JP2001048899A - 新規プロクトリン関連ペプチド - Google Patents

新規プロクトリン関連ペプチド

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JP2001048899A
JP2001048899A JP11218972A JP21897299A JP2001048899A JP 2001048899 A JP2001048899 A JP 2001048899A JP 11218972 A JP11218972 A JP 11218972A JP 21897299 A JP21897299 A JP 21897299A JP 2001048899 A JP2001048899 A JP 2001048899A
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octopus
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Hiroyuki Namikata
宏之 南方
Eiko Iwakoshi
栄子 岩越
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Suntory Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 軟体動物であるテナガダコの脳より単離、精
製される新規プロクトリン関連ペプチドおよび合成によ
り得られる新規プロクトリン関連ペプチドを提供し、分
子レベルでの構造活性相関の研究を通じて、医薬および
農薬等への新たなアプローチを与える。 【解決手段】 次のアミノ酸配列式(I): H−Pro−Xaa−Tyr−Yaa−Zaa−Thr
−OH (I) (式中、XaaはLysまたはArgを表わし、Yaa
はMetまたはLeuを表わし、ZaaはAspまたは
Proを表わす)で表わされるペプチドであり、軟体動
物の筋、特に心臓の拍動および腸管の自動収縮を増強さ
せる活性を有するペプチドである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規な神経ペプチド
に関し、さらに詳細には、軟体動物の心臓の拍動および
腸管の自動収縮を増強する活性を有する新規プロクトリ
ン関連ペプチドに関する。
【0002】
【従来の技術】プロクトリンは、今日まで無脊椎動物の
神経ペプチドの中で最もよく研究されているペプチドで
ある。1967年、B.E.Brownは、アメリカゴ
キブリ(Periplaneta american
)の後腸(proctodeum)の抽出物(gut
factor)が後腸の縦走筋に対して、ゆっくりと
した段階的な収縮を引き起こし、この活性は、神経を刺
激したときと同様のものであることを見いだした(B.
E.Brown,Science,155,595−5
97(1967))。1975年にB.E.Brown
とA.N.Starrattは、アメリカゴキブリ12
5,000頭から180ngの純化したgut fac
torを得、H−Arg−Tyr−Leu−Pro−T
hr−OHの一次構造を持つペプチドであり、proc
todeumにちなんでプロクトリンと名付けたことを
報告した(B.E.Brown & A.N.Star
ratt,J.Insect Physiol.,2
1,1879−1881(1975))。
【0003】構造が明らかとなるや、抗プロクトリン抗
体による免疫組織化学的手法やHPLCおよびゴキブリ
後腸を用いた生物検定などによって、主な昆虫類におけ
る分布が調べられ、ゴキブリなどの直翅目、アブラムシ
などの半翅目、ガなどの鱗翅目、ハエなどの双翅目、ハ
チなどの膜翅目、および甲虫などの鞘翅目の昆虫に存在
することが確認された。
【0004】昆虫類以外の節足動物では、甲殻類および
鋏角類に分布することが知られているが、その他の無脊
椎動物では、ヒル類と頭足類に免疫陽性物質の存在が報
告されただけである。また、多様な関連ペプチドをもつ
FMRF amide(H−Phe−Met−Arg−
Phe−NH2)等と異なり、プロクトリンはその構造
が極めて限定されていて、ファミリーペプチドとしては
コロラドジャガイモカブトムシから見つかったAla1
−proctolin(H−Ala−Tyr−Leu−
