JP2001102657A - 積層薄膜機能素子、磁気抵抗効果素子、磁気再生ヘッド、および磁気再生装置 - Google Patents

積層薄膜機能素子、磁気抵抗効果素子、磁気再生ヘッド、および磁気再生装置

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JP2001102657A
JP2001102657A JP28067099A JP28067099A JP2001102657A JP 2001102657 A JP2001102657 A JP 2001102657A JP 28067099 A JP28067099 A JP 28067099A JP 28067099 A JP28067099 A JP 28067099A JP 2001102657 A JP2001102657 A JP 2001102657A
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Hiroshi Tomita
宏 富田
Yuzo Kamiguchi
裕三 上口
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Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 上下のfcc強磁性層とのミスフィットを低
減し、原子レベルの平坦性や十分なヘテロエピタクシー
を実現し、MR特性を向上させた積層薄膜機能素子およ
び磁気抵抗効果素子を提供する。 【解決手段】 該構造の電子反射・絶縁層に関し、優先
配向面の表面格子の陰イオン副格子が0.29nm以下
の材料12{Be系酸化物、酸化アルミニウム、窒化硼
素等}を用いることで上下のfcc(111)優先配向
・遷移金属合金層11とのミスフィットを10%以下に
低減し、優れた平坦性とヘテロエピタクシーを得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気記録や光磁気記
録等のデータ記録再生機器に用いられる読み取り用ヘッ
ドに用いる磁性膜に関する。
【0002】
【従来の技術】極薄絶縁層(Nano−Insulat
or−layer;NIL)を用いたスペキュラー形ス
ピンバルブではNIL自身のスペキュラー反射率の向
上、NIL層上下の磁気的結合の維持・強化、ヘテロエ
ピタクシーの維持(下地の良好なモフォロジーや配向性
の維持)が要求されている。
【0003】スペキュラー反射率の向上はMR率エンハ
ンスに寄与する。上下の磁気的結合の維持はピン層の異
方性磁場Huaをはじめとした磁気的諸量を良好に保
つ。ヘテロエピタクシーの維持は磁性層の保磁力劣化の
回避やフリー層の層間結合の磁場Hinを低減させる。
【0004】このような良好な特性を発揮するNILに
は、原子レベルの平坦性と良好なエピタクシー成長が必
要である。
【0005】NIL成長の下地となる現行の下地強磁性
層はfcc−Coやfcc−CoFe、fcc−Niな
どの材料を用い、基板面に対して(111)優先配向さ
せたものを用いている。これは、軟磁性や対称性の観点
から最適な結晶面である。
【0006】しかし、現状では、両者の配向面の格子定
数のミスマッチが大きく、良好で広い範囲で一様なエピ
タクシー成長の妨げとなっている。ミスマッチが大であ
ると、極薄層の成長でも平面格子の整合が得られず、非
整合が生じる。
【0007】代表的なCoO,NiO,FeOの格子定
数、及び、(111)面の陰イオン副格子である酸素副
格子の酸素間距離を表1に示した。fcc−Co,fc
c−Feの格子定数も合わせて示した。格子定数のミス
マッチは両者の(111)面の面格子のミスマッチに反
映する。
【0008】以下では3d遷移金属をTMで表し、一般
の金属をMで表す。
【0009】従来NIL層として用いているTM−Oの
格子定数は4.2−4.3Å程度で、下地TM合金層に
対してミスマッチが大きく(例えば、fcc−Coに対
してCo−Oは約20%大きい)、良好なヘテロエピタ
クシーと平坦性が得られない。このため、スペキュラリ
ティの劣化、上下の磁気的結合の不足や分散の拡大が生
じ、さらに、上部磁性層磁気特性の劣化や、非MR起因
のdiffusive散乱を増加させている。しかし、
TM−O以外の自然の代表的なNaCl形M−Oも格子
定数は同程度であり、これらを適用してもミスマッチ改
善効果は小さい。
【0010】このようなミスマッチを低減し、優れた電
子反射効果によりスペキュラー形スピンバルブの特性を
改善することが切望されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】NILの格子定数を制
御してミスマッチ改善等を計ることは良好なヘテロエピ
タクシーを得る方策であると共に、スペキュラー層の平
坦化を促進し、スペキュラー反射率を向上させる。
【0012】しかし、現状NIL層は、fcc−TMと
の格子ミスマッチが小さくない。これはCo−O,Ni
−O,Fe−O全てで共通である。これは極薄層とは言
え、良好なヘテロエピタクシーにとっては不利である。
これらの格子定数については表1に示した。
【0013】TM−OではバルクでOの欠損とそれに伴
うTMの3+化が存在するが、イオン半径の観点からよ
り厳しい現行ヘテロエピタクシーでは、Oの欠損がさら
に危惧される。これらは従来技術で述べた各要素に対し
てデメリットであると考えられる。
【0014】そこで、十分な絶縁性を有し、fcc遷移
金属合金磁性層との格子ミスマッチを従来TM−Oより
小さくすることが、良好な極薄絶縁層(NIL)の実
