JP2001026103A - インクジェットヘッド - Google Patents

インクジェットヘッド

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JP2001026103A
JP2001026103A JP19873399A JP19873399A JP2001026103A JP 2001026103 A JP2001026103 A JP 2001026103A JP 19873399 A JP19873399 A JP 19873399A JP 19873399 A JP19873399 A JP 19873399A JP 2001026103 A JP2001026103 A JP 2001026103A
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ink
diaphragm
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head
ejected
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JP19873399A
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Mikio Ohashi
幹夫 大橋
Hirotoshi Eguchi
裕俊 江口
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Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 静電気力を利用したインクジェットヘッドに
おいて、安定して確実にインクを吐出することができる
構成のインクジェットヘッドを提供する。 【解決手段】 ノズル4と、該ノズル4に連通するイン
ク流路6と、該流路6の一部に設けられた振動板5と、
該振動板5に対向して設けられた電極31とを有し、前
記振動板5と前記電極31との間に生じる静電気力を利
用して、前記振動板5を変形させ、前記ノズル4からイ
ンク液滴を吐出する。前記インク液滴が吐出するときの
前記振動板の振動変位量をδj、前記インク体積が圧縮
されたときの圧力をPj、前記振動板の面積をS、前記
インク体積が圧縮されて該インクが受けた仕事指標値を
pとして、該Wpを Wp=δj×Pj×S で定義し、該Wpの値を1×10-8[N・m]以上、好
ましくは4×10-8[N・m]以上とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェットヘ
ッド、より詳細には、記録を必要とするときにのみイン
ク液滴を形成・吐出し、所望の記録媒体にインク記録を
行うドロップ・オン・デマンド型インクジェット記録装
置の記録ヘッドに関し、特に、静電気力を利用してイン
ク吐出を行うインクジェット記録装置の記録ヘッド(イ
ンクジェットヘッド)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、インクジェット記録装置は、
現像定着などのプロセスを必要とせず、非接触にて直接
記録ができるために、低騒音,高速高画質カラー記録が
可能で、普通紙を使用できることから低ランニングコス
トで、装置的にも安価となる等の特徴を有している。そ
の中でも記録を必要とするときにのみインク液滴を吐出
するドロップ・オン・デマンド(DOD)方式の記録装
置は、記録に不必要なインクの回収系がないためメンテ
ナンスが簡単で、装置構成が小型で安価となるため、近
年、大変注目されている。そのDOD記録方式の記録ヘ
ッドには、電気機械変換方式,電気熱変換方式,静電吸
引方式,放電方式等の多種多様な駆動方式が提案され、
実用化されている。中でも圧電素子であるピエゾを利用
した電気機械変換方式の記録ヘッドは古くから現在に至
るまで種々の方式が提案されている。
【0003】例えば、米国特許第3683212号明細
書(S.I.Zoltan)では、円筒状をしたインク
室及びピエゾ素子により、その円筒を収縮,膨張させ、
インクに生じた圧力波でインクの液滴を形成・吐出する
方式が開示されている。また、米国特許第374712
0号明細書(N.G.E.Stemme)では、インク
室がピエゾ振動子を有する圧力室とインクタンクに連通
するインク供給室に分割されており、その2室と連合通
路とインク吐出口とを一直線上に並べて、ピエゾ素子に
より発生する圧力波で効率よくインク液滴を形成して、
吐出エネルギーに変換する方式が開示されている。ま
た、米国特許第3946398号明細書(E.L.Ky
ser)では、インク室の一部をバイモルフ型のピエゾ
素子を利用して構成し、そのピエゾ素子を振動させてイ
ンク室が収縮したときにインクに生じた圧力波でオリフ
ィスよりインクを吐出させ、膨張したときにインクをイ
ンクタンクより補給する方式が開示されている。
【0004】また、最近では、記録ヘッドを小型高密度
にでき、高印字品質、及び長寿命が可能な駆動方式とし
て、インク室の一部を構成する振動可能な振動板を、圧
電素子を利用せず、静電気力を利用して振動させ、イン
ク側に圧力波を生じさせてインク吐出を行う方式が、例
えば、特開平5−50601号公報等に開示されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記特開平5−506
01号公報記載の静電気力を利用した記録ヘッドでは、
100V前後の駆動電圧でインク滴を吐出するために、
インク室の一部を構成する振動板の短辺幅を約1mm、
その長辺長を5mm、同じくその板厚を50〜100μ
m程度と薄くし、また、その振動板を駆動するために形
成される電極との間の空隙(ギャップ)を1.0μm程
度と非常に狭く設計して形成している。
【0006】ここで、この記録ヘッドの吐出圧力PK
下式(1)のように表され、振動板自身が持つ復元力の
みで一義的に決定される。従って、より駆動電圧を低下
させるために、板厚hを薄くしたり、振動変位量δを小
さくすれば(1)式からも分かるように吐出圧力PK
低下してしまい、吐出不良の原因となってしまうばかり
でなく、板厚hをより薄くしたことにより、振動板の耐
久性,信頼性等にも問題を生じることとなってしまう。 PK=K・δ・h3/a4 (1) ただし、K:振動板の剛性係数、δ:振動変位量、a:
振動板の短辺幅、h:振動板の板厚。
【0007】また、より高画質を目的として90dpi
以上の高密度ノズル配列を実現しようとする場合、振動
板の短辺幅aをより小さくする必要があるが、短辺幅a
を小さくすると、同じ一定の振動変位量δを得るのに駆
動電圧が上がってしまう。そこで、駆動電圧を低下させ
るために振動板の板厚hや振動変位量δを小さくすると
上記したような吐出不良等の問題が発生し、低い駆動電
圧で確実に安定してインクを吐出させることが困難とな
ってしまう。
【0008】また、ヘッドをより小型化しようとして振
動板の長辺長bをより短くすると、加圧液室でのインク
の容積変化量が小さくなり、ノズルからインクを吐出す
るのに十分な容積変化量が得られないため、インク吐出
不良の原因となってしまうばかりでなく、振動板の面積
に比例する静電引力が小さくなって振動変位量δが小さ
くなり、(1)式より、十分な吐出圧力PKが得られな
いため、インク吐出が不安定となる問題を生じてしま
う。
【0009】上述のように、従来の記録ヘッドでは、イ
ンクを安定して確実に吐出するのにヘッド寸法から決定
される最低必要な仕事量の指標値が不明確であったた
め、仕様に合ったヘッド構成を設計する際に寸法値が煩
雑となり、ひいては安定してインク吐出するヘッドを作
製するのに多大な時間を要する原因となってしまう。
【0010】本発明は、上記問題点を解決するため、静
電気力を利用したインクジェットヘッドにおいて、安定
して確実にインクを吐出することができる構成のインク
ジェットヘッドを提供することを目的とするものであ
る。
【0011】本発明の他の目的は、より高画質(90d
pi以上の高密度ノズル配列)で、且つ、低い駆動電圧
で安定して確実にインクを吐出することができる構成の
インクジェットヘッドを提供することにある。
【0012】本発明の他の目的は、ヘッドの耐久性,信
頼性を確保し、且つ、低い駆動電圧でもって、より高画
質(90dpi以上の高密度ノズル配列)に安定して確
実にインクを吐出することができる構成のインクジェッ
トヘッドを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、イン
クを吐出するためのノズルと、該ノズルに連通するイン
ク流路と、該流路の一部に設けられた振動板と、該振動
板に対向して設けられた電極とを有し、前記振動板と前
記電極との間に生じる静電気力を利用して、前記振動板
を変形させて前記流路内のインクを加圧して、前記ノズ
