JP2001068749A

JP2001068749A - 積層型圧電アクチュエータ

Info

Publication number: JP2001068749A
Application number: JP24166699A
Authority: JP
Inventors: Tomoyoshi Kato; 友好加藤; Takahiro Yamakawa; 孝宏山川; Yoko Otsuki; 洋子大槻
Original assignee: Taiheiyo Cement Corp
Current assignee: Taiheiyo Cement Corp
Priority date: 1999-08-27
Filing date: 1999-08-27
Publication date: 2001-03-16

Abstract

(57)【要約】【課題】強度、特に曲げ強度が高く、細径化にも容易
に対応できる積層型圧電アクチュエータを提供すること
である。【解決手段】圧電材と内部電極とが交互に積層されて
なる積層体を具備し、前記内部電極を用いて前記圧電材
に電圧を印加することで、前記積層体が変形し、対象物
を駆動するための変位が得られるよう構成された積層型
圧電アクチュエータであって、前記積層体を構成する前
記圧電材および前記内部電極が、前記対象物を駆動する
ための変位の方向と直交する方向に沿って積層されてな
る積層型圧電アクチュエータ。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、超音波リ
ニアモータにおける超音波振動子として用いられる積層
型圧電アクチュエータに関するものである。

【０００２】

【発明が解決しようとする課題】近年、その優れた特性
から、各種機器の駆動源として超音波リニアモータが使
用されることが多くなっている。また、これと並行して
機器の小型化が進んでおり、その駆動源である超音波リ
ニアモータについても、一層のコンパクト化が求められ
ている。

【０００３】さて、超音波リニアモータを更にコンパク
トなものとするには、その主要な構成要素である超音波
振動子、すなわち積層型圧電アクチュエータ（以下、単
に圧電アクチュエータとも言う）の小型化が不可欠であ
る。更に具体的には、圧電アクチュエータを細径化する
必要が、つまり一層細長い形状とする必要がある。ここ
で、超音波振動子としての役割を果たす積層型の圧電ア
クチュエータについて、図３を用いて説明する。

【０００４】従来型の圧電アクチュエータは、図３
（ａ）に示すごとく、一面に内部電極１１が形成され
た、圧電材料（例えばチタン酸ジルコン酸鉛系の材料）
からなる原料シート１２を多数積層させ、焼成して得ら
れたものである。なお、内部電極１１は、その一つの縁
辺が、原料シート１２の手前側縁辺または奥側縁辺と交
互に一致するよう設けられている。

【０００５】焼成処理により得られた焼結体には、その
互いに対向する二つの側面に外部電極１３が形成され
る。そして、これによって、図３（ｂ）に示す積層型の
圧電アクチュエータとなる。ちなみに、外部電極１３に
高周波を印加した際、この圧電アクチュエータは、図３
における上下方向、すなわち原料シート１２の積層方向
と同じ方向に振動（変位）する。

【０００６】ところで、こうした従来型の圧電アクチュ
エータは、その構造上、曲げ（原料シートの積層方向と
直交する方向からの力）に対して非常に脆い。特に、機
器の小型化を図るべく圧電アクチュエータを細径化した
場合、この性質が急に顕著になり、実用に堪えないおそ
れがある。したがって、本発明が解決しようとする課題
は、強度、特に曲げ強度が高く、細径化にも容易に対応
できる積層型圧電アクチュエータを提供することであ
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するべく
鋭意研究を推し進める過程で、本発明者は、従来型の圧
電アクチュエータが曲げに対して非常に脆弱である原因
を見出した。その原因とは次のようなものである。圧電
アクチュエータのサイズが、例えば、縦２ｍｍ、横２ｍ
ｍ、高さ１０ｍｍである場合、たとえ焼成処理によって
焼結していたとしても、同圧電アクチュエータは、実質
上、２ｍｍ四方の極薄な圧電材を、高さが１０ｍｍとな
るよう多数積層した構造となっている。つまり、圧電ア
クチュエータの内部には無数の境界面が存在する。した
がって、積層方向（変位方向）と直交する力を受けた
際、すなわち、圧電アクチュエータに対して、それを曲
げようとする力が加わった際には、ある位置において、
積層された極薄な圧電材同士が比較的簡単に離間する。
この結果、圧電アクチュエータに折損などのトラブルが
生じるのである。しかも上記圧電材間の接合強度は、基
本的に接触面積に比例するから、圧電アクチュエータを
細径化（狭幅化）すると、この細径化の度合い以上に、
接合強度が減少する。このため、細径化してなる圧電ア
クチュエータは、極端に強度、特に曲げ強度が低下する
のである。

