【発明の詳細な説明】
抗ウイルス性抗腫瘍剤としてのインターロイキン−8
発明の背景
(a)発明の分野
本発明は、インターロイキン−8(IL−8)の抗ウイルス活性及び抗癌活性
と、ヒト及び動物のウイルスによって引き起こされるウイルス感染症及びオンコ
ウイルスによって引き起こされる癌における治療剤としてのインターロイキン−
8の使用とに関する。
(b)先行技術の説明
人類を苦しめる多くの重大な感染症はウイルスによって引き起こされ、そのう
ちの幾つかはしばしば致命的であり、このような疾患のなかには、例えば、狂犬
病、天然痘、ポリオ、肝炎、黄熱病、免疫欠乏及び種々な脳症性疾患が存在する
。他の疾患は、それらが非常に接触伝染性であり、例えばインフルエンザのよう
な急性不快感、麻疹、おたふくかぜ及び水痘、並びに呼吸−胃腸障害をもたらす
点で重要である。例えば風疹ウイルス及びサイトメガロウイルスのような、他の
ウイルスは先天性奇形を引き起こす可能性があり;最後には、ヒト及び動物にお
いて腫瘍及び癌を引き起こしうるオンコウイルスとして知られるウイルスが存在
する。
ウイルスのなかで、ヘルペスウイルス科は非常に重要である。ヘルペスウイル
スは性質において高度に播種性であり、ヒトに対して高度に病原性である。例え
ば、Epstein−Barrウイルス(EBV)は小児期後半又は青年期又は
若い成人において感染性単核細胞増加症を引き起こすことが知られている。急性
感染性単核細胞増加症の特徴は咽喉痛、発熱、頭痛、リンパ腺症、扁桃腺肥大、
及び末梢血液中の非定型分割性リンパ球(atypical,dividing lymphocyte)である
。他の発現はしばしば軽度な肝炎、巨脾腫及び脳炎を包含する。EBVは2形態
の癌:Burkittリンパ腫(BL)と鼻咽頭癌(NPC)にも関連する。赤
道アフリカの特有の地域では、BLは最も一般的な小児期悪性腫瘍であり、小児
に
おける癌の約80%を占めている。NPCは北アメリカのコーカソイド人種(Ca
ucasian)では僅かに観察されるが、NPCは南中国では25〜55歳の年齢罹
患を示す、最も一般的な癌である。サイトメガロウイルスと同様に、EBVも固
体器官又は骨髄移植後の慢性的免疫抑制の可能な致命的併発症である、移植後の
リンパ増殖性(lymphoproliferative)疾患に関係する。
他のヘルペスウイルス、即ち、単純ヘルペスウイルス、タイプ1(HSV−1
)は、歯肉口内炎の病因(etiologic agent)として関与する。特徴は発熱、咽喉
痛、口腔中の潰瘍性及び嚢胞性病巣である。HSVによって引き起こされる最も
重度な臨床状態は一次性器ヘルペス性感染症である。HSV−1は性器ヘルペス
性感染症を引き起こしうるが、HSV−2はこの疾患に関連する主要なウイルス
である。このHSV感染症は、性器部分に病変を引き起こす、小胞、膿疱及び潰
瘍を付随する。尿停滞症候群も経験される可能性がある。人々の80%より多く
がHSV−1又はHSV−2に関して血清陽性であり、研究は再発又はウイルス
再活性化の頻度が60%程度に高いことを実証している。皮膚及び眼の感染症、
例えば、脈絡網膜炎又は角結膜炎を含めた、他の感染症もHSVに関係する。ア
メリカ合衆国では1年間に約300,000症例の眼のHSV感染症が診断され
ている。
ヒトヘルペスウイルス−6(HHV−6)は免疫系の細胞に対し明白な向性(t
ropism)を有しているので、HHV−6感染症は免疫反応の変化を生ずる可能性
がある。HHV−6が小児における主要な感染症としての突発性発疹の原因であ
ることは、現在明瞭である。最近の研究は、移植前に血清陽性である器官移植レ
シピエントのかなりの割合が、免疫抑制後に再活性化する血清学的徴候を示すこ
とを実証している。異種親和−陰性(heterophil-negative)の単核細胞症様の疾
患と、非A・非B型肝炎も活性HHV−6感染症に関連づけられている。HHV
−6は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)感染症を有する患者からしばしば
単離されている。HIVとHHV−6とが同じ標的細胞中に存在しうるという事
実は、HHV−6感染症がHIV−血清陽性患者の症候性AIDSへの進行に補
因子として作用しうるという推論を生じている。最近の研究はまた、ヒトヘルペ
スウイルスがHIV疾患に密接に関係することも示唆している。実際に、Kap
osi肉腫(KS)、HIV感染者に主として発症する腫瘍(neoplasm)が感染性
病因を有することが判明している。このウイルスはKS関連ヘルペスウイルスと
名付けられているが、その形式的分類はHHV−8であるように思われる。
全ての感染性疾患において、治療法の効力は宿主の免疫応答にしばしば依存す
る。このことは特にヘルペスウイルスに該当する;実際に、潜在性感染症を確立
させる、全てのヘルペスウイルスの能力は、免疫反応が充分に発揮しえない(imm
unocompromised)患者における再活性化感染症の極めて高い発生率をもたらす。
腎臓移植レシピエントでは、40%〜70%が潜在性HSV感染症を再活性化さ
せ、80%〜100%がCMV感染症を再活性化させる。このようなウイルス再
活性化はHIV陽性患者(AIDS)においても観察されている。
現在、ウイルス感染症の治療に利用可能な治療剤の数は比較的限定された状態
である。例えば、4種類の主要な化合物:イドクスウリジン、ビダラビン、アシ
クロビル及びガンシクロビルがヘルペスウイルス感染症の治療に主として用いら
れる。これらの効力は限定されており、これらは多くの副作用を引き起こす。眼
のHSV感染症の治療のみに用いられるイドクスウリジンによって治療された患
者の35%において、アレルギー効果が報告されている。ビダラビンの最も一般
的な副作用は胃腸障害である(患者の15%)。アシクロビルの主要な副作用は
腎機能の変化である;また、アシクロビルはウイルスと宿主細胞の両方のDNA
に組み込まれることができるヌクレオシド類似体であるので、宿主細胞の正常な
