JP2001099252A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ポケット３６、３６内への潤滑油の供給を効
率良く行なえる構造で、しかも玉の公転速度の変化に伴
って加わる力に拘らず、保持器３４ａの損傷防止を図れ
る構造を実現する。 【解決手段】 上記保持器３４ａを構成する主体３９に
複数の凹溝４０ａ、４０ａを、上記各ポケット３６、３
６を横切る状態で設ける。これら各凹溝４０ａ、４０ａ
は、外径側仕切り部４１、４１の中央部で最も幅が狭く
なった部分を避け、上記各ポケット３６、３６の円周方
向端部に寄せて設けている。この構成により、上記各外
径側仕切り部４１、４１の断面積を確保し、上記課題を
解決する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明に係るトロイダル型
無段変速機は、例えば自動車用の自動変速機の変速ユニ
ットとして、或は各種産業機械用の変速機として、それ
ぞれ利用する。

【０００２】

【従来の技術】自動車用変速機として、図４〜５に略示
する様なトロイダル型無段変速機を使用する事が、研究
されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば実
開昭６２−７１４６５号公報に開示されている様に、入
力軸１と同心に入力側ディスク２を支持し、出力軸３の
端部に出力側ディスク４を固定している。トロイダル型
無段変速機を納めたケーシングの内面、或はこのケーシ
ング内に設けられた支持ブラケットには、上記入力軸１
並びに出力軸３に対して捻れの位置にある枢軸５、５を
中心として揺動するトラニオン６、６が設けられてい
る。

【０００３】即ち、上記各枢軸５、５は上記各トラニオ
ン６、６両端部外側面に、互いに同心に、且つ上記入力
軸１並びに出力軸３の中心軸に交差する事はないがこの
中心軸の方向に関してほぼ直角方向に設けている。又、
各トラニオン６、６の中心部には変位軸７、７の基端部
を、これら各変位軸７、７がこれら各トラニオン６、６
の内側面から突出する状態で支持している。従って、上
記各トラニオン６、６が上記各枢軸５、５を中心として
揺動する事により、上記各変位軸７、７の傾斜角度が変
化する。この様な各変位軸７、７の周囲には、それぞれ
パワーローラ８、８を回転自在に支持している。そし
て、これら各パワーローラ８、８を、上記入力側、出力
側両ディスク２、４の間に挟持している。

【０００４】これら入力側、出力側両ディスク２、４の
互いに対向する内側面２ａ、４ａは、それぞれ断面が、
上記枢軸５を中心とする円弧形の凹面をなしている。そ
して、球面状の凸面に形成された各パワーローラ８、８
の周面８ａ、８ａは、上記内側面２ａ、４ａに当接させ
ている。

【０００５】又、上記入力軸１と入力側ディスク２との
間には、ローディングカム式の押圧装置９を設け、この
押圧装置９によって、上記入力側ディスク２を出力側デ
ィスク４に向け、弾性的に押圧している。この押圧装置
９は、入力軸１と共に回転するカム板１０と、保持器１
１により保持された複数個（例えば４個）のローラ１
２、１２とから構成されている。上記カム板１０の片側
面（図４〜５の左側面）には、円周方向に亙る凹凸面で
あるカム面１３を形成し、又、前記入力側ディスク２の
外側面（図４〜５の右側面）にも、同様のカム面１４を
形成している。そして、上記複数個のローラ１２、１２
を、上記入力軸１の中心に対して放射方向の軸を中心と
する回転自在に支持している。

【０００６】上述の様に構成されるトロイダル型無段変
速機の使用時、入力軸１の回転に伴ってカム板１０が回
転すると、カム面１３によって複数個のローラ１２、１
２が、入力側ディスク２外側面のカム面１４に押圧され
る。この結果、上記入力側ディスク２が、上記複数のパ
ワーローラ８、８に押圧されると同時に、上記１対のカ
ム面１３、１４と複数個のローラ１２、１２との噛合に
基づいて、上記入力側ディスク２が回転する。そして、
この入力側ディスク２の回転が、上記複数のパワーロー
ラ８、８を介して出力側ディスク４に伝達され、この出
力側ディスク４に固定の出力軸３が回転する。

【０００７】上記入力軸１と出力軸３との回転速度を変
える場合で、先ず入力軸１と出力軸３との間で減速を行
なう場合には、前記枢軸５、５を中心として前記各トラ
ニオン６、６を所定方向に揺動させ、上記各パワーロー
ラ８、８の周面８ａ、８ａが図４に示す様に、上記入力
側ディスク２の内側面２ａの中心寄り部分と上記出力側
ディスク４の内側面４ａの外周寄り部分とにそれぞれ当
接する様に、前記各変位軸７、７を傾斜させる。

