JP2001040378A - 加圧ブリージング装置を用いた限外ろ過法による石炭−水系燃料スラリーの管理方法 - Google Patents
加圧ブリージング装置を用いた限外ろ過法による石炭−水系燃料スラリーの管理方法Info
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Abstract
使用特性を適正に評価することができる燃料スラリーの
管理方法を提供する。 【構成】 石炭と水とを含む燃料スラリーが入れられた
密閉容器内に加圧ガスを供給して前記燃料スラリーを加
圧し、前記密閉容器の下部に設けられたろ過部を介して
排出される該燃料スラリー中の遊離水を分離抽出し、全
水分量と遊離水量の差により前記燃料スラリー中の残留
水比率を計算して、予め求めた残留水比率と石炭粒径と
の関係を用いて、前記残留水比率に対応する前記石炭の
粒径を推定し、前記燃料スラリーの使用特性を推定す
る。
Description
イラーに供給される燃料スラリーの流動性等の使用特性
を評価して管理するための加圧ブリージング装置を用い
た限外ろ過法による石炭−水系燃料スラリーの管理方法
に関する。
れる燃料スラリーを、輸送管やポンプ等を介してボイラ
ー等に供給する場合、その流動性を所定範囲に管理する
ことは、輸送中の圧損による変動を抑制して輸送効率を
適正化させるために極めて重要である。さらに、この燃
料スラリーを加圧状態のボイラー内へ供給する時は、燃
焼時の変動を抑制するために常圧時以上にこの流動性の
適性範囲を慎重に選択することが必要となる。一方、燃
料スラリー中の石炭粒子の粒径分布もボイラー内での燃
料スラリーの燃焼状態に影響を与える使用特性の要素で
あり、流動性にも影響を与えるので、この管理、監視も
必要である。従来、このような使用特性を評価するため
の指標として燃料スラリーの粘度を用いて燃料スラリー
の評価、管理を行うのが一般的である。例えば、所定量
のスラリーが重力により所定断面積の流路を通過するの
に要する時間を測定する形式のB型粘度計等の測定器を
用いて燃料スラリーの粘度測定が行われていた。また、
このような燃料スラリーの管理方法としては、以下のよ
うなものが知られている。即ち、特開昭61−2669
4号公報には、スラリーの比重又は粘度を粘度計、比重
計等を用いて連続的に測定し、比重又は粘度が所定範囲
になるように湿式粉砕機への給炭量、給水量を制御する
方法が示されている。また、特開昭59−133295
号公報には、スラリー中の固体燃料の粒度組成を粒度フ
ラクションの添加によって調整する方法が示されてい
る。また、特開平2−24878号公報には、特定の粒
度範囲を有する燃料スラリーを固体燃料に水及び又は分
散剤を混合して製造する方法が記載されている。
開昭61−26694号公報に記載の燃料スラリーの粒
度測定を行う方法では、燃料スラリーの粘度をB型粘度
計等を用いて測定するので、粒径が6mm程度の粗い石
炭粒子を含む燃料スラリーにこれを適用した場合、目視
による終点確認等の操作を自動化することが容易でなく
測定誤差も大きくなる。また、粘度の測定のために大量
のサンプル量を必要として測定器自体が大きくなって実
際的な適用が困難であるという問題があった。さらに、
粘度は測定温度による変動が大きい場合があり、狭い温
度範囲の中で測定を行わなければならないといった制約
があった。また、特開昭59−133295号公報に記
載のスラリー中の固体燃料の粒度組成を粒度フラクショ
ンの添加によって調整する方法では、前記公報と同じく
粒度の測定を前提とする上に、粒度範囲が大きく変動し
た場合に粒度フラクションの添加だけでは対応できない
という問題点があった。さらに特開平2−24878号
公報に記載の特定粒度範囲を有する燃料スラリーを製造
する方法では、固体燃料に水や分散剤を混合するので、
これによって燃料スラリー中の燃料濃度が大きく変動す
る場合があり、また前記粒度測定に関わる問題点を依然
として有していた。