【０００８】そこで本発明者は、圧電アクチュエータに
対し、それを曲げようとする力、すなわち変位方向と直
交する方向からの力が作用した際に、積層された圧電材
同士が容易に離間しないような構造とすれば、上記問題
を解決できるであろうと考えた。そして、更なる研究の
結果、従来構造の圧電アクチュエータにおいて使用され
ていた圧電縦効果に替わって、圧電横効果を利用するこ
とを思いついた。

【０００９】すなわち、周知のように、圧電材料には、
印加した電界の方向に変形する性質（圧電縦効果）と、
これとは逆に、印加した電界の方向と直交する方向に変
形する性質（圧電横効果）とがある。従来型の圧電アク
チュエータにおいては、専ら圧電縦効果が使用されてお
り、圧電材の積層方向、つまり内部電極の積層方向に沿
った変位が利用されるよう構成されていた。これに対し
て、本発明者は、圧電材および内部電極を、対象物を駆
動するための変位の方向と直交する方向に沿って積層
し、圧電横効果による、積層方向と直交する方向に沿っ
た圧電材の変形を利用することを考えた。

【００１０】こうした構造を採用した場合、圧電アクチ
ュエータが、その変位方向と直交する方向から力を受け
ても、すなわち、圧電アクチュエータに対して、それを
曲げようとする力が作用しても、この力は、積層された
圧電材同士を離間させるようには作用しない。したがっ
て、圧電アクチュエータの強度、特に曲げ強度が格段に
向上し、折損などのトラブルが簡単には起きなくなる。
そして、圧電アクチュエータをこうした構造とすれば、
細径化を図った場合でも、曲げに対して十分な強さを発
揮する。つまり、圧電アクチュエータの細径化にも容易
に対応することが可能となる。

【００１１】本発明は、こうした知見に基づいてなされ
たものであり、上記の課題は、圧電材と内部電極とが交
互に積層されてなる積層体を具備し、前記内部電極を用
いて前記圧電材に電圧を印加することで、前記積層体が
変形し、対象物を駆動するための変位が得られるよう構
成された積層型圧電アクチュエータであって、前記積層
体を構成する前記圧電材および前記内部電極は、前記対
象物を駆動するための変位の方向と直交する方向に沿っ
て積層されてなることを特徴とする積層型圧電アクチュ
エータによって解決される。

【００１２】なお、本発明の積層型圧電アクチュエータ
においては、積層体の互いに対向する二つの側面に外部
電極が設けられるが、内部電極は、その縁辺において、
この外部電極に対応する部分のみが、圧電材の縁辺と一
致するよう設けられてなることが好ましい。これによっ
て、積層型圧電アクチュエータの絶縁処理を簡素化する
ことができる。

【００１３】また、本発明の積層型圧電アクチュエータ
においては、動作時の発熱を抑えるため、圧電材として
誘電損失が１％未満のものを用いてなることが好まし
い。特に、本発明の積層型圧電アクチュエータは、周波
数が１ｋＨｚ〜１ＭＨｚの高周波電力によって駆動され
る振動子としての使用に好適である。そして、このよう
な振動子として使用する場合には、圧電材として誘電損
失が１％未満のものを用いることが、非常に大きな意味
を持つ。すなわち、従来型の圧電アクチュエータでは、
誘電損失が１％以上の圧電材（ソフト系圧電材）が用い
られていた。このため、例えば１００ｋＨｚ程度の高周
波にて駆動すると、発熱量が極度に多くなり、早期に劣
化して所期の性能が得られなくなるという問題があっ
た。これに対して、上記のごとく、圧電材として誘電損
失が１％未満のもの（ハード系圧電材）を用いた場合に
は、高周波にて駆動しても、問題となるような発熱を伴
わない。したがって、早期劣化が抑えられ、長期にわた
って安定的に所期の性能が発揮される。

【００１４】なお、上記ハード系圧電材における誘電損
失の下限値は、特に存在しない。強いて挙げれば（現実
にはありえないが）、０％である。すなわち、本発明の
積層型圧電アクチュエータを構成する圧電材における、
誘電損失の理想的な範囲は、０％以上、１％未満であ
る。

