JP2001049409A - 平版印刷版用アルミニウム合金支持体および該支持体用素板の製造方法 - Google Patents

平版印刷版用アルミニウム合金支持体および該支持体用素板の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 冷間圧延時の中間焼鈍を省略して省エネルギ
ーを図ると共に冷間圧延の圧延段数を減じて製板工程を
簡略化し、しかも所望の強度が得られ、更に素板の単体
Si析出を抑制して印刷中の非画像部の耐インキ汚れ性の
極めて優れた平版印刷版用アルミニウム合金支持体と該
支持体用の素板の製造方法を提供する。 【解決手段】 Fe:0.10〜0.40wt%、Si:0.03〜0.15お
よびCu: 0.004〜0.03wt%、残部Alおよび不可避的不純
物からなるアルミニウム合金鋳塊を均質化熱処理し、熱
間圧延し、中間焼鈍なしで冷間圧延する際に、冷間圧延
が、少なくともパス後の板温度が板の回復温度以上とな
る最終パスと、それに続く急速冷却とを含むことによ
り、単体Si量 30ppm以下、抗張力 145〜180MPaの平版印
刷版用アルミニウム合金素板とし、更に電解粗面化処
理、陽極酸化皮膜処理を施すことにより、皮膜中の平均
粒子径 0.5μm以上の単体Si数を 200個/mm2 以下とす
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷間圧延における
中間焼鈍処理を省略し、冷間圧延のパス回数を減じて製
板工程を簡略化すると共に、印刷中の非画像部の耐イン
キ汚れ性が極めて優れ、しかも適正な強度を有する平版
印刷版用アルミニウム合金支持体および該支持体用素板
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、一般に平版印刷版用アルミニウム
合金支持体に用いられる素板としては、0.1〜0.5
mm厚のJIS 1050等のアルミニウム合金薄板が用
いられている。このようなアルミニウム合金薄板は通
常、半連続鋳造法により得られた鋳塊の表面を研削によ
り除去し、均質化熱処理し、熱間圧延、冷間圧延を施し
た後、所望の強度を付与するためにさらに中間焼鈍およ
び最終冷間圧延を経て製造されている。
【0003】このように製造された平版印刷版用アルミ
ニウム合金素板は、その表面を機械的方法、化学的方
法、または電気化学的方法のいずれか1つまたは2つ以
上を組み合わせた工程によって粗面化処理され、更に印
刷時の耐摩耗性、保水性、非画像部の耐汚れ性、感光膜
の密着性等の付与のために、皮膜厚さ0.1〜1.0μ
m程度の陽極酸化処理が施され、必要に応じて親水化処
理して、平版印刷版支持体とされる。さらに該支持体の
表面に感光性物質を塗布して感光層が形成され、必要に
応じて加熱バーニング処理により感光層が強化され、感
光性の平版印刷版が得られる。
【0004】次に、この平版印刷版に、画像露光、現
像、水洗、ラッカー盛りなどを順次行う製版処理を施す
ことにより、印刷原版が得られる。上記の現像により、
未溶解で残存している感光層は撥水性であってインキの
みを選択的に受容するインキ受容部として画像部を形成
し、感光層が溶解した部分は感光層の下にあるアルミニ
ウム合金支持体の表面が露出し、その親水性により水受
容部となり、インキ排除部として非画像部を形成する。
【0005】印刷を行う際には、上記印刷原版の両端部
を曲げ加工し、印刷機版胴に固定する。従って平版印刷
版素板は、取扱性および耐用性等の観点から所望の強度
が求められている。このように固定された印刷原版の原
版面に湿し水を供給すると、感光層が除去され親水性の
合金素板表面が露出した非画像部のみに湿し水が保持さ
れ、撥水性の感光層表面が残存している画像部には保持
されない。この状態で原版面にインキを供給すると、画
像部にのみインキが付着保持される。画像部に付着保持
されたインキは、さらにブラケット胴に転写され、ブラ
ケット胴から紙面等の印刷対象面に転写され印刷が行わ
れる。
【0006】非画像部にインキが付着すると印刷物が汚
れるので、アルミニウム合金支持体の表面が露出してい
る非画像部にはインキが付着しないように、湿し水を十
分に保持する保水性を確保することが重要であって、そ
のためには、電気化学的処理等の粗面化処理によって、
優れた粗面の均一性と健全な陽極酸化被膜を得る必要が
ある。
【0007】特開昭62−148295号公報には、鋳
塊を高温で均熱処理してFeの一部を固溶させ、その後
の冷却で鋳塊中に含まれるSi原子をAl−Fe−Si
系の金属間化合物として析出させて固定し、続く工程で
の単体Si析出量を減じることにより、電解粗面化処理
により均一な粗面が得られ、印刷中の非画像部の耐イン
キ汚れ性の優れた平版印刷版を製造する方法が提案され
ている。なお、同公報にはその実施例で熱間圧延後冷間
圧延工程で中間焼鈍処理のない処理方法が例示されてい
る。
【0008】また特開平6−192779号公報には、
Mgを含有させることにより、鋳造、均質化熱処理、熱
間圧延、冷間圧延、中間焼鈍処理、最終冷間圧延を含む
