10
3により上下から挟まれている。また、n型クラッド層
102の下にはn側電極104が形成され、また、レー
ザ部I近傍のp型クラッド層103の上にはp側電極1
05が形成されているそのようなテーパ導波路レーザ1
00においては、良好な電流−光出力特性を得るため
に、効率良くレーザ部Iの量子井戸層(活性層ともい
う)101に電流を流す必要がある。これと同時に、テ
ーパ導波路レーザ100と光ファイバ110の間の光結
合損失を低く抑えるために、レーザ光の出射端におい
て、出射方向に垂直な面の光強度分布の形状を真円に近
い形にし、また、その光強度分布の中心位置を光導波路
構造の中心位置、即ち、量子井戸層101のある位置に
合わせる必要がある。
【0007】次に、従来のテーパー導波路レーザの構造
について図3(b) に基づいて詳細に説明する。図3(b)
において、n型クラッド層となるn-InP 基板112とp
型クラッド層となる第1のp-InP 層113aの間に挟ま
れる量子井戸層(活性層)111の両側には、pn逆接
合などの電流阻止機能を有するいわゆる埋込構造116
が形成されている。その埋込構造116は、レーザ部I
の活性層111にだけ効率良く電流を注入するために設
けられている。
【0008】テーパ導波路レーザのスポットサイズ変換
部IIとレーザ部Iのそれぞれの半導体層の断面構造は、
図4(a),(b) に示すように、それぞれ活性層111の膜
厚が異なるだけで、埋込構造116を含むそれ以外の構
造に関しては、ほぼ同じ構造を持っている。例えば、埋
込層116の上部を構成するn-InP 層(n型ブロック
層)116bと活性層111の中心との最短距離Aをと
ってみても、スポットサイズ変換部IIとレーザ部Iでは
ほぼ同じ長さとなっている。
【0009】埋込構造116のp-InP 層116aの膜厚
を図5(a),(b) に示すように厚くしても、その活性層1
11の中心とn-InP 層116bの最短距離Aはスポット
サイズ変換部IIとレーザ部Iではほぼ同じ長さとなって
いる。図1に示したような半導体埋込光導波路を有する
テーパ導波路レーザは次のような工程に沿って作製され
る。
【0010】まず、図2(a) に示すように、多重量子井
戸構造(MQW)を有する量子井戸層111とp-InP 層
113aからなるダブルへテロ構造層が堆積されたn-In
P 基板(半導体ウェハ)112を用意する。その量子井
戸層111は、特開平7-283490号公報に記載された方法
にしたがって、レーザ部Iで膜厚が厚く、スポットサイ
ズ変換部IIで膜厚がテーパ状に徐々に薄くなるように形
成される。
【0011】そして、図2(b) に示すように、ストライ
プパターンを有するSiO2よりなる誘電体マスク117を
通常のフォトリソグラフィー法を用いてp-InP 層113
aの上面に形成する。続いて、誘電体マスク117に覆
われない領域のダブルヘテロ構造とn-InP 基板112を
エッチングして図2(c) に示すようなメサ構造118を
形成する。
【0012】次に、図3(a) に示すように、メサ構造1
18の上面に誘電体マスク117を残したままで、n-In
P 基板112の上に結晶成長を施してメサ構造118上
面以外の部分にp-InP 層116a、n-InP 層116bを
順に埋め込む。このとき、特開平7-283490号公報に記載
の技術においては、pn逆接合で構成される埋込構造1
18が素子全体に渡って一様に成長されるようになって
いる。
【0013】その後、図3(b) に示すようにメサ構造1
18上の誘電体膜117を除去し、ついで、n-InP 基板
112の全体に再度結晶成長を施してp-InP 層113b
を形成してメサ構造118の上を平坦化する。量子井戸
層111の上のp-InP 層113a、113bはp型クラ
ッド層となる。ところで、活性層上部のp型クラッド層
の膜厚をスポットサイズ変換部IIにおいてレーザ部Iよ
り厚くしてスポットサイズ変換部IIの屈折率を高くした
構造が、特開平7-74396 号公報の図2に示されている。
この場合、p型クラッド層とn型クラッド層の間の活性
層を除く領域に関しては、特開平7-283490号公報に記載
された素子と同様にスポットサイズ変換部IIとレーザ部
Iの間で同じ構造を持つために、n型電流ブロック層と
コア層の中心の間の最短距離も両部の間で等しくなって
いる。このような領域には、電流狭窄機能を持つpn逆
接合などの、活性層やp型及びn型クラッド層とは元素
組成、ドーピング濃度、屈折率が異なる層が含まれてい
る。
【0014】尚、集積されるスポットサイズ変換器には
特開平7-283490号公報に記載されている膜厚が変化する
構造の他に幅がテーパ状に変化する構造もある。特開平
7-74396 号公報では、幅テーパ導波路を集積した半導体
レーザの出射端の光強度分布を最適値まで拡大するため
の出射端のコア層の設計精度が厳しいという問題を解決
するための技術を示している。
【0015】次に、半導体レーザの温度特性について説
明する。光通信用の長波長帯の半導体レーザの温度特性
については、光記録用に用いられているGaAs基板上に作
製された短波長帯レーザに比べて著しく劣ることが古く
から指摘されており、その原因については未だ明らかで
はない。しかし、埋込構造が大半を占める光通信用の半
導体レーザにおいては埋込層でのリーク電流の存在がそ
の温度依存性を更に悪化させていることがよく知られて
いる。
【0016】リーク電流を抑制するには図4(b) に示さ
れたような、電流ブロック層の位置を最適化することが
あげられるが、更なる対策の1つとして、図6に示すよ
うなDCPBH(Double Channel Planer Buried Hetero
structure)レーザに代表される、pnpn電流ブロック
構造のクラッド層(基板の場合もある)のn型層と埋込
層のp型層がなすpn接合との間の少なくとも一部にバ
ンドギャップの狭い半導体層(再結合層)を設けた構造
があり、サイリスタ構造の耐圧を上昇させることで漏れ
電流を小さくできることが知られている。
【0017】図6は、DCPBH構造の半導体レーザの
断面を示しており、n-InP 基板121と第1のp-InP 層
123の間に挟まれた量子井戸活性層122を有するス
トライプ状のメサ構造を有している。また、メサ構造の
両側にはp-InP 埋込層124とn-InP 埋込層125が形
成され、その埋込構造とメサ構造の上には第2のn-InP
層127が形成されている。これにより、メサ構造の両
側にはn-InP 基板121を含めてpnpn接合が構成さ
れている。また、メサ構造の両側から少し離れた領域で
は、p-InP 埋込層124とn-InP 基板121に挟まれた
再結合層128が形成されている。その再結合層128
は、量子井戸活性層122をストライプ状にエッチング
する際、又はメサ形状活性層122を選択成長で形成す
る際に、ストライプから離れた部分では活性層122を
残したままにしておき、これを再結合層128として利
用したものである。選択成長を利用した構造では、スポ
ットサイズ変換器を集積した半導体レーザも、Y Furush
ima et al., IPRM'98 ThP-57において報告されている。
【0018】一方、図7は、半導体レーザの埋込構造1
16を形成する際に再結合層119を設けた構造であ
る。即ち、再結合層119を活性層111を含むメサ側
面には成長させずにメサ両脇の基板112面上だけに成
長させるという技術が必要となるが、図6に示す素子に
比べると活性層とは独立に再結合層を設計できるという
利点がある。
【0019】図6,図7のどちらの構造においても温度
特性の改善が実現されており、InGaAsP 系の半導体レー
ザにおいて閾値電流の特性温度として70Kを越える高
い値が示されている。なお、図6,図7においては、第
2のp-InP 層127,123bの上にはそれぞれp-InGa
Asコンタクト層120,128が形成されている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図4(a),
(b) に示したテーパ導波路レーザにおいては、活性層の
中心とnブロック層との距離Aの最適値がスポットサイ
ズ変換部IIとレーザ部Iにおいては異なる。例えば、図
4(a),(b) は、距離Aの値がレーザ部Iにおいて最適化
されて比較的小さい値を持つ構造である、これにより、
効率良く電流Bを活性層111に流すことができる。こ
れは、図4(b) に示すように、レーザ部Iにおいて活性
層111の両脇のp-InP 層116aが狭くなり、この部
分をリークする電流量(図中B)が小さくなるためであ
る。
【0021】しかし、この埋込構造を採った場合、図4
(a) に示すスポットサイズ変換部IIにおいては、光強度
分布の中心が活性層111の中心からp型クラッド層1
13a,113bへとシフトするという問題、或いは活
性層111の周辺の屈折率不均一の影響を強く受け、光
分布の形状は真円より歪んだ形状となるという問題が生
じる。これは、距離Aが短くなることにより、n型ブロ
ック層116bが活性層111に近づき、拡大された光
強度分布がn型ブロック層116bの影響を強く受ける
ためである。n型ブロック層116bは、p型クラッド
層113bに比べて小さい屈折率を持つため、拡大され
た光強度分布はn型ブロック層116bを避けてp型ク
ラッド層113b内に分布するように、中心の位置と分
布形状を変化させる。
【0022】これに対して、図5(a),(b) は、埋込構造
116のp-InP 層116aを厚く形成して距離Aの値を
図4(a),(b) のそれよりも大きくした構造を採用してい
る。これにより、スポットサイズ変換部IIにおいて、光
強度分布の中心は活性層111の中心に重なるし、その
分布形状が真円に近くなる。これは、屈折率の低いn型
ブロック層116bが活性層111より遠ざかり、活性
層111の周囲が屈折率の高いp型半導体で、より均一
に満たされるからである。これにより、光強度分布は、
活性層111周辺に均一に分布しやすくなる。
【0023】しかし、活性層111の両脇のp-InP 層1
16aが広がると、レーザ部Iにおいて電流Bのリーク
量が増えるために、活性層111に効率よく電流を注入
することができなくなり、素子特性の劣化を招く。以上
のように、図4、図5に述べた構造の半導体レーザを採
用する場合には、スポットサイズ変換部IIとレーザ部I
の埋込構造116は同一となり、それぞれの部分におい
て埋込構造116を最適化することができない。即ち、
素子全体に渡って図4の構造を採るか、図5の構造を採
るかどちらかに限られていた。
【0024】これに対して、JOURNAL OF LIGHTWAVE TEC
HNOLOGY, VOL 15, No 8, pp 1602-1607 (August 1997)
