JP2001059138A - 熱膨張の少ない耐摩耗性に優れたレール - Google Patents

熱膨張の少ない耐摩耗性に優れたレール

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JP2001059138A JP11237127A JP23712799A JP2001059138A JP 2001059138 A JP2001059138 A JP 2001059138A JP 11237127 A JP11237127 A JP 11237127A JP 23712799 A JP23712799 A JP 23712799A JP 2001059138 A JP2001059138 A JP 2001059138A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼レールにおいて、C量、更には炭化物形成
元素であるMn,Cr量を一定範囲とすることで、耐摩
耗性に優れたパーライト組織を安定的に得ると同時に、
レールの熱膨張量を低減させ、使用寿命と軌道の安全性
が向上するレールを提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.80〜1.20%、Mn:0.
40〜2.00%、Cr:0.15〜1.50%を含有し、かつ重量%
で、C+ 0.3Mn+0.80Crの和が 1.2以上、2.3 以下
であり、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼レー
ルであって、少なくともその一部がパーライト組織であ
ることを特徴とする。または更に鋼レールの頭部コーナ
ー部および頭頂部表面を起点として少なくとも深さ20
mmの範囲が、硬さHv 320〜480 の範囲であるパーライ
ト組織であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レールの熱膨張を
低減し、同時にレール要求される耐摩耗性を向上させた
レールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】海外の貨物鉄道では、鉄道輸送の高効率
化の手段として、列車速度の向上や列車積載重量の増加
が図られている。このような鉄道輸送の効率化はレール
使用環境の過酷化を意味し、レール材質の一層の改善が
要求されるに至っている。具体的には、曲線区間に敷設
されたレールでは、G.C.(ゲージ・コーナー)部や
頭側部の摩耗が急激に増加し、レールの使用寿命の点で
問題視されるようになった。
【0003】しかしながら、最近の高強度化熱処理技術
の進歩により、共析炭素鋼を用いた微細パーライト組織
を呈した下記に示すような高強度(高硬度)レールが発
明され、貨物鉄道の曲線区間のレール寿命を飛躍的に改
善してきた。 頭部がソルバイト組織、または微細なパーライト組
織の超大荷重用の熱処理レール(特公昭54−2549
0号公報)。 Cr・Mn等の合金を添加し、レール頭部の熱処理
速度をレール溶接時の冷却速度と等価とすることによ
り、後熱処理なしで溶接部と母材の硬さを同一とし、溶
接部性を向上させたレール(特公昭59−19173号
公報)。
【0004】また近年、海外の貨物鉄道ではより一層の
鉄道輸送の高効率化のために、貨物の高積載化を強力に
進めており、特に急曲線のレールでは上記開発のレール
を用いてもG.C.や頭側部の耐摩耗性が十分確保でき
ず、摩耗によるレール寿命の低下が問題となってきた。
このような背景から、現状の共析炭素鋼の高強度レール
以上の耐摩耗性を有するレールの開発が求められるよう
になってきた。
【0005】これらの問題を解決するため、本発明者ら
は下記に示すようなレールを開発した。 過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用い
て、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト密度を
増加させた耐摩耗性に優れたレール(特開平8−144
061号公報)。 過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用い
て、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト密度を
増加させ、同時に、硬さを制御した耐摩耗性に優れたレ
ール(特開平8−246100号公報)。
【0006】これらのレールの特徴は、共析炭素鋼(C
量:0.7〜0.8%)、または過共析炭素鋼(C量:
0.85%超)を用いた微細パーライト組織を呈する高
強度レールであり、その目的とするところは、パーライ
ト組織中のラメラ間隔を微細化し、レール頭部の硬さを
向上させる、さらにはパーライトラメラ中の耐摩耗性に
優れたセメタイト相の密度を増加させることにより、耐
摩耗性を向上させることにあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらのパー
ライト組織のレールでは耐摩耗性の向上は図れるもの
の、寒暖の差の激しい線区に敷設された場合には、レー
ルの伸縮により高温時にはレールが伸び、レールの座屈
やそれにともなう張り出しが発生しやすく、軌道の安全
性を確保しにくい。また低温時にはレールが縮み、レー
ル継ぎ目部の遊間が広がり、レールの端部が欠損しやす
いといった問題が発生した。また上記のような問題を防
止するため、レールの伸縮に応じてレール継ぎ目部の遊
間を調整する方法もあるが、この遊間の調整には、まく
ら木からレールを一旦外さなければならず、このため莫
大な時間と費用が発生し、不経済であった。かかる状況
のなかで本発明は、レールの熱膨張を低減し、同時に貨
物鉄道のレールに要求される耐摩耗性を向上させるレー
ルを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するものであって、その要旨は以下の通りである。 (1) 重量%で、C :0.80〜1.20%、 M
n:0.40〜2.00%、Cr:0.15〜1.50
%、を含有し、かつ重量%で、C+0.3Mn+0.8
Crの和が1.2以上、2.3以下であり、残部がFe
および不可避的不純物からなる鋼レールであって、少な
くともその一部がパーライト組織であることを特徴とす
る熱膨張の少ない耐摩耗性に優れたレール。 (2) 前記(1)に記載の成分を有するレールであっ
て、前記鋼レールの頭部コーナー部および頭頂部表面を
起点として少なくとも深さ20mmの範囲が、硬さHv3
20〜480の範囲であるパーライト組織であることを
特徴とする熱膨張の少ない耐摩耗性に優れたレール。 (3) 重量%でさらに、Si:0.05〜1.00
%、 Mo:0.01〜0.20%の群、Ni:0.0
5〜1.00%、 V :0.01〜0.50%、N
b:0.002〜0.050%、 Ti:0.0050
〜0.0300%の群、Cu:0.05〜0.50%、
Co:0.10〜2.00%の群、Mg:0.001
0〜0.0100%、Ca:0.0010〜0.015
0%の群、B :0.0001〜0.0040%から選
ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする
前記(1)または(2)に記載の熱膨張の少ない耐摩耗
性に優れたレール。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。まず本発明者らは、寒暖の差、すなわちレールの
温度差によって発生するパーライト組織のレールの伸縮
に影響を与える因子について検討した。その結果、パー
ライト組織のレールでは、レールの伸縮はレールの硬さ
(パーライト組織のラメラ間隔)には大きく影響され
ず、レール鋼の化学成分に大きく影響されることが確認
された。
【0010】そこで本発明者らは、レールの伸縮量とレ
ール鋼の化学成分の関係について検討した。その結果、
レールの伸縮量は、C量との負の相関に加えて、炭化物
形成元素であるMn、Cr量との負の相関、すなわち炭
化物形成の増加によりレールの伸縮量が低減することを
知見した。
【0011】次に、この相関を詳細に明らかにするた
め、本発明者らはC、Mn、Crの添加量を変化させた
レール鋼を用いて、成分と熱膨張率の関係を調査した。
その結果、最も熱膨張率への負の相関の強いCの重量%
当たりの寄与度を1とすると、Mn、Crはそれぞれの
重量%当たり0.3、0.8の寄与度があることを実験
により導き出した。
【0012】さらに本発明者らは、C(wt%)+0.
3Mn(wt%)+0.8Cr(wt%)の総和と実際
のレールの熱膨張挙動を実験により確認した。その結
果、上式の総和がある一定値以下になると熱膨張量が増
加し、レールの座屈やそれにともなう張り出しが発生
し、軌道の安全性を確保し難いことが明らかとなった。
また、上式の総和がある一定値以上になると熱膨張量は
減少するものの、レール製造時にレールの靭性に有害な
マルテンサイト組織が生成することや、レールの延性に
有害な初析セメンタイト組織が生成することが明らかと
なった。
【0013】以上の結果から、パーライト組織のレール
の熱膨張量を低減し、レール製造時に異常組織を生成さ
せないようにするには、C(wt%)+0.3Mn(w
t%)+0.8Cr(wt%)の総和に一定の範囲があ
ることを知見した。本発明はこのような知見に基づいて
いる。すなわち、本発明はレールの熱膨張を低減し、同
時に貨物鉄道のレールに要求される耐摩耗性を向上させ
ることを目的としたパーライト組織のレールに関するも
のである。
【0014】以下、本発明の限定理由について詳細に説
明する。 (1)レール鋼の化学成分 まず、本発明においてレールの化学成分を上記のように
限定した理由について説明する。化学成分の含有量は重
量%である。Cは、炭化物を形成し、熱膨張量を低減さ
せ、さらにパーライト変態を促進させて、耐摩耗性を確