分割が影響される可能性がある。ガンシクロビルに関しては、最も重要な副作用
は、AIDS患者の約40%において発症する好中球減少症と栓球減少症である
。
したがって、ウイルス感染症を治療するための効果的な治療法の開発に対する
緊急の必要性がある。
罹病組織中の白血球の蓄積は炎症性過程の特徴として認められている。炎症部
位における白血球の補充は走化性(chemotactic)サイトカイン類の局所産生によ
って誘発される。このような性質を示すタンパク質は、1つのアミノ酸によって
分離されているか(CXCタンパク質)又は隣接している(CCタンパク質)、
最初の2つのシステインの位置によって2つのサブファミリーに分類されている
。これら2つのサブファミリーのメンバーは、それらの標的細胞選択性とそれら
の
遺伝子の染色体位置とにおいて異なる(Baggiolini等、Adv.Im
munol.55:97,1994によって概観)。走化性サイトカイン類のな
かで、CXCファミリーに属するインターロイキン−8(IL−8)は、刺激さ
れたヒト血液単球の培養上澄み液中で最初に同定された。IL−8は99アミノ
酸の先駆体として合成され、20残基の配列の切断後に分泌される非グリコシル
化タンパク質である。形成された成熟分子は79残基を有し、N−末端において
タンパク質分解的にさらにプロセシングされて、幾つかの生物学的に活性なN−
末端類似体を生じ;2つの主要な形態は72アミノ酸形と77アミノ酸形である
。IL−8の構造、配列及び生物学的性質はBaggio1ini M.等によ
って概観されている(Adv.Immunol.55:97,1994)。
IL−8は例えば、若干を挙げれば、角質細胞、上皮細胞、滑液細胞(synovio
cyte)及び肝細胞のような、多くの細胞によって産生される。末梢血白血球のな
かでは、リンパ球ではなく単球と好中球がIL−8の主要な細胞ソース(cellula
r source)であることが判明した。
IL−8はin vitro及びin vivoにおいて多くの生物学的活性
を及ぼす。IL−8はその走化性活性と、ヒト好中球を分解させるその能力との
ために周知である。IL−8で処理された好中球では、形状変化、運動系(motil
e system)及び細胞質ゾルの遊離Ca2+の増加が迅速に検出される。特定顆粒か
らのビタミンB12結合タンパク質の放出も観察された。IL−8はまた、アズー
ル好性顆粒を分解させて、エラスターゼ及び他の加水分解酵素を放出させる。こ
のような分解は細胞膜における多様な接着分子のアップレギュレーションを付随
する。分解はまた、補体受容体タイプI(CR1)とIII(CR3)の強化さ
れた発現を生じる。IL−8は好酸球と、ヒトリンパ球(特に、T細胞)とに対
する走化性因子でもある。
IL−8の生物学的作用は7つの膜貫通ドメイン、Gタンパク質共役受容体に
よって仲介される。2種類のIL−8受容体が述べられており、A型及びB型と
して定義されている。IL−8受容体A型はIL−8に対する高いアフィニティ
と、Groα(黒色腫増殖刺激活性)に対する低いアフィニティとを有するが、
B型は両方のサイトカインに対して高いアフィニティを有する。末梢血白血球の
なかでは、好中球が両方の型のIL−8受容体を強度に発現するが、単球とCD
8+Tリンパ球とはIL−8受容体を低レベルに発現した。B細胞とCD4+Tリ
ンパ球では、検出可能なレベルのIL−8受容体は存在しなかった。
IL−8が多くの病変(pathologies)の炎症性過程に重要な役割を果たすこと
を支持する累積した証拠が存在する;実際に、IL−8は、例えば乾癬の板状鱗
屑抽出物、慢性関節リウマチ若しくは通風を有する患者からの滑液、気腫患者か
らの胸膜液、呼吸困難症候群を有する患者からの気管支肺胞洗浄液(bronchoalve
olar lavages)のような、炎症性組織又は滲出液中に検出されている。さらに、
抗ウイルス活性は最近、C−Cケモカイン サブファミリーに属する、ケモカイ
ンRANTES及びMIP−1αとβによると認められており、これらがin
vitroにおいてHIV−1、HIV−2及びSIVウイルスのタンパク質合
成の阻害を誘導することが発見されている。
その上、IL−8が抗ウイルス効果を有することが最近、報告されている(M
ackewiczとLevy,1992 AIDS Research and
Human Retrovirus 8:1039〜1050)。IL−8が
特定条件下でCD4+リンパ球におけるHIV複製を阻害しうることが判明して
いる。実際に、IL−8が自然感染(naturally infected)CD4+細胞のウイル
ス複製に影響することが発見されたが、IL−8は急性感染(acutelyinfected)
細胞には影響を及ぼさなかった。
抗ウイルス活性については幾つかの想定される機構が存在する;一部の機構は
、特定ウイルスがその標的細胞に付着するのを遮断するべきであるので高度に選
択的であると考えられる。ヘルペスウイルス感染症の治療に特異的に用いられる
、イドクスウリジン、ビダラビン、アシクロビル及びガンシクロビルは例えばH
IVのような他のウイルスに影響を及ぼさないので、選択的な抗ウイルス活性を
有する薬物の例を成す。
したがって、HIVに対するIL−8の抗ウイルス効果に関するMackow
iczとLevyによって提示されたデータから、IL−8があらゆるウイルス
に対して抗ウイルス活性を示しうると予測することは決してできない。ウイルス
感染症の治療に現在用いられている大抵の薬物が特定のウイルスに対して選択的
であることが、この陳述を強く支持する。現在まで、IL−8の抗ウイルス活性
についての他の実証された報告は存在しない。
最後に、公開番号WO96/09062で1996年3月28日に公開された
TALMADGEのPCT出願は、IL−8のポリペプチド類似体類を述べ、こ
