JP2001017450A - 歯科用補綴物適合試験用分離材 - Google Patents

歯科用補綴物適合試験用分離材

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 軟質材料で裏装された義歯などの歯科用補綴
物の適合試験を行うに際し、作業性や試験精度を低下さ
せることなく、試験後に硬化した適合試験材を歯科用補
綴物から剥離するときの分離性を向上させる。 【解決手段】 最大粒子径が500μmである粉体を分
離材として使用し、適合試験材適用前の歯科用補綴物表
面に該分離材を塗布する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、義歯などの歯科用
補綴物の適合試験を行う際に、補綴物と適合試験材等と
の分離性を向上させるために使用する分離材に関する。
【0002】
【従来の技術】歯科用補綴物であるクラウン、インレ
ー、ブリッジ、義歯等は、一般に硬質材料である金属、
セラミックス、レジン等により構成される。これらの歯
科用補綴物を適用する場合には、患者の口腔内の適用箇
所にこれら補綴物が適合するかどうかを試験しながら、
適合しない場合には適合するように補綴物を削る等して
微調整することが行われている。
【0003】義歯の適合試験においては、義歯床に適合
試験材と呼ばれるシリコーン系の硬化性ペーストを盛っ
た後に患者の口腔内に適用し、適合性試験材が硬化した
のちに取り出して義歯床面上で硬化した適合試験材の厚
さを目視により確認するのが一般的である。この場合、
上記の硬化体の厚さが均一に薄く全体的に下地が透けて
見える場合は適合性が良好であるが、硬化体の厚さが部
分的に厚い場合及び下地が部分的に露出している場合に
は適合不良であり、この適合不良の部分ついて微調整が
行われることとなる。
【0004】従来、義歯床にはレジン、金属等の比較的
硬質な材料が用いられており、この様な材質の義歯床に
対して上記の適合試験材を用いた場合には、適合試験材
の硬化物は、試験後に義歯床から容易に剥離することが
でき、微調整作業等を円滑に行うことが可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】近年、歯科用補綴物に
硬質材料と共に軟質材料が使用される機会が増加し、義
歯床においてもシリコーンゴム系の軟質材料で裏装され
たものが普及し始めている。
【0006】ところが、この様な軟質材料に対して前記
適合試験材を適用した場合には、試験後に硬化物を歯科
用補綴物から剥がすことが困難になるという問題がある
ことが判った。
【0007】本発明は、このような問題を解決するため
に、歯科用補綴物の軟質材料で構成される部分に適合試
験材を適用したときに、試験後硬化した適合試験材を歯
科用補綴物から分離(剥離)し易くするための分離材を
提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決するために、先ず、軟質材料の表面にワセリンや
ココアバターを塗布することにより分離性を向上させる
ことについて検討を行った。しかしながら、ワセリンや
ココアバターは、それ自体が粘度の高いペーストである
ため、表面に細かい凹凸が多数存在する軟質材料の表面
に薄く均一に塗布すること困難であり、適合試験の精度
が低下する場合があることが判明した。
【0009】そこで、分離材としては低粘度液体が有効
ではないかと考え、シリコーンオイル、界面活性剤、グ
リセリンなどの各種低粘度液体について分離性能の検討
を行った。しかしながら、これらを用いた場合には、1)
軟質材料の表面張力で弾かれて均一に塗布できない、2)
均一に塗布できたとしても充分な分離性が得られず、軟
質材料が傷つくことがある、或いは3) 適合試験材の硬
化を阻害してしまうといった問題が発生し、初期の効果
を得ることはできなかった。
【0010】その後、様々な材料を用いてその分離性能
の検討を行ったところ、適合試験材を適用する前に粉体
を軟質材料にまぶしたときには良好な分離性能が得られ
る場合があるという知見を得た。そして、更に検討を行
った結果、最大粒子径が500μm以下の粉末が分離材
として有効であることを確認し、本発明を完成するに至
った。
【0011】すなわち、本発明は、最大粒子径が500
μm以下の粉末からなることを特徴とする歯科用補綴物
適合試験用分離材である。該歯科用補綴物適合試験用分
離材は、水又は粘度が1〜2000P(ポアズ)の有機
溶媒と組み合わせて使用することもできる。
【0012】前記したように従来の硬質材料からなる歯
科用補綴物の適合試験を行う際に分離材を使う必要はな
く、歯科用補綴物適合試験用分離材という概念自体これ
まで無かったものである。本発明の分離材は、軟質材料
を用いた歯科用補綴物の適合試験を行うという新たな要
求に応えるために、新規に創出されたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の歯科用補綴物適合試験用
分離材(以下、単に分離材ともいう。)は、最大粒子径
が500μm以下の粉末からなるものであればその形
状、成分、組成は、特に限定されない。粒子の形状は球
状、破砕状、層板状などのいずれであってもよく、成分
は有機系、無機系、有機無機複合系のいずれであっても
よい。このような粉末材料を具体的に例示すると、通常