保する有効な元素であるが、C量0.80%未満では、
熱膨張量の十分な低減が図れず、レールの座屈およびこ
れにともなう張り出しが発生し、さらにはレール継ぎ目
部の遊間が広がり、レールの端部が欠損するため軌道の
安全性が低下する。またレール頭部の硬さの低下により
耐摩耗性が低下し、レール使用寿命が低下する。一方、
C量が1.20%を超えると、成分系によってはパーラ
イト組織中に初析セメンタイト組織が生成し、レールの
靱性や延性が大きく低下することや、パーライト組織中
のセメンタイト相の密度が増加し、レールに必要とされ
る延性を十分に確保できなくなるため、C量を0.80
〜1.20%に限定した。
【0015】Mnは、パーライト組織中のセメンタイト
に固溶し、炭化物を形成し、熱膨張量を低減させ、さら
にパーライト変態温度を低下させ、レール頭部の高硬度
を図る元素であるが、Mn量0.40%未満では、熱膨
張量の低減が困難となり、レールの座屈およびこれにと
もなう張り出しが発生し、さらにはレール継ぎ目部の遊
間が広がり、レールの端部が欠損するため軌道の安全性
が低下する。また、レール頭部の硬さの低下により耐摩
耗性が低下し、レール使用寿命が低下する。一方、Mn
量2.00%を超えると、焼入性が著しく増加しマルテ
ンサイト組織が生成し易くなることや、偏析が助長さ
れ、偏析部にレールの靭性に有害な初析セメンタイト組
織が生成し易くなるため、Mn量を0.40〜2.00
%に限定した。
【0016】Crは、Mnと同様に、パーライト組織中
のセメンタイトに固溶し、また独自の炭化物を形成し、
熱膨張量を低減させ、さらにパーライトの平衡変態点を
上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にして高硬
度化に寄与する元素であるが、Cr量0.15%未満で
は、熱膨張量の低減が困難となり、レールの座屈および
これにともなう張り出しが発生し、さらにはレール継ぎ
目部の遊間が広がり、レールの端部が欠損するため軌道
の安全性が低下する。また、レール頭部の硬さの低下に
より耐摩耗性が低下し、レール使用寿命が低下する。一
方、Cr量が1.50%を超える過剰な添加を行うと、
マルテンサイト組織が多量に生成し、レールの靱性を著
しく低下させるため、Cr量を0.15〜1.50%に
限定した。
【0017】また、上記の成分組成で製造されるレール
は強度、延性、靭性、さらには溶接時の材料劣化を防止
する目的で、Si,Mo,Ni,V,Nb,Ti,M
g,Ca,Cu,Co,Bの元素を、必要に応じて1種
類または2種以上を添加する。ここで、Si,Moは高
強度化と耐摩耗性向上、Ni,V,Nb,Tiは延性と
靭性と同時に強度と向上、Cu,Coは強度向上、M
g,Caは延性と靭性の向上、Bはレール頭部の硬化深
度の向上を主な目的として、下記の範囲で必要に応じて
添加する。Si:0.05〜1.00%、 Mo:0.
01〜0.20%の群、Ni:0.05〜1.00%、
V :0.01〜0.50%、Nb:0.002〜
0.050%、 Ti:0.0050〜0.0300%
の群、Cu:0.05〜0.50%、 Co:0.10
〜2.00%の群、Mg:0.0010〜0.0100
%、Ca:0.0010〜0.0150%の群、B :
0.0001〜0.0040%。
【0018】各成分の限定理由を以下に説明する。Si
は、パーライト組織中のフェライト相への固溶体硬化に
よりレール頭部の硬度(強度)を上昇させる元素である
が、0.10%未満ではその効果が十分に期待できず、
また1.00%を超えると、熱間圧延時に表面疵が多く
生成することや、酸化物の生成により溶接性が低下する
ため、Si量を0.10〜1.00%に限定した。
【0019】Moは、パーライトの平衡変態点を上昇さ
せ、結果としてパーライト組織を微細にすることにより
高強度化に寄与し、耐摩耗性を向上させる元素である
が、0.01%未満ではその効果が小さく、0.20%
を超える過剰な添加を行うと、偏析が助長され、さら
に、パーライト変態速度が低下し、偏析部にマルテンサ
イト組織が生成してレールの靱性が低下するため、Mo
量を0.01〜0.20%に限定した。
【0020】Niは、パーライト鋼の延性と靭性を向上
させ、同時に固溶強化によりパーライト鋼の高強度化を
図る元素であるが、0.05%未満ではその効果が著し
く小さく、また1.00%を超える過剰な添加を行って
もそれ以上の効果が期待できない。したがって、Ni量
を0.05〜1.00%に限定した。
【0021】Vは、熱間圧延時の冷却課程で生成したV
炭化物、V窒化物による析出硬化で強度を高め、さらに
高温度に加熱する熱処理が行われる際に結晶粒の成長を
抑制する作用によりオーステナイト粒を微細化させ、パ
ーライト組織の強度、延性および靭性を向上させるのに
有効な成分であるが、0.01%未満ではその効果が十
分に期待できず、0.50%を超えて添加してもそれ以
上の効果が期待できないことから、V量を0.01〜
0.50%に限定した。