れらの類似体が、特に、例えばウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、酵母
感染症、寄生虫感染症のような病的状態の治療のために、用いることができると
主張している。しかし、TALMADGEは、ポリペプチドがこのようにすると
いう推定又は単なる希望を実証するためのデータを全く提示していない。
より大きい効力を有し、既知抗ウイルス剤の好ましくない副作用を示さない抗
ウイルス剤を提供することが、非常に望ましいと考えられる。
発明の概要
本発明は、ウイルス感染症と、オンコウイルスによって引き起こされる癌とを
予防又は治療する方法を提供する。
これらの方法によると、薬剤学的又は生理学的に受容される治療有効量のイン
ターロイキン−8剤を、このような治療を必要とするヒト又は動物に投与する。
本発明の1つの目的は、ウイルス感染症の予防と治療のためにより高度に有効
であり、既知抗ウイルス剤の好ましくない副作用を示さない、抗ウイルス剤と方
法を提供することである。
本発明の他の目的は、例えばレトロウイルス(HIV−1とHIV−2を除く
)、乳頭腫ウイルス、アデノウイルス及びヘルペスウイルスのようなオンコウイ
ルスによって誘発される癌を予防又は治療する抗ウイルス剤と方法を提供するこ
とである。
本発明の他の目的は、免疫抑制された患者と動物におけるウイルス感染症を予
防又は治療するための抗ウイルス剤と方法を提供することである。
本発明によると、EBV、HSV−1、HSV−2、CMV、VZV、HHV
−6、HHV−7及びHHV−8を含む(但し、これらに限定されない)群から
選択されるヘルペスウイルスに対する抗ウイルス剤としてのIL−8剤の使用;
及びこのようなヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症を予防又は治療
する方法にIL−8剤を用いることを提供する。
本発明によると、ピコルナウイルス科に属するブタのエンテロウイルス、又は
トガウイルス科に属するウシ下痢性ウイルス、又はパラミクソウイルス科に属す
るウシRSウイルス(respiratory syncytial virus)を含めた(但し、これらに
限定されない)、他のヒトウイルス及び動物ウイルスに対する抗ウイルス剤とし
てのIL−8剤の使用をも提供する。
本発明によると、インターフェロン−α、−β、−γ、腫瘍壊死因子α、ガン
シクロビル(ganciclovir)、アシクロビル(acyclovir)、ビダラビン(vidara
bine)、イドクスウリジン(idoxuridine)、及びプロスタグランジン(prostag
landins)又はプロスタグランジン類似体(prostaglandin analogs)を含めた(
但し、これらに限定されない)、他の抗ウイルス剤と組み合わせた、ヒト及び動
物におけるウイルス感染症の治療における抗ウイルス剤としてのIL−8の使用
をも提供する。
本発明によると、例えばレトロウイルス(HIV−1とHIV−2を除く)、
乳頭腫ウイルス、アデノウイルス及びヘルペスウイルスのような、オンコウイル
スによって誘発される癌の予防及び治療のための抗ウイルス剤としてのIL−8
剤の使用も提供する。
本発明によると、アドリアマイシン、シクロホスファミド及びメトトレキセー
トを含めた(但し、これらに限定されない)、他の抗癌剤と組み合わせた、オン
コウイルスによって誘発される癌に対する抗ウイルス剤としてのIL−8剤の使
用をも提供する。
本発明によると、免疫抑制された患者及び動物におけるウイルス感染症の予防
及び治療のための抗ウイルス剤としてのIL−8剤の使用をも提供する。
免疫抑制された患者とは、器官又は組織移植を受けて、アザチオプリン、コル
チコステロイド類、アドリアマイシン、シクロホスファミド及びメトトレキセー
トを包含する(但し、これらに限定されない)免疫抑制剤によって治療される患
者を含む。免疫抑制された患者はまた、アドリアマイシン、シクロホスファミド
及びメトトレキセートを含めた(但し、これらに限定されない)抗癌性化学療法
剤によって治療された又は治療されない、任意の形態の癌又は腫瘍疾患を有する
患者を含む。免疫抑制された患者はさらに、コルチコステロイド、メトトレキセ
ート、アザチオプリン及びシクロホスファミドを含めた(但し、これらに限定さ
れない)、抗炎症剤によって治療された炎症性疾患を有する患者を含む。免疫抑
制された患者はさらに、熱傷損傷を含めた(但し、これに限定されない)、ショ
ック若しくは重度な外傷を有する患者、又は慢性血液透析(chronic hemodialys
is)を受ける患者を包含する。
本発明によると、他の抗ウイルス剤と組み合わせた、免疫抑制された患者及び
動物におけるウイルス感染症に対する抗ウイルス剤としてのIL−8剤の使用を
も提供する。
本発明によると、薬理学的に受容される治療有効量のインターロイキン−8剤
を薬剤学的に受容されるキャリヤーと共に含む抗ウイルス性薬剤製剤(antivira
l pharmaceutical formulation)をも提供する。
本発明によると、ヒト及び動物におけるウイルス感染症を予防又は治療する方
法であって、このような治療を必要とするヒト又は動物に、薬理学的に受容され
る治療有効量のインターロイキン−8剤を投与することを含む上記方法をも提供
する。
図面の簡単な説明
図1A〜1Fは、SCIDマウスにおけるEBV誘導腫瘍増殖と巨脾腫(sple
nomegaly)に対するIL−8の阻害効果を説明する。
図2A、2B及び2Cは、ヒト好中球におけるEBV誘導Ca2+動員(mobili
zation)に対するIL−8とGroαとの効果を説明する。
図3Aと3Bは、ヒト好中球におけるEBV誘導Ca2+動員(A)とRNA合
成(B)とに対する百日咳毒素の効果を説明する。
図面に関連する、好ましい実施態様の説明
(i)IL−8剤
本発明のIL−8剤は、72アミノ酸形のIL−8[Ser IL−8]72、
又は77アミノ酸形のIL−8[Ala IL−8]77、又は[Ser IL−