アルジネート印象材として使用されている粉末、片栗
粉、小麦粉、ポリメタクリル酸メチル樹脂粉末、石膏粉
末、通常埋没材として使用されている粉末、タルク粉
末、シリカ粉末、チタニア粉末、ベビーパウダーなどが
挙げられる。これら粉末は、単独で使用することもでき
るし、種類の異なるものを複数混合して用いることもで
きる。
【0014】本発明の分離材を構成する上記粉末の最大
粒子径は500μm以下である必要がある。粉末であっ
ても、その最大粒子径が500μmを越える粉末では分
離性が不十分でありなお且つ薄く均一に塗布することが
困難である。本発明の分離材である粉末の最大粒径は5
00μm以下であれば特に限定されないが、塗布性や分
離性の観点から層板状の形状である粒子の全体に占める
割合が10〜100%であるのが好適である。
【0015】この様な最大粒子径を有する粉末は、例え
ば、目の間隔が500μmより細かいふるいを通過させ
ることにより簡単に得ることができる。
【0016】本発の分離材は、適合試験材を盛り付ける
前に歯科用補綴物の表面、特に軟質材料を用いたものの
軟質材料部分の表面に塗布することにより良好な分離性
能を発揮する。しかも、適合試験材の硬化を阻害するこ
ともなく、試験後に硬化体を分離した後に、歯科用補綴
物の表面から水洗により簡単に除去することができる。
【0017】本発明の分離材を歯科用補綴物の表面に塗
布する方法は、特に限定されないが、ボトルなどの容器
から直接振り掛ける、ボトルから振り掛けた後に筆や指
で擦り付ける、紙等に分取した後に筆等で塗布するなど
の方法により好適に行うことができる。特に、本発明の
分離材の分離効果を最大限に発揮させるためには、水と
組み合わせて使用するのが好ましい。水との組み合わせ
方は特に限定さず、水性懸濁液として使用してもよい
が、塗布操作も簡単で均一に塗布できるという観点か
ら、本発明の分離材を塗布した後に水中に短時間浸漬す
る、または霧吹きで水を吹き付けるなどの処理によって
水と接触させるのが好ましい。
【0018】更に、最大粒子径が500μm以下の粉末
は、粘性率が1〜2000P(ポアズ)の有機溶媒とを
混合することでペースト状の性状とし、このペーストを
指や筆で擦り付ける等の方法によって好適に使用するこ
ともできる。有機溶媒の粘性率が2000Pを越える場
合は、歯科用補綴物の表面に薄く均一に塗布することが
難しく、試験精度が低下することがある。
【0019】この時使用できる有機溶媒は、その粘性率
(粘度)が1〜2000P、特に3〜100Pのもので
あれば特に限定されないが、除去性の観点から水溶性の
有機溶媒が好適である。本発明で好適に使用できる有機
溶媒を具体的に例示すれば、流動パラフィン、シリコー
ンオイルの他、水溶性の有機溶媒としてグリセリン、ポ
リエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポ
リエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポ
リビニルアルコール等が挙げられる。これら有機溶媒は
水溶液の形で使用することもできる。また、ペーストと
する時の有機溶媒の使用量(水溶液の場合は水溶液の使
用量)としては、最大粒子径が500μm以下の粉末1
00重量部に対して10〜1000重量部であるのが好
適である。
【0020】なお、本発明の分離材には、本発明の効果
を阻害しない範囲内で、顔料や香料等の添加剤を添加す
ることもできる。
【0021】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく
説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもので
はない。
【0022】実施例1 アルジネート印象材{(株)トクヤマ製、商品名:トク
ソーA−1α}を70メッシュの篩いを用いて篩い分け
し、通過分を分離材として使用した。なお、該分離材の
最大粒子径は、上記篩の呼び寸法と同じ210μmであ
る。
【0023】軟質裏装材{(株)トクヤマ製、商品名:
トクヤマソフトリライニング}を用いて厚さ1〜2mmの
硬化体を作製し、室温中で8ヶ月保管した。この硬化体
に上記の分離材を過剰に塗布させた後、その硬化体を軽
く叩いて余剰の粉末を除去した。表面に残った粉末の状
態を「塗布性」として評価したところ、薄く均一に塗布
されており良好な塗布性であった。
【0024】次いで、分離材が塗布された硬化体の上に
練和した適合試験材{(株)ジーシー製、商品名:ジー
シーフィットチェッカー}を用いて次のようにして分離
試験を行った。
【0025】まず、該適合試験材を練和後直ちに分離材
を塗布した上記の軟質裏装材硬化体に盛りつけ、下地の
色(ピンク色)が薄く見えるまで透明プラスチック板で
圧接した。3分後に透明プラスチック板を取り除き適合
試験材の「硬化性」を評価したところ、適合試験材は十
分に硬化していた。次いで、硬化した適合試験材を手で
剥がし、「分離性」を評価したところ、容易に分離する
ことができた。その後、水洗を行い「除去性」を評価し
たところ、分離材は軟質材料の表面から容易に除去され
た。
【0026】実施例2〜5 表1に示す粉末および篩を用いる他は実施例1と同様に
して篩い分けし、篩通過分を分離材とした。
【0027】
【表1】
【0028】各分離材を用いて実施例1と同様にして分
