【発明の詳細な説明】
オリゴヌクレオチドリンカーおよび
固定化および結合オリゴヌクレオチドを用いる技術発明の分野
本発明は、概して、一本鎖DNA分子の製造、そして更に詳しくは、固定化金
属アフィニティークロマトグラフィーを用いる一本鎖DNAの製造に関する。発明の背景
分子生物学において最も広く用いられる操作の多くは、プローブまたは鋳型と
しての一本鎖DNAの使用に依る。最大約100個までの残基を含有するDNA
の一本鎖は、固相合成によって容易に製造できるが、更に長いオリゴデオキシヌ
クレオチドは、典型的に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの酵素法によっ
て生じさせなければならない。混合配列DNAの合成の生化学的手順は、二本鎖
生成物を生じるので、所望の鎖をその相補物から分割する方法が必要である。こ
のような分割は、二つの相補鎖の寸法および電荷などの巨視的な物理的性質の類
似性によって、および尿素またはグアニジニウム塩酸塩などの強変性剤の存在下
で分割が行われる必要があることによって難しいものとなっている。
オリゴヌクレオチド上に単一ビオチンを結合した後、そこにアビジンまたはス
トレプトアビジンを固定されている固体マトリックスを用いてそのオリゴヌクレ
オチドを固定する技術がある。このアプローチでの問題は、その技術が有効であ
るために必要な結合が、適当に折畳まれているタンパク質に依存していることで
ある。したがって、その技術は、強変性条件下で用いることができない。更に、
その技術を、表面プラスモン共鳴実験のために一本のDNA鎖を表面固定するの
に用いようとする場合、そのアビジン/ビオチンの組合せは、その技術が、固定
された鎖に対する一本鎖のDNAの結合を検出するのに用いられた場合に正確さ
を欠くことがありうる充分な質量を表面に対して加える。
したがって、本発明の目的は、DNAなどのオリゴヌクレオチドまたは一本鎖
のDNAを別の残基または表面に対して結合させる向上した技術を提供すること
、およびDNAの所望の鎖をその相補物から分割することである。発明の概要
本発明は、金属イオンを配位することができる結合残基に対して結合したヌク
レオチド、すなわち、式Ln−Ny(式中、Nはヌクレオチドであり且つLは、金
属イオンを配位することができる残基であり、nは少なくとも1であり、そして
yは少なくとも1である)を有する種を提供する。一つの実施態様によれば、Ny
はDNAであり、そしてLは、nが約6であるヒスタミニルプリンでありうる
。
もう一つの態様によれば、本発明は、式R−Ch−M−Ln−Nyを有する種を
提供する。この態様によれば、Rは、表面に対して結合されうるまたは化学種若
しくは生物学的種に対して結合されうる化学残基である。Chは、金属イオンを
配位することができるキレート化剤であり、Mは、そのキレート化剤によって配
位された金属イオンであり、Nはヌクレオチドであり、Lは、金属イオンを配位
することができる残基であり、そしてnおよびyはそれぞれ少なくとも1である
。
キレート化剤は、一つの実施態様によれば、四座キレート化剤、例えば、ニト
リロトリ酢酸である。
本発明はまた、表面上に固定され、そしてオリゴヌクレオチド鎖の変性を引き
起こす条件下で相補鎖をその相補鎖から除去することができない程度に表面上に
更に固定されているいずれの相補鎖に対してもハイブリッド形成しない一本鎖オ
リゴヌクレオチドを提供する。その一本鎖の固定化オリゴヌクレオチドはまた、
固定化された状態のままで、2M尿素より苛酷な条件に耐えるであろう。その鎖
はDNAの一つの鎖でありうる。
もう一つの態様によれば、本発明は方法を提供する。その方法は、オリゴヌク
レオチドの第一および第二相補鎖を提供し、固相表面をそれら第一および第二鎖
と接触させ、そして第一鎖をその表面で固定させることを含む。第二鎖は表面で
固定されることなくその表面から取り除かれる。一つの実施態様において、この
態様は、DNAの第一および第二相補鎖を流動媒体中で提供し、その流動媒体を
固相の表面を越えて通過させ、そして第一鎖をその表面で固定させ、同時に第二