製造工程での単体Siの析出を抑制して印刷中の非画像
部の耐インキ汚れ性の優れた平版印刷版を製造する方法
が提案されている。また特開平10−306355号公
報には、鋳塊を均熱処理後所定温度から熱間圧延を開始
し、所定温度で熱間圧延を終了し、爾後所定温度まで徐
冷してその間に微細再結晶粒組織としてストリークが発
生しないようにし、また以降熱処理を施すことなく60
%以上の圧延率で最終板厚まで圧延することにより支持
体に強度を付与する支持体の製造方法が提案されてい
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】支持体の特性として
は、搬送や取扱い時に僅かな衝撃で凹み等の傷が付かな
いように十分な強度が必要である。一方、原版の両端部
を曲げ加工して印刷機版胴に固定する時の曲げ加工性を
確保するために十分な延性も要求される。更に、印刷時
の繰り返し応力に対する耐久性を確保するために十分な
疲労強度すなわち強度・靱性の組み合わせも必要とす
る。したがって、素板はこれらの要請を同時に満たす機
械的性質を具備する必要があり、そのために素板の強度
を抗張力145〜180MPa 程度の範囲に制御する必要
がある。
【0010】しかし、熱間圧延後の冷間圧延工程で中間
焼鈍しない製造方法においては、冷間圧延工程における
加工硬化により強度が高くなり過ぎ、前述のような適当
な強度を付与し難い。加工硬化の程度を下げるには、熱
間圧延での最終板厚さを薄くすることにより、その後の
冷間圧延での加工度を少なくすることが考えられる。し
かし、高温で軟質となっている熱間圧延板の厚さを薄く
することは、圧延ロールの僅かな歪みで熱間圧延板の厚
さが不均一となるため、実際にはかなり困難である。そ
のため、冷間圧延に供する熱間圧延板の厚さには現実に
は下限があり、極力薄くしたとしても3mm程度までであ
る。
【0011】そこで本発明者は、加工硬化による過剰な
強度上昇を解消する一つの方法として、冷間圧延を高圧
下率で行って加工熱を多量に発生させ、冷間圧延中の板
温度を板の回復温度以上の高温に上昇させると、冷間圧
延中あるいは冷間圧延後の回復によって軟化し、所望範
囲の強度が得られるという知見を得た。しかし、このよ
うに冷間圧延工程で回復温度以上に昇温させて製造した
素板を用いると、印刷中の非画像部にインキ汚れが発生
し、耐インキ汚れ性が低下するという新たな問題点が生
じた。
【0012】本発明者はその原因を検討した結果、高圧
下率により板温度を回復温度以上とした冷間圧延板で
は、固溶しているSiが冷間圧延後の冷却中に単体Si
として析出し易く、この単体Siによって印刷中の非画
像部の耐インキ汚れ性を低下させるという知見を得た。
そこで、本発明の目的の一つは、冷間圧延工程における
中間焼鈍工程を省略して製造された支持体において、化
学組成が規制されて電解粗面化性を有し、単体Si量が
制限されて非画像部の耐インキ汚れ性を備え、しかも取
り扱い性の良い適切な強度を有した平版印刷版用アルミ
ニウム合金支持体を提供することである。本発明のもう
一つの目的は、冷間圧延工程における中間焼鈍工程を省
略して省エネルギーを図ると共に冷間圧延の圧延パス数
を減じて製板工程を簡略化し、しかも所望の強度が得ら
れ、さらに素板に単体Siが析出するのを抑制して印刷
中の非画像部の耐インキ汚れ性の極めて優れた平版印刷
版用アルミニウム合金素板の製造方法を提供することで
ある。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明者らは、冷間圧延工程における中間焼鈍処理
を省略して製造された支持体に求められる適切な強度と
電解粗面化性と非画像部の耐インキ汚れ性の向上を図る
べく鋭意研究を重ねた結果、Al合金の化学組成を規制
すると共に製造法条件をコントロールして、その強度と
単体Si量およびその密度を規制することにより、支持
体の優れた電解粗面化性と良好な非画像部の耐インキ汚
れ性の向上を実現し、更には版胴への機械的取り付けお
よび耐用性という優れた取り扱い性を保持できることを
知見して本発明を完成したものである。
【0014】本発明の平版印刷版用アルミニウム合金支
持体は、アルミニウム合金鋳塊を均質化処理後熱間圧延
し、中間焼鈍を施すことなく冷間圧延して素板とし、爾
後素面化処理、陽極酸化処理を施した平版印刷版用支持
体であって、該支持体が、Fe 0.10〜0.40
%,Si 0.03〜0.15%,Cu 0.004〜
0.03%および単体Si量が30ppm 以下、残部Al
および不可避的不純物からなり、粗面化処理面に陽極酸
化皮膜が0.1〜1.0μm形成されており、該陽極酸
化皮膜中に寸法が円相当換算で0.5μm以上の単体S
iが200個/mm 2 以下であり、しかも抗張力が145
〜180MPa であることを特徴とする。
【0015】また本発明の平版印刷用アルミニウム合金
素板の製造方法は、下記工程:Fe:0.10〜0.4
0wt%、およびSi:0.03〜0.15wt%を含有す
るアルミニウム合金鋳塊を準備する工程、上記鋳塊の均
質化熱処理工程、熱間圧延工程、および中間焼鈍なしの