現、及びこれを用いた良好なスペキュラー反射効果を示
すスピンバルブ膜実現の課題となっている。
【0015】
【課題を解決するための手段】NILとして、NaCl
形に代表される従来の立方晶系の枠を越え、六方晶系等
も視野に入れ、新たにfcc−TMに対して格子ミスマ
ッチの小さい絶縁材料を課題解決の手段とする。fcc
−TM−Oで安定に実現できるのは0.29nmを越え
る平面格子であり、本発明では0.29nm以下の平面
三角格子を有する極薄絶縁層を有する積層構造を問題解
決の手段とする。
【0016】NIL用材料に関する発明者の検討の結果
判った、NILに好適な絶縁材料の結晶構造について述
べる。
【0017】絶縁材料は一般にイオン性結合、あるいは
共有性結合によって構成されている。イオン性結合の場
合、該極薄絶縁層の平面三角格子は陰イオンまたは陽イ
オンの副格子の平面三角格子であり、発明者の検討によ
れば本発明の極薄絶縁層NILにとっては、特に、陰イ
オンの副格子が重要である。これは、イオン性結合中に
おいて陰イオンが陽イオンに比較して圧倒的に大きなイ
オン半径を有する点、金属表面に対する堆積・吸着時
に、該金属表面との相互作用において一般に陽イオンよ
りも陰イオンの方が主要な役割を担う点による。すなわ
ち、陰イオンの副格子が0.29nm以下の平面三角格
子を有する極薄絶縁層を有する積層構造が問題解決の手
段として重要である。
【0018】さらに、発明者の検討によれば、陰イオン
副格子をはじめとする該平面三角格子は、その副格子の
最密充填面であることがNILとしてより望ましい。一
般に最密充填面はエピタクシー成長が容易、すなわち良
好な電子反射をもたらすNILの作製が容易である。ま
た、スペキュラー電子反射の散乱能の観点からも、より
疎な他の面よりも優れている。
【0019】最密充填では無い面が優先配向面である場
合、同じ散乱能を得るためにより深い領域の原子からの
散乱も必要であり、ユニットセル程度の深さ方向の範囲
で比較考慮しなければ、最密充填面に迫る反射は得られ
ない。これは1から2モノレイヤー程度の極薄絶縁層に
よる界面の反射を利用するスペキュラー反射形スピンバ
ルブとしては短所となる。あるいは最密充填面に対し
て、膜面が零ではないある角度を有する場合はステップ
等による乱れが生じる恐れがある。このように、最密充
填面以外については最適な面配置とは言えない。
【0020】陰イオンの副格子が該陰イオンの実質的な
最密充填面で三角格子を示す面に平行な面としては、N
aCl形立方晶の(111)面、六方晶系材料のいわゆ
るc面などが挙げられる。
【0021】例えば、現行のNILでは、NiO,Co
O,Fe−O(Fe...)等が検討されてい
る。その代表的材料はNaCl形の結晶構造を有する。
NaCl形NIL材料の場合、下地fccの(111)
面に対して(111)配向することが、上述のように、
平坦性、エピタクシー性の観点から適している。
【0022】本発明の構成の概念図を図1に示す。
「{窒素、酸素、フッ素、塩素、硫黄}から選ばれる少
なくとも1種以上の陰イオン元素を含む化合物層であっ
て、膜面に平行に陰イオン副格子の最密充填面が存在す
る極薄絶縁層」12と「Fe,Co,Niの少なくとも
1種を含むfcc強磁性層」11が接する構造が基本要
素であって、より一般的には極薄絶縁層12の上下に強
磁性層11が接する構造を取る。この上下の強磁性層1
1はそれぞれ別の組成より成る材料で良い。さらに、極
薄絶縁層12は、該最密充填面の陰イオン副格子の距離
が0.29nm以下であること望ましい。強磁性層11
はfcc構造であり、かつ膜面に平行に(111)優先
配向していることが望ましい。
【0023】以下に手段を具体的に示す。
【0024】fcc金属に対してNaCl形のイオン性
結晶は構造上も類似しており、主要な各指数面での対応
も良い。しかし、本発明分野のスペキュラー形スピンバ
ルブ素子において専ら利用されるfcc金属(111)
面は平面格子が3角格子であり、六方晶系のいわゆるc
面等も対称性の観点から適している。さらに、発明者の
検討によれば、格子ミスフィットの観点からは、後述す
るように、非立方晶系の方に、従来の立方晶系遷移金属
酸化物よりも小ミスフィットを実現できる材料が存在す
る。
【0025】発明者が見出した手法として、立方晶系新
材料、非立方晶系の酸化物、非立方晶系の非酸化物、の
3系統を順に述べる。
【0026】立方晶系新材料について述べる。一般に2
−を取る酸素イオンのイオン半径は0.14nm前後と
非常に大きい。このため、0.12−0.13nm程度
の原子半径を取る3d遷移金属元素のfcc構造と格子
定数をマッチさせるのは本質的に難しい。立方晶系の酸
化物を考える場合のポイントの一つは、結晶構造が維持
される範囲で、出来るだけ陽イオン側の半径を小さくす
ることである。NaCl形の場合、電気的中性の点か
ら、2+のイオンが適当であり、実用的に格子縮小、す
なわちfcc−TMとのミスフィット低減に有効なのは
ベリリウムである。この手法で0.29nm以下の平面
3角格子を実現できる。よって、ベリリウム置換のNa
Cl形TM−Be−O材料を問題解決の1手法とする。
【0027】また、cubic−BNも0.29nm以
下の平面三角格子を実現できる材料である。cubic
−BNは閃亜鉛構造の立方晶であり、(111)面の陰
イオンまたは陽イオンの三角格子は約0.255nmで
ある。これは非酸化物系の立方晶系新材料である。
【0028】続いて非立方晶系酸化物について述べる。
NaCl形立方晶は空間の対称性が高く、陰イオンから
見たときの陽イオンの配位は等方性が高い。この場合、
一般に陰イオン半径もほぼ等方的になっていると考えら