鎖を固定させることなく流動媒体によってその表面から除去することを含む。
本発明の様々な態様を、種々の方法で組合せることができる。例えば、表面上
に固定され、そして変性を引き起こす条件下で相補鎖を除去することができない
程度に表面上に更に固定されているいずれの相補鎖に対してもハイブリッド形成
しない一本鎖オリゴヌクレオチドを、上のLn−NyまたはR−Ch−M−Ln−
Nyなどの結合を介して固定することができる。更に、その方法は、オリゴヌク
レオチドの固定化を促進しうる種のいずれかを用いて実施することができる。
本発明の他の利点、新規な特徴および目的は、添付の図面に関連して考えた場
合、次の発明の詳細な説明から明らかになるであろう。図面の簡単な説明
図1は、金属イオンに対して配位されて結合した結合残基を介して固相表面に
対して固定化された二本鎖DNAの略図である。
図2は、一組の実施例で用いられたプライマーおよび二本鎖PCR鋳型を模式
的に図示する。
図3は、本発明の技法を用いるDNA鎖分割の変性ポリアクリルアミドゲル電
気泳動分析のフォトコピーである。発明の詳細な説明
Min,C.,Cushing,T.Verdine,G.,”Template-Directed Interference Footprin
ting of Protein-Adenine Contacts”,J.Am.Chem.Soc.1996,118,6116-6120;お
よびMin,C.Verdine,G.,”Immobilized Metal Affinity Chromatography of DNA,
”Nucleic Acids Res.1996,24,3806-3810は両方とも、本明細書中に援用される
。
本発明は、オリゴヌクレオチドの別の残基に対するまたは固相の表面に対する
結合のための結合性官能基を提供するが、ここにおいて固相は、オリゴヌクレオ
チドを必要とする手順に関連して用いられる媒体中に不溶性の何等かの材料とし
て定義される。その技法は、例えば、クロマトグラフィー固相などの固相表面に
対して、または表面プラスモン共鳴(SRP)チップ(SPRの論評については
、例えば、Sternberg,ら,“Quantitative Determination of Surface Concentr
ation of Protein with Surface Plasmon Resonance Using Radiolabeled Prote
ins”,Journal of Colloid and Interface Science,43:513-526,1991,およびそ
の参考文献を参照されたい)などのバイオセンサー要素の表面に対してオリゴヌ
クレオチドを結合するのに用いることができる。その技法はまた、例えば、オリ
ゴヌクレオ
チドをバイオアッセイで用いられるビーズ若しくはプレートの表面に対して、蛍
光標識などの標識に対してまたは別の分子若しくは固体物質に対して結合するの
に用いることができる。
本発明は、一般式Ln−Ny(式中、Nyは、DNA中の典型である天然若しく
は合成の一本鎖若しくは多重鎖オリゴヌクレオチドまたは一本のDNA鎖であり
、そしてLnは結合官能基であり、ここで、Lは金属イオンを配位することがで
きる連結残基であり、そしてnは少なくとも1、好ましくは少なくとも2、そし
て更に好ましくは少なくとも5である)を有する種を提供することを包含する。
好ましい実施態様によれば、nは2〜10であり、そして最も好ましくは約6で
ある。Lは、例えば、オリゴヌクレオチド主鎖のエステル結合を介してオリゴヌ
クレオチドに対して、化学結合しうる分子であり、そしてLnは、下記の一般式
Iを有する。
式中、Zは有機残基であり、そしてYは、金属イオンを配位する能力を有するリ
ガンドであり、ZおよびYは一緒に、オリゴヌクレオチド配列中へまたはその上
へのLnの包含を可能にする。当業者は、YおよびZを適当に選択して、オリゴ
ヌクレオチド配列との適合性の必要条件を満たすことができる。ZおよびYは、
