JP3551196B2 - 磁気抵抗素子の製造方法 - Google Patents

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本発明は、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記録に用いられる磁気ヘッドや、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)に用いられる磁気抵抗素子の製造方法に関する。
強磁性層/非磁性層/強磁性層を基本構成として含む多層膜に非磁性層を横切るように電流を流すと、磁気抵抗効果が得られる。非磁性層としてトンネル絶縁層を用いるとスピントンネル効果が、非磁性層としてCu等の導電性金属層を用いるとCPP(Current Perpendicular to the Plane)GMR効果がそれぞれ得られる。いずれの磁気抵抗効果(MR効果)も非磁性層を挟む強磁性層の磁化相対角の大きさに依存し、前者は両磁性層間に流れるトンネル電子の遷移確率が磁化相対角に応じて変化することに、後者はスピン依存散乱が変化することに、それぞれ由来すると説明されている。
特開平9−023031号公報 特開2000−101164号公報 特開2000−091665号公報
磁気抵抗素子をデバイス化する場合、特にMRAM(磁気ランダムアクセスメモリ)等の磁気メモリに用いる場合には、従来のSi半導体とモノリシック化することが、コスト、集積度等の観点から、必要となる。
Si半導体プロセスでは、配線欠陥を取り除くために、高温で熱処理が行われる。この熱処理は、例えば400℃〜450℃程度の温度で水素中において行われる。しかし、磁気抵抗素子は、300℃〜350℃以上の熱処理を行うと、MR特性が劣化する。
半導体素子の形成後に磁気抵抗素子を作り込むことも提案されている。しかし、この提案に従うと、磁気抵抗素子に対して磁界を加えるための配線等を、磁気抵抗素子作製後に形成しなくてはならない。このため、やはり熱処理を行わないと、配線抵抗にバラツキが生じ、素子の信頼性や安定性が低下する。
本発明に係る磁気抵抗素子の製造方法は、
基板と基板上に形成された多層膜を含み、多層膜が一対の強磁性層と一対の強磁性層の間に挟持された非磁性層とを含み、一対の強磁性層における磁化方向がなす相対角度により抵抗値が異なる磁気抵抗素子の製造方法であって、
基板上に、強磁性層および非磁性層を除く多層膜の一部を下地膜として形成する工程と、
下地膜を400℃以上で熱処理する工程と、
下地膜の表面にイオンビームを照射して表面の粗さを低減する工程と、
表面上に、強磁性層および非磁性層を含む多層膜の残部を形成する工程と、
基板および多層膜を330℃以上で熱処理する工程と、を含む。
イオンビームを下地膜の表面への入射角が5°以上25°以下となるように照射することが好ましい。また、多層膜の一部として下部電極および上部電極を形成し、下部電極が下地膜に含まれることも好ましい
本発明によれば、高温で熱処理しても、信頼性および安定性が低下しにくい磁気抵抗素子を提供できる。
実験により確認されたところによると、高温での熱処理に伴って非磁性層の界面の平坦性は低下し、この平坦性と素子のMR特性とには相関関係が存在する。そこで、非磁性層の下地となる膜の処理および/または上記界面近傍における組成の調整により、熱処理後における非磁性層の界面を平坦化したところ、素子のMR特性も向上した。
非磁性層の界面の「荒れ」のうち、MR特性への影響が大きいのは、周期が比較的短い「荒れ」である。図1(a)に示したように、強磁性層13,15と非磁性層14との界面21,22には、大きな曲率半径Rにより表示できる「うねり」が存在することがある。しかし、このようにピッチの長い「うねり」はMR特性にそれほど影響しない。素子のMR特性との関係をより明確に把握するためには、長さ50nm程度の範囲での界面の状態を評価することが望ましい。
図1(b)に示したように、本明細書では、MR特性との関係を把握するために、非磁性層14を厚さ方向に等分に分割するように定めた中心線10を基準線として用いることとした。この方法によれば、2つの界面21,22の状態を同時に評価することができる。中心線10は、詳しくは、最小自乗法に基づいて定めることができる。この方法では、図1(c)に拡大して示したように、中心線10上の点Piと、この点を通るように定めた中心線10に対する垂線20と界面21との交点Qiとの距離PiQi、点Piと同様にして定めた界面22との交点Riとの距離PiRiとを考慮する。そして、これらの距離の2乗の和が等しくなる条件(∫(PiQi)2dx=∫(PiRi)2dx)の下で、∫(PiQi)2dxが最小になるように中心線10が定められる。
こうして中心線10を定めると、これに応じて、中心線10と界面21,22との間の最長距離Lが求まる。本明細書では、測定誤差をできるだけ排除するために、任意に定めた10本の中心線についてそれぞれ10個の最長距離Lを定め、最大および最小の値(Lmax,Lmin)を除く8個の最長距離Lについて、平均値を算出し、この平均値を評価の尺度R1とした。