"High-Coupling Efficiency of a 1.3- μm Spot-Siz
e Converter Integrated Laser Diode with pn-Buried
Heterostructure for High-Temperature Operation"に
おいては、n型ブロック層の活性層に対する位置を微調
整してこれを最適化する数値計算及び実験が行われてい
る。しかし、この場合にも先に述べたようなトレードオ
フの関係は避けられていない。
【0025】また、先に引用した特開平 7-74396号公報
に記載された素子の上部クラッド層の膜厚を変化させる
ような構造でも、距離Aは、スポットサイズ変換部とレ
ーザ部の間で等しくなることは避けられない。ところ
で、温度特性を改善する構造を採用した図6に示す半導
体レーザの活性層122と同時に再結合層128を形成
した構造は、選択成長を利用したものであり、そのまま
スポットサイズ変換器を集積した報告例がY. Furushima
et al.,IPRM'98 ThP-57 に記載がある。
【0026】しかし、そのような構造では、活性層と独
立して再結合層を設計できないという不都合がある。こ
れに対して、図7の埋込再成長時に再結合層119を成
長した構造は設計の自由度の高いものの、これを図4,
図5に示すようなスポットサイズ変換器を集積した半導
体レーザに適用しようとすると、スポットサイズの小さ
い部分では通常の半導体レーザと同様に光は再結合層1
19の影響を殆ど受けないが、出射端面に近いスポット
サイズが大きい領域ではこの再結合層119での屈折率
差が光のフィールドに影響してしまうという問題があっ
た。
【0027】埋込層116の漏れ電流を抑えるために
は、再結合層119のバンドギャップは活性層111の
バンドギャップと近くなるように設定することが望まし
い。例えば、1.3μm帯の半導体レーザにおいて再結
合層119のバンドギャップ波長を1.2μm等に設定
する。しかし、活性層111とその周りの埋込層116
との屈折率差は、活性層111とクラッド層116の差
と同等になるために、光のフィールドが再結合層119
側に引っ張られてしまうことで変形し、光ファイバとの
結合効率が低下してしまう。また、再結合層119のバ
ンドギャップ波長と発振波長が近いために再結合層11
9での吸収も無視できなくなり、スポットサイズ変換器
の損失が増大し、閾値電流の上昇、効率の低下を招いて
しまうという問題があった。
【0028】なお、図6に示した活性層122と同時に
再結合層128を形成した構造で、上記したような問題
が生じていないのは、再成長で形成する場合よりも再結
合層118の位置が離れているためにスポットサイズの
大きな出射端面でも光のフィールドが殆ど影響されない
からである。しかし、上記したように設計の自由度が低
くなるといった不都合がある。
【0029】本発明の目的は、スポットサイズ変換部の
出射端での光スポットを活性層の中心に重ねるととも
に、活性層とは異なる再結合層を有する場合に光スポッ
トが再結合層に影響されない構造を有する光半導体素子
を提供することにある。
【0030】
【課題を解決するための手段】(1)上記した課題は、
図8〜図11に例示するように、半導体基板上で利得領
域とスポットサイズ変換領域とに形成され、かつ、該ス
ポットサイズ変換領域では光のスポットサイズを変化す
る形状に形成されたストライプ状のコア層と、前記コア
層の上と下に形成された第1及び第2のクラッド層と、
前記コア層の両側で前記第1及び第2のクラッド層の間
に形成されたpn接合を有する埋込層と、前記スポット
サイズ変換領域の少なくとも前記スポットサイズが拡大
される端面近傍を除いて前記埋込層中に形成され、前記
第1及び第2のクラッド層を構成する材料よりもバンド
ギャップの狭い材料からなる再結合層とを有することを
特徴とする光半導体装置によって解決される。
【0031】次に、本発明の作用について説明する。本
発明によれば、埋込型光半導体装置において利得領域
(レーザ領域)とスポットサイズ変換領域に形成された
コア層(活性層)の両側方において、利得領域または利
得領域からスポットサイズ変換領域の途中までが拡大す
る部分の前端を除いた部分に、バンドギャップが小さい
再結合層を形成している。
【0032】これにより、光スポットサイズが拡大する
部分での再結合層による吸収が回避され、スポットサイ
ズ変換器の損失が小さくなり、閾値電流の上昇や効率の
低下が防止される。 (2)上記した課題は、図12〜図17に例示するよう
に、半導体基板上で利得領域とスポットサイズ変換領域
とに形成され、かつ、該スポットサイズ変換領域では光
のスポットサイズを変化する形状に形成されたストライ
プ状のコア層と、前記コア層の上と下に形成された第1
及び第2のクラッド層と、前記コア層の両側で前記第1
及び第2のクラッド層の間に形成れたpn接合を有する
埋込層と、前記第1及び第2のクラッド層を構成する材
料よりもバンドギャップの狭い材料からなり、前記スポ
ットサイズ変換領域において前記活性層と平行な方向で
膜厚又はバンドギャップが変化して前記埋込層に形成さ
れた再結合層とを有することを特徴とする光半導体装置
によって解決される。
【0033】上記した光半導体装置において、前記再結
合層の前記膜厚は、前記利得領域よりも前記スポットサ
イズ変換領域で値が小さいことが好ましく、前記再結合
層のバンドギャップは、前記利得領域よりも前記スポッ
トサイズ変換領域で値が大きいことが好ましい。また、
上記した課題は、図12〜図13に例示するように、活
性層を含む多層構造を第1のクラッド層の上に形成する
工程と、前記多層構造の上にストライプ状の第1マスク
パターンを形成し、該第1マスクパターンに覆われない
部分の前記多層構造をエッチングして、光閉じ込めを大
きくする第1領域と光閉じ込めを小さくする第2領域を
有するストライプ状のメサ部を形成する工程と、前記メ
サ部のうち前記第1領域において前記メサ部の両側面か
ら離れた領域に第2マスクパターンと第3マスクパター
ンを前記半導体基板の上に配置する工程と、前記第1〜
第3マスクパターンに覆われない領域に、前記第1のク
ラッド層よりもバンドギャップが狭い再結合層を含み且
つ前記第2の領域のうち前記第1領域に隣接しない側の
端部で膜厚が薄くなる層を含む多層構造の埋め込み層を
形成する工程と、前記第1〜第3マスクパターンを除去
した後に、前記メサ部と前記埋込層の上に第2のクラッ
ド層を形成する工程とを有することを特徴とする光半導
体装置の製造方法によって解決する。
【0034】次に、本発明の作用について説明する。本
発明によれば、コア層(活性層)の両側に形成される再
結合層のうち、スポットサイズ変換領域の端部での膜厚
は利得領域での膜厚に比べて薄く形成されている。した
がって、光スポットサイズが拡大する部分での再結合層
による吸収が少なくなり、スポットサイズ変換器の損失
が小さく、閾値電流の上昇や効率の低下が抑制される。 (3)上記した課題は、図19〜図27に例示するよう
に、基板側の一導電型クラッド層と、前記一導電型クラ
ッド層の上に形成された半導体からなるコア層と、前記
コア層の上に形成された反対導電型クラッド層と、元素
組成、不純物濃度、膜厚の少なくとも1つが光導波方向
に沿って連続的に変化し、かつ前記コア層の両側領域に
形成された埋込構造とを有することを特徴とする光半導
体装置によって解決される。
【0035】上記した光半導体装置において、前記コア
層の膜厚または幅を前記光導波方向に薄くまたは狭く変
化させたスポットサイズ変換領域と、前記コア層の膜厚
または幅を前記光導波方向に実質的に変化させない利得
領域とを有する構造を採用してもよい。この場合、前記
埋込構造はn型層とp型層を有し、前記スポットサイズ
変換領域においては、前記利得領域よりも前記n型層と
前記コア層との距離が広がっている構造としてもよい。
また、前記p型層と前記n型層が前記利得領域よりも前
記スポットサイズ変換領域の方が厚く形成される場合
に、前記p型層の膜厚の増加の割合が前記n型層の膜厚
の増加の割合よりも大きくしてもよい。さらに、前記埋
込構造はn型層とp型層を有し、前記n型層の不純物濃
度は、前記利得領域よりも前記スポットサイズ変換領域
の方が低く形成される構造を採用してもよい。さらに、
前記埋込構造は、光導波方向で一導電型層から反対導電
型層に変化する層を有する構造を採用してもよい。
【0036】また、上記した課題は、半導体基板上に活
性層と上側クラッド層を形成する工程と、前記活性層か
ら前記半導体基板の上部までの一部をエッチングするこ
とによりストライプ状のメサ部を形成する工程と、前記
メサ部の上の第1の領域と、前記メサ部の両側方に離れ
た前記半導体基板の上であって前記メサ部の延びる方向
に形状が変化する形状の第2、第3の領域とを誘電体マ
スクで覆った状態で、前記第1〜第3の領域を除く前記
半導体基板の上に、層数、層厚、元素組成、不純物濃度
のうち少なくとも1つを光の進行方向に沿って連続的に
変化させる埋込構造を形成する工程とを有することを特
徴とする光半導体装置の製造方法によって解決する。
【0037】次に、本発明の作用について説明する。本
発明によれば、コア層(活性層)と埋込構造のn型層と
の距離について、利得領域では狭く、スポットサイズ変
換領域では広くするようにした。したがって、スポット
サイズ変換領域では、光強度の中心はコア層の中心に重
なり、真円に近くなる。これと同時に、利得領域では、
コア層とn型層の間隔が小さくなるために、電流狭窄効
果が高くなって電流を効率よく活性層に注入することが
できる。
【0038】従って、本発明によれば、良好な電流−光
出力特性を持ち、かつ、素子と光ファイバとの結合損失
が小さく、優れた素子を得ることができる。また、本発
明によれば、埋込構造中のn型層の不純物濃度をスポッ
トサイズ変換領域では低くし、利得領域では高くしてい
るので、スポットサイズ変換領域でのn型層の屈折率を
小さくして光分布を良好にすることができる。
【0039】
【発明の実施の形態】そこで、以下に本発明の実施形態
を図面に基づいて説明する。 (第1の実施の形態)図8,図9は本発明の第1実施形
態に係る光半導体素子の製造工程を示す斜視図である。
【0040】まず、図8(a) に示すように、n型(n-)
InP 基板1の(100)面上にn-InP バッファ層2を形
成した後に、そのバッファ層2の上にSiO2よりなる第1
の誘電体膜15を形成し、ついで、第1の誘電体膜15
をフォトリソグラフィー法によりパターニングしてレー
ザ部Iにストライプ状の第1の開口15aを形成すると
ともにスポットサイズ変換部IIではそれよりも広い第2
の開口15bを形成する。