単一の有機残基がオリゴヌクレオチド配列と適合性の官能基を与え、そして更に
、金属イオンを配位するような単一残基でありうる。典型的に、Zは、約1〜約
10個の炭素原子の長さの炭化水素鎖または環状炭化水素基であって、場合によ
り、ヘテロ原子によって中断されている。本明細書中で用いられる「炭化水素」
とは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルカ
リル、アラルキル等を含む意味である。ヘテロ基には、−O−、−CONH−、
−CONHCO−、−NH−、−CSNH−、−CO−、−CS−、−S−、−
SO−、−(OCH2CH2)nR(但し、n=1〜10)、−(CF2)n−(但
し、n=1〜10)、オレフィン等が含まれうる。
Y(またはYおよびZ一緒に)は、金属アフィニティークロマトグラフィー固
相上に固定された金属イオンなどの金属イオン上のフリーの配位部位を、固相に
よるイオンの完全な配位を伴なうことなく配位することができるリガンドである
(例えば、Hochuliら,”New Metal Chelate Adsorbent Selective for Protein
s and Peptides Containing Neighboring Histidine Residues”Journal of Chr
omatography,411(1987)177-184を参照されたい)。Yは、Zについて上に定義の
通りでありうるが、好ましくは、金属イオン上の空の配位部位に向けることがで
きる−N−、アルコール、チオール、カルボキシレート(カルボン酸を含む)等
のような基を含む。イミダゾール、フェナントロリン、アデニン、シトシンおよ
びチミンなどの−N−を含む環状および複素環式有機化合物が適している。更に
、ヒスチジン、リシン、システイン、メチオニン、アスパラギン、チロシン、グ
ルタミン、グルタミン酸およびアスパラギン酸などのこれらの基準を満たすアミ
ノ酸が適している。ヒドロキサム酸などの種も適している。若干の場合、上の残
基はZとして働くことができ、上の異なるものまたは別の残基はYとして働き且
つ金属イオンに対する配位の基準を満たす。例えば、プリン、チミン、アデニン
、シトシンまたは組合せは、Zとして働きうるし、別の核酸、アミノ酸、または
窒素含有環状、多環式若しくは複素環式化合物は、Yとして働きうる。例えば、
プリン、シトシンまたはアデニンがZとして用いられる場合、利用可能な−NH2
−基は、例えば、ヒスタミンによって規定されるYを結合するのに用いること
ができる。好ましい実施態様によれば、6−ヒスタミニルプリンはYを規定し、
そしてZは環状エーテルである(II,下記)。 種Ln−Nyは、目的の残基または表面に対して結合しているかまたは結合する
ことができるキレート化剤によって部分的に配位した金属イオンと一緒に用いら
れる。すなわち、それらの種は、式
R−Ch−Ln−Ny (III)
(式中、Rは、化学的または物理的残基であり、Chは、金属イオンを配位する
ことができるキレート化剤であり、そしてMは、そのキレート化剤によって配位
された金属イオンである)の組合せで用いられる。Rは、金ゾルなどの粒状種、
蛍光標識などの標識、別の種との相互作用のための結合パートナーなどの目的の
生体分子、クロマトグラフィー固相、または何等かの望ましい表面若しくは種に
対する種IIIの結合に作用しうる結合残基若しくは結合可能残基でありうる。種I
IIが結合している特定の粒状種または表面は重要ではないが、本発明は、Lnに
よってNyをRに配位する能力にある。
1994年9月26日出願の、現在来国特許第5,620,850号であり、本明細書中に援
用された同時係属、同一所有権の米国特許出願第08/312,388号は、本発明で用い
るのに適したChおよびMの種々の組合せを記載している。具体的に、金属イオ
ンは、好ましくは、少なくとも4個の配位部位、好ましくは、6個の配位部位を
有するものから選択される。適当な金属イオンの非制限リストには、Co3+、C
r3+、Hg2+、Pd2+、Pt2+、Pd4+、Pt4+、Rh3+、Ir3+、Ru3+、C
