JP2001060505A - 一方向性電磁鋼板用の一次再結晶焼鈍板 - Google Patents

一方向性電磁鋼板用の一次再結晶焼鈍板

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JP2001060505A
JP2001060505A JP11233753A JP23375399A JP2001060505A JP 2001060505 A JP2001060505 A JP 2001060505A JP 11233753 A JP11233753 A JP 11233753A JP 23375399 A JP23375399 A JP 23375399A JP 2001060505 A JP2001060505 A JP 2001060505A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁気特性とくに磁束密度が良好な一方向性電
磁鋼板を安定して製造することができる中間材としての
一次再結晶焼鈍板を提供する。 【解決手段】 一次再結晶焼鈍板の表層近傍の集合組織
を、Bunge のオイラー角表示で、φ1 =0°、Φ=15
°、φ2 =0°の方位から10°以内に極大方位を有する
ように制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気特性が良好な方向
性電磁鋼板を安定して製造するのに有利な中間材として
の一次再結晶焼鈍板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】方向性珪素鋼板は、主として変圧器その
他の電気機器の鉄心材料として使用され、磁束密度およ
び鉄損値などの磁気特性に優れることが基本的に重要で
ある。そのため、厚さ:100 〜300 mmのスラブを、高温
に加熱したのち、熱間圧延し、ついでこの熱延板を1回
または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終
板厚としたのち、脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、
ついで焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶および純
化を目的として最終仕上焼鈍を施すという複雑な工程が
採られている。磁気特性を高めるためには、最終仕上焼
鈍工程での二次再結晶で、磁化容易軸である<001>
軸が圧延方向に揃った{110}<001>方位いわゆ
るゴス方位の結晶粒を成長させることが重要である。
【0003】仕上げ焼鈍で{110}<001>方位に
集積した二次再結晶を効果的に発達させるためには、そ
の前段階、すなわち脱炭焼鈍後の鋼板状態を適正に制御
することが極めて重要であり、特に制御すべき点として
以下の3つが挙げられる。
【0004】一つ目は、粒成長を抑制するインヒビター
と呼ばれる分散相を、均一かつ適正なサイズに分散させ
ることである。インヒビターの作用により、最終仕上焼
鈍時に、一次再結晶粒の成長が抑制されるのであるが、
最も粒成長の優位性の高い{110}<001>方位の
粒だけが、他の方位を蚕食して大きく成長できるよう
に、インヒビターの抑制力は、{110}<001>方
位の粒のみが成長でき、他の粒の成長は阻止できるよう
な強さに制御しなければならない。かようなインヒビタ
ーとして代表的なものは、MnS,MnSe, AlNおよびVN
のような硫化物、Se化合物および窒化物等で、鋼中への
溶解度が極めて小さいものが用いられていて、熱延前の
スラブ加熱時にインヒビターを一旦完全に固溶させてか
ら、その後の工程で微細に析出させることにより、抑制
力を制御する方法が採られている。
【0005】二つ目は、一次再結晶後の結晶粒径分布を
適正に制御することである。一次再結晶組織の結晶粒径
については、二次再結晶の駆動力の制御という観点から
研究が進められてきた。例えば特開平2−182866号公報
には、一次再結晶粒の平均直径が15μm 以上で、かつ変
動係数(平均直径で規格化した粒径分布の標準偏差)が
0.6以下の一次再結晶組織を備えていることが重要であ
ることが開示されている。また、特開平4-337029号公報
には、最終冷間圧延前の焼鈍過程における鋼のN量を検
出し、その結果に基づいて15〜25μm の範囲内の一次再
結晶粒を得るように一次再結晶焼鈍における設定温度を
変更する技術が開示されている。さらに、特開平6-331
41号公報には、脱炭焼鈍後の一次再結晶粒の平均直径を
6〜11μm 、かつ変動係数が 0.5以下とし、最終仕上焼
鈍の二次再結晶開始直前までに一次再結晶粒の平均直径
を5〜30%大きくする技術が開示されている。
【0006】上記したように、最適な一次再結晶粒径に
は諸説がある。これは、二次再結晶を生じさせるには、
粒成長の駆動力とそれを抑えるインヒビターの抑制力の
バランスを微妙に制御することが肝要であって、鋼板の
化学組成、工程条件によってインヒビターの抑制力が変
化すると、最適な駆動力すなわち最適な一次再結晶粒径
も変化するということである。
【0007】三つ目は、一次再結晶集合組織の適正制御
である。インヒビター抑制力と粒成長駆動力の制御だけ
では、良好な二次再結晶は生じず、最終仕上焼鈍前段階
での集合組織が二次粒の成長性や方位({110}<0
