JP2001031772A - 電気・電子部品取扱い用樹脂成形体およびその製造方法 - Google Patents

電気・電子部品取扱い用樹脂成形体およびその製造方法

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JP2001031772A
JP2001031772A JP11208500A JP20850099A JP2001031772A JP 2001031772 A JP2001031772 A JP 2001031772A JP 11208500 A JP11208500 A JP 11208500A JP 20850099 A JP20850099 A JP 20850099A JP 2001031772 A JP2001031772 A JP 2001031772A
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electric
conductive filler
handling
electronic parts
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JP11208500A
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Hiroya Kakegawa
宏弥 掛川
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Osaka Gas Co Ltd
Original Assignee
Osaka Gas Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 樹脂成形体に関し、導電性フィラーの添加量
を抑制しつつ、電気・電子部品取扱い用に適した導電性
を実現する。 【解決手段】 電気・電子部品取扱い用樹脂成形体は、
成形された樹脂材料からなるマトリックスと、マトリッ
クス内に分散された導電性フィラーとを含み、電圧の印
加処理が施されている。ここで、導電性フィラーは、例
えば、金属材料や炭素材料であり、また、印加処理時の
電圧は、例えば、1,000V以上でありかつ樹脂材料
の絶縁破壊電圧未満に設定されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、樹脂成形体、特
に、電気・電子部品を取扱う際に用いる樹脂成形体に関
する。
【0002】
【従来の技術とその課題】各種の半導体素子、液晶パネ
ル、ハードディスクドライブヘッドなどを洗浄や組み立
て工程等において搬送するために用いるトレーやジグ、
および各種の電気・電子素子を収容するための容器等に
おいては、樹脂製の成形品が広く用いられている。
【0003】ところで、このような電気・電子部品取扱
い用の樹脂製成形品は、一般に帯電し易く、それによっ
て取扱い中の電気・電子部品そのものが付着してしまう
場合が多い。また、塵埃が付着し易く、放電を起こす場
合もあるため、取扱い中の電気・電子部品に対してダメ
ージを与える可能性もある。このため、このような電気
・電子部品取扱い用の樹脂成形品は、通常、各種の手法
により微弱な導電性、特に表面部分に対して導電性が付
与されている。
【0004】樹脂成形体に対して導電性を付与するため
の最も簡易な手法として、樹脂成形体に対して界面活性
剤溶液を塗布する手法が知られている。しかし、この手
法は、既に製造された樹脂成形体に対して別工程で界面
活性剤溶液を別途塗布することになるため、樹脂材料の
成形工程に加えて界面活性剤溶液の塗布工程が追加的に
必要になる。また、このような手法により得られる樹脂
成形体の導電性は、湿度の影響を受けやすく、樹脂成形
体の表面が湿り易い状態(即ち、高湿状態)下では所要
の導電性を発揮し易いものの、表面が湿り難い状態(即
ち、乾燥状態)下では必要な導電性を発揮しにくい。さ
らに、この手法により得られた樹脂成形体は、塗布され
た界面活性剤が成形体の内部に吸収されたり摩擦によっ
て表面から除去されてしまうことが多く、経時的な導電
性の低下が避けられない。このため、このような樹脂成
形体は、導電性を長期間維持するのが困難であるばかり
か、除去された界面活性剤により取扱い中の電気・電子
部品に対してコンタミネーションを引き起こす可能性も
ある。
【0005】そこで、最近は、上述のような界面活性剤
溶液の塗布による事後的な導電性付与手法に代えて、樹
脂成形体そのものに当初から導電性を付与する試みがな
されている。ここでは、樹脂材料に対して予め導電性付
与材を添加して混合または練和し、そのような樹脂材料
を所望の形状に成形することにより導電性を有する樹脂
成形体を実現している。この際に用いられる導電性付与
材は、通常、界面活性剤などの帯電防止剤、または金属
材料や炭素材料などの導電性フィラーである。
【0006】ここで、導電性付与材として界面活性剤な
どの帯電防止剤を選択した場合は、帯電防止剤が徐々に
樹脂成形体の内部から表面に移行することになるため、
樹脂成形体が導電性を発現するまでに長時間を要する。
また、帯電防止剤による効果は樹脂材料の種類により異
なるため、樹脂材料のガラス転移温度や結晶性および樹
脂材料との相溶性などを考慮しつつ樹脂材料に適した帯
電防止剤を選択する必要がある。さらに、樹脂成形体の
表面に移行した帯電防止剤は、上述のような塗布手法の
場合と同様に、摩擦により除去されてしまうことが多
く、結果的に取扱い中の電気・電子部品に対してコンタ
ミネーションを引き起こす可能性もある。
【0007】これに対し、導電性フィラーは、適量を樹
脂材料と混合するだけで樹脂成形体に対して速やかに導
電性を付与することができ、また、帯電防止剤の場合と
は異なり樹脂材料との組合せを考慮する必要が無いため
(すなわち、各種の樹脂材料に対して汎用性を有するた
め)、帯電防止剤を用いる場合に比べて樹脂成形体に対
して安定な導電性を容易に付与することができる。
【0008】しかしながら、導電性フィラーは帯電防止
剤に比べて高価であるため、樹脂材料に対する添加量が
増加するに従って、樹脂成形体が割高になる。また、こ
の場合は、樹脂成形体に含まれる多量の導電性フィラー
が樹脂材料によって本来的に達成される機械的強度等の
各種の特性を阻害する可能性があり、また、樹脂成形体
から導電性フィラーが脱落し易くなってコンタミネーシ
ョンを引き起こすおそれもある。
【0009】本発明の目的は、樹脂成形体に関し、導電
性フィラーの添加量を抑制しつつ、電気・電子部品取扱
い用に適した導電性を実現すること、特に、電気・電子
取扱い用に適した表面抵抗を実現することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の樹脂成形体は、
電気・電子部品を取扱う際に用いるものであり、成形さ
れた樹脂材料からなるマトリックスと、マトリックス内
に分散された導電性フィラーとを含み、電圧の印加処理
が施されている。
【0011】ここで用いられる樹脂材料は、例えば、ポ
リエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルサルフォ
ン樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂およびポリ
フェニレンエーテル樹脂からなる群から選ばれた耐熱性
樹脂材料である。また、導電性フィラーは、例えば、繊
維状、ウイスカー状、フレーク状および粒子状のうちの
少なくとも一つの形態のものである。さらに、印加処理
時の電圧は、通常、1,000V以上でありかつ樹脂材
料の絶縁破壊電圧未満である。
【0012】このような本発明の電気・電子部品取扱い
用樹脂成形体の表面抵抗は、通常1012Ω/□以下であ