めになされたもので、燃料スラリーに含まれる石炭粒子
の粒径や、サンプル量、測定温度等の条件に制約される
ことが少なく、燃料スラリーを安定燃焼させるためのデ
ータ測定の自動化が容易であると共に、このデータから
燃料スラリーの粘度、流動性等の使用特性を推定して、燃
料スラリーを効率的かつ安定的に燃焼させることができ
る限外ろ過法による石炭−水系燃料スラリーの管理方法
を提供することを目的とする。
(PFBC、360MWe)の運転中に燃料スラリーの
使用特性を迅速に測定するための種々の試みがなされて
いる。このような試みの一つとして、使用特性の一例で
ある流動性の間接的な指標として、燃料スラリーに含ま
れる水分量及びそのろ過特性に着目して検討を行った。
ここでは、空気や窒素ガス等を加圧したガス(加圧ガ
ス)により燃料スラリー中の水分の分離抽出を行う限外
ろ過法を応用した、加圧ブリージング法(限外ろ過法と
もいう)を採用した。種々の条件で作成した模擬燃料ス
ラリーの抽出水量を測定した結果、燃料スラリー中の水
分は加圧ブリージング法により分離抽出される遊離水
(ブリージング水)と燃料スラリー固形成分に包蔵され
分離抽出されない水(残留水)とに分けられ、ブリージ
ング水量の違いは燃料スラリーの硬さ、すなわち流動性
を知る重要な指標となりうる可能性を見出した。一方、
スラリーを構成する石炭の粒径が小さい程、残留水量は
規則的に大きくなることも見出している。また、このブ
リージング水と残留水の和(全水分量)は、燃料スラリ
ーにマイクロウェーブを照射して乾操後、秤量し水分を
測定する手法で簡易かつ迅速に測定することが可能であ
った。そして、これらの手法を組合わせると、燃料スラ
リー水分とブリージング水の差として残留水を迅速に測
定できるので、燃料スラリー中の固形成分の粒径を間接
的に監視することも可能であることも見出した。
に本発明は以下の構成を有している。請求項1に記載の
加圧ブリージング装置を用いた限外ろ過法による石炭−
水系燃料スラリーの管理方法は、加圧ブリージング装置
の容器内に石炭と水とを含む燃料スラリーを投入し、次
いで蓋をして密閉し、密閉した前記容器内に加圧ガスを
供給して前記燃料スラリーを加圧し、前記密閉した容器
の下部に設けられたろ過部を介して排出される該燃料ス
ラリー中の遊離水を抽出し、全水分量と遊離水量の差に
より前記燃料スラリー中の残留水比率を計算して、予め
求めた残留水比率と石炭粒径との関係を用いて、前記残
留水比率に対応する前記石炭の粒径を推定し、前記燃料
スラリーの使用特性を評価するように構成されている。
これによって以下の作用が得られる。即ち、 (a)加圧ブリージング装置を用いているので、石炭−
水系燃料スラリーの試料の量が比較的少ない場合でも、
加圧ガスの圧力を調整して、微量な遊離水を所定時間内
で抽出でき、測定誤差が少なく精密な測定を迅速に行う
ことができる。これによりボイラーの燃焼状態や、パイ
プラインを用いた燃料スラリーの輸送状態を適切に管理
して、燃料の安定供給を実現することができる。 (b)加圧ブリージング装置のろ過部に適用するフィル
ターの材質、種別等を適宜選択することができる。そし
て、試料スラリーに対するろ過特性を調整することがで
きるので、このろ過特性を予め把握しておくことによ
り、最終的な遊離水の量をその飽和点に達する前に予測
して、測定時間を短縮することができる。 (c)加圧ブリージング装置のガス供給部やろ過部等の
オンオフ操作を機械的に行って、測定誤差の少ないデー
タを取得できるので、石炭−水系スラリーにおける遊離
水の測定操作の自動化を容易にすることができる。従っ
て、測定を迅速かつ継続して確実に行えるので、制御遅
れによるエネルギー損失やプラントの稼動効率の低下を
抑制して、経済的にシステムを運営できる。
部から所定時間内に排出される水量を秤量することによ
り最終的な量が機械的に求められるので、従来のように
目視による終点判定を要せず、遊離水ひいては残留水の
測定を容易に自動化できる。これによって、測定を迅速