01>への集積の強さ)に大きな影響を及ぼす。
【0008】本発明は、かかる一次再結晶集合組織制御
に係わるもので、従来からの常識を覆す新発見に基づい
て、良好な二次再結晶に有利な集合組織を有する一次再
結晶焼鈍板を提案するものである。
【0009】従来、最終仕上焼鈍前の集合組織に関して
は、主方位が{111}<112>方位に強く集積し、
かつその中に二次再結晶の核となる先鋭性の高い{11
0}<001>方位を存在させることが重要であるとさ
れてきた。このような考え方は、特開平5−171371号公
報や特公平7-26155号公報に示されるように、Σ9対応
関係にある粒界は移動し易いとの説に基づくものであ
る。Σの対応関係とは、粒界を挟んだ両側の結晶格子を
延長して重ね合わせ、平行移動して格子点の一対を一致
させると、格子点のうち1/Σが隣の格子点と一致する
関係であり、Σ9対応関係の場合は、厳密には、粒界を
挟む両側の粒が<110>軸回り38.9°の回転関係にあ
ることをいうが、一般的には、回転角が38.9±5.0 °の
範囲内はΣ9対応関係とみなせる(Brandonの条件:厳密
な対応関係から15°/Σ1/2 以内であれば、対応関係と
みなせる)。
【0010】{110}<001>と{111}<11
2>は、<110>軸回り35.3°の回転関係にあるた
め、Σ9の関係とみなせる範囲内にある。従って、一次
再結晶集合組織においては、{111}<112>に強
く集積したマトリクス中に、先鋭性の高い{110}<
001>が散在している状態が、{110}<001>
方位の二次再結晶には有利であると考えられてきた。
【0011】また、最近では、一次再結晶焼鈍板のマト
リクスの方位は、必ずしも{111}<112>近傍ば
かりではないことから、副方位にも着目すべきことが開
示された。例えば、特開平9−296219号公報、特開平9
−256051号公報では、副方位である{411}<148
>方位の強度を制御することが重要であると開示してい
る。{110}<001>と{411}<148>は、
ほぼΣ9対応関係にあり、ここでもΣ9対応関係にある
粒界は移動し易いとの考え方が基盤となっていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな対応関係からみて理想的な集合組織であっても、二
次再結晶不良が生じたり、二次再結晶はするものの{1
10}<001>からずれた方位が多く出現するなどし
て、製品の磁気特性が悪化する例がしばしば現れること
から、磁気特性が良好な方向性電磁鋼板を安定して製造
することのできる中間材としての一次再結晶焼鈍板を開
発することが急務となっている。
【0013】本発明は、上記の要請に有利に応えるもの
で、磁気特性が良好な方向性電磁鋼板を安定して製造す
ることができる中間材としての一次再結晶焼鈍板を提案
することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、先
に、二次再結晶の途中過程における結晶粒の方位分布を
解析することによって、ゴス方位が二次再結晶すること
とΣ9対応関係とは無関係であることを見出した。そし
て、特開平10−140297号公報において、一次再結晶後に
ゴス方位から20〜40°の方位差を有する方位粒がマトリ
クス中に多数存在していることが、良好な二次再結晶を
生じさせるために重要であることを開示した。これは、
粒界を挟んだ両側の結晶粒が20〜40°の方位差を有する
場合に、粒界エネルギーが高くなって、粒界移動速度が
速まるためと考えられる。そこで、発明者らは、さらに
鋭意研究を進めた結果、方位差20°から40°の範囲内で
も、特に30°の方位差の粒界が最も粒界エネルギーが高
く移動し易いことが分かってきた。なお、ここでいう二
方位間の方位差とは、二方位を重ねるための最小回転角
度である。
【0015】従って、仕上げ焼鈍前の段階で、ゴス方位
から約30°の方位差をもつ方位を多く存在させることが
重要となるわけであるが、ゴス方位から約30°の方位差
をもつ任意の方位が自由に増減させられるわけではな
く、圧延と焼鈍の結果得られる一次再結晶集合組織にお
いて、出現し易い方位はいくつかに絞られる。そこで、
一次再結晶集合組織を3次元方位空間で解析し、強く集
積するいくつかの方位ピークに着目し、これらのピーク
の中心がゴス方位から約30°になるよう制御すればよい
のではないかという仮説を立てた。そして、この仮説に
立って、数多くの実験と検討を重ねた結果、本発明を完
成させるに至ったのである。
【0016】すなわち、本発明は、鋼板の表層近傍の集
合組織が、Bunge のオイラー角表示で、φ1 =0°、Φ
=15°、φ2 =0°の方位から10°以内に極大方位を有
することを特徴とする一方向性電磁鋼板用の一次再結晶
焼鈍板である。
【0017】また、本発明は、鋼板の表層近傍の集合組
織が、Bunge のオイラー角表示で、φ1 =0°、Φ=15
°、φ2 =0°の方位から10°以内、またはφ1 =5
°、Φ=20°、φ2 =70°の方位から10°以内に極大方
位を有し、かつ鋼板の中心層の集合組織が、同じくBung
e のオイラー角表示で、φ1 =90°、Φ=60°、φ2
45°の方位から5°以内に極大方位を有することを特徴
とする一方向性電磁鋼板用の一次再結晶焼鈍板である。
【0018】さらに、本発明は、C:0.005 〜0.08wt