8]72若しくは[Ala IL−8]77の誘導体若しくは類似体(analogs)で
ある。IL−8に対するアミノ酸の軽度な添加又は欠失がIL−8の活性をやや
変化させる、即ち、強化又は低下させることは、当該技術分野において公知であ
る。したがって、IL−8の誘導体又は類似体は、種々な生物学的系においてI
L−8の生物学的活性に類似した重要な生物学的活性を示す修飾ペプチドをも包
含する。本発明に関連した重要な生物学的活性は、非限定的に、IL−8の抗ウ
イルス活性に類似した抗ウイルス活性を包含する。IL−8剤なる用語は、[S
er IL−8]72若しくは[Ala IL−8]77のような、生物学的活性な
変異体(variant)を包含する。
タンパク質修飾
[Ser IL−8]72又は[Ala IL−8]77の類似体又は誘導体(変
異体)は、ネイティブな[Ser IL−8]72又は[Ala IL−8]77の
アミノ酸配列又は他の特徴が共有結合的に又は非共有結合的に修飾されている分
子として定義される。したがって、変異体(variants)は約10kDの分子量(
例えばβ−メルカプトエタノール又はジチオトレイトールのような還元剤の不存
在下でおこなわれるSDS−PAGEによって測定)を有することも有さないこ
ともできる。アミノ酸配列変異体は[Ser IL−8]72又は[Ala IL
−8]77の対立遺伝子相対物(allelic relatives)を包含するのみでなく、それ
らの予定された突然変異体をも包含する。一般に、アミノ酸配列変異体はネイテ
ィブの[Ser IL−8]72又は[Ala IL−8]77のアミノ酸配列に対
して、少なくとも約80%相同性、より典型的には、少なくとも約90%相同性
を有するアミノ酸配列を有する。今後は、IL−8剤なる用語は、他に指定しな
いかぎり、ネイティブ配列又は変異形のいずれかを意味するものとする。
したがって、adv.Immunol.(Adv.Immunol.55:9
7,1994)に記載されるようなヒト[Ala IL−8]77アミノ酸配列を
有する[Ala IL−8]77、例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネズ
ミ、ネコ[Ala IL−8]77等のような、他の種からの類似した[Ala
IL−8]77タンパク質並びに、その生物学的活性を示す[Ala IL−8]77
タンパク質の対立遺伝子及びin vitro発生共有結合誘導体を含めた、
これらの[Ala IL−8]77分子の生物学的に活性なアミノ酸配列変異体が
本発明の範囲内に包含される。
IL−8剤の誘導体とアミノ酸配列変異体とが、本明細書の他の箇所に記載す
るように、治療的有用性を意味する、それらの生物学的活性に関して有用である
。
共有結合修飾
in vitro合成によって都合よく製造される、IL−8剤の共有結合修
飾は、本発明の範囲内に包含される。このような修飾は、精製タンパク質又は粗
タンパク質の標的アミノ酸残基を、選択された側鎖又は末端残基と反応すること
ができる有機誘導体形成剤(organic derivatizing agent)と反応させることによ
って分子中に導入することができる。得られた共有結合誘導体は変化した生物学
的活性及び/又は生体内利用可能性(bioavailability)を有する可能性がある。
したがって、共有結合修飾されたIL−8剤は、in vivo投与時に徐々に
形質転換してより活性な分子(非誘導体化IL−8剤)になる、低い生物学的活
性を有するプロドラッグでありうる。変異体は、化合物の遅延した処理(retarde
ddisposition)(代謝及び/又は除去の減少)を生じる意味で変化したIL−8
剤の代謝的により安定で、生物学的に活性な類似体であることもできる。
配列修飾
[Ser IL−8]72又は[Ala IL−8]77のアミノ酸配列変異体も
製造することができる。このような変異体は、例えば、ネイティブ[Ser I
L−8]72又は[Ala IL−8]77のアミノ酸配列内の残基からの欠失、又
は残基の挿入若しくは置換を包含する。欠失、挿入及び置換の任意の組合せをお
こなって、所望の活性を有する変異体を製造することができる。
遺伝的なレベルでは、これらの変異体は通常、[Ala IL−8]77をコー
ドするDNAにおけるヌクレオチドの部位特異的突然変異誘発と、それによる変
異体をコードするDNAの作製と、その後の組換え細胞培養物中のこのDNAの
発現とによって製造される。これらの変異体は典型的に、天然生成類似体と同じ
質的な生物学的活性を示す。
[Ala IL−8]77は凝集してダイマーになることができるので、一方又
は両方のサブユニットが変異体である、ヘテロダイマー及びホモダイマーを提供
することが本発明の範囲内である。両方のサブユニットが変異体である場合には
、アミノ酸配列の変化は各サブユニット鎖に関して同じでも異なってもよい。ヘ
テロダイマーは、両方のサブユニットをコードするDNAによって宿主細胞を同
時形質転換し、必要に応じて、所望のヘテロダイマーを精製することによって、
又はサブユニットを別々に合成し、サブユニットを解離し、解離されたサブユニ
ットを混合し、サブユニットを再会合させることによって容易に製造される。
IL−8剤なる用語は、IL−8受容体に対する抗体、又はIL−8、若しく
は例えば抗ウイルス性効果のような、IL−8様生物学的応答を誘発する、IL
−8の上記類似体若しくは変異体の1つに対して生じた抗体に対する抗イディオ
タイプ抗体をも包含する。
IL−8剤なる用語はさらに、IL−8受容体(A型若しくはB型)、又はI
L−8を結合する他の受容体、又はこれらの受容体の選択された領域に対応する
ペプチド、又はIL−8受容体若しくは、IL−8と結合する他の受容体に対す
るウイルス粒子の結合を防止する、ウイルスエンベロープのタンパク質(又は糖
タンパク質若しくはリンタンパク質)若しくはこれらのタンパク質の選択された
領域に対応するペプチドをも包含する。
