JP2001041939A - 配管の欠陥検出方法 - Google Patents

配管の欠陥検出方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 配管の腐食量の検出及び欠陥の位置の検出が
容易な配管の欠陥検出方法を提供する。 【解決手段】 超音波振動子11から接触子12を介し
て配管20に超音波を入射し、点P1及びP2の超音波
受信子13で超音波を受信する。特定の角度で超音波を
入射すると、腐食深さと透過超音波の振幅との対応が良
好となる。点P2を透過した超音波が欠陥21によって
反射して戻るまでの時間を計測して、点P2と欠陥が存
在する位置との間の角度差βが検出できる。透過する超
音波は横波である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、配管の欠陥検出方
法に関し、更に詳しくは、超音波を利用した配管の欠陥
検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】石油プラントや化学プラント等において
は、所定間隔で地上に立てた架台(ラック)上に、多数
の配管を並べて支持する方式が多用されている。これら
の配管は、配管と架台との接触部に雨水が滞留すること
から、長い年月に亘って屋外で使用されることによっ
て、特にその接触部で腐食が発生する。
【0003】従来は、架台との接触部における配管の腐
食を検出するには、配管を1本、1本架台から吊り上げ
て目視によって点検する手法が採用されてきた。しか
し、膨大な本数の長い配管をこのような手法によって点
検するのは、極めて効率が低かった。
【0004】出願人は、上記のような配管における腐食
を検出する方法の発明を、特願平10−006479号
において出願している。該先願では、超音波振動子から
配管内部に向けて斜めに超音波を発射し、配管を周方向
に透過した超音波の受信波形から腐食の有無及びその深
さを検出している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記先願発明では、配
管の肉厚全体に超音波が拡がるように、超音波ビームが
拡散するタイプの超音波振動子、つまり指向性が弱い超
音波振動子を使用している。また、配管を透過した超音
波を受信する超音波受信子としては指向性が強い受信子
を使用している。これによって、配管内を一定方向に透
過する超音波の受信波形によって腐食の有無及びその量
を推定する。しかし、この先願発明では、腐食の量の推
定には複雑な計算が必要であった。
【0006】また、特に大きな口径の配管で且つその内
部に欠陥が存在する場合には、その補修位置を確定する
ために、欠陥位置の特定が重要になる。しかし、上記先
願発明では、周方向における欠陥位置の検出はできなか
った。
【0007】本発明は、上記先願発明を更に改良し、配
管の腐食量の検出が容易な配管の欠陥検査方法、及び、
配管の欠陥位置の特定が容易な配管の欠陥検査方法を提
供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の配管の欠陥検出
方法は、第1の視点において、円筒形状の配管の延在方
向に直交する方向で且つ配管の表面に立てた垂線から計
測した配管内における入射角度が54°〜90°の範囲
に収まるように超音波を配管内に向けて発射し、配管内
をその周方向に伝搬する透過波又は該透過波が欠陥によ
って反射する反射超音波を検出し、該透過波又は反射超
音波の振幅に基づいて配管の欠陥の大きさを検出するこ
とを特徴とする。
【0009】本発明の第1の視点の配管の欠陥検出方法
によると、超音波の入射角度を54°〜90°の範囲に
選定したことにより、配管の内部(肉厚部分)を超音波
がほぼ一様に分布して伝播するので、透過超音波又は欠
陥から反射した反射超音波の振幅によって欠陥の深さが
測定できる。
【0010】また、本発明の配管の欠陥検出方法は、第
2の視点において、円筒形状の配管の延在方向に直交す
る方向で且つ配管の表面に立てた垂線から所定の角度傾
けて超音波を配管内に向けて発射し、配管内をその周方
向に伝搬する超音波を検出することにより配管の欠陥を
検出する方法であって、特定の位置を通過する超音波
が、欠陥によって反射し前記特定の位置に戻るまでの戻
り時間に基づいて、前記特定の位置から欠陥が存在する
位置までの、配管中心から見た角度を検出することを特
徴とする。
【0011】本発明の第2の視点の配管の欠陥検出方法
によると、特定の位置で超音波の波形を観測し、その特