ルからインク液滴を吐出するインクジェットヘッドにお
いて、前記インク液滴が吐出するときの前記振動板の振
動変位量をδj、前記流路内のインクが圧縮されたとき
の圧力をPj、前記振動板の面積をS、前記インク体積
が圧縮されて該インクが受けた仕事指標値をWpとし
て、該Wpを Wp=δj×Pj×S で定義し、該Wpの値を1×10-8[N・m]以上、好
ましくは4×10-8[N・m]以上としたことを特徴と
し、もって、安定して確実にインクを吐出することがで
き、また、ヘッドの設計を容易として作製期間を大幅に
短縮可能としたものである。
【0014】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、前記振動板の短辺幅をa、同じく長辺長をb、前記
振動板の吐出時の振動変位量をδjとして、a×b×δj
2の値を8.5×10-23[m4]以上、好ましくは2.5
×10-22[m4]以上としたことを特徴とし、もって、
より安定して確実にインクを吐出することができるよう
にしたものである。
【0015】請求項3の発明は、請求項2の発明におい
て、前記振動板の長辺長をb、前記振動板の吐出時の振
動変位量をδjとして、b×δj 2の値を3.1×10-19
[m3]以上、好ましくは9.2×10-19[m3]以上と
したことを特徴とし、もって、より高画質(90dpi
以上の高密度ノズル配列)においても安定して確実にイ
ンクを吐出することができるようにしたものである。
【0016】請求項4の発明は、請求項2の発明におい
て、前記振動板の短辺幅をa、同じく長辺長をbとし
て、a×bの値を8.5×10-11[m2]以上、好まし
くは2.5×10-10[m2]以上としたことを特徴と
し、もって、より低い駆動電圧で安定して確実にインク
を吐出することができるようにしたものである。
【0017】請求項5の発明は、請求項3または4の発
明において、前記振動板の長辺長をbとして、bの値を
3.1×10-7[m]以上、好ましくは9.2×10
-7[m]以上としたことを特徴とし、もって、より高画
質(90dpi以上の高密度ノズル配列)となっても、
より低い駆動電圧で安定して確実にインクを吐出するこ
とができるようにしたものである。
【0018】請求項6の発明は、インクを吐出するため
のノズルと、該ノズルに連通するインク流路と、該流路
の一部に設けられた振動板と、該振動板に対向して設け
られた電極とを有し、前記振動板と前記電極との間に生
じる静電気力を利用して、前記振動板を変形させ、前記
ノズルからインク液滴を吐出するインクジェットヘッド
において、前記インク液滴が吐出するときの前記振動板
の振動変位量をδj、前記振動板の単位面積当たりの剛
性係数をkj、前記振動板の面積をS、前記振動板が変
形して該振動板に蓄えられた仕事指標値をWkとして、
該Wkを Wk=δj 2×kj×S で定義し、該Wkの値を4×10-12[N・m]以上、好
ましくは1×10-10[N・m]以上としたことを特徴
とし、もって、安定して確実にインクを吐出することが
でき、また、ヘッドの設計を容易として作製期間を大幅
に短縮可能としたものである。
【0019】請求項7の発明は、請求項6の発明におい
て、前記振動板の短辺幅をa、同じく長辺長をb、前記
振動板の吐出時の振動変位量をδjとして、δj 2×b/
3の値を1.8×10-5以下としたことを特徴とし、も
って、ヘッドの耐久性,信頼性を確保しつつ、より低い
駆動電圧で安定して確実にインクを吐出することができ
るようにしたものである。
【0020】請求項8の発明は、請求項6の発明におい
て、前記振動板の板厚をh、同じく長辺長をb、前記振
動板の吐出時の振動変位量をδjとして、b×h3×δj 2
の値を3.6×10-34[m6]以下としたことを特徴と
し、もって、より高画質(90dpi以上の高密度ノズ
ル配列)となっても、より低い駆動電圧で安定して確実
にインクを吐出することができるようにしたものであ
る。
【0021】請求項9の発明は、請求項7または8の発
明において、前記振動板の長辺長をb、前記振動板の吐
出時の振動変位量をδjとして、b×δj 2の値を3.6×
10 -16[m3]以下としたことを特徴とし、もって、ヘ
ッドの耐久性,信頼性を確保しつつ、且つ、より低い駆
動電圧でもって、より高画質(90dpi以上の高密度
ノズル配列)に安定して確実にインクを吐出することが
できるようにしたものである。
【0022】
【発明の実施の形態】<発明1> (構成)図1は、本発明を説明するための、インクジェ
ットヘッドの全体構成を示す分解斜視図であり、一部断
面図で示している。なお、図1には、インク液滴を基板
の端部に設けたノズル孔から吐出させるエッジシュータ
ータイプのインクジェットヘッドの例を示すが、本発明
は、このエッジシュータータイプのインクジェットヘッ
ドに限られるものではなく、サイドシュータータイプや
その他のタイプのインクジェットヘッドにも適用可能で
ある。図2は、図1に示したインクジェットヘッドの各
基板を組み立てた際の装置全体の側断面図であり、本発
明の動作を説明するための図である。図3は、図2のII
I−III線から見たヘッドの上面図である。
【0023】本発明が適用されるインクジェットヘッド
の例として、以下に詳述する構造をもつ3枚の基板1,
2,3を重ねて接合した積層構造のものについて説明す
る。先ず、中間の第1の基板1はシリコンの単結晶基板
を使用したものである。シリコンの単結晶基板の使用
は、インクを吐出させるための薄い振動板(数μm〜数
十μm程度の厚さ)をエッチングで作製する際に、加工
上好適であり、また、数μm程度の微少ギャップを高精
度に後述する陽極接合で形成する際にも好都合な材料で
ある。更にまた、静電気力を働かせて振動板を振動させ
る際には、電極に電圧を印加して静電気力を発生させる
必要性があるが、シリコンは半導体であるため電気抵抗
を低くすることができ、振動板側の電極の代用をするこ
とができるので振動板側に個別に電極を設ける必要性が
ない等の利点を有する。この中間の第1の基板1は、複
数のノズル孔4を構成するように基板1の表面に一端よ
り平行に等間隔で形成された複数のノズル溝21と、各
々のノズル溝21に連通し底壁を振動板5とするインク
吐出室6を構成する凹部22と、該凹部22の後部に設
けられたオリフィス7を構成するインク流入口のための
細溝23と、各々のインク吐出室6にインクを供給する
ための共通のインクキャビティ8を構成する凹部24を
有する。また、前記振動板5の下部には後述する電極を
装着するための振動室9を構成する凹部25が設けられ
ている。
【0024】前記第1の基板1の下面に接合される下側
の第2の基板2はパイレックスガラス(硼珪酸系ガラ
ス)基板を使用したものである。パイレックスガラス
(硼珪酸系ガラス)基板の使用は、上記のように数μm
程度の微少ギャップを高精度に後述する陽極接合で形成
する際、シリコン基板に対し好都合な材料である。この
第1の基板1の下側の第2の基板2では、その表面に、
前記第1の基板1に形成された各々の振動板5に対応し
て微少なギャップを形成するための凹部25に対向し
て、振動板5とほぼ同じ形状の電極31が各々の位置で
形成されている。電極31には電極リード(引き出し)
部32と端子部33が設けられており、例えば、金等の
金属をスパッタして形成される。更に、端子部33を除
き電極31及びリード部32は、その全体を絶縁性の保
護膜34で被覆される。また、各端子部33にはリード
線35がボンディングされている。
【0025】前記第1の基板1の上面に接合される上側
の第3の基板3は、例えば、ガラス,プラスチック,ス
テンレス,コバール等の基板からなり、ステンレス基板
を使用した場合、接着剤にて第1の基板1と接合され
る。この第3の基板3の接合によって、前記ノズル孔
4,インク吐出室6,オリフィス7及びインクキャビテ
ィ8が構成される。そして、基板3ではインクキャビテ
ィ8に連通するインク供給口14を穿設する。インク供
給口14は接続パイプ16及びチューブ17を介して図
示しないインクタンクに接続される。
【0026】次に、第1の基板1と第2の基板2との接
合方法について述べる。本発明のような静電気力を利用
したインクジェットヘッドで数μm程度の微少なギャッ
プを高精度に形成し、組み立てる(接合する)方法とし
ては、陽極接合法を利用するのが好適である。陽極接合
法は他の接合法(ろう接,融接)と比較して、ギャップ
の寸法精度の確保が期待でき、基板間に電圧印加(−3
00〜−500V程度)を行うことにより比較的低温
(300〜400℃)で精密な接合ができる。このよう
な陽極接合を確実に行うには、基板の接合界面で基板同
士の共有結合が生じるように第1の基板1、あるいは、
第2の基板2のどちらかがアルカリイオンを多く含む基
板である必要があり、また、接合する際、熱応力による