上記測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面像に基づいて行うとよい。簡易的な評価は、非磁性層までで成膜を中止したモデル膜を減圧雰囲気中でその場(in-situ)熱処理し、そのままの状態を保ちつつ原子間力顕微鏡(AFM)により表面形状を観察することにより行うこともできる。
なお、検討した範囲では、上記R1による評価が、MR特性と非磁性層の平坦性との関係を把握するには最も適切である。ただし、界面の最小曲率半径に基づく評価により、さらに良好に上記関係を説明できる可能性はある。現時点では、TEM観察のためのサンプル厚みの制御に限界があるため、厚みが十分薄い部分を除いては界面が厚み方向に重なりがちとなる。このため、特に最小曲率半径が小さいサンプルでは、最小曲率半径を明確に特定できない。しかし、TEM観察のためのサンプルを作製する技術の進歩によっては、例えば50〜100nmの範囲で最小曲率半径を10ヵ所決定し、上記と同様、その最大および最小の値を除いた8個の値の平均値が、より適切な評価基準を提供する可能性はある。
非磁性層の平坦性には、非磁性層とこれを挟持する強磁性層との積層構造(強磁性層/非磁性層/強磁性層)を成膜する表面を提供する下地膜の状態が影響する。多層膜に一対の強磁性層を挟持する下部電極および上部電極が含まれる場合、下地膜は下部電極を含むことになる。下部電極は、例えば100nm〜2μm程度と比較的厚く形成されることが多いため、この電極が少なくとも一部を構成する下地膜は、厚く形成することになる。厚膜化された下地膜の表面の平坦性や層内の歪みは、その上に形成される非磁性層の平坦性に影響を及ぼしやすい。
なお、下部電極は、単層膜に限らず、複数の導電膜からなる多層膜であってもよい。
下地膜には400℃以上、好ましくは500℃以下の温度で熱処理を施すことが好ましい。この熱処理により、下地膜の歪みを低減できる。熱処理は、特に制限されないが、減圧雰囲気中またはAr等の不活性ガス雰囲気中において行うとよい。
下地膜の表面に、低角度でイオンミリングやガスクラスターイオンビームを照射すると、この表面の粗さを抑制できる。イオンビームの照射は、イオンビームが下地膜の表面への入射角を5°〜25°として行うとよい。ここで、入射角は表面に垂直な方位を90°、表面に平行な方位を0°として定める。
熱処理による結晶粒の成長等を考慮すると、イオンビームの照射による平坦化処理は、熱処理の後に行うとよい。イオンビームを処理する表面は、その上に直接、強磁性層を形成する面であることが好ましいが、他の層を介して強磁性層を支持する面であってもよい。
単結晶基板を用いると、R1が低い素子が得られやすい。ただし、単結晶基板を使用しなくても、下部電極へのイオンビームの照射等により、R1が小さい素子が得られることはある。
非磁性層の平坦性には、非磁性層の界面近傍における強磁性層の組成も影響する。
具体的には、一対の強磁性層と非磁性層との界面の少なくとも一方から2nmの範囲、好ましくは4nmの範囲における当該界面に接する強磁性層の組成を、下記式により表示される範囲とすると、R1が低い磁気抵抗素子が得られやすい。
(FexCoyNiz)pM1qM2rM3sAt
ただし、M1は、Tc、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuから選ばれる少なくとも1種の元素、好ましくはIr、Pd、Ptであり、M2は、MnおよびCrから選ばれる少なくとも1種の元素であり、M3は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Al、Si、Ga、Ge、InおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素であり、Aは、B、C、N、O、PおよびSから選ばれる少なくとも1種の元素である。
また、x、y、z、p、q、r、sおよびtは、それぞれ、0≦x≦100、0≦y≦100、0≦z≦100、x+y+z=100、40≦p≦99.7、0.3≦q≦60、0≦r≦20、0≦s≦30、0≦t≦20、p+q+r+s+t=100を満たす数値である。
上記式では、p+q+r=100(s=0,t=0)が成立してもよく、p+q=100(さらにr=0)が成立してもよい。
元素M1が、非磁性層との界面近傍に含まれると、小さいR1が実現しやすくなる。元素M1の添加により、330℃以上の熱処理後におけるMR特性は、熱処理前と比較して、むしろ向上することがあった。現時点で、元素M1の作用は十分に明らかではない。しかし、これら元素は酸素等に対して触媒効果を有するため、元素M1により非磁性層を構成する非磁性化合物の結合状態が強化され、その結果、バリア特性等が改善した可能性はある。
元素M1の含有量が60at%を超えると(q>60)、強磁性層における強磁性体としての機能が低下するため、MR特性は劣化する。元素M1の好ましい含有量は、3〜30at%(3≦q≦30)である。
元素M2は、酸化されやすく、かつ酸化されると磁性を有する酸化物となる。
