JP2001052874A - 透明導電基板とそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

透明導電基板とそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

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JP2001052874A
JP2001052874A JP11228325A JP22832599A JP2001052874A JP 2001052874 A JP2001052874 A JP 2001052874A JP 11228325 A JP11228325 A JP 11228325A JP 22832599 A JP22832599 A JP 22832599A JP 2001052874 A JP2001052874 A JP 2001052874A
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Taku Kamimura
卓 上村
Nobuyuki Okuda
伸之 奥田
Kozo Kimura
康三 木村
Yoshinobu Ueha
良信 上羽
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 後付けフィルターを使用せずに、有機エレク
トロルミネッセンス素子などの素子にフィルターの機能
を付与することが可能な、新規な透明導電基板と、それ
を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子とを提供す
る。 【解決手段】 透明導電基板は、透明基板上に、着色物
質によって着色された、フィルターとしての機能を備え
た透明導電膜を形成した。有機エレクトロルミネッセン
ス素子は、有機の層を挟む陰極および陽極のうちの一方
を、フィルターとしても機能させるべく、上記透明導電
基板の、着色された透明導電膜にて形成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば有機エレ
クトロルミネッセンス素子などの素子に好適に使用され
る透明導電基板と、それを用いた有機エレクトロルミネ
ッセンス素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】面状に発光するため各種表示装置などへ
の利用が期待されている薄膜型のエレクトロルミネッセ
ンス素子の分野においては近時、陰陽一対の電極間に、
有機化合物を主体とする単層または複層の有機の層を挟
んだ有機エレクトロルミネッセンス素子が、その研究、
開発の主流となりつつある。
【0003】その中でもとくにキャリヤ(ホール、電
子)の輸送や発光などの各機能を2層以上の層に分担さ
せた、複層構造の有機の層を備えた有機エレクトロルミ
ネッセンス素子は、 無機材料を主体とする従来の素子に比べて低電圧で
高輝度の発光が可能であること、 各層の形成方法として、蒸着法だけでなく溶液塗布
法なども採用でき、それぞれの層を、その構成に適した
形成方法を選択して形成できるので、素子の設計の自由
度が向上し、また素子の大面積化が容易となること、 有機分子の分子設計により、多色化や、これまでは
得られなかった色の発光が可能であること、といった利
点を有するため、近年、盛んに研究、開発が行われてい
る[たとえばC.W.Tang and S.A.VanSlyke; Appl.Phys.L
ett.51,913(1987)、C.Adachi, T.Tsutsui and S.Saito;
Appl.Phys.Lett.55,1489(1989)、J.Kido, M.Kimura, a
nd K.Nagai; Science, Vol.267, 1332(1995)など]。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記単層または複層の
有機の層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子
は、たとえばカラーフィルターやND(ニュートラルデ
ンシティー)フィルターなどと組み合わせることで、そ
の発光スペクトルをシャープにしたり、発光の色調を調
整したり、あるいはコントラストを向上したりすること
が可能である。
【0005】素子とフィルターとを組み合わせる方法と
しては、たとえば特開平6−132081号公報に記載