基板同士の歪みが少なくなるように基板同士の熱膨張係
数が比較的一致している材料を選択することが好まし
い。
【0027】本発明では、上述のように第1の基板1に
単結晶のシリコン基板を使用し、第2の基板2にNa等
のアルカリイオンを多く含み、シリコン基板と比較的熱
膨張係数が一致するパイレックスガラス(硼珪酸系ガラ
ス)基板を使用するため、基板同士の熱歪みの少ない確
実な接合が得られる。
【0028】上述のようにしてインクジェットヘッドを
組み立てた後、中間の基板1と電極31の端子部33と
の間を配線35により駆動電圧回路26で接続し、イン
クジェット記録装置を構成する。インク11は図示しな
いインクタンクよりインク供給口14を経て中間基板1
の内部に供給され、インクキャビティ8,吐出室6がイ
ンク11で満たされる。図2において、13はノズル孔
4より吐出されたインク液滴、15は記録紙である。な
お、Cは振動板5と電極31との間で形成された微少な
空隙ギャップ幅を表すものである。
【0029】図4は、本発明を説明するための振動板5
の構成を示す図であり、該振動板5は、図4(A)に示
すように、短辺幅をa、長辺長をbとした長方形で、4
辺の周囲は壁で固定(支持)されている。図4(B)
は、図4(A)に示した薄い振動板5が静電気力により
変形し、その振動板5の変位量をδjとして振動してい
る様子を表すものである。
【0030】図5は、本発明を説明するための振動板5
と電極31、及び、インク吐出室6の構成を示す図であ
り、振動板5の板厚をh、インク吐出室6の壁の高さを
Hとして、振動板5と電極31が平行な微少空隙ギャッ
プCで配置されている様子を表すものである。
【0031】図6(A)〜図6(C)は、本発明の請求
項1に対応する概念を説明するためのインク吐出と仕事
指標値Wpとの関係を表す測定値の散布図である。図6
(A)は振動板5の面積Sに対する測定した仕事指標値
pとの関係を示し、図6(B)はインク体積が圧縮さ
れたときの圧力Pjに対する測定した仕事指標値Wpとの
関係を示し、図6(C)はインク吐出時の振動板5の振
動変位量δjに対する測定した仕事指標値Wpとの関係を
示すものである。
【0032】図6(A)〜図6(C)の各関係図におい
て、図6(A)の面積S、図6(B)の圧力Pj、図6
(C)の振動変位量δjの各値の変化に応じて、各々の
仕事指標値Wpの値も変化し、その仕事指標値Wpの値に
応じて、インク吐出しない領域I、インク吐出が不安定
であるが吐出する領域II、安定してインク吐出する領域
IIIの3領域に分けることができる。その各領域を分け
る仕事指標値Wpのしきい値は、領域Iと領域IIとの間
で約1×10-8[N・m]、領域IIと領域IIIとの間で
約4×10-8[N・m]という値で分割することができ
る。
【0033】図7は、本発明の請求項2に対応する概念
を説明するための図で、図5で示した吐出室6の壁の高
さHと短辺幅(a)×長辺長(b)×振動変位量
(δj2の値との関係を示す図であり、吐出室6の壁の
高さHの増加に伴い、インク吐出可能な短辺幅(a)×
長辺長(b)×振動変位量(δj2の値も比例して増加
することを示している。その短辺幅(a)×長辺長
(b)×振動変位量(δj2の値は、より確実に安定し
てインク吐出を行うことができるように吐出室6の壁の
高さHの値によって、前記したようなインク吐出しない
領域I、インク吐出が不安定であるが吐出する領域II、
安定してインク吐出する領域IIIの3領域に分けること
ができる。その各領域を分ける短辺幅(a)×長辺長
(b)×振動変位量(δj2のしきい値は、領域Iと領
域IIとの間で約8.5×10-23[m4]、領域IIと領域I
IIとの間で約2.5×10-22[m4]という値で分割す
ることができる。
【0034】図8は、本発明の請求項3に対応する概念
を説明するための図で、振動板5の短辺幅(a)と長辺
長(b)×振動変位量(δj2の値との関係を示す図で
あり、短辺幅aの増加に伴い、インク吐出可能な長辺長
(b)×振動変位量(δj2の値が反比例で減少するこ
とを示している。その長辺長(b)×振動変位量
(δ j2の値は前記壁の高さHの値(H10線とH30
線)によって、前記同様にインク吐出しない領域I、イ
ンク吐出が不安定であるが吐出する領域II、安定してイ
ンク吐出する領域IIIの3領域に分けることができる。
更に、また、領域IIIは、より高画質(90dpi以上
の高密度ノズル配列)とすることができる領域IVに分け
ることができる。その、より高画質(90dpi以上の
高密度ノズル配列)とすることができる長辺長(b)×
振動変位量(δj2のしきい値は、H10線上で約3.
1×10-19[m3]、H30線上で約9.2×10
-19[m3]という値で分割することができる。
【0035】図9は、本発明の請求項4に対応する概念
を説明するための振動変位量(δj2と短辺幅(a)×
長辺長(b)の値との関係を示す図であり、振動変位量
(δj2の増加に伴い、インク吐出可能な短辺幅(a)
×長辺長(b)の値が反比例で減少することを示してい
る。その短辺幅(a)×長辺長(b)の値は前記壁の高
さHの値(H10線とH30線)によって、前記同様に
インク吐出しない領域I、インク吐出が不安定であるが
吐出する領域II、安定してインク吐出する領域IIIの3
領域に分けることができる。更に、また、領域IIIは、
より低い駆動電圧でインク吐出することができる領域V
に分けることができる。その、より低い駆動電圧でイン
ク吐出することができる短辺幅(a)×長辺長(b)の
しきい値は、H10線上で約8.5×10-11[m2]、
H30線上で約2.5×10-10[m2]という値で分割
することができる。
【0036】図10は、本発明の請求項5に対応する概
念を説明するための短辺幅(a)×振動変位量(δj2
の値と長辺長bとの関係を示す図であり、短辺幅(a)
×振動変位量(δj2の値の増加に伴い、インク吐出可
能な長辺長bの値が反比例で減少することを示してい
る。その長辺長bの値は前記壁の高さHの値(H10線
とH30線)によって、前記同様にインク吐出しない領
域I、インク吐出が不安定であるが吐出する領域II、安
定してインク吐出する領域IIIの3領域に分けることが
できる。更に、また、領域IIIは、より高画質(90d
pi以上の高密度ノズル配列)とすることができ、且
つ、より低い駆動電圧でインク吐出することができる領
域VIに分けることができる。その、より高画質(90d
pi以上の高密度ノズル配列)とすることができ、且
つ、より低い駆動電圧でインク吐出することができる長
辺長bのしきい値は、H10線上で約3.1×10
-7[m]、H30線上で約9.2×10-7[m]という
値で分割することができる。
【0037】(動作)次に、上述のようにして構成した
本発明(発明1)のヘッドの動作について説明する。先
ず、静電気力を利用した本インクジェットヘッドでは、
図1に示した端子部33とリード部32を通して電極3
1に駆動電圧回路26より正のパルス電圧を印加する
と、電極31の表面がプラス電位に帯電し、対向する振
動板5の下面がマイナス電位に帯電して、振動板5が静
電気の吸引作用により下方へ撓む。ここで、振動板5に
発生する静電吸引力の大きさFsは、次の(2)式のよ
うに表される。 Fs=1/2・ε0・S0(V/d02 =1/2・C0・V2/d0(∴C0=ε0・S0/d0) (2) 但し、(2)式において、ε0は振動板5と電極31と
の間の誘電率、S0は振動板5と電極31との間に働く
静電気力の有効面積、Vは電極31に印加する駆動電
圧、d0は振動板5と電極31との間のギャップ距離、
0は振動板5と電極31との間の静電容量を示す。従
って、(2)式に示されるように、静電吸引力Fsは、
振動板5と電極31との間のギャップ距離d0が狭いほ
ど振動板5に大きな静電引力が働くことが分かる。
【0038】次に、電極31へのパルス電圧の印加をO
FFすると、撓んだ振動板5は(1)式で示されるよう
に、撓み量(変位量)に応じて振動板自身に蓄えられた
復元力により自然に復元し、その結果、吐出室6内の圧
力が急激に上昇し、ノズル孔4よりインク液滴13が形
成され、記録紙15に向けてインク吐出が行われる。
【0039】しかしながら、より駆動電圧を低下させよ
うとして、振動板5の板厚hを薄くしたり、振動変位量
δjを小さくすれば、前述のように、(1)式によりイ
ンク吐出圧力が低下して吐出不良となってしまったり、
振動板5の板厚hをより薄くしたことにより、振動板5
の耐久性や信頼性に問題が発生するために、安定して確
実にインクを吐出させることが困難となる。このように
振動板5の復元力のみを利用してインクを吐出する場合
には、インクを安定して確実に吐出するのにヘッド寸法
から決定される最低必要なヘッドの仕事量を明確にして
おく必要があり、そうすれば仕様に合ったヘッド構成を
設計する際に寸法値が煩雑とならないため、ひいてはイ