o2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Pb2+、Mn2+、Fe3+、Fe2+、A
u3+、Au+、Ag+、Cu+、Mo2 2+、Tl3+、Tl+、Bi3+、CH3Hg+、
Al3+、Ga3+、Ce3+、UO2 2+およびLa3+が含まれる。
キレート化剤は、好ましくは、二座、三座および四座のキレート化剤から選択
され、そしてキレート化剤が金属イオンを配位する場合に、金属の少なくとも2
個のフリーの配位部位が残るように、金属イオンと組み合わせて選択される。キ
レート化剤および金属は、金属イオンがキレート化剤によって表面で固定された
状態のままであるのに充分な程度の安定性でキレート化剤が金属イオンを配位す
ることができるように選択される。
更に、キレート化剤は、そのリンカー残基によって残基Rに対して共有結合で
きるが、共有結合によって妨げられず且つ金属イオンを配位できるキレート化残
基を残すように、キレート化残基および非キレート化リンカー残基を有するもの
として選択される。或いは、キレート化剤は、そのような合成がキレート化残基
を妨げない状態で残す場合、非キレート化リンカー残基を含むように常套の有機
合成によって修飾されうるものとして選択することができる。当業者は、非キレ
ート化リンカー残基が、例えば、エステル結合の形成、アミド結合の形成、チオ
ール置換およびチオールエーテル形成等のためのアミン、アルコール、カルバメ
ート、カルボン酸、チオール、アルデヒド、オレフィン等のような化学結合に適
当な官能基を与えるはずであることを理解するするであろう。
上の考察を留意して、適当なキレート化剤および対応する金属イオンは、当業
者によって選択されうる。このような選択にしたがい、“Chelating Agents and
Metal Chelatesi”,Dwyer,F.P.;Mellor,D.P.,Academic Press,および“Critica
l Stability Constants”,Martell,A.E.;Smith,R.M.,Plenum Press,New Yorkを
参照することができる。これらの著作は、種々のキレート化剤を記載し且つキレ
ート化剤と金属イオンとの間の配位の安定性を論評している。好ましくは、キレ
ート化剤および金属イオンは、その組合せの水溶液中での解離定数が、生理学的
pHにおいて10nMより良いように、すなわち、10nMの濃度において、金
属イオンの少なくとも半分がキレート化剤によって配位されるように選択される
。
適当なキレート化剤の非制限例リストには、ニトリロトリ酢酸、2,2’−ビ
ス(サリチリデンアミノ)−6,6’−デメチルジフェニルおよび1,8−ビス
(a−ピリジル)−3,6−ジチアオクタンが含まれる。
種IIIを用いる一つの好ましい配置の一例として、図1を参照する。ここにお
いて、固相表面に対して結合した種25は、オリゴヌクレオチド、特に、第一鎖
12および6個のヒスタミニルプリンによって規定される結合性官能基(Ln)
16を含む第二の相補鎖14を含むDNA10を含み、ヒスタミニルプリンの内
2個(それぞれ、18および20)は、金属イオン22に対して配位されている
。金属イオン22は、キレート化剤24(ニトリロトリ酢酸誘導体;図示された
通り)によっても配位され、これは、金属イオンの6個の配位部位の内4個を配
位して、結合性官能基16に向けられうる2個のフリーの配位部位を残している
。キレート化剤24は、リンカー26(炭化水素鎖、図示された通り)によって
固
相30の表面28に対して結合している。キレート化剤24の、リンカー26を
介する表面28に対する結合は、共有結合等のような何等かの手段によって達成
されうる。
一本鎖オリゴヌクレオチドもまた、本発明により、図1で示されたように有効
に固定される。一つの実施態様によれば、リンカー26は、表面28で複数のリ
ンカー26の自己集合単層の形成を促進するものとして選択され、そしてリンカ
ー26は、表面28に対して結合している官能基中のキレート化剤の反対側の末