元素M2は、反強磁性層に使用されることがある。そして、熱処理により非磁性層との界面近傍にまで拡散すると、界面近傍で酸化物を形成し、特性を劣化させる可能性がある。しかし、元素M2は、20at%以下であれば(r≦20)、元素M1とともに存在する限りにおいて、MR特性の著しい劣化をもたらさない。特に、元素M2の含有量が元素M1の含有量よりも少ない場合には(q>r)、MR特性は、劣化せず、むしろ向上する場合があった。元素M1とともに添加された場合には(q>0,r>0)、熱処理後におけるMR特性の向上に元素M2が寄与している可能性はある。
磁気抵抗素子をデバイスに用いる場合には、MR特性以外にも、軟磁気特性、高周波特性等の磁気特性も重要となる。この場合には、適宜、元素M3、元素Aを上記範囲内で添加するとよい。
Fe、CoおよびNiは、含有量の合計が40〜99.7at%であれば、その比率に制限はない。ただし、これら3元素がすべて存在する場合は、0<x<100、0<y<100、0<z≦90(特に0<z≦65)が好適である。FeとCoとの2成分系の場合は(z=0)、5≦x<100、0<y≦95が好適である。FeとNiとの2成分系の場合は(y=0)、5≦x<100、0<z≦95が好適である。
組成の分析は、例えばTEMによる局所組成分析により行えばよい。非磁性層の下方の強磁性層については、非磁性層までで成膜を停止したモデル膜を用いて分析してもよい。この場合は、モデル膜に対して所定温度で熱処理を行った後、適宜、非磁性層をミリングにより除去し、オージェ光電子分光、XPS組成分析等の表面分析法により組成を測定すればよい。
図2および図3に磁気抵抗素子の基本構造を示す。この素子では、基板1上に、下部電極2、第1強磁性層3、非磁性層4、第2強磁性層5および上部電極6がこの順に積層されている。強磁性層/非磁性層/強磁性層の積層体を挟持する一対の電極2、6の間は、層間絶縁膜7により絶縁されている。
磁気抵抗素子の膜構成は、これに限らず、図4〜図11に示したように、他の層をさらに加えてもよい。なお、これらの図では、図示が省略されているが、必要に応じ、下部電極が積層体の図示下方に、上部電極が積層体の図示上方に配置される。これらの図に示されていない層(例えば下地層や保護層)をさらに付加しても構わない。
図4では、反強磁性層8が強磁性層3に接するように形成されている。この素子では、反強磁性層8との交換バイアス磁界により、強磁性層3は一方向異方性を示し、その反転磁界が大きくなる。反強磁性層8を付加することにより、この素子は、強磁性層3が固定磁性層として、他方の強磁性層5が自由磁性層として機能するスピンバルブ型の素子となる。
図5に示したように、自由磁性層5として、一対の強磁性膜51,53が非磁性金属膜52を挟持する積層フェリを用いてもよい。
図6に示したように、デュアルスピンバルブ型の素子としてもよい。この素子では、自由磁性層5を挟むように2つの固定磁性層3,33が配置されており、自由磁性層5と固定磁性層3,33との間に非磁性層4,34が介在している。
図7に示したように、デュアルスピンバルブ型の素子においても、固定磁性層3,33を積層フェリ51,52,53;71,72,73としてもよい。この素子では、固定磁性層3,33に接するように、それぞれ反強磁性層8,38が配置されている。
図8に示したように、図4に示した素子において、固定磁性層3として、一対の強磁性膜51,53が非磁性金属膜52を挟持する積層フェリを用いてもよい。
図9に示したように、反強磁性層を用いない保磁力差型の素子としてもよい。ここでは、積層フェリ51,52,53が固定磁性層3として用いられている。
図10に示したように、図8に示した素子において、さらに自由磁性層5を積層フェリ71,72,73により構成してもよい。
図11に示したように、反強磁性層8の両側に、それぞれ、固定磁性層3(33)、非磁性層4(34)、自由磁性層5(35)を配置してもよい。ここでは、固定磁性層3(23)として、積層フェリ51(71),52(72),53(73)を用いた例が示されている。
基板1としては、表面が絶縁された板状体、例えば、熱酸化処理されたSi基板、石英基板、サファイア基板等を用いることができる。基板の表面は、平滑であるほうがよいので、必要に応じ、ケモメカニカルポリッシング(CMP)等の平滑化処理を行ってもよい。基板の表面には、予め、MOSトランジスター等のスイッチング素子を作製しておいてもよい。この場合は、スイッチング素子上に絶縁層を形成し、この絶縁層にコンタクトホールを形成して、上部に作製する磁気抵抗素子との電気的接続を確保するとよい。
反強磁性層8には、Mn含有反強磁性体やCr含有反強磁性体を用いればよい。Mn含有反強磁性体としては、例えばPtMn,PdPtMn,FeMn,IrMn,NiMnが挙げられる。これらの反強磁性体からは、熱処理により、元素M2が拡散する可能性がある。従って、非磁性層の界面近傍における元素M2の好ましい含有量(20at%以下)を考慮すると、非磁性層と反強磁性層との距離(図4におけるd)は、3nm以上50nm以下が適当である。
多層膜を構成するその他の層にも、従来から知られている各種材料を特に制限なく使用できる。
例えば、非磁性層2には、素子の種類に応じて、導電性ないし絶縁性の材料を用いればよい。CPP−GMR素子に用いる導電性非磁性層には、例えば、Cu、Au、Ag、Ru、Crおよびこれらの合金を用いることができる。CPP−GMR素子における非磁性層の好ましい膜厚は、1〜10nmである。TMR素子に用いるトンネル絶縁層に用いる材料にも特に制限はなく、各種絶縁体または半導体を使用できるが、Alの酸化物、窒化物または酸窒化物が適している。TMR素子における非磁性層の好ましい膜厚は、0.8〜3nmである。