る。
【0013】本発明の他の見地に係る樹脂成形体は、電
気・電子部品を取扱う際に用いるものであり、成形され
た樹脂材料からなるマトリックスと、マトリックス内に
分散された導電性フィラーとを含み、樹脂材料の軟化点
に加熱処理して室温まで冷却した後の表面抵抗が加熱処
理する前の表面抵抗の100倍以上のものである。この
樹脂成形体は、加熱処理の後に、さらに電圧の印加処理
を施した場合の表面抵抗が、通常、印加処理を施す前の
表面抵抗の1/100以下である。
【0014】本発明の製造方法は、電気・電子部品を取
扱う際に用いる樹脂成形体を製造するための方法であ
り、樹脂材料と導電性フィラーとを混合して成形材料を
調製する工程と、成形材料を電気・電子部品の取扱いに
適した所望の形状に成形する工程と、成形された成形材
料に対して電圧を印加する工程とを含んでいる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の電気・電子部品取扱い用
樹脂成形体は、マトリックスと、当該マトリックス内に
分散された導電性フィラーとを含んでいる。マトリック
スは、樹脂材料からなるものであって、電気・電子部品
の搬送、組立てまたは洗浄等の各種の取扱いに適したト
レーやジグなどの各種の所望の形状に成形されたもので
ある。ここで用いられる樹脂材料は、特に限定されるも
のではなく、公知の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であ
る。
【0016】ここで、熱可塑性樹脂としては、例えば、
ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリスチレン
樹脂およびポリアクリルスチレン樹脂などの汎用プラス
チック、アクリル−ブタジエン−スチレン樹脂(AB
S),ポリフェニルエーテル樹脂,ポリアセタール樹
脂,ポリカーボネート樹脂,ポリブチレンテレフタレー
ト樹脂,ポリエチレンテレフタレート樹脂,ナイロン6
およびナイロン6,6などのエンジニアリングプラスチ
ック、並びにポリエーテルエーテルケトン樹脂,ポリア
ミド樹脂,ポリイミド樹脂,ポリスルホン樹脂,4−フ
ッ化エチレン−エチレン共重合体樹脂,ポリフッ化ビニ
リデン樹脂,4−フッ化エチレン−パーフルオロアルキ
ルビニルエーテル共重合体樹脂,ポリエーテルイミド樹
脂,ポリエーテルサルフォン樹脂,ポリフェニレンサル
ファイド樹脂,変性ポリフェニレンオキサイド樹脂,ポ
リフェニレンエーテル樹脂および液晶ポリマーなどの超
エンジニアリングプラスチックなどを挙げることができ
る。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール
樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂および不飽和ポリ
エステル樹脂などを挙げることができる。
【0017】因みに、本発明の電気・電子部品取扱い用
樹脂成形体が例えば半導体の搬送用トレー等である場合
は、上述の樹脂材料として、耐熱性を有する熱可塑性樹
脂、特に、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエー
テルサルフォン樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹
脂およびポリフェニレンエーテル樹脂からなる群から選
ばれた耐熱性樹脂材料を用いるのが好ましい。このよう
な耐熱性樹脂材料を用いて形成された上述のトレー等
は、半導体の水分除去のための熱処理工程等の加熱処理
工程においても有効に利用することができる。
【0018】一方、本発明で用いられる導電性フィラー
は、樹脂成形品に対して導電性を付与するために通常用
いられるものであり、例えば、金属材料、炭素材料、金
属材料がコートされた有機材料、金属材料がコートされ
た無機材料、炭素がコートされた無機材料または黒鉛が
コートされた無機材料、若しくはこれらの群から任意に
選択された2種以上のものの混合物である。
【0019】ここで、金属材料としては、銀、銅、ニッ
ケル、鉄、アルミニウム、ステンレスおよび酸化錫など
を例示することができる。炭素材料としては、ポリアク
リロニトリル樹脂,ピッチ,カイノール樹脂,レーヨン
およびリグニンなどの炭素前駆体を焼成して得られる炭
素、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェ
ンブラック並びに黒鉛を例示することができる。金属材
料がコートされた有機材料としては、ニッケルコートさ
れた樹脂を例示することができる。金属材料がコートさ
れた無機材料としては、ニッケルコートマイカ、銀コー
トガラス、アルミコートガラス、ニッケルメッキガラス
およびニッケルメッキ炭素などを例示することができ
る。炭素がコートされた無機材料としては、炭素がコー
トされたチタン酸カリウムを例示することができる。黒
鉛がコートされた無機材料としては、黒鉛がコートされ
たチタン酸カリウムを例示することができる。
【0020】また、上述の導電性フィラーは、粒状、フ
レーク状、ウイスカー状および繊維状などの各種の形状
のもの、またはこれらの任意の混合物であり、形状が特
に限定されるものではない。例えば、粒状のものとして
は、金属材料からなるものとして銀粉、銅粉、ニッケル
粉、鉄粉、酸化錫粉を、また、金属材料がコートされた
無機材料として銀コートガラスビーズを、さらに、炭素
材料からなるものとしてカーボンブラック、アセチレン
ブラック、ケッチェンブラックを挙げることができる。
また、フレーク状のものとして、アルミフレークやニッ
ケルコートマイカを挙げることができる。さらに、ウイ
スカー状のものとしては、炭素がコートされた無機材料
として炭素がコートされたチタン酸カリウムウイスカー
を、また、炭素材料からなるものとして黒鉛ウイスカー
を挙げることができる。さらに、繊維状のものとして
は、金属材料からなるものとしてアルミニウム,銅およ
びステンレスなどの長繊維や短繊維を、また、金属材料
がコートされた無機材料からなるものとしてアルミコー
トガラス繊維やニッケルメッキガラス繊維を、さらに、
金属材料がコートされた有機材料からなるものとしてニ
ッケルコートされた樹脂繊維を、さらに、炭素材料から
なるものとしてポリアクリロニトリル系炭素繊維,等方
性ピッチ系炭素繊維,異方性ピッチ系炭素繊維,カイノ
ール樹脂系炭素繊維,レーヨン系炭素繊維およびリグニ
ン系炭素繊維等の炭素繊維並びに黒鉛繊維をそれぞれ例
示することができる。
【0021】なお、本発明の樹脂成形体に含まれる導電
性フィラーの具体的な態様の一つは、例えば、炭素材
料、特に、炭素繊維および黒鉛繊維のうちの少なくとも
一つである。
【0022】また、本発明では、上述の導電性フィラー
に代え、或いは上述の導電性フィラーと共に、より安価
な他の導電性フィラーが用いられてもよい。本発明で利
用可能なより安価な導電性フィラーとしては、例えば、
本願出願人が先に出願した特願平11−17697号に
記載のものを挙げることができる。この導電性フィラー
は、バインダーが含浸された天然繊維からなる繊維群を
圧縮して成形体を得るための工程と、当該成形体を加熱
して炭化するための工程とを含む製造工程を経て得られ
るものであり、より具体的には次の製造工程を経て得ら
れるものである。
【0023】先ず、バインダーが含浸された天然繊維か
らなる繊維群を圧縮して成形体を得る。ここで用いられ
る天然繊維は、例えば、綿、パルプ、絹、麻等である。
このうち、安価な綿が特に好ましい。
【0024】ここで用いられる天然繊維の平均アスペク
ト比(平均繊維長/平均繊維径)は、少なくとも5、例
えば、5〜2,000に設定されているのが好ましく、