れる。一方、六方晶系等の非立方晶系を考えた場合、陽
イオンの配置に偏りがあり、一般に一軸的な異方性が高
い。このため陰イオン半径も実質的に方向によって異な
る場合が多いと考えられる。この結果、適当な材料を選
ぶことで、目的とするc面で陰イオン間距離を比較的短
縮させることが可能になり、酸素イオンを有する絶縁材
料のfcc−TMに対する格子ミスフィットを低減する
ことが可能になる。具体的には、α−Alに代表
されるアルミニウム酸化物であり、アルミニウム酸化
物、及び、アルミニウムの一部をFe,Co,Ni等の
遷移金属で置換したTM−Al−Oで0.29nm以下
の平面3角格子を実現できる。よって、Al−O、及
び、TM−Al−Oを問題解決の1手法とする。また、
ウルツ鉱形のベリリウム酸化物、ベリリアも絶縁性が良
好で0.29nm以下の平面3角格子がc面で得られ
る。よって、ベリリアを問題解決の1手法とする。
【0029】さらに、非立方晶系の非酸化物について述
べる。良好な絶縁性と上述のfcc−TMに対する格子
ミスフィットが小さければ、極薄絶縁層としてII−V
I族化合物以外でも良い。検討の結果、発明者はIII
−V族系の六方晶系のh−BNが最適であることを見出
した。これにより、十分な絶縁性と0.29nm以下の
平面3角格子が実現できる。特に、ミスフィットに関し
ては、h−BNは、fcc−Coにほぼ等しい0.25
0−0.251nmの平面格子を有し、実質的にミスフ
ィットを無視できる。よって、BとNを主要な構成要素
とする化合物を問題解決の1手法とする。なお、h−B
Nは前述の立方晶系新材料で挙げたc−BNと同組成の
材料である。結晶構造が違っても副格子がほぼ同じであ
るため、B−N系に関しては、立方晶系、六方晶系のど
ちらか一方の単相でなくても極薄絶縁層として一定の効
果が期待できる。
【0030】
【発明の実施の形態】実施の形態として、立方晶系新材
料、非立方晶系の酸化物、非酸化物の窒化ボロン、の3
系統を順に詳細に述べる。
【0031】第1に、立方晶系酸化物の系統であるベリ
リウム置換のNaCl形TM−Be−O材料を極薄絶縁
層としてスピンバルブ膜に適用した本発明の実施の形態
を示す。
【0032】NaCl構造の酸化物M−Oは自然には一
般に2価のMである必要がある。但し、これは十分条件
ではなく、イオン半径の観点からも適当な範囲の場合に
NaCl構造を取る。
【0033】自然の代表的NaCl形M−Oは、Co−
O等を始め、みな格子定数がfcc−TMに比較して、
0.6−0.9Å大きい。これらは表1に示した。例え
ば、fcc−Coに対してCo−Oは約20%大きい。
現状はどちらも(111)面配向が主流と考えられ、実
際に適用されているので、この比はそのまま(111)
面の三角格子の比に反映する。積層構造がそれぞれ薄い
とは言え、これは良い対応とは言えない。
【0034】代表的NaCl形酸化物の格子定数が皆f
cc−TMより大であるということは、TM−O以外の
NaCl形の酸化物を適用してもミスマッチ改善効果が
得られないことを意味する。
【0035】そこで、その他の元素で適用可能な元素を
検討・実験し、発明者等は、置換元素としてBeが適す
ることを見出した。Beは2価をとる。また、Be2+
のイオン半径は約0.3Åである。本解決手法は、現行
TM−O等のTMの一部をBe置換することで課題を解
決するものである。
【0036】発明者の種々の検討によって、TM−Be
−O系の格子定数は概略、イオン半径+Vegard則
で把握できることが妥当であることが確認された。例え
ば、TMがCoの場合、格子定数aは(Co1−αBe
α)Oにおいて、おおよそ、a≒4.24−0.82α
で表すことが出来る。
【0037】同様に、TM=Feではa≒4.28−
0.86α、TM=Niではa≒4.18−0.76
α、TMの変わりにメタルMとしてMgを用いたMg−
Be−O系ではa≒4.10−0.70αとなる。
【0038】このように、αが大きいほどfcc−TM
に格子定数は近づくが、大きくなりすぎると、NaCl
構造が破綻する。fcc−TM(111)とマッチする
面はc面であることに変化はないが、レイヤー間の距離
がNaCl形とwurtzite形では違うので、レイ
ヤーの積層から破綻が生じ始める。この意味で、本特許
のBe置換の有効範囲は半分置換の0.5までが適当で
ある。
【0039】実例としてボトム形スピンバルブに本発明
の積層構造を適用した試料についてその形態と効果を示
す。
【0040】最初に、実施例1から4及び比較例1から
2に共通の積層プロセス部分や評価手法について述べ
る。なお後述するが、その他の実施例や比較例において
も同一の装置で同様の成膜をおこない、積層構造の異な
る試料を作製した。
【0041】試料作製には多元マグネトロンスパッタリ
ング装置、及び真空を破らずに該装置に接続される別体
の酸化/窒化用チャンバを用いた。なお、この装置に
は、さらに、真空を破らずに接続される別体の除害装置
付き単元マグネトロンスパッタリング装置が接続されて
おり、個々の実施例等では必要に応じこれも使用した。
【0042】まず多元マグネトロンスパッタリング装置
中で、熱酸化Si基板上にTaとNiFeの積層より成
る下地層を形成し、続いて反強磁性IrMn層を積層し
た。この上に約2nm厚の第一のfcc遷移金属合金層
を成膜した。
【0043】該fcc遷移金属合金としてはCo90F
e10を用いた。該fcc遷移金属合金層が膜面に平行
に(111)優先配向していることをX線回折で確認し
た。
【0044】以上の構造を本発明実施例1から4、及び
比較例1,2の極薄絶縁層形成前の共通の下部構造とし
た。