されているように素子の、光の取出し面としての透明導
電基板〔透明基板の片面に、素子の電極(主に陽極)と
なる透明導電膜を形成したもの〕の外側面、すなわち上
記透明導電膜が形成された側と反対側の面にフィルター
を後付けする、具体的にはたとえば、フィルターとなる
薄膜を蒸着や溶液塗布などによって製膜するか、または
あらかじめ作製した板状、フィルム状のフィルターを積
層、貼付などするのが一般的である。
【0006】ところが、上記の構成では素子の構造が複
雑化するとともに、その製造プロセスに、基板外側面の
洗浄、薄膜状のフィルターの製膜、板状、フィルム状の
フィルターの切断および貼付などの、フィルターを後付
けするための多数の工程が加わるために素子の生産性が
低下し、かつ素子製造のためのコストが大幅に上昇する
という問題がある。
【0007】また、後付けフィルターの厚みが加わる分
だけ素子の厚みが増加するので、素子を組み込むための
スペースが余計に必要となる上、それを防止するために
透明基板などの厚みを薄くすると素子の強度や耐久性な
どが低下するという問題もある。
【0008】また、たとえば透明基板として柔軟なプラ
スチックフィルムなどを使用して可とう性を付与した素
子に上記の外付けフィルター、とくにフィルム状などの
あらかじめ作製しておいた外付けフィルターを外付けし
た場合には、当該外付けフィルターがそれ自体、たとえ
可とう性にすぐれたものであっても、素子全体としての
可とう性を阻害したり、あるいは素子をたわませた際に
はく離したりするといった問題を生じるおそれがある。
【0009】本発明の目的は、上記のような種々の問題
を生じるおそれのある後付けフィルターを使用せずに、
有機エレクトロルミネッセンス素子などの素子にフィル
ターの機能を付与することが可能な、新規な透明導電基
板と、それを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
とを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】上記課
題を解決するための、本発明の透明導電基板は、透明基
板上に、着色物質によって着色された、フィルターとし
ての機能を備えた透明導電膜を有することを特徴とする
ものである。
【0011】かかる本発明の透明導電基板は、上記のよ
うに透明導電膜がフィルターとしても機能するために、
後付けフィルターを必要としない。
【0012】このため、上記本発明の透明導電基板を用
いて形成した、たとえば有機エレクトロルミネッセンス
素子などの素子は、フィルターとしての機能を有してい
るにもかかわらず、従来の、フィルターを後付けする前
の素子と同じ構成になって、その構造が複雑化すること
が防止される。
【0013】また上記透明導電膜は、その形成材料とし
ての透明導電材料に着色物質を添加すること以外は従来
と同様にして形成されるため、製造プロセスにおいて工
程が増加することもない。
【0014】したがって本発明によれば、素子の生産性
を低下させたり、あるいは生産のコストを大幅に上昇さ
せたりすることなしに、素子にフィルターの機能を付与
することが可能となる。
【0015】また素子は、後付けフィルターを組み込む
ための余計なスペースを必要としないので、スペースを
確保するために透明基板などの厚みを薄くする必要がな
く、素子の強度や耐久性などが低下するおそれもない。
【0016】さらに、透明基板として柔軟なプラスチッ
クフィルムなどを使用して素子に可とう性を付与した場
合に、素子の可とう性が阻害されたり、あるいは素子を
たわませた際にはく離が発生したりするといった問題を
生じるおそれもない。
【0017】また本発明の有機エレクトロルミネッセン
ス素子は、陰極および陽極と、この両極間に挟まれた単
層または複層の有機の層とを備えたものであって、上記
陰極および陽極のうちの一方が、フィルターとしても機
能させるべく、上記本発明の透明導電基板の、着色され
た透明導電膜にて形成されたことを特徴とするものであ
り、後付けフィルターを必要としないために、以上で述
べたような種々の利点を有するものとなる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を説明する。 〈透明導電基板〉本発明の透明導電基板は、前記のよう
に透明基板上に、着色物質によって着色された、フィル
ターとしての機能を備えた透明導電膜を有することを特
徴とするものである。
【0019】かかる透明導電基板を形成する透明基板と
しては、たとえばガラス板、透明プラスチック板、透明