端で終結し、それによって自己集合した単層の形成を促進する。自己集合した単
層の一部分として表面で固定された金属配位キレート化剤のこのような配置は、
上で参照された現在は米国特許第5,620,850号の同一所有権の同時係属米国特許
出願第08/312,388号に記載されている。自己集合単層形成種は、本明細書中で援
用されたKumarおよびWhitesidesの1996年4月30日発行の米国特許第5,512,131号
にも記載されている。キレート化剤24を含有する自己集合単層が、結合性官能
基16を含有するDNA10のような種Ln−Nyと一緒に用いるために与えられ
る場合、自己集合した混合単層(上で参照された出願第08/312,388号および米国
特許第5,620,850号で定義の通り)、すなわち、種25以外の少なくとももう一
つの自己集合単層形成種の規則正しい集合を含む異種の自己集合単層を形成する
ことは好都合でありうる。約50%未満の種25、および約50%を越える別の
種(例えばLnまたはNyと相互作用しない残基で終結するもの)により規定され
る異種単層、更には、約30%未満の種25または約20%未満の種25等の比
率を有するものを形成することができる。
Mに対する結合性官能基16の配位が、二つの隣接した連結残基Lによる結合
(図1で図示されたような、ヒスタミニルプリンのH)または別の配置を含んで
いてよいことは理解されるはずである。更に、結合性官能基16がMでフリーの
配位部位を配位する能力を有する限りにおいて、結合性官能基16は、隣接した
連結残基Lおよび/または連結能力がない1個若しくはそれ以上の中間体残基に
よって隔てられた連結残基Lを含んでいてよい。
再度式Iを参照すると、Y(およびZが配位能力を有する場合、Zとの組合せ
でのY)およびnは、例えば、オリゴヌクレオチドを固相で固定するように金属
イオンに対して配位されたオリゴヌクレオチドを必要とする手順の経過中にオリ
ゴヌクレオチドが金属イオンから離れた状態にならない程度にオリゴヌクレオチ
ドを金属イオンに対して結合するのに充分な配位能力を有するオリゴヌクレオチ
ドを提供するように選択されるべきである。しかしながら、配位は、Lnが金属
イオンがキレート化剤から取除かれる(したがって、例えば、固相、標識または
他の残基から取除かれる)程度にキレート化剤による金属イオンの配位と拮抗す
るほど強くてはならない。例えば、ほとんどの場合、エチレンジアミン四酢酸な
どのリガンドは不適当である考えられる。当業者は、“Chelating Agents and M
etal Chelates”,Dwyer,F.P.;Mellor,D.P.,Academic Press,および“Critical S
tability Constants”,Martell,A.E.;Smith,R.M.,Plenum Press,New Yorkを参照
して、適当な基Y(および場合によりZ)、およびフリーの配位部位の具体的な
数を含めた具体的な金属イオンについて反復単位数nを選択することができる。
若干の場合、配位が、本発明において用いるのには充分であるが、金属イオン
がキレート化剤から取除かれるほど安定ではないかどうかを確認するために、具
体的なLn/M−Ch系を調べることは好都合でありうる。例えば、結合した結
合性官能基Lnを含む2個程度の少ない数のまたは最大約6個または8個までの
ヌクレオチドを含有する極めて簡単なポリヌクレオチド、すなわち、3’−NN
NNN−L6(但し、Nはいずれかのヌクレオチドまたは種々のヌクレオチド)
を製造することは、当業者にとって常套の実験の範囲内である。次に、試験オリ
ゴヌクレオチドを、T4ポリヌクレオチドキナーゼと一緒に、続いてγ32P−A
TPと一緒に混合することによって5’末端を放射性標識することができる。次
に、そのオリゴヌクレオチドを、固定され配位された金属イオンを含有する樹脂
のビーズと一緒に混合することができ、ビーズを洗浄し、そして放射能がビーズ
に存在するかどうかについて確認を行うことができる。放射能が存在する場合、