冷間圧延工程を含む、平版印刷版用アルミニウム素板の
製造方法において、上記冷間圧延工程が、少なくともパ
ス後の板温度が板の回復温度以上となる最終パスと、そ
れに続く急速冷却とを含むことを特徴とする。
【0016】電解粗面化性を付与するには化学組成を規
制し、非画像部の耐インキ汚れ性を付与するには単体S
iの量と密度を制限する。特に、後者を達成するため
に、鋳塊の均質化熱処理でFeの一部を固溶させ、その
後の熱間圧延の終了までにAl−Fe系、Al−Fe−
Si系の化合物を析出させ、しかも冷間圧延中または冷
間圧延最終パス後の板温度を板の回復温度以上として圧
延し、加工硬化した板を軟化させて所望の強度と板厚の
素板とし、回復温度以上の冷間圧延板を冷却するとき
は、急速冷却することによって単体Siの析出を抑制す
る。このような工程をとることにより適切な強度を有
し、印刷中の非画像部の耐インキ汚れ性の極めて優れた
支持体をすることができると共に平版印刷版用アルミニ
ウム合金素板が製造できる。
【0017】本発明の望ましい態様においては、Mg:
0.002〜0.02wt%を更に含有すると、単体Si
の析出速度が低下するため、回復温度以上で行った冷間
圧延パス後から急速冷却開始までの時間を延ばすことが
でき、急速冷却の作業が容易になる。
【0018】本発明の望ましい態様においては、急速冷
却後の冷間圧延板が、抗張力145〜180MPa 、単体
Si含有量は30ppm 以下となるように、前記冷間圧延
工程で少なくとも最終パス後の板温度とそれに続く急速
冷却とを制御することが好ましい。本発明の望ましい態
様においては、回復温度以上の板温度は、100℃以上
とすることが好ましい。
【0019】本発明の望ましい態様においては、回復温
度以上で行った冷間圧延最終パス後の急速冷却は、5℃
/分以上の冷却速度で行うことが好ましい。本発明の特
徴の第1は、高圧下率で冷間圧延し、少なくとも最終パ
ス後の板温度が板の回復温度以上となるようにすること
である。これにより、冷間圧延で加工硬化した板を冷間
圧延中あるいは冷間圧延後の回復により軟化させ、過度
の強度上昇を防止する。この回復による軟化を行わない
と強度が高くなりすぎ、印刷機版胴に固定するための両
端部曲げ加工等に必要な延性が得られない。
【0020】このように高圧下による発熱を利用して回
復軟化させることができるので、冷延中の中間焼鈍を省
くことができ、製版工程を簡略化できると共に省エネル
ギーが図られる。回復温度以上の板温度は100℃以上
とすることが好ましい。上限は225℃とする。通常の
冷間圧延装置ではこの温度を超えることはないと考えら
れるが、この温度を超えると単体Siが析出し易くなっ
て30ppm 以下に規制し難くなる。ここで冷間圧延パス
後の板温度としたのは、冷間圧延パス中に加工熱で板の
温度は上昇しているものと推定されるが、実際には、圧
延パス中の板温度は測定できないので、測定可能な圧延
パス後の板温度とした。
【0021】本発明の特徴の第2は、冷間圧延パス後に
回復温度以上となっている板を急速冷却することであ
る。この急速冷却によって、固溶Siが単体Siとして
析出するのを抑制する。急速冷却しないと冷却中に多量
の単体Siが析出して、電解粗面化および陽極酸化処理
で均一な粗面化面が得られず、保水性を損ないインキを
受容して耐インキ汚れ性を低下する。好ましい急冷速度
は5℃/分である。
【0022】
【発明の実施の形態】先ず、本発明におけるアルミニウ
ム合金の成分の限定理由を説明する。Fe:0.10〜
0.40wt%、Feは、Siと共にAl−Fe−Si系
の微細化合物を生成させて強度を確保するために必要で
あると共に、鋳造組織の結晶粒を微細化するために必要
な元素である。Fe含有量が0.10wt%未満では、鋳
造組織の結晶粒の微細化効果が得られず、粗大な結晶粒
の存在により電気化学的粗面化面の外観均一性が損なわ
れる。一方、Fe含有量が0.40wt%を超えると、A
l−Fe系およびAl−Fe−Si系の粗大な化合物が
形成され化学的性質の局所的不均一が顕著になり、電気
化学的粗面化面のピット形状が不均一になり保水性が劣
る。
【0023】なお、Feは通常アルミニウム合金中に不
純物として含有される元素であり、Fe含有量を0.1
0wt%未満にすることは純度の高いアルミニウム地金を
原料とする必要性からコスト上昇にもなる。Si:0.
03〜0.15wt%、Siは、Feと共にAl−Fe−
Si系の微細化合物を生成させ強度を確保するために必
要な元素である。Si含有量が0.03wt%未満ではこ
の効果が不足する。一方、Si含有量が0.15wt%を
超えると、Al−Fe−Si系の粗大な化合物が形成さ
れ化学的性質の局所的不均一が顕著になり、電気化学的
粗面化面のピット形状が不均一になり保水性が劣る。更
に、単体Siが生成して非画像部のインキ汚れを助長す
るので、好ましくない。
【0024】なお、Siは通常アルミニウム合金中に不
純物として含有される元素であり、Si含有量を0.0
3wt%未満にすることは純度の高いアルミニウム地金を
原料とする必要性からコスト上昇にもなる。Cu:0.