【０００８】反対に、増速を行なう場合には、上記各ト
ラニオン６、６を反対方向に揺動させ、上記各パワーロ
ーラ８、８の周面８ａ、８ａが図５に示す様に、入力側
ディスク２の内側面２ａの外周寄り部分と出力側ディス
ク４の内側面４ａの中心寄り部分とに、それぞれ当接す
る様に、上記各変位軸７、７を傾斜させる。各変位軸
７、７の傾斜角度を、図４と図５との中間にすれば、入
力軸１と出力軸３との間で、中間の変速比を得る事が出
来る。

【０００９】更に、図６は、実願昭６１−８７５２３号
（実開昭６２−１９９５５７号）のマイクロフィルムに
記載された、トロイダル型無段変速機を変速ユニットと
して組み込んだ自動車用自動変速機を示している。エン
ジンのクランク軸の回転は、クラッチ１５を介して入力
軸１６に伝達され、この入力軸１６の中間部にスプライ
ン係合したカム板１０を回転させる。そして、このカム
板１０を含んで構成される押圧装置９の作動により、入
力側ディスク２を、出力側ディスク４に向け図６で左方
に押圧しつつ、回転させる。この入力側ディスク２の回
転は、パワーローラ８、８によって出力側ディスク４に
伝達される。

【００１０】この出力側ディスク４は上記入力軸１６の
周囲に、ニードル軸受１７により支持され、この出力側
ディスク４と一体に形成された円筒状の出力軸１８は、
ハウジング１９の内側に、アンギュラ型の玉軸受２０に
より支持されている。一方、上記入力軸１６の一端（図
６の右端）は上記ハウジング１９の内側にころ軸受２１
により、他端はこのハウジング１９の内側にアンギュラ
型の玉軸受２２によりスリーブ２３を介して、それぞれ
回転自在に支持されている。

【００１１】上記出力軸１８の外周面には、駆動側前進
ギヤ２４と駆動側後退ギヤ２５とを一体とした伝達ギヤ
２６が、スプライン係合している。車両の前進時にはこ
の伝達ギヤ２６を右行させて、上記駆動側前進ギヤ２４
と、取り出し軸２７の中間部に設けた従動側前進ギヤ２
８とを直接噛合させ、後退時には上記伝達ギヤ２６を左
行させて、上記駆動側後退ギヤ２５と、上記取り出し軸
２７の中間部に固定した従動側後退ギヤ２９とを、図示
しない中間ギヤを介して噛合させる。

【００１２】上述の様に構成される、トロイダル型無段
変速機を変速ユニットとして組み込んだ自動車用自動変
速機の使用時には、エンジンによりクラッチ１５を介し
て入力軸１６を回転させ、上記伝達ギヤ２６を適宜の方
向に移動させれば、上記取り出し軸２７を任意方向に回
転させる事ができる。又、各トラニオン６、６を揺動さ
せて、各パワーローラ８、８の周面８ａ、８ａと、入力
側、出力側両ディスク２、４の内側面２ａ、４ａとの接
触位置を変えれば、上記入力軸１６と取り出し軸２７と
の回転速度比を変える事ができる。

【００１３】上述の様な自動車用自動変速機の運転時に
は、前記押圧装置９の作動に基づき、上記入力側ディス
ク２を上記出力側ディスク４に向け押圧する。この結
果、押圧装置９を構成するカム板１０を支持した入力軸
１６には、図６で右方向のスラスト荷重が、上記押圧に
基づく反力として加わる。このスラスト荷重は、上記入
力軸１６の端部に螺合したナット３０と前記スリーブ２
３とを介して、前記玉軸受２２により支承される。又、
押圧装置９の作動により上記出力軸１８には、図６で左
方向のスラスト荷重が、上記入力側、出力側両ディスク
２、４とパワーローラ８、８とを介して加わる。このス
ラスト荷重は、上記出力軸１８に外嵌したストップリン
グ３１を介して、前記玉軸受２０により支承される。

【００１４】例えば上述の様な自動車用自動変速機の変
速ユニットとして使用されるトロイダル型無段変速機の
運転時には、上記入力側、出力側両ディスク２、４の内
側面２ａ、４ａ同士の間に挟持された上記各パワーロー
ラ８、８に、スラスト荷重が加わる。この為、これら各
パワーローラ８、８と前記各トラニオン６、６との間に
スラスト玉軸受３２、３２を設けて、これら各パワーロ
ーラ８、８に加わるスラスト荷重を支承する様に構成し
ている。