10〜1,800に設定されているのがより好ましく、
20〜1,500に設定されているのがさらに好まし
い。平均アスペクト比が5未満の場合は、導電性の付与
効果が低下するおそれがある。逆に、2,000を超え
る場合は、樹脂材料に対する定量供給が困難になるおそ
れがある。なお、平均アスペクト比は、一般に、樹脂材
料に対する定量供給が可能な限り大きい方が、樹脂材料
との複合後の残存アスペクト比を大きくでき、その結果
樹脂材料に対して導電性を付与し易くなるため好まし
い。因みに、この平均アスペクト比の基準になる平均繊
維径は、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM)
により求めることができる。
【0025】上述の天然繊維に含浸されるバインダー
は、天然繊維同士を接着して一体化させることができる
ものであれば特に限定されるものではないが、通常は加
熱処理後に炭素を残す高分子材料系の炭素前駆体、特
に、不活性ガス中において600℃で加熱した後の炭化
収率が1〜80重量%のもの、好ましくは5〜60重量
%のもの、より好ましくは10〜50重量%のものであ
る。この炭化収率が1重量%未満の場合は、後述する炭
化工程において、加熱処理後の成形体が脆くなり、崩れ
やすくなる。この結果、この導電性フィラーと樹脂材料
とを混合する際、特にフィーダーを用いてこの導電性フ
ィラーを樹脂材料に対して供給する際に、導電性フィラ
ーが崩れやすくなり、導電性フィラーを樹脂材料に対し
て安定に定量供給するのが困難になる。
【0026】ここで用いられる上述の炭素前駆体は、上
述のような炭化収率を有するものであれば特に限定され
るものではなく、公知の各種のものである。具体的に
は、例えば、ポリビニルアルコール、リグニン、フェノ
ール樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、
カルボキシメチルセルロース、ポリフェニレンオキサイ
ド、ポリエーテルサルホン、コールタール、ピッチ、ポ
リスルフォン等を用いることができる。これらのうち、
フェノール樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂およびメラ
ミン樹脂のうちの少なくとも1つの熱硬化性樹脂が好ま
しい。なお、これらの炭素前駆体は、必要に応じて2種
以上のものが混合して用いられてもよい。
【0027】上述の天然繊維に対して上述のバインダー
を含浸する場合は、先ず、バインダーを含む溶液(バイ
ンダー溶液)を調製し、この溶液を天然繊維に対して含
浸させる。ここで用いられるバインダー溶液は、通常、
上述のバインダーを有機溶媒に溶解したもの(有機溶媒
溶液)、または上述のバインダーのエマルジョンであ
る。有機溶媒を用いる場合、利用するバインダーを溶解
することができるものであればその種類は特に限定され
るものではないが、一般にはアルコール類、ケトン類、
ハロゲン化炭化水素類などを用いることができる。
【0028】バインダー溶液を天然繊維に対して含浸す
るための方法としては、各種の方法、例えば、バインダ
ー溶液中に天然繊維を浸漬する方法や、天然繊維に対し
てバインダー溶液を吹き付ける方法などを採用すること
ができる。
【0029】なお、バインダー溶液は、有機溶媒溶液お
よびエマルジョンのいずれの場合も、天然繊維に対して
付与されるバインダー量が乾燥後の固形分換算で0.1
〜5重量%になるよう天然繊維に対して含浸されるのが
好ましい。天然繊維に対して付与されるバインダー量が
0.1重量%未満の場合は、天然繊維同士の接着性が低
下し、天然繊維による成形体を製造しにくくなるおそれ
がある。また、後述する工程により得られる加熱処理後
(炭化処理後)の成形体(すなわち、導電性フィラー)
の嵩密度が低下するおそれがある。逆に、5重量%を超
える場合は、加熱処理後(炭化処理後)の成形体、すな
わち導電性フィラーと樹脂材料との混合時に、導電性フ
ィラーが崩れにくくになり、結果的に導電性フィラーが
樹脂材料中に繊維状態で均一に分散しにくくなるおそれ
がある。なお、天然繊維に対して付与される上述のバイ
ンダー溶液量のより好ましい範囲は0.5〜3重量%で
ある。
【0030】次に、上述のようにしてバインダーが含浸
された天然繊維の多数本からなる群、すなわち繊維群を
圧縮成形する。圧縮成形により達成する形状は特に限定
されるものではないが、通常は板状、棒状およびペレッ
ト状などである。このような成形体の嵩密度は、通常、
少なくとも0.1g/ccに設定するのが好ましく、少
なくとも0.4g/ccに設定するのがより好ましい。
【0031】圧縮成形時の設定圧力は、通常、10〜
1,000kg/cm2に設定するのが好ましく、50
〜500kg/cm2に設定するのがより好ましい。ま
た、この圧縮成形工程は、繊維群の成形性を高めるため
に、繊維群を加温しながら実施することができる。その
場合の設定温度は、通常、50〜200℃に設定するの
が好ましく、100〜180℃に設定するのがより好ま
しい。
【0032】次に、得られた成形体を加熱して炭化す
る。ここでは、通常、成形体を窒素等の不活性ガス雰囲
気中において加熱処理し、成形体を炭化させる。なお、
加熱処理工程に先立って、成形体は、予め樹脂材料に対
してフィードし易い形状(例えばペレット状)に適宜切
断等されていてもよい。この加熱工程では、成形体を構
成する天然繊維およびバインダーが炭化され、成形体
は、炭化された天然繊維が炭化されたバインダーによっ
て緩やかに相互に結合した導電性フィラーになる。
【0033】上述のような成形体の加熱処理時に設定す
べき加熱温度は、成形体、すなわち天然繊維およびバイ
ンダーの両方が炭化し得る温度範囲であり、通常、60
0〜2,800℃の範囲である。この場合の昇温速度
は、一般に、成形体の熱重量分析結果における重量変化
の大きい温度領域を比較的低速に設定し、重量変化の小
さい温度領域を比較的高速に設定するのが好ましい。
【0034】加熱処理後に得られるこの導電性フィラー
は、成形体の加熱処理時の最高温度の高低によって繊維
群電気抵抗値が変化し得る。すなわち、成形体を低温で
加熱処理して得られた当該導電性フィラーは繊維群電気
抵抗値が大きく、成形体を高温で加熱処理して得られた
当該導電性フィラーは繊維群電気抵抗値が小さくなる。
このため、成形体の加熱処理時の温度設定を適宜調整す
ることにより、当該導電性フィラーによる樹脂材料に対
する導電性の付与効果を調整することができる。例え
ば、加熱処理時の温度が高温に設定された場合は当該導
電性フィラーの繊維群電気抵抗値が小さくなるため、そ
の導電性フィラーは、樹脂材料に対する添加量を変化さ
せると、当該樹脂材料の導電性を変化させ易くなる。逆
に、加熱処理時の温度が低温に設定された場合は当該導
電性フィラーの繊維群電気抵抗値が大きくなるため、そ
の導電性フィラーは、樹脂材料に対する添加量に比例し
て、樹脂材料の導電性を緩やかに変化させることができ
る。なお、上述の繊維群電気抵抗値の意義は、後述する
実施例1において説明の通りである。
【0035】因みに、このような導電性フィラーの繊維
群電気抵抗値として好ましい範囲は、通常、0.001
〜1,000Ωcm、より好ましくは0.01〜1Ωc
mである。
【0036】加熱処理前の成形体が樹脂材料に対してフ
ィードし易い形状に予め切断等されていない場合、加熱
後の成形体は、樹脂材料に対してフィードし易い形状に
適宜切断等されてもよい。
【0037】本発明の電気・電子部品取扱い用樹脂成形
体において、上述のマトリックス中における上述の各種
の導電性フィラーの含有量は、特に限定されるものでは
なく広範な範囲において任意に設定することができる
が、通常は、マトリックスを構成する樹脂材料により付