004〜0.03wt%、Cuは、電気化学的粗面化に大
きく影響する元素である。Cu含有量を0.004wt%
以上とすると、電気化学的粗面化面のピット密度を適切
にでき好ましい。一方、Cu含有量が0.03wt%を超
えると、電気化学的粗面化面のピット密度が低くなり、
ピットサイズが大き過ぎたり、未エッチング領域(粗面
化未了部)が残存したりする。これは、非画像部の保水
性を損ない、印刷中のインキ汚れを増す原因になる。
【0025】不純物としては、Mn,Cr,Zr,V,
Zn,Ni,Ga,Li,Be等の元素が含有されるこ
とがあるが、含有量が各々0.05wt%以下程度の微量
であれば本発明による効果に大きな悪影響を及ぼさな
い。またTiおよびBは鋳造組織の結晶粒微細化に有効
である。そのため、鋳造に際して割れ発生の防止に有用
であり、また鋳造組織の結晶粒粗大化に起因する粗面化
面のストリークス発生防止に有効である。またBは、T
iと共に添加され、鋳造組織の結晶粒微細化に有効であ
る。その効果はTiのみを添加した場合よりも高い。T
i,Bを添加する場合は、Ti:0.01〜0.05wt
%、B:0.0001〜0.02wt%とすることが好ま
しい。
【0026】Mg:0.002〜0.02wt%、Mg
は、単体Siの析出を遅延させ、回復温度以上での冷間
圧延パス後から急速冷却を開始するまでの時間を延ばす
ことができ、急速冷却の作業を容易にする。Mg含有量
を0.002wt%以上とすると急速冷却開始までの時間
を十分に延ばすことができる。一方、Mg含有量が0.
02wt%を超えると、冷間圧延板の回復がし難くなり、
結果として素板の強度が高く成り過ぎ所望の強度を付与
し難くなる虞がある。
【0027】単体Si:30ppm 以下、平均粒径0.5
μm以上の単体Siが200個/以下、固溶Siから単
体Siへの析出は転位密度の高い部分に集中的に生じ易
く、圧延により転位発生の繰り返される素板の製造過程
では析出の機会は常に存在する。単体Siの量が30pp
m を超えると、析出し集合した単体Siが粗大化したも
のが多数生じ易くなって好ましくない。更に、析出した
単体Siは陽極酸化され難く、また、素板の陽極酸化皮
膜処理において電流を通し難く均一な厚さの皮膜が得に
くくなり、薄い皮膜箇所が印刷中に繰り返し塗布される
湿めし水等で腐食され易くなって、インキ汚れの原因に
なる。素板に処理される支持体面の陽極酸化皮膜の厚さ
は通常0.1〜1.0μmであるので、単体Siのサイ
ズが大きくなると皮膜の厚さが極端に乱され易くなり、
その結果、皮膜処理のされた支持体の面でその大きさが
平均粒径で0.5μm以上の単体Siが200個/mm2
を超えるとインキ汚れの欠陥が顕在化する。好ましくは
単体Siは100個/mm2 以下である。ここで単体Si
の平均粒径は面積を円相当半径で表したものである。次
に、本発明による平版印刷用アルミニウム合金素板の製
造方法の典型的な実施の形態を説明する。除滓処理等を
施して溶製した前記組成のアルミニウム合金溶湯を常法
により鋳造して鋳塊とする。鋳造法は特に限定しない
が、半連続鋳造法が望ましい。鋳塊の厚さも特に限定し
ないが、通常は500〜600mm程度である。
【0028】鋳塊は一般に、次工程の均質化熱処理の前
に面削される。ただし、均質化熱処理による鋳塊表面の
酸化層を除去する必要がある場合には、均質化熱処理の
後に面削を行う。上記の鋳塊に均質化熱処理を施す。こ
の均質化熱処理は以降の熱間圧延と共同して、不純物を
固溶させると共に、Feの一部を固溶させ、一部を金属
間化合物として均一微細に分散させる。均質化処理の温
度は、Fe等の固溶を確保するために典型的には500
℃以上とし、鋳塊の部分溶解が起きないように典型的に
は620℃以下とする。均質化処理の保持時間は30分
以上が好ましい。鋳塊の表面面削は表面の酸化防止等を
目的として均質化処理後にしてもよい。均質化処理温度
が上記温度範囲を超える温度では上記化合物が粗大析出
し易く、電気化学的処理等の粗面化処理およびその後の
陽極酸化処理によって上記化合物の析出したと思われる
箇所にピットの大きさに乱れが生じて保水性が低下し、
非画像部にインキが付着し印刷物が汚れる虞がある。
【0029】均質化処理後、熱間圧延を施す。熱間圧延
の条件は特に限定されない。熱間圧延後に冷間圧延を施
す。冷間圧延中の中間焼鈍を省略して製板工程を簡略化
する。中間焼鈍を省略した冷間圧延板は圧延加工による
硬化を解消するために、少なくとも最終パス後の板の温
度が板の回復温度以上となるように冷間圧延を行う。板
の回復温度は板の組成と蓄積歪み量で異なるが、本発明
の組成の板の場合は圧下率50%の加工で約100℃程
度の温度で回復し始める。加工度が高ければ回復はより
低い温度で始まる。この板の温度を板の回復温度以上と
するには以下の方法が考えられる。例えば、冷間圧延
するコイルの初期温度を回復温度以上に加熱して、冷間
圧延を開始する。しかしこの方法では大きな省エネルギ
ー効果は得られない。冷間圧延するコイルの初期温度