IL−8剤なる用語はさらに、IL−8受容体(又はIL−8と結合する他の
受容体)の類似体若しくは変異体;これらの受容体の選択された領域に対応する
ペプチドの類似体若しくは変異体;ウイルスエンベロープのタンパク質(又は糖
タンパク質若しくはリンタンパク質)の、若しくはこれらのタンパク質の選択さ
れた領域に対応するペプチドの類似体若しくは変異体をも包含する。
しかし、IL−8剤なる用語は、下記式を有する約17アミノ酸のペプチドを
包含しない:
Glu−Leu−Arg−Cys−Xaa1−Cys Xaa2−Xaa3−X
aa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaall−
Xaa12
式中、
Xaa1はGln、Met又はValであり;
Xaa2はIle又はValであり;
Xaa3はLys、Gln又はSerであり;
Xaa4はThr又はIleであり;
Xaa5はTyr、Leu、Met、HiS、Val又はThtであり;
Xaa6はSer、Gln、Thr又はAlaであり;
Xaa7はLys、Arg又はHisであり;
Xaa8は不存在であるか、又はPro、Phe若しくはGlyであり;
Xaa9は不存在であるか、又はPhe、Ile若しくはValであり;
Xaa10は不存在であるか、又はHis、Lys若しくはArgであり;
Xaa11は不存在であるか、又はPro、Leu若しくはPheであり;
Xaa12は不存在であるか、又はLys、His若しくはArgである。
(ii)ウイルス感染症
本発明によってIL−8剤によって治療することができるウイルス感染症は、
ヒト及び動物のウイルスによって引き起こされる感染症である。
“ヒト及び動物のウイルス”なる表現は、非限定的に、一般にDNA及びRN
Aウイルスと、HIV−1及びHIV−2以外のレトロウイルス科を包含するよ
うに意図される。DNAウイルスは、非限定的に、パルボウイルス科、パポバウ
イルス科、アデノウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科及びヘ
パドナウイルス科(hepadnaviridae)を包含する。RNAウイルスは、非限定的に
、レトロウイルス科、ピコナウイルス科、トガウイルス科、オルトミクソウイル
ス科、パラミクソウイルス科、コロナウイルス科、レオウイルス科、オンコナウ
イルス科(oncornaviridae)及びフィロウイルス科を包含する。
Eostein−Barrウイルス(EBV)に対するIL−8の抗ウイルス
活性はin vivoにおいて研究されている。Bリンパ球及びTリンパ球の不
存在を特徴とするSCIDマウスがしばしば、EBV感染ドナーからの末梢血リ
ンパ球によって再構成されたときに、Bリンパ腫を発症することは周知である。
この感染症は巨脾腫、腹腔の拡大及び下痢を付随する。したがって、SCIDマ
ウスはウイルス病原体に関係するヒトリンパ腫発生の重要なin vivoモデ
ルである。IL−8の抗ウイルス活性を評価するために、EBV形質転換B細胞
(B95−8細胞系統)をSCIDマウスに腹腔内注入し;次に、以下の表1に
よる種々なスケジュールに従ってIL−8を腹腔内投与した。
表1
EBV感染SCIDマウスに対するIL−8の効果についての
in vivo試験のプロトコール
EBV感染B95−8細胞(60x106)をSCIDマウスに腹腔内(IP
)注入した。指定時点において、マウスを組換えIL−8によって処置した。4
9日間後に、マウスを殺して、剖検した。各グループは3匹のマウスから構成さ
れた。IL−8は常に、0.1%BSAを含有する0.9%NaCl中の溶液で
ある25μgボラス(IP)/マウスとして投与した。
感染後4週間目に、B95−8細胞のみで処置されたマウスは腹部腫脹の発生
によって評価される腹腔の顕著な炎症を示し、このモデルにおける腫瘍増殖の特
徴である下痢を有した。これとは対照的に、1週間の間隔をおいて25μgのI
L−8によって5回処置されたマウス(グループ6)では、このような症状は観
察されなかった。
25μgのIL−8によって連続6日間処置されたマウス(グループ5)では
、感染後4週間目に下痢が観察されたが、この下痢は感染した非処置動物(グル
ープ3)におけるよりも重度ではなかった。
25μgのIL−8によって1回のみ処置されたマウス(グループ2)では、
感染後の4週間目に観察された腹腔内炎症と下痢とが、グループ3の感染した非
処置動物におけると同程度に重度であった。
4週間目に、グループ1、2及び6の動物は正常に見え、上記症状を示さなか
った。グループ3の動物は感染後第5週と第6週の経過中に死亡し;剖検は脾臓
と肝臓のレベルにおける大量の出血を明らかにした。感染後7週間目に、全ての
グループの生存動物を殺して、剖検した。
IL−8によって1回のみ処置された感染動物(グループ4)は明白な巨脾腫
を示し、図1Bに示すように、約0.7cm直径の腫瘍が各マウスに発見された
。感染していない非処置動物(グループ1)では、脾臓は正常であり、図1Aか
ら明らかであるように、腫瘍は存在しなかった。25μgのIL−8によって連
続6日間処置された動物(グループ5)では、巨脾腫と腫瘍とが観察されたが、
これらはグループ4の動物に比べると軽度であった。1週間の間隔を置いて25
μgのIL−8によって4回処置された動物(グループ6)では、腫瘍が検出さ
れず、脾臓(及び他の器官)は非感染動物(グループ1と2)の脾臓から形態学
的に区別されなかった。
in vivoにおけるEBVに対するIL−8の抗ウイルス活性をさらに、
ヒト末梢血単核細胞(PBMCs)によって再構成され、以下の表2に従ってI
L−8によって処置された又はされないSCIDマウスのモデルにおいても研究
した。
表2
PBMCS−HU−SCIDマウスのEBV感染に対する
IL−8の効果についてのin vivo試験のプロトコール
全ての動物は40x106ヒトPBMCs(0.5mlのPBS中、i.p.
