JP2001079011A - 血管塞栓コイルとその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】形成した血栓が一部壊れ、血流に乗って血管内
に流れ出し、末端血管で詰まることによる組織の壊疽
や、肺梗塞、体動脈閉塞等の合併症が危惧される。 【解決手段】所望長さの塞栓コイル１と、該塞栓コイル
１に突設された繊維２，２…とを備える。塞栓コイル１
は、カテーテルから押し出されることにより、予めの形
状に応じて血管内に螺旋状、クローバ状、直線状等の適
宜形状に留置される。繊維２，２…は、合成樹脂材等の
適宜素材からなり、少なくとも表面に高吸水性樹脂３，
３…が付着される。高吸水性樹脂３，３…は、水溶性高
分子を僅かに架橋して自重の数倍乃至数百倍もの水分を
吸収してヒドロゲルを形成する高分子からなり、具体的
にはポリアクリル酸やその共重合体の塩等が挙げられ
る。また、高吸水性樹脂３，３…の形状としては、直径
５０〜５００μｍ程度の球状にするのが好ましく、接着
剤で繊維２に付着させるのが良い。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、主として経カテー
テル動脈塞栓術（ＴＡＥ：transatheter arterial embo
lization）で使用される血管塞栓コイルの改良に関し、
更に詳しくは、経皮的血管カテーテルを用いて動脈瘤、
動静脈奇形（ＡＶＭ）などの血管障害の治療に用いられ
る血管塞栓コイルに存する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、経カテーテル動脈塞栓術（ＴＡ
Ｅ）は、粒子塞栓術（particulateembolization）、
液体塞栓術（fluid embolization）、固体塞栓術
（solidembolization）に大別され、就中、この固体塞
栓術には、塞栓コイル（金属コイル）とバルーンとが挙
げられる。

【０００３】従来、斯かる固体塞栓術として使用される
塞栓コイルは、人体の血管障害部位の治療方法の一つと
して、血管障害部位へカテーテルを導き、該カテーテル
より血管障害部位へ繊維状の樹脂を有する塞栓コイルを
留置して血栓を形成することにより、血管障害部位への
血液の流入を阻害する試みがなされている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の血管塞栓コイルにあっては、血栓形成に時間が
かかること、また、形成した血栓が一部壊れ、血流に乗
って血管内に流れ出し、末端血管で詰まることによる組
織の壊疽や、血栓が肺に入ることにより引き起こす肺梗
塞、体動脈閉塞等の合併症が危惧されている。

【０００５】また、塞栓コイル自体が血流に流されて移
動してしまったり、また、塞栓コイル一個では完全に血
管障害部位を塞栓できないといった問題があり、不完全
な塞栓による溶血等の重篤な合併症を引き起こす原因に
なってしまうこともある。

【０００６】更に、確実に塞栓するためには、殆どのケ
ースで、血管障害部位一箇所に対して沢山の塞栓コイル
が必要になっており、換言すれば、大小のコイルを鳥の
巣状に詰めて閉塞しなければならないなど、手技的に難
しくて注意を要する他、経済的に患者やその家族に負担
をかけてしまうことも少なくなかった。

【０００７】本発明はこのような従来の問題点に鑑みて
なされたもので、塞栓コイルの繊維に付着した高吸水性
樹脂が血液中の水分を吸収することで、血栓の形成なし
に血管を確実に塞栓することができると共に、塞栓コイ
ル自体が血流に流され難くて使用量を減らすことができ
る他、カテーテル内では潤滑性を持って通り抜け易くな
る有用な血管塞栓コイルとその製造方法の提供を目的と
したものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上述の如き従来の問題点
を解決し、所期の目的を達成するため本発明の要旨とす
る構成は、カテーテルより血管障害部位へ留置して血管
障害部位を塞栓せしめる血管塞栓コイルにおいて、少な
くとも表面に高吸水性樹脂を付着及び／又はコーティン
グしてなる繊維を有する血管塞栓コイルに存する。

【０００９】また、前記高吸水性樹脂は、水溶性高分子
を僅かに架橋して自重の数倍乃至数百倍もの水分を吸収
してヒドロゲルを形成する高分子からなり、延いては、
同高吸水性樹脂は、直径５０〜５００μｍ程度の球状を
呈するるのが良い。

【００１０】また、本発明は、接着剤を沸点が低く揮発
性の高い有機溶剤に溶解する工程と、粉末状の高吸水性
樹脂を混入し高吸水性樹脂が底に堆積しないように攪拌
する工程と、攪拌中の液体に塞栓コイルに付着する樹脂
繊維を浸漬する工程と、樹脂繊維を液体から取り出し有
機溶媒の揮発及び／又は接着剤の固化を待ち、その後、
再び液体に浸漬する工程と、樹脂繊維に粉末状の高吸水
性樹脂が付着していることを確認した後、同樹脂繊維を
コイルに付着する工程とを有する血管塞栓コイルの製造
方法に存する。