離試験を行い、塗布性、硬化性、分離性、および除去性
を評価した。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】なお、各項目の評価基準は、次のとおりで
ある。 塗布性・・・○:薄く均一に塗布できる。 △:薄く塗布できるが不均一である。 ×:薄く塗布できない(厚い)。 硬化性・・・○:十分に硬化した。 △:硬化が不十分である。 ×:硬化しない。 分離性・・・◎:極めて容易に剥がせる。 ○:容易に剥がせる。 △:剥がせるが軟質材料もちぎれる。 ×:剥がせない。 除去性・・・○:容易に除去できる。 △:なんとか除去できる。 ×:除去できない。
【0031】実施例6〜10 軟質裏装材{(株)トクヤマ製、商品名:ソフリライナ
ースーパーソフト}を室温20分で硬化させて厚さ1〜
2mmの硬化体を作製した。この硬化体を用いて実施例1
〜5で使用したのと同じ分離材について、適合試験材料
として適合試験材{(株)トクヤマ製トクソーフィット
テスター}を用いる他は実施例1と同様にして塗布及び
分離試験を行い、塗布性、硬化性、分離性、および除去
性を評価した。結果を表3に示す。なお、実施例6、
7、8、9、及び10では、それぞれ実施例1、2、
3、4、及び5で使用した分離材を用いている。また、
表3中の各評価項目の評価基準は前記した表2における
評価基準と同じである。
【0032】
【表3】
【0033】比較例1 シリカ粉末{(株)トクヤマ製}を24メッシュ(呼び
寸法710μm)の篩を用いて篩い分けし、通過せずに
残ったものを分離材として使用する他は実施例6〜10
と同様にして、塗布及び分離試験を行い、塗布性、硬化
性、分離性、および除去性を評価した。結果を併せて表
3に示す。
【0034】実施例11及び12 実施例6〜10で使用したのと同じ軟質裏装材の硬化体
に、実施例8で分離材として使用したのと同じタルク粉
末(実施例11)と実施例10で分離材として使用した
のと同じベビーパウダー(実施例12)をそれぞれ別に
均一に塗布した。その後、各試料を水中に1秒間浸漬し
て取り出してから表面に付着した水滴を払い落とし、表
面に残った粉末の塗布性を評価した。
【0035】その後、実施例6〜10と同様にして分離
試験を行い、硬化性、分離性、および除去性を評価し
た。結果を併せて表4に示す。なお、表4中の各評価項
目の評価基準は前記した表2における評価基準と同じで
ある。
【0036】
【表4】
【0037】実施例13 実施例8で分離材として使用したのと同じタルク粉末1
gをグリセリン{和光純薬成、粘性率945cP(25
℃)}2gと混合することでペースト状の性状とした。
このペースト状の分離材を実施例6〜10で使用したの
と同じ軟質裏装材の硬化体に指で塗布した。その後、実
施例1と同様にして分離試験を行い、塗布性、硬化性、
分離性、および除去性を評価した。結果を合わせて表4
に示す。なお、表4中の各評価項目の評価基準は前記し
た表2における評価基準と同じである。
【0038】比較例2〜6 実施例6〜10と同様にして硬化させた軟質裏装材に、
表5に示す各分離材を指で塗布した。その後、実施例1
と同様にして分離試験を行い、塗布性、硬化性、分離
性、および除去性を評価した。結果を併せて表5に示
す。なお、表5中の各評価項目の評価基準は前記した表
2における評価基準と同じである。
【0039】
【表5】
【0040】
【発明の効果】本発明の分離材は歯科用補綴物の表面に
均一に薄く塗布できるために、適合試験の精度を低下さ
せることがない。また、適合試験材の硬化を阻害するこ
ともなく、試験後に適合試験材硬化体の歯科用補綴物か
らの剥離するときの分離性を向上させる。しかも、使用
後は水洗によって簡単に洗い流すことが出来るので、そ
の後の微調整作業等も円滑に行うことができる。
【0041】このような優れた特徴を有する本発明の分
離材を用いることにより、軟質材料を使用した歯科用補
綴物について適合試験を効率的に行うことが可能とな
り、本発明の臨床的な価値は大きい。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 最大粒子径が500μm以下の粉末から
    なることを特徴とする歯科用補綴物適合試験用分離材。
  2. 【請求項2】 最大粒子径が500μm以下の粉末およ
    び水からなることを特徴とする歯科用補綴物適合試験用
    分離材。
  3. 【請求項3】 最大粒子径が500μm以下の粉末およ
    び粘性率が1〜2000Pの有機溶媒からなることを特
    徴とする歯科用補綴物適合試験用分離材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2001329229A (ja) * 2000-05-19 2001-11-27 Tokuyama Corp シリコーンゴム用接着剤
JP2012061214A (ja) * 2010-09-17 2012-03-29 Tokuyama Dental Corp シリコーン系軟質材料が裏装された義歯床の適合試験用分離材
CN104000668A (zh) * 2014-05-23 2014-08-27 深圳职业技术学院 一种可摘局部义齿铸造金属支架适合性的定量评价方法

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