与される樹脂成形体の各種特性(例えば、機械的強度や
耐熱性等)が阻害されないように設定するのが好まし
い。
【0038】本発明の電気・電子部品取扱い用樹脂成形
体は、電圧の印加処理が施されている。この印加処理
は、導電性フィラーを含みかつ成形された、上述の樹脂
材料からなるマトリックスに対する処理である。
【0039】この処理で印加される電圧は、通常、1,
000V以上(好ましくは10,000V超)でありか
つマトリックスを構成する樹脂材料の絶縁破壊電圧未満
に設定する。印加電圧が1,000V未満の場合は、本
発明の樹脂成形体の導電性が導電性フィラーの含有割合
に応じた程度の導電性以上に高まらない場合がある。逆
に、印加電圧が樹脂材料の絶縁破壊電圧以上の場合は、
樹脂成形体が損壊してしまうおそれがある。
【0040】なお、上述の絶縁破壊電圧は、各樹脂材料
に固有の値であって各種の便覧などの文献に記載されて
おり、そのような記載内容を参考にすることができる。
因みに、各種文献に示されている絶縁破壊電圧は、単位
が通常MV/mで示されており、樹脂材料を用いて形成
した厚さ1mの成形体についての値であるため、本発明
では、樹脂成形体の厚さに応じた絶縁破壊電圧値を適宜
計算するのが好ましい。
【0041】また、この処理に要する時間は特に限定さ
れるものではないが、通常は、1〜600秒程度、好ま
しくは5〜60秒程度である。600秒を超えて電圧を
印加しても、樹脂成形体の導電性は一定以上に高まら
ず、却って不経済である。
【0042】次に、本発明の電気・電子部品取扱い用樹
脂成形体の製造方法について説明する。先ず、上述の樹
脂材料と上述の導電性フィラーとを混合し、成形材料を
調製する。ここで、樹脂材料と導電性フィラーとの混合
比率は、特に限定されるものではないが、上述の通り、
使用する樹脂材料に基づいて樹脂成形体に対して付与さ
れ得る各種特性が阻害されないように導電性フィラーの
添加量を設定するのが好ましい。
【0043】樹脂材料と導電性フィラーとの混合方法
は、前者に対して後者を均一に分散できる方法であれば
特に限定されるものではなく、例えば、樹脂材料に対
し、公知の各種のフィーダー等を用いて導電性フィラー
を供給して混練する方法を採用することができる。この
際、樹脂材料は、導電性フィラーの分散性を高めるた
め、必要に応じて予め粘度調整されていてもよい。
【0044】次に、得られた成形材料を目的とする電気
・電子部品の取扱い用に適した所望の形状、例えば板
状、円板状または各種のトレーやジグ形状に成形し、樹
脂成形体を得る。ここでは、加圧成形法、射出成形法、
鋳込み成形法等の公知の各種の成形法を採用することが
できる。
【0045】次に、成形された成形材料、すなわち得ら
れた樹脂成形体に対し、電圧の印加処理を施す。ここで
は、通常、樹脂成形体を接地し、その樹脂成形体の上方
に電極を配置して、当該電極に上述の電圧値の交流電圧
または直流電圧を印加する。因みに、交流電圧を印加す
る場合、その周波数は1MHz以下である場合に導電性
の改善効果、特に、表面抵抗の低下効果が高まり易い。
一方、直流電圧を印加する場合、電極に印加する電圧の
極性は、正または負のいずれでもよいが、一般には正に
設定する方が導電性の改善効果、特に、表面抵抗の低下
効果が高まり易い。
【0046】なお、ここで利用可能な電極は、樹脂成形
体に対して均一に電圧の印加処理を施すことができるも
のであれば特に限定されるものではないが、例えば、多
数の針状電極の集合体、複数の半球状の電極や複数の平
板状電極が配列されたもの、或いは1枚の大型の平板状
電極等である。
【0047】上述のような電圧の印加処理時において、
電極と樹脂成形体との間隔は、電圧の印加環境、印加電
圧値、樹脂成形体の大きさ、樹脂成形体を構成する樹脂
材料の種類、樹脂成形体に含まれる導電性フィラーの種
類や量などに応じて適宜設定するのが好ましい。例え
ば、空気中において30,000Vの電圧を印加する場
合、当該間隔は、通常、20〜100mm、好ましくは
30〜50mmの範囲に設定される。この間隔が20m
m未満の場合は、過電流が流れ易くなるおそれがある。
逆に、100mmを超えると、電圧の印加処理による効
果が殆ど発現しなくなる可能性がある。
【0048】本発明の電気・電子部品取扱い用樹脂成形
体は、樹脂材料からなるマトリックス内に導電性フィラ
ーが分散された他の樹脂成形体と比較した場合、そこに
含まれる導電性フィラー量からは通常達成しにくい高い
導電性、特に、小さな表面抵抗値を示す。具体的には、
導電性フィラーの含有量がそれよりも数重量%(通常は
3〜5重量%程度)多い樹脂成形体と同等の導電性また
は表面抵抗を示し得る。
【0049】導電性フィラーを含む樹脂成形体は、通
常、導電性フィラー同士が接触し得る確率が高い程導電
性が高まり、導電性フィラーの含有量が少ないとその確
率が小さくなるため導電性を発現しにくくなるのである
が、それにも拘わらず本発明の電気・電子部品取扱い用
樹脂成形体が通常のものに比べて上述のような高い導電
性を発揮する理由は、例えば、次のように考えることが
できる。樹脂材料からなるマトリックス内に導電性フィ
ラーが分散された樹脂成形体においては、導電性フィラ
ーと、その間に存在するマトリックス(すなわち樹脂材
料)とから構成される多数の、若しくは無数のコンデン
サの集合体が内部に形成されているものと考えられる。
本発明の電気・電子部品取扱い用樹脂成形体は、電圧の
印加処理が施されているため、このようなコンデンサを
構成する導電性フィラー間においてマトリックスの絶縁
破壊が生じ、その結果、電流の通路が形成されて導電性
が高まっているものと推察される。
【0050】このため、本発明の電気・電子部品取扱い
用樹脂成形体は、高価な導電性フィラーの添加量を抑制
しつつ、そのような導電性フィラーの添加量では通常達
成できない高い導電性を発揮することができる。換言す
ると、この樹脂成形体は、導電性フィラーの含有量から
通常期待できる導電性よりも高い導電性若しくは小さな
表面抵抗を発揮することができる。したがって、この樹
脂成形体は、同等の導電性を発揮する他の樹脂成形体に
比べて安価に提供することができる。特に、導電性フィ
ラーとして本出願人が先に提案した安価なものを用いた
場合、この樹脂成形体は更に安価に提供することができ
る。
【0051】本発明の電気・電子部品取扱い用樹脂成形
体は、このような特有の効果を発揮する結果、導電性フ
ィラーを含むこれまでの樹脂成形品では達成しにくかっ
た電気抵抗値を実現することもできる。例えば、導電性
フィラーとして炭素繊維を用いる場合、樹脂材料に対す
るその添加量を徐々に増加させて行くと、樹脂成形体
は、添加量がある程度の量までは表面抵抗が1014〜1
15Ω/□程度であって電気絶縁性を維持しているが、
ある一定の添加量を超えると、添加量がごく僅かに変化
しただけで導電性が極端に高まってしまい(すなわち、
表面抵抗が極端に小さくなってしまい)、樹脂成形体の
表面抵抗を好ましい静電作用を発揮し得る範囲である1
5〜1012Ω/□程度に設定するのが極めて困難なこ
とが知られている。本発明の電気・電子部品取扱い用樹
脂成形体は、このような現象を発現する炭素繊維のよう
な導電性フィラーを用いる場合であっても、その添加量
と導電性との関係が緩やかに変化する範囲内でその添加
量を設定するだけで、その添加量によって通常達成でき
る導電性よりも高い導電性を実現することができるの
で、表面抵抗を電気・電子部品の取扱いに適した1012
Ω/□以下、特に、10 6〜109Ω/□程度の範囲に設
定するのが比較的容易になる。
【0052】本発明の電気・電子部品取扱い用樹脂成形
体は、上述のような製造工程において所望の形状に成形
され、ガリウム砒素IC、シリコンIC、メモリーチッ