プラスチックシート、透明プラスチックフィルムなど
の、透明基板として従来公知の種々の基板が、いずれも
使用可能である。その寸法、形状などは目的とする素子
の構造などに応じて適宜、設定することができる。
【0020】ちなみにこの透明基板を着色物質によって
着色することで、透明導電膜でなく透明基板の方にフィ
ルターとしての機能を持たせることも検討したが、その
場合には、たとえば波長特性や濃度などの、フィルター
としての仕様の変更が容易でない上、上記波長特性や濃
度などの微妙なずれに対する微調整も容易でないという
問題があった。
【0021】これに対し、透明導電膜にフィルターとし
ての機能を持たせる本発明の構成によれば、当該透明導
電膜の形成段階で、後述するように透明導電材料に添加
する着色物質の種類や量、あるいは透明導電膜の膜厚な
どを調整することで、波長特性や濃度などを容易かつ精
密にできるので、フィルターとしての仕様の変更に柔軟
に対応できるとともに、波長特性や濃度の微調整が容易
であるという利点がある。
【0022】ただし本発明は、透明基板を着色すること
を全く排除するものではなく、透明基板と透明導電膜の
両方を同一または異なる着色物質で着色して、この両方
により、透明導電基板の全体に、フィルターとしての機
能を持たせるようにしてもよい。
【0023】このように構成すると、たとえば上記のよ
うにフィルターとしての仕様の変更や微調整は容易でな
いが、逆に同じ仕様のものを安定して多量に生産するの
に適するという透明基板の特徴と、波長特性や濃度の微
調整が容易であるという透明導電膜の特徴とをともに生
かして、フィルターとしての機能にすぐれた透明導電基
板を、安定的に製造できるといった利点がある。
【0024】上記透明基板上に形成される透明導電膜
は、従来同様に透明導電材料にて形成される。透明導電
材料としては、その名のとおり透明(少なくとも可視光
を透過する)で、かつ有機エレクトロルミネッセンス素
子などの素子の電極として機能するために必要、十分な
導電性を有する種々の材料が、いずれも使用可能であ
る。
【0025】かかる透明導電材料の好適な例としては、
たとえばインジウム、亜鉛、およびスズのうち少なくと
も1種の金属の酸化物、具体的にはITO(インジウム
チンオキサイド)やIXO[In23(ZnO)m六方晶
層状化合物]などがあげられる。
【0026】上記透明導電材料にて形成される透明導電
膜を着色する着色物質としては、従来の、後付けフィル
ターで使用される無機または有機の種々の着色物質が、
いずれも使用可能である。
【0027】このうち無機の着色物質としては、たとえ
ばカーボンやヨウ素などがあげられる他、鉄、コバル
ト、カドミウム、アルミニウムなどの元素を含む無機塩
類(主に無機顔料として分類されるもの)なども使用可
能である。
【0028】また有機の着色物質としては、主に有機染
料、有機顔料などに分類される種々の化合物が、いずれ
も使用可能である。
【0029】その好適な例としては、たとえば式(1):
【0030】
【化1】
【0031】で表される無金属フタロシアニン、一般式
(2):
【0032】
【化2】
【0033】〔式中、Mは金属原子、または金属酸化物
を示す。〕で表される金属フタロシアニン、一般式
(3):
【0034】
【化3】
【0035】〔式中、R3a、R3b、R3c、R3d、R3e
3f、R3g、R3h、R3i、およびR3jは同一または異な
って水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ア
リール基、ジアルキルアミノ基、またはシアノ基を示
す。〕で表されるキナクリドン誘導体、および一般式
(4):
【0036】
【化4】
【0037】〔式中、R4a、R4b、R4c、R4d、R4e
4f、R4g、R4h、R4i、R4j、R4k、R4l、R4m、お
よびR4nは同一または異なって水素原子、アルキル基、
ハロゲン化アルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ
基、またはシアノ基を示す。〕で表されるキナクリドン
誘導体などがあげられる。
【0038】上記のうち、一般式(2)の金属フタロシア
ニンの好適な例としては、たとえば式(2-1)に示すよう
にMが銅原子である銅フタロシアニンがあげられる。
【0039】
【化5】
【0040】また一般式(3)で表されるキナクリドン誘
導体の好適な例としては、たとえば式(3-1)に示すよう
にR3a〜R3jがいずれも水素原子である2,3−キナク