かつ確実に行うことができ、取得される残留水、全水分
量のデータを管理指標として用いて、発電プラント等の
システムを安定的に稼動させることができる。 (e)この遊離水量と全水分量のデータを用いて、石炭
の種別、サンプル量等の測定条件によって大きく左右さ
れることなく、燃料スラリーの流動性に関わる石炭粒度
を適正に推定することができる。この遊離水量と全水分
量のデータを指標として、燃料スラリーの流動性がばら
つくことによって生じるパイプラインの輸送コストや燃
焼状態の変動が少なくなるようにシステムを管理でき
る。 (f)このように推定される石炭粒度を用いて、ボイラ
ーにおける燃料スラリーの燃焼状態やパイプラインを用
いた輸送における流動抵抗等の状態を予測することがで
きるので、これを用いて火力発電における燃料スラリー
を適切に管理して、全体システムにおけるエネルギー効
率等を適正に維持させることができる。
用いた限外ろ過法による石炭−水系燃料スラリーの管理
方法は、請求項1において、前記燃料スラリー中の前記
残留水比率Wfと石炭粒径Φとの関係が、定数K、kを
含む式Wf=K・ln(Φ)+kにより規定されて構成
されている。これによって請求項1の作用に加えて、以
下の作用が得られる。即ち、 (a)残留水比率と石炭粒径との関係を予め実験的に規
定する際、データ数が少ない場合でも、この関係式が片
対数図表上で直線として表されるので、定数k、Kを高
い精度でしかも容易に決定することができ、燃料スラリ
ーの特性を迅速かつ正確に把握して、システムの稼動効
率を安定に維持させることができる。 (b)実験データを集約して得られる関係式を用いて残
留水率から石炭粒径を推定するので、複数の異なる実験
条件にそれぞれ対応して変化する定数k、Kを用いて、
実際の変化に対応させた燃料スラリーの管理を柔軟に行
うことができる。例えば、使用する石炭の銘柄毎にそれ
ぞれ固有の定数k、Kを予め求めておき、実際の石炭銘
柄毎の使用比率に応じて、これらの定数を按分して全体
の定数k、Kを算出するような柔軟な対応も可能とな
る。このような操作によって燃料スラリーの燃焼に影響
を及ぼす粒度や流動性等の諸特性をより的確に推定でき
る。
用いた限外ろ過法による石炭−水系燃料スラリーの管理
方法は、請求項1又は2において、前記燃料スラリーに
マイクロウェーブを照射して乾燥し、乾燥前後の重量差
により前記全水分量を求めるように構成されている。こ
れによって請求項1の作用に加えて、以下の作用が得ら
れる。即ち、 (a)マイクロウェーブ加熱により、燃料スラリー中の
水分のみを効果的に加熱して水分を迅速に蒸発、除去さ
せることができるので、測定する石炭の粒径等による測
定時間の差が少なく、遊離水分量と全水分量との差であ
る残留水率を正確かつ迅速に求めることができ、測定の
作業性を向上させることができる。従って、この残留水
率を管理項目として用いて、燃料スラリーの石炭粒度を
適切に推定して、粒度や流動性の変動によって起こる燃
料スラリーの輸送中におけるパイプラインの閉塞や、燃
焼時の変動が生じないように未然に予測して、発電プラ
ント等を安定に稼動させることができる。 (b)ヒーター等で容器中の燃料スラリーを直接的に加
熱するような場合に比べて、非接触的に燃料スラリーを
加熱できるので、例えば使い捨て型の容器等を用いた自
動秤量を容易に行って、測定の作業効率をさらに向上さ
せ、これにより燃料スラリーの安定供給を実現できる。
いて図面を参照しながら説明する。
図1において、各試料からブリージング水を分離抽出す
るための加圧ブリージング装置1は、所定量の試料2が
入れられる密閉容器3と、密閉容器3の底部又は下部に
設けられたろ過部4と、ろ過部4を介して分離抽出され
るブリージング水を溜めて、その重量を測定するための
秤量部5と、密閉容器3に所定圧力の空気や窒素ガスな
どの加圧ガスを導入するための図示しないガス供給部と
を有している。密閉容器3は台座8上に配置されてお
り、試料2を入れた後、上部を密閉するための密閉蓋6