を室温近傍から開始する場合は、冷間加工の圧下率を大
きく設定して板に加工熱を発生させる。この方法は省エ
ネになるし、圧延回数を減らせる効果がある。この圧下
率は50%以上とすることが好ましい。
【0030】少なくとも最終パス後に回復温度以上を確
保するための最も好ましい方法は、前記の如く板を塑
性変形させながらその変形による加工熱で板を高温にす
ることであって、その塑性変形と塑性変形による加工熱
による急速加熱によって、板を外部から加熱した場合に
昇温過程で起きる単体Siの析出を抑制できる。例え
ば、圧延速度500〜2000m/分で冷間圧延し、工
場内に置かれた40℃(室温)の6mm厚さの板を3mm厚
さに圧延した場合(圧下率50%)、板温度は100℃
程度の温度に上昇する。続いてこの100℃の板を1mm
まで圧延すると(圧下率67%)板温度は150℃程度
の温度に上昇する。この回復温度以上に昇温している間
に板の加工組織が回復し軟化する。この150℃程度に
上昇した1mm厚さの板を更に0.5mm(圧下率50%)
に圧延すると、板温度は170℃程度の温度に上昇す
る。この0.5mmの板を更に圧延して圧下率を50%以
上としても、板からの単位時間当たりの放熱量が大き
く、例えば0.25mmに圧延すると(圧下率50%)、
パス後の板温度は130℃程度まで降下する。
【0031】この温度で巻き取られたコイルは、回復は
するものの残留歪量が大きくコイルの冷却過程で固溶S
iが単体Siとして析出し易くなっているから、冷間圧
延最終パス後直ちにまたは10分以内に、本発明のもう
一つの重要な要件である急速冷却を施して80℃以下と
する。急速冷却の冷却速度は5℃/分以上が目安とな
る。この急速冷却の方法としては、最終パスの圧延ロー
ルから出た板を直ちに冷却室を通す方法、巻き取られた
コイルを冷媒中に浸漬する方法、コイルに冷媒を塗布す
る方法等の冷媒を用いると好ましい。このようにして冷
間圧延最終パス後、好ましくは10分以内に、更に好ま
しくは最終パス直後に、急速冷却して固溶Siの単体S
iへの析出を抑制する。この冷間圧延方法により、冷間
圧延板の強度を145〜180MPa 、単体Siの総量を
30ppm 以下に制限すると、特に好ましい平版印刷版用
アルミニウム合金素板を得ることができる。
【0032】なお、上述の典型例は、冷間圧延のパス間
でコイルを冷却させることなく4パスを連続して行う例
であるが、操業の都合でパス間でコイルを冷却させる必
要の生じた場合は、上述したと同様に冷間圧延パス後、
好ましくは10分以内に、更に好ましくはパス直後に、
急速冷却を施して80℃以下まで板温度を降下させる。
パス後、急速冷却開始までの時間が10分を超えると、
例え本発明の望ましい態様によりMgを適量含有させた
としても、単体Siが析出し易くなり、その総量が多く
なり易い。冷間圧延のパス間でコイルを冷却させ、以降
の冷間圧延を再開するときは、板厚さにもよるが、外部
からの加熱は好ましくないから、前工程のコイルを冷却
し過ぎること無く80℃程度に止め、以後のパスでの加
工熱で板の回復温度以上を達成し易くすることすること
が好ましい。
【0033】印刷版用アルミニウム合金素板を電解粗面
化する際には、必要に応じて前処理として、素板表面の
脱脂または酸化皮膜除去のために酸またはアルカリで化
学的エッチングを行う。電解粗面化処理自体は、黒鉛等
を対極として交流を印加して電解エッチングを行うこと
により、素板表面にピットを形成して粗面化する処理で
ある。この粗面化は、印刷性能に係わる感光膜の密着性
や保水性を付与するものである。印刷版全体にわたって
均一な密着性および保水性が得られる必要があるので、
ピットも印刷版全体にわたって均一に形成される必要が
ある。次に、上述の如くして得られた素板表面にピット
を形成して粗面化する本発明による平版印刷版用支持体
の印刷版表面処理方法について詳細に説明する。
【0034】本発明における粗面化方法は、塩酸系また
は硝酸系電解液中で交流を流し、粗面化する電解粗面化
法である。本発明においては、アルミニウム表面を金属
ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球
と研磨剤でアルミニウム表面を粗面化するボールグレイ
ン法、ナイロクブラシと研磨剤で表面を粗面化するブラ
シグレイン法のような機械的粗面化法を電解粗面化法と
併用してもよい。電解粗面化処理に先立って、アルミニ
ウム表面に付着した圧延油あるいは機械的粗面化後のか
み込んだ研磨剤(機械的粗面化を施した場合)を除去
し、表面を清浄化するための表面処理が行なわれる。一
般的に、圧延油除去のためにはトリクレン等の溶剤や界
面活性剤を用いて表面を清浄する方法が用いられる。ま
た、1〜30%の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、
炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム等の水溶液に、アルミ