リドンがあげられる。
【0041】
【化6】
【0042】上記着色物質はそれぞれ単独で使用される
他、透明導電膜の、フィルターとしての波長特性などに
あわせて2種以上を併用することもできる。
【0043】また着色物質の、透明導電材料に対する添
加量は、これも透明導電膜の、フィルターとしての波長
特性や、あるいは濃度などにあわせて適宜、設定するこ
とができる。
【0044】ただし、透明導電膜をフィルターとして有
効に機能させるためには、その濃度があまり低すぎるの
は好ましくなく、たとえば波長500nmの光の透過率
が70%以下、とくに55〜68%程度といった十分な
濃度を有しているのが好ましい。
【0045】透明導電膜の濃度を調整するには、上記の
ように着色物質の添加量を調整したり、あるいは先に述
べたように透明導電膜の膜厚を調整したりすればよい。
具体的には、これに限定されないがたとえば、透明導電
膜の全量に対する着色物質の含有割合を1〜80体積%
程度、好ましくは5〜30体積%程度、透明導電膜の厚
みを200〜10000Å程度、好ましくは500〜3
000Å程度とすることで、当該透明導電膜の、波長5
00nmの光の透過率が上記の範囲内に調整される。
【0046】上記透明導電膜を透明基板上に形成する方
法としては、たとえば真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、
スパッタリング法、レーザーアブレーション法、イオン
プレーティング法などの気相成長法が好適に採用され
る。
【0047】具体的にはたとえば、透明導電材料と着色
材料とを、蒸気圧の相違による蒸着速度の差などを利用
して同じ蒸発源から、あるいは両材料の蒸着速度を個別
に、独立して調整することを考慮して別々の蒸発源か
ら、ほぼ同時に蒸発させて、透明基板上に、それぞれ所
定の蒸着速度で蒸着させるいわゆる同時蒸着法により、
透明導電材料にて形成され、着色材料が所定の比率で添
加された、着色された透明導電膜が形成される。
【0048】またこの際、所定のパターンを有するマス
クを用いて、透明基板の表面をマスキングしてやると、
透明導電膜が、上記マスクのパターンに対応して、透明
基板の表面にパターン形成される。
【0049】かかるパターン形成された透明導電膜は、
たとえば有機エレクトロルミネッセンス素子の発光領域
に意味のある形状を付与したり、あるいはセグメント表
示、ドットマトリクス表示をしたりするために好適に使
用される。
【0050】また透明導電膜はパターン形成せずに連続
した平面状に形成し、その上に、当該透明導電膜の電極
としての機能を妨げる層、たとえば透明導電膜を有機エ
レクトロルミネッセンス素子の陽極として使用する場合
は、当該陽極から有機の層に正孔が注入されるのを防止
する機能を有する、仕事関数4.8eV以下の材料から
なる層をパターン形成しても、透明導電膜をパターン形
成する場合と同様の効果が得られる。
【0051】なお透明導電膜は、ゾル−ゲル法などのウ
エットプロセスによって作製してもよく、その場合に
は、ウエットプロセスにて透明導電膜を形成するための
溶液に、前記着色材料を添加してやればよい。
【0052】上記本発明の透明導電基板は、前述した有
機エレクトロルミネッセンス素子だけでなく、たとえば
液晶表示素子などの、従来公知の種々の表示素子に好適
に使用することができる。そしてこれら各種素子に、種
々の問題を生じるおそれのある後付けフィルターを使用
せずに、フィルターの機能を付与できるというすぐれた
作用効果を奏することができる。 〈有機エレクトロルミネッセンス素子〉つぎに、本発明
の有機エレクトロルミネッセンス素子について説明す
る。
【0053】本発明の有機エレクトロルミネッセンス素
子は、前述したように、陰極および陽極と、この両極間
に挟まれた有機の層とを備えたものであって、上記陰極
および陽極のうちの一方が、フィルターとしても機能さ
せるべく、上記本発明の透明導電基板の、着色された透
明導電膜にて形成されたことを特徴とするものである。
【0054】上記のうち有機の層は単層または複層のい
ずれであってもよいが、先に述べた理由から複層である
のが好ましい。
【0055】また、上記複層構造の有機の層の、層数や
層構成などはとくに限定されないが、たとえば陽極側か
ら陰極側へ順に、下記の各層の中から2層以上を適宜、
選択して組み合わせるのが好ましい。 (a) 陽極からホール輸送層にホールが注入されるのを助
ける〈ホール注入層〉。 (b) 陽極から注入されたホールを陰極側へ輸送する〈ホ