L(すなわち、YまたはYおよびR一緒に)およびnの選択は、オリゴヌクレオ
チドを固定するのに充分であるが、金属イオンがキレート化剤から取除かれるほ
どではない配位能力を与えるのに適当である。
放射能がビーズに存在しない場合、L、n組合せが不十分な配位を引き起こす
かまたは金属イオンが取除かれるほど過度に配位を引き起こすかの確認は、ビー
ズおよび/またはビーズをフラッシするのに用いられた溶液を紫外分光分析また
はICPに供して、金属イオンの位置を確認することによって行うことができる
。これら簡単なスクリーニング技術は、当業者によって、具体的な手順において
有用なDNAフラグメントなどの完全なオリゴヌクレオチドの合成を必要とする
ことなく行うことができる。
若干の場合、カラムからの溶離の場合と同様、金属イオンからリンカー−ヌク
レオチドを分離できることが望ましいし、そして若干の場合、本質的に不可逆な
結合が望ましいと考えられる。したがって、次の試験として、ビーズを、200
mMイミダゾールなどの溶離液でフラッシすることができ、そして放射能がまだ
ビーズに存在するかどうかについて確認を行うことができる。
本発明はまた、ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジン結合
を介する、一本鎖オリゴヌクレオチドの表面での固定化にまさる改良を示す。そ
の結合は、僅か最大2モルまでまたはそれ未満の尿素の条件に耐えるであろう。
本発明は、2モル尿素より苛酷な条件に耐える固定化を伴なう。
本発明のこれらおよび他の実施態様の機能および利点は、下記の実施例から更
に充分に理解されるであろう。次の実施例は、本発明の利点を例示するためのも
のであるが、発明の完全な範囲を示しているのではない。実施例1:金属イオンを配位することができる残基を含むヌクレオチドの合成
その目的の残基(式Ln−Nyを有する)の包含によって金属イオンを配位する
ことができるヌクレオチド、具体的には、DNAの5’末端に付加された6個連
続した6−ヒスタミニルプリン残基を含有するDNA配列決定用プライマーを合
成した。6−ヒスタミニルプリン残基は、報告された手順と同様に、コンバーテ
ィブルヌクレオチド法によって導入された(Ferenz,A.E.;Verdine,G.L.,J.Am.Che
m.Soc.1991,113,4000-4002;Ferenz,A.E.;Verdine,G.L.Nucleic Acids and Mole
cular Biology:Eckstein,F.,Lilley,D.M.J.監修;Springer-Verlag,Berlin,1994
;8巻,14-40頁中)。簡単にいうと、dH残基の代わりにO6−フェニル−2’
−デオキシイノシン(φdI)を含有する樹脂結合オリゴヌクレオチドを、温和
なアンモニア処理(濃NH4OH,nt,4b)によって樹脂から
脱保護し、凍結乾燥させた後、5M水性ヒスタミンで処理して(55℃,14時
間)、φdI残基をdHに変換した。粗製オリゴヌクレオチドを、変性ポリアク
リルアミドゲル電気泳動によって精製した。追加のdG残基を5’末端に付加し
て、ポリヌクレオチドキナーゼを用いる有効な末端標識を確実にした。
本発明のIMACに基づく方策が有意の実用的価値を持つためには、それは、
PCR増幅された二重らせんDNAをその二つの成分鎖に分割することができな
ければならない。この応用を直接的に調べるために、本発明者は、一つのH6標
識プライマーと一つの非修飾プライマーを用いて、プラスミドpUC18−mA
RRE2の183塩基対セグメントを増幅させ、それによって二重らせん産物の
一方の鎖だけにH6標識を取付けた。PCR増幅用のDNA鋳型pUC18−m
ARRE2は、ネズミインターロイキン−2エンハンサーのセグメントをBam
HI部位中に挿入することによって市販のクローニングベクターpUC18から
誘導された(Chen,L.;Jain,J.;Oakley,M.G.;Glover,J.N.M.:Dervan,P.B.:Hogan,
P.G.:Rao,A.;Verdine,G.L.Curr.Biol.1995,5,882-889)。pUC18および近縁