プ、LSI、CPU、MPU、液晶パネル、光磁気ディ
スクヘッド、GMRヘッド等の各種の電気・電子部品の
製造工程や搬送工程などで用いられるトレーやジグなど
として利用することができる。この際、この電気・電子
部品取扱い用樹脂成形体は、上述のような導電性フィラ
ーによる導電性が付与されているため帯電しにくいの
で、塵埃の付着や放電を抑制することができ、取扱い中
の電気・電子部品に対して及ぼすおそれのある悪影響を
極力回避することができる。
【0053】本発明の電気・電子部品取扱い用樹脂成形
体は、外観形態等において他の樹脂成形体と特に異なる
ことが無いため、外観形態に基づいて他の樹脂成形体か
ら識別するのは困難であるが、例えば次のような方法で
他の樹脂成形体から判別することができる。
【0054】(方法1)予め表面抵抗が測定された樹脂
成形体に対して熱重量分析を実施し、当該樹脂成形体に
含まれる導電性フィラーの量と種類を分析する。そし
て、予め測定された樹脂成形体の表面抵抗が、熱重量分
析結果から判明した導電性フィラーの種類と量とでは通
常達成できないレベルである場合(すなわち、通常達成
できる表面抵抗よりも小さい場合)、当該樹脂成形体
は、本発明の電気・電子部品取扱い用樹脂成形体である
と判定することができる。
【0055】樹脂成形体に対して熱重量分析を実施する
際は、通常、空気中において10℃/分程度の昇温速度
で室温から1,000℃まで樹脂成形体を加熱し、その
間の重量変化を調べる。加熱後の樹脂材料が炭素を残さ
ない場合、熱重量分析時における樹脂成形体の加熱は、
窒素等の不活性ガス中で実施することもできる。
【0056】図1に、15重量%の炭素繊維と15重量
%のセリサイト(無機フィラー)とを含む、表面抵抗が
1.4×103Ω/□のポリスルホン樹脂(加熱処理後
に炭素を残す樹脂)からなる樹脂成形体についての熱重
量分析結果を示す。なお、そこに%で表示された数値
は、変曲点間の重量減少を示している。図において、6
37.6〜763.5℃の範囲で14.4%の重量減少
が認められ、これは樹脂成形体に含まれる炭素繊維の量
と略一致していることがわかる。また、800℃での残
留分は略15%であり、これは樹脂成形体に含まれるセ
リサイトの量と略一致していることがわかる。このよう
な熱重量分析結果により、分析対象である樹脂成形体
は、約15重量%の炭素材料系導電性フィラーと、約1
5重量%の無機フィラーとを含むことがわかる。
【0057】因みに、549.5〜637.6℃の範囲
における29.5%の重量減少は、樹脂成形体を構成す
る樹脂材料、すなわちポリスルホン樹脂の炭化によるも
のであり、燃焼速度が炭素繊維や他の炭素材料系の導電
性フィラーに比べて著しく速いため、導電性フィラーで
ある炭素繊維に起因するものでないことが容易に判別で
きる。
【0058】なお、樹脂成形体に含まれる導電性フィラ
ーが金属材料系のものである場合は、その導電性フィラ
ーの酸化による重量増加が観測されることになる。した
がって、熱重量分析結果において重量増加が認められた
場合は、樹脂成形体が金属材料系の導電性フィラーを含
んでいるものと推測することができる。この方法は、熱
重量分析に代えてESCA(エレクトロンスペクトロス
コピーフォーケミカルアナリシス)やEPMA(エレク
トロンプローブマイクロアナライザー)を用いた分析を
実施して樹脂成形体中に含まれる導電性フィラーの種類
や量を推測した場合も同様に実施することができる。
【0059】(方法2)樹脂成形体を、それを構成する
樹脂材料の軟化点またはそれ以上に加熱処理した後に室
温まで冷却し、当該樹脂成形体について表面抵抗を測定
する。本発明の電気・電子部品取扱い用樹脂成形体は、
このような加熱処理により絶縁破壊部分が治癒され、加
熱処理後の表面抵抗が加熱処理する前の表面抵抗に比べ
て大きくなる。より具体的には、本発明の樹脂成形体
は、通常、加熱処理後の表面抵抗が加熱処理する前の表
面抵抗の100倍以上になる。これに対し、本発明のも
のとは異なる樹脂成形体、すなわち、電圧の印加処理の
履歴が無い樹脂成形体は、絶縁破壊部分を有していない
ため、上述のような加熱処理を施しても、表面抵抗が増
加し難い。
【0060】なお、上述のようにして加熱処理された後
に室温まで冷却された本発明の電気・電子部品取扱い用
樹脂成形体は、その後、既述の条件でさらに電圧の印加
処理を施すと、表面抵抗が当該電圧の印加処理前の1/
100以下になり得る。
【0061】(方法3)樹脂成形体をアセトンや水で十
分洗浄し、洗浄の前後の表面抵抗を比較する。本発明の
電気・電子部品取扱い用樹脂成形体は、表面抵抗が洗浄
の前後で変化しにくいが、他の樹脂成形体、特に、界面
活性剤を用いて導電性が付与された樹脂成形体は、洗浄
後の表面抵抗が著しく高くなる。したがって、樹脂成形
体の洗浄前後の表面抵抗を測定することにより、樹脂成
形体が本発明の電気・電子部品取扱い用樹脂成形体であ
るか否かを判別することができる。
【0062】
【実施例】実施例1 平均繊維径が13μmでありかつ平均アスペクト比が5
4のピッチ系炭素短繊維(株式会社ドナックの商品名
“ドナカーボS244”)からなる、繊維群電気抵抗値
が1.03Ωcmの繊維群(導電性フィラー)を用意し
た。
【0063】ここで、繊維群電気抵抗値とは、繊維群を
構成する個々の炭素短繊維の電気抵抗値ではなく、多数
の炭素短繊維からなる繊維群全体としての電気抵抗値で
あり、次のようにして求められるものをいう。先ず、中
心部に直径0.8cmの貫通孔を有する電気絶縁体を用
意し、その貫通孔の一端を銅製の電極で封止する。そし
て、貫通孔内に0.5gの繊維群(導電性フィラー)を
充填し、貫通孔の他端から銅製の押し棒を挿入して20
kgf/cm2の圧力を加えて繊維群を高さxcmの円
柱状に成形する。この状態で電極と押し棒との間に測定
器を接続し、貫通孔内で圧縮された繊維群の電気抵抗値
を測定する。繊維群電気抵抗値は、測定された電気抵抗
値に繊維群の成形体の端面の面積(すなわち、0.42
πcm2)を掛け、その値を高さxcmで割ると体積抵
抗値(Ωcm)として求めることができる。なお、繊維
群の電気抵抗値を測定する際に用いられる測定器は、ブ
ランク時の電気抵抗値、すなわち、電極と押し棒とを直
接に接触させた場合の電気抵抗値をキャンセルできるも
のが好ましく、例えば、アドバンテスト株式会社のデジ
タルマルチメーター“R6552”を挙げることができ
る。以下、繊維群電気抵抗値と言う場合は、このように
して求めた繊維群の体積抵抗値を言うものとする。
【0064】次に、樹脂材料であるアクリロニトリル−
ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(東レ株式会社の商
品名“トヨラック100”)に対して上述の繊維群をフ
ィーダーを用いて供給して混合し、繊維群を含む樹脂材
料からなるペレット(成形材料)を調製した。なお、繊
維群の混合割合は、ペレットの重量の11重量%になる
よう設定した。
【0065】このペレットを、樹脂温度240℃、射出
圧力1,200kg/cm2および金型温度60℃の条
件で住友重機械工業株式会社製のPROMAT射出成形
機を用いて成形し、直径50mm、厚さ3mmの円板、
すなわち樹脂成形体を得た。得られた円板の表面に銀ペ
ーストを用いて一対の電極を形成し、当該電極間の電気
抵抗を測定して円板の表面抵抗(Ω/□)を求めたとこ
ろ、4×1014Ω/□であった。なお、以下、「表面抵
抗」と言う場合は、このようにして測定した抵抗を言う
ものとする。
【0066】次に、接地されたプレート上に得られた円
板を載置し、当該円板の上方に多数の針状電極からなる
電極群を配置した。ここで、プレートと電極群との間隔
は20mmに設定し、電極群が円板に直接触れないよう