%、Si:2.0 〜4.5 wt%、Mn:0.03〜2.5 wt%を含有
し、かつAl:0.003 〜0.050 wt%、Se:0.003 〜0.050
wt%、S:0.003 〜0.050 wt%、Sb:0.001 〜0.3 wt
%、Sn:0.001 〜0.3 wt%のうちから選んだ一種または
二種以上を含有する組成になる珪素鋼スラブを、熱延
し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、一回または
中間焼鈍を挟む二回以上の冷間圧延によって最終板厚と
し、ついで一次再結晶焼鈍を施すことによって得られ
る、一方向性電磁鋼板用の一次再結晶焼鈍板である。
【0019】オイラー角による結晶方位の表示について
は、Roe の表示法(ψ,θ,φによる表示)とBunge の
表示法(φ1 ,Φ,φ2 による表示)がある。
【0020】まず、Roe の表示法について説明する。空
間に固定された直行座標系をX,Y,Z(XをRD方
向、YをTD方向、ZをND方向とする)、結晶に固定
された直行座標系をx,y,z(xを[100]方向、
yを[010]方向、zを[001]方向)とする。
(X,Y,Z)と(x,y,z)が一致した状態から、
結晶をZ軸(ND)回りにφ回転させ、続いてY軸(T
D)回りにθ回転させ、最後に再びZ軸(ND)の回り
にψ回転させた方位がRoe の表示法による(ψ,θ,
φ)方位である。
【0021】Bunge の表示法は、変数の定義が若干異な
っているが、Roe の表示法と次のような関係がある。 φ1(Bunge)=ψ(Roe) +90° Φ (Bunge)=θ(Roe) φ2(Bunge)=φ(Roe) −90° 最近では、Bunge の表示法の方が一般によく使用されて
いるので、本発明でもBunge 表示法で結晶方位を表すこ
ととする。
【0022】また、極大方位について次のように定義す
る。すなわち、Bunge のオイラー角表示でφ1 、Φ、φ
2 なる方位のランダム強度比をf(φ1 ,Φ,φ2 )と
し、φ1 =x,Φ=y,φ2 =zなる方位が極大方位で
あるとは、以下の(1), (2), (3) が全て成立することと
して定義する。 (1) 絶対値の十分小さい全ての正および負のhの値に対
して、 f(x+h,y,z)−f(x,y,z)<0 (2) 絶対値の十分小さい全ての正および負のkの値に対
して、 f(x,y+k,z)−f(x,y,z)<0 (3) 絶対値の十分小さい全ての正および負の1の値に対
して、 f(x,y,z+1)−f(x,y,z)<0 なお、ランダム強度比とは、特定方位の存在比率を表す
ものであり、 (測定部位において、特定方位を有する部分の存在比
率) ÷(配向性が全くない仮想的な場合の、その方位を
有する部分の存在比率) と定義する。
【0023】集合組織は、X線の回折強度より極点図を
測定し、その結果から方位分布関数(ODF)によって
3次元の強度分布を計算することができる。また、Elec
tronBack Scattering Pattern (EBSP) 、Electron Chan
neling Pattern(ECP)等により各結晶粒の方位を直接測
定することによって、強度分布を求めることもできる。
【0024】また、一般に集合組織は板の厚み方向で変
化する。そこで、本発明では、試料の表層近傍(試料表
面からサブスケールを除去し、厚み方向に50μm 以内入
った部分)および中心層(試料を厚み方向に二等分する
位置)で集合組織を測定することとする。表層近傍に着
目した理由は、二次再結晶粒は比較的表層近傍から発
生、成長し易く、この位置の集合組織が良好な二次再結
晶を生じさせるために極めて重要だからである。また、
表層近傍で発生した二次再結晶粒が厚み方向に成長でき
るかどうかは、中心層の集合組織によって決まるため、
本発明では中心層の集合組織にも着目した。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の基礎になった実験
結果について説明する。C:0.050 wt%、Si:3.00wt
%、Mn:0.08wt%、Al:0.010 wt%、N:0.005wt%、
S:0.001 wt%、Se:0.005 wt%、Cu:0.10wt%および
Sb:0.020 wt%を含有し、残部はFeおよび不可避不純物
からなるスラブを複数用意し、1250℃に加熱後、熱間圧
延して3.0 mm厚の熱延コイルとした。ついで、熱延コイ
ルの一部を採取し、実験室にて熱延板焼鈍を施し、酸洗
後、第1回目の冷間圧延を施した。第1回目の冷間圧延
後の板厚は0.60〜2.0 mmの範囲で変化させた。次に、 9
00〜1100℃の温度で中間焼鈍後、再び酸洗した後、第2
回目の冷間圧延を施し、0.22mmの最終板厚に仕上げた。
第2回目の冷間圧延では、圧延温度を常温から 350℃ま
での範囲で変化させた。その後、これらの圧延板に対
し、脱脂処理を行い、 850℃で 120秒間の脱炭を兼ねた
一次再結晶焼鈍を施したのち、焼鈍分離剤を塗布してか
ら、最終仕上焼鈍を施した。
【0026】一次再結晶焼鈍後、試料の一部を採取し、
表層近傍および中心層の集合組織の測定を行った。冷間
圧延における圧下配分、中間焼鈍温度および冷間圧延温
度を変化させることにより、一次再結晶集合組織を変化
させた試料が22通り準備できた。なお、集合組織は、X