注入)を受けた。5日間後に、グループ3と4の動物をEBV(0.5x106
TFU/マウス、i.p.注入)によって感染させ、全ての動物を0、6、13
、20及び27日目に生理食塩水又はIL−8によって処置した。IL−8は常
に、NaCl:グルコース+0.1%BSA中の溶液である25μgボラス(i
.p.)として投与した。処置の31日間後に、マウスを殺した。
結果は以下の表3に示す。感染後22〜23日目に、グループ3の若干の動物
は感染症の症状を示し、24〜25日目に致死が観察された。1週間の間隔を置
いて25μg(i.p.)のIL−8によって5回処置されたEBV感染動物(
グループ4)では、症状の出現は26〜27日目まで遅延した;このグループで
は、致死も遅延し、最初の動物死亡は28日目に見られた。31日目までに、グ
ループ4の5匹中の2匹に対して、グループ3の8匹のうち6匹が死亡した。生
存動物を殺し(31日目)、剖検した;両グループの生存動物の間で腫瘍のサイ
ズと数並びに脾臓サイズに明白な差はなかった。グループ1と2の動物は症状を
全く示さなかった。
表3
PBMCs−HU−SCIDマウスのEBV感染症状(及び致死)に対する
IL−8の効果についてのin vivo試験のプロトコール(1)観察された感染症関連症状は腫瘍増殖による腹部腫脹、痩せ及び活動低下
(無気力)であった。
(2)このグループは最初に10匹を含有したが;ヒトPBMC移植(血清中の
IgGと抗ウイルス抗体との存在によって評価)が2匹において不成功であった
ので、8匹のみを検討した。
NaCl:グルコース+0.1%BSAによって又はIL−8のみによって処
置されたマウス(グループ1とグループ2)では異常(31日目まで)が検出さ
れなかった。
EBVがin vitroでヒト好中球と相互作用して、RNA及びタンパク
質合成を調節することが最近、判明している。IL−8がヒト好中球において形
状変化と、細胞内遊離Ca2+濃度([Ca2+]i)の一時的上昇とを誘発するこ
とが知られている。EBVが単離されたヒト好中球中の[Ca2+]iに対して類
似するが同じではない(Ca2+蓄積の動力学が異なる)効果を誘発することが観
察された。したがって、本発明者等は、好中球における[Ca2+]iのEBV誘
発上昇に対するIL−8の効果を研究した。蛍光プローブFURA−2/AMを
負荷され、EBVへの暴露の前又は後にIL−8又はGroαによって処理され
たヒト好中球におけるCa2+動員をモニターした。EBVによって誘発された[
Ca2+]iの上昇は、好中球をIL−8によって前処理した場合には、強度に抑
制された。他方では、好中球のEBV前処理はIL−8又はGroαの効果を抑
制しなかった(図2A、2B、2C)。IL−8受容体はGタンパク質共役型受
容体であるので、本発明者等は次にEBV誘発Ca2+動員とRNA合成とにおけ
るGタンパク質の可能な関与を、グアニンヌクレオチド結合調節タンパク質(G
タンパク質)の既知阻害剤である百日咳毒素によって好中球を前処理することに
よって試験した。得られた結果は、百日咳毒素がEBVによって誘発される、C
a2+動員とRNA合成とを顕著に阻害することを示し、これらのEBV誘発イベ
ントがGタンパク質によって仲介されることを示唆した。
IL−8の抗ウイルス及び/又は抗腫瘍効果に関与する機構は不明であるが、
IL−8が腫瘍壊死因子α(TNFα)又はインターフェロンの産生のような、
自然抗ウイルス機構を誘発又は増強することを仮定することができる。或いは、
単離好中球に対するEBV誘発生物学的効果に対するIL−8の観察された効果
を想定するならば(図2と3)、EBVとその標的細胞との相互作用がIL−8
受容体(又はIL−8を認識しうる結合部位)を関係させることも可能であり、
この場合には、IL−8は結合部位に関する競合(立体障害)、又は受容体内在
化(receptor internalization)の誘発のいずれかによってウイルス−標的細胞相
互作用を妨害することができる。或いは、標的細胞のIL−8に対する暴露が受
容体機能と、付着、内在化、複製及び、自然細胞抗ウイルス機構の阻害を包含す
るウイルス感染の過程に関与するシグナル伝達とをダウンレギュレートすること
が考えられる。このような仮説は、ケモカイン受容体関連タンパク質が種々なウ
イルスによってコードされ、感染細胞の形質膜上に発現されるという最近の報告
によって支持される。EBV系では、ウイルスが形質転換細胞におけるBLR−
1(恐らく、EBI−2に等しい)及びBLR−2(EBI−1に等しい)受容
体を誘導することが知られており、これらの受容体はIL−8受容体に高度に相
同なGタンパク質共役型受容体である。EBV感染細胞上にIL−8受容体に相
同な、これらのサイトカイン受容体が発現することは、IL−8受容体を有さな
いB細胞であるこれらの感染細胞をIL−8の推定される抗ウイルス活性を受け
やすいものにすることができる。これらの仮説はIL−8の抗ウイルス活性の推
定される機構をある程度理解するために与えるが、本発明の範囲を限定するもの
ではない。
これらの結果は、IL−8が癌ウイルスによって引き起こされる、ウイルス感
染症及び癌の治療に有用でありうることを実証する。
(iii)投与量範囲
インターロイキン−8剤の治療投与量の大きさは、治療されるべき状態の性質
と重症度、特定のIL−8剤、他の活性化合物の随伴使用とその投与経路によっ
て変化し、臨床的判定に基づいて決定される。インターロイキン−8剤の治療投
与量の大きさは、個々の患者の年齢、体重及び応答によっても変化する。したが
って、IL−8剤の有効投与量は臨床医によって患者のために最良の判定の全て
の基準と使用を検討した後に薬物動態的研究によって決定されることができる。
一般に、有効投与量は血液中約1〜100nMである。したがって、臨床医は血
液中でこのような濃度を生じるような用量を投与する。
(iv)薬剤組成物
哺乳動物、特にヒトに本発明のIL−8剤の有効量を投与するために、任意の
投与経路を用いることができる。例えば、投与量を経口的に、非経口的に、局所
的に、動脈内に、腹腔内に、静脈内に、胸膜腔内に、眼内に、注射によって、皮
下等に投与することができる。注射は灌流及び連続注入をも含むと理解される。
投与形は錠剤、カプセル剤、粉末、溶液、分散系、懸濁液、クリーム、軟膏及び
エアゾールを包含する。
本発明の薬剤組成物は有効成分としてのIL−8剤と、薬剤学的に受容される
キャリヤーと、任意の他の治療的成分とを含む。
該組成物は経口投与又は非経口投与に適した組成物を包含する。これらの組成
物を単位投与形で提示し、製薬技術分野で周知の任意の方法によって製造するこ
とが便利である。単位投与形は徐放性の単位投与形であることができる。
実際の使用では、IL−8剤を有効成分として、慣用的な薬剤配合方法に従っ