ンクジェットヘッドを短時間で設計・作製することが可
能となる。
【0040】そこで、本発明(発明1)では、インクジ
ェットヘッドの振動板5を変形させ、ヘッド内のインク
体積が圧縮されてインクが圧力を受けたときの仕事量の
指標値Wpを以下のように定義し、その指標値Wpでもっ
てインクを確実に吐出するのに最低必要なしきい値を実
験的に求めることにより、インクを安定して確実に吐出
することができ、仕様に合ったヘッドを容易に設計でき
るようにしたものである。即ち、本発明での仕事量の指
標値Wpは、(3)式のように定義される。 Wp=δj×Pj×S (3) 但し、δjはインク吐出時の振動板5の振動変位量、Pj
はインク体積が圧縮されたときの圧力、Sは振動板5の
面積(=短辺幅(a)×長辺長(b))を意味する。
【0041】図6(A)〜図6(C)の結果に示される
ように、何れの関係図でも各々の仕事指標値Wpの値に
インクが吐出できるしきい値が存在しており、約1×1
-8[N・m]以上でインク吐出が不安定ではあるが吐
出する状態(領域II)となり、その値未満ではインクは
吐出しない状態(領域I)である。また、約4×10 -8
[N・m]以上で安定してインクが吐出する状態(領域
III)となり得る。ここで、Pjはインクの容積変化が小
さい場合には、(4)式のように表される。 Pj=B×ΔW/W (4) 但し、Bはインクの体積弾性率を表すものであり、通
常、2.2×109[Pa]程度の値である。
【0042】また、(4)式におけるWは図5で示され
る吐出室の体積を意味するものであり、振動板5の短辺
幅をa、同じく長辺長をb、吐出室6の壁の高さをHと
して、(5)式で表される。 W=a×b×H (5)
【0043】また、ΔWは振動板5が図4(B)で示さ
れるように変形した場合の吐出室6での体積変化量を意
味するものであり、インク吐出時の振動板5の振動変位
量をδjとすれば、近似的な解析解として(6)式のよ
うに表すことができる。 ΔW=8/15×a×b×δj (6)
【0044】従って、圧力Pjは(5),(6)式より
(7)式のように表せられ、また、本発明での仕事量の
指標値Wpは、(3),(7)式より(8)式のように
表すことができる。 Pj=8/15×B×δj/H (7) Wp=8/15×B×a×b/H×δj 2 (8)
【0045】図7は(8)式におけるHとa×b×δj 2
の値との関係を示す図である。図7に見られるように、
吐出室の壁の高さHの値を小さくすればするほど、振動
板のa×b×δj 2の値を小さくすることは可能である
が、Hを小さくしすぎると、吐出室6での流体(イン
ク)の抵抗成分(R)とイナータンス成分(M)がオリ
フィス7部やノズル孔4部でのそれらよりも大きくなる
ために、インクが吐出しない問題が発生する。通常、オ
リフィス7部やノズル孔4部での溝高さ(フェイスイン
クジェットタイプの場合は、孔の直径の大きさ)は、1
0〜100μm程度で形成されるので、吐出室6での流
体(インク)のR成分やM成分がオリフィス7部やノズ
ル孔4部でのそれらよりも大きくならないようにして、
確実にインクが吐出するようにするためには、吐出室6
の壁の高さHを少なくとも10μm以上としておく必要
がある。また、より確実にインクを吐出することができ
るように、Hの値を30μm以上としておく方が好まし
い。
【0046】従って、インクを吐出できる仕事指標値W
pの値を考慮すると、a×b×δj 2の値は、図7に示さ
れるように、約8.5×10-23[m4]未満の値ではイ
ンクは吐出しない状態(領域I)であり、その値以上で
インク吐出が不安定ではあるが確実に吐出する状態(領
域II)となる。更に、また、約2.5×10-22[m4
以上の値で、より確実に安定してインクが吐出する状態
(領域III)となる。
【0047】図8は、前記a×b×δj 2の値において、
a×b×δj 2の値との関係を示す図である。図8におい
て、H10の線は前記Hの値をH=10μmとしたとき
の関係線であり、また、H30の線は前記Hの値をH=
30μmとしたときの関係線を表すものである。図8に
見られるように、どちらのHの値の場合でもaの値を大
きくすればするほど、b×δj 2の値を小さくすることは
可能であるが、より高画質な印字(例えば、90dpi
以上の高密度ノズル配列)をしようとした場合、隣接す
る吐出室6との間の隔壁の厚さを10μm程度として
も、aの値は270μm以下である必要がある。
【0048】従って、b×δj 2の値は、図8に示される
ように、H10の線上未満の値ではインクは吐出しない
状態(領域I)であり、その値以上でインク吐出が不安
定ではあるが確実に吐出する状態(領域II)となる。ま
た、H30線上以上の値で、より確実に安定してインク
が吐出する状態(領域III)となる。更に、また、90
dpi以上の高密度ノズル配列での高画質印字にて確実
にインクを吐出しようとする場合には、インクが吐出で
きる前記a×b×δj 2のしきい値の値を考慮すると、b
×δj 2の値はH10線上で約3.1×10-19[m3]以
上、H30線上で約9.2×10-19[m3]以上の値
(領域IV)とすることが望ましい。
【0049】図9は、前記a×b×δj 2の値において、
δj 2とa×bの値との関係を示す図である。図9におい
て、H10の線は前記Hの値をH=10μmとしたとき
の関係線であり、また、H30の線は前記Hの値をH=
30μmとしたときの関係線を表すものである。図9に
見られるように、どちらのHの値の場合でもδj 2の値を
大きくすればするほど、a×bの値を小さくすることが
可能であるが、δj 2の値を大きくするには駆動電圧Va
を大きくする必要がある。100V以下の駆動電圧Va
で得られる振動変位量δjは、振動板5と電極31とを
接触させて駆動する方法(当接駆動方法)を考慮して
も、高々1μm程度の変位量δjであるため、より駆動
電圧を低下させてインクを確実に吐出しようとする場合
では、δj 2の値は1.0μm2以下の値で十分である。
【0050】従って、a×bの値は、図9に示されるよ
うに、H10の線上未満の値ではインクは吐出しない状
態(領域I)であり、その値以上でインク吐出が不安定
ではあるが確実に吐出する状態(領域II)となる。ま
た、H30線以上の値で、より確実に安定してインクが
吐出する状態(領域III)となる。更に、また、より駆
動電圧Vaを低下させて確実にインクを吐出しようとす
る場合には、インクが吐出できる前記a×b×δj 2のし
きい値の値を考慮すると、a×bの値はH10線上で約
8.5×10-11[m2]以上、H30線上で約2.5×1
-10[m2]以上の値(領域V)とすることが望まし
い。
【0051】図10は、前記a×b×δj 2の値におい
て、a×δj 2の値とbの値との関係を示す図である。図
10において、H10の線は前記Hの値をH=10μm
としたときの関係線であり、また、H30の線は前記H
の値をH=30μmとしたときの関係線を表すものであ
る。図10に見られるように、どちらのHの値の場合で
もa×δj 2の値を大きくすればするほど、bの値を小さ
くすることが可能である。a×δj 2の値を大きくするに
は、aの値かδj 2の値を大きくする必要があるが、前記
したように、δj 2の値を大きくするには駆動電圧Va
大きくする必要があるが、より低い駆動電圧(100V
以下)で得られる駆動変位量δjの値は、高々1μm程
度である。また、90dpi以上の高密度ノズル配列
で、より高画質な印字をしようとする場合には、aの値
は270μm以下である必要がある。故に、より高画質
(90dpi以上の高密度ノズル配列)で、且つ、より
低い駆動電圧で確実にインクを吐出しようとする場合に
は、a×δj 2の値は270μm 3以下である必要があ
る。
【0052】従って、bの値は、図10に示されるよう
に、H10の線上未満の値ではインクは吐出しない状態
(領域I)であり、その値以上でインク吐出が不安定で
はあるが確実に吐出する状態(領域II)となる。また、
H30線上以上の値で、より確実に安定してインクが吐
出する状態(領域III)となる。更に、また、より高画
質(90dpi以上の高密度ノズル配列)で、且つ、よ
り低い駆動電圧で確実にインクを吐出しようとする場合
には、インクが吐出できる前記a×b×δj 2のしきい値
の値を考慮すると、bの値はH10線上で約約3.1×
10-7[m]以上、H30線上で約9.2×10
-7[m]以上の値(領域VI)とすることが望ましいとい
うことになる。実際には、長辺長bは短辺幅aよりも短
くなることはあり得ないので、言い換えれば短辺幅a以
上の長さとすることが望ましいということになる。
【0053】上述のように、本発明(発明1)のインク
ジェットヘッドでは、インクを安定して確実に吐出させ
るために最低必要なヘッドの仕事指標値や寸法値が明確