線極点図により測定し、測定データから3次元集合組織
を計算により求めた。3次元集合組織はφ1 、Φ、φ2
いずれも5°刻みで求めた。
【0027】最終仕上焼鈍後、未反応分離剤を除去し、
コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成
分とする絶縁コーティングを塗布し、 800 ℃で焼き付
けて製品とした。各製品から、圧延方向に沿ってエプス
タインサイズの試験片を切り出し、磁束密度B8 を測定
した。
【0028】表層の集合組織 一次再結晶焼鈍板の集合組織の解析から、ゴス方位から
30°前後の方位差を有する方位の中で、圧延・再結晶に
より表層部(試料表面からサブスケールを除去し、厚み
方向に50μm 以内入った部分)で頻繁に出現し得る方位
は Bungeのオイラ一角表示で、φ1 =0°、Φ=15°、
φ2 =0° (以後(0 15 0)と略す)とφ1 =5°、
Φ=20°、φ2 =70° (以後(5 20 70)と略す)およ
びφ1 =90°、Φ=60°、φ2 =45°(以後(90 60 4
5)と略す)であることが分かった。しかしながら、
(0 15 0)、(5 20 70)および(90 60 45)が必ず
しも極大方位となるわけではなく、特に(0 15 0)、
(520 70)付近の極大方位は工程条件によってかなり
シフトすることが判明した。そこで、(0 15 0)、
(5 20 70)付近で極大となる方位と製品の磁気特性B
8 (T)との関係について調査したところ、表1に示す
結果を得た。
【0029】
【表1】
【0030】同表に示したとおり、(0 15 0)から10
°以内と(5 20 70)から10°以内のどちらか一方また
は両方に極大方位が存在する場合には、製品の磁気特性
8は1.85T以上の良好な値を示した。しかしながら、
(0 15 0)から10°以内と(5 20 70)から10°以内
のどちらにも極大方位が存在しない場合には、磁気特性
8 は1.85T未満であった。
【0031】中心層の集合組織 次に、製品の磁気特性B8 が1.85T以上であった試料に
ついて、さらに一次再結晶後の試料の中心層における集
合組織を測定し、製品の磁気特性との関係を調査したと
ころ、表2に示す結果を得た。
【0032】
【表2】
【0033】同表に示したとおり、中心層の集合組織に
おいて、(90 60 45)から5°以内に極大方位が存在す
る場合には、製品の磁気特性B8 は特に良好で1.88T以
上になるのに対し、(90 60 45)から5°以内に極大方
位が存在しない場合は、1.85〜1.88Tであった。
【0034】一次再結晶後の中心層において、(90 60
45)から5°以内に極大方位が存在しない場合の特徴と
して、集合組織では{411}<148>方位( Bunge
のオイラー角表示でφ1 =20°、Φ=20°、φ2 =45
°。以後(20 20 45)と略す)が強く、中心付近の一次
粒径は粗大化している傾向にあった。また、製品におい
ては、ところどころ二次粒が板厚方向に貫通できていな
い部分があった。
【0035】上記の実験結果を考察すると、集合組織制
御について次のように考えられる。 (1) 一次再結晶集合組織においては、まず表層近傍の集
合組織制御が肝要である。というのは、二次再結晶粒は
比較的表層近傍から発生・成長し易く、この領域の集合
組織が良好な二次再結晶を生じさせるために非常に重要
だからである。表層近傍の集合組織によって、粒成長開
始直後にゴス方位が周囲に比べてサイズ効果を持つまで
に成長できるか、逆に周囲に蚕食されてしまうかが決ま
ってくる。最終仕上焼鈍時にゴス方位の成長をし易くす
るためには、ゴス方位から30°程度の方位差の粒の頻度
が高ければよい。ここに、ゴス方位から30°程度の方位
差であり、一次再結晶焼鈍後に表層近傍に頻繁に現れる
方位としては(0 15 0)、(5 20 70)および(90 6
0 45)の3つの方位が挙げられる。
【0036】(0 15 0)方位は、最終冷延圧下率が低
い場合に発達し易い。この方位は、ゴス方位からの方位
差が35°であり、適切な方位差30°よりも若干大きい。
しかしながら、ゴス方位に蚕食されずに残ったとして
も、磁化容易軸<001>が圧延方向を向いているた
め、磁気特性の劣化を引き起こさない方位である。従っ
て、最終冷延圧下率が低い場合には、(0 15 0)近傍
に極大方位が存在するように、一次再結晶集合組織を制
御すべきである。
【0037】(5 20 70)方位は、最終冷延圧下率が比
較的高い場合に発達し易い。この方位は、ゴス方位から
の方位差が30°であり、ゴス方位の成長には最適であ
る。従って、ゴス方位に蚕食されずに残る確率は小さ
い。また、ゴス方位に蚕食されずに残ったとしても、磁
化容易軸<001>と圧延方向とのずれは14°しかない
ため、磁気特性の劣化をあまり生じない。さらに、この
方位は、ND回りの方位分散が小さいことから、ジャス
トゴス方位粒の成長に最適であり、またゴス方位からず
れた粒(特に磁気特性を劣化させるゴス方位からND回
りにずれた粒)が成長しにくいという利点がある。従っ
て、最終冷延圧下率が高い場合には、(5 20 70)近傍
に極大方位が存在するように、一次再結晶集合組織を制
御すべきである。
【0038】(90 60 45)方位は、表層近傍では一般に
極大方位になり易いので、本発明では特に制御の対象と