【００１１】このように構成される本発明の血管塞栓コ
イルは、少なくとも表面に高吸水性樹脂を付着及び／又
はコーティングしてなる繊維を有することによって、前
記高吸水性樹脂が血液中の水分を吸収することで膨張す
るため、血栓の形成なしに血管障害部位を確実に塞栓し
得ることとなる。

【００１２】また、壊れた血栓が流れる心配もなく、同
時に、体積が増えた高吸水性樹脂が血管壁に対して圧力
をかけることにより、塞栓コイル自体が血流に流され難
くなる。

【００１３】更に、塞栓コイルの使用量も減らすことが
できるので経済的であり、また、カテーテル内では、血
液が少量となるため、高吸水性樹脂が適度に吸水して潤
滑性を持ち、カテーテル内を通り抜け易くなる。

【００１４】

【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の一例を図面
を参照しながら説明する。図中Ａは、本発明に係る血管
塞栓コイルであり、この血管塞栓コイルＡは、図１に示
すように、所望長さの塞栓コイル１と、該塞栓コイル１
に突設された繊維２，２…とを備えている。

【００１５】塞栓コイル１は、例えば、直径０．０１
８，０．０２５，０．０３５インチ、長さ５〜３０ｍｍ
の金属コイル等からなり、カテーテルから押し出される
ことにより、予めの形状に応じて血管内に螺旋状（図１
参照）、クローバ状、直線状等の適宜形状に留置される
ものである。

【００１６】また、繊維２，２…は、合成樹脂材等の適
宜素材からなり、少なくとも表面に高吸水性樹脂３，３
…が付着されている。

【００１７】高吸水性樹脂３，３…は、水溶性高分子を
僅かに架橋して自重の数倍乃至数百倍もの水分を吸収し
てヒドロゲルを形成する高分子からなり、具体的にはポ
リアクリル酸やその共重合体の塩等が挙げられる。

【００１８】また、斯かる高吸水性樹脂３，３…の形状
としては、図２乃至図６に示すように、直径５０〜５０
０μｍ程度の球状にするのが好ましく、接着剤４，４…
で繊維２に付着させるのが良い。

【００１９】例えば、高吸水性樹脂３，３…の一部に接
着剤４，４…を介して繊維２に突設したり（図３参
照）、高吸水性樹脂３，３…及び繊維２の表面を全て接
着剤４の被膜で被装しても良い（図４参照）。

【００２０】また、図５乃至図６に示すように、厚い接
着剤４（若しくは繊維２に対し親和性のあるポリマー
層）に高吸水性樹脂３，３…の一部（図５参照）又は全
部（図６参照）を埋め込むべく付着しても良い。

【００２１】尚、図４及び図６の如く繊維２及び高吸水
性樹脂３，３…の全面を接着剤４にて被装する場合は、
透湿性の接着剤が必要となることは云うまでもない。

【００２２】このように構成される本発明の血管塞栓コ
イルＡは、カテーテルを使用して必要部位の血管（血管
障害部位）内に留置されることにより、図２に示すよう
に、塞栓コイル１の繊維２，２…に付着している高吸水
性樹脂３，３…が血液中の水分を吸収することで膨張
し、各高吸水性樹脂３，３…自体の体積が増えること
で、血栓の形成なしに血管障害部位を確実に塞栓するこ
とができる。

【００２３】従って、従来の如く壊れた血栓が流れる心
配がなく、また、同時に高吸水性樹脂３，３…は体積が
増えて血管壁（図示せず）に対して圧力をかけるため、
塞栓コイル１自体が血流に流され難くなる。

【００２４】また、従来の塞栓コイルに比して、使用量
を減らすことができるため経済的であり、更には、カテ
ーテル（図示せず）内では血液が少量となり、また、高
吸水性樹脂３，３…が適度に吸水して潤滑性を持つこと
も相俟って、カテーテル内を通り抜け易くなるのであ
る。

【００２５】次に、本発明に係る血管塞栓コイルの製造
方法について説明する。まず、第１工程について説明す
る。接着剤を沸点が低く揮発性の高い有機溶剤に溶解し
て粘度を落とす。尚、接着剤の粘度が低く繊維に対して
厚くなければ、有機溶剤に溶かす必要はない。

【００２６】次に、第２工程について説明する。粉末状
の高吸水性樹脂を混入し高吸水性樹脂が底に堆積しない
ように攪拌し続ける。斯かる高吸水性樹脂としては、前
述したように、ポリアクリル酸やその共重合体の塩等が
挙げられ、また、形状としては、直径５０〜５００μｍ
程度の球状（粉末状）が良い。