【００１５】

【発明の実施の形態】以下で本発明の一実施形態として
説明する積層型圧電アクチュエータは、圧電材と内部電
極とが交互に積層されてなる積層体を具備し、内部電極
を用いて圧電材に電圧を印加することで、積層体が変形
し、対象物を駆動するための変位が得られるよう構成さ
れたものであって、積層体を構成する圧電材および内部
電極は対象物を駆動するための変位の方向と直交する方
向に沿って積層されてなることを特徴とする。特に本実
施形態では、積層体の互いに対向する二つの側面に外部
電極を設けており、内部電極の縁辺において、この外部
電極に対応する部分のみが圧電材の縁辺と一致するよ
う、内部電極を設けている。更に本実施形態では、圧電
材として誘電損失が１％未満のハード系のものを用いて
いる。

【００１６】続いて、図１および図２を用い、本発明の
実施形態について、更に具体的に説明する。なお、図１
は本実施形態に係る積層型圧電アクチュエータの外観
図、図２は積層される原料シートおよび内部電極の斜視
図である。以下で説明する本実施形態の積層型圧電アク
チュエータ（単に本圧電アクチュエータとも言う）は、
例えば、超音波リニアモータにおける超音波振動子とし
て用いられるものである。すなわち、本圧電アクチュエ
ータは、超音波リニアモータの主要構成要素として、同
リニアモータのスライド部材と対面する位置に配置され
る。そして、周波数が１ｋＨｚ〜１ＭＨｚの高周波によ
って駆動される。但し、言うまでもなく、本圧電アクチ
ュエータの使途は、これに限定されるわけではない。

【００１７】さて本圧電アクチュエータは、図１に示す
ごとく、細長い直方体状のものである。そのサイズは、
一例を挙げれば、縦寸法Ａおよび横寸法Ｂは共に２ｍ
ｍ、高さ寸法（長さ）Ｈは１０ｍｍである。そして、高
さ方向（図１中、上下方向）の変位すなわち振動が、対
象物の駆動に利用されるようになっている。なお、高さ
寸法Ｈは、通常、縦寸法Ａ又は横寸法Ｂの５〜１０倍と
なるよう設定される。

【００１８】本圧電アクチュエータは、圧電材と内部電
極とが交互に積層されてなる積層体を主体構成要素とす
る。更に詳しく言うと、本圧電アクチュエータは、図２
に示すごとく、圧電材料からなる原料シート１と膜状の
内部電極２とを、上記変位方向と直交する方向に沿って
交互に積層、圧着し、更にこれを所定の温度（例えば１
１００℃）で焼成し、得られた焼結体（積層体）の対向
する二つの側面に外部電極３を形成して、分極処理を施
した構造となっている（外部電極３の片方は図示せ
ず）。したがって、原料シート１が焼結したものが上記
圧電材である。ちなみに、本実施形態では、原料シート
１の積層枚数を５０枚程度としている。

【００１９】参考までに言うと、上記原料シート１は、
例えば、チタン酸ジルコン酸鉛系の圧電材料から構成さ
れている。具体的には、次のようにして製造されたもの
である。すなわち、まず、チタン酸ジルコン酸鉛の粉末
に、水、有機バインダ、分散剤、そして消泡剤を所定の
量ずつ添加し、十分に混合する。次に、こうして得られ
たスラリーに真空脱泡処理を施す。そして、この後、ド
クターブレード法により、所定の厚さ（例えば５０μ
ｍ）を有するシートを形成する。これが上述した原料シ
ート１である。なお、この原料シート１を焼結させてな
る上記圧電材の誘電損失は１％未満である。つまり、本
実施形態では、高周波による駆動時の発熱を抑えるた
め、圧電材としてハード系のものを用いている。

【００２０】一方、内部電極２は原料シート１と別体で
はなく、原料シート１の片側の面に印刷によって設けら
れている。ここでは、この内部電極２を、原料シート１
の表面に内部電極原料ペースト（例えば銀−パラジウム
系のペースト）をスクリーン印刷することにより得てい
る。正確に言うと、上記圧電材と対をなす内部電極２と
は、このスクリーン印刷されたペーストが焼成処理され
てできたものを指す。但し、最も外側に位置する２枚の
原料シート１については、上記内部電極２は設けられな
い。

【００２１】なお、内部電極２の縁辺は、その一部にお
いてのみ原料シート１の縁辺と、したがって上記圧電材
の縁辺と一致している。すなわち、内部電極２は凸部２
ａを有する。ゆえに、原料シート１の周縁部の大半に
は、内部電極２が形成されていない。このようにしたの
は、積層体表面の絶縁処理を不要とするためである。ち
なみに、内部電極２の縁辺において、原料シート１の縁
辺と一致するのは、外部電極３に対応する部位である。

