JP2001098341A - 高加工用鋼板およびその製造方法 - Google Patents
高加工用鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
〜0.0100%,Mn:0.25〜0.60%,S:
0.0050〜0.0150%,N:0.0050%以
下,Ti:0.050〜0.100%を含み、少なくと
も円相当直径:300〜800nm,平均間隙:400
0nm以下の析出物を含む。鋼成分および析出物の形態
・分布状態が適正に設定されているので、転位の増殖が
容易であり、転位の加工セル組織が形成されやすくな
る。これによって高歪み速度下においても加工硬化が生
じやすくなり、高い均一伸びが確保されるので、プレス
加工割れが防止される。
Description
業機械分野のプレス加工用途に使用される高加工用鋼板
およびその製造方法に関し、特に高歪み速度変形の下で
好適に使用される高加工用冷延・めっき鋼板およびその
製造方法に関する。
レス加工部品には、鋼中のC,Nなどの侵入型固溶元素
を炭窒化物の形で固定した鋼(以後、「IF鋼」と呼
ぶ)が広く用いられている。IF鋼は、極低炭素鋼にT
i,Nb等の炭窒化物形成元素を添加した鋼であり、優
れた深絞り性および延性を有している。
上するために様々な試みが行われている。たとえば、I
F鋼の成分に関しては、高純度化が進められており、
C,N,Mn,S,Ti,Nb等の低減が図られてい
る。IF鋼の化学成分は、たとえばC:0.0021
%,Si:0.02%,Mn:0.15%,P:0.0
04%,S:0.002%,Al:0.046%,N:
0.0020%,Ti:0.042%,Nb:0.02
%である。IF鋼の製造条件に関しては、冷間圧下率の
高圧下率化および焼鈍温度の高温化が進められている。
ような問題がある。すなわち、通常の出荷時の引張り試
験結果と実際のプレス成形結果とが一致しないことがあ
る。さらに詳しく述べると、通常の出荷時の引張り試験
では良好な試験値(伸びEl)が得られているにもかか
わらず、実際のプレス成形において加工割れが発生する
ことがある。この加工割れは、加工部に発生する局部的
なくびれによるものであり、均一伸び不足に起因するも
のと考えられる。前記均一伸びは、引張り試験における
くびれの発生しない最大伸び値である。
響を受け、特に均一伸びは歪み速度の上昇に伴い低下す
ることが知られている。また日本鉄鋼協会基礎研究会、
極低炭素鋼板研究会「極低炭素鋼板の金属学」頁265
(平成5年8月)には、IF鋼についても、引張り試験
時の均一伸びが歪み速度の増加に伴い低下することが示
されており、さらに前記均一伸びの低下は、歪み速度が
増加することにより転位が増殖しにくくなり、転位の加
工セル組織の形成が遅れ、材料の加工硬化が変形に追い
つかなくなり、低歪み速度の場合よりも早期にくびれが
生じることによるものと説明されている。
F鋼の加工割れについて種々検討を重ねた結果、IF
鋼における歪み速度の上昇に伴う均一伸びの低下量は、
鋼成分および析出物の分布状態(大きさ、個数)の影響
を大きく受けること、析出物の大きさが小さく、析出
物の個数が少ない場合には、転位が増殖しにくくなるの
で、高歪み速度変形時の均一伸び低下量が著しく大きく
なり、プレス加工時に割れが発生しやすいこと、析出
物の大きさおよび個数を適正に制御すれば、転位が増殖
しやすくなるので、高歪み速度変形時の均一伸び低下量
を最小限に食い止め、プレス加工時の割れ発生を防止で
きることを見いだした。
あり、本発明の目的は高歪み速度変形時に高い均一伸び
を有し、かつ優れたプレス加工性を有する高加工用鋼板
およびその製造方法を提供することである。
C:0.0010〜0.0100%,Si:0.20%
以下,Mn:0.25〜0.60%,P:0.04%以
下,S:0.0050〜0.0150%,Al:0.0
1〜0.10%,N:0.0050%以下,Ti:0.