定の位置を通過する超音波が欠陥によって反射してその
特定の位置に戻るまでの時間を計測することにより、そ
の特定の位置と欠陥の存在する位置との間の角度差が簡
易に検出できる。
【0012】超音波の速度をVT、超音波の戻り時間を
t、配管の半径(外径)をRとすると、特定の位置と前
記欠陥の成す角度βは β=t×V/2R として求められる。この速度VTとしては、鉄鋼製円筒
配管の場合は、材質的に横波の速度である3623m/
sが用いられる。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施形態例に
係る配管の欠陥検出方法の原理を示す配管の断面図であ
る。超音波を発射する超音波振動子11は、配管20
の、欠陥21が存在すると考えられる位置を通る横断面
上の例えば頂部付近(点P1)に配置する。超音波振動
子11は、接触子12を介して配管20の外表面に接触
させ、外表面に立てた垂線から所定の角度を傾ける。
【0014】超音波を検出する超音波受信子13は、超
音波振動子11の設置点P1の近傍、及び、超音波の進
行方向で欠陥21の存在すると思われる位置から約60
°手前の位置である点P2に配置する。点P1に代え
て、欠陥21を挟んで配管内部の点P2と対称の位置に
ある点P3を選んでもよい。超音波受信子13は、指向
性が弱いものがよく、この場合、配管20の内部(肉厚
部分)を正逆の双方向に通過(透過又は反射)する超音
波を検出できる。点P2に設置する超音波受信子13
は、欠陥21の存在位置の検出に特に好都合である。
【0015】図2に示すように、超音波の配管20への
入射角度としては、配管20の外部表面で配管表面に立
てた垂線からの角度θiが45°となるように選定され
る。θi=45°の角度を選定すると、超音波振動子11
の接触子2の先端に幅があること、及び、配管表面で超
音波が屈折することにより、配管内に入射した直後の超
音波は、配管に立てた垂線からの角度が70°を中心と
し、54〜90°の広がりをもつ波になる(θa=45
°、θb=90°)。配管内部での入射角が54〜90°
の広がりをもつ超音波は、配管内部を全体としてほぼ一
様に周方向に伝搬する。
【0016】図3は、超音波振動子が発生する超音波の
波形(力:mN)のタイミングチャートである。超音波
としては、5MHzに中心周波数を有するバースト波形
が好ましく、例えば0.6秒以内の継続時間を有する。
本発明で利用される超音波、つまり、配管内を実際に伝
搬して超音波受信子13によって検出される超音波は横
波であることが、超音波の速度を測定した結果によって
確認された。中心周波数が5MHzの超音波を配管内に
入射させると、配管内を周方向に伝搬する超音波の中心
周波数は約4.6MHzに変化する。しかし、図4に示
すように、超音波の速度は、横波の速度3263m/s
であり、配管内を伝搬することによっては変化しない。
【0017】架台と接触する位置に生じる配管欠陥を例
とし、図1の図面上で欠陥21を配管の底部に示してい
る。配管20内を周方向に伝搬する超音波は、欠陥によ
ってその一部が反射され、他の一部は欠陥を通過して超
音波受信子13によって検出される。欠陥が大きいと、
通過する超音波の振幅は小さくなり、逆に反射する超音
波の振幅は大きくなる。従って、まず、通過する超音波
又は反射する超音波の振幅を点P1又はP2において測
定することによって欠陥の有無が検出できる。また、点
P2を透過する際に検出された超音波が、その後に欠陥
21で反射し反射波として点P2で再び検出されるまで
の戻り時間を検出することにより、点P2から欠陥21
が存在する位置迄の中心角度βが得られる。この場合、
振幅の測定は不要である。
【0018】上記透過波及び反射波を検出するために
は、図1に示した点P2の位置に超音波受信子13を配
置することが好ましい。超音波受信子13は、透過波及
び反射波の双方を検出するために指向性が弱いものが望
ましい。点P2の選定にあたっては、入射波及び反射波
を時間的に識別するために、超音波の入射点P1と欠陥
21が存在すると思われる位置の間が選定される。装置
的には、反射波を幅広く検知し得るように反射波受信子
13は、振動子11の近傍に設置するのが良い。
【0019】ここで、点P2と欠陥21の存在する位置
との間の角度βを検出する例を示す。超音波(横波)の
速度をVT、点P2の位置で検出された超音波の検出時
刻から、その超音波が欠陥21によって反射して点P2
の位置で再び検知されるまでの時間をt、配管内部の平
均半径をRとすると、点P2の位置と欠陥21の存在す