のものは、細菌クローニングにおいてより広く用いられている。非結合および結
合画分それぞれに900μlの無水エタノール(20℃で貯蔵された)を加えた
後、それら試験管を軽くボルテックスし、乾燥粉末CO2上で30分間冷却した
。それら試験管を16,000×gで30分間ミクロ遠心分離した。上澄みを除
去し、そしてペレットを200μlの80%水性EtOH(−20℃)で洗浄し
た。エタノール溶液の除去後、試験管を遠心凍結乾燥(SpeedVac,Savant)によ
って乾燥させた。それぞれの乾燥試験管に対して、50μlのTE緩衝液を加え
た。DNA濃度はUV分光測光で測定された。「上部」および「下部」鎖の表示
は、図2の地図で示された配列を意味する。「上部」鎖は、lacZ’αペプチ
ドのコーディング鎖にも対応し、その一部分は、pUC18のポリリンカー領域
内でコードされている。すなわち、プライマー1a+2bを用いて生成されたP
CR産物は、「上部」鎖のみにH6標識を有するが、2a+1bを用いて生成さ
れたものは、「下部」鎖のみにH6標識を有するであろう。これらの反応で形成
されたPCR産物の収量は、非修飾プライマーのみを用いる平行した反応(デー
タは示されていない)で見られたより少なくはなかったので、H6
標識はPCR増幅に悪影響を与えないことが示された。
プライマー1a/1bは、プラスミドpUC18−mARRE2の「上部」鎖
のストレッチ部分(影付き)と一致する配列を含み、それらは、PCRの際に右
方向(5’−3’)に伸長する。プライマー2a/2bは、pUC18−mAR
RE2の「下部」鎖のストレッチ部分(影付き)と一致する配列を含み、それら
は左方向に伸長する。プライマー1aおよび2aの影付きの配列はH6標識を示
す。EおよびHはそれぞれ、pUC18ポリリンカーのEcoRIおよびHnd
III部位を示し、ネズミIL−2エンハンサー(mARRE2,斜線)のストレ
ッチ部分をBamHI部位に挿入してpUC18−mARRE2を生じた。(c
)一方の鎖にH6標識を含有する二重らせんDNAを製造するPCR増幅、およ
びIMACを用いる二つの構成鎖の分割の手順の略図。実施例2:表面でのLn−Nyの固定化
金属イオンを配位することができる残基を含むヌクレオチドを表面で固定化し
た。具体的には、Ni2+荷電キレート化樹脂上で選択的滞留性を有するDNAを
与えるH6標識の能力を評価するために、H6で標識されたオリゴヌクレオチド(
2a/2b)およびそれらの未修飾対応物(1b/2b)を、32Pで5’末端標
識した後、平行して、Ni2+−ニトリロトリ酢酸(NTA)−アガロース樹脂を
通過させた。特に、PCR産物を6−Mグアニジニウム・HCl中で変性させた
後、Ni2+−NTA−アガロースと一緒にバッチ法でインキュベートした。実施例3:DNAの第一および第二相補鎖の第二鎖の選択的除去による第一鎖の 表面での固定化、並びに結合鎖対非結合鎖の定量的測定
実施例2の手順の後、H6標識は、表面、具体的にはNi2+−NTA−アガロ
ース上に選択的に且つ可逆的に滞留する能力をオリゴヌクレオチドに対して与え
ることを示した。特に、その技法が、表面上に固定化され、そしてオリゴヌクレ
オチド鎖の変性を引き起こす条件下で相補鎖をその相補鎖から除去することがで
きない程度に表面上に固定化されているいずれの相補鎖に対してもハイブリッド
形成しない一本鎖オリゴヌクレオチドを生じることを示した。
非結合DNAを含有する上澄みの除去後、樹脂を洗浄し、そして結合DNAを
200mMイミダゾールで溶離した。粗製PCR産物およびIMAC工程からの
二つのDNA含有画分のアリコートを、32Pで5’末端標識し、そして変性ポリ
アクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分析した。鎖分割の検定とし
てのPAGEの使用は、PCRにより生成した相補鎖に相対して僅かに減少した
H6標識DNA鎖の移動度によって可能になった。非修飾鎖に相対して遅れたH6