積層フェリを構成する非磁性膜の材料としては、Cr、Cu、Ag、Au、Ru、Ir、Re、Osならびにこれらの合金および酸化物が挙げられる。この非磁性膜の好ましい膜厚は、材料により異なるが、0.2〜1.2nmである。
多層膜を構成する各層の成膜法にも特に制限はなく、スパッタ法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、パルスレーザーデポジション法、イオンビームスパッタ法等の薄膜作製法を適用すればよい。微細加工法としては、公知の微細加工法、例えば、コンタクトマスクやステッパを用いたフォトリソグラフィ法、EBリソグラフィ法、FIB(Focused Ion Beam)加工法等を用いればよい。
エッチング法としても、イオンミリングやRIE(Reactive Ion Etching)等公知の方法を用いればよい。
従来の磁気抵抗素子においても、300℃程度までの熱処理であれば、熱処理の後にMR特性が向上することはあった。しかし、300〜350℃以上の熱処理の後にはMR特性は劣化していた。本発明の磁気抵抗素子は、従来の素子に対し、330℃以上の熱処理後に優位な特性を示しうるが、350℃以上、400℃以上と熱処理温度が高くなるにつれ、処理後の特性の相違は歴然たるものとなる。
Si半導体プロセスを組み合わせることを考慮すると、熱処理温度としては400℃付近を考慮する必要がある。本発明を適用すれば、400℃の熱処理に対しても、実用的な特性を示す素子を提供できる。
上記のとおり、本発明によれば、330℃以上、さらには350℃以上の熱処理により、MR特性を、当該熱処理前よりも相対的に向上させた磁気抵抗素子を提供できる。
熱処理によるMR特性向上の原因は十分に解明されていないが、熱処理によって、非磁性層のバリアとしての特性が改善した可能性はある。一般に、バリア中の欠陥が減少すればMR特性は良好になりうるし、バリア高さが高くればMR特性は良好になりうるからである。熱処理によるMR特性の向上は、非磁性層と強磁性層との界面における化学結合状態の変化によりもたらされた可能性もある。いずれにしても、MR特性向上の効果が300℃を上回る高温の熱処理によっても得られたことは、磁気抵抗素子のデバイスへの応用を考慮すると、極めて重要である。
界面近傍における強磁性層の組成は、熱処理する温度において、単一の相を形成する組成が適している。
界面における組成と同じ組成を有する合金を、通常の鋳造法で鋳込み、さらに不活性ガス中において350℃〜450℃で24時間熱処理をした。この合金をほぼ半分に切断し、断面を研磨し、さらに表面をエッチングした。この表面の粒状態を、金属顕微鏡および電子顕微鏡で観察した。また、上記の組成分析法やEDXにより組成分布を評価した。その結果、適用した熱処理温度で不均一な相を示す組成を用いると、長時間の熱処理により、MR特性が劣化する確率が高いことが確認できた。
バルクと薄膜とでは、界面の効果等により、相の安定状態は異なるが、強磁性層の界面近傍の組成、具体的には上記式により示される組成は、330℃以上である所定の熱処理温度において、単一の相を形成するものであることが好ましい。
(実施例1−1)
単結晶MgO(100)基板上に、下部電極として、膜厚100nmのPt膜をMBEにより蒸着し、そのまま真空中において400℃3時間で熱処理した。次いで、基板に対する入射角が10〜15°となるように、イオンガンを用いてArイオンを照射し、表面クリーニングおよび平坦化処理を行った。
次いで、Pt膜上に、膜厚8nmのNiFe膜をRFマグネトロンスパッタ法により成膜した。さらに、DCマグネトロンスパッタ法で成膜したAl膜を、真空チャンバー内に純酸素を導入することにより酸化して、AlOxバリアを作製した。引き続き、膜厚10nmのFe50Co50膜をRFマグネトロンスパッタ法により成膜した。こうして、下部電極上に、強磁性層/非磁性層/強磁性層(NiFe(8)/AlOx(1.2)/Fe50Co50(10))からなる積層体を形成した。ここで、カッコ内の数値は、単位をnmとする膜厚である(以下、同様)。
さらに、フォトリソグラフィ法によるパターニングとイオンミリングエッチングにより、図1および図2に示したと同様の構造を有する複数の磁気抵抗素子を作製した。なお、上部電極にはCu膜をDCマグネトロンスパッタ法により、層間絶縁膜にはSiO2膜をイオンビームスパッタ法により、それぞれ成膜した。
これら磁気抵抗素子について、磁界を印加しながら直流四端子法により抵抗を測定することによりMR変化率を測定した。MR変化率は、260℃1時間熱処理後、300℃1時間熱処理後、350℃1時間熱処理後、400℃1時間熱処理後にも測定した。また、MR変化率の測定の後、各素子についてR1を測定した。結果を表1Aに示す。
Figure 0003551196
(実施例1−2)