【0045】さらに、以下に示す種々の極薄絶縁層形成
後、再び約2nm相当の第2のfcc遷移金属合金層を
成膜した。第1の遷移金属合金層、極薄絶縁層、及び第
2の遷移金属合金層の3層積層部分はスピンバルブ膜に
おけるピン層を担うものである。
【0046】引き続き、Cuを積層し、その上にさらに
第3の遷移金属合金層を成膜した。これはスピンバルブ
のフリー層を担うものである。最後に極薄のCu酸化層
とTa層を積層した。全てのプロセスは真空を破らずに
連続的に実行した。ここで示した極薄絶縁層の上部構造
は本発明実施例1から4で共通としたが、これは発明の
効果を明確化するための一例に過ぎず、限定されないこ
とは言うまでもない。
【0047】以上のプロセスにより、ピン層とフリー層
の接合部分を極薄絶縁層によるスペキュラー反射層によ
って挟み込んだボトム形スピンバルブ積層構造を得た。
このボトム型スピンバルブ積層構造を本発明の積層構造
の一例として図2に示す。成膜後は必要に応じ、所定の
磁場中熱処理を施した。
【0048】なお、図3は本発明のトップ形スピンバル
ブ積層構造の一例であり、図2のボトム型スピンバルブ
積層構造と同様の手法によって得られるものである。さ
らに、図4は本発明のシンセティック形スピンバルブ積
層構造の一例であり、電子反射・絶縁層とシンセティッ
ク構造を両有する発明者等の積層構造(特願平H09−
111419)の電子反射・絶縁層として、該電子反射
絶縁層の優先配向面の陰イオン副格子が0.29nm以
下の三角格子である材料を用いた場合の一例である。
【0049】膜厚の測定は触針型膜厚計を用いた。各金
属元素の組成分析はICP質量分析法でおこなった。M
R特性は4端子法で測定した。CoとFeの間の組成比
の成膜による変化は小さく、無視できるものであった。
Be組成比を式1のαで纏めた。結晶状態をX線回折で
調べ、fcc−Co90Fe10 の(111)ピーク
強度の相対比較で配向性、平坦性の目安とした。これ
は、NIL自身が一般に1nm程度と薄く、特別な場合
以外は良好な比較に耐えるX線強度が得られないためで
ある。
【0050】実施例1,2,3,4及び比較例1,2の
スピンバルブ積層構造の極薄絶縁層として、Be組成比
を種々変化させたTM−Be−O層を作製した。TM−
Be−O層作製には上述のマグネトロンスパッタリング
装置、及び酸化用チャンバを用い、真空を破らずに作製
した。スパッタリング・ターゲットにはBe組成比を各
種変化させたCo90Fe10−Be焼結ターゲットを
用い、上記の共通の下地構造上へArガス中で所定量を
堆積させた。続いて試料を酸化用チャンバに移し、EC
Rプラズマで励起した酸素ガスをチャンバに導入しCo
−Fe−Be層を酸化させた。さらに、この上に前述の
所定の上部構造を積層した。面内に平行に磁場を印可
し、約270℃で真空中熱処理した。得られた試料の遷
移金属合金層が(111)配向していることをX線回折
で確認した。
【0051】得られた実施例1,2,3,4、比較例
1,2の諸量を表2に示す。なお、ピン層の一方向磁気
異方性磁場Huaは試料に依らず0.5kOe程度でほ
ぼ一定であった。これは、本発明によってピン層と反強
磁性層の相互作用、本NILを介したピン層同士の結合
の双方に悪影響が生じていないことを意味する結果と言
える。
【0052】表2には各試料をBe組成比αの大きい順
に並べた。両端が比較例、中央の4例が実施例である。
このように、Be添加に伴い、膜成長の平坦性や凹凸の
目安であるI(111)は増加した。MR率も増大し
た。しかし、α>0.5ではI(111)とMR率は共
に減少した。
【0053】フリー層の層間結合磁場Hinは凹凸等に
より劣化(増加)すると考えられる量である。フリー層
の保磁力Hcは種々の要素の影響を受ける敏感量であ
り、凹凸等により劣化(増加)する。Hin及びHcは
Be添加量αの増大に伴い減少した。しかし、α>0.
5では増加した。
【0054】以上の実験結果より、適当な範囲のBe添
加でMR率や磁場特性が明確に改善されることが確認さ
れた。これはBe添加によって格子のミスフィットが減
少し、界面のヘテロエピタクシーや平坦性が改善された
ために得られたと考えられる。
【0055】なお、本特許の成膜法は特に限定されな
い。例えば、TMとBeの同時デポ、焼結体合金等のデ
ポ+ドライ酸化/ラジカル酸化、TMとBeのデポ時の
反応性スパッタリングなどで作製することが出来る。ま
た、各種CVDで作製してもよい。TMとBeを時間的
に、あるいは線源として別々に導入しても良い。チャン
バ内で膜堆積前に酸化物を形成し、これを堆積させる方
法でも良い。選択する組成比によっては、Be単体やB
eと式1より選ばれるTM以外のMの組み合わせでこれ
らの手法を採用できるのは当然である。
【0056】第2に、非立方晶系酸化物の系統である酸
化アルミニウム系材料、及び、酸化ベリリウム系材料を
極薄絶縁層としてスピンバルブ膜に適用した本発明の実
施の形態を示す。
【0057】これは、現行の(111)面優先配向のN
aCl形TM−Oをc面優先配向したBe−O系のウル
ツ鉱形結晶、あるいは酸化アルミニウムで置き換えるも
のである。該TM−O(111)面とBe−Oやα−A
のc面はともに酸素イオンの最密充填面に平行
な面であり、類似している。かつ、BeOやα−Al
の面格子の方がNaCl形TM−O(111)面の
面格子より小であり、fcc−TM(111)面とのミ
スマッチは小さい。また、酸化ベリリウム、酸化アルミ
ニウム、共に十分な絶縁性を有し、極薄絶縁層として適
する。
【0058】酸化ベリリウムの安定な化合物としてウル
ツ鉱形のBeOがある。NaCl形ではないが、ウルツ