【００１５】これら各スラスト玉軸受３２、３２はそれ
ぞれ、複数の玉３３、３３と、これら複数の玉３３、３
３を転動自在に保持する為の保持器３４と、外輪３５と
から構成されている。上記複数の玉３３、３３は、上記
各パワーローラ８、８の外端面に形成された軌道面と、
上記外輪３５の内側面に形成された軌道面とに転接す
る。又、上記保持器３４は、金属或は合成樹脂により円
輪状に造られており、直径方向中間部で円周方向等間隔
位置に形成したポケット３６、３６に、上記各玉３３、
３３を、１個ずつ転動自在に保持している。更に、円輪
状に造られた上記外輪３５は、滑り軸受或はニードル軸
受等のスラスト軸受３７（図７参照）を介して、前記各
トラニオン６、６の内側面に突き当てられている。

【００１６】トロイダル型無段変速機の運転時に、上述
の様なスラスト玉軸受３２、３２は、上記各パワーロー
ラ８、８に加わるスラスト荷重を支承しつつ、高速で回
転する。従って、トロイダル型無段変速機の運転時に、
上記各スラスト玉軸受３２、３２には、十分な量の潤滑
油を供給しなければならない。

【００１７】この様な観点から上記各スラスト玉軸受３
２、３２に十分な量の潤滑油を供給する為の構造として
従来から、実開平７−３５８４７号公報に記載されたも
のが知られている。図７〜１１は、この従来構造を示し
ている。外輪３５の一部に１乃至複数の給油孔３８を形
成し、トロイダル型無段変速機の運転時には、これら各
給油孔３８内に潤滑油を強制的に送り込む。これら各給
油孔３８内に強制的に送り込まれた潤滑油は、上記外輪
３５の内面と保持器３４の外面との間の隙間、並びにこ
の保持器３４の内面とパワーローラ８の外端面との間の
隙間を通じて流れ、その間に複数の玉３３の転動部分を
潤滑する。

【００１８】上記保持器３４を構成する、銅或は鋼等の
金属により円輪状に造られた主体３９には、その直径方
向中間部で円周方向等間隔の複数個所に、玉３３を転動
自在に保持すべき円形のポケット３６、３６を形成して
いる。又、上記主体３９の内外両側面には凹溝４０、４
０を、この主体３９の直径方向に亙り、上記各ポケット
３６、３６を横切る状態で形成している。

【００１９】上述の様な保持器３４を組み込んだトロイ
ダル型無段変速機の運転時には、上記外輪３５に形成し
た給油孔３８から吐出する潤滑油の勢い等により、スラ
スト玉軸受３２を構成する保持器３４が軸方向に変位し
て、図７に示す様に、この保持器３４の内側面とパワー
ローラ８の外端面とが密接した場合でも、上記各玉３３
を保持した上記各ポケット３６、３６内には十分な量の
潤滑油が、上記各凹溝４０、４０を通じて流れる。この
結果、上記パワーローラ８の外端面に形成した軌道面と
上記各玉３３の転動面との当接部に存在する潤滑油が不
足する事もなく、上記スラスト玉軸受３２の一部が著し
く摩耗したり、或は焼き付いたりする危険性を低くでき
る。

【００２０】

【発明が解決しようとする課題】上述した様な従来構造
の場合、各パワーローラ８を支承するスラスト玉軸受３
２を構成する保持器３４の耐久性を確保する事が難しか
った。この理由に就いて、図１２〜１７により説明す
る。トロイダル型無段変速機の運転時に上記各パワーロ
ーラ８には、押圧装置９（図４〜６参照）が発生する大
きなスラスト荷重に基づいて上記各パワーローラ８の周
面８ａに、図１２に矢印α、αで示す方向の力が加わ
る。そして、これら各パワーローラ８が直径方向反対側
２個所位置で強く挟持される結果、これら各パワーロー
ラ８が、図１３に誇張して示す様に、鎖線で示す自由状
態での円形から実線で示す楕円形に弾性変形する。これ
に伴って、上記スラスト玉軸受３２を構成する各玉３
３、３３が当接する軌道面の形状も楕円形に変形し、こ
れら各玉３３、３３と軌道面との接触角が円周方向に亙
って不同になる。