る位置の成す、円管中心で測った角度β(ラジアン)
は、 β=t×VT/2R として求められる。速度VTとしては、横波の速度32
63m/sが選ばれる。
【0020】上記本発明における欠陥の腐食深さの検出
及び欠陥位置の検出の実効性を確認するために、シミュ
レーションを行った。このシミュレーションでは、解析
対象として、内径が54mmの鉄鋼製の円筒配管(円
管)が採用され、円管の表面に、欠陥無しのもの、並び
に、1mmの深さの欠陥、1.5mm深さの欠陥、及
び、2mm深さの欠陥を有するものが選定された。鉄鋼
製の円管は、ヤング率が206GPa、ポアソン比が
0.28、密度が7700kg/cm3である。
【0021】超音波振動子11に付属する接触子12
は、ポリイミド(ヤング率が4.39GPa、ポアソン
比が0.38、密度が1410kg/cm3)製とし
た。接触子12の前端部分の減衰係数を1.7dB、後
端部分の減衰係数を前端部分の50倍とし、円管20の
減衰は考慮しなかった。超音波振動子11の直径は4m
m、超音波の入射角は、円管表面での屈折後に中心角度
70°が生ずるように、円管外部表面で45°とした。
超音波振動子11の端面の各節点上で図3に示す波形の
外力を入力する。
【0022】図5(a)〜(d)に、欠陥がない円管、
深さ1mmの欠陥を持つ円管、深さ1.5mmの欠陥を
持つ円管、深さ2mmの欠陥を持つ円管の各入射点(点
P1)における受信波形を示す。各図で、60μs以後
に観測される波形が円管を1周した後に観測される波形
であり、欠陥の有無及び欠陥の大きさによって振幅が変
化する様子が理解できる。
【0023】図6(a)及び(b)は夫々、欠陥がない
円管の点P2及び点P3の受信波形を示している。同図
(a)から理解できるように、点P2で配管を1周した
後に受信される波形A2は、最初に受信される波形A1
から、その振幅が減衰している。また、これら波形A
1、A2と、点P3の受信波形A3とを比較すると、こ
の減衰が、主として配管内を透過する際に徐々に受けた
減衰によるものであり、配管の透過距離にほぼ比例する
旨が理解できる。
【0024】図7(a)及び(b)は夫々、図6の
(a)及び(b)の波形に、ウエーブレット変換を施し
た波形である。ウエーブレット変換は、一般に単発波
(バースト波)の周波数分析に利用される手法であり、
最大振幅の周波数を有する波の進行を示すタイミングチ
ャートが得られる。同図から、超音波の点P2の通過時
刻と点P3の通過時刻の差t=20.02μsが精度よ
く得られる。この超音波の通過速度VTは、点P2と点
P3の配管内での離隔距離L及び時刻差tによって VT=L/t=65.33mm/20.02μs=3263
m/s と得られ、進行する超音波が横波であることが確認でき
る。
【0025】図8(a)は、欠陥1mmを有する配管に
おいて、点P2で受信される超音波波形を示している。
前記のように、超音波の速度VTが測定されているの
で、最初に観測される超音波B1が、超音波振動子から
配管内に入射し到達した透過波であることが判る。更
に、次に観測される超音波B2が欠陥によって反射した
反射波であることも判る。この波形をウエーブレット変
換した波形を図8(b)に示す。同図から、透過波C1
とその透過波が欠陥21によって反射した反射波C2と
の間の時間差が19.46μsと得られ、これによっ
て、点P2の位置と欠陥21の存在する位置との間の、
円管中心で見た角度βが、 β=t×VT/2R=19.46μs×3.263mm/μs
/2×30mm=1.0583rad=60.64° と計算される。
【0026】図9は、前記シミュレーションで示した形
状及び材質を有する欠陥無しの円管に対して、実際に超
音波を入射してこれを点P1に配置した超音波受信子1
3で受信した波形の例を示している。図9の波形と図6
(a)や(b)の波形とを対比すると、前記シミュレー
ションが本実験結果をかなり精度よくシミュレーション
していることが理解できる。
【0027】図10は、図5(a)〜(d)のシミュレ
ーション結果から求められた、欠陥の大きさと透過超音
波の振幅との関係を、実測された受信波形から得られた
関係と対比して示している。横軸は、配管の全体厚みT
に対する欠陥の深さDの比(欠陥比)r=D/Tであ
り、縦軸は欠陥を有する配管で得られた最大振幅A
0と、欠陥無しの配管で得られた対応する位置での最大
振幅Adとの比(振幅比)A1=Ad/A0である。同図に
示すように、シミュレーションの結果と実測結果とはよ
く整合しており、本発明方法で欠陥の大きさの測定が可
能である旨を示している。