となるため、仕様に合ったヘッドを容易に設計できるよ
うになり、ひいては、インクジェットヘッドを短期間で
設計・作製することが可能となる。
【0054】(実施例)先ず、第1の基板1として、厚
さ200μmの両面研磨された(100)面方位のn型
単結晶シリコンウェハを使用し、そのウェハの両面に厚
さ1μmのSiO2膜を形成した。そのSiO2膜を耐エ
ッチング用のマスク材として、先ず、表面側よりそのマ
スクに振動室9の形状に相当するパターンをフォトリソ
により形成し、次いで、アルカリ液によりシリコンウェ
ハの異方性エッチングを施し、振動室9に相当する凹部
25を形成した。次に、前記同様に形成したSiO2
を耐エッチング用のマスク材として、裏面側よりそのマ
スクにノズル孔4,吐出室6,オリフィス7、及びイン
クキャビティ8の形状に相当するパターンをフォトリソ
により形成し、次いで、アルカリ液により、再度、シリ
コンウェハの異方性エッチングを施し、各パターンに相
当する凹部21〜24を形成した。最後に、シリコンウ
ェハの両面に残留しているSiO2膜を全面除去するこ
とにより、図1に示したような第1の基板1を作製し
た。
【0055】次に、第2の基板2として、厚さ1mmの
両面研磨されたパイレックスガラス基板(コーニング社
製#7740)を使用した。その上面に電極31,電極
リード32,電極の端子部33を形成するために、Au
電極をスパッタリング成膜法により製膜、パターニング
を行い、次に、電極部31,電極リード部32の絶縁保
護膜34としてSiO2膜を同様にスパッタリング成膜
法により製膜、パターニングを行い、端子部33を除い
た電極部31,32全体に被覆を施し、図1に示したよ
うな第2の基板2を作製した。
【0056】上記のようにして第1の基板1,第2の基
板2を作製した後、アライメントを行い、前記陽極接合
法により、基板接合を行った。その際の接合条件は、空
気中大気圧において、接合電圧−500V、接合温度4
00℃、接合時間10分間にて行い、接合電極としてP
tを利用し、接合を行った。更に、図1に示すように、
第1の基板1の上側にインク供給口14が形成されたス
テンレス製の第3の基板3をエポキシ系接着剤にて接合
し、駆動電圧回路26を基板1と端子部33との間に接
続し、端子部33のに正のパルス電圧を印加した。そし
て、図2に示すように、作製したインクジェットヘッド
のインク吐出試験を行った。
【0057】表1及び表2は、上記のインク吐出試験の
結果を示すものである。インクジェットヘッドの振動板
5の短辺幅a、同じく長辺長b、吐出室6の壁の高さ
H、振動板5の振動変位量δjを種々変化させ、上記の
ようにして作製した各インクジェットヘッド(ヘッドA
〜M)のインクの吐出可否と吐出安定性、及びインクが
吐出し始めたときの駆動電圧値Vaと本発明で定義した
ヘッドの仕事指標値Wpとを測定評価し、ヘッド寸法値
との関係を調べた結果である。なお、各ヘッドによって
振動板5の板厚hや振動板5と電極31との間のギャッ
プ距離d0は異なっている。また、表1,表2におい
て、○は吐出可、×は吐出不可を示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】表1の結果から分かるように、ヘッドAで
は前記仕事指標値Wpの値が4×10-8[N・m]以上
であるので安定してインクを吐出することが可能であっ
たが、ヘッドCでは前記仕事指標値Wpの値が1×10
-8[N・m]未満であるためにインクを吐出することが
不可能であった。また、ヘッドBではインクを吐出する
ことは可能であったが、前記仕事指標値Wpの値が4×
10-8[N・m]未満であるためにインクの吐出が不安
定であった。また、ヘッドD〜Fでは、振動板5を電極
31へ接触させる当接駆動とすることにより、振動板5
の振動変位量δ jを1.0μm程度と大きくすることがで
きるため、ヘッドEやヘッドFではヘッドBやヘッドC
と同じ短辺幅aとなっても前記仕事指標値Wpが4×1
-8[N・m]の値を越えているので安定してインクを
吐出することが可能となっている。
【0061】また、表2のヘッドG〜Iでは、吐出室6
の壁の高さHを200μm程度とし、振動板5の振動変
位量δjを非当接駆動で0.2〜0.27μm程度とする
ことにより、同じ短辺幅aであるヘッドBやヘッドCに
おいてインクが不安定な吐出をしていたり、吐出してい
なかったりしていたものが、安定な吐出をしだしたり、
インクが吐出するようになったりすることを確認でき
た。また、ヘッドKで、壁の高さHを5μmとした場合
では、仕事指標値Wpは4×10-8[N・m]の値を越
えているので安定したインク吐出が期待できるはずであ
るが、吐出室6でのインクの流体抵抗成分が大きいため
に、インクを吐出することは不可能であった。また、ヘ
ッドL,ヘッドMでは、壁の高さHを各々10μm,3
0μmとした場合であり、ヘッドLでは仕事指標値Wp
の値が4×10-8[N・m]の値を越えているので安定
したインク吐出が期待できるはずであるが、結果は不安
定なインク吐出しか得られなかった。また、ヘッドMで
は仕事指標値Wpの値が4×10-8[N・m]未満であ
ったために、壁の高さHが30μmであってもインク吐
出は不安定であった。また、ヘッドH,I,J,L,M
においては、全て90dpi以上の高密度ノズル配列が
可能な振動板5の短辺幅a(270μm以下の幅)であ
り、b×δj 2の値,a×bの値ともにインクが吐出する
しきい値以上の値となっているので、全て駆動電圧10
0V以下の電圧でインク吐出が確認されている。特に、
ヘッドHでは、100dpi相当のノズル密度におい
て、45V程度の低い駆動電圧で、安定したインク吐出
が確認された。
【0062】<発明2> (構成)図11(A)〜図11(C)は、本発明の請求
項6に対応する概念(発明2)を説明するためのインク
吐出と仕事指標値Wkとの関係を表す測定値の散布図で
ある。図11(A)は振動板5の面積Sに対する測定し
た仕事指標値Wkとの関係を示し、図11(B)は振動
板5の単位面積当たりの剛性係数kjに対する測定した
仕事指標値Wkとの関係を示し、図11(C)はインク
吐出時の振動板5の振動変位量δjに対する測定した仕
事指標値Wkとの関係を示すものである。
【0063】図11(A)〜図11(C)の各関係図に
おいて、図11(A)の面積S、図11(B)の剛性係
数kj、図11(C)の振動変位量δjの各値の変化に応
じて、各々の仕事指標値Wkの値も変化し、その仕事指
標値Wkの値に応じて、インク吐出しない領域I、イン
ク吐出が不安定であるが吐出する領域II、安定してイン
ク吐出する領域IIIの3領域に分けることができる。そ
の各領域を分ける仕事指標値Wkのしきい値は、領域I
と領域IIとの間で約4×10-12[N・m]、領域IIと
領域IIIとの間で約1×10-10[N・m]という値で分
割することができる。
【0064】図12は、本発明の請求項7に対応する概
念を説明するための図で、図5で示した振動板5の板厚
hの3乗(h3)の値と長辺長(b)×振動変位量
(δj2/短辺幅(a)3の値との関係を示す図であ
り、板厚h3の増加に伴い、インク吐出可能な長辺長
(b)×振動変位量(δj2/短辺幅(a)3の値が反
比例で減少することを示している。その長辺長(b)×
振動変位量(δj2/短辺幅(a)3の値は、ヘッドの
耐久性・信頼性を確保でき、より確実に安定してインク
吐出を行うことができるように振動板5の板厚hの値に
よって、前記したようなインク吐出しない領域I、イン
ク吐出が不安定であるが吐出する領域II、安定してイン
ク吐出する領域IIIに分けることができる。更に、ま
た、領域IIIは、より低い駆動電圧で確実に安定してイ
ンク吐出することができる領域VIIに分けることができ
る。その、より低い駆動電圧で確実にインクを吐出する
ことができる長辺長(b)×振動変位量(δj2/短辺
幅(a)3のしきい値は、領域IIIと領域VIIとの間で約
1.8×10-5という値で分割することができる。
【0065】図13は、本発明の請求項8に対応する概
念を説明するための図で、短辺幅aと長辺長(b)×板
厚(h)3×振動変位量(δj2の値との関係を示す図
であり、短辺幅aの増加に伴い、インク吐出可能な長辺
長(b)×板厚(h)3×振動変位量(δj2の値も短
辺幅aの3乗に比例して増加することを示している。そ
の長辺長(b)×板厚(h)3×振動変位量(δj2
値は振動板5の短辺幅aの値によって、前記同様にイン
ク吐出しない領域I、安定してインク吐出する領域II
I、及び、より低い駆動電圧で、より高画質(90dp
i以上の高密度ノズル配列)とすることができる領域VI
に分けることができる。その、より低い駆動電圧で、よ
り高画質(90dpi以上の高密度ノズル配列)とする
ことができる長辺長(b)×板厚(h)3×振動変位量
(δj2のしきい値は、領域IIIと領域VIとの間で約3.