にした。そして、電極群に対し、その極性がプラスにな
るよう10,000Vの直流電圧を10秒間印加した。
このようにして電圧の印加処理が施された円板(本発明
に係る電気・電子部品取扱い用樹脂成形体)の表面抵抗
は1.4×108Ω/□であり、電圧の印加処理前に比
べて大幅に低下していることが確認され、電気・電子部
品の取扱い用に適していることが確認された。
【0067】実施例2 繊維群を、平均繊維径が12μmでありかつ平均アスペ
クト比が250の等方性ピッチ系炭素短繊維(大阪瓦斯
株式会社の商品名“Xylus GC03J401”)
からなる、繊維群電気抵抗値が0.08Ωcmのものに
変更し、また、その混合割合を10重量%に変更した点
を除き、実施例1の場合と同様の成形過程を経て円板を
得た。得られた円板の表面抵抗は3.4×1014Ω/□
であった。
【0068】次に、得られた円板に対して実施例1の場
合と同様にして電圧の印加処理を施し、その後再度表面
抵抗を測定したところ、3.4×106Ω/□に低下し
ていることが確認され、電気・電子部品の取扱い用に適
していることが確認された。
【0069】実施例3 繊維群を、平均繊維径が12μmでありかつ平均アスペ
クト比が250のピッチ系炭素短繊維(大阪瓦斯株式会
社の商品名“Xylus GC03J431”)からな
る、繊維群電気抵抗値が0.08Ωcmのものに変更
し、また、その混合割合を10重量%に変更し、さら
に、樹脂材料をポリフェニレンオキサイド樹脂(日本ゼ
ネラルエレクトリック株式会社の商品名“ノリルPPO
534”)に変更して、実施例1の場合と同様の成形過
程を経て円板を得た。得られた円板の表面抵抗は2.4
×1014Ω/□であった。
【0070】この円板に対して実施例1の場合と同様に
して電圧の印加処理を施し、その後再度表面抵抗を測定
したところ、2.6×107Ω/□に低下しており、電
気・電子部品の取扱い用に適していることが確認され
た。なお、参考のため、この実施例で得られた円板に対
する電圧の印加処理時間を40秒に延長したところ、表
面抵抗は2.6×107Ω/□のままであり、電圧の印
加処理時間を延長しても表面抵抗は一定以上に減少しな
いことが分かった。
【0071】実施例4 樹脂材料であるポリフェニレンオキサイド樹脂(日本ゼ
ネラルエレクトリック株式会社の商品名“ノリルPPO
534”)に対し、平均繊維径が7μmでありかつ平均
アスペクト比が857のポリアクリロニトリル系炭素短
繊維(三菱レーヨン株式会社の商品名”パイロフィ
ル”)からなる、繊維群電気抵抗値が0.06Ωcmの
繊維群を実施例1の場合と同様にして混合し、繊維群の
混合割合が異なる数種類のペレットを得た。なお、繊維
群の混合割合は、ペレットの重量の6〜12重量%の範
囲内で設定した。
【0072】得られた数種類のペレットから実施例1の
場合と同様の成形過程を経て数種類の円板を製造し、そ
れらの表面抵抗を測定した結果を図2に示す。また、各
円板に対して実施例1の場合と同様に電圧の印加処理を
施し、その後の表面抵抗を測定した結果を併せて図2に
示す。
【0073】図2から、電圧の印加処理が施された円板
は、それに比べて繊維群の含有量が数重量%多い、電圧
の印加処理が施されていない円板と同等の表面抵抗を示
すことが分かる。これより、電圧の印加処理を施された
円板は、繊維群の添加量を抑制してコスト低減を図りな
がら、当該繊維群の添加量では通常達成できない表面抵
抗を実現できることが分かる。
【0074】実施例5 実施例4において繊維群の混合割合が6重量%に設定さ
れたペレットを用いて形成された円板について、プレー
トと電極群との間隔を40mmに、また、印加電圧を3
0,000Vにそれぞれ変更した点を除いて実施例1の
場合と同様に電圧の印加処理を施し、その後の表面抵抗
を測定したところ、1×1012Ω/□であり、電気・電
子部品取扱い用に適していることが判った。
【0075】また、この円板について熱重量分析を実施
した結果を図3に示す。この熱重量分析結果は、熱重量
分析器としてセイコーインスツルメント株式会社の商品
名“TG/DTA32”を用い、分析条件を測定温度範
囲=20〜1,000℃、昇温速度=10℃/分および
空気流量=200.0ml/分にそれぞれ設定して得ら
れたものであり、そこに%で表示された数値は重量の残
存率である。この熱重量分析結果は、円板中の繊維群重
量が5.8重量%であることを示しており、この値は、
円板を製造する際に用いた繊維群の混合割合と概ね一致
している。
【0076】実施例6 繊維群を、平均繊維径が12μmでありかつ平均アスペ
クト比が250の等方性ピッチ系炭素短繊維(大阪瓦斯
株式会社の商品名”Xylus GC03J401”)
からなる、繊維群電気抵抗値が0.08Ωcmのものに
変更した点を除いて実施例4の場合と同様に円板を製造
し、その円板について電圧の印加処理を実施する前後の
表面抵抗を調べた。結果を図4に示す。図4から、電圧
の印加処理が施された円板は、それに比べて繊維群の含
有量が数重量%多い、電圧の印加処理が施されていない
円板と同等の表面抵抗を示すことがわかる。これより、
電圧の印加処理を施された円板は、繊維群の添加量を抑
制してコスト低減を図りながら、当該繊維群の添加量で
は通常達成できない表面抵抗を実現できることが分か
る。
【0077】実施例7〜11 樹脂材料であるポリプロピレン樹脂(日本ポリケム株式
会社の商品名“ノバテックBC3B”)に対し、平均繊
維径が7μmでありかつ平均アスペクト比が857のポ
リアクリロニトリル系炭素短繊維(三菱レーヨン株式会
社の商品名”パイロフィル”)からなる、繊維群電気抵
抗値が0.06Ωcmの繊維群を実施例1の場合と同様
にして混合し、ペレットを得た。なお、繊維群の混合割
合は、ペレットの重量に対して表1に示す通りになるよ
う設定した。
【0078】得られたペレットから実施例1の場合と同
様の成形過程を経て円板を製造し、その表面抵抗を測定
した。また、得られた円板に対して実施例1の場合と同
様に電圧の印加処理を施し、その後の表面抵抗を測定し
た。結果を表1に示す。
【0079】また、電圧の印加処理前の円板について熱
重量分析を実施した結果を図5〜図9に示す。この熱重
量分析結果は、熱重量分析器としてセイコーインスツル
メント株式会社の商品名“TG/DTA32”を用い、
分析条件を測定温度範囲=20〜1,000℃、昇温速
度=10℃/分および空気流量=200.0ml/分に
それぞれ設定して得られたものであり、そこに%で表示
された数値は重量の残存率である。なお、実施例と図と
の対応関係および熱重量分析結果から得られた円板中の
繊維群重量は、表1に示す通りである。この熱重量分析
結果は、円板を製造する際に用いた繊維群の混合割合と
概ね一致していることが分かる。
【0080】
【表1】
【0081】実施例12 実施例7において得られた円板について、プレートと電
極群との間隔を40mmに、また、印加電圧を30,0
00Vにそれぞれ変更した点を除いて実施例1の場合と
同様に電圧の印加処理を施し、その後の表面抵抗を測定
したところ、6×109Ω/□であり、電気・電子部品
取扱い用に適していることが判った。
【0082】実施例13 実施例8において得られた円板について、プレートと電
極群との間隔を40mmに、また、印加電圧を30,0
00Vにそれぞれ変更した点を除いて実施例1の場合と
同様に電圧の印加処理を施し、その後の表面抵抗を測定
したところ、4×105Ω/□であり、電気・電子部品
取扱い用に適していることが判った。
【0083】実施例14 電極群の極性がマイナスになるよう設定した点を除いて
実施例13の場合と同様に実施例8において得られた円
板を印加処理したところ、印加処理後の表面抵抗は8×
106Ω/□であり、電気・電子部品取扱い用に適して