鉱のC面はBeまたはOの最密充填面の構造をとり、こ
れはNaCl形の(111)面とほぼ等価である。さら
に、c面の陰イオン副格子の間隔が0.270nm程度
であり、(111)面の表面格子が0.250nmから
0.251nm程度であるfcc−Coやfcc−Co
90Fe10に値が近い。よって、BeO自体でもfc
c−TM(111)面とミスフィットの小さい接続は可
能である。従来のNaCl形のCoO,NiO,FeO
の(111)面の陰イオン副格子の間隔は0.297n
mから0.305nm程度であり、本発明では従来で得
られない0.29nm以下のミスフィットの小さい陰イ
オン副格子が提供できる。
【0059】酸化アルミニウムではコランダム形のα−
Alが極薄絶縁層として最も適する。酸化ベリリ
ウムの場合と同様、α−Alのc面が対称性と格
子定数の点から、fcc−TM(111)面とミスフィ
ットの小さい接続に適する。c面の陰イオン副格子の間
隔が0.274nm程度であり、(111)面の表面格
子が0.250nmから0.251nm程度であるfc
c−Coやfcc−Co90Fe10に値が近い。
【0060】酸化アルミニウムは添加元素や欠陥、コン
タミネーションや作製法によってコランダム形ではない
結晶構造を取る場合もあるが、陰イオンである酸素イオ
ンとアルミニウム陽イオンとの距離に格段の変化はな
く、極薄絶縁層としてfcc−TM(111)上に形成
する場合、そのメリットは維持される。
【0061】実施例5のスピンバルブ積層構造の極薄絶
縁層として、Be−O層を作製した。Beターゲットを
用い、別体の単元マグネトロンスパッタリング装置中で
図2に示したボトム形スピンバルブ積層構造共通の下地
構造上へ所定量を堆積させた。スパッタリングガスはA
rとした。続いて試料を酸化用チャンバに移し、ECR
プラズマで励起した酸素ガスをチャンバに導入しBe層
を酸化させ極薄絶縁層26を得た。さらに、この上に前
述の所定の上部構造を積層し、図2に示す積層構造を得
た。
【0062】スピンバルブ積層構造膜全体の要請や除害
の容易性、Be−O層の品質によっては、Be−O層を
CVD等で作製しても良く、作成方法は限定されない。
【0063】実施例6のスピンバルブ積層構造の極薄絶
縁層として、Al−O層を作製した。Alターゲ
ットを用い、多元マグネトロンスパッタリング装置中で
図2に示したボトム形スピンバルブ積層構造共通の下地
構造上へ所定量を堆積させた。スパッタリングガスはA
rとした。続いて試料を酸化用チャンバに移し、ECR
プラズマで励起した酸素ガスをチャンバに導入し、Al
−O層のストイキオメトリー回復のための酸素を供給し
極薄絶縁層26を得た。さらに、この上に前述の所定の
上部構造を積層し、図2に示す積層構造を得た。
【0064】実施例5、実施例6、共に面内に平行に磁
場を印可し、約270℃で1時間真空中熱処理した。得
られた試料の遷移金属合金層が(111)配向している
ことをX線回折で確認した。
【0065】第3に、非酸化物の系統である窒化ホウ素
系材料を極薄絶縁層としてスピンバルブ膜に適用した本
発明の実施の形態を示す。発明者の知見によれば、上下
の遷移金属合金との良好なヘテロエピタクシーと絶縁性
が得られれば、極薄絶縁層は酸化物でなくとも良い。こ
れにより材料の選択の余地が広がるが、絶縁性と格子定
数の観点からこれを満たす材料はほとんど無い。発明者
は独自の検討の結果、h−BNのc面とc−BNの(1
11)面が適すること、特に六方晶系のh−BNが特段
に適することを見出した。
【0066】これは、現行の(111)面優先配向のN
aCl形TM−Oをc面優先配向したh−BN等で置き
換えるものである。h−BNのc面はBとNが交互に並
んだ六角形の網目状の構造を持ち、陰イオン、または陽
イオンの副格子の格子間距離は0.250nm程度であ
る。これはfcc−TM(111)面の表面格子とのミ
スマッチが無視できるほど小さいことを意味する。ま
た、前述のように、c−BNの(111)面配向でも
0.255nmの三角格子が得られ、ミスマッチは十分
小さい。この結果、h−BNとc−BNが峻別できない
混相においても一定の効果が期待される。
【0067】実施例7のスピンバルブ積層構造の極薄絶
縁層として、B−N層を作製した。図2に示したボトム
形スピンバルブ積層構造の共通の下地構造上に別体の単
元マグネトロンスパッタリング装置でh−BNターゲッ
トをArとNの混合ガスでスパッタリング成膜をおこ
ない、続いて試料を別体の窒化用チャンバに移し、EC
Rプラズマで励起した窒素ガスをチャンバに導入しB−
N層に作用させ、極薄絶縁層26を得た。さらに、この
上に前述の所定の上部構造を積層し、図2に示す積層構
造を得た。面内に平行に磁場を印可し、約270℃で真
空中熱処理した。得られた試料の遷移金属合金層が(1
11)配向していることをX線回折で確認した。
【0068】なお、スピンバルブ積層構造膜全体の要請
や品質によっては、B−N層はCVD等で作製しても良
いのは当然であり、例えば、Hをキャリアガスとした
とNHのplasma−CVD等で作製して
も良い。
【0069】実施例5,6,7の諸量を表3に示す。な
お、ピン層の一方向磁気異方性磁場Huaは実施例1か
ら4と同様、試料に依らず0.5kOe程度でほぼ一定
であった。これは、本発明によってピン層と反強磁性層
の相互作用、本NILを介したピン層同士の結合の双方
に悪影響が生じていないことを意味する。
【0070】このように、実施例5,6,7はそれぞれ
比較例1に比較して圧倒的に優れたMR率とHinを示
した。
【0071】さらに、実施例5,6,7及び比較例1の