【0022】Nbは、Vと同様にNb炭化物、Nb窒化
物による析出硬化で強度を高め、さらに、高温度に加熱
する熱処理が行われる際に結晶粒の成長を抑制する作用
によりオーステナイト粒を微細化させ、そのオーステナ
イト粒成長抑制効果はVよりも高温度域(1200℃近
傍)まで作用し、パーライト組織の延性と靭性を改善す
る。その効果は、0.002%未満では期待できず、ま
た0.050%を超える過剰な添加を行ってもそれ以上
の効果が期待できない。従って、Nb量を0.002〜
0.050%に限定した。
【0023】Tiは、鋼中の過剰な窒素を窒化物(Ti
N)として析出させ、同時にBの窒化物(BN)の析出
を抑制し、結果として鉄の炭ほう化物(Fe23(CB)
6 )を優先的に生成させる元素であるが、0.0050
%未満の含有量では、窒化物を形成するには十分でな
く、また0.0300%を超えて添加すると、粗大な窒
化物(TiN)や炭化物(TiC)が生成し、レールの
延性や靱性が低下すると同時に、レール使用中の疲労損
傷の起点となりやすいため、Ti量を0.0050〜
0.0300%に限定した。
【0024】Cuは、パーライト鋼の靭性を損なわず強
度を向上させる元素であり、その効果は0.05〜0.
50%の範囲で最も大きく、また0.50%を超えると
赤熱脆化を生じやすくなることから、Cu量を0.05
〜0.50%に限定した。
【0025】Coはパーライトの変態エネルギーを増加
させて、パーライト組織を微細にすることにより強度を
向上させる元素であるが、0.10%未満ではその効果
が期待できず、また2.00%を超える過剰な添加を行
ってもその効果が飽和域に達してしまうため、Co量を
0.10〜2.00%に限定した。
【0026】Mgは、O、またはSやAl等と結合して
微細な酸化物を形成し、レール圧延時の再加熱において
結晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細化を
図り、パーライト組織の延性や靭性を向上させるのに有
効な元素である。さらに、MgO、MgSがMnSを微
細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、
パーライト変態の生成に寄与し、その結果、パーライト
ブロックサイズを微細化することにより、パーライト組
織の延性や靭性を向上させるのに有効な元素である。し
かし0.0010%未満ではその効果は弱く、0.01
00%を超えて添加すると、Mgの粗大酸化物が生成し
てレール延性や靭性を劣化させるため、Mg量を0.0
010〜0.0100%に限定した。
【0027】Caは、Sとの結合力が強く、CaSとし
て硫化物を形成し、さらにCaSがMnSを微細に分散
させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライ
ト変態の生成に寄与し、その結果、パーライトブロック
サイズを微細化することにより、パーライト組織の延性
や靭性を向上させるのに有効な元素である。しかし0.
0010%未満ではその効果は弱く、0.0150%を
超えて添加すると、Caの粗大酸化物が生成してレール
延性や靭性を劣化させるため、Ca量を0.0010〜
0.0150%に限定した。
【0028】Bは、鉄の炭ほう化物(Fe23(C
B)6 )を形成し、パーライト変態を促進効果により、
結果としてレール頭表面と頭部内部のパーライト変態温
度の差を低減させ、レール頭表面から内部までより均一
な硬度分布を付与する元素であるが、0.0001%未
満の含有量ではその効果が全くなく、また0.0040
%を超えて添加すると、粗大な鉄の炭ほう化物が生成し
て延性や靱性が低下することや、レール頭表面から内部
まで均一な硬度分布が得られ難くなることから、B量を
0.0001〜0.0040%に限定した。
【0029】上記のような成分組成で構成されるレール
鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製
を行い、この溶鋼を造塊・分塊法あるいは連続鋳造法、
さらに熱間圧延を経てレールとして製造される。次に、
この熱間圧延した高温度の熱を保有するレール、あるい
は熱処理する目的で高温に再加熱されたレール頭部に、
エアーやミストなどを用いて加速冷却する熱処理を施す
ことにより、レール頭部に硬さの高いパーライト組織を
安定的に生成させることが可能となる。
【0030】(2)C,Mn,Crの和の式およびその
範囲 次に、本発明においてレールの熱膨張量を示す指標とし
て、C(wt%)+0.3Mn(wt%)+0.8Cr
(wt%)の式およびその範囲を限定した理由について
説明する。パーライト組織のレールでは、レールの伸縮
量は、C量との負の相関に加えて、炭化物形成元素であ
るMn,Cr量との負の相関がある。そこでこれらの元
素の寄与度を実験により確認した結果、最も熱膨張率へ
の負の相関の強いCの重量%当たりの寄与度を1とする
と、Mn,Crはそれそれの重量%当たり0.3、0.