はしない。ただし、この方位の強度が強すぎると、相対
的に(0 15 0)方位または(5 20 70)方位への集積
が弱まり、(0 15 0)近傍や(5 20 70)近傍に極大
方位が存在しなくなる。また、(90 60 45)方位は、ゴ
ス方位からの方位差が30°であり、ゴス方位の成長には
最適であるが、ND回りの方位分散が大きいことから、
ゴス方位からずれた粒(特に磁気特性を劣化させるゴス
方位からND回りにずれた粒)も成長し易いという欠点
を持つ。従って、(90 60 45)方位が表層で極端に多く
なることは好ましくない。
【0039】(2) 表層の一次再結晶粒集合組織を、上記
したように制御すれば、最終仕上焼鈍時にジャストゴス
方位のみが二次再結晶し、製品の磁気特性は良好となる
が、さらに安定して良好な磁気特性を得るには、中心層
の集合組織制御が重要となる。中心層の集合組織は、表
層で発生し、成長し始めた二次粒が板厚方向の中心部で
止められることなく貫通できるかどうかを支配する。
【0040】中心層の一次再結晶粒集合組織において、
発達し易い方位は(90 60 45)方位と(20 20 45)方位
である。(90 60 45)方位は、ゴス方位からの方位差が
30°であり、しかも一次粒径が均一になり易いため、表
層で発生したゴス方位の二次粒が成長するには最適であ
る。しかしながら、中心層において、(90 60 45)付近
の極大方位は、製造条件によってシフトし易く、(90 6
0 45)から大きくずれてしまい易い。(90 60 45)への
集積が弱まると、相対的に(20 20 45)方位が増大す
る。この(20 20 45)方位は、ゴス方位との方位差が39
°であり、最適値30°よりも大きい。また、(20 20 4
5)方位は、周囲の一次粒よりも粗大になり易いため、
表層で発生した二次粒が板厚中心部で止められてしま
う。従って、中心層では(90 60 45)近傍に極大方位が
存在するように、一次再結晶集合組織を制御すべきであ
る。
【0041】以上、説明したとおり、一次再結晶集合組
織は、表層と中心層に分けて制御すべきであり、表層で
は(0 15 0)方位と(5 20 70)方位に、一方中心層
では(90 60 45)方位に着目すべきことが判明した。従
来から注目されてきた{111}<112>((90 54.7
45)方位)と{411}<148>((20 20 45)方位)
はいずれも、ゴス方位とΣ9の対応方位関係の範囲内(B
randonの条件)であるが、本発明で対象とする(0 15
0)、(5 20 70)および(90 60 45)はゴス方位とΣ
9の対応方位関係の範囲ではない。
【0042】(90 60 45)は、ミラー指数表示では{5
54}<225>に近く、BCC金属多結晶材の一次再
結晶集合組織としては比較的頻繁に発生する方位として
知られている(鉄鋼薄板の再結晶及び集合組織;昭和49
年鉄鋼基礎共同研究会再結晶部会)が、一方向性電磁鋼
板の一次再結晶集合組織としては、これまでゴス方位と
の対応方位関係という観点から{111}<112>に
より注目が集められてきた。しかしながら、本発明によ
り、ゴス方位の二次再結晶と対応方位関係とは無関係で
あることが明らかになった。なお、本発明では、表層で
は(0 15 0)方位または(5 20 70)方位が、一方中
心層では(90 60 45)方位が、それぞれ極大方位である
か否かが重要であり、その集積度は特に限定しないし、
また他に強いピークが存在するか否かについても限定し
ない。
【0043】次に、一次再結晶焼鈍板の集合組織を制御
する方法としては、材料成分、スラブ加熱条件、熱間圧
延条件、熱延板焼鈍条件、中間焼鈍条件、冷間圧延条件
(特に圧下率と圧延温度および時効処理条件)および一
次再結晶焼鈍条件等の調整が挙げられる。表層で(0 1
5 0)または(5 20 70)に、中心層で(90 60 45)に
強く集積させる方法としては、例えば以下のような方法
がある。
【0044】方法1:スラブに含有させるインヒビター
成分を従来レベルよりも大幅に低減することによって、
最終冷延前における鋼板表層部の粒径を大きくし、粒内
からの再結晶を促進させる方法。表層部で粒内からの再
結晶を促進させることにより、(0 15 0)方位や(5
20 70)方位の一次再結晶が頻繁になる。
【0045】方法2:圧延温度を上げること(温間圧
延)により、<110>方向が圧延方向に揃ったバンド
組織からの(0 15 0)方位や(5 20 70)方位の再結
晶を促進させる方法。温間圧延による集合組織変化は、
表層近傍で顕著に起こるので、本発明の集合組織制御に
は有効である。特に、タンデム圧延機での温間圧延は、
表層近傍では剪断変形を起こし(0 15 0)方位や(5
20 70)方位の一次再結晶を促進する一方、中心層では
均一変形を起こし(90 60 45)方位の一次再結晶を促進
するので、極めて効果的である。
【0046】方法3:素材成分(特にインヒビター成
分)に応じて最終冷延圧下率を調整する方法。これは、
素材成分が異なると一次再結晶集合組織の集積のピーク
がシフトする性質と、圧下率が異なると一次再結晶集合
組織の集積のピークがシフトする性質を組み合わせて利
用する方法である。
【0047】本発明では、上記したように、一次再結晶
焼鈍板の集合組織を制御することが重要である。制御す
る方法は特に限定されるものではないが、一般には、以