標識鎖の移動度は、pH8でのその6個のイミダゾール側基の部分的な陽電荷お
よびPCRの際のH6の反対側のT6伸長部分の不完全な重台による一層大きい長
さに起因しうる。鎖の同一性は、一つの32P標識プライマーおよび一つの非放射
性プライマーを用いたPCR反応のPAGE分析によって別々に確認された。こ
の移動度の僅かな差は、IMACによる鎖分割を検定する好都合な手段を与える
が、それは、ゲル電気泳動および抽出による分離用鎖分割を可能にするほど充分
に大きくはない。
図3は、IMACを用いるDNA鎖分割の変性PAGEの結果のフォトコピー
である。3つのレーンのそれぞれのパネルは、1対のPCRプライマーを用いて
得られた結果を示す。一方(1aまたは2a)はH6標識を含有し、他方(それ
ぞれ、2bまたは1b)は未修飾である。C(レーン1および4):IMAC分
割前のPCRによって直接的に得られた鎖の混台物を示す対照;U(レーン2お
よび5):IMACからの非結合画分;B(レーン3および6):200mMイ
ミダゾールで溶離後のIMACからの結合画分。
図3のIMACからの非結合画分は、主として、より速い泳動種を含み、これ
は、それぞれの非修飾鎖に該当するが、イミダゾールで溶離された結合画分は、
主として、それぞれのH6標識鎖を含有した。鎖分割法の反復実験からの定量的
ホスホロイメージング分析は、非修飾鎖が、典型的に、非結合DNAの>90%
を含み且つH6標識DNAが結合画分の95%を含むことを示した。したがって
、本発明者は、IMACは、独特にH6で標識されたPCR産物をその二つの成
分鎖に明確に分割すると結論付けた。微量のものを除く全ての結合放射能が、2
00−mM水性イミダゾールでの洗浄で樹脂から溶離されることができた。実施例4:表面固定化Nn−Nyを用いる鋳型指示性重合
PCR−IMAC配列によって生じた一本鎖DNAの生物活性を検定するため
に、本発明者は、分割された鎖をサンガージデオキシ配列決定実験において鋳型
として用いた。この実験は、本発明にしたがって、表面に対して結合できるよう
に合成されたオリゴヌクレオチド鎖を用いて行われたが、実験中にそれらを表面
に対して結合させなかった。したがって、この実験は、本発明によって表面で固
定された一本鎖オリゴヌクレオチドがその生物活性を保持するという概念を証明
する。
具体的には、一本鎖DNAを上記のようにカラムの表面に固定化した後、その
表面に固定されたDNAをカラムからフラッシュし、そしてキレート化剤を用い
て、溶液中の残留するまたは遊離のニッケルイオンを錯体形成させた。最初に、
非修飾鎖は優れた配列決定用鋳型であることが判ったが、H6標識鎖は鋳型指示
性重合を支持できなかった。結局、H6標識DNA溶液は、DNAポリメラーゼ
酵素の充分な阻害を引き起こすのに充分な量の偶発的Ni2+を含有することを発
見した。この問題は、エタノールでの沈澱の前に、1,10−フェナントロリン
をイミダゾール含有溶離液に対して加えることによって簡単に克服された。この
方法で製造された一本鎖鋳型は、一様に高品質のDNA配列データを与える。
当業者は、本明細書中で挙げられたパラメーターが全て例示のためのものであ
り、そして実際のパラメーターは、本発明の方法および配置が用いられる具体的
な用途に依存するであろうということを容易に理解するであろう。したがって、
前述の実施態様が単に例示として与えられていること、そして更に、請求の範囲
およびその同等物の範囲内で、本発明をそれ以外におよび具体的に記載されたよ
うに実施することができることは理解されるはずである。
【手続補正書】
【提出日】平成12年1月11日(2000.1.11)
【補正内容】
(1) 明細書第14頁の次に、頁を改めて以下の記載を挿入します。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
G01N 30/48 G01N 30/48 R
N
33/547 33/547
(72)発明者 ミン,チャンギー
大韓民国デジョン 302―173,スー・ク,
ドーンサン・ドン,ドーングジ・アパート
メント 109―1404