ール輸送層〉。 (c) 陰極から注入された電子を陽極側へ輸送する〈電子
輸送層〉。 (d) 陰極から電子輸送層に電子が注入されるのを助ける
〈電子注入層〉。
【0056】かかる各層はそれぞれ、特定の機能を有す
る有機化合物のみで形成してもよいし、上記有機化合物
を、たとえばバインダーとしての、それ自体がキャリヤ
輸送性を有するまたは有しない高分子中に分散させて形
成してもよい。また、たとえばポリフェニレンビニレン
誘導体などの、高分子で、しかも特定の機能を有する化
合物単独で層を形成してもよい。
【0057】上記各層を備えた複層構造の有機の層の具
体例としては、これに限定されないがたとえば(A) ホー
ル輸送層と電子輸送層の2層を備え、このうちのいずれ
か一方または両方が発光するもの、(B) ホール注入層と
ホール輸送層と電子輸送層の3層を備え、このうちホー
ル輸送層および/または電子輸送層が発光するもの、
(C) ホール輸送層と電子輸送層と電子注入層の3層を備
え、このうちホール輸送層および/または電子輸送層が
発光するもの、(D) ホール注入層とホール輸送層と電子
輸送層と電子注入層の4層を備え、このうちホール輸送
層および/または電子輸送層が発光するもの、などがあ
げられる。
【0058】上記各層構成の素子において、ホール輸送
層および/または電子輸送層のいずれが発光するかは、
両層に含まれる有機化合物の機能(たとえばホール輸送
材料であればホール輸送性、電子輸送材料であれば電子
輸送性など)の強弱とその組み合わせ、およびそれぞれ
の層の厚みなどを調整することによって適宜、変更する
ことができる。
【0059】また上記各層のうち発光する層には、その
発光波長を調整するために、1種または2種以上の蛍光
色素を含有させてもよい。
【0060】前記各層のうちホール注入層を構成する、
ホールの注入性にすぐれた有機化合物としては、たとえ
ば前記式(2-1)で表される銅フタロシアニンや、あるい
はポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(3,4)−エ
チレンジオキシチオフェン、カーボンなどがあげられ
る。またホール注入層には、これらホール注入性材料に
加えて、以下で述べるホール輸送材料を添加してもよ
い。
【0061】ホール輸送層を構成するホール輸送材料と
しては、たとえば式(5-1):
【0062】
【化7】
【0063】で表されるN,N′−ジフェニル−N,
N′−ビス(3‐メチルフェニル)−1,1′−ビフェ
ニル−4,4′−ジアミン、式(5-2):
【0064】
【化8】
【0065】で表されるN,N′−ジフェニル−N,
N′−ジ(2−ナフチル)−1,1′−ビフェニル−
4,4′−ジアミンなどの、トリフェニルアミンの二量
体から誘導される化合物や、式(6):
【0066】
【化9】
【0067】で表されるトリフェニルアミンの三量体、
あるいは式(7-1):
【0068】
【化10】
【0069】や一般式(7-2):
【0070】
【化11】
【0071】〔式中、R7a、R7b、R7c、R7d、R7e
およびR7fは同一または異なって水素原子、アルキル
基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ジアルキルア
ミノ基、またはシアノ基を示し、φ1およびφ2は同一ま
たは異なって、置換基を有してもよい芳香族縮合環を示
す。〕で表されるトリフェニルアミンの四量体などがあ
げられる。
【0072】このうち一般式(7-2)の四量体の好適な例
としては、たとえばN,N′−ジフェニル−N,N′−
ビス〔N−フェニル−N−(2−ナフチル)−4′−ア
ミノビフェニル−4−イル〕−1,1′−ビフェニル−
4,4′−ジアミン、N,N′−ビス〔4−(tert−ブ
チル)フェニル〕−N,N′−ビス〔N−4−(tert−
ブチル)フェニル−N−(2−ナフチル)−4′−アミ
ノビフェニル−4−イル〕−1,1′-ビフェニル−
4,4′−ジアミン、N,N′−ジフェニル−N,N′
−ビス〔N−フェニル−N−(2−ナフチル)−4′−
アミノビフェニル−4−イル〕−1,1′−ビフェニル
−3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミンなどがあげ
られる。
【0073】電子輸送層を構成する電子輸送材料として
は、たとえば式(8):
【0074】
【化12】
【0075】で表されるトリス(8−キノリノラート)
アルミニウム(III)錯体や、あるいは米国特許第579