050〜0.100%を含み、残部がFeおよび不可避
的不純物からなり、さらに、少なくとも円相当直径:3
00〜800nm,平均間隙:4000nm以下の析出
物を含むことを特徴とする高加工用鋼板である。
充分に含有されているので、転位の増殖源となる析出物
を充分に析出させることができる。また析出物の大きさ
および平均間隙が後述のように転位の増殖しやすい範囲
の値を含むように設定されているので、転位の増殖しに
くい高歪み速度の場合でも転位の加工セル組織を充分に
形成することができる。したがって、変形に追従して材
料を加工硬化させることができ、高歪み速度下でも高い
均一伸びを確保することができる。この結果、プレス加
工割れの発生を防止することができる。
05〜0.030%をさらに含むことを特徴とする。
Nbをさらに含むので、Tiの添加量を低減しても炭窒
化物を確実に固定することができる。
10〜0.0100%,Si:0.20%以下,Mn:
0.25〜0.60%,P:0.04%以下,S:0.
0050〜0.0150%,Al:0.01〜0.10
%,N:0.0050%以下,Ti:0.050〜0.
100%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物から
なる鋼を溶製して連続鋳造し、連続鋳造したスラブを加
熱温度:1100〜1300℃で加熱し、Ar3点以上
の仕上げ温度で熱間圧延して450〜750℃の巻取り
温度で巻取り、脱スケール処理を施した後、冷間圧延を
行い、その後、750〜900℃の焼鈍温度で焼なまし
を行い、鋼中に少なくとも円相当直径:300〜800
nmの析出物を平均間隙:4000nm以下になるよう
に分布させることを特徴とする高加工用鋼板の製造方法
である。
充分に含有され、スラブ加熱条件、巻取り条件および焼
鈍条件が低温加熱、高温巻取りおよび高温加熱にそれぞ
れ設定されているので、後述のように冷延鋼板中の析出
物の形態および分布状態を転位の増殖しやすい状態に制
御することができる。
05〜0.030%をさらに含むことを特徴とする。
酸素との親和力が強く、添加歩留りの低いTiを低減し
て、酸素との親和力が弱く、添加歩留りの高いNbに置
き換えることができる。したがって、製鋼工程における
製造性を向上することができる。
である高加工用鋼板の析出物組織を示す拡大像である。
高加工用鋼板は、たとえば高加工用冷延鋼板であって、
素地鋼1中に多数の析出物3が分散した析出物組織を有
する。高加工用冷延鋼板は、重量%にて、C:0.00
10〜0.0100%,Si:0.20%以下,Mn:
0.25〜0.60%,P:0.04%以下,S:0.
0050〜0.0150%,Al:0.01〜0.10
%,N:0.0050%以下,Ti:0.050〜0.