Pro−Thr−OH)(K.Spittaelsら,
Mol.Cell.Endocrinol.,110,
119−124(1995))が報告されているに過ぎ
ない。
【0005】プロクトリンの生理的役割としては、神経
ホルモンもしくは神経伝達物質または神経修飾物質であ
ると考えられている。すなわち、甲殻類の神経−血液器
官である囲心器官に存在すること、およびマデレゴキブ
リ(Leucophaeamaderae)の血液中に
プロクトリンが検出されたことから、神経ホルモンとし
ての役割があると考えられている。
【0006】また、マデレゴキブリ後腸の興奮性を伝達
(但し、グルタミン酸が真の興奮性伝達物質であり、プ
ロクトリンはグルタミン酸の活性の修飾物質である可能
性がある)し、心筋および卵管の筋に興奮性の活性を示
すことから、神経伝達物質または神経修飾物質であると
考えられている。この他、バッタの骨格筋収縮やゴキブ
リ中枢神経節における神経伝達物質と考えられている。
なお、プロクトリンに関する総説として、M.O’Sh
ea & M.Adams,Adv.Insect Ph
ysiol.,19,1−28(1986);I.Or
chardら,J.Neurobiol.,20,47
0−496(1989);R.H.Osborne,P
harmacol.Ther.,69,117−142
(1996);D.Konopinska,J.Pep
tide Res.,49,457−466(199
7)などがある。
【0007】ところで高等動物の神経系の研究におい
て、軟体動物の神経系は有用なモデルとなる。何故な
ら、軟体動物の神経系は、一般に高等動物に比べて単純
なので、情報処理の機構の解明に利用することができ、
軟体動物を用いた研究で得られた知見は、少なくともそ
れが細胞下レベルの機構に関するものであれば、高等動
物の神経系にも一般化できると考えられるからである。
【0008】こうしたことから、多くの軟体動物から新
たな神経ペプチドを単離し、これらの神経ペプチドにつ
いて個々の動物種における役割や、種特異性を明らかに
して、神経ペプチドの構造−活性相関の研究などによ
り、高等動物の神経系における情報処理機構の解明や、
医薬品や農薬の開発にも結びつく情報を得るためには、
さらに多くの軟体動物から、種々の神経ペプチドを見出
すことが必要とされている。
【0009】前記のように頭足類の神経−血液器官であ
る大静脈神経分泌系には、抗プロクトリン抗体陽性の分
泌性神経末端が観察された。R.MartinとK.
H.Voigtは、大静脈の抽出物からプロクトリン様
のペプチドを単離することを試みたが成功せず、また、
プロクトリンそのものがマダコの心臓に活性を示さない
ことを明らかにしている(R.Martin & K.
H.Voigt,Experientia,43,53
7−543(1987))。したがって、軟体動物とし
てこれまであまり検討されていなかった頭足類より、新
たなプロクトリン様のペプチドを見い出し、その構造を
明らかにするとともに、その頭足類自身の中での作用
や、他の軟体動物に対する作用を解明することは、高等
動物の神経系における情報処理機構の解明用の試薬や、
農薬または医薬品開発における基礎化合物として利用可
能な、新規ペプチドを得ることになると考えられる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明
は、軟体動物としてこれまであまり検討されていなかっ
た頭足類より新たな神経ペプチドを見い出し、その構造
を明らかにするとともに、その頭足類自身の中での作用
や、他の軟体動物に対する作用を解明し、高等動物の神
経系における情報処理機構の解明用の試薬や、農薬また
は医薬品開発における基礎化合物として利用可能な、新
規ペプチドを得ることを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するた
めに、本発明は、次のアミノ酸配列式(I): H−Pro−Xaa−Tyr−Yaa−Zaa−Thr−OH (I) (式中、XaaはLysまたはArgを表わし、Yaa
はMetまたはLeuを表わし、ZaaはAspまたは
Proを表わす)で表わされるペプチドを提供する。
【0012】(本明細書中において、アミノ酸残基はI
UPACおよびIUBの定める3文字表記により表記す
る。)