NiFe膜に代えて、膜厚6nmのNiFe膜と膜厚2nmのFe80Pt20膜との積層体を用いた以外は、実施例1−1と同様にして、複数の磁気抵抗素子を作製した。これらの素子は、NiFe(6)/Fe80Pt20(2)/AlOx(1.2)/Fe50Co50(10)により表示できる積層体を含んでいる。これらの磁気抵抗素子について、上記と同様にしてMR変化率およびR1を測定した。結果を表1Bに示す。
Figure 0003551196
(比較例)
比較のために、電極の熱処理とイオンガンを用いた処理を行わなかった以外は、実施例1−1と同様にして、複数の磁気抵抗素子を作製した。これらの磁気抵抗素子について、上記と同様にしてMR変化率およびR1を測定した。結果を表1Cに示す。
Figure 0003551196
下部電極の表面処理を行わない従来の方法では(表1C)、300℃を超える熱処理の後には、R1はすべて20nmを超えた。
非磁性層近傍の磁性層にPtを加えると(表1B)、Ptを加えない場合(表1A)と比較して、熱処理によるR1の増加が抑制されることが確認できる。また、Ptを加えることにより、R1が同じ範囲であってもMR変化率は向上した。
(実施例1−3)
基板としてSi熱酸化処理基板を、下部電極として膜厚100nmのCu膜と膜厚5nmのTa膜を、強磁性層/非磁性層/強磁性層の積層体としてNiFe(8)/Co75Fe25(2)/BN(2.0)/Fe50Co50(5)を用いた以外は、実施例1−1と同様にして複数の磁気抵抗素子を作製した。なお、Cu膜およびTa膜はRFマグネトロンスパッタリング法により、NiFe膜およびCo75Fe25膜はそれぞれDCおよびRFマグネトロンスパッタリング法により、BN膜は反応性蒸着法により、Fe50Co50膜はRFマグネトロンスパッタリング法により、それぞれ成膜した。
これらの磁気抵抗素子について、上記と同様にしてMR変化率およびR1を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0003551196
(実施例1−4)
基板としてSi熱酸化処理基板を、下部電極として膜厚200nmのCu膜と膜厚3nmのTiN膜を、強磁性層/非磁性層/強磁性層の積層体として、NiFe(8)/Co75Fe25(2)/AlOx(2.0)/Fe50Co50(5)を用いた以外は、実施例1−1と同様にして複数の磁気抵抗素子を作製した。なお、AlOx膜はプラズマ酸化により形成した。
これらの磁気抵抗素子について、上記と同様にしてMR変化率およびR1を測定した。結果を表3に示す。
Figure 0003551196
さらに、強磁性層として、Co70Fe30、Co90Fe10、Ni60Fe40、センダスト、Fe50Co25Ni25、Co70Fe5Si1510等をそのままあるいは多層化して用いても、非磁性層として、反応性蒸着によるAl23、AlN;プラズマ反応によるAlN;自然酸化または窒化によるTaO、TaN、AlN等を用いても、基本的には同様の結果が得られた。
また、図4〜図11に示したような構造の磁気抵抗素子においても、基本的には同様の結果が得られた。なお、非磁性層による接合(トンネルジャンクション)が複数存在する素子では、最大のR1をその素子のR1とした。これらの素子において、反強磁性層としては、CrMnPt(膜厚20〜30nm)、Tb25Co75(10〜20nm)、PtMn(20〜30nm)、IrMn(10〜30nm)、PdPtMn(15〜30nm)等を、非磁性金属膜としてはRu(膜厚0.7〜0.9nm)、Ir(0.3〜0.5nm)、Rh(0.4〜0.9nm)等をそれぞれ用いた。
(実施例2)
実施例1から、非磁性層近傍の磁性層の組成により、MR変化率が変化することが確認できた。そこで、本実施例では、実施例1と同様の成膜法及び加工法を用いて作製した磁気抵抗素子について、強磁性層の組成とMR変化率との関係を測定した。
強磁性層の組成は、オージェ光電子分光、SIMS及びXPSにより分析した。図12(a)〜(d)に示したように、組成は、層の界面近傍および層の中心において測定した。界面の近傍では、界面から2nmの範囲を測定対象とした。層の中心においても厚さ方向の中心を含む2nmの範囲を測定対象とした。図12(a)〜(d)に示した「組成1」〜「組成9」は、以下に示す各表における表示に対応している。また、図12(a)〜(d)に示した素子の構造は、各表における素子タイプa)〜d)にそれぞれ対応している。
なお、非磁性層としては、ICPマグネトロンスパッタ法により成膜したAl膜を、純酸素と高純度Arとの混合ガスをチャンバー内に導入して酸化したAl23膜(膜厚1.0〜2nm)を用いた。非磁性金属層としてはRu膜(0.7〜0.9nm)を、反強磁性層としてはPdPtMn(15〜30nm)をそれぞれ用いた。
また、いくつかの磁気抵抗素子においては、強磁性層の組成や組成比が層の厚さ方向に変化するように成膜した。この成膜は、各ターゲットへの印加電圧の調整等によって行った。
Figure 0003551196
Figure 0003551196
