【発明の詳細な説明】
リゾフェリンの合成方法
発明の背景
本発明の完成に至る研究は国立保健研究所(NIF)に与えられた助成金番号第R
01DK-49108号によって一部支援されたものである。アメリカ合衆国政府は本明細
書に記載の発明に対して一定の権利を有する。本発明の分野
本発明はキレート剤、リゾフェリン(rhizoferrin)の調製方法に関するもの
である。従来技術の説明
鉄はほぼ全ての生命体にとって必須の元素であるが、環境中にあるの遷移金属
の主たる形態であるFe(OH)3,(Ksp=2×10-39)が水に不溶なため、ほぼ全ての生
命体はこの金属を利用するためにかなり複雑な鉄のキレート化/運搬方法を発達
させてきた。高等動物では蛋白質を用いて鉄を運搬・吸収している。
微生物は鉄を獲得するために一群の低分子量キレート剤またはシデロホア(si
derophores)を作る[バージェロン(Bergeron)の「微生物シデロホアの合成お
よび溶体構造」、Chem.Rev.、第84巻、587〜602頁(1984年)、タイト(Tait)
の「小球菌脱窒菌(Micrococcus denitrificans)によって生成したシデロホア
の同定および生合成」、Biochem.J.、第146巻、191〜204頁(1975年)、グリフ
ィト(Griffiths)達の「ビブリオバクチン(Vibriobactin)、コレラ菌(Vibri o cholerae
)からのシデロホア」、J.Biol.chem.、第259巻、383〜385頁(1984年
)、アクソイ(Aksoy)達の「地中海貧血症における輸血過剰および鉄のキレート
化」80頁、Hans Huber Publishers、Berne(1985年)およびビッケル(Bickel)
達の「放線菌の代謝生成物、フェリオキサミンB」、Helv.Chim.Acta、第43巻、2
129〜2138頁(1960年)]。この金属の大部分は不溶な第二鉄の状態で生物圏に
存在していおり、このようなリガンドを持たない細菌は摂取できない。
多数のシデラホアが同定されているが、これらは2つの構造:カテコールアミ
ドとヒドロキサメート(hydroxamates)[Bergeron、supra]とに大きく分類さ
れる。これら両構造型のリガンドの多くはポリアミン主鎖を含む。ヘキサ配位カ
テコールアミドパラバクチン(parabactin)[Tait、supra]とビブリオバクチン
[Griffiths et al,supra]はそれぞれトリアミンスペルミジンおよびノルスペ
ルミジンで予想され、ヒドロキサメートはジアミジン、プトレシンまたはカダヴ
ェリン(cadaverine)またはその生化学的前駆体、オルニチンまたはリジン[Be
rgeron、supra]から得られることが多い。例えば、Streptomyces pilosus、デ
スフェリオキサミン(desferrioxamines)A-Iから単離されたシデロホアは主鎖
にプトレシンまたはカダヴェリン単位が反復するヒドロキサメート群からなる[
Aksoy et al,supra]。このキレート剤の中で最もよく知られているデスフェリ
オキサミンB(DFO)[Bickel et al,supra]は直鎖のトリヒドロキサメートリ
ガンドであり、これは鉄(III)(Kf=1×1030M-1)とともに極めて安定なヘキサ配位
、八面体錯体を形成する[モデル(Modell)達の「地中海貧血症に対する臨床的
方法」、217頁、Grune and Stratton、London(1984年)]。
DFOは複数の異なる+3陽イオン、例えばAl(III)、Ga(III)、Cr(III)と結
合するが、鉄(III)に対しては高い特異性を示す。デスフェリオキサミンのメ
シレート塩、Desferal(登録商標)が地中海貧血症のようないくつかの鉄過剰症
の治療に使用されてきたことは驚くべきことではない[アンダーソン(Anderson
)の「生物学および医学における無機化学」15章、アメリカ化学会、Washington,.