【0013】すなわち、本発明者らは頭足類から新たな
神経ペプチドを得るべく、約200匹のテナガダコ(
ctopus minor)の脳から、その心臓に対す
る活性を指標に、テナガダコの内因性神経ペプチドを単
離すべく鋭意研究を行い、上記アミノ酸配列式(I)の
なかでも、次のアミノ酸配列式(1): H−Pro−Lys−Tyr−Met−Asp−Thr−OH (1) (以下、このペプチドを化合物(1)と称する。)で表
されるペプチドを分離、精製し、その化学構造を決定す
るとともに、全合成によりその構造を確認し、さらにこ
の新規ペプチドのテナガダコの心臓および腸管に対する
作用を確認して本発明を完成した。
【0014】さらにまた本発明者らは、次のアミノ酸配
列式(2): H−Pro−Arg−Tyr−Leu−Pro−Thr−OH (2) (以下、このペプチドを化合物(2)と称する。)で表
されるペプチドを全合成するとともに、この新規ペプチ
ドのマダコの腸管に対する作用を確認して本発明を完成
した。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明により提供される新規ペプ
チドは、テナガダコの心臓の心拍頻度と収縮幅を増強さ
せ、さらにテナガダコおよびマダコの腸管の自動収縮を
増強させる内因性神経ペプチドであり、例えば、テナガ
ダコから、以下の方法により単離、精製することができ
る。
【0016】すなわち、テナガダコの脳を熱水抽出し、
その抽出液に酢酸を3%濃度になるように加えた後、冷
却し、遠心分離して粗抽出物を得る。この粗抽出物をC
18カートリッジ(例えばSep−Pak(登録商標)
Cartridges:ウォーターズ社製)に吸着させ
て、0.1%トリフルオロ酢酸(以下TFAと略す)を
含む60%メタノールで溶出してペプチド画分を分取
し、この画分をイオン交換クロマトグラフィー、逆相ク
ロマトグラフィー等に付し、目的とするペプチドを分
離、精製することができる。
【0017】また、本発明のペプチドはアミノ酸残基数
6のオリゴペプチドであるため、通常のペプチド合成機
(例えばPEバイオシステムズジャパン社製ペプチド合
成機433A型)を用いた固相合成法や、通常の有機合
成化学的手法により容易に合成することができる。これ
らの方法で得られた粗ペプチドは、必要であれば逆相高
速液体クロマトグラフィーや結晶化等の通常の精製手法
によって、精製することができる。
【0018】今回テナガダコの脳より単離したプロクト
リン関連ペプチド(化合物(1))の構造をプロクトリ
ンと比較すると、最も大きな違いはC末端から二番目の
Aspと、N末端のProである。そこで、図5および
図6にあるようなペプチド(各図中のペプチドは1文字
表記により表記している。)を合成し、マデレゴキブリ
後腸とマダコ直腸での収縮活性を比較してみた。その結
果、化合物(1)は、マデレゴキブリ後腸に、プロクト
リンはマダコ直腸にそれぞれ活性を示さなかった。プロ
クトリンのN末端にProを付加したペプチド(化合物
(2))は、マデレゴキブリ後腸に活性を示さなくなる
が、マダコ直腸には強い活性を示すようになり、N末端
のProで区別できることが分かった(図3および図
4;各図中のペプチドは1文字表記により表記してい
る。)。
【0019】
【作用】本発明のペプチドは、テナガダコの心臓の心拍
頻度および心拍幅を増強させ、さらにテナガダコおよび
マダコの腸管の自動収縮を増強させる活性を有するペプ
チドであり、プロクトリンとの構造活性相関の研究を通
じて、神経伝達系研究用の試薬としてだけでなく、医薬
および農薬等への新たなアプローチを与える有用な化合
物として利用することができる。
【0020】例えば、本発明のペプチドを有効成分とす
る医薬としては、製剤学的に慣用されている賦形剤と共
にカプセル剤、錠剤、注射剤等の適当な剤形で、経口的
または非経口的に投与することができる。具体的には、
本発明のペプチドを、乳糖、デンプンまたはその誘導
体、セルロース誘導体等の賦形剤と混合したのち、ゼラ
チンカプセルに充填することによりカプセル剤を調製す
ることができる。
【0021】また錠剤は、上記の賦形剤の他に、カルボ
キシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸、アラビ
アゴム等の結合剤と水を加えて練合し、必要により顆粒