【0041】その後に、誘電体膜15の第1及び第2の
開口15a,15bから露出しているバッファ層2の上
にアンドープの量子井戸活性層3、膜厚0.5μmの第
1のp-InP 層4を減圧有機金属気相成長(減圧MOVP
E)法により形成すると、それらの層3,4は、第1の
開口15a内では厚くなるとともに、第2の開口15b
内ではレーザ部Iから遠ざかるにつれて徐々に膜厚が薄
くなるような膜厚テーパ形状となる。
【0042】次に、第1の誘電体膜15を除去した後
に、SiO2よりなる第2の誘電体膜16を全体に形成し、
この第2の誘電体膜16をフォトリソグラフィー法によ
りパターニングしてレーザ部Iからスポットサイズ変換
部IIに延びる幅1.5μm程度のストライプ状のパター
ンを第1のp-InP 層4の上に形成する。そして、図8
(b) に示すように、ストライプ状の第2の誘電体膜16
をマスクに使用して、第1のp-InP 層4からn-InP 基板
1の上部までをエッチングにより除去して高さ2μm程
度のメサ部5を形成する。そのエッチングは、ウェット
エッチングを用いても良いが、次の結晶成長段階での再
結合層成長の制御の点からはドライエッチングによりほ
ぼ垂直に近い側面を備えたメサ部5を形成することが望
ましい。ドライエッチングとして、例えばエタン、水
素、酸素の混合ガスを用いた反応性イオンエッチング
(RIE)法を用いる。ドライエッチングを用いる場合
には、ドライエッチング後にメサ部5側面のダメージ層
を硫酸系の溶液で除去する。
【0043】続いて、CH3Cl 又はHCl 等の塩素含有ガス
を流している結晶成長雰囲気で、減圧MOVPE法によ
りアンドープInP 層(不図示)を0.1μm、バンドギ
ャップ波長1.2μmのInGaAsP よりなる再結合層6を
0.1μm形成する。再結合層6の成長時にはメサ部5
の側面の成長速度がなくなる量の塩素含有ガスを結晶成
長雰囲気中に導入し、再結合層6はメサ部5の側面には
成長せずに、メサ部5の両脇のn-InP 基板1の(10
0)面上にのみ成長する。一方、アンドープInP層の成
長時には塩素含有ガスを流さないか、もしくは、異常成
長を抑える程度に塩素含有ガスを成長雰囲気内に微量導
入することにより活性層3の側面を覆うことが、次に再
結合層の一部を選択エッチングに除去するためには望ま
しい。
【0044】その再結合層6を構成するInGaAsP のバン
ドギャップは、基板や後述する埋込層を構成するInP の
バンドギャップよりも狭くなっている。その再結合層6
は、単層又は多層の量子井戸構造を有していてもよい。
ここで、結晶成長を一旦停止してn-InP 基板1を結晶成
長雰囲気から取り出してレーザ部Iの領域、又は、レー
ザ部Iからスポットサイズ変換部Iの一部にかけた領域
をレジスト(不図示)で覆った状態で、InP に対して選
択性のあるエッチング液、例えば、硫酸、過酸化水素水
及び水の混合液を用いて、図8(c) に示すように、再結
合層6を選択的にパターニングしてスポットサイズ変換
部IIの領域全部又はその先端近傍を除去するとともに、
レーザ部Iにはそのまま残す。再結合層6は、例えばス
ポットサイズ変換部IIの前端から後方へ150μmに至
る領域まで除去するようにする。
【0045】次に、レジストを除去し、さらにストライ
プ状の第2の誘電体膜16を残した状態で、図9(a) に
示すように、減圧MOVPE法によって膜厚0.9μm
の第2のp-InP 層7と膜厚0.7μmのn-InP 層8と膜
厚0.1μmの第3のp-InP層9を埋込層としてメサ部
の両側方に形成する。その第2のp-InP 層7は、再結合
層6とその前方のn-InP 基板1の上に形成されるととも
に、ストライプ状にパターニングされたメサ部5の側面
にも形成される。また、n-InP 層8は、いわゆる電流ブ
ロック層と呼ばれるものであり、第2のp-InP 層7の上
に形成されるとともに、メサ部5の近傍で盛り上がって
膜厚が厚く形成される。
【0046】これにより、スポットサイズ変換部IIに形
成された埋込層は、その前端から後方150μmの範囲
では、通常の構造となっている。その後に、第2の誘電
体膜16を除去した後に、図9(b) に示すように、減圧
MOVPE法により、第1のp-InP 層4と第3のp-InP
層9の上に膜厚4μmの第3のp-InP 層10を形成し、
続いて膜厚0.5μmのp-InGaAsよりなるコンタクト層
11を形成する。
【0047】なお、第2のp-InP 層7からコンタクト層
9の各結晶層の膜厚は、メサ部5の近傍とメサ部5から
離れた場所では膜厚が異なっているが、上記したそれら
の膜厚はメサ部分から離れた平坦面上の値とする。次
に、コンタクト層11の上のレーザ部I近傍にTi/Pt/Au
を材料とするp側電極12を形成し、ついでAuGe/Au を
材料とするn側電極13を形成すると、図10に示すよ
うな膜厚テーパ導波路を集積した半導体レーザが形成さ
れる。
【0048】以上のような工程により形成された膜厚テ
ーパ導波路を集積した半導体レーザでは、活性層3に量
子井戸構造を用いてスポットサイズ変化部で膜厚がテー
パ状に変化し、出射端面近傍では量子井戸構造の吸収端
波長が短波長へシフトするために、スポットサイズ変換
部IIの導波路を構成する活性層3がレーザ光に対して透
明となるので、その前端部には電流を注入する必要がな
くなる。このため、p側電極12は後端面から350μ
mの領域に形成する。
【0049】活性層3の構造は、本発明の効果に影響を
与えないが、例えばレーザ部Iの平坦領域において、圧
縮歪み0.7%で膜厚6nmのInGaAsP 層よりなる井戸
層と、圧縮率0.1%でバンドギャップ波長が1.1μ
mで膜厚10nmのInGaAsP層からなる障壁層との7層
の歪量子井戸構造3aを備え、その上と下に圧縮歪0.
1%でバンドギャップ波長が1.1μmで厚さ70nm
のInGaAsP よりなるSCH層3bを備えた構造を有して
いて、波長1.3μmで動作する構造となっている。
【0050】以上のようにスポットサイズの小さなレー
ザ部Iのメサ部の側方に再結合層6を形成するととも
に、スポットサイズの大きなスポットサイズ変換部IIの
前端近傍領域では再結合層6が存在せずに屈折率差によ
る光のフィールドの歪みや損失の影響が生じない。ま
た、電流注入によりレーザ発振のための利得を与えるス
ポットサイズが小さいレーザ部Iの活性層3の平坦な領
域では、両脇にInGaAsP 再結合層6があり、温度特性改
善の効果が得られる。また、電流注入領域も後端面から
350μmの領域に存在するために再結合層6が部分的
に形成されていても十分な効果を得ることができる。 (第2の実施の形態)第1の実施の形態ではn型InP 基
板を使用したが、p型(p-)InP 基板を使用して膜厚テ
ーパ導波路を集積した半導体レーザを形成することもで
き、その実施形態を以下に説明する。
【0051】図11(a) は、膜厚テーパ導波路を集積し
た半導体レーザのレーザ部の断面図、図11(b) はスポ
ットサイズ変換部の断面図である。図11(a),(b) にお
いて、p-InP 基板21の上には、第1実施形態と同じ量
子井戸構造の活性層23と第1のn-InP 層24が形成さ
れている。その活性層23と第1のn-InP 層24は、第
1実施形態で示した第1の誘電体膜をp-InP 基板21上
に形成した状態で減圧MOVPE法により結晶成長され
ている。従って、活性層23は、レーザ部Iでは図11
(a) に示すように膜厚が厚くて平坦になっているが、ス
ポットサイズ変換部では図11(b) に示すように前端に
向けて徐々に膜厚が薄くなっている。
【0052】また、第1のn-InP 層24からp-InP 基板
21の上部までは、第1実施形態と同様に、ストライプ
状の第2の誘電体膜をマスクに使用してストライプ状に
パターニングされてメサ部25が形成されている。ま
た、そのメサ部25の側壁とp-InP 基板21の上面には
第1のp-InP 層22が形成されている。さらに、ストラ
イプ状の第2の誘電体膜を残した状態で、メサ部25の
両側の第1のp-InP 層22上には第2のn-InP 層26と
第2のp-InP 層27とInGaAsP再結合層28が順に形成
されている。その後に、第2のp-InP 層27に対して選
択制のあるエッチング溶液、例えば硫酸、過酸化水素
水、水の混合液を用いてスポットサイズが大きくなって
いるスポットサイズ変換部IIの前端面から150μm後
方の領域で再結合層28を除去する。
【0053】次に、メサ部25の上に残っている第2の
誘電体膜を除去した後に、第1のn-InP 層24と再結合
層28と第2のp-InP 層27を覆う第3のn-InP 層29
を4.0μmの厚さに形成し、さらに、n-InGaAsP コン
タクト層30を0.5μmの厚さに成長することで結晶
層構造は完了する。この後に、レーザ部I近傍のコンタ
クト層30の上にn側電極31を形成し、さらに、p-In
P 基板21の下面にp側電極32を形成する。
【0054】この実施形態においても、第1実施形態と
同様に、スポットサイズの大きなスポットサイズ変換部
IIの前端面近傍領域は通常の埋込構造であるために、屈
折率差による光のフィールドの歪みや損失の影響は生じ
ない。また、スポットサイズの小さなレーザ部Iでは両
脇にInGaAsP 再結合層28があり、温度特性改善の効果
が得られる。
【0055】ところで、上記した第1、第2の実施形態
では、選択成長を用いて作製した膜厚テーパ導波路を集
積した素子について説明したが、膜厚テーパ導波路の集
積を異なる成長で直接接合によって行っても良い。この
場合も、テーパ導波路の全体をレーザ光に対して透明な
材料を用いることができるので、電流注入はスポットサ
イズの小さな活性層を有する領域のみとなるために同様
な効果が得られる。
【0056】また、スポットサイズ変換器を導波路の厚
さは一定で幅が端面に向かって狭くなっているいわゆる
幅テーパ導波路として、レーザ部の両側に再結合層を選
択的に配置しても良い。この場合には、スポットサイズ
の大きな領域でも吸収端波長が変化しないので、素子全
体に電流注入を行ってスポットサイズ変換部での光吸収
を防止する必要があるために、レーザ部では再結合層が
部分的に存在することになるので温度特性向上等の効果
は存在するが、温度特性向上等の効果は第1実施形態に
比べて小さくなる。なお、幅テーパ導波路の基本的構造
は次の実施形態で説明する。
【0057】また、ここまでの実施形態では、両端面を
反射鏡としたファブリペロー型の素子を示したが、他の
構造のデバイス、例えばスポットサイズの小さな領域に
回折格子を設けたDFBレーザや、両端面ともにスポッ
ト変換部を集積して低反射コートを施した半導体光増幅
器等においても、利得領域の側方に再結合層を設けて、