ニウム合金板を20〜80℃の温度で5秒〜250秒間
浸漬し、次いで、10〜30%硝酸または硫酸水溶液に
20〜70℃の温度で5〜250秒間浸漬して、アルカ
リエッチング後の中和およびスマット除去を行なう方法
は、圧延油の除去並びに研磨剤の除去のいずれに対して
も一般的に用いられる。
【0035】このアルミニウム合金板の表面清浄化後、
電解粗面化処理が施される。本発明において電解粗面化
処理に使用される電解液は、塩酸溶液を使用する場合の
濃度は、0.01〜3重量%の範囲で使用することが好
ましく、0.05〜2.5重量%であれば更に好まし
い。また、硝酸溶液を使用する場合の濃度は、0.2〜
5重量%、好ましくは、0.5〜3重量%が好適であ
る。
【0036】また、この電解液には必要に応じて硝酸
塩、塩化物、モノアミン類、ジアミン類、アルデヒド
類、リン酸、クロム酸、ホウ酸、シュウ酸、アンモニウ
ム塩等の腐蝕抑制剤(または安定化剤)、ピットの均一
化剤などを加えることができる。また電解液中には、適
当量(1〜10g/l)のアルミニウムイオンを含んで
いてもよい。電解液の温度は通常10〜60℃で処理さ
れる。この際に使用される交流電流は、正負の極性が交
互に交換されたものであれば、矩形波、台形波、正弦波
いずれのものも用いることができ、通常の商用交流の単
相および三相交流電流を用いることができる。また電解
密度は、5〜100A/dm2 で、10〜300秒間処理
することが望ましい。
【0037】本発明におけるアルミニウム合金支持体の
表面粗さは、電気量によって調整し、0.2〜0.8μ
mとする。0.8μmをこえると、極端に粗面化面がマ
クロピットで覆われ、これは印刷中に汚れの発生原因と
なり、好ましくない。また、0.2μm未満では、印刷
版上の浸し水のコトンロールが出来ずシャドー部の網点
部がカラミ易くなり、良好な印刷物が得られない。この
ように粗面化されたアルミニウム合金素板は、10〜5
0%の熱硫酸(40〜60℃)や希薄なアルカリ(水酸
化ナトリウム等)により表面に付着したスマットが除去
される。アルカリで除去した場合は、引続いて洗浄のた
め酸(硝酸または硫酸)に浸漬して中和する。
【0038】表面のスマット除去を行なった後、陽極酸
化皮膜が儲けられる。陽極酸化法は、従来よりよく知ら
れている方法を用いることができるが、硫酸が最も有用
な電解液として用いられる。それについて、リン酸もま
た有用な電解液である。さらに特開昭55−28400
号公報に開示されている硫酸とリン酸の混酸法もまた有
用である。
【0039】硫酸法は通常直流電流で処理が行なわれる
が、交流を用いることも可能である。硫酸の濃度は5〜
30%で使用され、20〜60℃の温度範囲で5〜25
0秒間電解処理されて、表面に厚さ0.1〜1.0μm
の酸化皮膜が設けられる。この電解液には、アルミニウ
ムイオンが含まれている方が好ましい。さらにこのとき
の電流密度は1〜20A/dm2 が好ましい。リン酸法の
場合には、5〜50%の濃度、30〜60℃の温度で、
10〜300秒間、1〜15A/dm2 の電流密度で、処
理される。このようにして処理された支持体表面酸化皮
中の単体Siは平均粒径0.5μm以上のものが200
個/mm2 以下とすることができる。
【0040】このように、陽極酸化皮膜を設けた後、必
要に応じて後処理を行なうことができる。例えば、英国
特許第1230447号公報に開示されたポリビニルホ
スホン酸の水溶液中に浸漬処理する方法や、米国特許第
3181461号公報に開示されたアルカリ金属珪酸塩
の水溶液に浸漬する方法が用いられる。また、必要に応
じて、親水性高分子の下塗り層を設けることも可能であ
り、この後に設ける感光性物質の性質に応じて選択され
る。
【0041】
【実施例】表1に示した種々の化学組成のアルミニウム
合金の溶湯を溶製した。各アルミニウム合金溶湯を半連
続鋳造して厚さ560mmの鋳塊とし、鋳塊の両面を10
mmずつ面削して厚さ540mmとした。次に、600℃の
温度で4時間の均質化熱処理を施した後、熱間圧延を行
って厚さ6mmの熱間圧延板を得た。熱間圧延の初期温度
(開始温度)は450〜350℃、終期温度(終了温
度)は400〜300℃であった。
【0042】次に、室温(40℃)の熱間圧延板を冷間
圧延した。冷間圧延速度を500〜2000m/分と
し、板厚さが薄くなるに従って圧延速度を速くした。冷
間圧延の方式は、各パス後に冷間圧延板を巻き取ってコ
イルとし、このコイルを次パスに供する方式とした。本
発明例として、板厚さ6mm→3mm→1mm→0.5mm→
0.25mmの4パスのパススケジュールで行った。この
場合、最終パス(第4パス)後は必ず急速冷却し、一例
においては途中パス(第2パス)後にも急速冷却を行っ
た。
【0043】比較例として、上記と同じパススケジュー
ルとし、ただし最終パス(第4パス)後に緩冷却した。
別の比較例として、従来技術による冷間圧延を、板厚さ
6mm→3.5mm→2.0mm→1.2mm→0.7mm→0.