D.C.(1973年)およびフィッシャー(Fisher)達の「ブタ用の静脈内デスフェリオキ
サミンメシレート治療プロトコルの開発:高性能液体クロマトグラフィーによる
デスフェリオキサミンおよび代謝物のモニタリング」Pharmacology、第41巻、26
3〜271頁(1990年)]。しかし、この薬は体内での半減期が短いため、患者に絶え
ず注入しなければならない。そのため、研究者はより良い治療用鉄キレート剤を
探し続けてきた。
N1,N4-ビス(1-オキソ-3-ヒドロキシ-3,4-ジカルボキシブチル)ジアミノブタ
ン(リゾフェリン)は透析患者にみられるケカビ属真菌症に関係がある生物体Rh izous microsprus
var.rhizopodiformisから最初に単離され[ドレシェル(Dre
chsel)達、Biol.Met. 第4巻、238〜243頁、1991年]、いくつかの真菌の
接合菌株で生じる[チエケン(Thieken)達、FEMS.Microbiol.Lett. 第94巻、37
〜42頁、1992年]。天然のキレート剤パラバクチンおよびDF0と同様にリゾフェ
リンも第二鉄イオンと1:1の錯体を形成する[ドレシェル(Drechsel)達、Biol. Met.
第5巻、141〜148頁、1992年]。しかし、そのキレート形成定数は測定さ
れていない。リゾフェリンの構造決定[ドレシェル(Drechsel)達、1991年、su pra
]から、その1-カルボキシレートの所がクエン酸で対称的にジアシル化され
たプトレシンセンターがあることが明らかになった:
すなわち、リゾフェリンはポリアミン主鎖を含むが、いずれのキレート剤の分
類にも属さず、むしろL-リジンおよびD-オルニチンに見られるリゾバクチン[Smi
th、Tetrahedron Lett.14 第30巻、313〜316頁、1989年]およびスタフィロフェ
リン(staphyloferrin)A[Konetschny-Rapp et al、Eur.J.Biochem. 第91巻、6
5〜74頁、1990年]と同じヒドロキシポリカルボキシレートである。クエン酸が
対称的な1,3-二置換であるヒドロキサメートエアロバクチン、アルスロバクチン
、schizokinen[Bergeronetal,カテコールアミドおよびヒドロキサメートシデ
ロホアの合成、Handook of Microbial Iron Chelators、Winkelman、ed.,CRC
Press、Inc.、Boca Raton、FL、271〜307頁(1991年)]およびnannochelin[サ
メジマ(Samejima)達、Chem.Pharm,Bull.、第32巻、3428〜3435頁(1984年)]
とは異なり、リゾフェリン中では非対称な官能基を有する各クエン酸のプロキラ
ルな炭素が不斉炭素である。この分子のこれら2つの部位は円二色性(CD)分光
法で天然のものが(R,R)-酒石酸であるのに対して(R)-配置である[ドレシェル(
Drechsel)達、1992年、supra]。
アミド結合で所望形状のシトレート部分を含むリゾフェリンおよびその他の化
合物の合成が必要とされる場合がある。この合成に挑戦するための主要ルートは
、アミン基と結合するために正確な形状のシトレートシントン(citratesynthon
)にアクセスして最終生成物の絶対形状を明解に定義することである。
本発明の目的はこの合成ルートを提供することにある。
本発明の他の対象は新規な重金属キレート剤と、医薬組成物と、その使用とに
ある。
本発明の概要
上記およびその他の目的は本発明によって実現される。
本発明の第1の具体例は下記化学式(I)の化合物の合成方法にある:
〔ここで、
C*はキラル炭素原子であり、
aおよびbは0から10までの整数であり、同一でも異なっていてもよく、
RはH、アルキル、アリールアルキル、カルボキシルまたは下記を表す:
(ここで、C*およびbは上記の意味を有する)〕
本発明方法は下記(1)〜(3)の工程で構成される:
(1) 化学式(II)のポリアミンを化学式(III)のクエン酸のジエステルでアシル化
して化学式(IV)のアミドを生成する:
(ここで、a、bおよびRは上記の意味を有し、Qはアミン保護基である)(ここで、R'は炭素数10までのアルキル、アリール、アラルキルまたはシクロア
ルキルである)
(2) 化学式(IV)のアミドを加水分解して、化学式(V)の酸を生成する:
(3) 化学式(V)の酸のQ基を除去して保護を外し、化学式(I)の酸を生成する。
本発明の他の具体例は化学式(VI)で表されるいくつかの新規な重金属キレート
剤と、それと薬理学上許容される酸および陽イオンとの塩にある。
(ここで、a、b、C*およびR'は上記の意味を有し、R"はR'またはQである)
本発明のさらに他の具体例は治療有効量の化学式(VI)の化合物または薬理学
上許容される酸または陽イオンとの塩と、薬理学上許容される坦体とからなる単
位投与量の形の医薬組成物にある。
本発明のさらに別の具体例は、治療を必要とするヒトおよびヒト以外の動物に
、化学式(VI)の化合物または薬理学上許容される酸または陽イオンとの塩を治
療有効量で投与する治療方法に関にある。
本発明の詳細な説明
以下、リゾフェリンの合成を参照して本発明を詳細に説明するが、本明細書に
記載の本発明原理は、アミド結合を介してアミンに結合した特別な鏡像異性体(
エナンチオマー)構造のクエン酸部分を含む任意の化合物の調製に適用できると
いうことは当業者に理解できよう。
リゾフェリンの合成式は下記の通り:
鏡像異性体(III)は下記式で得られる:
上記の構造式および模式図において、Rは炭素数10までの任意のエステル化用
アルコール、例えばアルキル(例:メチル、エチル、プロピル、ブチル)、アリ
ール(例:フェニル)、アラルキル(例:ベンジル)またはシクロアルキル(例
:シクロペンチル、シクロベンジル)等の残基にすることができる。
ジアミン反応物は化学式(II)のような一級アミン基を有する任意のアミンにす
ることができる。Rは炭素数10までのアルキル、アリール、アラルキルまたはシ
クロアルキルにするか、下記の基にすることができる。 本明細書で用いる「アミノ保護基」(Q)は合成中にアミノ基を保護するため
にアミノ基の水素原子の場所に挿入されるQ基を意味する。適当なアミノ保護基
の選択は、保護の理由と保護された生成物の最終用途に依存する。保護基が合成
中の保護にのみ用いられる場合は、一般的なアミノ保護基を使用できる。適当な
アミノ保護基は従来技術で知られており、例えば、BodanszkyのPrinciples of S ynthesis
、Springer-Verlag、New York(1984)、Ivesの米国特許第4,619,915号お
よび後者に関する多くの刊行物に記載されている。Methoden der Organischen C hemie
、Houben-Weylのアミノ基に関する第15巻、第1およびペプチド合成方法に
関する第15巻、第2も参照されたい。合成用の代表的なアミノ保護基にはベンジ
ルおよびアシル基、例えばtert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニ
ル、ベンゾイル、アセチル等が含まれる。合成用のさらに他の一般的なアミノ保
護基は文献[Bodanszky、supraおよびIves、supra]に記載されている。
リゾフェリンの一般的な合成法はトリメチルシトレートを立体的に制御しなが
ら鹸化して1,2-ジメチルシトレートに変換する方法である[ヒロタ(Hirota)達
、Chemistr Lett、191〜194頁、1980年]。カルボン酸の鏡像異性体はその(─)-
ブルシン塩を生成することで分離する。水からの分別結晶を5回行った後の単結
晶X線回折によって結晶性塩は(R)-構造の1,2-ジメチルシトレートを含むことが
示される。この塩を1N─HClで処理し、エチルアセテートで抽出すると(R)-1,2-
ジメチルシトレートが得られる。
正しい鏡像異性体の酸を得た後、N1,N4-ジベンジル-1,4-ジアミノブタン[サ
メジマ(Samejima)達、supra]をジフェニルホスホリルアジド(Et3N/DMF)を
用いて(R)-1,2-ジメチルシトレート(2等量)でアシル化した[シオイリ(Shioi
ri)達、J.Am.Chem.Soc. 第94巻、6203〜6205頁(1972年)]。三級アルコール
の除去によってオレフィンを含む副生成物を除去するフラッシュクロマトグラフ
ィー後に収率26%でジアミドが得られたことはNMRで確認された。この
メチルエステルを水酸化ナトリウムのメタノール水で加水分解し、酸性化してN,
N'-ジベンジルリゾフェリンを得た。
N-ベンジルアミドは水素化分解に対して強いので[Williams et al、Tetrahedron Lett.