スポットサイズ変換部の出射端近傍で再結合層を除去す
る構造を採用すれば上記したと同様な効果が得られる。 (第3の実施の形態)上記した第1及び第2の実施の形
態では、レーザ部I又はレーザ部Iからスポットサイズ
変換部IIの途中まで再結合層を形成するようにしたが、
レーザ部I及びスポットサイズ変換部IIの双方に再結合
層を形成する構造について以下に説明する。
【0058】図12、図13及び図14は、本発明の第
3の実施形態の幅テーパ導波路を集積した半導体レーザ
を形成する工程を示す斜視図である。まず、図12(a)
に示すように、MOVPE法等の結晶成長法を用いてn-
InP基板41の上に不純物濃度5×1017/cm3 で膜
厚0.5μmのn-InP バッファ層42を形成し、続い
て、アンドープの量子井戸活性層43と不純物濃度5×
1017/cm3 で膜厚0.5μmの第1のp-InP クラッ
ド層44を形成する。
【0059】その活性層43の構造は、本発明の効果に
影響を与えないが、例えば、圧縮歪1.0%で膜厚6n
mのInGaAsP よりなる井戸層と、格子整合でバンドギャ
ップ波長が1.1μmで膜厚10nmのInGaAsP よりな
る障壁層とからなる7層の歪量子井戸構造であり、その
歪み量子井戸構造の上と下には、格子整合でバンドギャ
ップ波長1.05μmで厚さ30nmのInGaAsP よりな
るSCH層43a、43bが形成され、これにより波長
1.3μmで動作するようになっている。
【0060】次に、第1のp-InP クラッド層44の上に
膜厚250nmのSiO2よりなる誘電体膜を形成し、フォ
トリソグラフィー法によりその誘電体膜をパターニング
して光進行方向に沿って第1のマスクパターン45a
と、第1のマスクパターン45aの両側方に12μm離
れて第2、第3のマスクパターン45b、45cを形成
する。
【0061】第1のマスクパターン45aは略ストライ
プ形状を有し、素子領域の後端から光進行方向に300
μmの間の領域では幅が1.5μmと一定であり、出射
端から200μmから25μmの範囲の領域では前端
(出射端)に向けて幅が線形に減少して出射端から25
μm離れた部分では幅が0.7μmとなっている。第2
のマスクパターン45bと第3のマスクパターン45c
は、それぞれ素子領域の後端から350μmの間の領域
であって第1のマスクパターンからそれぞれ12μm離
れた領域の全面に形成されている。
【0062】そのような第1〜第3のパターンを用い
て、図12(b) に示すように、第1のp-InP クラッド層
44からn-InP 基板41の上部までをエッチングして、
第1〜第3のパターン45a〜45cの下には、それぞ
れ高さ2μmの第1〜第3のメサ部46a〜46cを形
成する。そのエッチング方法は、ウェットエッチングを
用いても良いが、次の結晶成長段階で形成される再結合
層の成長の制御の点からは、ドライエッチングによりほ
ぼ垂直に近いメサ部を形成することが望ましい。ドライ
エッチングとしては、例えばエタン、水素及び酸素の混
合ガスを用いた反応性イオンエッチング法を用いる。
【0063】そのような第1〜第3のメサ部46a〜4
6cを形成した後に、それらのメサ部46a〜46cの
側面のダメージを硫酸系の溶液で除去した後に、MOV
PE法を用いて第1〜第3のメサ部46a〜46cの周
囲に、2回目の結晶成長工程に移る。即ち、図12(c)
に示すように、第1〜第3のメサ部46a〜46cの周
囲のn-InP 基板41の上に、膜厚0.1μmのアンドー
プInP 層(不図示)と、バンドギャップ波長1.2μm
で厚さが0.1μmのアンドープInGaAsP よりなる再結
合層47と、不純物濃度2×1018/cm3で膜厚0.9μ
mのp-InP 層48、不純物濃度2×1018/cm3で膜厚
0.7μmのn-InP 層49、不純物濃度2×10 18/cm3
で膜厚0.1μmのp-InP 層50aを順に成長する。p-
InP 層48とn-InP 層49は、一般に埋め込み層と呼ば
れる。
【0064】ところで、図12,図13は、素子の構造
を模式的に示した図であるために、埋込層48,49を
ほぼ平坦に描いているが、結晶基板上の結晶成長では実
際の厚さは均一ではなく、メサ部46a〜46c近傍で
は選択成長効果等により変化換する。このような結晶成
長を行うと、素子領域の後端面近傍はマスクで覆われて
いる領域が広いために、より多くの原材料が第1のメサ
部46aと46b、46cに挟まれた狭い結晶成長領域
に流れ込んで結晶成長速度が速くなり、結晶成長層の厚
さは出射端面に比べて厚くなる。さらに、本実施形態の
ようにInとGaの2つのIII 族元素を含む化合物の場合に
は、選択成長による原材料の成長部への原料供給量の増
大効果がInの方がGaに比べて大きいために、厚さが増大
すると同時にバンドギャップ波長が長波長化する。な
お、上記した厚さ、濃度、バンドギャップ波長は全て後
端面近傍の値である。
【0065】また、InGaAsP よりなる再結合層47の成
長中は、結晶成長雰囲気にCH3Cl やHCl 等の塩素を含ん
だガスを同時に反応雰囲気へ供給することで図示するよ
うにInGaAsP 再結合層47をメサ部46a〜46cの側
面(活性層の両面)上には成長させず、第1のメサ部4
6aの両脇の基板41面上のみに成長させることを可能
にしている。本実施形態では、素子領域の前端面のInGa
AsP 再結合層47の厚さは後端面の近傍の約1/3とな
っており、バンドギャップ波長も1.13μmと短波に
なっている。
【0066】再結合層47の下のアンドープInP 層(不
図示)については、メサ部の側面をまず半導体で覆って
しまう必要があるので、再結合層47とは逆にCH3Cl 等
の塩素系ガスを添加しないか、又は、メサ部の頂部近傍
の異常成長を抑制できる程度の微量の添加に留める。3
層目のp-InP 層48とそれ以降の層については、層厚分
布が逆につかない方が望ましい。このため、本実施形態
では、再結合層47までは成長雰囲気の圧力を100〜
150Torrに設定して、レーザ部Iとスポットサイズ変
換部IIとの成長速度を異ならせて選択成長する一方で、
3層目とそれ以降の層では成長圧力を10〜30Torr程
度まで下げて選択成長の効果が殆ど起こらないようにし
ている。これにより、本実施形態では3層目以降の層厚
の低減は出射端面近傍においても後端面の厚さの約30
%に留まっている。また、塩素系ガスについては、3層
目とそれ以降の層の成長の際に、一層目のアンドープIn
P 層(不図示)の成長と同様に微量導入を行っている。
【0067】以上のような埋込層48,49、p-InP 層
50aの成長を終えた後に、第1〜第3のマスクパター
ン45a〜45cを除去する。その後に、図13に示す
ように、MOVPE法による3回目の結晶成長により、
全面に第2のp-InP クラッド層50bを4μmの厚さに
形成し、p-InGaAsP コンタクト層38を0.5μmの厚
さに成長することにより、結晶層の成長の工程は終了す
る。
【0068】この後に、コンタクト層38の上にp側電
極39を形成し、n-InP 基板41の下面にn側電極40
を形成する。そして、両端面を劈開した後に、必要なら
ばその端面に反射防止膜等を塗布して素子を完成させ
る。第2及び第3のメサ部46b、46cを除いた素子
の斜視図を示すと、図14のようになる。以上のような
本実施形態によれば、再結合層47は、レーザ部Iでは
ほぼ均一の膜厚であり、スポットサイズ変化部では光進
行方向の前端に向けて徐々に薄くなっているので、電流
注入によりレーザ発振のための利得を与えるスポットサ
イズが小さなレーザ部Iの平坦領域では両脇に厚いInGa
AsP 再結合層47があり、温度特性改善の効果が得られ
る一方、スポットサイズ変換部IIではスポットサイズの
大きな前端面近傍ではInGaAsP 再結合層47の厚さが薄
くかつバンドギャップ波長が短波長化しているために、
吸収、屈折率ともに低下しており、InP のみで埋め込ん
だ従来の構造に比べると影響はゼロではないものの、吸
収による動作特性の低下及び高屈折率による光のフィー
ルドの歪みの影響を結晶成長回数を増やすことなく実現
できる。 (第4の実施の形態)第1実施形態において、図10に
示した膜厚テーパ導波路レーザでは、前端近傍から再結
合層6を除去した構造を採用しているが、第3実施形態
で示したように、前端近傍で再結合層を薄くする構造を
採用しても良い。
【0069】即ち、図15に示すように、メサ部5の両
側に埋込層7,8を形成する前に、メサ部5の両側に再
結合層17を形成する。その再結合層17は、レーザ部
Iでは膜厚が厚く、スポットサイズ変換部IIの前端近傍
では膜厚が薄くなっている。なお、再結合層17以外の
構造は第1実施形態と同じであって、図15において図
10と同じ符号は同じ要素を示している。
【0070】再結合層17の具体的な層構造としては、
厚さ4nmでバンドギャップ波長が1.3μmのInGaAs
P よりなる井戸層と、厚さが10nmでバンドギャップ
波長が1.1μmのInGaAsP よりなる障壁層とを有する
10層の多重量子井戸構造があげられる。そのような量
子効果を用いることで層厚の低下が吸収端波長をより短
波化するために、スポットサイズの大きなスポットサイ
ズ変換部IIでの吸収及び屈折率の低減の効果が大きい。
【0071】その障壁層の材料としてはInP を用いても
よい。この場合、障壁高さが高くなるために吸収端波長
の短波化は大きくなるという利点、及び、埋込層に用い
る材料が2種類となり、InP 層については他の埋込層と
同一材料なためにメサ部5の側面に成長してもよいこと
から、成長条件の範囲が緩くなるという利点があるが、
障壁層17がキャリア溜めとならないために、温度特性
改善の効果はやや小さくなる。
【0072】なお、再結合層17を形成する場合には、
例えば、図8の状態で、図12(a)に示した第2及び第
3のマスクパターン45b、45cをメサ部5の側方の
n-InP 基板1上に形成すれば、スポットサイズ変換部II
で再結合層17を膜厚テーパ形状に形成することができ
る。なお、そのような量子井戸構造の再結合層17と同
一構造を、第3実施形態の幅テーパ導波路を集積した半
導体レーザの再結合層47に用いても良い。 (第5の実施の形態)第2の実施の形態ではp-InP 基板
21を使用して膜厚テーパ導波路を集積した半導体レー
ザを形成したものであり、その再結合層28は、レーザ
部Iのみに形成した構造を有している。しかし、第4実
施形態で示したように、その再結合層を前端近傍で薄く
する構造を採用してもよい。
【0073】即ち、図16に示すように、メサ部25の
両側に埋込層26,27を形成した後に、メサ部25の
両側に再結合層37を形成する。その再結合層37は、
レーザ部Iでは膜厚が厚く、スポットサイズ変換部IIの