いることが判った。
【0084】実施例15 平均繊維径が13μm、平均アスペクト比が8.5およ
び表面抵抗が1.2Ω/□のピッチ系炭素短繊維(株式
会社ドナックの商品名“ドナカーボS249”)に対し
て無電解ニッケルメッキを施し、厚さが約0.2μmの
ニッケルメッキ層を形成した。これにより、ニッケルメ
ッキ層を有する炭素繊維からなる、繊維群電気抵抗値が
0.09Ωcmの繊維群(導電性フィラー)を得た。
【0085】得られた繊維群と樹脂材料であるポリプロ
ピレン樹脂(日本ポリケム株式会社の商品名“ノバテッ
クBC3B”)とを用い、実施例1の場合と同様にして
円板を製造した。なお、ペレット中における繊維群の含
有量は、15重量%に設定した。得られた円板は、表面
抵抗が9.8×1014Ω/□であり、また、実施例1と
同じ電圧印加処理後の表面抵抗が2.4×1011Ω/□
であって電気・電子部品取扱い用に適していることが判
った。
【0086】実施例16 繊維群の含有量を25重量%に変更した点を除いて実施
例15と同様の円板を得た。この円板について、電圧の
印加処理前の表面抵抗、実施例1と同じ電圧印加処理後
の表面抵抗および電圧の印加条件を実施例12の場合と
同様に変更して実施した電圧印加処理後の表面抵抗を測
定したところ、それぞれ3.8×1015Ω/□、6.2
×106Ω/□および5.6×105Ω/□であり、電圧
印加処理後は電気・電子部品取扱い用に適していること
が判った。
【0087】実施例17 樹脂材料であるポリフェニレンオキサイド樹脂(日本ゼ
ネラルエレクトリック株式会社の商品名“ノリルPPO
534”)に対し、平均繊維径が12μmでありかつ平
均アスペクト比が250のピッチ系炭素短繊維(大阪瓦
斯株式会社の商品名“Xylus GCA03J43
1”)からなる、繊維群電気抵抗値が6080Ωcmの
繊維群を実施例1の場合と同様にして混合し、繊維群の
混合割合が17重量%のペレットを得た。
【0088】得られたペレットから実施例1の場合と同
様の成形過程を経て円板を製造し、その円板について電
圧の印加処理前、実施例1の場合と同じ電圧印加処理後
および電圧の印加条件を実施例12の場合と同様に変更
して実施した電圧印加処理後の表面抵抗を測定したとこ
ろ、それぞれ3×1010Ω/□、5×108Ω/□およ
び5×108Ω/□であり、電圧印加処理後は電気・電
子部品取扱い用に適していることが判った。
【0089】この結果より、電圧の印加処理が施された
円板の表面抵抗は、その円板に含まれる繊維群の繊維群
電気抵抗値により規制されることが分かる。同時に、こ
の結果より、円板に対する電圧の印加処理により円板の
電気抵抗値が低下するのは、樹脂材料からなる導電性フ
ィラー間の微少絶縁部の絶縁破壊によるものと推察する
ことができる。
【0090】実施例18〜32 樹脂材料であるポリプロピレン樹脂(日本ポリケム株式
会社の商品名“ノバテックBC3B”)に対し、平均繊
維径が7μmでありかつ平均アスペクト比が857のポ
リアクリロニトリル系炭素短繊維(三菱レーヨン株式会
社の商品名”パイロフィル”)からなる、繊維群電気抵
抗値が0.06Ωcmの繊維群を実施例1の場合と同様
にして混合し、ペレットを得た。なお、繊維群の混合割
合は、ペレットの重量に対して表2に示す通りになるよ
う設定した。
【0091】得られたペレットから実施例1の場合と同
様の成形過程を経て円板を製造し、その表面抵抗を測定
した。そして、得られた円板に対して表2に示す条件で
電圧の印加処理を施した後、その表面抵抗を測定した。
表2に示す電圧の印加処理条件は下記の通りである。結
果を表2に示す。
【0092】(電圧印加処理条件) 条件A:接地したアルミニウム電極の上方に10mmの
間隔を設けてセラミックス電極を平行に配置した。そし
て、電極間に周波数が20kHzで出力が150Wのコ
ロナ放電を起こし、その状態で電極間に10秒かけて円
板を通過させた。 条件B:接地した平板状のアルミニウム電極の上方に1
5mmの間隔を設けて同様の平板状のアルミニウム電極
を平行に配置し、下方のアルミウム電極上に円板を載置
した。そして、アルミニウム電極間に周波数が60Hz
で7kVの交流電圧を30秒間印加した。
【0093】条件C:上下方向に延びる多数の針状電極
かならる一対の電極群を35mmの間隔を設けて上下に
配置し、下側の電極群を接地した。そして、下側の電極
群上に円板を載置し、電極群間に+30kVの直流電圧
を30秒間印加した。 条件D:上下方向に延びる多数の針状電極かならる一対
の電極群を35mmの間隔を設けて上下に配置し、下側
の電極群を接地した。そして、下側の電極群上に円板を
載置し、電極群間に−30kVの直流電圧を30秒間印
加した。
【0094】条件E:接地した円板の上方に、10mm
の間隔を設けて上下方向に延びる多数の針状電極からな
る電極群を配置し、その電極群に7kVの交流電圧を印
加して円板に向けて10秒間放電した。 条件F:上下方向に延びる多数の針状電極からなる一対
の電極群を30mmの間隔を設けて上下に配置し、下側
の電極群を接地した。そして、下側の電極群側に円筒状
の支持具を上下方向に数本配置し、当該支持具上に円板
を水平に載置した。このようにして一対の電極群間に円
板を水平に配置し、電極群間に+50kVの直流電圧を
30秒間印加した。 条件G:上下方向に延びる多数の針状電極からなる一対
の電極群を30mmの間隔を設けて上下に配置し、下側
の電極群を接地した。そして、下側の電極群側に円筒状
の支持具を上下方向に数本配置し、当該支持具上に円板
を水平に載置した。このようにして一対の電極群間に円
板を水平に配置し、電極群間に−50kVの直流電圧を
30秒間印加した。
【0095】
【表2】
【0096】実施例33〜42 実施例1〜3、5、8〜9および12〜15で得られた
円板を、それを構成する樹脂材料の軟化点まで加熱処理
した後に室温まで冷却した。そして、このようにして加
熱処理された円板の表面抵抗を測定した。結果を表3に
示す。
【0097】
【表3】
【0098】実施例43 (導電性フィラーの調製)フェノール樹脂(固形分が5
8重量%のレゾール樹脂:住友ベークライト株式会社の
商品名“スミライトレジン PR53717”)にアセ
トンとメタノールとを2:1の割合で混合した混合溶媒
を添加し、フェノール樹脂の濃度が5重量%の樹脂溶液
を得た。
【0099】得られた樹脂溶液中に平均アスペクト比が
600のストランド状の綿を浸漬した後に取り出し、乾
燥後のフェノール樹脂含浸量が固形分換算で2重量%に
なるよう絞り機にかけて樹脂溶液量を調整した。
【0100】次に、樹脂溶液が含浸された綿を、190
℃に設定されたプレス機を用いて100kg/cm2
圧力で5分間加圧成形し、綿の嵩密度が0.4g/cc
でありかつ大きさが300mm×300mm×3mmの
板状の成形体を得た。続けて、この成形体を炭化炉内に
入れ、窒素雰囲気下において、室温〜230℃の間を
6.6℃/分、230〜350℃の間を1℃/分、35
0〜470℃の間を2℃/分、470〜1,000℃の
間を5℃/分の割合で昇温させながら徐々に加熱し、最
終温度である1,000℃で2時間さらに加熱処理して
炭化させた。この際の炭化収率は22.5重量%であっ
た。炭化後の成形体を3mm角に切断し、第1の導電性
フィラーを得た。この第1の導電性フィラーの繊維群電
気抵抗値は0.8Ωcmであった。
【0101】(電気・電子部品取扱い用樹脂成形体の製
造)樹脂材料であるポリフェニレンオキサイド樹脂(日
本ゼネラルエレクトリック株式会社の商品名“ノリル0
534”)に対して上述の第1の導電性フィラーと、平
均繊維径が12μmでありかつ平均アスペクト比が25
0の等方性ピッチ系炭素短繊維(大阪瓦斯株式会社の商