2567号公報に開示された、式(9-1):
【0076】
【化13】
【0077】で表される1,2,4−トリアゾール誘導
体などがあげられる。
【0078】また電子注入層は、電子輸送材料の中でも
電子の注入性にすぐれた材料にて構成される。かかる電
子注入性にすぐれた電子輸送材料としては、たとえば上
記トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)錯
体の他、これも米国特許第5792567号公報に開示
された、式(9-2):
【0079】
【化14】
【0080】で表されるシアノ基置換トリアゾール2量
体などの1,2,4−トリアゾール誘導体があげられ
る。
【0081】さらに、ホール輸送層および/または電子
輸送層のうち発光する層に添加してもよい蛍光色素とし
ては、たとえばレーザー用の色素などの、励起子によっ
て励起されて蛍光を発することのできる種々の色素が、
目的とする発光波長にあわせて1種単独で、あるいは2
種以上、使用される。
【0082】蛍光色素の具体例としては、たとえばシア
ニン染料、キサンテン系染料、オキサジン染料、クマリ
ン誘導体、キナクリドン誘導体、ナフタセン誘導体、ペ
リレン誘導体、アクリジン染料、アクリドン染料、キノ
リン染料などがあげられる。
【0083】より具体的には、式(10):
【0084】
【化15】
【0085】で表されるクマリン6(緑色発光)、式(1
1):
【0086】
【化16】
【0087】で表されるクマリン7、前記一般式(3)や
(4)で表されるキナクリドン誘導体(緑色発光)、式(1
2):
【0088】
【化17】
【0089】で表されるルブレン(5,6,11,12
−テトラフェニルナフタセン、黄色発光)などが、蛍光
色素として好適に使用される。
【0090】またその他にも、たとえばテトラフェニル
ブタジエン、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−
p−ジメチルアミノスチリル−4H−ピラン、4−ジシ
アノメチレン−2−tert−ブチル−6−(1,1,7,
7−テトラメチルユロジリル−9−エンイル)−4H−
ピランなどのジシアノメチレンスチリルピラン系色素、
ペリレン、ナイルレッドなども、蛍光色素として使用で
きる。
【0091】複層構造の有機の層を構成する前記各層の
厚みはとくに限定されないが、各層はそれぞれ50〜1
000Å程度、とくに100〜800Å程度であるのが
好ましい。
【0092】また、上記各層を2層以上、積層した複層
構造の有機の層の、トータルの厚みは、積層した層数な
どによっても異なるが、800〜2000Å程度、とく
に1000〜1500Å程度であるのが好ましい。
【0093】上記有機の層は、前述したように種々の形
成方法にて形成することができる。すなわち層を構成す
る有機化合物を、真空中で、抵抗加熱などの方法で加
熱、昇華させて下地上に堆積させるいわゆる真空蒸着法
などの気相成長法や、あるいは層を構成する有機化合物
を適当な溶剤中に溶解または分散した塗布液を、スピン
コート法、ディップコート法などによって下地上に塗布
したのち乾燥させて溶剤を除去する溶液塗布法などによ
って形成することができる。
【0094】かかる有機の層を挟む陰陽両極は、発光層
からの発光を素子外に取り出すために、少なくとも一方
が透明である必要があり、本発明の有機エレクトロルミ
ネッセンス素子においては、その透明な一方の極が、前
述したように本発明の透明導電基板の、着色された透明
導電膜にて形成される。
【0095】一般に、電子およびホールの注入効率に係
わる仕事関数などを考慮すると、陽極を、前述したIT
OやIXOなどの透明導電材料にて形成し、つまり透明
とし、陰極は、マグネシウム/銀、アルミニウム/リチ
ウムなどの、アルカリ金属、アルカリ土類金属を含む合
金にて形成するか、あるいはフッ化リチウム、酸化リチ
ウムなどのリチウム化合物の層(無機の電子注入層)と
アルミニウム層などの金属層(陰極本体)との積層構造
とするとともに、製造工程上、陽極を透明基板の直上
に、陰極を、当該陽極上に積層された有機の層の最上層
に、それぞれ配置して、陽極と透明基板とを通して光を
素子外に取り出すように構成するのが好適であり、本発
明においても、かかる構成を採用するのが好ましい。
【0096】すなわち陽極を、本発明の透明導電基板
の、着色された透明導電膜にて形成するとともに、当該
透明導電基板の透明基板を、素子の全体を支え、かつ、
有機の層からの光を素子外に取り出す透明基板として使