【００２１】又、入力側ディスク２から上記各パワーロ
ーラ８を介して出力側ディスク４にトルクを伝達するの
に伴って、これら各パワーローラ８の回転中心軸は傾斜
する傾向になる。例えば、図１４に示す様に、上記入力
側ディスク２が矢印イ方向に、上記各パワーローラ８が
矢印ロ方向に、上記出力側ディスク４が矢印ハ方向に、
それぞれ回転する場合に、上記パワーローラ８には上記
入力側ディスク２からこの入力側ディスク２の回転方向
と同じ向きに、Ｆ_t なる力が加わる。同時に、上記パワ
ーローラ８から上記出力側ディスク４に動力を伝達する
事に伴う反作用によりこのパワーローラ８に、この出力
側ディスク４の回転方向と逆方向に、やはりＦ_t なる力
が加わる。この結果、上記パワーローラ８は、図１５に
示す様に、２Ｆ_t なる大きさの力が、このパワーローラ
８を上記入力側ディスク２の回転方向に傾斜させる力と
して加わる。この結果、その外端面に軌道面を形成した
上記各パワーローラ８の回転中心軸が各外輪３５の中心
軸と不一致になり、これら各パワーローラ８と各外輪３
５との互いに対向する面に形成した、互いに対となる軌
道面同士が非平行になる。

【００２２】上述の様に、上記各玉３３、３３と軌道面
との接触角が円周方向に亙って不同になり、しかも前記
スラスト玉軸受３２を構成する互いに対となる軌道面同
士が非平行になる結果、上記各玉３３、３３の公転速度
が円周方向に亙って不同になる。図１６は、これら各玉
３３、３３の公転速度が円周方向位置により変化する状
態を示している。保持器３４は図１６で時計方向に回転
し、パワーローラ８は入力側、出力側両ディスク２、４
（図１２参照）により図１６の左右方向両側から挟持さ
れ、２Ｆ_t なる大きさの力は図１６で上向きに加わるも
のとする。上記各玉３３、３３の公転速度の大きさは、
図１６で各ポケット３６、３６の中心部から伸びた矢印
の長さとして表わしている。但し、これら各矢印の長さ
の比は、実際の公転速度の比に比べ誇張して描いてい
る。

【００２３】この様に、上記各スラスト玉軸受３２を構
成する上記各玉３３、３３の公転速度が円周方向に亙っ
て変化する結果、これら各玉３３の転動面が上記保持器
３４に形成した上記各ポケット３６、３６の内周面に強
く押し付けられる場合が生じる。図１７に示した矢印
は、上記各玉３３の転動面が上記各ポケット３６、３６
の内周面を押す方向を表わし、各矢印の長さは押す強さ
を表わしている。この様な図１７から明らかな通り、ト
ロイダル型無段変速機の運転時に上記保持器３４には、
円周方向に亙って大きな力が加わる。

【００２４】この保持器３４の外周縁と上記各ポケット
３６、３６との間には外径側仕切り部４１、４１が、同
じく内周縁と各ポケット３６、３６との間には内径側仕
切り部４２、４２が、それぞれ存在するが、これら各仕
切り部４１、４２の幅は狭い。この為、上記各玉３３、
３３の公転速度の変動に伴って発生する円周方向に亙る
大きな力に基づき、上記保持器３４に亀裂等の損傷が発
生するのを防止する為には、上記各仕切り部４１、４２
の強度を確保する事が重要である。

【００２５】これに対して、前述の実開平７−３５８４
７号公報に記載された構造の場合には、前述の図８〜９
にした様に、上記各仕切り部４１、４２の円周方向中央
部で最も幅が狭くなった部分に凹溝４０、４０を形成し
ている為、これら各凹溝４０、４０を形成した部分の断
面積が相当に小さくなる。この為、上述の様に円周方向
に亙る大きな力が加わった場合に、上記各仕切り部４
１、４２の円周方向中央部で上記各凹溝４０、４０を形
成した部分が損傷し易い。特に、従来のトロイダル型無
段変速機の場合には、図６、７、１２の様に、上記各保
持器３４の外径を前記各パワーローラ８及び前記各外輪
３５の外径以下としていた為、上記外径側仕切り部４１
の幅寸法が小さく、この外径側仕切り部４１の円周方向
中央部分の強度確保が難しかった。本発明のトロイダル
型無段変速機は、この様な事情に鑑みて発明したもので
ある。