下の製造条件に従うことが望ましい。
【0048】まず、素材の成分組成範囲について説明す
る。 C:0.005 wt%以上、0.08wt%以下 Cは、組織を改善し、二次再結晶を安定化させるために
必要な元素で、そのためには 0.005wt%以上含有させる
ことが好ましい。しかしながら、0.08wt%を超えると冷
延時の破断が増加するだけでなく、脱炭に要する焼鈍時
間が長くなり生産性の低下を招くので、0.08wt%以下と
することが好ましい。
【0049】Si:2.0 wt%以上、4.5 wt%以下 Siは、電気抵抗を増加させ鉄損を低減するために不可欠
の元素であり、このためには 2.0wt%以上含有させる必
要があるが、4.5 wt%を超えると加工性が劣化し、製造
や製品の加工が極めて困難になるので、2.0 wt%以上、
4.5 wt%以下の範囲で含有させることが好ましい。
【0050】Mn:0.03wt%以上、2.5 wt%以下 Mnも、同じく電気抵抗を高め、また製造時の熱間加工性
を向上させるのに有用な元素である。この目的のために
は、0.03wt%以上の含有が必要であるが、2.5wt%を超
えて含有した場合、 γ変態を誘起して磁気特性が劣化
するので、0.03wtwt%以上、2.5 wt%以下の範囲とする
ことが好ましい。
【0051】インヒビター成分 Al, Se, S, SbおよびSn等を必要に応じて添加し、イン
ヒビターとして機能させる。その場合におけるこれらの
元素の添加量はそれぞれ Al:0.003 〜0.050 wt%, S
e:0.003 〜0.050 wt%,S:0.003 〜0.050 wt%,S
b:0.001 〜0.3 wt%,Sn:0.001 〜0.3 wt%程度とす
ることが好ましい。
【0052】Alは、Nと結びついてAlNとしてインヒビ
ターの役割を果たす。インヒビターとして有効に機能さ
せるためには、熱延前のスラブ加熱時に固溶させ、後の
工程で微細に析出させる必要があるが、含有量が0.050w
t%を超えるとスラブ加熱時の固溶が不完全になり、一
方 0.003wt%未満ではインヒビターの量が不足しその効
果を発揮できないので、 0.003〜0.050 wt%の範囲で含
有させることが好ましい。
【0053】Se、Sは、Mnと結びついてMnSe、 MnSと
してインヒビターの役割を果たす。インヒビターとして
有効に機能させるためには、Alと同様、熱延前のスラブ
加熱時に固溶させ、後の工程で微細に析出させる必要が
あるが、含有量が 0.050wt%を超えるとスラブ加熱時の
固溶が不完全になり、一方 0.003wt%未満ではインヒビ
ターの量が不足しその効果が発揮できないので、 0.003
〜0.050 wt%の範囲で含有させることが好ましい。
【0054】Sb、Snは、粒界に偏析してインヒビターと
して機能する。インヒビターとして十分機能させるため
には、0.001 wt%以上の含有が必要であるが、0.3 wt%
を超えると製品のベンド特性等の機械的特性が劣化する
ので、 0.001〜0.3 wt%の範囲で含有させることが好ま
しい。
【0055】インヒビターとしては、上記元素の他に、
Cr, Cu, Nb, B等を添加することもできる。添加量は、
インヒビター機能を十分発揮でき、かつ製品のベンド特
性等の機械的特性を劣化させない範囲内とすべきであ
り、それぞれCr:0.001 〜0.3wt%, Cu:0.005 〜0.5 w
t%, Nb:0.00l 〜0.3 wt%, B:0.0001〜0.05wt%程
度とすることが好ましい。なお、最近、インヒビター元
素を特に添加しなくても、粒界移動度の方位差依存性を
利用して二次再結晶を生じさせる技術が報告されている
が、この技術は、本発明にも適応できる技術である。
【0056】次に、製造工程について説明する。熱間圧延工程 上記の成分組成に調整されたスラブは、通常の方法に従
い、スラブ加熱に供した後、熱間圧延により熱延コイル
とする。なお、近年、スラブ加熱を行わず、連続鋳造
後、直接熱間圧延を行う方法が提案されているが、この
方法は本発明にも適用することができる。
【0057】熱延板焼鈍工程 熱延コイルに、必要に応じて、組織の均一化とインヒビ
ターの微細析出のために、 800〜1150℃の温度範囲で熱
延板焼鈍を施す。
【0058】冷間圧延・中間焼鈍工程 熱延コイルあるいは熱延板焼鈍後の鋼板に、1回または
中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して製品板厚と
する。冷間圧延は、タンデム圧延機で行ってもゼンジミ
ア圧延機で行ってもよい。また、圧延は常温で行っても
良いし、必要に応じて常温よりも高い温度とし、圧延中
の動的歪時効やパス間の静的歪み時効を利用して集合組
織を制御することも可能である。
【0059】脱炭および一次再結晶焼鈍工程 製品板厚に圧延された鋼板に、脱炭と一次再結晶を目的
とした焼鈍を施す。
【0060】かくして得られる一次再結晶焼鈍板は、一
方向性電磁鋼板を製造するための中間材として用いられ
る。その後、一般的には、焼鈍分離剤を塗布してから、
仕上焼鈍を施し、ついで必要に応じて絶縁コーティング
を塗布・焼き付け、さらに平坦化焼鈍を施すことによっ
て製品とする。
【0061】
【実施例】実施例1 C:0.035 wt%、Si:2.90wt%、Mn:0.08wt%、Al:0.