8の寄与度があることが確認され、レールの熱膨張量を
示す指標として、上記の式を限定した。
【0031】さらに、上記の式の値の範囲を限定した理
由について説明する。上記の式の値が1.2未満になる
と、レールの熱膨張量が増加し、レールの座屈やそれに
ともなう張り出しが発生し、さらにはレール継ぎ目部の
遊間が広がり、レールの端部が欠損するため、軌道の安
全性が低下する。また上記の式の値が2.3を超える
と、熱膨張量は減少するものの、レール製造時にレール
の靭性に有害なマルテンサイト組織が生成することや、
レールの延性に有害な初析セメンタイト組織が生成する
ため、C(wt%)+0.3Mn(wt%)+0.8C
r(wt%)の総和を1.2〜2.3の範囲に限定し
た。
【0032】(3)パーライト組織の望ましい硬さおよ
びその範囲 はじめに、パーライト組織の硬さをHv320〜480
の範囲に限定した理由について説明する。本成分系では
硬さがHv320未満になると、レールの摩耗が進行
し、貨物鉄道で要求されている耐摩耗性を確保すること
が困難となり、さらに急曲線区間において使用されるレ
ールでは頭部内部から疲労き裂が発生しやすくなるた
め、パーライト組織の硬さをHv320以上に限定し
た。また、硬さがHv480を超えると、レール頭表部
の車輪とのなじみ性が低下し、表面損傷が発生しやすく
なることや、またレール熱処理製造において、レール頭
部にベイナイトやマルテンサイトなどの異常組織が生成
し易くなり、レールの耐摩耗性や耐内部疲労損傷性を低
下させるため、硬さをHv320〜480の範囲に限定
した。
【0033】次に、硬さHv320〜480の範囲のパ
ーライト組織の呈する望ましい範囲を、頭部コーナー部
および頭頂部の該頭部表面を起点として深さ20mmの範
囲に限定した理由について説明する。20mm未満では、
レール頭部に必要とされている耐摩耗性および耐内部疲
労損傷性領域としては小さく、摩耗の進行および内部疲
労損傷の発生により十分な寿命改善効果が得られないた
めである。また、前記パーライト組織を呈する範囲が頭
部コーナー部および頭頂部の該頭部表面を起点として深
さ30mm以上あれば、寿命改善効果がさらに増し、より
望ましい。
【0034】ここで、図1に本発明の熱膨張の少ない耐
摩耗性に優れたレールの頭部断面表面位置での呼称およ
び耐摩耗性が必要とされる領域を示す。レール頭部にお
いて1は頭頂部、2は頭部コーナー部であり、頭部コー
ナー部2の一方は車輪と主に接触するゲージコーナー
(G.C.)部である。また、Hv320以上のパーラ
イト組織は少なくとも図中の斜線部分に配置されていれ
ば、レール使用寿命の向上が可能となる。
【0035】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。表
1に本発明レール鋼の化学成分、頭部ミクロ組織、頭部
表面硬さ、図2に示す摩耗試験の結果を示す。また表1
には、図3に示すレール熱膨張再現試験の結果での座屈
および張り出しの有無についても併記した。また、表2
に比較レール鋼の化学成分、頭部ミクロ組織、頭部表面
硬さ、図2に示す摩耗試験の結果を示す。また表2に
は、図3に示すレール熱膨張再現試験の結果での座屈お
よび張り出しの有無についても併記した。図2におい
て、3はレール頭部材料の試験片、4は相手材である。
図3において、5は試験用レール、6はレール固定用治
具、7は枕木、8は遊間である。また、9はレールを固
定する反力壁である。
【0036】なお、レールの構成は以下のとおりであ
る。 ・本発明レール鋼(12本) 符号A〜L 上記成分範囲で、前記鋼レールの頭部コーナー部および
頭頂部表面を起点として少なくとも深さ20mmの範囲
が、硬さHv320〜480の範囲であるパーライト組
織であることを特徴とする熱膨張の少ない耐摩耗性に優
れたレール。 ・比較レール鋼(8本) 符号M〜R:化学成分が上記請求範囲外の比較レール鋼
(6本)。 符号S、T:C(wt%)+0.3Mn(wt%)+
0.8Cr(wt%)の和が上記請求範囲外の比較レー
ル鋼(2本)。
【0037】摩耗試験条件は次のとおりとした。 試験機 :西原式摩耗試験機 試験片形状:円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8m
m) 試験荷重 :543N すべり率 :9% 相手材 :焼戻しマルテンサイト鋼(Hv350) 雰囲気 :大気中 冷却 :なし(自然冷却) 繰返し回数:50万回