【００２６】

【課題を解決するための手段】本発明のトロイダル型無
段変速機は何れも、前述した従来から知られているトロ
イダル型無段変速機と同様に、回転軸と、この回転軸の
周囲にそれぞれ回転自在に支持され、それぞれの内側面
同士を互いに対向させた第一、第二のディスクと、これ
ら第一、第二のディスクの中心軸に対し捻れの位置にあ
る枢軸を中心として揺動する複数のトラニオンと、これ
ら各トラニオンにこれら各トラニオンの内側面から突出
する状態で支持された変位軸と、これら各変位軸の周囲
に回転自在に支持された状態で、上記第一、第二の両デ
ィスクの間に挟持された複数のパワーローラと、これら
各パワーローラと上記各トラニオンの内側面との間に設
けられ、これら各パワーローラに加わるスラスト方向の
荷重を支承するスラスト玉軸受とを備える。そして、上
記第一、第二のディスクの内側面はそれぞれ断面が円弧
形の凹面であり、上記各パワーローラの周面は球面状の
凸面であり、これら各周面と上記各内側面とが互いに当
接している。又、上記各スラスト玉軸受は、複数の玉
と、これら複数の玉を転動自在に保持する保持器と、上
記各トラニオンの内側面に支持された外輪とを備えたも
のである。更に、これら各保持器は、円輪状の主体と、
それぞれがこの主体の直径方向中間部に形成されて、そ
の内側に上記各玉を転動自在に保持する複数のポケット
と、このポケットを横切る状態で、上記主体の内周縁と
外周縁との間に設けられた凹溝とを備えているものであ
る。

【００２７】特に、請求項１に記載したトロイダル型無
段変速機に於いては、これら各凹溝は、それぞれの延長
線が当該凹溝を形成したポケットの中心を通過せず、
又、このポケットの中心と上記保持器の中心とを結ぶ直
線上に位置せず、且つ、当該凹溝のうちでこの保持器の
外径寄り部分に存在する部分が、この保持器の外周縁と
当該ポケットとの間に存在する外径側仕切り部の円周方
向中央位置よりもこの外径側仕切り部の円周方向端部に
寄った部分に存在する。更に、請求項２に記載したトロ
イダル型無段変速機に於いては、上記各保持器の外径
は、上記各パワーローラと上記各外輪とのうちの少なく
とも一方の部材の外径よりも大きい。

【００２８】

【作用】上述の様な本発明のトロイダル型無段変速機は
何れも、パワーローラに付属のスラスト玉軸受の潤滑性
を確保しつつ、このスラスト玉軸受に組み込んだ保持器
の強度を確保できる。即ち、保持器を構成する主体の内
周縁と外周縁との間に設けられた凹溝により、この保持
器のポケット内に十分な量の潤滑油を流通させる事がで
きる為、上記スラスト玉軸受の潤滑性を確保できる。
又、請求項１に記載したトロイダル型無段変速機の場合
には、上記凹溝が外径側仕切り部の円周方向端部に寄っ
た部分に形成されている為、この外径側仕切り部の円周
方向中央部の断面積が上記凹溝により狭くなる事はな
い。この為、最も強度が低くなるこの外径側仕切り部の
円周方向中央部の強度を確保して、上記保持器の強度を
確保できる。又、請求項２に記載したトロイダル型無段
変速機の場合には、保持器の外径を大きくする分、外径
側仕切り部の幅、延ては断面積を広くし、最も強度が低
くなるこの外径側仕切り部の円周方向中央部の強度を確
保して、上記保持器の強度を確保できる。更に、請求項
１に記載した発明と請求項２に記載した発明とを組み合
わせれば、上記外径側仕切り部の円周方向中央部の強度
をより十分に確保して、上記保持器の強度をより十分に
確保できる。

【００２９】

【発明の実施の形態】図１は、請求項１に対応する、本
発明の実施の形態の第１例を示している。尚、本発明の
特徴は、保持器３４ａに設けた各ポケット３６、３６内
に潤滑油を流通させる為の凹溝４０ａ、４０ａの位置を
工夫する事により、上記保持器３４ａの強度を確保する
点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述した従
来構造と同様であるから、同等部分に関する図示並びに
説明は省略し、以下、本発明の特徴部分を中心に説明す
る。

【００３０】上記各凹溝４０ａ、４０ａは、上記保持器
３４ａを構成する円輪状の主体３９の内外両側面に、こ
の主体３９の直径方向中間部に形成した各ポケット３
６、３６を横切る状態で、この主体３９の内周縁と外周
縁との間に設けられている。本例の場合に上記各凹溝４
０ａ、４０ａは、上記主体３９の直径方向に亙って形成
している。但し、これら各凹溝４０ａ、４０ａは何れ
も、それぞれの延長線α、αが当該凹溝４０ａ、４０ａ
を形成したポケット３６、３６の中心β、βを通過しな
い。又、これら各凹溝４０ａ、４０ａは、これら各ポケ
ット３６、３６の中心β、βと上記保持器３４ａの中心
とを結ぶ直線γ、γ上に位置しない。そして、上記各凹
溝４０ａ、４０ａのうちで上記保持器３４ａの外径寄り
部分に存在する部分が、この保持器３４ａの外周縁と当
該ポケット３６、３６との間に存在する外径側仕切り部
４１、４１の円周方向中央位置よりもこの外径側仕切り
部４１、４１の円周方向端部に寄った部分に存在する。
尚、図示の例では、上記各凹溝４０ａ、４０ａを、上記
保持器３４ａの回転方向（図１の時計方向）に関して、
上記各ポケット３６、３６の前側に設けている。