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表4a)のサンプル1〜8により、0.3〜60at%のPtの添加により300℃以上の熱処理後のMR特性は、Ptを添加しないサンプルと比較して、向上したことが確認できる。特に、3〜30at%程度の添加により、300℃以上の熱処理によってMR特性は向上する傾向にあった。この傾向は、表4a)のCo75Fe25を、Co90Fe10、Co50Fe50、Ni60Fe40、Fe50Co25Ni25に置き換えた場合、Ni80Fe20を、センダスト、Co90Fe10に置き換えた場合、にも同様に確認できた。また、Ptを、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Auに置き換えた場合にも同様に確認できた。
表4b)のサンプル9〜16により、PtとPdを2:1の比率で合計0.3〜60at%、特に3〜30at%、添加することにより、300℃以上の熱処理後のMR特性が、添加しないサンプルと比較して、向上したことが確認できる。
添加する元素の比を、2:1から、10:1、6:1、3:1、1:1、1:2、1:3、1:6、1:10に変えても、同様の傾向が得られた。また、(Pt、Pd)のPtをTc、Re、Ru、Rh、Cu、Agに、PdをOs、Ir、Auにそれぞれ変えても、即ち(Pt、Pd)を含めて合計28通りの元素の組み合わせにおいても、同様の傾向が得られた。また、Ni60Fe40を、Co75Fe25、Fe50Co25Ni25に置き換えた場合、Ni80Fe20を、センダスト、Co90Fe10に置き換えた場合、にも同様の傾向が得られた。
表4c)のサンプル17〜24により、Ir、Pd、Rhを2:1:1の比率で添加しても、表4a)、b)と同様、MR特性が向上したことが確認できる。この傾向は、Irを1として、Pd、Rhそれぞれを0.01〜100の範囲で含有比率を変化させたときにも同様に確認できた。また、Co90Fe10を、Ni80Fe20、Ni65Fe25Co10、Co60Fe20Ni20に置き換えた場合、Co75Fe25を、Co50Fe50、Fe60Ni40、Fe50Ni50に置き換えた場合、にも同様の傾向が得られた。
さらに、元素の組み合わせとして、(Ir、Pd、Rh)に代えて、(Tc、Re、Ag)、(Ru、Os、Ir)、(Rh、Ir、Pt)、(Pd、Pt、Cu)、(Cu、Ag、Au)、(Re、Ru、Os)、(Ru、Rh、Pd)、(Ir、Pt、Cu)、(Re、Ir、Ag)を用いた場合においても、同様の傾向が得られた。
表4d)のサンプル25〜32においても、表4a)〜c)と同様の傾向が得られた。これらのサンプルの一部では、熱処理後に反強磁性層からMnが拡散していることが確認できた。しかし、このMnの拡散は、Ptの添加により抑制されている。これは、Ptの添加によって、非磁性層の界面におけるMnの濃度を制御できることを示している。なお、PtをTc、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Cu、Agに代えても、同様の傾向が得られた。さらに、上記で述べた組成に強磁性層を変更しても、同様の傾向が得られた。
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表5a)に示したサンプルには、非磁性層の界面近傍にReを添加した。表5a)によると、Reの濃度は、3〜30at%が好ましい。しかし、ここでは、Mnの拡散は抑制されていない。この原因の一つは、反強磁性層との界面付近にReが添加されていないためである。Reに代えて、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Au等を用いても同様の傾向が得られた。また、強磁性層を上記で述べた組成に変えても同様の傾向が得られた。
表5b)に示したサンプルでは、非磁性層の両側に別の元素が添加されている。この場合にも同様の効果が得られた。表5b)のRuを、Tc、Re、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Auに、OsをTc、Re、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Auにそれぞれ変えても、同様の効果が得られた。ここでも、強磁性層を上記で述べた組成に変えたが、やはり同様の傾向が得られた。
表5c)に示したサンプルでは、非磁性層の界面の一方にのみPt、Cuが添加されている。この場合にも同様の傾向が得られた。表の(Pt、Cu)を、Tc、Re、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、(Ru、Ir)、(Pt、Pd)、(Pt、Au)、(Ir、Rh)、(Ru、Pd)、(Tc、Re、Ag)、(Ru、Os、Ir)、(Rh、Ir、Pt)、(Pd、Pt、Cu)、(Cu、Ag、Au)、(Re、Ru、Os)、(Ru、Rh、Pd)、(Ir、Pt、Cu)、(Re、Ir、Ag)に変えても同様の傾向が得られた。強磁性層を上記で述べた組成に変えたが、ここでも同様の傾向が得られた。
表5d)〜表8a)にMnとPtを添加したときの結果を示す。表5d)はMn添加0at%に対応する。表6a)〜表8a)は、Mnを0.2、0.5、1、2、5、8、12、19、22at%添加したときにPtの添加量を変化させたときの結果を示したものである。
Ptが少ない領域では反強磁性層からの拡散によるMnが界面にわずかに存在するが、Pt添加により拡散が制御されていることが確認できる。