100%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物から
なる。このように、本実施の形態の高加工用冷延鋼板
は、極低炭素鋼に炭窒化物形成元素であるTiを添加し
たTi−IF鋼である。したがって、C,Mn,S,
N,Tiの反応によって素地鋼中にMnS,TiS,T
iN,TiC,Ti4C2S2,Al2O3等の析出物が形
成される。前記化学成分の限定理由については後述す
る。
なくとも円相当直径d:300〜800nm,平均間隙
λm:4000nm以下の析出物が含まれる。析出物の
円相当直径dは、真円でない実際の析出物の大きさを析
出物の断面積と同じ面積の仮想円の直径で表したもので
ある。析出物の平均間隙λm(以後、「平均析出物間
隙」と呼ぶ)は、図2に示すように隣接する析出物の外
周面間の距離の平均値であり、隣接する析出物の中心間
の距離の平均値である平均析出物間距離をLm、円相当
直径dの平均値である平均円相当直径をdmとすると式
1によって算出される。析出物の円相当直径dおよび平
均析出物間距離Lmの算出方法については後述する。 λm = Lm − dm …(1)
板において析出物の形態・分布状態の制御が行われるの
は、次のような理由によるものである。前述のように、
高歪み速度変形時における均一伸びの低下は、転位の増
殖量の低下からくる加工硬化不足によるものであり、こ
の加工硬化不足を最小限に抑えるためには、高歪み速度
下の変形においても転位が増殖しやすく、かつ増殖した
転位が絡み合って加工セル組織を形成しやすい環境にす
る必要がある。
のとしては、結晶粒界と析出物とが考えられる。ここ
で、結晶粒界については結晶粒の微細化による粒界面積
の増大が転位を増殖しやすくさせると考えられるけれど
も、本実施の形態では後述のように深絞り性確保の点か
ら冷間圧下率を70%以上に、かつ焼なましの焼鈍温度
を750℃以上に制御する必要があり、冷間圧下率およ
び焼鈍条件の変更によって結晶粒を微細化することが困
難である。したがって、析出物の形態・分布状態の制御
によって転位の増殖を促進する方法が有効である。
と析出物との関係を説明するための図であり、図4は析
出物の大きさが大きいときの転位と析出物との関係を説
明するための図である。析出物の大きさが小さいとき、
転位4は図3に示すように析出物3を剪断して移動す
る。これによって、鋼は転位4が析出物3を剪断変形さ
せるのに必要な応力分だけ強化されるけれども、転位4
の増殖は生じない。前記強化応力σは、析出物の体積率
をf、析出物の円相当直径をd、比例定数をkとする
と、式2によって表される。 σ = k√(f・d) …(2)
4(1)〜(2)に示すように析出物3の間を張り出し
て移動し、図4(3)に示すように析出物間を通り抜け
るたびに析出物3のまわりに転位ループ5を残す。転位
ループ5の形成は、転位4の増殖を意味する。また転位
4の張り出し移動によって鋼は転位4の張り出しに必要
な応力分だけ強化される。前記強化応力σは、鋼の剛性
率をG,バーガーズベクトルをb、平均析出物間隙をλ
mとすると、式3によって表される。 σ = 2G・b / λm …(3)
応力σとの関係を示すグラフである。図5中の円相当直
径dの小さい領域の曲線6は、前記式2を表す曲線であ
り、図5中の円相当直径dの大きい領域の曲線7は、前
記式3を表す曲線である。したがって、曲線6と曲線7
との交点P1よりも析出物の大きさが大きい領域では転
位ループ5が形成され、小さい領域では転位ループ5が
形成されない。このように交点P1は転位ループ形成領
域と非形成領域との境界を表すので、交点P1に対応す
る析出物の円相当直径d1を以後、「析出物の臨界直
径」と呼ぶ。
し、歪み速度が高くなるにつれて大きくなる。すなわ
ち、歪み速度が低いときには、図6(1)に示すように
析出物の臨界直径d1は円相当直径dの小さい側に存在
するけれども、歪み速度が高いときには図6(2)に示
すように析出物の臨界直径d1は析出物の大きい側にず
れる。このようにずれることは、高歪み速度で変形する
ときには臨界直径d1よりも大きい析出物の個数が減少