【００３１】上述の様に構成する本例のトロイダル型無
段変速機の場合には、上記各凹溝４０ａ、４０ａが上記
各外径側仕切り部４１、４１の円周方向端部に寄った部
分に形成されている為、上記保持器３４ａのうち、断面
積が最も狭い上記各外径側仕切り部４１、４１の円周方
向中央部の断面積が、上記各凹溝４０ａ、４０ａにより
更に狭くなる事はない。この為、最も強度が低くなる上
記各外径側仕切り部４１、４１の円周方向中央部の強度
を確保して、上記保持器３４ａの強度を確保できる。

【００３２】尚、本例の場合には、上記各凹溝４０ａ、
４０ａを、上記保持器３４ａの回転方向に関して上記各
ポケット３６、３６の前端側に設けている為、上記各凹
溝４０ａ、４０ａを通じてこれら各ポケット３６、３６
内に送り込まれた潤滑油により、これら各ポケット３
６、３６内に保持された玉３３、３３（図７、１２参
照）の潤滑を効率良く行なえる。又、本例の場合には、
上記各凹溝４０ａ、４０ａを上記保持器３４ａの直径方
向に形成している為、これら各凹溝４０ａ、４０ａの形
成作業を能率良く行なえる。

【００３３】更に、図１に鎖線で示す様に、上記各凹溝
４０ａ、４０ａを上記各ポケット３６、３６の前端側だ
けでなく後端側にも設け、これら各凹溝４０ａ、４０ａ
を上記保持器３４ａの円周方向に関して互いに対称に設
ける事もできる。この様に構成すれば、上記保持器３４
ａが何れの方向に回転する場合でも、上記各ポケット３
６、３６内に保持された玉３３、３３の潤滑を効率良く
行なえる。この事は、トロイダル型無段変速機が前進状
態、後退状態の何れで運転される場合にも良好な潤滑性
を確保できる事を意味するだけでなく、保持器３４ａの
組み付け方向を何れの方向にした場合でも良好な潤滑性
を確保できる事も意味する。即ち、トロイダル型無段変
速機に組み込むスラスト玉軸受３２用の保持器３４ａの
場合、表裏対称である為、組み付け時に特に留意しない
と、組み付け方向が逆になる可能性がある。これに対し
て、上記各凹溝４０ａ、４０ａを表裏両面に形成すると
共に、上記各ポケット３６、３６の前端側だけでなく後
端側にも設ければ、上記保持器３４ａを何れの方向に組
み付けても、上記潤滑性を良好にできる。

【００３４】次に、図２は、請求項１に対応する、本発
明の実施の形態の第２例を示している。本例の場合に
は、各凹溝４０ｂ、４０ｂは、保持器３４ｂを構成する
円輪状の主体３９の内外両側面に、この主体３９の直径
方向中間部に形成した各ポケット３６、３６を横切る状
態で、この主体３９の内周縁と外周縁との間に設けられ
ている。本例の場合に上記各凹溝４０ｂ、４０ｂは、上
記主体３９の直径方向に対し傾斜させた状態で形成して
いる。傾斜方向は、上記保持器３４ｂの外径側に向かう
程この保持器３４ｂの回転方向（図２の時計方向）後方
に向かう方向としている。

【００３５】本例の場合も、上記各凹溝４０ｂ、４０ｂ
は何れも、それぞれの延長線α´、α´が当該凹溝４０
ｂ、４０ｂを形成したポケット３６、３６の中心β、β
を通過しない。又、これら各凹溝４０ｂ、４０ｂは、こ
れら各ポケット３６、３６の中心β、βと上記保持器３
４ｂの中心とを結ぶ直線γ、γ上に位置しない。そし
て、上記各凹溝４０ｂ、４０ｂのうちで上記保持器３４
ｂの外径寄り部分に存在する部分が、この保持器３４ｂ
の外周縁と当該ポケット３６、３６との間に存在する外
径側仕切り部４１、４１の円周方向中央位置よりもこの
外径側仕切り部４１、４１の円周方向端部に寄った部分
に存在する。