6×10-34[m6]という値で分割することができる。
【0066】図14は、本発明の請求項9に対応する概
念を説明するための図で、板厚(h)3/短辺幅(a)3
の値と長辺長(b)×振動変位量(δj2の値との関係
を示す図であり、板厚(h)3/短辺幅(a)3の値の増
加に伴い、インク吐出可能な長辺長(b)×振動変位量
(δj2の値が反比例で減少することを示している。そ
の長辺長(b)×振動変位量(δj2の値は板厚(h)
3/短辺幅(a)3の値によって、前記同様にインク吐出
しない領域I、安定してインク吐出する領域III、及
び、ヘッドの耐久性・信頼性を確保でき、且つ、より高
画質(90dpi以上の高密度ノズル配列)とすること
ができ、且つ、より低い駆動電圧でインク吐出すること
ができる領域VIIIに分けることができる。そのヘッドの
耐久性・信頼性を確保でき、且つ、より高画質(90d
pi以上の高密度ノズル配列)とすることができ、且
つ、より低い駆動電圧でインク吐出することができる長
辺長(b)×振動変位量(δj2のしきい値は、領域II
Iと領域VIIIとの間で約3.6×10-16[m3]という値
で分割することができる。
【0067】(動作)次に、上述のようにして構成した
本発明(発明2)のヘッドの動作について説明する。静
電気力を利用した本インクジェットヘッドのインク吐出
動作については、前記<発明1>で記述した内容と同様
であるので、ここではその詳細は省略する。本発明(発
明2)ではインクジェットヘッドの振動板5が変形して
振動板5に蓄えられた仕事量の指標値Wkを以下のよう
に定義して、その指標値Wkでもってインクを確実に吐
出するのに最低必要なしきい値を実験的に求めることに
より、インクを安定して確実に吐出することができ、仕
様に合ったヘッドを容易に設計できるようにしたもので
ある。即ち、本発明での仕事量の指標値Wkは、(9)
式のように定義される。 Wk=(δj2×kj×S (9) 但し、δjはインク吐出時の振動板5の振動変位量、kj
は単位面積当たりの振動板5の剛性係数、Sは振動板5
の面積(=短辺幅(a)×長辺長(b))を意味する。
【0068】図11(A)〜図11(C)の結果に示さ
れるように、何れの関係図でも各々の仕事指標値Wk
値にインクが吐出できるしきい値が存在しており、約4
×10-12[N・m]以上でインク吐出が不安定ではあ
るが吐出する状態(領域II)となり、その値未満ではイ
ンクは吐出しない状態(領域I)である。また、約1×
10-10[N・m]以上で安定してインクが吐出する状
態(領域III)となり得る。ここで、振動板5が図4
(A)に示されるようにその4辺が固定され、短辺幅
(a)<長辺長(b)の場合、振動板5の単位面積当た
りのkjは近似的に(10)式のように表される。 kj=32×E/(1−υ2)×h3/a4 (10) 但し、E、及びυは振動板5の材料のヤング率、及びポ
アソン比を表すものであり、例えば、前記<発明1>の
ようにその材料としてし(100)基板を使用した場
合、ヤング率Eの値は1.3×1011から1.9×1011
[Pa]程度であり、ポアソン比υの値は0.064程
度である。また、aとhは前記と同様に振動板5の短辺
幅、及び板厚を表すものである。従って、本発明での仕
事量の指標値Wkは(9)式,(10)式より(11)
式のように表すことができる。 Wk=32×E/(1−υ2)×b×h3×δj 2/a3 (11)
【0069】図12は、(11)式におけるh3とb×
δj 2/a3の値との関係を示す図である。図12に見ら
れるように板厚hの値を大きくすればするほど(厚くす
ればするほど)、b×δj 2/a3の値をより小さくして
インクを吐出することができる。しかし、より高画質
(高密度ノズル配列)としたい場合には振動板5の短辺
幅aをより小さく(狭く)する必要があり、aを小さく
すると必然的に駆動電圧も上昇する。そこで、駆動電圧
を低下させながら同じ振動変位量δjを得るためには、
板厚hをより小さく(薄く)する必要性がある。しか
し、例えば、その振動板5を前記<発明1>のようなS
i基板で作製した場合、その板厚hの値を1μmより薄
くしすぎると、振動板5を繰り返し振動させている間に
振動板5内にクラック等が発生し、振動板5の耐久性・
信頼性が確保できなくなるという問題が発生する。故
に、振動板5の耐久性・信頼性を確保しつつ、安定して
確実にインクを吐出するようにするためには、振動板5
の板厚hを少なくとも1μm以上としておく必要があ
る。
【0070】従って、b×δj 2/a3の値は、図12で
示されるh3とb×δj 2/a3の値との関係線未満の値で
はインクは吐出しない状態(領域I)であり、その値以
上でインクが確実に吐出する状態となる。また、インク
が確実に吐出する状態においても、hの値が1μm未満
のときにはインク吐出が不安定ではあるが確実に吐出す
る状態(領域II)となり、hの値が1μm以上のときに
安定して確実にインクが吐出する状態(領域III)とな
る。また、板厚hが1μm以上のときには図12に見ら
れるようにb×δj 2/a3の値は必然的により小さい値
でインク吐出することが可能となり、より低い駆動電圧
で確実にインクを吐出することが可能となる。その場
合、b×δj 2/a3の値のしきい値は、インクが吐出で
きる仕事指標値Wkの値を考慮すると、約1.8×10-5
以下の値(領域VII)となり、その値以下でも、十分、
安定して確実にインクを吐出することができる。
【0071】図13は、前記(11)式におけるaとb
×h3×δj 2の値との関係を示す図である。図13に見
られるように短辺幅aの値を小さくすればするほど(幅
を狭くすればするほど)、b×h3×δj 2の値をより小
さくしてインクを吐出することができる。例えば、90
dpi以上の高密度ノズル配列によって、より高画質な
印字をしようとした場合、隣接する吐出室6との間の隔
壁の厚さを10μm程度としても、短辺幅aの値を27
0μm以下でインクを吐出することができる。
【0072】従って、b×h3×δj 2の値は、図13で
示されるaとb×h3×δj 2の値との関係線未満の値で
はインクは吐出しない状態(領域I)であり、その値以
上でインクが確実に吐出する状態(領域III)となる。
また、短辺幅aの値が270μm以下のときには図13
に見られるようにb×h3×δj 2の値は必然的により小
さい値でインク吐出することが可能となり、より低い駆
動電圧で確実にインクを吐出することが可能となる。そ
の場合、b×h3×δj 2の値のしきい値は、インクが吐
出できる仕事指標値Wkの値を考慮すると、約3.6×1
-34[m6]以下の値(領域VI)となり、その値以下で
も、十分、安定して確実にインクを吐出することができ
る。
【0073】図14は、前記(11)式におけるh3
3の値とb×δj 2の値との関係を示す図である。図1
4に見られるように、h3/a3の値を大きくすればする
ほど、b×δj 2の値をより小さくしてインクを吐出する
ことができる。しかしながら、前記したように90dp
i以上の高密度ノズル配列によって、より高画質な印字
をするためには、短辺幅aの値は270μm以下である
必要があり、また、振動板5の耐久性・信頼性を確保す
るためには、振動板5の板厚hは少なくとも1μm以上
としておく必要がある。故に、より高画質(90dpi
以上の高密度ノズル配列)で、且つ、振動板5の耐久性
・信頼性を確保しつつ、安定して確実にインクを吐出す
るようにするためには、h3/a3の値を少なくとも1/
2703(=1/19.683×106)以上としておく
必要がある。
【0074】従って、b×δj 2の値は、図14で示され
るh3/a3の値とb×δj 2の値との関係線未満の値では
インクは吐出しない状態(領域I)であり、その値以上
でインクが確実に吐出する状態(領域III)となる。ま