と、密閉蓋6の内側底部に設けられた図示しない吹き出
し口からガス供給部を介して加圧ガスを密閉容器3内に
導入するためのガス供給管7と、ろ過部4及びブリージ
ング水の排出管9とを有している。ろ過部4は、燃料ス
ラリー中の水分のみを透過するような多孔性材料又は不
織布等で形成されたフィルター等が使用できるが、単に
多数の微小孔を密閉容器3の底部等に形成して、この部
分にブリージング水排出用のパイプを接続するようにし
てもよい。秤量部5は、排出管9の端部から排出される
ブリージング水を溜めておく受水槽10と、受水槽10
の重量を測定するための秤量計11とを有している。こ
の加圧ブリージング装置1に約120gの燃料スラリー
をセットし、上部より供給される大気圧より0.5気圧
高い圧力に設定された加圧ガスにより加圧して、燃料ス
ラリー中の水分の一部を分離する。このようなブリージ
ング操作によって分離される水の重量(ブリージング水
量)及び、ブリージング水の増加パターン等によって燃
料スラリーの性状を評価することができるようになって
いる。
される受水槽10の重量の初期値との差分の時間変化パ
ターンを示しており、この差分がブリージング水量に対
応している。なお、以下の説明におけるブリージング水
量及び全水分量に対するブリージング水量の比率はブリ
ージング加圧の開始後、前記差分の時間変化が殆ど変化
しなくなるような所定時間、例えば200〜800秒の
範囲の時間が経過した時点における差分の値を用いて算
出している。一般にブリージング水が多いスラリーは粘
度が小さく、流動性が高い。また、試験に用いた模擬ス
ラリーの全水分量を予め測定し、加圧ブリージングによ
り分離できない水分(残留水)量も同時に評価すること
ができる。 2.加圧ブリージング法による水分測定 前記加圧ブリージング装置1を用いて各種分析条件を変
えた場合の影響について検討した。(図2〜図4)はそ
れぞれ、ブリージング水比率に対するブリージング圧力
依存性、サンプル量依存性、及び残留水分に対するスラ
リー水分量依存性の試験結果を示している。(図2)に
示されるように、ブリージング水比率はブリージング圧
力(加圧したガスの圧力)が高いほど多く排出される
が、(図3)に示されるようにサンプル量には依存して
ないことが分かる。この模擬スラリー作成時の添加水量
が多い程、ブリージング水比率は多くなる。しかし、模
擬スラリー作成時の添加水からブリージング水を差し引
いた残留水量の全体に対する割合は(図4)に示すよう
に、ほぼ一定になるという特徴がある。ここで、実線は
実測されたデータ範囲のプロットによる直線を表し、破
線はその延長を示す。また、破線と実線との交点がスラ
リーとなる限外点である。これらの試験結果をもとに、
以降のブリージング試験においては、ブリージング圧
力:0.5気圧、サンプル量:約120gとなる条件に
設定した。
場合の加圧ブリージング試験の結果を(図5)に示す。
ブリージング水は(図5)に示すように、経時的に増加
し、ブリージング開始後、600秒程度でほぼ飽和す
る。そして、いずれの実機スラリーも、ブリージング水
比率が7%程度で飽和することが分かる。模擬スラリー
でブリージング水の飽和量を測定し、さらにこの値を模
擬スラリー作成時に添加した水から差し引いて残留水を
測定して、この残留水の割合と石炭粒径との相関を調べ
た結果を(図6)に示す。 (残留水)=(添加水)−(ブリージング水)・・・・・・・・・・(1) (図6)に示すように、分級により限定した範囲の粒径
としたブレアソール炭を用いた場合、その乾燥石炭重量
Cの100gに対する残留水の割合Wf/Cはスラリー
構成粒子の粒径Φの対数に対して相関係数(Re)0.
99の直線0.40・exp(Wf/C)=(Φの−
0.091乗)として、即ち、y=K・ln(x)+k
の形式で表され、xの自然対数ln(x)を変数とする
一次式で表現できることが分かる。なお、ここでx=
Φ、Wf/C=yであり、定数K、kはそれぞれ−9.