することを意味している。すなわち歪み速度が高くなる
ほど転位ループが形成されにくくなり、転位の増殖が生
じにくくなることを示している。
びを改善し、プレス加工割れを防止するには、高歪み速
度変形下でも転位を増殖しやすい環境にする必要があ
る。このような環境は、臨界直径よりも大きい析出物の
個数を増加させることによって実現できる。また析出物
の体積率fが一定の場合、析出物の大きさを過度に粗大
化させると析出物の個数が少なくなるので、析出物の過
度な粗大化は避ける必要がある。したがって、転位ルー
プ数を最大にするには、析出物の大きさを臨界直径より
も若干大きい程度に調整する必要がある。析出物の大き
さをこのように調整すれば、転位が増殖しやすくなり、
かつ転位の加工セル組織が形成されやすくなるので、加
工硬化が生じやすくなる。したがって高歪み速度の変形
下でも高い均一伸びを得ることができ、プレス加工割れ
の発生を防止することができる。
のように少なくとも円相当直径d:300〜800n
m,平均析出物間隙λm:4000nm以下の析出物
(以後、「目標析出物」と呼ぶ)を含む。このような析
出物条件は、前述のような析出物の形態・分布状態の制
御に関する技術思想に基づいて設定したものである。前
記析出物の円相当直径dおよび平均析出物間隙λmの具
体的な数値限定理由については後述する。
化学成分が前述のように設定されるのは、次の理由によ
る。Cが0.0010〜0.0100%に設定されるの
は、下限値未満のC%では製鋼工程の脱炭処理に長時間
を必要とし、生産性が低下するとともに製造コストが増
大するからである。また上限値を超えるC%では、Cを
固定する高価なTi,Nbの添加量が増大してコストア
ップになるばかりでなく、Ti,Nb炭化物の増加によ
って再結晶温度が上昇し、機械的性質の低下を招くから
である。Siが0.20%以下に設定されるのは、上限
値を超えるSi%では鋼の強度が増大し、延性の低下を
招くからである。
との複合析出物を形成する元素であり、析出物制御上、
最も重要な元素である。Mnが0.25〜0.60%に
設定されるのは、下限値未満のMn%では大きさの小さ
い析出物の割合が多くなり、前記臨界直径d1以上の大
きさの析出物数が減少し、転位の増殖効果が充分に得ら
れないからである。したがって、Mnの下限値は、従来
のIF鋼よりも高めに設定されている。また上限値を超
えるMn%では、鋼の強度が増大して延性の低下を招く
からである。
限値を超えるP%では鋼の強度が増大して延性の低下を
招くからである。Sは、MnS,TiSなどの析出物を
形成する元素であり、析出物制御上、重要な元素であ
る。Sが0.0050〜0.0150%に設定されるの
は、下限値未満のS%では、析出物を大きさおよび個数
とも充分に形成することができないからであり、上限値
を超えるS%では析出物が過剰に形成され、鋼の清浄度
が低下するからである。したがって、Sの下限値は従来
のIF鋼より高めに設定されている。Alが0.01〜
0.10%に設定されるのは、下限値未満のAl%で
は、鋼を充分に脱酸することができなくなり、高価なT
iの酸化ロスの増大を招くからであり、上限値を超える
Al%では鋼の強度が増大して延性の低下を招くからで
ある。
るのは、下限値未満のTi%では鋼中のC,N,Sを充
分に固定することができなくなるとともに、大きさの小
さい析出物の割合が多くなるからである。上限値を超え
るTi%では鋼の強度が増大して延性の低下を招くから
である。したがって、Tiの下限値は従来のIF鋼より
も高めに設定されている。
Tiが従来のIF鋼に比べて高めに設定されているの
で、素地鋼1中に前記臨界直径d1よりも大きい析出物
3を充分に形成させることができる。
明するためのフローチャートである。ステップa1で
は、前記化学成分を有するTi−IF鋼の溶製が行われ
る。この溶製は、転炉精錬後、真空脱ガス装置で仕上げ
精錬することによって行われる。仕上げ精錬は、減圧下
で脱炭処理を施した後、Alを添加して脱酸処理を行
い、その後、Tiを添加する方法によって行われる。ス
テップa2では、溶製されたTi−IF鋼の連続鋳造が