【0028】図11(a)〜(d)は夫々、欠陥無しの
配管、及び、欠陥が1mm、1.5mm、2mmの夫々
の配管について、超音波を入射してから50μs後の配
管断面における振幅分布のシミュレーション結果を模式
的斜視図として示している。同図から理解できるよう
に、欠陥が大きくなるにつれて透過波の振幅が小さくな
り、反射波の振幅が大きくなる。従って、図10のグラ
フや式(1)による欠陥の大きさの判定に代えて、反射
波の振幅によっても欠陥の大きさが判定できる。このよ
うに反射波の振幅によって欠陥の大きさを判定する手法
は、特定の位置P2での透過波と反射波との間の時間差
によって欠陥21の位置を判定する前記手法と併せて用
いることができる。特に、配管の内側表面の欠陥を検出
する際には、この手法を採用することが好ましい。
【0029】以上、本発明をその好適な実施形態例に基
づいて説明したが、本発明の配管の欠陥検出方法は、上
記実施形態例の構成にのみ限定されるものではなく、上
記実施形態例の構成から種々の修正及び変更を施したも
のも、本発明の範囲に含まれる。
【0030】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明の配管の
欠陥検出方法によると、目視によっては容易に認識でき
ない配管の腐食量の測定や欠陥位置の検出が簡易にでき
る利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配管の欠陥検出方法の原理を示す配管
の模式的断面図。
【図2】超音波の入射角を示す配管の表面の拡大図。
【図3】配管内に入射させる超音波の波形図。
【図4】配管内を透過する超音波の周波数及び速度のグ
ラフ。
【図5】(a)〜(d)は夫々、欠陥無し、欠陥1m
m、欠陥1.5mm、及び、欠陥2.0mmの各円管の
点P1における観測波形のシミュレーション図。
【図6】(a)及び(b)は夫々、欠陥無しの円管の点
P2及びP3の観測波形図。
【図7】(a)及び(b)は夫々、図6(a)及び
(b)の波形のウエーブレット変換後の波形図。
【図8】(a)及び(b)は夫々、欠陥1mmの配管の
点P2における超音波の観測波形図及びそのウエーブレ
ット変換後の波形図。
【図9】欠陥無しの配管の点P1における超音波の実際
の観測波形図。
【図10】欠陥の大きさと観測される超音波の振幅との
関係を示す実測及びシミュレーション結果のグラフ。
【図11】(a)〜(d)は夫々、欠陥無し、欠陥1m
m、欠陥1.5mm、及び、結果2mmの各配管の透過
波のシミュレーション結果を示す斜視図。
【符号の説明】
11 超音波振動子 12 接触子 13 超音波受信子 20 配管 21 欠陥
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 永溝 久志 三重県四日市市東邦町一番地 三菱化学株 式会社四日市事業所内 Fターム(参考) 2G047 AA07 AB01 BA01 BA03 BB02 BC02 BC03 EA10 GA14

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円筒形状の配管の延在方向に直交する方
    向で且つ配管の表面に立てた垂線から計測した配管内に
    おける入射角度が54°〜90°の範囲に収まるように
    超音波を配管内に向けて発射し、配管内をその周方向に
    伝搬する透過波又は該透過波が欠陥によって反射する反
    射超音波を検出し、該透過波又は反射超音波の振幅に基
    づいて配管の欠陥の大きさを検出することを特徴とす
    る、配管の欠陥検出方法。
  2. 【請求項2】 円筒形状の配管の延在方向に直交する方
    向で且つ配管の表面に立てた垂線から所定の角度傾けて
    超音波を配管内に向けて発射し、配管内をその周方向に
    伝搬する超音波を検出することにより配管の欠陥を検出
    する方法であって、 特定の位置を通過する超音波が、欠陥によって反射し前
    記特定の位置に戻るまでの戻り時間に基づいて、前記特
    定の位置から欠陥が存在する位置までの、配管中心から
    見た角度を検出することを特徴とする、配管の欠陥検出
    方法。
  3. 【請求項3】 超音波の速度をVT、前記戻り時間を
    t、配管の半径をRとすると、前記特定の位置と前記欠
    陥の成す角度βを β=t×V/2R として求める、請求項2に記載の配管の欠陥検出方法。
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