10、91.4である。従って、石炭粒径Φと、残留水
の割合Wf/C又はブリージング水比率との関係を、
(図6)のような半対数図表上では直線として表示する
ことができ、比較的少ないデータ数、例えば数個の測定
点を用いて、この直線を規定する定数k、Kを決定でき
るので測定の効率化を図ることができる。
考えられるのはJISに準ずる乾燥器(107℃)によ
り乾操する手法と考えられる。ただし、本手法は通常の
石炭より多くの水を含むスラリーに適用すると分析時間
が大変長くなるという欠点がある。そこで、日常管理手
法として、構成成分中の水分子のみに作用し、迅速な乾
操が可能となるマイクロウェーブを用いた乾燥法を採用
した。JISの乾炭評価法で用いられる方法で乾燥した
粉砕炭に、所定量の添加水分を混入して水分量Aの確定
した燃料スラリーを、マイクロウェーブで乾燥し、乾燥
後の重量差Bを算出して、AとBとの差によって、その
測定精度を確認した。この水分測定試験の結果を(図
7、8)に示す。(図7)に示すように、測定サンプル
量を5g(記号:○)、50g(記号:△)、100g
(記号:□)と増加させるに従って、水分が蒸発して恒
量となるまでに必要なマイクロウェーブの照射時間が長
くなることが分かる。 一方、(図8)に示すように、
添加水量が33重量%であるスラリーを計量する際の繰
り返し分析精度Δdataはサンプル量が多くなるほど
低下することが分かる。これはサンプル量が多くなると
サンプルが山盛り状態となって、下部の乾燥がうまくい
かなくなるためである。 4.石灰石を含む燃料スラリーのブリージング試験結果 構成石炭の粒径を種々変化させて作成した前記模擬スラ
リーは、石炭と水のみで作られている。これに対して実
際に使用される実機スラリーには、石炭と水の他に、炉
内脱硫するための粉砕された石灰石が混合、混練されて
いる。この追加される石灰石の影響を調べるため、この
実機スラリーを用いて加圧ブリージング試験を行った。
石灰石に水を添加し、加圧ブリージング試験を行うと、
(図9)に示すように添加した水の大部分はブリージン
グ水として容易に放出されてしまい、残留水はほとんど
ないことが分かる。
粘性を触診するハンドテスト、水分測定及び微粉度(ス
ラリー中の全固形物に対する粒径が0.045mm以下
の粒子の重量割合)分析を行い、それらの燃料スラリー
の使用特性を規定するそれぞれの特性値が各管理範囲に
あることを確認の上、実際の圧力容器内のボイラーに注
入されて使用するスラリーである。この実機スラリーで
ブリージング試験を行うと、(図5)に示したようにブ
リージング水は、どのスラリーでも7重量%前後で飽和
することが分かる。すなわち、ブリージング水の比率が
スラリーの流動性を間接的に示す指標であれば、同一炭
種で同程度の粉砕炭によりスラリーを作成する場合、ブ
リージング水の比率を7重量%にすることを目安にして
管理することにより、適正な流動性を示すスラリーが得
られると考えられる。
粒径)と残留水との関係およびスラリー水分量を使え
ば、スラリー中の石炭の平均粒径を導ける可能性があ
る。実機スラリーは石炭(C)、石灰石(L)、水
(W)で構成される。加圧ブリージング法とマイクロウ
ェーブ乾燥法で水(W)はさらにブリージング水(W
b)、残留水(Wf)に分けて測定することができる。
なお、これらの各構成要素の重量単位はすべてグラム
(g)である。この構成要素の重量によりブリージング
水、スラリー濃度、スラリー水をそれぞれ計算式で表す
と以下に記載する式(2)、(3)、(4)となる。
であり、以下の式(5)で表現できる。 (スラリー水)−(ブリージング水)=100×Wf/(L+C+Wb+Wf )・・・・(5) 式(5)の分母はスラリー重量となる。式(3)/式
(5)の計算を行うとこの分母の項は消去され、以下の
式(6)となる。 (スラリー濃度)/((スラリー水)−(ブリージング水))=(L+C)/ Wf・・・・・(6) C/Wf+L/Wf=C/Wf+補正係数=スラリー性状値・・・(6’) C/Wf=F(Φ)=1/(91.4−9.10・ln(Φ))・・(7) 式(6)の右辺を分離すると、石炭と残留水および石灰
石と残留水の関係とに分けることができる。石灰石固有
の残留水は(図9)の結果より、ほとんどないことが分