【0038】レール熱膨張再現試験の条件は次のとおり
とした。 試験機:レール熱膨張再現試験機 レール:136ポンドレール×2000mm×2本 試験開始温度: 0℃ 試験終了温度:100℃ 初期遊間幅(0℃):5mm 評価:100℃まで昇温した後のレールの挙動を評価す
る。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【発明の効果】表1,表2に示すように、本発明レール
鋼は比較レール鋼と比べて、C量、さらには、炭化物形
成元素であるMn,Cr量をある一定範囲とすることに
より、レールの熱膨張量が低減し、レールの座屈や張り
出しの発生を防止できる。さらに、耐摩耗性に優れたパ
ーライト組織を安定的に得ることが可能となり、耐摩耗
性を向上させることが可能となる。このように本発明に
よれば、貨物鉄道に要求される、レールの熱膨張を低減
し、同時に耐摩耗性を向上させたレールを提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レール頭部断面表面位置の呼称および硬さHv
320〜480のパーライト組織の必要範囲を示す図。
【図2】西原式摩耗試験機の概略図。
【図3】レール熱膨張再現試験機の概略図。
【符号の説明】
1:頭頂部 2:頭部コーナー部 3:レール試験片 4:相手材 5:試験用レール 6:レール固定用治具 7:枕木 8:遊間 9:反力壁

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.80〜1.20%、 Mn:0.40〜2.00%、 Cr:0.15〜1.50% を含有し、かつ重量%で、 C+0.3Mn+0.8Crの和が1.2以上、2.3
    以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる
    鋼レールであって、少なくともその一部がパーライト組
    織であることを特徴とする熱膨張の少ない耐摩耗性に優
    れたレール。
  2. 【請求項2】 鋼レールの頭部コーナー部および頭頂部
    表面を起点として少なくとも深さ20mmの範囲が、硬さ
    Hv320〜480の範囲であるパーライト組織である
    ことを特徴とする請求項1記載の熱膨張の少ない耐摩耗
    性に優れたレール。
  3. 【請求項3】 重量%で、さらに、 Si:0.05〜1.00%、 Mo:0.01〜0.20% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1
    または2記載の熱膨張の少ない耐摩耗性に優れたレー
    ル。
  4. 【請求項4】 重量%で、さらに、 Ni:0.05〜1.00%、 V :0.01〜0.50%、 Nb:0.002〜0.050%、 Ti:0.0050〜0.0300% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1ないし3のいずれか1項に記載の熱膨張の少ない耐
    摩耗性に優れたレール。
  5. 【請求項5】 重量%で、さらに、 Cu:0.05〜0.50%、 Co:0.10〜2.00% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1
    ないし3のいずれか1項に記載の熱膨張の少ない耐摩耗
    性に優れたレール。
  6. 【請求項6】 重量%で、さらに、 Mg:0.0010〜0.0100%、 Ca:0.0010〜0.0150% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1
    ないし3のいずれか1項に記載の熱膨張の少ない耐摩耗
    性に優れたレール。
  7. 【請求項7】 重量%で、さらに、 B :0.0001〜0.0040% を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれ
    か1項に記載の熱膨張の少ない耐摩耗性に優れたレー
    ル。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017206743A (ja) * 2016-05-19 2017-11-24 新日鐵住金株式会社 耐摩耗性および靭性に優れたレール

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