熱処理時間を倍の20時間に変更して作製したところ、
比較例1ではMR率の5%以上の減少等の劣化が観察さ
れたが、実施例5,6,7では劣化がほとんど観察され
ず、MR率の減少は2%以下であった。特に実施例7で
はMR率の減少は1%以下であった。このように、本発
明の実施例では、耐熱性も向上することが確認された。
これはBN等が安定した結合を有し、遷移金属に対する
拡散や固溶が十分小さいためと考えられる。
【0072】以上の実施例1から7はボトム形スピンバ
ルブ積層構造の実施例である。これら実施例に見られる
ように、ボトム形のピン層に極薄絶縁層を挿入する場
合、該絶縁層の上部構造に直上のピン層上部構造である
fcc強磁性層やフリー層の強磁性層などが存在する。
ピン層上部構造にどのような固着磁場を与えるか、フリ
ー層に如何に優れた軟磁気特性を与えるかは、スピンバ
ルブ特性の中心課題であり、該極薄絶縁層の平坦性やヘ
テロエピタクシーが乱れた場合、この不完全性が直接ピ
ン特性、フリー層磁気特性に大きな影響を与える。以上
の実施例1から7に示したように、本発明の極薄絶縁層
では優れたヘテロエピタクシーや平坦性が実現できるた
め、ボトム形スピンバルブ積層構造の特性改善に非常に
効果的である。
【0073】MR効果のエンハンスには極薄絶縁層の被
覆率やヘテロエピタクシー等に随伴する結晶構造の歪み
や不完全性が特に関係するが、本発明では実施例1から
7で示したように、優れたMR特性を実現しており、ボ
トム形スピンバルブ積層構造への改善効果は明白であ
る。
【0074】本発明の極薄絶縁層はボトム形スピンバル
ブ積層構造のみならず、反強磁性層がトップ側にあるト
ップ形スピンバルブ積層構造や、強磁性層に人為的に反
強磁性的配列をとらせるシンセティック形スピンバルブ
積層構造に関しても無論、有効である。
【0075】図3は、実施例6や実施例7と同じ装置で
同様の手法により作製されたトップ形スピンバルブ積層
構造の一例である。図3の極薄絶縁層39として、実施
例6と同じ手法によりAl−O層を形成した実施例8
と、図3の極薄絶縁層39として、実施例7と同じ手法
によりB−N層を形成した実施例9を作製した。磁場中
熱処理は面内に平行に直流磁場を印可し、270℃で5
時間おこなった。
【0076】トップ形スピンバルブの場合、該極薄絶縁
層39はその下部構造に対するスペキュラー反射効果の
みならず、該極薄絶縁層39の上部に形成される反強磁
性層311の配向性や膜質に特に影響を与える。これは
該極薄絶縁層39の直上に形成されるfcc強磁性層3
10の配向性や膜質を通じて反強磁性層311に極薄絶
縁層39のモフォロジーが影響するためである。実際、
比較例3として、実施例6と同一の積層構造で、極薄絶
縁層39の部位のみ、比較例1と同等のCo90Fe1
0−Oを形成した試料を作製し、ピン層の固着磁場を調
べたところ、実施例8が580エルステッド、実施例9
が620エルステッドであるのに対して比較例3は37
0エルステッドであった。ピン層の固着磁場は反強磁性
層の品質と極薄絶縁層39を介した強磁性層38の磁気
的結合を反映する量であり、このように、トップ形スピ
ンバルブ積層構造でも本発明の極薄絶縁層を用いた積層
構造が優れていることが確認できた。
【0077】図4は、実施例6や実施例7と同じ装置で
同様の手法により作製されたシンセティック形スピンバ
ルブ積層構造の一例である。図4の極薄絶縁層48とし
て、実施例6と同じ手法によりAl−O層を形成した実
施例10と、図4の極薄絶縁層48として、実施例7と
同じ手法によりB−N層を形成した実施例11を作製し
た。磁場中熱処理は面内に平行に直流磁場を印可し、2
70℃で5時間おこなった。
【0078】図4に示すシンセティック形スピンバルブ
の場合、図2のボトム形スピンバルブ積層構造と同様、
該絶縁層の上部構造に直上のピン層上部構造であるfc
c強磁性層やフリー層の強磁性層などが存在する。すな
わち、ボトム形スピンバルブ積層構造と同様、極薄絶縁
層48の平坦性やヘテロエピタクシーがピン特性、フリ
ー層磁気特性に大きな影響を与える。実際、比較例4と
して、実施例10と同一の積層構造で、極薄絶縁層48
の部位のみ、比較例1と同等のCo90Fe10−Oを
形成した試料を作製した。比較例1の極薄絶縁層である
Co90Fe10−Oは格子ミスフィットが約20%と
大きい従来材料である。フリー層の層間結合磁場Hin
を評価したところ、実施例10が7エルステッド前後、
実施例11が4エルステッド前後であるのに対して比較
例4は22エルステッドであった。また、フリー層の保
磁力Hcについては、実施例10が3エルステッド前
後、実施例11が2エルステッド以下であったのに対
し、比較例4は10エルステッド程度であった。
【0079】これらの結果は、シンセティック形スピン
バルブ積層構造において、格子ミスフィットを小さくす
ることがMR素子特性改善に有効であることを示してい
る。
【0080】さらに、比較例5として、実施例10と同
一のシンセティック形スピンバルブ積層構造で、極薄絶
縁層48の部位のみ、比較例2と同等の(Co0.9
.10.42Be0.58−O、すなわち、Co
0.378Fe0.042Be0.58−Oを形成した
試料を作製した。比較例2の極薄絶縁層Co0.37
Fe0.042Be0.58−Oは格子のミスフィット
は約6%と小さいものの良好な(111)エピタキシー
が期待できない材料である。
【0081】フリー層の層間結合磁場Hinを評価した
ところ約40エルステッドの値が得られた。フリー層の
保磁力Hcについては12から15エルステッドの値が
得られた。これらの結果は上述の実施例10及び実施例