行われ、スラブが鋳造される。鋳造されたスラブには、
表面疵取りが施される。
熱間圧延は、スラブ加熱温度:1100〜1300℃,
仕上げ温度:Ar3点以上,巻取り温度:450〜75
0℃の条件で行われる。前記スラブ加熱温度は、110
0〜1200℃の範囲の値に設定されることがさらに好
ましい。スラブ加熱温度を低めに設定することが好まし
いのは、スラブ加熱温度が低下するにつれて析出物の大
きさが大きくなり、冷延鋼板中に前記目標析出物を形成
することが容易になるからである。スラブ加熱温度の下
限値が1100℃に設定されるのは、下限値未満のスラ
ブ加熱温度では仕上げ温度をAr3点以上にすることが
困難になるからである。スラブ加熱温度の上限値が13
00℃に設定されるのは、上限値を超えるスラブ加熱温
度では析出物が微細化するので、冷延鋼板中に前記目標
析出物を形成することが困難になるからである。
点)以上に設定されるのは、Ar3点未満で熱間圧延す
ると結晶粒の粗大化が生じやすくなるからである。前記
巻取り温度は600〜750℃の範囲の値に設定される
ことがさらに好ましい。巻取り温度を高めに設定するこ
とが好ましいのは、巻取り温度が高くなるにつれて析出
物の大きさが大きくなり、冷延鋼板中に前記目標析出物
を形成することが容易になるからである。巻取り温度の
下限値が450℃に設定されるのは、下限値未満の巻取
り温度では析出物が微細化するので、冷延鋼板中に前記
目標析出物を形成することが困難になるからである。巻
取り温度の上限値が750℃に設定されるのは、上限値
以上の巻取り温度では熱延鋼板の酸化スケールの厚さが
増大して脱スケールが困難になるとともに、析出物が粗
大化して析出物個数が減少するので、平均析出物間隙λ
mが大きくなり、冷延鋼板中に前記目標析出物を形成す
ることが困難になるからである。
が塩酸酸洗によって行われる。ステップa5では、冷間
圧延が行われる。冷間圧延の冷間圧下率は60%以上、
好ましくは70%以上に設定される。冷間圧下率の下限
値が60%に設定されるのは、下限値未満の冷間圧下率
では冷延鋼板の深絞り性が低下するからである。
備において行われる。焼なましの焼鈍温度は、750〜
900℃の範囲の値に、さらに好ましくは800〜90
0℃の範囲の値に設定される。焼鈍温度を高めに設定す
ることが好ましいのは、焼鈍温度が高くなるにつれて伸
び値および深絞り性を表す指標である平均ランクフォー
ド値(平均r値)が向上するからである。焼なましの焼
鈍温度の下限値が750℃に設定されるのは、下限値未
満の焼鈍温度では冷間圧延加工を施されたTi−IF鋼
を充分に再結晶させることが困難であり、延性が著しく
低下するからである。焼なましの焼鈍温度の上限値が9
00℃に設定されるのは、上限値を超える焼鈍温度で
は、α→γ変態が起こり、α相の再結晶で形成された深
絞り性の優れた集合組織が消滅し、伸び値および平均r
値が低下するとともに、エネルギーコストが増大するか
らである。ステップa7では調質圧延が行われ、Ti−
IF鋼の高加工用冷延鋼板の製造が終了する。
鋼板の製造方法によれば、鋼中にMn,S,Tiが充分
に含まれており、かつスラブ加熱条件、熱延巻取り条件
および焼なまし条件が低温加熱、高温巻取りおよび高温
加熱にそれぞれ設定されているので、冷延鋼板中の析出
物の形態・分布状態を適正に制御することができ、冷延
鋼板中に前記目標析出物を確実に形成することができ
る。すなわち、冷延鋼板中に少なくとも円相当直径:3
00〜800nmの析出物を平均析出物間隙:4000
nm以下になるように分布させることができる。
は、適用鋼種としてTi−IF鋼を用いているけれど
も、これに限定されるものではなく、本発明の実施の第
2形態としてTi−Nb−IF鋼を用いてもよい。本実
施の形態は、実施の第1形態の鋼成分にNbを0.00
5〜0.0300重量%さらに添加したものであり、析
出物としてNbCなどNbの炭窒化物をさらに含む。本
実施の形態では、炭窒化物形成元素であるNbをTiと
ともに含むので、Tiの添加量を低減しても侵入型固溶
元素を確実に固定することができる。これによって、酸