4mm→0.25mmの6パスのパススケジュールで行っ
た。
【0044】上記各冷間圧延工程における温度および冷
却速度を表2に示す。次いで、10%水酸化ナトリウム
で表面に付着した圧延油を除去した後、20%硝酸中で
温度20℃で中和洗浄し、1%塩酸電解液または1%硝
酸電解液で、電流密度30A/dm2 ,50℃,10秒間
の交流電解を行って粗面化した。ひきつづき15%硫酸
の50℃水溶液に3分間浸漬して表面を洗浄化したのち
20%の硫酸を主成分とする電解液中で浴温30℃で厚
さ0.5μmの酸化皮膜を設けた。表2において、試料
符号D,G,I,L,Nが本発明例、試料符号B,C,
E,F,H,J,K,M,O,Sが緩冷却を行った比較
例、その内試料符号Sは組成も範囲外である。試料符号
A,P,Q,R,S,Tは組成が範囲外の比較例であ
る。試料符号A,B,D,E,I,Jは4パス圧延を行
ったものであり、途中パス後にコイルを冷却せずに次パ
スを行った。
【0045】試料符号G,H,L,M,N,O,P,
Q,R,S,Tも4パス圧延を行ったものであるが、第
2パス後に巻き取ったコイルを冷却してから第3パスを
行った。試料符号C,F,Kは6パス圧延を行ったもの
であり、第2パスと第3パス間および第4パスと第5パ
ス間でコイルを冷却した。コイルの冷却は以下の方法に
より行った。
【0046】本発明による急速冷却として、コイルを油
性の冷媒液中に侵漬した。これによる冷却速度は10℃
/分であった。比較例における緩冷却は、コイルをファ
ンにより強制空冷した。これによる冷却速度は0.2℃
/分であった。得られた厚さ0.25mmの合金素板につ
いて、10%水酸化ナトリウムで表面に付着した圧延油
を除去した後、20%硝酸中で温度20℃で中和洗浄
し、1%塩酸電解液または1%硝酸電解液で、電流密度
30A/dm2 、50℃、10秒間の交流電解を行って電
解粗面化処理した。
【0047】引き続き、50℃の15%硫酸水溶液に3
分間浸漬して表面を洗浄化した後、20%の硫酸を主成
分とする電解液中で浴温30℃で厚さ0.5μmの酸化
皮膜を設けた。このようにして作成したサンプルに下記
の感光層を乾燥時の塗布量が2.5g/m2 となるよう
に設けた。
【0048】 ナフトキノン(1,2)−ジアジド−(2)−5−ス ルホン酸クロライドとレゾルシン−ベンズアルデヒド 樹脂とのエステル化合物 1重量部 フェノールとm−、p−混合クレゾールとホルムアル デヒド共重合縮合樹脂 3.5重量部 2−トリクロロメチル−5−〔β−(2′−ベンゾフ リル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール 0.03重量部 ビクトリアピュアーブル−BOH(保土ヶ谷化学製) 0.1重量部 p−ブチルフェノールベンズアルデヒドノボラック 樹脂のo−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル 0.05重量部 メチルセロソルブ 27重量部 3KWのメタルハライドランプを用いて、1mの距離
で、50秒間露光し、4%メタケイ酸ナトリウム水溶液
によって25℃、45秒間現像して、平版印刷版を得
た。
【0049】このように作成した試料符号A〜Tについ
て、引張り強度、電解粗面化性、単体Si量、平均粒径
0.5μm以上の単体Siの個数および耐インキ汚れ性
を測定した。測定は次の方法によった。 〔引張り強度〕冷間圧延終了板からJIS13号B引っ
張り試験片を作製し引張り強度σBを測定した。 〔電解粗面化性〕電解粗面化処理した板の表面状態を走
査型電子顕微鏡にて観察し、ピットの均一性を評価し
た。ピットが均一なものを(O)、ピット形状がくずれ
ていたり、未エッチング部のあるものを(X)とした。 〔単体Si量〕HCl:H22 =1:1の溶液で酸化
皮膜を設けた板を溶解し、濾過した残差をアルカリ液で
分解、中和した後ムリブデン酸アンモニウムを加え、ケ
イモリブデン黄を生成させた。濃度が薄い場合は、スル
ホン酸還元液で還元し、モリブデン青を生成させ、その
吸光度を測定し、換算して単体Si量を求めた。
【0050】〔平均粒径0.5μm以上の単体Siの
数〕1%苛性ソーダ水溶液で酸化皮膜を設けた板を厚さ
にして0.5μmエッチング溶解し、次いでX線マイク
ロアナライザーでFe,Siのマッピング分析を行っ
た。この内Feと共存していないSiのみのを画像解析
装置(ニレコ(株)製LUZEX F)を用い、該当粒
子の占める面積を円換算しその半径を平均粒径とした。
この半径相当の平均粒径が0.5μm以上のものの数を
かぞえた。 〔耐インキ汚れ性〕オフセット印刷機KORに上記印刷
版をセットし、10万枚印刷して非画像部のインク汚れ
の有無を官能評価した。これにより インク汚れの観察
されなかったものを○(良好)、観察されたものを×
(不良)とした。
【0051】表2に測定結果を示す。表2の結果によれ
ば、本発明例の試料符号D,Iは、最終第4パス後の板
温度を120℃として板の回復温度以上とし、その後の
冷却を10℃/分で急速冷却したことにより、抗張力が
適当な範囲であって、しかも電解粗面化性も良好であ
り、さらに単体Si量が少なく平均粒径0.5μm以上
の単体Si数が少ないので耐インキ汚れ性の優れている
ことが判る。
【0052】同様に、本発明例の試料符号G,L,N
も、第2パス後の板温度を150℃として板の回復温度
以上とした後に10℃/分で急速冷却し、最終第4パス
後の板温度を120℃として板の回復温度以上とした後
に10℃/分で急速冷却したことにより、抗張力が適当
な範囲であって、しかも電解粗面化性も良好であり、さ
らに単体Si量が少なくしかも平均粒径0.5μm以上
の単体Si数が少ないので耐インキ汚れ性の優れている
ことが判る。
【0053】これに対して、比較例の試料符号B,E,
H,J,M,Oは、パススケジュールは本発明例と同じ