【００３６】上述の様に構成する本例のトロイダル型無
段変速機の場合も、上記各凹溝４０ｂ、４０ｂが上記各
外径側仕切り部４１、４１の円周方向端部に寄った部分
に形成されている為、上記保持器３４ｂのうち、断面積
が最も狭い上記各外径側仕切り部４１、４１の円周方向
中央部の断面積が、上記各凹溝４０ｂ、４０ｂにより更
に狭くなる事はない。この為、最も強度が低くなる上記
各外径側仕切り部４１、４１の円周方向中央部の強度を
確保して、上記保持器３４ｂの強度を確保できる。その
他の構成及び作用、並びに各凹溝４０ｂ、４０ｂを上記
各ポケット３６、３６毎に円周方向に関して対称に設け
る事もできる事は、前述した第１例の場合と同様であ
る。

【００３７】次に、図３は、請求項２に対応する、本発
明の実施の形態の第３例を示している。本例のトロイダ
ル型無段変速機の場合には、各パワーローラ８を支持す
る為の各スラスト玉軸受３２に組み込む保持器３４ｃの
外径Ｄ_34c を、上記各パワーローラ８の外径Ｄ₈ 及び上
記各スラスト玉軸受３２に組み込む各外輪３５の外径Ｄ
₃₅よりも大きくしている（Ｄ_34c ＞Ｄ₈ 、Ｄ_34c ＞
Ｄ₃₅）。

【００３８】この様な本例のトロイダル型無段変速機の
場合には、上記保持器３４ｃの外径Ｄ_34c を大きくする
分、この保持器３４ｃの外径側仕切り部４１ａの幅Ｗ
_41a 、延てはこの外径側仕切り部４１ａの断面積を広く
できる。この為、、最も強度が低くなるこの外径側仕切
り部４１ａの円周方向中央部の強度を確保して、上記保
持器３４ｃの強度を確保できる。更に、本例の構造と、
前述した第１例或は上述した第２例の構造とを組み合わ
せれば、上記外径側仕切り部４１ａの円周方向中央部の
強度をより十分に確保して、上記保持器３４ｃの強度を
より十分に確保できる。

【００３９】

【発明の効果】本発明のトロイダル型無段変速機は、以
上に述べた通り構成され作用して、パワーローラに付属
のスラスト玉軸受の潤滑性を確保しつつ、このスラスト
玉軸受に組み込んだ保持器の強度を向上させる為、この
スラスト玉軸受を組み込んだトロイダル型無段変速機の
信頼性並びに耐久性を向上させる事ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態の第１例を示す、保持器の
部分平面図。