表8b)〜d)には、複数の非磁性層を有する素子についての測定結果が示されている。非磁性層によるバリアが複数存在する場合にも、少なくとも一つの非磁性層の界面近傍の組成を制御することにより、熱処理後のMR特性を改善できる。
表9a)に、MnおよびPtを含むサンプルにおける350℃および400℃での熱処理後のMR変化率を、MnおよびPtにおける添加量が0であるサンプル(サンプル57)に対する比率としてまとめた。
ただし、表9a)において、Pt量および(Pt+Mn)量は、熱処理前のサンプルにおける「組成4」における各量である。
表9b)に、各Mn添加量においてPt添加量が0であるサンプルのMR変化率に対する各サンプルのMR変化率の比率を示す。
Ptの添加量が0.3〜60at%、Mnの添加量が20at%以下の範囲、特にMn<Ptの範囲で、良い特性が得られた。Mnが8〜5at%以下の領域で、Mn<Ptでは、Mnとの同時添加によって、Pt単独添加より特性が向上している可能性があるのがみてとれる。Mnに代えて、Crや(Mn、Cr)を1:0.01〜1:100の比率で添加した素子においても、同様の傾向が得られた。また、Ptに代えて、表4a)〜表5c)で用いた元素を添加しても同様の傾向が得られた。また、表4で用いた強磁性層を用いても、同様の傾向が得られた。
表4a)〜表9b)には示していないが、さらにサンプル間の組成を有するいくつかの素子も作製した。これらの素子についても、同様の傾向が見られた。
表4a)〜表9b)では400℃までの熱処理の結果を示したが、いくつかのサンプルについては、400℃〜540℃の範囲において10℃刻みで熱処理を行い、MR特性を測定した。その結果、Pt等の添加元素M1の含有量を0.3〜60at%とした素子からは、450℃までの熱処理後において、無添加の素子と比較して優れたMR特性が得られた。特に添加量を3〜30at%とすると、500℃までの範囲で、無添加の素子と比較して優れたMR特性が得られた。
1とともにMn、Cr(添加元素M2)を同時に添加した素子でも、同様の測定を行った。その結果、M1の含有量が0.3〜60at%であってM2<M1とした素子からは、450℃までの熱処理後において、相対的に優れたMR特性が得られた。また、M1の含有量が3〜30at%、M1の含有量が8at%未満、M2<M1とした素子からは、無添加の素子と比較して、500℃までの熱処理後において、相対的に優れたMR特性が得られた。
なお、以上では、非磁性層に自然酸化によるAlOxを用いた結果を示したが、非磁性層を、プラズマ酸化によるAlO、イオンラジカル酸化によるAlO、反応性蒸着によるAlO、自然窒化によるAlN、プラズマ窒化によるAlN、反応性蒸着によるAlN、プラズマ窒化または反応性蒸着によるBN、熱酸化、プラズマ酸化またはイオンラジカル酸化によるTaO、熱酸化、自然酸化またはプラズマ酸化によるAlSiO、自然酸窒化、プラズマ酸窒化または反応性スパッタによるAlONとした場合においても、同様の傾向が得られた。
また、反強磁性層として、PdPtMnに代えて、FeMn、NiMn、IrMn、PtMn、RhMn、CrMnPt、CrAl、CrRu、CrRh、CrOs、CrIr、CrPt、TbCoを用いた場合にも、同様の傾向が得られた。
また、非磁性金属として、Ru(膜厚0.7〜0.9nm)に代えて、Rh(0.4〜1.9nm)、Ir(0.3〜1.4nm)、Cr(0.9〜1.4nm)を用いた場合にも、同様の傾向が得られた。
また、素子構造についても、図示した各形態について、基本的には、同様の傾向が得られた。
(実施例3)
本実施例でも、実施例1、2と同様の成膜法及び加工法を用いて磁気抵抗素子を作製した。組成の測定方法は、実施例2と同様とした。
非磁性層としては、純酸素と高純度窒素との1:1混合ガスをチャンバー内に導入してAl膜を酸窒化してAlON膜(膜厚1.0〜2nm)を作製した。非磁性金属膜としては、Rh(1.4〜1.9nm)を用いた。反強磁性層としては、PtMn(20〜30nm)を用いた。
素子構造及び強磁性層は、表5d)〜表8a)に示したサンプルと同様とした。ただし、本実施例では、PtおよびMnに加え、TaおよびNの添加効果を測定した。
実施例2と同様、540℃までの熱処理後の特性を調べたが、ここでは特徴的な350℃と400℃の測定結果を示す。本実施例では、磁気特性として自由層の保磁力を測定した。それぞれの界面の添加組成に対する自由層の保磁力を、表10〜22に示す。
表中、保磁力を記載していないものは磁気特性を測定できなかった。軟磁気特性はTa、Nの添加により向上した。しかし、非磁性添加物が約70at%以上となると磁気特性が測定できなかった。
表10、11、12、15、16、19、20のサンプルでは、熱処理後のMR特性は、Ta、Nを添加しない素子と比較して、±10%以内となった。これに対し、表13、17、21のサンプルでは10〜20%程度MR特性が劣化し、表14、18、22のサンプルでは50〜60%程度MR特性が劣化した。
なお、Taに代えて、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Mo、W、Al、Si、Ga、Ge、In、Snを用いても同様の傾向が得られた。また、Nに代えて、B、C、Oを用いても同様の傾向が得られた。