003 wt%、N:0.003wt%、S:0.001 wt%、Se:0.020
wt%、Cu:0.01wt%およびSb:0.020 wt%を含有し、
残部はFeおよび不可避不純物からなるスラブを複数用意
し、1250℃に加熱後、熱間圧延して 3.0mm厚の熱延コイ
ルとした。ついで、酸洗後、タンデム圧延機により第1
回目の冷間圧延を施した。第1回目の冷間圧延後の板厚
は0.50〜2.0 mmの範囲で変化させた。次に、 900〜1100
℃の温度で中間焼鈍後、再び酸洗したのち、ゼンジミア
圧延機で第2回目の冷間圧延を施し、0.22mmの最終板厚
に仕上げた。第2回目の冷間圧延では、圧延温度を80℃
から 300℃までの範囲で変化させた。その後、脱脂処理
を行い、 800〜880 ℃で 120秒間の脱炭を兼ねた一次再
結晶焼鈍を施した。かくして、表3に記号あ〜なで示す
ような、集合組織を大きく変化させた一次再結晶焼鈍板
が得られた。これらの一次再結晶焼鈍板の一部を採取
し、表層近傍の集合組織の測定を行った。集合組織は、
X線極点図により測定し、測定データから3次元集合組
織を計算により求めた。なお、3次元集合組織はφ1
Φ、φ2 いずれも5°刻みで求めた。
【0062】ついで、これらの一次再結晶焼鈍板に、焼
鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施した。最終
仕上焼鈍後、未反応の分離剤を除去したのち、コロイタ
ルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする
絶縁コーティングを塗布し、800 ℃で焼き付けて製品と
した。各製品から、圧延方向に沿ってエプスタインサイ
ズの試験片を切り出し、磁束密度B8 を測定した。表3
に、一次再結晶焼鈍板の表層近傍における集合組織の極
大方位と製品の磁束密度B8 を示す。
【0063】
【表3】
【0064】同表に示したとおり、本発明に従い、表層
の集合組織が(0 15 0)[または(5 20 70)]から
10°以内に極大方位を有する一次再結晶焼鈍板を用いる
ことにより、製品の磁束密度B8 が1.85T以上の良好な
製品を得ることができた。
【0065】ついで、製品の磁気特性B8 が1.85T以上
であった試料について、さらに一次再結晶後の試料の中
心層における集合組織を測定し、製品の磁気特性との関
係について調べた。表4に、中心層の集合組織における
極大方位と製品の磁気特性B8 との関係を示す。
【0066】
【表4】
【0067】同表に示したとおり、中心層の集合組織が
(90 60 45)から5°以内に極大方位を有する場合に
は、さらに磁気特性B8 が安定し、1.88T以上の良好な
値が得られた。
【0068】実施例2 C:0.045 wt%、Si:3.25wt%、Mn:0.08wt%、Al:0.
007 wt%、N:0.004wt%、S:0.002 wt%、Se:0.001
wt%、Cu:0.01wt%、Sb:0.010 wt%およびSn:0.05w
t%を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなるス
ラブを複数用意し、1200℃に加熱後、熱間圧延して 2.5
mm厚の熱延コイルとした。ついで、熱延板焼鈍後、酸洗
してから、0.34mmの厚みまでタンデム圧延機により1回
で冷間圧廷した。この際、熱延板焼鈍温度を 800〜1150
℃の範囲で、また冷間圧延温度を80〜300 ℃の範囲で変
化させた。その後、脱脂処理を行い、 800〜880 ℃で12
0 秒間の脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。かくし
て、表5に番号1〜20で示すような、集合組織を大きく
変化させた一次再結晶焼鈍板が得られた。これらの一次
再結晶焼鈍板の一部を採取し、表層近傍の集合組織の測
定を行った。集合組織は、X線極点図により測定し、測
定データから3次元集合組織を計算により求めた。な
お、3次元集合組織はφ1 、Φ、φ2 いずれも5°刻み
で求めた。
【0069】ついで、これらの一次再結晶焼鈍板に、焼
鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施した。最終
仕上焼鈍後、未反応の分離剤を除去したのち、コロイダ
ルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする
絶縁コーティングを塗布し、800 ℃で焼き付けて製品と
した。各製品から、圧延方向に沿ってエプスタインサイ
ズの試験片を切り出し、磁束密度B8 を測定した。表5
に、一次再結晶焼鈍板の表層近傍における集合組織の極
大方位と製品の磁束密度B8 を示す。
【0070】
【表5】
【0071】同表に示したとおり、本発明に従い、表層
の集合組織が(0 15 0)[または(5 20 70)]から
10°以内に極大方位を有する一次再結晶焼鈍板を用いる
ことにより、製品の磁束密度B8 が1.85T以上の良好な
製品を得ることができた。
【0072】ついで、製品の磁気特性B8 が1.85T以上
であった試料について、さらに一次再結晶後の試料の中
心層における集合組織を測定し、製品の磁気特性との関
係について調べた。表6に、中心層の集合組織における
極大方位と製品の磁気特性B8 との関係を示す。
【0073】
【表6】
【0074】同表に示したとおり、中心層の集合組織が
(90 60 45)から5°以内に極大方位を有する場合に
は、さらに磁気特性B8 が安定し、1.88T以上の良好な
値が得られた。
【0075】実施例3 C:0.060 wt%、Si:3.25wt%、Mn:0.09wt%、Al:0.