素との親和力が強く、溶鋼への添加歩留りの低いTiを
低減して、酸素との親和力がTiよりも弱く溶鋼への添
加歩留りがTiよりも良好なNbに置き換えることがで
きるので、製鋼工程の製造性を向上することができる。
また析出物については、Nbの炭窒化物をさらに含むけ
れども、析出物は実質的に実施の第1形態と同一の挙動
を示す。本実施の形態のその他の構成は、実施の第1形
態と同一であるので説明を省略する。
態では、高加工用鋼板として高加工用冷延鋼板を対象に
しているけれども、これに限定されるものではなく、本
発明の実施の第3形態として高加工用めっき鋼板を対象
にしてもよい。本実施の形態では、高加工用めっき鋼板
のめっき方式は溶融めっき、電気めっき、蒸着めっきの
いずれでもよい。めっき方式が電気めっきの場合、高加
工用めっき鋼板は実施の第1形態の図7と同様の製造工
程で高加工用冷延鋼板を製造した後、電気めっきするこ
とによって製造される。
着めっきの場合、高加工用めっき鋼板は前記図7のステ
ップa5まで同様の製造工程で冷間圧延を行った後、ス
テップa6の焼なましを連続焼鈍設備ではなく溶融また
は蒸着めっき設備のライン内の還元焼鈍炉で行い、還元
焼鈍した冷延鋼板を引続き溶融または蒸着めっきし、め
っき後、ステップa7の調質圧延を行うことによって製
造される。まためっき金属の種類はZn,Al,Zn−
Al−Mg,Zn−Alなどいずれでもよい。
1形態のTi−IF鋼または実施の第2形態のTi−N
b−IF鋼と同一に設定される。したがって、高加工用
めっき鋼板のSi%は0.20%以下に設定されてい
る。Si%の上限値が0.20%に設定されているの
は、上限値を超えるSi%では、溶融Znめっき時のめ
っき濡れ性が低下し、不めっきが生じやすくなるからで
ある。本実施の形態のその他の構成は、実施の第1およ
び第2形態と同一であるので説明を省略する。
件を全て満たす発明例の冷延鋼板と、本発明の条件から
外れた比較例の冷延鋼板とを製造し、サンプルを採取し
て透過型電子顕微鏡で観察を行い、析出物の大きさおよ
び平均析出物間隙を測定するとともに、引張り試験片を
作成して異なる歪み速度の下で引張り試験を行い、均一
伸びを測定して発明例と比較例との比較を行った。発明
例および比較例の鋼成分および製造条件を表1に示し、
析出物の測定結果を表2に示し、冷延鋼板の引張り試験
結果を表3に示す。
i−IF鋼であり、サンプルDはTiが含まれていない
アルミニウムキルド鋼である。サンプルA,Bでは、M
n,Sが本発明の成分条件を低めに外れており、サンプ
ルC,DではMnが低めに外れている。発明例のサンプ
ルE,F,GはTi−IF鋼であり、サンプルHはTi
−Nb−IF鋼である。
析出物間隙λmは析出物を透過型電子顕微鏡で観察し、
観察した析出物を画像解析装置で画像解析することによ
って算出した。析出物の観察は、4万倍の倍率で視野を
ランダムに代えて繰返し行った。観察した総測定面積
は、114μm2であった。画像解析は、析出物を黒、
素地鋼を白に2値化して行った。析出物の円相当直径d
は、個々の析出物の面積Sを求め、その面積Sと同じ面
積の仮想円の直径を円相当直径として式4に基づいて算
出した。 d = √(4S/π) …(4)
て表2に示すように20nm以上と300nm以上とに
区分された。表2では、脚注のように円相当直径800
nmを超える析出物が観察されていないので、析出物は
実質的には20〜800nmと300〜800nmとに
区分されたことになる。したがって、以後実質的な区分
にしたがって説明する。また各区分毎に析出物の平均円
相当直径dmが算出された。
直径の区分毎に測定面積114μm2内の該当する析出
物の個数を求め、(ロ)前記求めた析出物個数に基づい
て単位面積当りの析出物個数N(個/μm2)を求め、
(ハ)前記図2に示す平均析出物間距離Lmを式5に基
づいて求め、(ニ)前記求めた平均析出物間距離Lmと
平均円相当直径dmとを式1に代入することによって算
出した。 Lm = √(1/N) …(5)
に低歪み速度である3.3×10-4S-1,中歪み速度で