として造粒したのち、さらにタルク、ステアリン酸マグ
ネシウム等の滑沢剤を添加して、通常の圧縮打錠機を用
いて錠剤に調製することができる。
【0022】さらに、非経口投与に際しては、本発明の
ペプチドを溶解補助剤と共に滅菌蒸留水あるいは滅菌生
理食塩水に溶解し、アンプルに封入して注射用製剤とす
ることができる。この場合、必要により安定化剤、緩衝
物質等を含有させてもよい。また、粉末のままバイアル
充填し、滅菌蒸留水により用時溶解型の製剤とすること
もできる。これらの非経口投与製剤は、静脈内投与、あ
るいは点滴静注により投与することができる。
【0023】なお本発明の有効成分であるペプチドの投
与量は、種々の要因、例えば治療すべき病態、患者の症
状、重篤度、患者の年齢、さらには投与経路等を考慮し
て、適宜設定すればよい。一般的に経口投与の場合に
は、有効成分として通常0.1〜1000mg/日/ヒ
ト、好ましくは1〜500mg/日/ヒトの範囲内で、
また非経口投与の場合には、経口投与の場合における投
与量の約1/100〜1/2程度の範囲内で適宜選択し
投与することができる。
【0024】
【実施例】次に実施例によって本発明をさらに説明する
が、本発明の範囲はこれのみに限定されるものではな
い。
【0025】実施例1:化合物(1)の精製 (a):粗抽出 テナガダコ(Octopus minor)200匹か
ら脳(視葉を含む)を摘出し、液体窒素にて凍結させ保
存した。凍結保存した摘出組織を、沸騰した蒸留水1L
中に入れ、10分間煮沸した。放冷後、酢酸を3%濃度
になるように加え、ホモジナイズした後、4℃で35分
間、12,000×gで遠心分離して、上清を得た。こ
の操作をもう一度繰り返し、沈殿物に200mlの3%
酢酸を加えて再びホモジナイズした後、同じ操作条件で
遠心分離して上清を得た。集めた上清を、減圧下に約2
00mlになるまで濃縮し、粗抽出物とした。
【0026】(b):C18カートリッジへの吸着 (a)で得られた粗抽出物に、0.1M−HCl濃度と
なるように1.0M−HClを加え、4℃で30分間、
30,000×gで遠心分離した。得られた上清を、S
ep−Pak(登録商標)Vac35cc(10g)C
18カートリッジ(ウォーターズ社製)に通した。カー
トリッジを0.1%TFA 200mlで洗浄した後、
保持物質を60%メタノール/0.1%TFA 100
mlで溶出し、溶出液を減圧下に約4mlになるまで濃
縮した。
【0027】(c):逆相高速液体カラムクロマトグラ
フィー(1) (b)で得られた濃縮液を濾過して微粒子を除き、Ca
pcell pakC18 UG80(5μm、Φ10
×250mm、資生堂製)を用いた逆相高速液体カラム
クロマトグラフィー(逆相HPLC)に付し、流速1.
5ml/minで、0.1%TFA(pH2.2)中、
60分間で0%から60%のアセトニトリルの直線濃度
勾配で溶出した。以下、すべての純化の操作は、215
nmの紫外吸収をモニターしながら行った。3mlずつ
分画し、各画分を実施例4に示す生物検定に付したとこ
ろ、アセトニトリル15〜21%に溶出される画分に心
拍動増強活性が見られた。
【0028】(d):陽イオン交換カラムクロマトグラ
フィー (c)で得られた活性画分を、TSKgel SP−5
PW(10μm、Φ7.5×75mm、東ソー製)を用
いた陽イオン交換カラムクロマトグラフィー(陽イオン
交換HPLC)に付し、流速1.0ml/minで、1
0mMリン酸緩衝液(pH7.0)中、60分間で0M
から0.6MのNaClの直線濃度勾配で溶出した。2
mlずつの画分を生物検定したところ、0MのNaCl
濃度で溶出された画分に活性が見られた。
【0029】(e):逆相HPLC(2) (d)で得られた画分を、L−column ODS
(5μm、Φ4.6×150mm、財団法人化学品検査
協会製)を用いた逆相HPLCに付し、流速1.0ml
/minで、0.1%TFA(pH2.2)中、40分
間で、5〜25%のアセトニトリルの直線濃度勾配で溶
出した。1mlずつ分画し、アセトニトリル濃度約11
〜12%に溶出する画分に活性を認めた。
【0030】(f):陰イオン交換カラムクロマトグラ
フィー (e)で得られた画分を、TSKgel DEAE−5
PW(10μm、Φ7.5×75mm、東ソー製)を用
いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(陰イオン
交換HPLC)に付し、流速1.0ml/minで、1
0mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.7)中、70分間
で0Mから0.7MのNaClの直線濃度勾配で溶出し
た。2mlずつ分画し、活性を示した0.11MのNa
Cl濃度で溶出された画分を集めた。
【0031】(g)逆相HPLC(3) (e)で得られた画分を、L−column ODS
(5μm、Φ4.6×150mm、財団法人化学品検査
協会製)を用いた逆相HPLCに付し、流速1.0ml
/minで、0.1%TFA(pH2.2)中、30分
間で、0〜15%のアセトニトリルの直線濃度勾配で溶
出した。アセトニトリル濃度約9.6%で溶出したピー
クを分取した。
【0032】(h):逆相HPLC(4) (g)で得られたピークを、L−column ODS
(5μm、Φ4.6×150mm、財団法人化学品検査
協会製)を用いた逆相HPLCに付し、流速0.5ml
/minで、0.1%TFA(pH2.2)中、アセト
ニトリル9.6%で展開した。保持時間31分に単一の
紫外線吸収ピークを示す化合物が得られた。これを化合
物(1)とした。
【0033】実施例2:テナガダコ神経ペプチドの同定 実施例1で純化した化合物(1)の構造を、Shima
dzu PSQ−1型気相シークエンサー(島津製作所
製)によって解析した。得られたアミノ酸配列を下記表
1に示した。
【0034】
【表1】ペプチドのアミノ酸配列(単位:pmol)
【0035】分子量は、MALDI TOF−MS(V
oyager Elite,PEバイオシステムズジャ
パン社製)によって確認した。その測定値を下記表2に
示した。
【0036】
【表2】ペプチドのMSデータ
【0037】以上の機器分析データにより、テナガダコ
神経ペプチドである化合物(1)は、次のアミノ酸配列
式(1) H−Pro−Lys−Tyr−Met−Asp−Thr−OH (1) で表されることが明らかになった。
【0038】実施例3:固相法による化合物(1)およ
び化合物(2)の合成 これらのペプチドの合成は、PEバイオシステムズジャ
パン社製の全自動ペプチド合成機433A型を用い、F
astMoc(登録商標)法により合成した。
【0039】化合物(1)の合成には、Fmoc−Th
r(tBu)−Alkoレジン(渡辺化学工業社製)を
担体とし、Fmoc−Lys(Boc)、Fmoc−T
yr(tBu)、Fmoc−Pro、Fmoc−Met
およびFmoc−Asp(OtBu)を用いた。
【0040】(但し、Fmocは9−Fluoreny
lmethoxycarbonylを、tBuはt−B
utylを、Bocはt−Butoxycarbony
lを示す。)
【0041】反応終了後のペプチド樹脂からの粗ペプチ
ドの切離しと脱保護には、フェノール4.3%/1,2
−エタンジチオール2.1%/チオアニソール4.3%
/水4.3%/TFA85%を用いた。反応混合物を濾
過し、濾液にエーテルを加えてペプチドを沈殿させ、沈
殿をエーテルで3回洗浄し、粗ペプチド約100mgを
得た。このうちの約10mgの粗ペプチドを逆相HPL
Cにより精製し、約6mgの精製ペプチドを得た。
【0042】精製ペプチドは、Capcell pak
C18を用いる逆相HPLCにおいて、保持時間がテ
ナガダコ由来の化合物(1)と全く一致した。また、テ
ナガダコ心臓の心拍動活性においても、合成物は天然物
と同様であった。
【0043】また、化合物(2)の合成には、Fmoc
−Thr(tBu)−Alkoレジン(渡辺化学工業社
製)を担体とし、Fmoc−Arg(Pmc)、Fmo
c−Tyr(tBu)、Fmoc−ProおよびFmo
c−Leuを用いた。
【0044】(但し、Fmocは9−Fluoreny
lmethoxycarbonylを、tBuはt−B
utylを、Pmcは2,2,5,7,8−Penta
methylchroman−6−sulfonylを
示す。)
【0045】反応終了後のペプチド樹脂からの粗ペプチ
ドの切離しと脱保護には、フェノール4.3%/1,2
−エタンジチオール2.1%/チオアニソール4.3%
/水4.3%/TFA85%を用いた。反応混合物を濾