11の値に比較して著しく劣る値であった。また、比較
例5ではMR率に関しても実施例10や11の約半分の
値しか得られなかった。
【0082】X線回折でシンセティック形スピンバルブ
構造の比較例5、実施例10、実施例11のfcc遷移
金属の(111)ピークの強度I(111)を評価した
ところ、実施例10の強度を1とした場合に、実施例1
1は同様に約1であったが、比較例5の強度は0.5か
ら0.6程度であった。さらに、実施例10と比較例5
の極薄絶縁層48をTEM観察したところ、実施例10
では観察されたイオン平面三角格子の良好な積層による
エピタクシーが比較例5では観察されなかった。さらに
比較例5では極薄絶縁層48の明瞭な(111)優先配
向も見られなかった。これらの結果は、格子ミスフィッ
トが実施例同様に十分小さくても、比較例5のように、
陰イオン副格子の最密面が膜面に平行に成長しない場合
にはMR素子としての特性が劣化することを示してい
る。
【0083】このように、シンセティック形スピンバル
ブ積層構造でも本発明の極薄絶縁層を用いることで従来
の遷移金属酸化物の絶縁層を用いた場合に比較してMR
素子用積層構造として優れた特性が得られた。これは、
反強磁性層等の、極薄絶縁層からの距離が比較的ある層
でさまざまな構成や変更が生じても、fcc遷移金属合
金層と接する本発明の極薄酸化層、及び該極薄酸化層を
含む積層構造がスペキュラー形スピンバルブ積層構造に
対して有益であることを示す証左と言える。シンセティ
ック形では該極薄絶縁層の下部構造が従来より複雑化す
るため、良好なヘテロエピタクシーと平坦性を実現する
本発明の寄与は特に重要である。
【0084】以上の実験結果より、本発明の極薄絶縁層
であるミスフィットや対称性の観点からより良い整合が
得られる系、具体的にはアルミニウム酸化物、ベリリウ
ム酸化物、窒化硼素では、MR率や磁場特性が明確に改
善されることが確認された。また、極薄絶縁層を介した
磁気的結合は切断されず維持された。これらは格子のミ
スフィットが減少し、界面のヘテロエピタクシーや平坦
性が改善されたために得られたと考えられる。
【0085】本特許はfcc−TM(111)層の途中
に挿入する(スペキュラー反射用)NIL層の積層構造
に関するものである。すなわち、SVヘッド積層構造全
体の形式やSVヘッド積層構造の適用先には特に限定さ
れないものであるが、一例としてヘッド・デバイスへの
加工例と磁気記録装置への適用について述べる。
【0086】実施例12の磁気抵抗効果素子として、ア
ルチック(Al・TiC)基板上に実施例7と同
等の積層構造を作製し微細パターンに加工した。出力特
性を測定したところ、加工劣化が無視でき、従来の比較
例1でアルチック基板上に同様に作製した比較例3の磁
気抵抗効果素子よりも約5割高い出力電圧がセンス電流
によらず得られた。
【0087】本発明の薄膜積層構造は磁気抵抗効果素子
として、例えば、記録再生一体型の磁気ヘッドに組み込
まれ、磁気記録装置に搭載される。図5はこのような磁
気記録装置の概略構成を例示する要部斜視図である。磁
気ディスク51はスピンドル52に装着され、図示しな
い駆動装置部からの制御信号に応答する図示しないモー
ターにより回転する。磁気ディスク51に情報の記録再
生をおこなうヘッドスライダ53は薄膜状のサスペンシ
ョン54の先端に取り付けられている。ここで、ヘッド
スライダ53は、例えば、前述のいずれかの積層構造よ
り成る磁気抵抗効果素子を磁気ヘッドの一部として搭載
している。
【0088】サスペンション54は、図示しない駆動コ
イルを保持するボビン部などを有するアクチュエータア
ーム55の一端に接続されている。アクチュエータアー
ム55の他端にはボイスコイルモータ56が設けられて
いる。
【0089】アクチュエータアーム55は固定軸57の
上下2個所に設けられた図示しないボールベアリングに
よって保持され、ボイスコイルモータ56により回転摺
動が自在に出来るようになっている。本発明によれば、
前述した各実施形態にかかる磁気抵抗効果素子を磁気ヘ
ッドの要部として採用することにより、高記録密度で記
録再生特性が極めて安定したじき黄色く装置を実現でき
る。また、本発明によれば、大きな再生出力信号と良好
な熱安定性とを得ることが出来る。さらに、その結果と
して再生出力の経時変化を低減できる。以上の効果か
ら、挟トラック化、低素子ハイト化が可能となり、高密
度磁気記録に対応した磁気記録装置を実現できる。
【0090】諸材料の格子定数を(表1)に示す。
【表1】 ボトム形スピンバルブ積層構造を有する実施例1,2,
3,4と比較例1,2の評価結果一覧を(表2)に示
す。
【表2】 ここでαは、膜組成式 (M1−αBeα)O1+β
α、I(111)は、XRDの(111)回折ピークの
比較例1に対するピーク相対強度である。mfは該絶縁
物層の格子定数とfcc遷移金属合金層の格子定数との
ミスフィット百分率の計算値である。(絶縁物層の格子
定数/fcc遷移金属合金の格子定数−1)×100で
定義した。
【0091】ボトム形スピンバルブ積層構造を有する実
施例5,6,7の評価結果一覧を(表3)に示す。
【表3】
【0092】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
磁気抵抗効果素子に代表される積層薄膜機能デバイスに
おいて、遷移金属合金層に対してスペキュラー反射率が
高く、すなわち、ヘテロエピタクシー性と平坦性に優
れ、上下の磁気的結合を阻害せず、かつ、上部構造のモ
フォロジーを劣化させない極薄酸化物層(Nano−O
xide Layer; NIL)を挿入することが出
来る。また、遷移金属合金層と該NILを積層させた構