て、薬剤キャリヤーと組み合わせて、密接な混合剤を形成することができる。キ
ャリヤーは投与のために望ましい製剤形態に依存して、非常に多様な形態をとる
ことができる。経口投与形のための組成物の製造では、例えば懸濁液、エリキシ
ル剤及び溶液のような経口液体製剤の場合には、例えば水、グリコール、油、ア
ルコール、フレーバー剤、防腐剤、着色剤等のような、通常の薬剤媒質のいずれ
かを用いることができる、;又は例えば粉末、カプセル剤及び錠剤のような経口
固体製剤の場合には、例えば澱粉、砂糖、微結晶質セルロース、希釈剤、顆粒化
剤(granulating agent)、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等のようなキャリヤーを用い
ることができる。錠剤とカプセル剤は、それらの投与が容易であるために、最も
有利な経口投与単位形であり、これらの場合には固体薬剤キャリヤーが用いられ
る。必要な場合には、標準的な水性又は非水性方法によって錠剤を被覆すること
ができる。
経口投与に適した、本発明の薬剤組成物は、それぞれ予め定められた量のIL
−8剤を含有する、例えばカプセル剤、カシェ剤若しくは錠剤のような個別の単
位として、又は粉末若しくは顆粒として、又は水性液体中、非水性液体中、水中
油エマルジョン中若しくは油中水エマルジョン中の、溶液若しくは懸濁液として
提示されることができる。このような組成物は任意の製薬方法によって製造する
ことができ、このような方法は1種類以上の必要成分を包含するキャリヤーと、
IL−8剤を結合させる工程を含む。一般に、これらの組成物はIL−8剤を液
体キャリヤー又は微粉状固体キャリヤー又は両方と均一にかつ密接に混合し、次
に、必要な場合には、生成物を所望の状態に成形することによって製造される。
例えば、錠剤は、任意に1種類以上の補助的な成分と共に圧縮又は成形すること
によって製造することができる。圧縮錠剤は適当な装置内で任意に結合剤、滑沢
剤、不活性希釈剤、界面活性剤又は分散剤と混合した、例えば粉末又は顆粒のよ
うな、自由流動形の有効成分を圧縮することによって製造することができる。成
形錠剤は適当な装置内で、不活性液体希釈剤によって湿らせた粉状コンパウンド
の混合物を成形することによって製造することができる。
IL−8剤は、患者に対して有害でない量、又は個々の患者における有害な副
作用よりも利益が勝るような量と理解すべきである薬理学的又は生理的に受容さ
れる量で投与されるべきであることは理解されるであろう。同様に、IL−8剤
は、予定の治療目標を満たし、インターロイキン−8剤の投与から得られる利益
を与える量であると理解すべきである治療有効量で投与されるべきである。実施例
in vivo試験
実施例1
in vivoでEBV形質転換細胞に感染したSCIDマウスに対するIL−
8の抗ウイルス効果
生後8週間の雌のSCID−CB17マウス(Charles River,
St.Constant,カナダ)をこの試験に用いた。それぞれ3匹のマウス
の6グループを形成し、EBV形質転換細胞によって感染させ、上記表1に要約
するようにIL−8によって処置した又は処置しなかった(グループ3〜6)。
0日目に、B95−8細胞(60x106)をSCIDマウスに腹腔内(IP)
注入した。マウスは、指定された場合には、さらにIL−8の1回以上の注入(
IP)も受けた(グループ2、4〜6)(25μg/マウス/注入)(Pepr
otech社、Rocky Hid、NJ)。用いたIL−8は72アミノ酸形
であり、0.1%BSAを含有するNaCl 0.9%中の溶液として用いた。
処置の7週間後に、マウスを頚部脱臼によって殺し、剖検した。腫瘍と他の重要
な組織とを写真撮影し(図1A〜1F)、切断して、免疫蛍光試験とウイルスD
NA分析とのために凍結保存した。図1Aは非感染非処置マウス(グループ1)
を説明する。図1Bと1CはB95−8細胞による感染後30分間目にIL−8
の1回注入によって処置されたEBV感染マウスを説明する(グループ4)。図
1Bと1Cは同じ動物の腹腔を示し、図1Cはクローズアップ写真である(グル
ープ4)。図1DとIEはB95−8細胞による感染後30分間目に開始して連
続4週間にわたって週1回、IL−8によって処置されたEBV感染マウスを説
明する(グループ6)。図1Fは、IL−8によって1回処置された(左)、I
L−8によって4回処置された(中央)、及び処置されなかった(右)EBV感
染マウスの腹腔を示す。
実施例2
ヒト末梢血単核細胞によって再構成されたSCIDマウス(PBMCs−hu−
SCID)のEBV感染に対するIL−8の抗ウイルス効果
健全なヒト被験者に対してリンホフェレシス(lymphopheresis)をおこなった。
細胞を1時間にわたって回収し、Ficoll勾配上で750xgにおいて25
分間精製した。PBMCsを次にPBS中で洗浄し、C.B.−17/SCID
マウス(生後4〜5週間)に腹腔内(i.p.)注入した(40x106細胞/
0.5ml PBS/マウス)。5日間後に、マウスを4グループに分けて、こ
れらの動物をEBVの腹腔内注入(50μlの107TFU/ml/マウス)に
よって感染させ、表2に指定するように、IL−8によって処置した又は処置し
なかった。IL−8は0.1%BSAを含むNaCl:グルコース中の溶液とし
て用いた。処置の4週間後に、マウスを頚部脱臼によって殺し、剖検した。重要
な組織を取り出し、分子分析のために凍結保存した。
in vitro試験
実施例3
単離ヒト好中球中のEBVによって誘導されたカルシウム動員に対するIL−8
(及びGroα)の阻害効果
好中球懸濁液(10x106細胞/ml)を蛍光プローブ Fura−2/ア
セトキシメチルエステル(Molecular Probe、Eugene、O
R)と共にインキュベートした(1μM、30分間、37℃)。次に、細胞を細
胞外プローブを除去するように洗浄して、1.6mMカルシウムを含有し、10
mM HEPESを補充されたハンクスの平衡塩類溶液(HBSS)中に懸濁さ
せた。Fura−2負荷細胞の懸濁液をEBV(106形質転換単位[TFU]
/ml)と、IL−8又はGroα(100nM)とによって異なる順序で処置
した。蛍光(図2A、2B、2C)をAminco−Bowman、シリーズ2
Apparatus(SLM−AmincoNRochester)NY)を
用いてモニターした(励起波長と発光波長、それぞれ、340nmと510nm
)。EBV菌株B95−8のウイルス製剤を既述したように作製した。簡単に説
明すると、マイコプラズマを含まないと試験された(mycoplasma-free tested)B
95−8を、10%熱不活性化FBSを補充したRPMI1640培地中で増殖
させた。細胞の生存率が20%未満であると判明したときに、細胞を含まない培
養上澄み液を回収し、0.45mm孔度フィルターに通して濾過して、ウイルス