用するのが好ましい。
【0097】また陰極を、たとえば上記マグネシウム/
銀、アルミニウム/リチウムなどの合金製の、厚み10
00Å以下、より好ましくは500Å以下の層(電子注
入電極)と、その上に積層された、ITOやIXOなど
の透明導電材料の層の2層構造などとすると、当該陰極
も透明となるため、上記の各層を保護する保護層、各層
を封止する封止材などとして透明な材質のものを使用す
ることにより、素子の非発光時にその全体が透明な有機
エレクトロルミネッセンス素子がえられる。
【0098】また透明基材として、先に述べたように可
とう性のある透明プラスチックフィルムなどを使用する
と、可とう性のある素子がえられる。
【0099】さらにまた透明基材として、感光性のプラ
スチックからなる板やフィルムなどを使用すれば、かか
る透明基材を、素子が劣化しないレベルの光で露光して
パターン形成することにより、所定の平面形状を有する
素子を製造することもできる。
【0100】素子は、たとえば発光時に大気に触れて、
層を構成する有機化合物が酸化劣化するなどして、発光
輝度が著しく低下したり、あるいは発光が停止してしま
ったりするのを防止すべく、各層を形成後に、その一部
または全体を、封止材によって封止してもよい。封止材
としては、たとえばエポキシ樹脂系、ポリエステル樹脂
系、シリコーン樹脂系などの種々の硬化性の樹脂があげ
られる。素子を封止材によって封止するには、たとえば
ポッティング、ディッピングなどの公知の方法が採用さ
れる。
【0101】上記の各部からなる本発明の有機エレクト
ロルミネッセンス素子は、たとえば液晶表示素子のバッ
クライトや、あるいは照明装置などに使用される面状発
光体の他、発光層や陰陽両極などを所定のパターンに形
成することで、セグメント表示素子、ドットマトリクス
表示素子などとして使用することもできる。
【0102】
【実施例】以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて
説明する。 〈透明導電基板〉 実施例1 界面活性剤、および有機溶媒を用いて順次、超音波洗浄
したガラス基板を、透明導電材料としてのITOの蒸発
源である電子ビーム蒸発源(2kW)と、着色物質とし
ての銅フタロシアニンの蒸発源である、石英セルを用い
た抵抗加熱式蒸発源とを備えた真空蒸着装置内に、所定
のパターンを有するマスクとともにセットし、真空度5
×10-6torrまで装置内を減圧、排気した。
【0103】そして、ガラス基板を200℃に加熱しつ
つ、上記両蒸発源からITOと銅フタロシアニンとを蒸
発させて、ガラス基板上に、上記マスクのパターンに対
応した透明導電膜を同時蒸着によりパターン形成して、
透明導電基板を製造した。
【0104】このとき、ITOの蒸着速度は12Å/
秒、銅フタロシアニンの蒸着速度は3Å/秒、蒸着時間
は2分間とした。
【0105】得られた透明導電膜は青色を呈し、その膜
厚は1800Å、銅フタロシアニンの含有割合は20体
積%、波長550nmの光の透過率は64.8%、抵抗
率は5.2×10-4Ω・cmであった。
【0106】実施例2 着色物質としての銅フタロシアニンの蒸着速度を5Å/
秒としたこと以外は実施例1と同様にして、ガラス基板
上に透明導電膜をパターン形成して、透明導電基板を製
造した。
【0107】得られた透明導電膜は実施例1よりも濃い
青色を呈し、その膜厚は2040Å、銅フタロシアニン
の含有割合は29.4体積%、波長550nmの光の透
過率は55.4%、抵抗率は8.2×10-4Ω・cmで
あった。
【0108】実施例3 着色物質として、銅フタロシアニンに代えて2,3−キ
ナクリドンを使用したこと以外は実施例1と同様にし
て、ガラス基板上に透明導電膜をパターン形成して、透
明導電基板を製造した。
【0109】得られた透明導電膜は緑色を呈し、その膜
厚は1800Å、2,3−キナクリドンの含有割合は2
0体積%、波長550nmの光の透過率は67.2%、
抵抗率は6.5×10-4Ω・cmであった。 〈有機エレクトロルミネッセンス素子〉 実施例4 上記実施例1で製造した透明導電基板を、まず界面活性
剤、および有機溶媒を用いて順次、超音波洗浄したの
ち、真空蒸着装置内にセットし、真空度10-6〜10-7
torrの条件下、当該透明導電基板の、フィルターを兼ね
る着色された透明導電膜の上に、下記の各層を、それぞ
れ真空蒸着法によって連続的に、この順に積層、形成し
た。 銅フタロシアニンを真空蒸着して形成した、厚み4