前端近傍では膜厚が薄くなっている。なお、再結合層3
7以外の構造は第2実施形態と同じであって、図16に
おいて図11と同じ符号は同じ要素を示している。
【0074】再結合層37の具体的な層構造としては、
第4実施形態と同じような多重量子井戸構造があげられ
る。そのような量子効果を用いることで層厚の低下が吸
収端波長をより短波化するために、スポットサイズの大
きなスポットサイズ変換部IIでの吸収及び屈折率の低減
の効果が大きい。再結合層37を形成する場合には、第
3の実施の形態と同様に活性層をストライプ状のメサに
加工する際のマスクパターンに図12(a) に示した第2
及び第3のマスクパターン45b、45cを形成し、エ
ッチングによりメサ加工した後に、埋込層26、27の
成長に引き続き再結合層37を形成することでスポット
サイズ変換部IIで再結合層37を膜厚テーパ形状にする
ことができる。
【0075】この場合、再結合層37は、活性層23よ
りも上に位置するためにn型基板のようにメサ部の側面
には成長させずに基板上にのみ成長させるという条件は
なくなり、製作は容易になる。この場合も、第3実施形
態と同様に、再結合層37以外のInP 層の成長時には層
厚変化を抑えるために低い成長圧力で成長する。 (第6の実施の形態)図17は、スポットサイズ変換器
を集積した半導体光増幅器の活性層の側方の基板上に再
結合層を形成した実施形態を示している。
【0076】図17において、n-InP 基板51の上には
第3実施形態と同じ量子井戸構造を有する活性層52と
第1のp-InP クラッド層53が形成され、第1のクラッ
ド層53からn-InP 基板51の上部までは、それぞれ略
ストライプ状にエッチングされてメサ部54となってい
る。そのエッチングの際には、ストライプ状の誘電体膜
(不図示)が第1のp-InP クラッド層の上に形成されて
いる。
【0077】その活性層52は、中央の利得領域では幅
が1.3μmと一定であり、その光進行方向の前方の第
1の導波路領域では幅が前方に徐々に狭くなって前端で
は0.5μmとなり、さらに、後端側の第2の導波路領
域では幅が後方に徐々に狭くなって後端では0.5μm
となっている。そのメサ部54の両側方のn-InP 基板5
1の上には、MOVPE法により、InGaAsP よりなる井
戸層とInP よりなる障壁層を有する量子井戸構造の再結
合層55が形成されている。その再結合層55は、利得
領域では膜厚が一定で厚く、第1の導波路領域では前方
に徐々に薄くなり、また、第2の導波路領域では後方に
徐々に薄くなっている。
【0078】その再結合層55の上には、MOVPE法
によって第1のn-InP 層56、第1のp-InP 層57、第
2のn-InP 層58が順に形成されている。そのような結
晶成長を終えた後に、ストライプ状の誘電体膜を除去
し、さらに、MOVPE法により全体に第2のp-InP ク
ラッド層59、p-InGaAsP コンタクト層60を形成す
る。また、コンタクト層60の上にp側電極(不図示)
を形成し、さらに、n-InP 基板51の底面にn側電極
(不図示)を形成する。
【0079】そのような半導体光増幅素子では、スポッ
トサイズ変換器は直接結合で形成した幅テーパ導波路を
用いている。スポットサイズ変換器を集積した素子で
は、光ファイバ等の外部の光導波路と直接結合をするた
めに素子の活性層52に結合しないで素子を透過してし
まういわゆる迷光が発生しやすく、消光比があがらない
という問題がある。
【0080】しかし、本実施形態の光半導体素子では、
上記した実施形態で温度特性改善のために再結合層とし
て用いていた量子井戸構造の層に迷光を吸収するための
機能を持たせている。この場合、スポットサイズの大き
い第1及び第2の導波路領域では、再結合層55の吸収
が利得特性を劣化させるので、吸収を抑えることが必要
となり、層厚を薄くしてバンドギャップ波長を短波化す
ることは有効である。
【0081】この場合には、埋込層中に設けられた多重
量子井戸構造は迷光を吸収するために設置しているの
で、再結合層55の上にのみに第1のn-InP 層57を成
長した後に、第1のp-InP 層、第2のn-InP 層、第2の
p-InP クラッド層59の電流ブロック構造が成長されて
いる。なお、図17では、第1の光導波路領域の前端と
第2の光導波路領域の後端で活性層52が露出するよう
な構造となっているが、図18に示すように、それらの
前端と後端から中央寄りに離れた位置で終端し、その上
のn-InP 層58を窓構造58aにしてもよい。これによ
れば、前端面及び後端面には多重量子井戸構造の再結合
層55が存在する構造となる。 (第7の実施の形態)本発明では、スポットサイズ変換
部において、光のスポットが活性層から外れることを防
止するための構造を備えたテーパ導波路レーザとその製
造方法について説明する。
【0082】まず、図19(a) に示すように、n型(n
-)InP 基板61の(100)面上にn-InP クラッド層
62を形成する。また、n-InP クラッド層62上にSiO2
よりなる第1の誘電体膜63を形成し、ついで、第1の
誘電体膜63をフォトリソグラフィー法によりパターニ
ングしてレーザ部Iに<110>方向に長いストライプ
状の第1の開口63aを形成するとともにスポットサイ
ズ変換部IIではそれよりも広い第2の開口63bを形成
する。
【0083】その後に、第1の誘電体膜63の第1及び
第2の開口63a,63bから露出しているn-InP クラ
ッド層62上にアンドープの量子井戸活性層(コア層)
64、第1のp-InP クラッド層65をMOVPE法によ
り順に形成すると、それらの層64,65は、第1の開
口63a内ではほぼ一定の厚さになるとともに、第2の
開口63b内では<110>方向でレーザ部Iから遠ざ
かるにつれて徐々に膜厚が薄くなるような膜厚テーパ形
状となる。その量子井戸活性層64は、例えば、圧縮歪
1.0%で膜厚6nmのInGaAsP よりなる井戸層と、バ
ンドギャップ波長が1.1μmで膜厚10nmのInGaAs
P よりなる障壁層とからなる7層の歪量子井戸構造であ
り、その歪量子井戸構造の上と下には、格子整合でバン
ドギャップ波長1.05μmで厚さ30nmのInGaAsP
よりなるSCH層(不図示)が形成され、これにより波
長1.3μmで動作するようになっている。
【0084】次に、第1の誘電体膜63をバッファドフ
ッ酸により除去した後に、SiO2よりなる第2の誘電体膜
を全体に形成し、この第2の誘電体膜を図19(b) に示
すようにパターニングして光進行方向に沿ってストライ
プ状の第1のマスクパターン66aを形成し、さらに、
第1のマスクパターン66aの両側方に離れて第2、第
3のマスクパターン66b、66cを形成する。
【0085】即ち、図20に示すように、第1のマスク
パターン66aは、幅が1.8μmであり、光進行方向
に延びるストライプ形状を有している。また、第2のマ
スクパターン66bと第3のマスクパターン66cは、
それぞれスポットサイズ変換部IIの前端及びその近傍の
領域であって第1のマスクパターン66aを挟んで互い
に80μmの距離で離れ、それぞれ110μmの幅を有
して形成されている。
【0086】なお、第2の誘電体膜のパターニングは、
フォトレジスト(不図示)をマスクとして使用し、バッ
ファドフッ酸をエッチング液として用いるフォトリソグ
ラフィー法により行われる。そして、第1〜第3のマス
クパターン66a〜66cを形成した後に、フォトレジ
ストは有機溶液により剥離される。そのような第1〜第
3のマスクパターン66a〜66cに覆われない領域の
第1のp-InP クラッド層65からn-InP 基板61の上部
までのダブルヘテロ構造をエッチングすることにより、
第1〜第3のマスクパターン66a〜66cの下には、
図19(c) に示すようにそれぞれ高さ2μmの第1〜第
3のメサ部67a〜67cを形成する。そのエッチング
は、炭化水素系ガスを用いる例えば反応性イオンエッチ
ング法を用いる。
【0087】そのような第1〜第3のメサ部67a〜6
7cを形成し、それらのメサ部67a〜67cの側面の
ダメージを硫酸系の溶液で除去した後に、第1〜第3の
メサ部67a〜67cの間とその周辺のn-InP 基板61
上に結晶成長を行う。即ち、図22に示すように、第1
〜第3のマスクパターン66a〜66cに覆われない領
域に、MOVPE法により第1のp-InP 層68aとn-In
P 層68bを埋込層68として形成する。
【0088】MOVPE法を用いた結晶成長において、
第1〜第3のマスクパターン66a〜66c上では原料
が消費されずにその周辺の領域に過剰に供給されるため
に、第1のマスクパターン66aと第2のマスクパター
ン66bに挟まれた領域と、第1のマスクパターン66
aと第3のマスクパターン66cに挟まれた領域で結晶
成長レートが最も大きくなり、さらに、第2及び第3の
マスクパターン66c、66bに挟まれない領域での結
晶成長レートが小さくなる。ただし、第2及び第3のマ
スクパターン66c、66bに挟まれない領域であって
も第1のマスクパターン66aの近傍では膜厚が比較的
厚くなって盛り上が生じてしまう。
【0089】また、MOVPE成長においては、n-InP
層68bを成長する際のn型ドーパントの原料ガスとし
てシラン(SiH4)を用いると、成長レートが大きくなる
ほど結晶中へのシリコンの取り込まれ量は小さくなる。
これにより、成長レートの大きいスポットサイズ変換部
IIではn型ドーパントの濃度が小さくなる。また、InGa
AsP 等の半導体を成長する場合には、マスク近傍におい
てInの方がGaより多く成長領域に供給される。そのた
め、マスク周辺の成長レートが大きい領域ではよりInの
組成が大きくなる。
【0090】このような原理から、第2、第3のマスク
パターン66b、66cの形状、位置に対応してストラ
イプ状の第1のメサ部67aの両脇の埋込層68の膜
厚、ドーピング濃度、混晶組成が光の導波方向に沿って
連続的に変化する。この性質を利用して、第1のメサ部
67aの両脇のマスク形状を最適化することにより、素
子の埋込層68を光の導波方向に沿って変化させ、各領
域において最適な構造とすることができる。
【0091】本実施形態では、第1〜第3のマスクパタ
ーン66a〜66cのそれぞれの間に挟まれたスポット
サイズ変換部IIでの結晶成長速度は、第2及び第3のマ
スクパターン66b、66cに挟まれないレーザ部Iで
の結晶成長速度に比べて約2倍としている。さらに、n-
InP 層68bのシリコンの濃度は第1〜第3のマスクパ
ターン66a〜66cに挟まれたスポットサイズ変換部
IIで小さくしている。
【0092】例えば、レーザ部Iにおけるp-InP 層68
aとn-InP 層68bの膜厚をそれぞれ0.6μm、1.