027 wt%、N:0.009wt%、S:0.002 wt%、Se:0.020
wt%、Cu:0.10wt%およびSb:0.025 wt%を含有し、
残部はFeおよび不可避不純物からなるスラブを複数用意
し、1400℃に加熱後、熱間圧延して 2.5mm厚の熱延コイ
ルとした。引き続き 800〜1150℃で60秒間保持する熱延
板焼鈍を施したのち、酸洗し、1.7 mmの厚みまでタンデ
ム圧延機により常温で第1回目の冷間圧延を施し、つい
で 950℃の温度で中間焼鈍を施したのち、再び酸洗し、
ゼンジミア圧延機により0.22mmの厚みまでの第2回目の
冷間圧延を施した。第2回目の冷間圧延では、圧延温度
を80〜300 ℃の範囲で変化させた。その後、脱脂処理を
行い、 800〜880 ℃で120 秒間の脱炭を兼ねた一次再結
晶焼鈍を施した。かくして、表7に記号ア〜ヌで示すよ
うな、集合組織を大きく変化させた一次再結晶焼鈍板が
得られた。これらの一次再結晶焼鈍板の一部を採取し、
表層近傍の集合組織の測定を行った。集合組織は、X線
極点図により測定し、測定データから3次元集合組織を
計算により求めた。なお、3次元集合組織はφ1 、Φ、
φ2 いずれも5°刻みで求めた。
【0076】ついで、これらの一次再結晶焼鈍板に、焼
鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施した。最終
仕上焼鈍後、未反応の分離剤を除去したのち、コロイダ
ルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする
絶縁コーティングを塗布し、800 ℃で焼き付け製品とし
た。各製品から、圧延方向に沿ってエプスタインサイズ
の試験片を切り出し、磁束密度B8 を測定した。表7
に、一次再結晶焼鈍板の表層近傍における集合組織の極
大方位と製品の磁束密度B8 を示す。
【0077】
【表7】
【0078】同表に示したとおり、本発明の要件を満足
する一次再結晶焼鈍板を用いることにより、良好な磁束
密度の製品が得られた。
【0079】ついで、製品の磁気特性B8 が1.85T以上
であった試料について、さらに一次再結晶後の試料の中
心層における集合組織を測定し、製品の磁気特性との関
係について調べた。表8に、中心層の集合組織における
極大方位と製品の磁気特性B8 との関係を示す。
【0080】
【表8】
【0081】同表に示したとおり、中心層の集合組織が
(90 60 45)から5°以内に極大方位を有する場合に
は、さらに磁気特性B8 が安定し、1.88T以上の良好な
値が得られている。
【0082】
【発明の効果】かくして、この発明に従い、一次再結晶
焼鈍板の集合組織を的確に制御することにより、磁気特
性を良好に保った方向性電磁鋼板を安定して製造するこ
とが可能となった。
フロントページの続き (72)発明者 本田 厚人 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 Fターム(参考) 5E041 AA02 AA19 CA02 HB05 HB07 HB11 NN06

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の表層近傍の集合組織が、Bunge の
    オイラー角表示で、φ1=0°、Φ=15°、φ2 =0°
    の方位から10°以内に極大方位を有することを特徴とす
    る一方向性電磁鋼板用の一次再結晶焼鈍板。
  2. 【請求項2】 鋼板の表層近傍の集合組織が、Bunge の
    オイラー角表示で、φ1=0°、Φ=15°、φ2 =0°
    の方位から10°以内、またはφ1 =5°、Φ=20°、φ
    2 =70°の方位から10°以内に極大方位を有し、かつ鋼
    板の中心層の集合組織が、同じくBunge のオイラー角表
    示で、φ1 =90°、Φ=60°、φ2 =45°の方位から5
    °以内に極大方位を有することを特徴とする一方向性電
    磁鋼板用の一次再結晶焼鈍板。
  3. 【請求項3】C:0.005 〜0.08wt%、 Si:2.0 〜4.5 wt%、 Mn:0.03〜2.5 wt%を含有し、かつAl:0.003 〜0.050
    wt%、 Se:0.003 〜0.050 wt%、 S:0.003 〜0.050 wt%、 Sb:0.001 〜0.3 wt%、 Sn:0.001 〜0.3 wt% のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成に
    なる珪素鋼スラブを、熱延し、必要に応じて熱延板焼鈍
    を施したのち、一回または中間焼鈍を挟む二回以上の冷
    間圧延によって最終板厚とし、ついで一次再結晶焼鈍を
    施すことによって得られる、請求項1または2記載の一
    方向性電磁鋼板用の一次再結晶焼鈍板。
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