過し、濾液にエーテルを加えてペプチドを沈殿させ、沈
殿をエーテルで3回洗浄し、粗ペプチド約100mgを
得た。このうちの約10mgの粗ペプチドを逆相HPL
Cにより精製し、約6mgの精製ペプチドである次式の
化合物(2): H−Pro−Arg−Tyr−Leu−Pro−Thr−OH (2) を合成した。
【0046】実施例4:テナガダコ心臓の拍動活性の測
定 テナガダコの心臓の拍動活性は、森下ら(Morish
ita,Biochem.Biophys.Res.C
ommun.,240,354−358、(199
7))の方法に準拠して実施した。すなわち、テナガダ
コの心臓を摘出し、2つの心房を切断して、一方の房室
から心室にカニューレを差込み、チャンバー(容量10
ml)に固定し、他方を木綿の糸で縛り、張力トランス
ジューサーにつないで検定の標本とした。カニューレか
らは95%O2 −5%CO2 を添加した人工海水(1%
グルコースを含む)が1〜2ml/min流れるようセ
ットした。検定すべき検体は、同様の人工海水1mlに
溶解して、カニューレから心臓内部に到達するよう添加
し、心臓の拍動の変化を記録した。
【0047】その結果を、図1に示した。図中の結果か
らも明らかなように、本発明のテナガダコ神経ペプチド
である化合物(1)は、テナガダコ心臓の拍動を増強さ
せている。
【0048】実施例5:テナガダコ腸管の自動収縮増強
活性の測定 本発明のペプチドである化合物(1)の、テナガダコ腸
管に対する自動収縮増強活性の測定は、次の通り実施し
た。すなわち、テナガダコの腸管を摘出してその両端を
木綿糸で縛り、一端をチャンバー(容量2ml)に固定
し、他端を張力トランスデューサーにつないだ。チャン
バーは人工海水2mlで満たし、生ずる自動収縮が安定
した後、化合物(1)を人工海水に溶解して添加した。
発生した張力を変換アンプで増幅し、ペンレコーダーで
記録した。
【0049】その結果を図2に示した。図中の結果から
も明らかなように、本発明のテナガダコ神経ペプチドで
ある化合物(1)は、テナガダコの腸管の自動収縮を増
強している。
【0050】実施例6:マデレゴキブリ後腸への活性の
測定 マデレゴキブリの後腸を摘出し、その両端を木綿糸で縛
り、一端を試験試料添加用チャンバー(容量2ml)に
固定し、他端を張力トランスデューサーにつないで検定
の標本とした。各試験試料を生理食塩水に溶かしてチャ
ンバーに添加し、張力の変化を記録した。その結果を図
3および図5に示した。
【0051】実施例7:マダコ直腸への活性の測定 マダコの直腸を摘出してその両端を木綿糸で縛り、一端
をチャンバー(容量2ml)に固定し、他端を張力トラ
ンスデューサーにつないだ。チャンバーは人工海水2m
lで満たし、生ずる自動収縮を安定させて検定の標本と
した。各試験試料を人工海水に溶解して添加し、張力の
変化を記録した。その結果を図4および図6に示した。
【0052】 実施例8:製剤例 錠剤 組成:化合物(1) 1g 乳糖 125g 微結晶セルロース 25g トウモロコシデンプン 25g 5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース 100ml ステアリン酸マグネシウム 5g 上記成分を常法により練合、造粒、乾燥後打錠し、1錠
中有効成分として化合物(1)を1mg含有する重量1
90mgの錠剤を得た。
【0053】
【発明の効果】本発明のペプチドは、低濃度でテナガダ
コの心臓拍動を増強させ、さらにテナガダコおよびマダ
コの腸管の収縮を増強させる作用を有する神経ペプチド
であり、神経伝達系を解明するための生化学試薬として
有用である。また、分子レベルでの構造活性相関の研究
を通じて、医薬および農薬等への新たなアプローチを与
えるものである。
【0054】
【配列表】SEQUENCE LISTING <110> SUNTORY LIMITED <120> NEUROPEPTIDES ORIGINATING IN OCTOPUS MINOR <130> SN133 <160> 2 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 6 <212> PRT <213> OCTOPUS MINOR <220> <221> PEPTIDE <222> (1)..(6) <210> 2 <211> 6 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <221> PEPTIDE <222> (1)..(6)