0μmとする。また、成長レートが相対的に大きくなっ
ているスポットサイズ変換部IIにおいては、p-InP 層6
8aとn-InP 層68bの膜厚を、それぞれ前端で1.2
μm、2.0μmとしている。但し、これらの膜厚は第
1のメサ部67aから4μm離れた領域の埋込層68の
成長面が(100)面に平行になっている部分での値で
ある。
【0093】また、p-InP 層68aのドーパント濃度を
2×1018/cm3としてある。更に、n-InP 層68bのド
ーパント濃度は、成長速度の大きいスポットサイズ変換
部IIで1×1018/cm3、成長速度の小さいレーザ部Iで
2×1018/cm3となされている。以上のような埋込層6
8の形成を終えた後に、第1〜第3のマスクパターン6
6a〜66cをバッファドフッ酸によって除去した後
に、再びMOVPE法により基板全面に第2のp-InP ク
ラッド層69、p-InGaAsコンタクト層70を成長し、少
なくとも活性層64の膜厚が一定な領域、即ち、レーザ
部Iとなる部分の基板61の上方の面を平坦化する。
【0094】上記した実施形態では、レーザ部Iに比べ
てスポットサイズ変換部IIにおける埋込層68の膜厚が
大きくなる。従って、第1のメサ部67aの両脇での埋
込層68の盛り上がりが大きくなり、この領域における
p-InP クラッド層69,p-InGaAsコンタクト層70の平
坦化が従来技術と同様の膜厚では困難である。これらの
層69,70を平坦化しようとする場合には、MOVP
E成長において、原料ガスにCH3Cl ガスを適量添加する
平坦化成長技術を用いると、その平坦化を促進すること
ができる。
【0095】その後に、レーザ部Iのコンタクト層70
の上にp側電極71を形成し、さらに、n-InP 基板61
の下にn側電極72を形成する。以上のような工程によ
り形成された光半導体装置では、活性層64は図21に
示すようにクラッド層62と埋込層68に囲まれてレー
ザ部Iではほぼ一定の膜厚、スポットサイズ変換部IIで
は膜厚がテーパ形状に変化している。また、レーザ部I
の光進行方向に対して垂直の断面形状は図22(a) に示
すようになり、またスポットサイズ変換部IIの光進行方
向に対して垂直の断面形状は図22(b) に示すようにな
る。
【0096】次に、本実施形態における作用効果を説明
する。図22(a) において、活性層64周辺の屈折率の
高いp-InP 層68aはレーザ部Iにおいて薄くなる。こ
れは、レーザ部Iにおいては埋込層68の成長レートが
小さくなることに起因する。その結果、レーザ部Iにお
ける活性層64とn-InP 層68bとの間隔Aが狭くなっ
て、活性層64とn-InP 層68bの間隙に流れる電流量
が小さくなり、活性層64への電流の注入効率が高くな
る。
【0097】一方、図22(b) において、活性層64周
辺の屈折率の高いp-InP 層68aはスポットサイズ変換
部IIにおいて十分に厚くなり、n-InP 層68bと活性層
64との距離Aがレーザ部よりも広がる。これは、スポ
ットサイズ変換部IIにおいては埋込層68の成長レート
が大きくなることに起因する。その結果、スポットサイ
ズ変換部IIにおける光分布の中心は活性層64の中心か
らズレないでその周辺に広がる。
【0098】さらに、スポットサイズ変換部IIでは埋込
層68のn-InP 層68bのドーパント濃度が小さくなっ
ていることから、この部分における屈折率はレーザ部I
に比べると大きくなり、周囲のp-InP 層68a、69の
屈折率に近づいている。これにより、スポットサイズ変
換部IIにおいて導波方向に垂直な面内の光分布の歪みの
発生が抑制され、真円に近い形状になる。
【0099】この実施形態において本質的なことは、ス
ポットサイズ変換部IIにおいて、活性層64の周囲の屈
折率が高い部分の断面積を大きくすることと、活性層の
周辺の埋込構造の屈折率分布を小さくすることである。
したがって、これらの構造が実現される限り、埋込層の
構成の元素組成、ドーパントの種類、濃度、或いは活性
層の両側の複雑な埋込層の形状などによらず、上記した
ような効果を得ることができる。
【0100】しかも、本実施形態では、図2(b) に示し
た従来技術と比較してマスクのパターニングのためのフ
ォトマスクの変更だけであり、従来技術に比べて何ら工
程が複雑化せず、極めて簡単に図21、図22に示した
構造が得られる。 (第8の実施の形態)第7の実施の形態では、スポット
サイズ変換部IIにおける埋込層68の層厚がレーザ部I
に比べて例えば約2倍程度に大きくなる。これに従っ
て、第1のメサ部67aの両脇での埋込層68のn-InP
層68bの最上面の盛り上がりがスポットサイズ変換部
において従来技術を用いたときよりも大きくなる。この
盛り上がりを防止するために塩素添加成長技術を導入し
て盛り上がり量を小さくすることも可能であるが、レー
ザ部Iでの電流狭窄効果を考慮するとあまり用いたくは
ない。
【0101】そこで、埋込層の全体の凹凸差を小さくす
るために、埋込層68を成長する際に、p-InP 層68a
の成長時とn-InP 層68bの成長時とで成長圧力を変化
させるのが好ましい。例えば、p-InP 層68aを成長さ
せる時の成長圧力を100Torrに設定し、また、n-InP
層68bを成長する時の成長圧力を10Torrと小さく設
定すると、レーザ部Iとスポットサイズ変換部IIとのp-
InP 層68aの成長レートの差を、n-InP 層68bの成
長レートの差よりも大きくすることができる。これによ
り、例えば、p-InP 層68aの膜厚はスポットサイズ変
換部IIで1.2μm、レーザ部Iで0.6μmと差が大
きく変化するが、n-InP 層68bの膜厚はスポットサイ
ズ変換部IIでは1.5μm、レーザ部Iで1.0μmと
なって差が小さくなる。
【0102】これにより、活性層64周辺のp-InP 層6
8aの断面積はスポットサイズ変換部IIにおいて第7実
施形態と同様に大きくなるが、n-InP 層68bについて
はスポットサイズ変換部IIでは第7実施形態よりも薄く
なる。従って、埋込層の全体の盛り上がりを小さく抑え
ながら、p-InP 層68aのみを厚くすることが可能にな
り、その埋込層68を形成した後に、第2のp-InP クラ
ッド層69、p-InGaAsコンタクト層70の最上面の平坦
化が比較的容易になる。 (第9の実施の形態)第8実施形態では、埋込層68の
うちスポットサイズ変換部IIでのp-InP 層の膜厚を増や
し、n-InP 層の膜厚を薄くする方法として成長圧力を変
化させる方法を採用している。本実施形態では、p-InP
層とn-InP 層の間に中間層を形成することによってp-In
P 層の膜厚を増加させることについて説明する。
【0103】図23(a) は、本実施形態に係るテーパ導
波路レーザのレーザ部Iでの光進行方向に垂直な断面を
示し、図23(b) は、そのスポットサイズ変換部IIでの
光進行方向に垂直な断面を示している。なお、図23
(a),(b) において、図22(a),(b) と同じ符号は同じ要
素を示している。本実施形態の光半導体素子は、埋込層
68の形成工程を除いて、第7実施形態と同じ工程で形
成される。
【0104】その埋込層68は、第6実施形態で示した
p-InP 層68aとn-InP 層68bの間に中間層68cが
形成されている。その中間層68cは、p-InP 層68a
とn-InP 層68bと同じ結晶成長工程で形成される。イ
ンジウムのソースガスとしてはトリメチルインジウム、
リンのソースガスとしてはホスフィンを使用し、また、
p型ドーパント原料としてのジエチルジンク(Zn(C2H5)
2))と、n型ドーパント原料としてのシラン(SiH4)を
同時に使用する。この場合、結晶成長速度の小さい領域
ではn型ドーパントであるシリコンが取り込まれやす
く、p型ドーパントである亜鉛にはそのような性質がな
い。
【0105】従って、シランとジメチルジンクの流量を
調整することにより、結晶成長速度の小さいレーザ部I
では中間層68cをn型にするとともに、結晶成長速度
の大きなスポットサイズ変換部IIでは中間層68cをp
型にすることが可能になる。例えば、レーザ部Iでの中
間層68cは例えば不純物濃度5×1017/cm3のn型と
なり、スポットサイズ変換部IIでの中間層68cは例え
ば不純物濃度5×10 18/cm3のp型となる。
【0106】その中間層68cの膜厚をレーザ部Iにお
いて0.2μmに設定する。また、レーザ部1では、中
間層68cの上に形成されるn-InP 層68bの膜厚を第
7実施形態よりも0.2μm薄くし、p-InP 層68aの
膜厚を第7実施形態と同じにすると、埋込層68全体の
膜厚は第7実施形態とほぼ同じになる。これにより、ス
ポットサイズ変換部IIの埋込層68では、p型の中間層
68cを含めたp-InP 層の膜厚は厚くなって、n-InP 層
68bと活性層64の距離Aは第7実施形態よりもさら
に大きくなって光出射端での良好な光分布が得られる。 (第10実施の形態)第7〜第9実施形態では、n-InP
基板を用いて光半導体素子を構成することについて説明
したが、本実施形態では、p-InP 基板を用いて光半導体
素子を構成することについて説明する。
【0107】まず、図19(a) に示すと同様な工程に沿
って、p型(p-)InP 基板81上にp-InP クラッド層8
2、アンドープの量子井戸活性層84、第1のn-InP ク
ラッド層85をMOVPE法により順に形成することに
より、それらの層を図24(a) に示すようにレーザ部I
ではほぼ一定の厚さにするとともに、スポットサイズ変
換部IIではレーザ部Iから光進行方向に遠ざかるにつれ
て徐々に膜厚が薄くなるような膜厚テーパ形状とする。
その量子井戸活性層84は、例えば第7実施形態の量子
井戸活性層64と同じ構造とする。
【0108】次に、SiO2よりなる誘電体膜を第1のn-In
P クラッド層85の上に形成し、この誘電体膜を図24
(b) に示すようにパターニングして光進行方向に沿って
ストライプ状の第1のマスクパターン86aを形成し、
さらに、第1のマスクパターン86aの両側方に離れて
第2、第3のマスクパターン86b、86cを形成す
る。
【0109】即ち、図25に示すように、第1のマスク
パターン86aは、幅が1.8μm、長さが500μm
であり、光進行方向に延びるストライプ形状を有してい
る。また、第2のマスクパターン86aと第3のマスク
パターン86cは、それぞれレーザ領域の後端からスポ
ットサイズ変換領域の後端にかけた領域であって、第1
のマスクパターン86aを挟んで互いに80μmの距離
で離れ、それぞれ110μmの幅を有して形成されてい
る。
【0110】そのような第1〜第3のマスクパターン8
6a〜86cに覆われない領域の第1のn-InP 層85か
らp-InP 基板81の上部までのダブルヘテロ構造をエッ
チングすることにより、第1〜第3のマスクパターン8
6a〜86cの下には、図24(c) に示すようにそれぞ
れ高さ2μmの第1〜第3のメサ部87a〜87cを形
成する。
【0111】その後に、エッチングにより発生したメサ
部87a〜cの側面のダメージを硫酸系の溶液で除去し
た後に、誘電体膜86a〜86cに覆われない領域のp-
InP基板81上に結晶選択成長を行う。即ち、図26に
示すように、誘電体膜86a〜86cに覆われない領域
に、MOVPE法により第1のn-InP 層89a、n-InP
層89bと第2のp-InP 層89cを埋込層89として形
成する。なお、第1のn-InP 層89bは、メサ部87側
面とp-InP 基板81上面に沿って薄く形成される。
【0112】MOVPE法を用いた結晶成長において、
誘電体膜86a〜86c上では原料が消費されずにその
周辺の領域に過剰に供給されるために、誘電体膜86a
と86bに挟まれた領域と、誘電体膜86bと86cに