00Åのホール注入層。 N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(2−ナフチ
ル)−1,1′−ビフェニル−4,4′−ジアミンを真
空蒸着して形成した、厚み400Åのホール輸送層。 前記一般式(3)で表されるキナクリドン誘導体に属
する、蛍光色素としての、式(3-2):
【0110】
【化18】
【0111】で表されるN,N′−ジメチル−2,3−
キナクリドンと、トリス(8−キノリノラート)アルミ
ニウム(III)錯体とを同時蒸着して形成された、上記
N,N′−ジメチル−2,3−キナクリドンを0.4体
積%の割合で含有する、厚み600Åの電子輸送層兼発
光層。 フッ化リチウム(LiF)を真空蒸着して形成され
た、厚み10Åの無機の電子注入層。 アルミニウムを真空蒸着して形成された、厚み10
00Åの陰極本体。
【0112】つぎに、上記の工程が終了した透明導電基
板をグローブボックス中に入れ、乾燥窒素雰囲気下で、
当該透明導電基板の、上記各層が積層、形成された面
に、乾燥剤(酸化バリウム)とともに紫外線硬化性のエ
ポキシ樹脂を塗布した封止用ガラス板を貼り付け、紫外
線照射と熱硬化によってエポキシ樹脂を硬化させること
で封止して、有機エレクトロルミネッセンス素子を製造
した。
【0113】得られた有機エレクトロルミネッセンス素
子を300cd/cm2の明るさで発光させながら、照
度50ルクスの条件下で、前記のように透明導電膜をパ
ターン形成することで分けられた発光部分と非発光部分
のコントラストを測定したところ、80:1という高い
値を示した。また実際に発光を観察したところ、上記の
条件下でも十分に、発光部分の発光パターンを確認する
ことができた。
【0114】比較例1 透明導電基板として、着色材料を含有せず、ITOのみ
にてパターン形成された、厚み1800Åの透明導電膜
を有するものを使用したこと以外は実施例4と同様にし
て有機エレクトロルミネッセンス素子を製造した。
【0115】得られた有機エレクトロルミネッセンス素
子を300cd/cm2の明るさで発光させながら、照
度50ルクスの条件下で、同様に発光部分と非発光部分
のコントラストを測定したところ30:1という低い値
を示した。また実際に発光を観察したところ、発光部分
の発光パターンを十分に確認することができなかった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木村 康三 大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電 気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 上羽 良信 大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電 気工業株式会社大阪製作所内 Fターム(参考) 3K007 AB00 AB18 BA06 CA01 CA05 CA06 CB01 DA00 DB03 EB00 FA01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明基板上に、着色物質によって着色され
    た、フィルターとしての機能を備えた透明導電膜を有す
    ることを特徴とする透明導電基板。
  2. 【請求項2】着色された透明導電膜における、波長50
    0nmの光の透過率が70%以下である請求項1記載の
    透明導電基板。
  3. 【請求項3】透明導電膜が、インジウム、亜鉛、および
    スズのうち少なくとも1種の金属の酸化物を含む透明導
    電材料にて形成されている請求項1記載の透明導電基
    板。
  4. 【請求項4】透明導電膜が、所定のパターンを有するマ
    スクを用いた気相成長法によって、透明基板上にパター
    ン形成されている請求項1記載の透明導電基板。
  5. 【請求項5】陰極および陽極と、この両極間に挟まれた
    単層または複層の有機の層とを備えた有機エレクトロル
    ミネッセンス素子であって、上記陰極および陽極のうち
    の一方が、フィルターとしても機能させるべく、請求項
    1記載の透明導電基板の、着色された透明導電膜にて形
    成されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセン
    ス素子。
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