ある1.7×10-1S-1,高歪み速度である3.3×1
00S-1,高歪み速度である1.8×101S-1の4水準
に設定した。このうち、通常の出荷試験における歪み速
度は3.3×10-4S-1程度であり、実プレス加工に相
当する歪み速度は、3.3×100S-1〜1.8×101
S-1のレベルである。表3の引張り試験の試験値は、冷
延鋼板の圧延方向に対して直角方向の試験値である。
0nmの析出物の個数は、比較例よりも発明例の方が多
いこと、(b)円相当直径300〜800nmの析出物
の平均析出物間隙λmは比較例がいずれも4000nm
を超えるのに対して、発明例はいずれも4000nm以
下であること、(c)円相当直径20〜800nmの析
出物の個数および平均析出物間隙λmは比較例および発
明例ともほぼ同等であることなどが判る。
出物の平均析出物間隙λmと均一伸びとの関係を示すグ
ラフであり、図9は円相当直径20〜800nmの析出
物の平均析出物間隙λmと均一伸びとの関係を示すグラ
フである。図8および図9中の均一伸びは、高歪み速度
の下におけるデータであり、歪み速度としては実プレス
加工に相当する3.3×100S-1と、1.8×101S
-1とが設定されている。図8および図9は、表3のデー
タに基づくものである。
相当直径300〜800nmの析出物の平均析出物間隙
λmが大きくなるにつれて比例的に低下すること、平均
析出物間隙λmが4000nm以下では均一伸びが20
%以上であることなどが判る。これは、円相当直径30
0〜800nmの析出物の平均析出物間隙λmが400
0nm以下の場合、前記臨界直径d1以上の析出物が充
分存在するので、転位が増殖しやすくなり、高歪み速度
下においても変形に追従して加工硬化が生じ、プレス加
工割れの防止が可能な20%以上の均一伸びが確保され
たものと考えられる。これに対して、円相当直径300
〜800nmの析出物の平均析出物間隙λmが4000
nmを超えると、前記臨界直径d1以上の析出物の個数
が少なくなり、転位の増殖効果が低下して均一伸びが低
下したものと考えられる。
析出物の平均析出物間隙λmと高歪み速度下の均一伸び
との間には、相関が全く認められないことが判る。図8
および図9から、高歪み速度下の均一伸びは、円相当直
径300〜800nmの比較的大きい析出物の平均析出
物間隙λmに依存し、その制御によって改善されるこ
と、円相当直径300nm未満の微小析出物は前記臨界
直径d1に達しないので、転位の増殖効果がなく、高歪
み速度下の均一伸びの改善に寄与しないことなどが判
る。
くとも含まれる析出物の円相当直径dが300〜800
nmの範囲の値に設定され、かつその平均析出物間隙λ
mが4000nm以下の値に設定されるのは、このよう
な理由によるものである。
示すグラフである。図10は、表3のデータに基づくも
のであり、各サンプルA〜H毎に歪み速度と均一伸びと
の関係が示されている。図10および表3から、発明例
E〜Hは歪み速度が高速になるにつれて均一伸びの低下
が認められるものの低下の度合が小さく、実プレス加工
に相当する高歪み速度においても均一伸びが20%以上
確保されること、比較例A〜Dは、歪み速度が高速にな
るにつれて均一伸びの低下の度合が大きくなり、実プレ
ス加工に相当する高歪み速度では、均一伸びが著しく低
下することなどが判る。
プレス加工に相当する高歪み速度下においても良好な均
一伸びを有しているので、プレス加工割れの発生を確実
に防止することができる。
れば、高歪み速度の場合でも転位を増殖して転位の加工
セル組織を充分に形成することができるので、変形に追
従して材料を加工硬化させることができ、高歪み速度下
でも高い均一伸びを確保することができる。したがっ
て、プレス加工割れの発生を防止することができる。
化物形成元素であるNbをさらに含むので、Tiの添加
量を低減しても炭窒化物を確実に固定することができ
る。
鋼板中の析出物の形態および分布状態を転位の増殖しや
すい状態に制御することができる。
をさらに含むので、添加歩留りの低いTiを低減して添
加歩留りの高いNbに置き換えることができる。したが
って、製鋼工程における製造性を向上することができ