造を各素子に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層構造の模式図。
【図2】本発明のボトム形スピンバルブ積層構造の一
例。
【図3】本発明のトップ形スピンバルブ積層構造の一
例。
【図4】本発明のシンセティック形スピンバルブ積層構
造の一例。
【図5】本発明を適用した磁気記録装置。
【符号の説明】
NIL 極薄絶縁層(Nano−Insulator
Layer) α 膜組成式 (M1−αBeα)O1+βのα I(111) 遷移金属合金層のXRDのfcc(11
1)回折ピークの比較例1に対するピーク相対強度。 mf 絶縁物層の格子定数とfcc遷移金属合金層の格
子定数とのミスフィット百分率の計算値。 Hin フリー層の層間結合磁場 Hc フリー層の保磁力 11 Fe,Co,Niの少なくとも1種を含むfcc
強磁性層 12 {窒素、酸素、フッ素、塩素、硫黄}から選ばれ
る少なくとも1種以上の陰イオン元素を含む化合物層で
あって、膜面に平行に陰イオン副格子の最密充填面が存
在する極薄絶縁層 21 下地基板 22 Ta下地層 23 NiFe下地層 24 IrMn反強磁性層 25 fcc遷移金属合金層(強磁性層) 26 極薄絶縁層(NIL) 27 fcc遷移金属合金層(強磁性層) 28 非磁性Cu層 29 fcc遷移金属合金層(強磁性層) 210 酸化Cu極薄絶縁層 211 Ta保護層 31 下地基板 32 Ta下地層 33 NiFe下地層 34 極薄絶縁層 35 非磁性Cu層 36 fcc遷移金属合金層(強磁性層) 37 非磁性Cu層 38 fcc遷移金属合金層(強磁性層) 39 極薄絶縁層(NIL) 310 fcc遷移金属合金層(強磁性層) 311 PtMn反強磁性層 312 Ta保護層 41 下地基板 42 Ta下地層 43 Ru層 44 PtMn反強磁性層 45 fcc遷移金属合金層(強磁性層) 46 Ru層 47 fcc遷移金属合金層(強磁性層) 48 極薄絶縁層(NIL) 49 fcc遷移金属合金層(強磁性層) 410 非磁性Cu層 411 fcc遷移金属合金層(強磁性層) 412 極薄絶縁層 413 Ta保護層 51 磁気ディスク 52 スピンドル 53 ヘッドスライダ 54 サスペンション 55 アクチュエータアーム 56 ボイスコイルモータ 57 固定軸

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe,Co,Niの少なくとも1種を含
    む強磁性層、及び、{窒素、酸素、フッ素、塩素、硫
    黄}から選ばれる少なくとも1種以上の陰イオン元素を
    含む化合物層、及び、該強磁性層と該化合物層の界面を
    有し、該化合物層の優先配向面に概略平行に該化合物層
    の陰イオン副格子の最密充填面が存在することを特徴と
    する積層薄膜機能素子。
  2. 【請求項2】 請求項1において、該最密充填面の陰イ
    オン副格子の距離が0.29nm以下であることを特徴
    とする積層薄膜機能素子。
  3. 【請求項3】 請求項2において、該強磁性層が概略f
    cc構造であり、かつ膜面に平行に(111)優先配向
    していることを特徴とする積層薄膜機能素子。
  4. 【請求項4】 請求項3において、該化合物層が主にボ
    ロンと窒素より成る化合物であることを特徴とする積層
    薄膜機能素子。
  5. 【請求項5】 請求項3において、該化合物層が主にア
    ルミニウムと酸素より成る化合物であることを特徴とす
    る積層薄膜機能素子。
  6. 【請求項6】 請求項5において、該化合物層の直上及
    び直下にそれぞれ強磁性層を有し、その2強磁性層の面
    内磁化の方位が常に概略同方向であることを特徴とする
    積層薄膜機能素子。
  7. 【請求項7】 請求項3において、該化合物薄膜層が組
    成式(1)を概略満たすことを特徴とする積層薄膜機能
    素子。 組成式(1):(M1−αα)O1+β ここでMは少なくとも{Mg,Mn,Fe,Ni,C
    o,Ti,Ca,V,Cd}から選ばれる1種以上の元
    素,Aは少なくとも{Be,B}から選ばれる1種以上
    の元素、 また、α,βは 0<α<0.5、−0.5<β<0.
    5を満たす。
  8. 【請求項8】 請求項7において、該化合物層が概略N
    aCl構造であり、かつ膜面に平行に(111)優先配
    向していることを特徴とする積層薄膜機能素子。
  9. 【請求項9】 請求項3において、該化合物層が立方晶
    系の結晶構造を有さないことを特徴とする積層薄膜機能
    素子。
  10. 【請求項10】 請求項8において、該酸化物層の陽イ
    オンが主にBeより成ることを特徴とする積層薄膜機能
    素子。
  11. 【請求項11】 請求項1において、の薄膜積層構造で
    あって、該強磁性層及び該酸化物層の層厚がおのおの1
    0nm以下であることを特徴とする積層薄膜機能素子。
  12. 【請求項12】 請求項1の積層薄膜機能素子を適用し
    たことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  13. 【請求項13】 請求項11記載の磁気抵抗効果素子を
    搭載した磁気再生ヘッド。
  14. 【請求項14】 請求項12記載の磁気再生ヘッドを搭
    載したことを特徴とする磁気再生装置。
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