【図２】同第２例を示す、保持器の部分平面図。

【図３】同第３例を示す、トロイダル型無段変速機の部
分断面図。

【図４】従来から知られたトロイダル型無段変速機の基
本的構成を、最大減速時の状態で示す側面図。

【図５】同じく最大増速時の状態で示す側面図。

【図６】従来の具体的構造の１例を示す断面図。

【図７】図６のＡ部拡大図。

【図８】従来構造に組み込まれていた保持器の１例を、
図７の上方から見た状態で示す平面図。

【図９】図８のＢ部拡大図。

【図１０】図９のＣ−Ｃ断面図。

【図１１】図１０のＤ矢視図。

【図１２】運転時にパワーローラに加わる力を説明する
為の部分断面図。

【図１３】運転時にパワーローラが弾性変形する状態を
誇張して示す略平面図。

【図１４】運転時にパワーローラに加わる別の力を説明
する為の、図１２の上方から見た略図。

【図１５】同じく図１２のＥ−Ｅ断面図。

【図１６】運転時にスラスト玉軸受を構成する各玉の公
転速度が変化する状態を、図１４と同方向から見た状態
で示す図。

【図１７】運転時にスラスト玉軸受を構成する各玉の公
転速度の変化に伴って保持器各部に力が加わる状態を、
図１４と同方向から見た状態で示す図。

【符号の説明】

１ 入力軸 ２ 入力側ディスク ２ａ 内側面 ３ 出力軸 ４ 出力側ディスク ４ａ 内側面 ５ 枢軸 ６ トラニオン ７ 変位軸 ８ パワーローラ ８ａ 周面 ９ 押圧装置 １０ カム板 １１ 保持器 １２ ローラ １３、１４ カム面 １５ クラッチ １６ 入力軸 １７ ニードル軸受 １８ 出力軸 １９ ハウジング ２０ 玉軸受 ２１ ころ軸受 ２２ 玉軸受 ２３ スリーブ ２４ 駆動側前進ギヤ ２５ 駆動側後退ギヤ ２６ 伝達ギヤ ２７ 取り出し軸 ２８ 従動側前進ギヤ ２９ 従動側後退ギヤ ３０ ナット ３１ ストップリング ３２ スラスト玉軸受 ３３ 玉 ３４、３４ａ、３４ｂ、３４ｃ 保持器 ３５ 外輪 ３６ ポケット ３７ スラスト軸受 ３８ 給油孔 ３９ 主体 ４０、４０ａ、４０ｂ 凹溝 ４１、４１ａ 外径側仕切り部 ４２ 内径側仕切り部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 3J051 AA03 BA03 BB01 BD02 BE09 EC03 EC06 FA02 FA04 3J101 AA04 AA32 AA42 AA53 AA63 BA22 CA04 FA32 GA01 GA51

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 回転軸と、この回転軸の周囲にそれぞれ
   回転自在に支持され、それぞれの内側面同士を互いに対
   向させた第一、第二のディスクと、これら第一、第二の
   ディスクの中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心と
   して揺動する複数のトラニオンと、これら各トラニオン
   にこれら各トラニオンの内側面から突出する状態で支持
   された変位軸と、これら各変位軸の周囲に回転自在に支
   持された状態で、上記第一、第二の両ディスクの間に挟
   持された複数のパワーローラと、これら各パワーローラ
   と上記各トラニオンの内側面との間に設けられ、これら
   各パワーローラに加わるスラスト方向の荷重を支承する
   スラスト玉軸受とを備え、上記第一、第二のディスクの
   内側面はそれぞれ断面が円弧形の凹面であり、上記各パ
   ワーローラの周面は球面状の凸面であり、これら各周面
   と上記各内側面とが互いに当接しており、上記各スラス
   ト玉軸受は、複数の玉と、これら複数の玉を転動自在に
   保持する保持器と、上記各トラニオンの内側面に支持さ
   れた外輪とを備えたものであり、これら各保持器は、円
   輪状の主体と、それぞれがこの主体の直径方向中間部に
   形成されて、その内側に上記各玉を転動自在に保持する
   複数のポケットと、このポケットを横切る状態で、上記
   主体の内周縁と外周縁との間に設けられた凹溝とを備え
   ているものであるトロイダル型無段変速機に於いて、こ
   れら各凹溝は、それぞれの延長線が当該凹溝を形成した
   ポケットの中心を通過せず、又、このポケットの中心と
   上記保持器の中心とを結ぶ直線上に位置せず、且つ、当
   該凹溝のうちでこの保持器の外径寄り部分に存在する部
   分が、この保持器の外周縁と当該ポケットとの間に存在
   する外径側仕切り部の円周方向中央位置よりもこの外径
   側仕切り部の円周方向端部に寄った部分に存在する事を
   特徴とするトロイダル型無段変速機。
2. 【請求項２】 回転軸と、この回転軸の周囲にそれぞれ
   回転自在に支持され、それぞれの内側面同士を互いに対
   向させた第一、第二のディスクと、これら第一、第二の
   ディスクの中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心と
   して揺動する複数のトラニオンと、これら各トラニオン
   にこれら各トラニオンの内側面から突出する状態で支持
   された変位軸と、これら各変位軸の周囲に回転自在に支
   持された状態で、上記第一、第二の両ディスクの間に挟
   持された複数のパワーローラと、これら各パワーローラ
   と上記各トラニオンの内側面との間に設けられ、これら
   各パワーローラに加わるスラスト方向の荷重を支承する
   スラスト玉軸受とを備え、上記第一、第二のディスクの
   内側面はそれぞれ断面が円弧形の凹面であり、上記各パ
   ワーローラの周面は球面状の凸面であり、これら各周面
   と上記各内側面とが互いに当接しており、上記各スラス
   ト玉軸受は、複数の玉と、これら複数の玉を転動自在に
   保持する保持器と、上記各トラニオンの内側面に支持さ
   れた外輪とを備えたものであり、これら各保持器は、円
   輪状の主体と、それぞれがこの主体の直径方向中間部に
   形成されて、その内側に上記各玉を転動自在に保持する
   複数のポケットと、このポケットを横切る状態で、上記
   主体の内周縁と外周縁との間に設けられた凹溝とを備え
   ているものであるトロイダル型無段変速機に於いて、上
   記各保持器の外径は、上記各パワーローラと上記各外輪
   とのうちの少なくとも一方の部材の外径よりも大きい事
   を特徴とするトロイダル型無段変速機。