かっているのでWfは石炭のみで考えることができる。
従って、式(6’)に示すように石灰石と残留水との関
係は補正項として扱うことができる。一方、石炭と残留
水は(図6)の関係により式(7)で表せるので、式
(6)の関係式はスラリーを構成する石炭の粒径を表す
一種の特性値と考えられる。ところで、微粉度の変化は
平均粒径の変化とも連動するので、同時に微粉度監視に
もこの特性値は活用できる。スラリー水(全水分量:W
=Wf+Wb)とブリージング水(Wb)および石炭の
平均粒径との定性的な関係を表1に示す。ここで、水平
方向右向きの矢印は増減がない状態を、右上がりの矢印
は増加傾向を、右下がりの矢印は減少する傾向を表して
いる。例えばのケースでは、全水分量が所定値に維持
されるとき、ブリージング水の増加が認められれば、平
均粒径が大きくなっていることを示している。
できる。即ち、加圧ブリージング法でスラリ−の流動性
を評価できることが分かった。また、マイクロウェーブ
による乾操法と組合わせることで迅速に残留水を評価で
きることを見出した。また、これらの試験で得られる使
用特性値を組合わせることで燃料スラリーの残留水量を
求め、スラリーを構成する石炭粒子の平均粒径に基づい
てスラリーの性状を評価することが可能である。さらに
は、これらの関係を他炭種、例えばコークスを生産する
際の原料用炭として使用するような炭種にもに適用する
こともできることがわかった。
装置を用いた限外ろ過法による石炭−水系燃料スラリー
の管理方法によれば、以下のような優れた効果が得られ
る。
果を奏する。即ち、 (a)燃料スラリーから遊離水(ブリージング水)を抽
出して全水分量に対する遊離水比率(ブリージング水比
率)を算出し、全水分量と遊離水量の差で残留水を計算
する。予め求めた残留水比率と石炭粒径との関係を用い
て、残留水比率に対応する石炭の粒径を推定して、燃料
スラリーの使用特性を短時間に推定して燃料スラリーの
適切、迅速な管理を行うことができる。 (b)ブリージング水量の測定は容易に自動化すること
ができ、それにより短時間で、燃料スラリーの流動性の
一因となる石炭粒度を推定して、これを用いてボイラー
における燃焼状態やパイプラインを用いた輸送状態を適
切に管理し、燃料供給を行うパイプの閉塞や流量低下を
防いで燃料の定量供給を実現できる。 (c)加圧ブリージング装置を用いているので、石炭−
水系燃料スラリーの試料の量が比較的少ない場合でも、
加圧ガスの圧力を調整して、微量な遊離水を所定時間内
で抽出でき、遊離水の測定誤差が少なく精密な測定を迅
速に行うことができる。これによりボイラーの燃焼状態
や、パイプラインを用いた燃料スラリーの輸送状態を適
切に管理して、燃料の安定供給を実現することができ
る。 (d)加圧ブリージング装置のろ過部に適用するフィル
ターの材質、種別等を適宜選択することができる。そし
て、試料スラリーに対するろ過特性を調整することがで
きるので、このろ過特性を予め把握しておくことによ
り、最終的な遊離水の量をその飽和点に達する前に予測
して、測定時間を短縮することができる。 (e)加圧ブリージング装置のガス供給部やろ過部等の
オンオフ操作を機械的に行って、測定誤差の少ないデー
タを取得できるので、石炭−水系スラリーにおける遊離
水の測定操作の自動化を容易にすることができる。これ
によって、遊離水の測定操作を迅速かつ確実に行えるの
で、制御遅れによるエネルギー損失やプラントの稼動効
率の低下を抑制して、経済的にシステムを運営できる。
部から所定時間内に排出される水量を秤量することによ
り最終的な量が機械的に求められるので、従来のように
目視による終点判定を要せず、遊離水ひいては残留水の
測定を容易に自動化できる。これによって、測定を短時
間でかつ確実に行うことができ、経済的にシステムを運
営できる。 (g)この遊離水量と全水分量のデータを用いて、石炭
の種別やサンプル量等の測定条件によって大きく左右さ
れることなく、燃料スラリーの流動性の一因となる石炭
粒度を適正に推定して、その燃焼時における燃焼状態や
輸送特性を事前に把握することができ、燃料スラリーの
流動性等の要素によって左右されるプラント稼動時の熱
量などの変動を抑制して安定に操業を行うことができ
る。 (h)このように推定される石炭粒度を用いて、ボイラ
ーにおける燃料スラリーの燃焼状態やパイプラインを用