【００２２】そして本実施形態では、内部電極２の凸部
２ａを互い違いに設けている。更に正確に言うと、図２
において、ある内部電極２の凸部２ａについては手前側
に存在するよう、一方、これに隣接する内部電極２の凸
部２ａについては奥側に存在するようにしている。した
がって、積層される多数の内部電極２は、対向する二つ
の外部電極３に対して、交互に接続されることになる。
ゆえに、外部電極３同士の間に電圧を印加することで、
圧電材各々に対して電圧を印加することが可能となって
いる。

【００２３】特に本実施形態では、圧電横効果を利用し
ているので、内部電極２を用いて圧電材に電圧を印加し
た際に生じる、電界方向と直交する方向に沿った圧電材
の収縮が、圧電アクチュエータの変位となる。つまり、
図２における上下方向の変位（高さ方向の変位）が、対
象物の駆動に利用される。さて本実施形態では、積層体
を構成する圧電材（焼結した原料シート１）および内部
電極２を、対象物を駆動するための変位方向と直交する
方向に沿って積層している。よって、上記積層体すなわ
ち本圧電アクチュエータでは、その変位方向と直交する
方向から力を受けても、言い換えれば、本圧電アクチュ
エータに対して、それを曲げようとする外力が働いて
も、この外力により、積層された圧電材同士が離間させ
られることはない。それゆえ、本圧電アクチュエータは
強度、特に曲げ強度が高く、折損などのトラブルが起き
にくい。加えて、細径化（狭幅化）を図った場合でも、
本圧電アクチュエータは、曲げに対して十分な強さを発
揮する。つまり、本圧電アクチュエータは、細径化にも
容易に対応することができる。

【００２４】ちなみに、本発明の有用性を確かめるた
め、以下の条件にて三点曲げ試験を実施し、試験片の抗
折力（折れた瞬間に加えられた荷重）を計測した。な
お、試験片は、上記構成の本圧電アクチュエータおよび
従来型圧電アクチュエータ（積層方向と変位方向とが同
じもの）であり、形状や寸法、基本的な組成は全て同じ
である。

【００２５】〔試験条件〕試験片の寸法：長さ（高さ）１０ｍｍ×縦２ｍｍ×横２ｍｍ支持点間距離：８ｍｍ荷重の作用位置：試験片の中央〔試験結果〕従来型の圧電アクチュエータでは抗折力が
８ｋｇｆに満たなかったのに対し、本圧電アクチュエー
タでは抗折力が１２ｋｇｆを上回った。これにより、本
圧電アクチュエータは、従来型の１．５倍以上の抗折力
を示すことが確認された。

【００２６】

【発明の効果】本発明に係る積層型圧電アクチュエータ
は、強度、特に曲げ強度が高く、細径化にも容易に対応
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態に係る積層型圧電アクチュエ
ータの外観図

【図２】積層される原料シートおよび内部電極の斜視図

【図３】（ａ）は従来型圧電アクチュエータを構成する
原料シートの積層状態を示す斜視図、（ｂ）は従来型圧
電アクチュエータの外観図

【符号の説明】

１原料シート２内部電極２ａ内部電極の凸部３外部電極

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】圧電材と内部電極とが交互に積層されて
なる積層体を具備し、前記内部電極を用いて前記圧電材
に電圧を印加することで、前記積層体が変形し、対象物
を駆動するための変位が得られるよう構成された積層型
圧電アクチュエータであって、前記積層体を構成する前記圧電材および前記内部電極
は、前記対象物を駆動するための変位の方向と直交する
方向に沿って積層されてなることを特徴とする積層型圧
電アクチュエータ。
【請求項２】積層体の互いに対向する二つの側面には
外部電極が設けられており、内部電極の縁辺において前
記外部電極に対応する部分のみが、圧電材の縁辺と一致
するよう、前記内部電極が設けられてなることを特徴と
する請求項１に記載の積層型圧電アクチュエータ。
【請求項３】圧電材として誘電損失が１％未満のもの
を用いてなることを特徴とする請求項１又は請求項２に
記載の積層型圧電アクチュエータ。
【請求項４】周波数が１ｋＨｚ〜１ＭＨｚの高周波電
力によって駆動される振動子として使用されるものであ
ることを特徴とする請求項１〜請求項３のいずれかに記
載の積層型圧電アクチュエータ。