第30巻、451〜454頁、1989年]、金属還元状態
(Li/NH3/THF)下でテトラ酸を脱保護し[Kim et al、J.Org.Chem. 第46巻、538
3〜5389頁、1981年]、陽イオン交換樹脂カラムで塩をプロトン化し、C-18逆相
カラムで精製して最終生成物のリゾフェリンを得た。合成で得られた化合物を高
域NMRおよび高分解能質量スペクトルで分析した結果、公知の天然物のスペクト
ル[Drechsel et al、1991、supra]と基本的に同一であった。合成サンプルと
天然物の絶対配置(R,R)は同じ波長で負のコットン効果を示すので、両者は互い
に同一である[Drechsel et al、1992、supra]。
リゾフェリンは、それぞれ1個および2個の5員環を有するイミドリゾフェリン
およびビス-イミドリゾフェリンに脱水して放置すると環化する[Drechsel et a
l、1992、supra]。この環をpH5.0で生成するための0次の速度定数は6.9×10-2
h-1であることがNMRで観察された。pH3で見られる環化の程度は文献[Drechsel
et al、1992、supra]と同様であった。すなわち、この分析データは分解が起こ
る前に得られたものである。
上記のリゾフェリン合成方法は、ヒドロキシポリカルボキシル化シデロホアス
タフィロフェリンA[Konetschny-Rapp et al、Supra.およびMeiwes et al、FEMS Microbiol.Lett.
第67巻、201〜206頁、1990年]の調製に用いることもできる
。ここの場合にはその1-カルボキシレートの所でD-オルニチンをクエン酸でNα,
Nδ-ジアシル化する。さらに、構造活性研究のために、中心のメチレン橋の鎖長
が異なるリゾフェリンの類似物を合成することができる。
化学式(VI)の化合物は重金属キレート剤として有用であり、化学式(V)の
化合物と同様に調製する。
本発明の医薬組成物は経口投与(錠剤、カプセルまたはピル)、非経口投与ま
たは経皮投与が可能な化合物または混合物にするのに適した薬理学上許容される
担体を含むのが好ましい。活性成分は一般の任意の薬理上許容される担体と混合
または配合することができる。
本発明の医薬組成物の調製および投与では、一般的な任意の投与方法、活性成
分に対して不活性な媒体または担体が利用可能であるということは当業者に理解
できよう。この投与方法、媒体および担体は例えばRemington's Pharmaceutica l Sciences、第4版(1970年)に記載されており、その内容を本明細書の一部を
成す。当業者は本発明原理から適当な媒体、賦形剤および担体を決定し、それに
活性物質を配合して本発明の医薬組成物を容易に作ることができる。
本発明の医薬組成物に含むべき活性成分の治療有効量は各症例に応じた複数の
要因、例えば、治療する患者のタイプ、体重、状態、治療すべき疾患、予定投与
法、予定投与量を取り込む患者の能力などに依存する。一般に、活性成分は単位
投与量当たり約50〜約500mg、好ましくは約50〜約250mgの量である。
本発明の医薬組成物および治療方法に用いられる活性成分は化学式IまたはII
の化合物の薬理学上許容される塩または錯体、例えばナトリウム、カリウムまた
はその他の無毒の金属塩、アミン塩や、HCl、HAc等との酸の塩にすることができ
る。
本発明の化合物、組成物および方法は重金属、例えば鉄過剰に起因する病気、
例えば地中海貧血症の治療に有用である。
本発明方法に従って患者に投与される本発明組成物の各成分の量が上記要因に
依存することは当業者に理解できよう。しかし一般に活性成分の投与量は約50〜
約500mg/kg、好ましくは約50〜約250mg/kgであり、投与回数および治療期間は患
者のタイプおよび体力および治療すべき疾患に依存する。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明が下記実施例に限定される
ものではない。