た、h3/a3の値が1/2703(=1/19.683×
106)以上のときには、図14に見られるように、b
×δj 2の値は必然的により小さい値でインク吐出するこ
とが可能となり、より低い駆動電圧で確実にインクを吐
出することが可能となる。その場合、b×δj 2のしきい
値は、インクが吐出できる仕事指標値Wkの値を考慮す
ると、約3.6×10-16[m3]以下の値(領域VIII)
となり、その値以下でも、十分、安定して確実にインク
を吐出することができる。
【0075】上述のように、本発明(発明2)の構成の
インクジェットヘッドでも、インクを安定して確実に吐
出させるために最低必要なヘッドの仕事指標値や寸法値
が明確となるため、仕様に合ったヘッドを容易に設計で
きるようになり、ひいてはインクジェットヘッドを短時
間で設計・作製することが可能となる。
【0076】(実施例)先ず、第1の基板1として、厚
さ200μmの両面研磨された(100)面方位のn型
単結晶シリコンウェハを使用し、そのウェハの両面に厚
さ1μmのSiO2膜を形成した。そのSiO2膜を耐エ
ッチング用のマスク材として、先ず、表面側よりそのマ
スクに振動室9の形状に相当するパターンをフォトリソ
により形成し、次いで、アルカリ液によりシリコンウェ
ハの異方性エッチングを施し、振動室9に相当する凹部
25を形成した。次に、前記同様に形成したSiO2
を耐エッチング用のマスク材として、裏面側よりそのマ
スクにノズル孔4,吐出室6,オリフィス7、及びイン
クキャビティ8の形状に相当するパターンをフォトリソ
により形成し、次いで、アルカリ液により、再度、シリ
コンウェハの異方性エッチングを施し、各パターンに相
当する凹部21〜24を形成した。最後に、シリコウェ
ハの両面に残留しているSiO2膜を全面除去すること
により、図1に示したような第1の基板1を作製した。
【0077】次に、第2の基板2として、厚さ1mmの
両面研磨されたパイレックスガラス基板(コーニング社
製#7740)を使用した。その上面に電極31,電極
リード部32,電極の端子部33を形成するために、A
u電極をスパッタリング成膜法により成膜、パターニン
グを行い、次に、電極部31,電極リード部32の絶縁
保護膜34としてSiO2膜を同様にスパッタリング成
膜法により成膜、パターニングを行い、端子部33を除
いた電極部31,32全体に被覆を施し、図1に示した
ような第2の基板2を作製した。
【0078】上述のようにして、第1の基板1,第2の
基板2を作製した後、アライメントを行い、前記陽極接
合法により、基板接合を行った。その際の接合条件は、
空気中大気圧において、接合電圧−500V、接合温度
400℃、接合時間10分間にて行い、接合電極として
Ptを利用し、接合を行った。更に、図1に示すよう
に、第1の基板1の上側にインク供給口14が形成され
たステンレス製の第3の基板3をエポキシ系接着剤にて
接合し、駆動電圧回路26を基板1と端子部33との間
に接続し、端子部33に正のパルス電圧を印加した。そ
して、図2に示すように、作製したインクジェットヘッ
ドのインク吐出試験を行った。
【0079】表3、及び、表4は、上記のインク吐出試
験の結果を示すものである。インクジェットヘッドの振
動板5の短辺幅a、同じく長辺長b、同じく板厚h、及
び振動板5の振動変位量δjを種々変化させ、上記のよ
うにして作製したインクジェットヘッド(ヘッドN〜
Z)のインクの吐出可否と吐出安定性、及び、インクが
吐出し始めたときの駆動電圧Vと本発明(発明2)で
定義したヘッドの仕事指標値Wkとを測定評価し、ヘッ
ド寸法値との関係を調べた結果である。なお、各ヘッド
によって振動板5と電極31との間のギャップ距離d0
は異なっている。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】表3の結果から分かるように、ヘッドOで
は前記仕事指標値Wkの値が1×10-10[N・m]以上
であるので安定してインクを吐出することが可能であっ
たが、ヘッドPでは振動板5の長辺長b,板厚h、及び
振動変位量δjが減少したために前記の仕事指標値Wk
値が4×10-12[N・m]未満となり、インクを吐出
することが不可能であった。また、ヘッドNではヘッド
Oに比べて振動板5の振動変位量δjが約1/3に減少
したためにインクを吐出することは可能であったが、前
記仕事指標値Wkの値が1×10-10[N・m]未満とな
ったためにインクの吐出が不安定となった。また、ヘッ
ドQではヘッドPに比べて振動板5の短辺幅aを約1/
3の長さに減少させたことにより、前記仕事指標値Wk
の値が4×10-12[N・m]以上となり、不安定では
あるがインクを吐出することが可能となった。また、ヘ
ッドRではヘッドQよりも更に振動板5の短辺幅aを減
少(ヘッドPに比べて約1/5の長さに減少)させたこ
とにより、前記仕事指標値Wkの値が1×10-10[N・
m]以上となり、安定してインクを吐出することができ
るようになった。また、ヘッドSではヘッドQに対して
振動板5の板厚hを2倍厚くしたことにより、前記仕事
指標値Wkの値が1×10-10[N・m]以上となり、安
定してインクを吐出することが可能となっている。
【0083】また、表4のヘッドT〜Wでは振動板5の
長辺長bを2000μm、その板厚hを2μm程度とし
て、振動板5の短辺幅aを変化させてインク吐出試験を
行った結果である。何れのヘッドも前記仕事指標値Wk
の値が1×10-10[N・m]以上であるので、安定し
てインクを吐出することが可能となっている。また、ヘ
ッドT,ヘッドUはb×δj 2/a3の値が1.8×10-5
以下の値となっており、他のヘッドVやヘッドWに比べ
て100V以下のより低い駆動電圧Vaでもって、十
分、安定してインクを吐出することが可能となってい
る。しかしながら、より高画質とするためにはよりノズ
ル密度を高める必要があり、そのため振動板5の短辺幅
aの長さを319μm(ヘッドTのノズル密度:75d
pi相当)から65μm(ヘッドWのノズル密度:30
0dpi相当)へ減少させるに従い、インク吐出時の駆
動電圧Vaも19V(ヘッドT)から355V(ヘッド
W)へと必然的に上昇してしまう。そこで、ヘッドXで
はヘッドWに対して同じ振動変位量δjでもって駆動電
圧Vaだけを100V以下に低下させるために振動板5
の板厚hを2.0μmから0.8μmへと薄くした結果、
駆動電圧Vaを355Vから90Vへと約1/4程度に
低下させることができた。しかしながら、ヘッドXを1
00時間程度連続的に駆動させた結果、振動板5にクラ
ックが発生し、インクが吐出したりしなかったりして、
インク吐出が不安定となった。
【0084】また、ヘッドU,V,W,Y,Zにおいて
は、全て90dpi以上の高密度ノズル配列が可能な振
動板5の短辺幅a(270μm以下の幅)での安定した
インク吐出が確認されており、特に、ヘッドY,ヘッド
Zでは、b×δj 2/a3の値、及びb×h3×δj 2の値と
もにより低い駆動電圧でインクを吐出できるしきい値以
下の値となっており、両ヘッドとも90dpi以上のノ
ズル密度において駆動電圧100V以下の電圧でインク
吐出が確認されている。ヘッドYでは同じ短辺幅a(ノ
ズル密度:100dpi相当)のヘッドUに対して振動
板5の板厚hを2μmから1.5μmへ薄くすることに
より、b×h3×δj 2の値を8.5×10-34[m6]から
3.6×10-34[m6]の値へとしきい値以下に低下さ
せ、ヘッドU(32V)に比べてより低い駆動電圧Va
(21V)でも、十分、安定してインクを吐出できるこ
とが確認された。また、ヘッドZではより低い駆動電圧
でノズル密度を高めるために、同じ短辺幅a(ノズル密
度:200dpi相当)のヘッドVに対して振動板5の
板厚hを2μmから1μmへ薄くし、また、長辺長bの
長さを2000μmから1000μmへと短くすること