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例4における、本発明の化合物(1)につ
いて、テナガダコの心臓の拍動を増強させる効果を示す
図であり、5×10-8 Mの化合物(1)をチャンバー
に加えた時の結果を示す。
【図2】実施例5における、本発明の化合物(1)につ
いて、テナガダコの腸管の自動収縮を増強させる効果を
示す図であり、1×10-7 Mの化合物(1)をチャン
バーに加えた時の結果を示す。
【図3】実施例6におけるプロクトリンと、プロクトリ
ンのN末端にProを付加した本発明の化合物(2)に
ついて、マデレゴキブリ後腸への活性を比較した結果を
示す図である。
【図4】実施例7におけるプロクトリンと、プロクトリ
ンのN末端にProを付加した本発明の化合物(2)に
ついて、マダコ直腸への活性を比較した結果を示す図で
ある。
【図5】実施例6における本発明のプロクトリン関連ペ
プチド類(I)と、プロクトリンとの比較において、C
末端から2番目のAspおよびN末端にProの相違に
よる、各種ペプチドのマデレゴキブリ後腸への活性を示
す図である。
【図6】実施例7における本発明のプロクトリン関連ペ
プチド類(I)と、プロクトリンとの比較において、C
末端から2番目のAspおよびN末端にProの相違に
よる、各種ペプチドのマダコ直腸への活性を示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C084 AA01 AA07 BA01 BA17 BA23 CA51 DA35 DB01 MA17 MA35 MA52 MA66 ZA242 ZA362 ZA372 4H045 AA10 AA30 BA14 CA52 EA06 EA20 FA34 FA61 GA01 GA15 GA23 GA25

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次のアミノ酸配列式(I): H−Pro−Xaa−Tyr−Yaa−Zaa−Thr−OH (I) (式中、XaaはLysまたはArgを表わし、Yaa
    はMetまたはLeuを表わし、ZaaはAspまたは
    Proを表わす)で表わされるペプチド。
  2. 【請求項2】 軟体動物の心臓または無脊椎動物の腸管
    の収縮を増強する活性を有する請求項1に記載のペプチ
    ド。
  3. 【請求項3】 頭足類から得られる請求項1または2に
    記載のペプチド。
  4. 【請求項4】 次のアミノ酸配列式(1): H−Pro−Lys−Tyr−Met−Asp−Thr−OH (1) で表わされる請求項1ないし3に記載のペプチド。
  5. 【請求項5】 次のアミノ酸配列式(2): H−Pro−Arg−Tyr−Leu−Pro−Thr−OH (2) で表わされる請求項1または2に記載のペプチド。
  6. 【請求項6】 次のアミノ酸配列式(I): H−Pro−Xaa−Tyr−Yaa−Zaa−Thr−OH (I) (式中、XaaはLysまたはArgを表わし、Yaa
    はMetまたはLeuを表わし、ZaaはAspまたは
    Proを表わす)で表わされるペプチドを有効成分とす
    る医薬または農薬。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021061716A3 (en) * 2019-09-23 2021-06-03 Kansas State University Research Foundation Honey bee-safe acaricidal compounds

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WO2021061716A3 (en) * 2019-09-23 2021-06-03 Kansas State University Research Foundation Honey bee-safe acaricidal compounds

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