カラムクロマトグラフィーにはシリカゲル32-63(40μm「フラッシュ」)ま
たはシリカゲル60(70-230メッシュ)を用いた。旋光度は589nm(Naランプ)でC
H3OH中で室温で操作し、100ml当たりの化合物のグラム数をcとした。1H NMRス
ペクトルは重水素化有機溶媒すなわちD2O中で300または600MHzで記録し、テトラ
−メチルシランまたは3-(トリメチルシリル)プロピオン-2,2,3,3-d4酸、ナト
リウム塩からの化学シフトを低磁場100万当たりの部で表した。X線回折データは
CCD領域検出器およびMoKα照射(λ=0.71073Å)を用いたグラファイトモノクロ
メータを備えたシーメンスSMART PLATFORMで173Kで得た。データの半球(1381フ
レーム)をω一走査法(0.3°のフレーム幅)を用いて得た。初めの50フレーム
はデータ収集の終了時に再度測定し、機器および結晶の安定性をモニターした(
Iでの最大補正は〈1%)。全データ設定に基づいてPsi走査吸収補正を行った。
円二色性スペクトルはJasco IF-500IIインターフェースおよびCompuAdd 286コ
ンピュータを備えたJasco Model J500C分光旋光計を用いて得た。データ収集お
よび処理はJasco DP-500/PCシステムの1.28バージョンのソフトウェアを用いて
行った。セルの光路長は2.00cmであった。
紫外線分光学スペクトルはAST486/33コンピュータデータステーションを備え
た島津UV-2501PCで得た。セルの光路長は1.00cmであった。
実施例1
公知方法[ヒロタ(Hirota)達、supra]を変えて1,2-ジメチルシトレート(2)
を調製した。トリメチルシトレート(1)(10.0g、42.7mmol)の50%水溶液(CH3O
H(200ml))に水酸化ナトリウム(0.1N、215ml)を室温で激しく攪拌しながら2
時間かけて加えた。この溶液を約150mlに濃縮し、EtOAc(3×150ml)を用いて抽
出した。水層を1N HCl(45ml)で酸性化し、EtOAc(3×150ml)で抽出した。有
機層を乾燥(MgSO4)し、濃縮して3.70g(39%)の(2)を無色の油として得た。
実施例2
1,3-ジクロロヘキシルカルボジイミド(103mg、0.5mmol)を、(2)(110mg、0.
5mmol)と、(s)-(-)-sec-フェネチルアルコール(61mg,0.5mmol)と、4-ジメチ
ルアミノ-ピリジン(3mg)との乾燥CH2Cl2(10ml)溶液に0℃で加え、この混合
物を一晩中攪拌して1,2-ジメチル-3-[(s)-sec-フェネチルlシトレート(3)を調製
した。上記混合物は濾過し、濾液を濃縮してフラッシュクロマトグラフィー(1:
2EtOAc/ヘキサン)で精製し、60mg(37%)の(3)を無色の油として得た:
実施例3 ルシン塩を調製した。濾過後、沈殿物(10.5g)を水(5x)から再結晶し、乾燥
して2.04gの白色の結晶を得た:mp165〜168℃。
ジアステレオ異性体の塩は単斜空間群C2で結晶化し、下記のセル寸法を有する
:a=13.8947(3)、b=12.4224(3)、c=17.5408(3)Å;α=90°、β=104.556(1)、δ
=90°。この構造はSHELXTLの直接法[Sheldrick、SHELXTL、Siemens XRD Corpor
ation、Madison..WI(1995)]で求め、完全マトリクス最小二乗法を用いて修正
(refine)した。Hでない原子は異方性処理した。メチル水素原子は理想的な位
置で計算し、それぞれの炭素原子に乗せた。残りのH原子は制約なしに修正した
。2個の水分子は不斉単位に位置させた。一つの水分子は完全占有率で修正し、
そのH原子を位置付けした。他方の水分子は2倍の回転軸に位置付けし、30%の占
有率に修正した。(R)の絶対配置は、ブルシンの立体化学の知識に基づいて塩の
シトレート部分に割り当てた。パラメータ(521)はI>2 σ(I)の3855反射を用いる