挟まれた領域で結晶成長レートが最も大きくなる。しか
し、マスクパターン86b、86cに挟まれない領域で
は結晶成長レートが小さくなる。
【0113】従って、埋込層88の膜厚分布は、スポッ
トサイズ変換部IIよりもレーザ部Iの方が厚くなる。ま
た、埋込層89の成長圧力については、n-InP 層89b
の成長時には100Torrとし、第1及び第2のp-InP 層
89a、89cの成長時には10Torrとすると、レーザ
部Iとスポットサイズ変換部IIでの結晶成長速度の差を
比較すると、n-InP 層89bの成長速度の差は、p-InP
層89a、89bの成長速度の差よりも大きくなる。
【0114】これにより、スポットサイズ変換部IIにお
いては、n-InP 層89bの膜厚が従来技術に比べて薄く
なって活性層84の周囲のp-InP 層の領域が厚くなるの
で、第7実施形態と同様に導波路方向に垂直な面内で良
好な光分布が得られる。 なお、レーザ部Iにおける第
1のp-InP 層89aの膜厚を0.2μm、n-InP 層89
bの膜厚を0.8μm、第2のp-InP 層89cの膜厚を
0.6μmとする。また、スポットサイズ変換部IIにお
ける第1のp-InP 層89aの膜厚を0.13μm、n-In
P 層89bの膜厚を0.4μm、第2のp-InP 層89c
の膜厚を0.4μmとする。
【0115】次に、誘電体膜86a〜86cをバッファ
ドフッ酸によって除去した後に、再びMOVPE法によ
り基板全面に第2のp-InP クラッド層90、p-InGaAsコ
ンタクト層91を成長し、少なくとも活性層84の膜厚
が一定な領域、即ち、レーザ部Iとなる部分の基板61
の上方の面を平坦化する。その後に、レーザ部Iのコン
タクト層91の上にp側電極92を形成し、さらに、n-
InP 基板81の下にn側電極93を形成する。
【0116】以上のような工程により形成された光半導
体装置では、活性層84は図26に示すようにクラッド
層82,85,90と埋込層89に囲まれてレーザ部I
ではほぼ一定の膜厚、スポットサイズ変換部IIでは膜厚
がテーパ形状に変化している。また、レーザ部Iの光進
行方向に対して垂直の断面形状は図27(a) に示すよう
になり、またスポットサイズ変換部IIの光進行方向に対
して垂直の断面形状は図27(b) に示すようになる。
【0117】次に、本実施形態における作用効果を説明
する。図27(a) において、活性層84両側の屈折率の
高いp-InP 層89aはレーザ部Iにおいて薄くなってい
る。その結果、レーザ部Iにおける活性層84とn-InP
層89bとの間隔が狭くなって、活性層84とn-InP 層
89bの間隙に流れる電流が小さくなり、活性層84へ
の電流の注入効率が高くなる。
【0118】図27(b) において、活性層84周辺の屈
折率の高いn-InP 層89bはスポットサイズ変換部IIに
おいて十分に薄くなる。その結果、スポットサイズ変換
部IIにおける光分布の中心は活性層84の中心からズレ
ないでその周辺に均一に広がる。なお、本実施形態にお
いても、第9実施形態と同様に、埋込層89内で、レー
ザ部Iではn型、スポットサイズ変換領域IIではp型に
なるような中間層をn-InP 層89bと第2のp-InP 層8
9cの間に形成してもよい。 {付 記} (1)半導体基板上で利得領域とスポットサイズ変換領
域とに形成され、かつ、該スポットサイズ変換領域では
光のスポットサイズを変化する形状に形成されたストラ
イプ状のコア層と、前記コア層の上と下に形成された第
1及び第2のクラッド層と、前記コア層の両側で前記第
1及び第2のクラッド層の間に形成されたpn接合を有
する埋込層と、前記スポットサイズ変換領域の少なくと
も前記スポットサイズが拡大される端面近傍を除いて前
記埋込層中に形成され、前記第1及び第2のクラッド層
を構成する材料よりもバンドギャップの狭い材料からな
る再結合層とを有することを特徴とする光半導体装置。 (2)前記再結合層は、前記第1のクラッド層寄り又は
前記第2のクラッド層寄りに形成されることを特徴とす
る(1)に記載の光半導体装置。 (3)前記スポットサイズ変換領域において、前記コア
層は前端に向けて膜厚又は幅がテーパ状に小さくなって
いることを特徴とする(1)に記載の光半導体装置。 (4)前記再結合層は、量子井戸層を有する多重量子井
戸構造を有することを特徴とする(1)に記載の光半導
体装置。 (5)前記コア層は量子井戸層を含む多重量子井戸層か
らなり、前記スポットサイズ変換領域で厚さが変化する
ことを特徴とする(1)に記載の光半導体装置。 (6)半導体基板上で利得領域とスポットサイズ変換領
域とに形成され、かつ、該スポットサイズ変換領域では
光のスポットサイズを変化する形状に形成されたストラ
イプ状のコア層と、前記コア層の上と下に形成された第
1及び第2のクラッド層と、前記コア層の両側で前記第
1及び第2のクラッド層の間に形成れたpn接合を有す
る埋込層と、前記第1及び第2のクラッド層を構成する
材料よりもバンドギャップの狭い材料からなり、前記ス
ポットサイズ変換領域において前記活性層と平行な方向
で膜厚又はバンドギャップが変化して前記埋込層に形成
された再結合層とを有することを特徴とする光半導体装
置。 (7)前記再結合層の前記膜厚は、前記利得領域よりも
前記スポットサイズ変換領域で値が小さい、もしくは前
記再結合層の前記バンドギャップは前記利得領域よりも
前記スポットサイズ変換領域で値が大きいことを特徴と
する(6)に記載の光半導体装置。 (8)前記再結合層は、前記第1及び第2クラッド層の
うちの一導電型層と前記埋込層の反対導電型層とに挟ま
れていることを特徴とする(6)に記載の光半導体装
置。 (9)前記再結合層は、前記第1及び第2クラッド層の
うちの第1導電型層と前記埋込層の第1導電型層とに挟
まれていることを特徴とする(6)に記載の光半導体装
置。 (10)前記再結合層は、量子効果の生じる厚さ以下の
層が少なくとも一層有することを特徴とする(6)に記
載の光半導体装置。 (11)前記再結合層は、前記第1及び第2のクラッド
層と同一材料からなる障壁層と、該障壁層よりもバンド
ギャップが狭い井戸層とを有する多重量子井戸構造を有
していることを特徴とする(6)に記載の光半導体装
置。 (12)活性層を含む多層構造を第1のクラッド層の上
に形成する工程と、前記多層構造の上にストライプ状の
第1マスクパターンを形成し、該第1マスクパターンに
覆われない部分の前記多層構造をエッチングして、光閉
じ込めを大きくする第1領域と光閉じ込めを小さくする
第2領域を有するストライプ状のメサ部を形成する工程
と、前記メサ部のうち前記第1領域において前記メサ部
の両側面から離れた領域に第2マスクパターンと第3マ
スクパターンを前記半導体基板の上に配置する工程と、
前記第1〜第3マスクパターンに覆われない領域に、前
記第1のクラッド層よりもバンドギャップが狭い再結合
層を含み且つ前記第2の領域のうち前記第1領域に隣接
しない側の端部で膜厚が薄くなる層を含む多層構造の埋
め込み層を形成する工程と、前記第1〜第3マスクパタ
ーンを除去した後に、前記メサ部と前記埋込層の上に第
2のクラッド層を形成する工程とを有することを特徴と
する光半導体装置の製造方法。 (13)前記再結合層は、塩素を含むガスを導入した雰
囲気中で成長されることを特徴とする(12)に記載の
光半導体装置の製造方法。 (14)前記埋込層を形成する際に、前記再結合層の成
長圧力はその他の層の成長圧力よりも高いことを特徴と
する(12)又は(13)に記載の光半導体装置の製造
方法。 (15)基板側の一導電型クラッド層と、前記一導電型
クラッド層の上に形成された半導体からなるコア層と、
前記コア層の上に形成された反対導電型クラッド層と、
元素組成、不純物濃度、膜厚の少なくとも1つが光導波
方向に沿って連続的に変化し、かつ前記コア層の両側領
域に形成された埋込構造とを有することを特徴とする光
半導体装置。 (16)前記埋込構造はn型層とp型層を有し、前記n
型層又は前記p型層のうち少なくとも一方の厚さが光り
の導波方向に変化していることを特徴とする(15)に
記載の光半導体装置。 (17)前記コア層の膜厚または幅を前記光導波方向に
薄くまたは狭く変化させたスポットサイズ変換領域と、
前記コア層の膜厚または幅を前記光導波方向に実質的に
変化させない利得領域とを有することを特徴とする(1
5)に記載の光半導体装置。 (18)前記埋込構造はn型層とp型層を有し、前記ス
ポットサイズ変換領域においては、前記利得領域よりも
前記n型層と前記コア層との距離が広がっていることを
特徴とする(17)に記載の光半導体装置。 (19)前記n型層と前記n型層が前記利得領域よりも
前記スポットサイズ変換領域の方が厚く形成される場合
に、前記p型層の膜厚の増加の割合が前記n型層の膜厚
の増加の割合よりも大きいことを特徴とする(17)に
記載の光半導体装置。 (20)前記一導電型クラッド層がp型クラッド層の場
合に、前記埋込構造中のn型層の膜厚は、前記利得領域
よりも前記スポットサイズ変換領域の方が薄く形成され
ることを特徴とする(17)に記載の光半導体装置。 (21)前記埋込構造はn型層とp型層を有し、前記n
型層の不純物濃度は、前記利得領域よりも前記スポット
サイズ変換領域の方が低く形成されることを特徴とする
(17)に記載の光半導体装置。 (22)前記埋込構造は、光導波方向で一導電型層から
反対導電型層に変化する層を有することを特徴とする
(15)に記載の光半導体装置。 (23)半導体基板上に活性層と上側クラッド層を形成
する工程と、 前記活性層から前記半導体基板の上部ま
での一部をエッチングすることによりストライプ状のメ
サ部を形成する工程と、前記メサ部の上の第1の領域
と、前記メサ部の両側方に離れた前記半導体基板の上で
あって前記メサ部の延びる方向に形状が変化する形状の
第2、第3の領域とを誘電体マスクで覆った状態で、前
記第1〜第3の領域を除く前記半導体基板の上に、層
数、層厚、元素組成、不純物濃度のうち少なくとも1つ
を光の進行方向に沿って連続的に変化させる埋込構造を
形成する工程とを有することを特徴とする光半導体装置
の製造方法。 (24)前記埋込構造の成長方法としてMOVPE法を
用い、前記埋込構造を構成するn型層を形成する際に不
純物の原料としてシランを用いることを特徴とする(2
3)に記載の光半導体装置の製造方法。 (25)前記埋込構造の成長において、圧力を変化させ
ることを特徴とする(23)に記載の光半導体装置の製
造方法。
【0119】
【発明の効果】以上述べたように第1の発明によれば、
埋込型光半導体装置において利得領域(レーザ領域)と
スポットサイズ変換領域に形成されたコア層(活性層)
の両側方において、利得領域または利得領域からスポッ
トサイズ変換領域の前端近傍を除いた領域に、バンドギ
ャップが小さい再結合層を形成したので、光スポットサ
イズが拡大する部分での再結合層による吸収が回避さ
れ、スポットサイズ変換器の損失を小さくし、閾値電流
の上昇や効率の低下を防止することができる。
【0120】第2の発明によれば、コア層(活性層)の
両側に形成される再結合層のうち、スポットサイズ変換
領域の端部での膜厚を利得領域での膜厚に比べて薄く形
成したので、光スポットサイズが拡大する部分での再結
合層による吸収を少なくし、スポットサイズ変換器の損
失を小さくし、閾値電流の上昇や効率の低下を抑制でき
る。
【0121】第3の発明によれば、コア層(活性層)と
埋込構造のn型層との距離について、利得領域では狭
く、スポットサイズ変換領域では広くするようにしたの
で、スポットサイズ変換領域では、光強度の中心はコア
層の中心に重ね、真円に近くすることができる。これと
同時に、利得領域では、コア層とn型層の間隔が小さく
なるために、電流狭窄効果が高くなって電流を効率よく