る。
析出物組織を示す拡大像である。
均析出物間距離Lmとの関係を示す図である。
の関係を説明するための図である。
の関係を説明するための図である。
係を示すグラフである。
すグラフである。
フローチャートである。
析出物間隙λmと、均一伸びとの関係を示すグラフであ
る。
出物間隙λmと均一伸びとの関係を示すグラフである。
ある。
Claims (4)
- 【請求項1】 重量%にて、C:0.0010〜0.0
100%,Si:0.20%以下,Mn:0.25〜
0.60%,P:0.04%以下,S:0.0050〜
0.0150%,Al:0.01〜0.10%,N:
0.0050%以下,Ti:0.050〜0.100%
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、さ
らに、 少なくとも円相当直径:300〜800nm,平均間
隙:4000nm以下の析出物を含むことを特徴とする
高加工用鋼板。 - 【請求項2】 重量%にて、Nb:0.005〜0.0
30%をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の高
加工用鋼板。 - 【請求項3】 重量%にて、C:0.0010〜0.0
100%,Si:0.20%以下,Mn:0.25〜
0.60%,P:0.04%以下,S:0.0050〜
0.0150%,Al:0.01〜0.10%,N:
0.0050%以下,Ti:0.050〜0.100%
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を
溶製して連続鋳造し、連続鋳造したスラブを加熱温度:
1100〜1300℃で加熱し、Ar3点以上の仕上げ
温度で熱間圧延して450〜750℃の巻取り温度で巻
取り、脱スケール処理を施した後、冷間圧延を行い、そ
の後、750〜900℃の焼鈍温度で焼なましを行い、
鋼中に少なくとも円相当直径:300〜800nmの析
出物を平均間隙:4000nm以下になるように分布さ
せることを特徴とする高加工用鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 重量%にて、Nb:0.005〜0.0
30%をさらに含むことを特徴とする請求項3記載の高
加工用鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27640099A JP4460089B2 (ja) | 1999-09-29 | 1999-09-29 | 高加工用鋼板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27640099A JP4460089B2 (ja) | 1999-09-29 | 1999-09-29 | 高加工用鋼板およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001098341A true JP2001098341A (ja) | 2001-04-10 |
JP4460089B2 JP4460089B2 (ja) | 2010-05-12 |
Family
ID=17568889
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP27640099A Expired - Lifetime JP4460089B2 (ja) | 1999-09-29 | 1999-09-29 | 高加工用鋼板およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4460089B2 (ja) |
-
1999
- 1999-09-29 JP JP27640099A patent/JP4460089B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP4460089B2 (ja) | 2010-05-12 |
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