く4パスであり、最終第4パス後の板温度を130℃ま
たは120℃として板の回復温度以上としたが、その後
の冷却を0.2℃/分の空冷で緩冷却したため、単体S
i量が多くしかも平均粒径0.5μm以上の単体Si数
が多いので耐インキ汚れ性の劣ることが判る。また、比
較例(試料符号C,F,K)は、板を回復温度以上とす
ることなく冷間圧延したため、抗張力が適当な範囲を超
えており、印刷中に支持体の割れ発生が起きやすいこと
が判る。
【0054】比較例(試料符号A,B,C)はCu量が
範囲外で少なく電解粗面化性に劣ることが判る。比較例
(試料符号P)はFe量が範囲外で少なく電解粗面化性
に劣ることが判る。比較例(試料符号Q)はSi量が範
囲外で多く電解粗面化性がやや劣ると共に単体Si量お
よび平均粒径0.5μm以上の単体Si数も多いので耐
インキ汚れ性の劣ることが判る。比較例(試料符号R,
S)はMg量が範囲外で多く回復し難く抗張力の高すぎ
ることが判る。比較例(試料符号T)はCu量が範囲外
で多く、電解粗面化性が劣り、耐インキ汚れ性の劣るこ
とが判る。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
冷間圧延に際して中間焼鈍を省略しても、少なくとも最
終パス後の板温度を板の回復温度以上とすることによっ
て、加工硬化による過剰な強度上昇を防止し、素板とし
て望ましい範囲の強度を付与すると同時に、上記回復温
度から急速冷却することによって単体Siの析出を抑制
し、電解粗面化処理時のピットサイズが均一化で良好な
保水性を付与した、優れた耐インキ汚れ性を有する平版
印刷用アルミニウム合金素板ならびに支持体を、省エネ
ルギーと高い生産性とを実現しながら製造することがで
きる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C22C 21/00 C22C 21/00 M C22F 1/00 623 C22F 1/00 623 630 630A 674 674 685 685Z 692 692A 694 694Z 694B (72)発明者 岡本 一郎 静岡県庵原郡蒲原町蒲原1丁目34番1号 日本軽金属株式会社グループ技術センター 内 (72)発明者 水嶋 一光 愛知県稲沢市小池1丁目11番1号 日本軽 金属株式会社名古屋工場内 (72)発明者 朝日 格 東京都品川区東品川二丁目2番20号 日本 軽金属株式会社内 (72)発明者 澤田 宏和 静岡県榛原郡吉田町川尻4000番地 富士写 真フィルム株式会社内 (72)発明者 榊 博和 静岡県榛原郡吉田町川尻4000番地 富士写 真フィルム株式会社内 Fターム(参考) 2H114 AA14 AA23 DA04 DA73 DA78 EA03 EA04 FA16 GA06 GA08

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム合金鋳塊を均質化処理後熱
    間圧延し、中間焼鈍を施すことなく冷間圧延して素板と
    し、爾後粗面化処理、陽極酸化処理を施した平版印刷版
    用支持体であって、該支持体が、 Fe:0.10〜0.40%、 Si:0.03〜0.15%、 Cu:0.004〜0.03%および 単体Si量が30ppm 以下、残部Alおよび不可避的不
    純物からなり、粗面化処理面に陽極酸化皮膜が0.1〜
    1.0μm形成されており、該陽極酸化皮膜中に平均粒
    子径が0.5μm以上の単体Siが200個/mm2 以下
    であり、しかも抗張力が145〜180MPa であること
    を特徴とする平版印刷版用アルミニウム合金支持体。
  2. 【請求項2】 前記支持体が更にMgを0.002〜
    0.02%含有することを特徴とする請求項1記載の平
    版印刷版用アルミニウム合金支持体。
  3. 【請求項3】 下記工程: Fe:0.10〜0.40wt%、および Si:0.03〜0.15wt% Cu:0.004〜0.03wt% を含有するアルミニウム合金鋳塊を準備する工程、 上記鋳塊の均質化熱処理工程、 熱間圧延工程、および 中間焼鈍なしの冷間圧延工程 を含む、平版印刷版用アルミニウム合金素板の製造方法
    において、 上記冷間圧延工程が、少なくともパス後の板温度が板の
    回復温度以上となる最終パスと、それに続く急速冷却と
    を含むことを特徴とする平版印刷版用アルミニウム合金
    素板の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記鋳塊が更にMg:0.002〜0.
    02wt%を含有することを特徴とする請求項3に記載の
    平版印刷版用アルミニウム合金素板の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記素板の抗張力が145〜180MPa
    、単体Si含有量が30ppm 以下となるように、前記
    冷間圧延工程で少なくとも最終パス後の板温度とそれに
    続く急速冷却とを制御することを特徴とする請求項3ま
    たは4に記載の平版印刷版用アルミニウム合金素板の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 前記回復温度以上となる板温度が100
    ℃以上であることを特徴とする請求項3から5までのい
    ずれか1項に記載の平版印刷版用アルミニウム合金素板
    の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記急速冷却を5℃/分以上の冷却速度
    で行うことを特徴とする請求項3から6までのいずれか
    1項に記載の平版印刷版用アルミニウム合金素板の製造
    方法。
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