修正の最終サイクルで修正し、R1およびwR2の収率はそれぞれ0.0434および0.104
0を得た。修正はF2を用いて行った。
実施例4
(R)-1,2-ジメチルシトレート(4)。HCl(1N、4ml)を(R)-1,2-ジメチルシトレ
間攪拌を続けた。EtOAc(3×50ml)で抽出し、Na2So4で乾燥濃縮して630mg
(86%)の(4)を無色の油として得た:[α]+4.0(c 1.00);NMRは(2)と同一。
実施例5
N,N'-ジベンジルリゾフェリン、テトラエチルエステル(6)。ジフェニルホスホ
リルアジド(760mg、2.76mmolとNEt3(1.5ml、11mmol)とを(4)(610mg、2.77m
mol)と、N1,N4-ジベンジル-1,4-ジアミノブタン[サメジマ(Samejima)達、sup ra
](370mg、1.38mmol)とのDMF(20ml)溶液に窒素下0℃で加えた。この溶液
を0℃で1時間、次いで室温で23時間攪拌した。溶媒を高真空下で除去した後、
残留物をEtOAc(25ml)に取り、飽和NaHCO3(25ml)、水(25ml)、0.5N HCl(2
5ml)および水(25ml)で洗浄した。有機層を乾燥(MgSO4)し、濃縮した。フラ
ッシュクロマトグラフィで分析(4:1のEtOAc/ヘキサンで溶離)して240mg(26%)
の(6)を淡黄色油として得た:
実施例6
N,N'-ジベンジルリゾフェリン(7)。CH3OH(7ml)と(6)(170mg、0.253mmol)
の1N NaOH(7ml)溶液を室温で5時間攪拌した。HCl(1N、8ml)を加え、この溶
液を約15mlに濃縮した。EtOAc(3×15ml)で抽出後、有機層を乾燥し(Na2So4)
、濃縮して120mg(77%)の(7)を無色のガラスとして得た:
実施例7
リゾフェリン。(7)(110mg、0.178mmol)の蒸留THF(1.5ml)溶液をLi(33mg
、4.8mmol)のNH3(100ml)溶液に加え、混合物を-78℃に3時間維持した。H3OH
水溶液(50%、10ml)を青色が消えるまで加えた。アンモニアを蒸発させて残留
物を陽イオン交換樹脂カラム(Bio Rad、AG 50W-X8)に通して水(50ml)に回収
する。生成物(pH=3)を含む溶出物をEtOAc(50ml)を用いて抽出し、濃縮乾固
した。残留物を蒸留EtOH(2ml)に溶解し、濾過し、濃縮し、収率50mg(64%)
でリゾフェリンを無色ガラスとして得た:HRMS(FAB、m-ニトロベンジルアルコ
ールマトリクス)C16H25N2O12の計算値 437.1407(M+H)、実験値 437.1407(
塩基)。
粗生成物(10mg)の溶液は逆相HPLC[ドレシェル(Drechsel)達、1992年、su pra
](C-18調製用カラム、21.4mm×25cm、Raininから市販)で精製した。初期
移動相濃度0.1%TFA中3%CH3CNを15分間保持し、次いで35分かけて0.1%TFA中で
3〜11%のCH3CNを勾配溶出し、次いで0.1%TFA中11%CH3CNで20分間保持した。
流量は4ml/分に維持した。滞留時間は56分にした。凍結乾燥で4.32mg(9.90μmo
l)の精製リゾフェリンが無色ガラスとして生成した:
精製生成物を50.00mlの蒸留水に溶解して原液を調製した。10.00mlのアリコッ
トを20.00mlに希釈し、1.90mlの0.01ON HCl(最終リゾフェリン濃度=9.04×10- 5
M)を用いてpH=3.02に調整する。pH調整後、直ちにCDおよびUVスペクトルを取
った。全てのスペクトルは上記のように酸性化した蒸留水ブランクでベースライ
ン補正した。
CD 結果
リゾフェリンのCDスペクトルは200から220nmで負のコットン効果を示し、205n
mで単一最小値、Δε=-2.7が記録された。公知の単一最小値Δεは204nmで─4.
3である[ドレシェル(Drechsel)達、1992年、supra]。
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