(実施例4)
本実施例でも、実施例1、2と同様の成膜法及び加工法を用いて磁気抵抗素子を作製した。組成の測定方法は、実施例2と同様とした。
非磁性層としては、Oのイオンラジカル源でAl膜を酸化して作製したAlOx(膜厚1.0〜2nm)を用いた。非磁性金属層としては、Ir(1.2〜1.4nm)を用いた。反強磁性層としては、NiMn(30〜40nm)を用いた。
素子構造及び強磁性層は、表4〜表8に示したサンプルと同様とした。ただし、本実施例では、Pt、Pr、Auを添加し、それぞれの熱処理後のMR特性と、固溶状態が安定かを調べた。
固溶状態の判定のために、まず、350℃、400℃、450℃、500℃の各温度で熱処理した素子における非磁性層の界面の組成を、AESデプスプロファイル、SIMS、ミリング後のXPS分析等を用いて決定した。次いで、該当する組成の合金サンプルを別途作製し、350℃、400℃、450℃、500℃で24時間減圧雰囲気(10-5Pa)で熱処理した。この合金サンプルの表面を化学エッチングした後、金属顕微鏡による組織観察を行った。また、エッチングの後、さらに減圧雰囲気中でイオンミリングし、走査型電子顕微鏡(SEM)による組織観察と、EDXによる面内組成分析を行った。そして、これらの測定結果から、単一の相状態になっているかを評価した。
熱処理温度および組成において対応する合金サンプルについて、組成分布および複数の相が観察された場合、その合金サンプルに対応する素子の熱処理後のMR特性は、M1等を添加しない素子と比較して、30〜100%程度向上した。
一方、合金サンプルが単相状態を示した場合、その合金サンプルに対応する素子の熱処理後のMR特性は、添加元素がない素子と比較して、80〜200%程度向上した。また、単相状態が安定な合金に対応する素子において、熱処理後のMR特性はより良好となった。
(実施例5)
実施例2の表4d)、5a)、5b)、5c)、5d)のサンプルにおいて、熱処理後に観察されたMnの拡散効果を、反強磁性層/強磁性層の界面と強磁性層/非磁性層の界面との距離と、熱処理温度とを適宜変更することにより制御した。ただし、熱処理温度は300℃以上とした。この制御は、熱処理後に非磁性層の界面におけるMnを20〜0.5at%の範囲とすることを目標に行った。その結果、上記距離が3nm未満では、Pt等の元素を添加しても、熱処理後には磁性元素(Fe,Co、Ni)の含有量が40at%以下となり、その結果、MR特性も著しく劣化した。一方、上記距離が50nmを上回る場合には、界面におけるMnの含有量を0.5at%増加させるためだけにでも400℃以上の温度を要した。また、上記距離が長すぎるため、反強磁性層による強磁性層の磁化方向の固定効果が十分に得られず、熱処理後のMR特性が著しく劣化した。
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本発明によれば、高温で熱処理しても、信頼性および安定性が低下しにくい磁気抵抗素子を提供できる。
最長距離R1を説明するための断面図 本発明の磁気抵抗素子の一形態の平面図 本発明の磁気抵抗素子の一形態の断面図 本発明の磁気抵抗素子の基本構成の一例を示す断面図 本発明の磁気抵抗素子の基本構成の別の一例を示す断面図 本発明の磁気抵抗素子の基本構成のまた別の一例を示す断面図 本発明の磁気抵抗素子の基本構成のさらに別の一例を示す断面図 本発明の磁気抵抗素子の基本構成のまたさらに別の一例を示す断面図 本発明の磁気抵抗素子の基本構成のまた別の一例を示す断面図 本発明の磁気抵抗素子の基本構成のさらに別の一例を示す断面図 本発明の磁気抵抗素子の基本構成のまたさらに別の一例を示す断面図 実施例で作製した磁気抵抗素子の一部の断面図
符号の説明
1 基板
2 下部電極
3,5 強磁性層
4 非磁性層
6 上部電極
7 層間絶縁膜
8 反強磁性層
51,53,71,73 強磁性膜
52,72 非磁性金属膜

Claims (3)

  1. 基板と前記基板上に形成された多層膜を含み、前記多層膜が一対の強磁性層と前記一対の強磁性層の間に挟持された非磁性層とを含み、前記一対の強磁性層における磁化方向がなす相対角度により抵抗値が異なる磁気抵抗素子の製造方法であって、
    前記基板上に、前記強磁性層および前記非磁性層を除く前記多層膜の一部を下地膜として形成する工程と、
    前記下地膜を400℃以上で熱処理する工程と、
    前記下地膜の表面にイオンビームを照射して前記表面の粗さを低減する工程と、
    前記表面上に、前記強磁性層および前記非磁性層を含む前記多層膜の残部を形成する工程と、
    前記基板および前記多層膜を330℃以上で熱処理する工程と、を含む磁気抵抗素子の製造方法。
  2. イオンビームを下地膜の表面への入射角が5°以上25°以下となるように照射する請求項1に記載の磁気抵抗素子の製造方法。
  3. 多層膜の一部として下部電極および上部電極を形成し、前記下部電極が前記下地膜に含まれる請求項に記載の磁気抵抗素子の製造方法。

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