いた輸送における流動抵抗等の状態を予測することがで
き、これを用いて火力発電プラント等における燃料スラ
リーの燃焼を適切に管理できる。
の効果に加えて以下の効果を奏する。即ち、 (i)残留水比率と石炭粒径との関係を予め実験的に規
定する際、データ数が少ない場合でも、この関係式が片
対数表上で直線として表されるので、定数k、Kを高い
精度でしかも容易に決定することができる。従って、こ
の関係式を用いて迅速に燃料スラリー中の石炭の粒径を
推定することができる。 (j)実験データを集約して得られる関係式を用いて残
留水率から石炭粒径を推定するので、複数の異なる実験
条件にそれぞれ対応して変化する定数k、Kを用いて、
実際の変化に対応させた燃料スラリーの管理を柔軟にか
つ適正に行うことができる。
又は2の効果に加えて以下の効果を奏する。即ち、 (k)マイクロウェーブ加熱により、燃料スラリー中の
水分のみを効果的に加熱して迅速に水分を蒸発、除去さ
せることができるので、遊離水分量と全水分量との差で
ある残留水率を経済的かつ正確に求めることができる。
従って、この残留水率を管理項目として用いて、燃料ス
ラリーの石炭粒度を適切に推定して、粒度や流動性の変
動によって起こる燃料スラリーの輸送中におけるパイプ
ラインの閉塞や、燃焼時の変動が生じないように未然に
予測して、燃料スラリーを用いる発電プラント等を安定
に稼動させることができる。 (l)ヒーター等で容器中の燃料スラリーを直接的に加
熱するような場合に比べて、マイクロウェーブを用いて
非接触的に燃料スラリーを加熱できるので、例えば使い
捨て容器等を用いた自動秤量のシステムを容易に構成す
ることができ、測定の作業効率をさらに向上させて燃料
スラリーの安定供給を実現できる。
過法による石炭−水系燃料スラリーの管理方法の加圧ブ
リージング装置の模式図 (b)は加圧ブリージング装置を用いて測定されるブリ
ージング水重量の時間変化を示す模式図
係を示すグラフ
すグラフ
の関係を示すグラフ
水との関係を示すグラフ
際の繰り返し分析精度とサンプル量との関係を示すグラ
フ
率とブリージング時間との関係を示すグラフ
Claims (3)
- 【請求項1】加圧ブリージング装置の容器内に石炭と水
とを含む燃料スラリーを投入し、次いで蓋をして密閉
し、密閉した前記容器内に加圧ガスを供給して前記燃料
スラリーを加圧し、前記密閉した容器の下部に設けられ
たろ過部を介して排出される該燃料スラリー中の遊離水
を抽出し、全水分量と遊離水量の差により前記燃料スラ
リー中の残留水比率を計算して、予め求めた残留水比率
と石炭粒径との関係を用いて、前記残留水比率に対応す
る前記石炭の粒径を推定し、前記燃料スラリーの使用特
性を評価することを特徴とする加圧ブリージング装置を
用いた限外ろ過法による石炭−水系燃料スラリーの管理
方法。 - 【請求項2】前記燃料スラリー中の前記残留水比率Wf
と石炭粒径Φとの関係が、定数K、kを含む式Wf=K
・ln(Φ)+kにより規定されることを特徴とする請
求項1に記載の加圧ブリージング装置を用いた限外ろ過
法による石炭−水系燃料スラリーの管理方法。 - 【請求項3】前記燃料スラリーにマイクロウェーブを照
射して乾燥し、乾燥前後の重量差により前記全水分量を
求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の加圧ブ
リージング装置を用いた限外ろ過法による石炭−水系燃
料スラリーの管理方法。
Priority Applications (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018025491A (ja) * | 2016-08-10 | 2018-02-15 | 株式会社ブリヂストン | タイヤの転がり抵抗測定方法および転がり抵抗測定装置 |
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1999
- 1999-08-02 JP JP21916499A patent/JP4750239B2/ja not_active Expired - Fee Related
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