により、b×δj 2/a3の値を6.5×10-5から1.8
×10-5の値へ、b×h3×δj 2の値を6.4×10-34
[m6]から2.3×10-34[m6]の値へとしきい値以
下に低下させ、200dpi相当の高ノズル密度におい
て、ヘッドV(142V)に比べてより低い駆動電圧V
a(44V程度)で、十分、安定したインク吐出を確認
することができた。
【0085】
【発明の効果】(1)請求項1,6記載の発明によれ
ば、安定して確実にインクを吐出することができ、ま
た、ヘッド設計が容易となるために作製期間を大幅に短
縮することが可能なインクジェットヘッドが提供でき
る。
【0086】(2)請求項2記載の発明によれば、より
安定して確実にインクを吐出することができるインクジ
ェットヘッドが提供される。
【0087】(3)請求項3記載の発明によれば、より
高画質(90dpi以上の高密度ノズル配列)において
も安定して確実にインクを吐出することができるインク
ジェットヘッドが提供される。
【0088】(4)請求項4記載の発明によれば、より
低い駆動電圧で安定して確実にインクを吐出することが
できるインクジェットヘッドが提供される。
【0089】(5)請求項5,8記載の発明によれば、
より高画質(90dpi以上の高密度ノズル配列)とな
っても、より低い駆動電圧で安定して確実にインクを吐
出することができるインクジェットヘッドが提供され
る。
【0090】(6)請求項7記載の発明によれば、ヘッ
ドの耐久性,信頼性を確保しつつ、より低い駆動電圧で
安定して確実にインクを吐出することができるインクジ
ェットヘッドが提供される。
【0091】(7)請求項9記載の発明によれば、ヘッ
ドの耐久性,信頼性を確保しつつ、且つ、より低い駆動
電圧でもって、より高画質(90dpi以上の高密度ノ
ズル配列)に安定して確実にインクを吐出することがで
きるインクジェットヘッドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を説明するためのヘッドの全体構成を
表す分解斜視図である。
【図2】 本発明の動作を説明するための図1のヘッド
を組み立てた装置全体の断面側面図である。
【図3】 図2のIII−III線から見たヘッドの上面図で
ある。
【図4】 本発明を説明するためのヘッドの振動板を表
す構成図である。
【図5】 本発明を説明するためのヘッドの振動板とイ
ンク吐出室を表す構成図である。
【図6】 請求項1に対応するインク吐出と仕事指標値
との関係を説明するための散布図である。
【図7】 請求項2に対応するインク吐出の関係を説明
するための関係図である。
【図8】 請求項3に対応するインク吐出の関係を説明
するための関係図である。
【図9】 請求項4に対応するインク吐出の関係を説明
するための関係図である。
【図10】 請求項5に対応するインク吐出の関係を説
明するための関係図である。
【図11】 請求項6に対応するインク吐出と仕事指標
値との関係を説明するための散布図である。
【図12】 請求項7に対応するインク吐出の関係を説
明するための関係図である。
【図13】 請求項8に対応するインク吐出の関係を説
明するための関係図である。
【図14】 請求項9に対応するインク吐出の関係を説
明するための関係図である。
【符号の説明】
1…第1の基板、2…第2の基板、3…第3の基板、4
…ノズル孔、5…振動板、6…吐出室(インク流路)、
7…オリフィス、8…インクキャビティ、9…振動室、
21…ノズル溝、22,24,25…凹部、23…細
溝、31…電極、32…電極リード(引き出し)部、3
3…端子部、34…保護膜、35…リード線。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクを吐出するためのノズルと、該ノ
    ズルに連通するインク流路と、該流路の一部に設けられ
    た振動板と、該振動板に対向して設けられた電極とを有
    し、前記振動板と前記電極との間に生じる静電気力を利
    用して、前記振動板を変形させて、前記流路内のインク
    を加圧して前記ノズルからインク液滴を吐出するインク
    ジェットヘッドにおいて、前記インク液滴が吐出すると
    きの前記振動板の振動変位量をδj、前記流路内のイン
    クが圧縮されたときの圧力をPj、前記振動板の面積を
    S、前記流路内のインクが圧縮されて該インクが受けた
    仕事指標値をWpとして、該Wpを Wp=δj×Pj×S で定義し、該Wpの値を1×10-8[N・m]以上、好
    ましくは4×10-8[N・m]以上としたことを特徴と
    するインクジェットヘッド。
  2. 【請求項2】 前記振動板の短辺幅をa、同じく長辺長
    をb、前記振動板の吐出時の振動変位量をδjとして、
    a×b×δj 2の値を8.5×10-23[m4]以上、好ま
    しくは2.5×10-22[m4]以上としたことを特徴と
    する請求項1記載のインクジェットヘッド。
  3. 【請求項3】 前記振動板の長辺長をb、前記振動板の
    吐出時の振動変位量をδjとして、b×δj 2の値を3.1
    ×10-19[m3]以上、好ましくは9.2×10-19[m
    3]以上としたことを特徴とする請求項2記載のインク
    ジェットヘッド。
  4. 【請求項4】 前記振動板の短辺幅をa、同じく長辺長
    をbとして、a×bの値を8.5×10-11[m2]以
    上、好ましくは2.5×10-10[m2]以上としたこと
    を特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッド。
  5. 【請求項5】 前記振動板の長辺長をbとして、bの値
    を3.1×10-7[m]以上、好ましくは9.2×10-7
    [m]以上としたことを特徴とする請求項3または4記
    載のインクジェットヘッド。
  6. 【請求項6】 インクを吐出するためのノズルと、該ノ
    ズルに連通するインク流路と、該流路の一部に設けられ
    た振動板と、該振動板に対向して設けられた電極とを有
    し、前記振動板と前記電極との間に生じる静電気力を利
    用して、前記振動板を変形させ、前記ノズルからインク
    液滴を吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記イ
    ンク液滴が吐出するときの前記振動板の振動変位量をδ
    j、前記振動板の単位面積当たりの剛性係数をkj、前記
    振動板の面積をS、前記振動板が変形して該振動板に蓄
    えられた仕事指標値をWkとして、該Wkを Wk=δj 2×kj×S で定義し、該Wkの値を4×10-12[N・m]以上、好
    ましくは1×10-10[N・m]以上としたことを特徴
    とするインクジェットヘッド。
  7. 【請求項7】 前記振動板の短辺幅をa、同じく長辺長
    をb、前記振動板の吐出時の振動変位量をδjとして、
    δj 2×b/a3の値を1.8×10-5以下としたことを特
    徴とする請求項6記載のインクジェットヘッド。
  8. 【請求項8】 前記振動板の板厚をh、同じく長辺長を
    b、前記振動板の吐出時の振動変位量をδjとして、b
    ×h3×δj 2の値を3.6×10-34[m6]以下としたこ
    とを特徴とする請求項6記載のインクジェットヘッド。
  9. 【請求項9】 前記振動板の長辺長をb、前記振動板の
    吐出時の振動変位量をδjとして、b×δj 2の値を3.6
    ×10-16[m3]以下としたことを特徴とする請求項7
    または8記載のインクジェットヘッド。
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