活性層に注入することができる。従って、良好な電流−
光出力特性を持ち、かつ、素子と光ファイバとの結合損
失が小さく、優れた素子を得ることができる。
【0122】また、第3の発明によれば、埋込構造中の
n型層の不純物濃度をスポットサイズ変換領域では低く
し、利得領域では高くしているので、スポットサイズ変
換領域でのn型層の屈折率を小さくして光分布を良好に
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術に係るテーパ導波路レーザの側断面図
である。
【図2】従来技術に係るテーパ導波路レーザの製造工程
を示す斜視図(その1)である。
【図3】従来技術に係るテーパ導波路レーザの製造工程
を示す斜視図(その2)である。
【図4】従来技術に係る第1のテーパ導波路レーザの光
進行方向に垂直な断面図である。
【図5】従来技術に係る第2のテーパ導波路レーザの光
進行方向に垂直な断面図である。
【図6】従来のDCPBHレーザの断面図である。
【図7】従来の埋込型半導体レーザの断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る光半導体素子の製
造工程を示す斜視図(その1)である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る光半導体素子の製
造工程を示す斜視図(その2)である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る光半導体素子の
斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る光半導体素子を
示す断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る光半導体素子の
製造工程を示す斜視図(その1)である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る光半導体素子の
製造工程を示す斜視図(その2)である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る光半導体素子の
斜視図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係る光半導体素子の
斜視図である。
【図16】本発明の第5実施形態に係る光半導体素子を
示す断面図である。
【図17】本発明の第6実施形態に係る第1の光半導体
増幅素子を示す斜視図である。
【図18】本発明の第6実施形態に係る第2の光半導体
増幅素子を示す斜視図である。
【図19】本発明の第7実施形態に係る光半導体素子の
製造工程を示す斜視図である。
【図20】本発明の第7実施形態における結晶成長工程
で用いるマスクと基板との配置関係を示す平面図であ
る。
【図21】本発明の第7実施形態に係る光半導体素子の
斜視図である。
【図22】本発明の第7実施形態に係る光半導体素子の
断面図である。
【図23】本発明の第9実施形態に係る光半導体素子の
断面図である。
【図24】本発明の第10実施形態に係る光半導体素子
の製造工程を示す斜視図である。
【図25】本発明の第10実施形態における結晶成長工
程で用いるマスクと基板との配置関係を示す平面図であ
る。
【図26】本発明の第10実施形態に係る光半導体素子
の斜視図である。
【図27】本発明の第10実施形態に係る光半導体素子
の断面図である。
【符号の説明】
I…レーザ部、II…スポットサイズ変換部、1…n-In
P 基板、2…バッファ層、3…活性層、4…p-InP 層、
5…メサ部、6…再結合層、7…p-InP 層、8…n-InP
層、9…p-InP 層、10…n-InP 層、11…コンタクト
層、12…p側で、13…n側電極、17…再結合層、
21…p-InP 基板、22…p-InP 層、23…活性層、2
4…n-InP クラッド層、25…メサ部、26…n-InP
層、27…p-InP 層、28…再結合層、29…n-InP ク
ラッド層、30…コンタクト層、31…n側電極、32
…p側電極、37…再結合層、41…n-InP 基板、42
…n-InP バッファ層、43…活性層、44…p-InP クラ
ッド層、45a〜45c…マスクパターン、46a〜4
6c…メサ部、47…再結合層、48…p-InP 層、49
…n-InP 層、50a、50b…p-InP クラッド層、38
…コンタクト層、39…p側電極、40…n側電極、6
1…n-InP 基板、62…n-InP クラッド層、63…誘電
体膜、64…活性層、65…p-InP クラッド層、66a
〜66c…マスクパターン、67a〜67c…メサ部、
68a…p-InP 層、68b…n-InP 層、68c…中間
層、68…埋込層、69…クラッド層、70…コンタク
ト層、71…p側電極、72…n側電極、81…p-InP
基板、82…p-InP クラッド層、83…誘電体膜、84
…活性層、85…n-InP クラッド層、86…誘電体膜、
87…メサ部、88a、88b…マスクパターン、89
a…p-InP 層、89b…n-InP 層、89c…p-InP 層、
89…埋込層、90…n-InP クラッド層、91…コンタ
クト層、92…p側電極、93…n側電極。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤井 卓也 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1番 1号 富士通株式会社内 (72)発明者 小路 元 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1番 1号 富士通株式会社内 Fターム(参考) 5F073 AA22 AA55 AA74 AA87 AA88 BA01 CA12 CB02 CB07 CB09 CB10 CB22 DA05 DA25 EA29

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】半導体基板上で利得領域とスポットサイズ
    変換領域とに形成され、かつ、該スポットサイズ変換領
    域では光のスポットサイズを変化する形状に形成された
    ストライプ状のコア層と、 前記コア層の上と下に形成された第1及び第2のクラッ
    ド層と、 前記コア層の両側で前記第1及び第2のクラッド層の間
    に形成されたpn接合を有する埋込層と、 前記スポットサイズ変換領域の少なくとも前記スポット
    サイズが拡大される端面近傍を除いて前記埋込層中に形
    成され、前記第1及び第2のクラッド層を構成する材料
    よりもバンドギャップの狭い材料からなる再結合層とを
    有することを特徴とする光半導体装置。
  2. 【請求項2】半導体基板上で利得領域とスポットサイズ
    変換領域とに形成され、かつ、該スポットサイズ変換領
    域では光のスポットサイズを変化する形状に形成された
    ストライプ状のコア層と、 前記コア層の上と下に形成された第1及び第2のクラッ
    ド層と、 前記コア層の両側で前記第1及び第2のクラッド層の間
    に形成れたpn接合を有する埋込層と、 前記第1及び第2のクラッド層を構成する材料よりもバ
    ンドギャップの狭い材料からなり、前記スポットサイズ
    変換領域において前記活性層と平行な方向で膜厚又はバ
    ンドギャップが変化して前記埋込層に形成された再結合
    層とを有することを特徴とする光半導体装置。
  3. 【請求項3】前記再結合層の前記膜厚は、前記利得領域
    よりも前記スポットサイズ変換領域で値が小さい、もし
    くは前記再結合層の前記バンドギャップは前記利得領域
    よりも前記スポットサイズ変換領域で値が大きいことを
    特徴とする請求項2に記載の光半導体装置。
  4. 【請求項4】前記再結合層は、量子効果の生じる厚さ以
    下の層が少なくとも一層有することを特徴とする請求項
    2に記載の光半導体装置。
  5. 【請求項5】活性層を含む多層構造を第1のクラッド層
    の上に形成する工程と、 前記多層構造の上にストライプ状の第1マスクパターン
    を形成し、該第1マスクパターンに覆われない部分の前
    記多層構造をエッチングして、光閉じ込めを大きくする
    第1領域と光閉じ込めを小さくする第2領域を有するス
    トライプ状のメサ部を形成する工程と、 前記メサ部のうち前記第1領域において前記メサ部の両
    側面から離れた領域に第2マスクパターンと第3マスク
    パターンを前記半導体基板の上に配置する工程と、 前記第1〜第3マスクパターンに覆われない領域に、前
    記第1のクラッド層よりもバンドギャップが狭い再結合
    層を含み且つ前記第2の領域のうち前記第1領域に隣接
    しない側の端部で膜厚が薄くなる層を含む多層構造の埋
    め込み層を形成する工程と、 前記第1〜第3マスクパターンを除去した後に、前記メ
    サ部と前記埋込層の上に第2のクラッド層を形成する工
    程とを有することを特徴とする光半導体装置の製造方
    法。
  6. 【請求項6】基板側の一導電型クラッド層と、 前記一導電型クラッド層の上に形成された半導体からな
    るコア層と、 前記コア層の上に形成された反対導電型クラッド層と、 元素組成、不純物濃度、膜厚の少なくとも1つが光導波
    方向に沿って連続的に変化し、かつ前記コア層の両側領
    域に形成された埋込構造とを有することを特徴とする光
    半導体装置。
  7. 【請求項7】前記コア層の膜厚または幅を前記光導波方
    向に薄くまたは狭く変化させたスポットサイズ変換領域
    と、前記コア層の膜厚または幅を前記光導波方向に実質
    的に変化させない利得領域とを有することを特徴とする
    請求項6に記載の光半導体装置。
  8. 【請求項8】前記埋込構造はn型層とp型層を有し、 前記スポットサイズ変換領域においては、前記利得領域
    よりも前記n型層と前記コア層との距離が広がっている
    ことを特徴とする請求項7に記載の光半導体装置。
  9. 【請求項9】前記n型層と前記n型層が前記利得領域よ
    りも前記スポットサイズ変換領域の方が厚く形成される
    場合に、前記p型層の膜厚の増加の割合が前記n型層の
    膜厚の増加の割合よりも大きいことを特徴とする請求項
    7に記載の光半導体装置。
  10. 【請求項10】前記埋込構造はn型層とp型層を有し、 前記n型層の不純物濃度は、前記利得領域よりも前記ス
    ポットサイズ変換領域の方が低く形成されることを特徴
    とする請求項7に記載の光半導体装置。
  11. 【請求項11】前記埋込構造は、光導波方向で一導電型
    層から反対導電型層に変化する層を有することを特徴と
    する請求項6に記載の光半導体装置。
  12. 【請求項12】半導体基板上に活性層と上側クラッド層
    を形成する工程と、 前記活性層から前記半導体基板の上部までの一部をエッ
    チングすることによりストライプ状のメサ部を形成する
    工程と、 前記メサ部の上の第1の領域と、前記メサ部の両側方に
    離れた前記半導体基板の上であって前記メサ部の延びる
    方向に形状が変化する形状の第2、第3の領域とを誘電
    体マスクで覆った状態で、前記第1〜第3の領域を除く
    前記半導体基板の上に、層数、層厚、元素組成、不純物
    濃度のうち少なくとも1つを光の進行方向に沿って連続
    的に変化させる埋込構造を形成する工程とを有すること
    を特徴とする光半導体装置の製造方法。
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