品名”Xylus GC03J401”)の群からなる
第2の導電性フィラー(繊維群電気抵抗値=0.08Ω
cm)とを混合し、成形材料を得た。ここでは、ポリフ
ェニレンオキサイド樹脂中において第1の導電性フィラ
ーおよび第2の導電性フィラーがそれぞれ4重量%およ
び8重量%含まれるように設定した。なお、ポリフェニ
レンオキサイド樹脂に対する第1および第2の導電性フ
ィラーの供給は、2台の定量フィーダーを用い、各定量
フィーダーから第1および第2の導電性フィラーを別個
にポリフェニレンオキサイド樹脂に対して供給した。
【0102】得られた成形材料をペレット状に成形し、
このペレットを、樹脂温度300℃、射出圧力1,80
0kg/cm2および金型温度150℃の条件で住友重
機械工業株式会社製のPROMAT射出成形機を用いて
成形し、直径50mm、厚さ3mmの円板、すなわち実
施例1の場合と同様の樹脂成形体を得た。得られた円板
について、実施例1の場合と同様に表面抵抗を測定した
ところ、9.1×10 14Ω/□であった。
【0103】次に、得られた円板に対して実施例1の場
合と同様にして電圧の印加処理を施し、その後再度表面
抵抗を測定したところ、4.9×106Ω/□に低下し
ていることが確認され、電気・電子部品取扱い用に適し
ていることが判った。
【0104】実施例44 ポリフェニレンオキサイド樹脂中に含まれる第1の導電
性フィラーおよび第2の導電性フィラーの量をそれぞれ
5重量%および7重量%に変更した点を除いて実施例4
3の場合と同様に円板を得た。この円板の表面抵抗を測
定したところ、5.3×1013Ω/□であった。また、
この円板に対して実施例43の場合と同様に電圧の印加
処理を施したところ、表面抵抗は5.8×105Ω/□
に低下していることが確認され、電気・電子部品取扱い
用に適していることが判った。
【0105】
【発明の効果】本発明の電気・電子部品取扱い用樹脂成
形体は、電圧の印加処理が施されているため、同量の導
電性フィラーを含む他の樹脂成形体に比べて高い導電
性、特に、小さな表面抵抗を示し得る。つまり、この樹
脂成形体は、導電性フィラーの添加量が抑制されている
にも拘わらず、電気・電子部品の取扱い用に適した導電
性、特に表面抵抗を実現し得る。
【0106】本発明の他の見地に係る樹脂成形体は、同
量の導電性フィラーを含む他の樹脂成形体に比べて表面
抵抗が小さく、高い導電性を示し得るので、電気・電子
部品取扱い用に適している。
【0107】本発明に係る樹脂成形体の製造方法は、導
電性フィラーを含みかつ成形された成形材料に対して電
圧を印加しているため、従来の製造方法により同量の導
電性フィラーを用いて製造されたものに比べて高い導電
性、特に、小さな表面抵抗を示す樹脂成形体を製造する
ことができる。したがって、この製造方法によれば、導
電性フィラーの添加量を抑制しつつ、電気・電子部品取
扱い用に適した樹脂成形体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】樹脂成形体の一例について実施した熱重量分析
の結果を示す図。
【図2】実施例4で得られた円板について、繊維群の含
有量と表面抵抗との関係を電圧印加処理前後のそれぞれ
について示したグラフ。
【図3】実施例4で得られた円板のうち、繊維群の含有
量が6重量%に設定されているものの熱重量分析結果を
示す図。
【図4】実施例6で得られた円板について、繊維群の含
有量と表面抵抗との関係を電圧印加処理前後のそれぞれ
について示したグラフ。
【図5】実施例7で得られた円板の熱重量分析結果を示
す図。
【図6】実施例8で得られた円板の熱重量分析結果を示
す図。
【図7】実施例9で得られた円板の熱重量分析結果を示
す図。
【図8】実施例10で得られた円板の熱重量分析結果を
示す図。
【図9】実施例11で得られた円板の熱重量分析結果を
示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 101/16 C08L 101/00 Fターム(参考) 4F072 AB08 AB10 AB11 AC01 AC08 AD11 AD42 AD46 AE24 AE25 AH21 AH23 AJ31 AL11 AL14 4F201 AA32 AA34 AB11 AB25 AB27 AC01 AE03 AH33 BA07 BC01 BC02 BC12 BC37 BR05 BR34 BT02 4J002 CH001 CH071 CJ001 CN031 DA066 FA016 FA066 FB266 FD016 GQ00 GQ01 GQ02 GQ05

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電気・電子部品を取扱う際に用いる樹脂成
    形体であって、 成形された樹脂材料からなるマトリックスと、 前記マトリックス内に分散された導電性フィラーとを含
    み、 電圧の印加処理が施されている、電気・電子部品取扱い
    用樹脂成形体。
  2. 【請求項2】前記樹脂材料がポリエーテルエーテルケト
    ン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、変性ポリフェニ
    レンオキサイド樹脂およびポリフェニレンエーテル樹脂
    からなる群から選ばれた耐熱性樹脂材料である、請求項
    1に記載の電気・電子部品取扱い用樹脂成形体。
  3. 【請求項3】前記導電性フィラーが繊維状、ウイスカー
    状、フレーク状および粒子状のうちの少なくとも一つの
    形態のものである、請求項1または2に記載の電気・電
    子部品取扱い用樹脂成形体。
  4. 【請求項4】前記電圧が1,000V以上でありかつ前
    記樹脂材料の絶縁破壊電圧未満である、請求項1、2ま
    たは3に記載の電気・電子部品取扱い用樹脂成形体。
  5. 【請求項5】表面抵抗が1012Ω/□以下である、請求
    項1、2、3または4に記載の電気・電子部品取扱い用
    樹脂成形体。
  6. 【請求項6】電気・電子部品を取扱う際に用いる樹脂成
    形体であって、 成形された樹脂材料からなるマトリックスと、 前記マトリックス内に分散された導電性フィラーとを含
    み、 前記樹脂材料の軟化点に加熱処理して室温まで冷却した
    後の表面抵抗が加熱処理する前の表面抵抗の100倍以
    上である、電気・電子部品取扱い用樹脂成形体。
  7. 【請求項7】前記加熱処理の後に、さらに電圧の印加処
    理を施した場合の表面抵抗が、前記印加処理を施す前の
    表面抵抗の1/100以下である、請求項6に記載の電
    気・電子部品取扱い用樹脂成形体。
  8. 【請求項8】電気・電子部品を取扱う際に用いる樹脂成
    形体の製造方法であって、 樹脂材料と導電性フィラーとを混合して成形材料を調製
    する工程と、 前記成形材料を前記電気・電子部品の取扱いに適した所
    望の形状に成形する工程と、 成形された前記成形材料に対して電圧を印加する工程
    と、を含む電気・電子部品取扱い用樹脂成形体の製造方
    法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001098091A (ja) * 1999-07-23 2001-04-10 Osaka Gas Co Ltd 導電性樹脂シートおよびその製造方法
JP2003080510A (ja) * 2001-09-11 2003-03-19 Asahi Organic Chem Ind Co Ltd 静電防止用木質複合材料及びその製造方法並びにその用途

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