【００２７】次に、第３工程について説明する。攪拌中
の液体に塞栓コイルに付着する樹脂繊維を浸漬して数分
間放置する。樹脂繊維としては、合成、非合成を問わず
如何なる繊維をも使用できるが、これに限定されること
なく、必要に応じ高吸水性樹脂３，３…と同様な吸水性
ポリマーを用いても良い。

【００２８】次に、第４工程について説明する。樹脂繊
維を液体から取り出し有機溶媒の揮発及び／又は接着剤
の固化を待ち、その後、再び液体に浸漬する。換言すれ
ば、有機溶媒を使用していれば有機溶媒の揮発を待ち、
有機溶媒を使用していなければ接着剤の固化を待ち、そ
の後、再び、液体に浸漬し、必要に応じこれを数回繰り
返すのが良い。

【００２９】次に、第５工程について説明する。樹脂繊
維に粉末状の高吸水性樹脂が付着していることを確認し
た後、同樹脂繊維をコイルに付着する。これにより、繊
維２，２…上に高吸水性樹脂３，３…が接着剤４を通じ
てコーティングされた最終製品（塞栓コイル）が出来上
がるのである。

【００３０】尚、本発明の血管塞栓コイルＡは、本実施
例に限定されることなく、本発明の目的の範囲内で自由
に設計変更し得るものであり、本発明はそれらの全てを
包摂するものである。

【００３１】

【発明の効果】本発明は上述のように構成され、少なく
とも表面に高吸水性樹脂を付着及び／又はコーティング
してなる繊維を有することによって、前記高吸水性樹脂
が血液中の水分を吸収することで膨張し、高吸水性樹脂
自体の体積が増えることで血栓の形成なしで血管を塞栓
することができるため、壊れた血栓が流れる心配がな
く、また、同時に体積が増えた高吸水性樹脂が血管壁に
対して圧力をかけるため、塞栓コイル自体が血流に流さ
れ難くなるといった効果を奏するものである。

【００３２】また、従来の塞栓コイルに比して、使用量
を減らすことができるので、経済的であり、また、カテ
ーテル内では、血液が少量となるため、高吸水性樹脂が
適度に吸水して潤滑性を持ち、カテーテル内を通り抜け
易くなるといった効果をも奏すると共に、構成が単純で
あるため大量生産に適し、価格も低廉なものとして需要
者に提供できるなど、本発明を実施することはその実益
的価値が甚だ大である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る血管塞栓コイルを示す斜視図であ
る。

【図２】塞栓コイルに付着した高吸水性樹脂の膨潤状態
を示す説明図である。

【図３】高吸水性樹脂の一部に接着剤を介して繊維の表
面に同樹脂を突設した状態を示す説明図である。

【図４】高吸水性樹脂及び繊維の表面を全てを接着剤
(被膜)で被装した状態を示す説明図である。

【図５】厚い接着剤に高吸水性樹脂の一部を埋め込むべ
く付着させた状態を示す説明図である。

【図６】厚い接着剤に高吸水性樹脂の全部を埋め込むべ
く付着した状態を示す説明図である。

【符号の説明】

１ 塞栓コイル ２ 繊維 ３ 高吸水性樹脂 ４ 接着剤

フロントページの続き (72)発明者 神納 敏夫 兵庫県宝塚市中山桜台６−15−１ Ｆターム(参考） 4C060 DD01 DD48

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】カテーテルより血管障害部位へ留置して血
   管障害部位を塞栓せしめる血管塞栓コイルにおいて、少
   なくとも表面に高吸水性樹脂を付着及び／又はコーティ
   ングしてなる繊維を有することを特徴とする血管塞栓コ
   イル。
2. 【請求項２】前記高吸水性樹脂は、水溶性高分子を僅か
   に架橋して自重の数倍乃至数百倍もの水分を吸収してヒ
   ドロゲルを形成する高分子からなることを特徴とする請
   求項１に記載の血管塞栓コイル。
3. 【請求項３】前記高吸水性樹脂は、直径５０〜５００μ
   ｍ程度の球状を呈していることを特徴とする請求項１又
   は２に記載の血管塞栓コイル。
4. 【請求項４】接着剤を沸点が低く揮発性の高い有機溶剤
   に溶解する工程と、粉末状の高吸水性樹脂を混入し高吸
   水性樹脂が底に堆積しないように攪拌する工程と、攪拌
   中の液体に塞栓コイルに付着する樹脂繊維を浸漬する工
   程と、樹脂繊維を液体から取り出し有機溶媒の揮発及び
   ／又は接着剤の固化を待ち、その後、再び液体に浸漬す
   る工程と、樹脂繊維に粉末状の高吸水性樹脂が付着して
   いることを確認した後、同樹脂繊維をコイルに付着する
   工程とを有することを特徴とする血管塞栓コイルの製造
   方法。