粒子を超遠心分離によってさらに精製した。ウイルス粒子を5mMリン酸ナトリ
ウム(pH7.5)中に懸濁させ、10〜30%(重量/容積)デキストラン勾
配での遠心分離によって精製した。濃縮されたウイルス製剤をRPMI1640
中に再懸濁させ、等分化して(aliquoted)、使用するまで−80℃において貯蔵
した。ウイルス力価は1x107形質転換単位(TFU)/mlであることが判
明した。図2A、2B、2Cに示す結果をさらに下記で説明する:
図2A:a:Groα(100nM);b:EBV;c:IL−8(100nM
)
図2B:a:Groα(100nM);b:IL−8(100nM);c:EB
V
図2C:a:EBVI/10希釈、105TFU/ml;b:EBV;c:Gr
oα(100nM);d:IL−8(100nM)
実施例4
ヒト好中球中のEBVによる誘導される、Ca2+動員と新規RNA合成とに対す
る百日咳毒素の効果
ヒト好中球(10x106細胞/ml)を0.5mg/mlの百日咳毒素(G
タンパク質のADPリボシル化を触媒し、Gタンパク質仲介イベントを阻害する
)の存在下でEBV(106TFU/ml)又はIL−8(100nM)の刺激
前の2時間にわたって37℃において2時間プレインキュベートした。カルシウ
ム動員を実施例2に述べるように測定した。結果は図3Aに示す、図3Aにおい
て:a:IL−8による刺激
b:EBVによる刺激
c:百日咳毒素による前処置とIL−8による刺激
d:百日咳毒素による前処置とEBVによる刺激
総RNA中への[5−3H]ウリジンの組込みの測定によって、EBV誘導R
NA合成を研究した。百日咳毒素(0.5mg/ml)によって前処理した又は
しない好中球(5x106細胞/ml)を1%熱不活性化(1時間、56℃)自
己血漿(autogenous plasma)を補充したHBSS緩衝剤中に懸濁させた。この細
胞懸濁液の100mlアリコートを96穴マイクロタイタープレート中で1mC
iの[5−3H]ウリジン[サンプルにつき]の存在下でインキュベートし、3
nMのGM−CSF(陽性対照)又は感染性EBV(106TFU/ml)によ
って処理した。プレートを5%CO2を含有する湿った雰囲気中で37℃におい
て5時間にわたってインキュベートした。このインキュベーション期間歩に、細
胞をガラス繊維ディスクに通しての濾過によって回収して、液体シンチレーショ
ンカウンターにおいて放射能を測定した。百日咳毒素はSigma Chemi
cals(St.Louis、MO)から入手し、0.01%BSAを含有する
NaCl 0.9中の溶液として用いた。GroαはPeprotechから入
手して、百日咳毒素に関して上述したように用いた。
図3Bに説明した結果は6種類の異なる結果を表す(GM−CSF、顆粒球−
マクロファージコロニー刺激因子)。
本発明をその特定の実施態様に関連して説明してきたが、本発明がさらに改変
されうるものであり、本出願が一般に本発明の原理に従う、本発明の如何なる変
化、用途、又は適用を包括するように意図され、本発明が属する技術分野内の公
知の又は慣用的な実施に入り、本明細書に前述した及び以下の添付請求の範囲に
おける本質的な特徴に適用されるような、本発明の開示からの離脱を含むことは
理解されるであろう。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成10年5月5日(1998.5.5)
【補正内容】
請求の範囲
1.ヒト又は動物におけるウイルス感染症の治療に用いるためのインターロ
イキン−8剤の使用であって、前記ウイルス感染症がHIV−1及びHIV−2
以外のウイルスの感染症であり、前記インターロイキン−8剤が
下記式:
Glu−Leu−Arg−Cys−Xaa1−Cys Xaa2−Xaa3−Xa
a4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−X
aa12
[式中、
Xaa1はGln、Met又はValであり;
Xaa2はIle又はValであり;
Xaa3はLys、Gln又はSerであり;
Xaa4はThr又はIleであり;
Xaa5はTyr、Leu、Met、His、Val又はThrであり;
Xaa6はSer、Gln、Thr又はAlaであり;
Xaa7はLys、Arg又はHisであり;
Xaa8は不存在であるか、又はPro、Phe若しくはGlyであり;
Xaa9は不存在であるか、又はPhe、Ile若しくはValであり;
Xaa10は不存在であるか、又はHis、Lys若しくはArgであり;
Xaa11は不存在であるか、又はPro、Leu若しくはPheであり;
Xaa12は不存在であるか、又はLys、His若しくはArgである]
を有する約17アミノ酸のペプチドとは異なるものである上記使用。
2.前記インターロイキン−8剤がインターロイキン−8タンパク質又は、
インターロイキン−8の生物学的活性を有するインターロイキン−8の類似体で
ある、請求項1記載の使用。
3.ウイルス感染症がDNAウイルス感染症又はRNAウイルス感染症であ
る、請求項1又は2に記載の使用。
4.前記ウイルス感染症がパルボウイルス科、パポバウイルス科、アデノウ
イルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科及びヘパドナウイルス科か
ら成る群から選択されたDNAウイルスの感染症である、請求項3記載の使用。
5.前記ウイルス感染症がレトロウイルス科、ピコナウイルス科、トガウイ
ルス科、オルソミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、コロナウイルス科、
レオウイルス科、オンコルナウイルス科及びフィロウイルス科から成る群から選
択されたRNAウイルスの感染症である、請求項3記載の使用。
6.前記インターロイキン−8剤が77アミノ酸のインターロイキン−8タ
ンパク質である、請求項1記載の使用。
7.前記インターロイキン−8剤が72アミノ酸のインターロイキン−8タ
ンパク質である、請求項1記載の使用。
8.前記ウイルス感染症が、EBV、HSV−1、HSV−2、CMV、V
ZV、HHV−6、HHV−7及びHHV−8から成る群から選択される、ヘル
ペスウイルス科のウイルスの感染症である、請求項4記載の使用。
9.前記ウイルス感染症が、ウシ下痢性ウイルスであるトガウイルス科の感
染症である、請求項5記載の使用。
10.前記ウイルス感染症が、ブタエンテロウイルスであるピコナウイルス
科の感染症である、請求項5記載の使用。
11.前記ウイルス感染症が、パラミクソウイルス科ウイルス又はウシRS
ウイルスの感染症である、請求項5記載の使用。
12.前記インターロイキン−8剤がインターフェロン−α、−β、−γ、
腫瘍壊死因子−α、ガンシクロビル、アシクロビル、ビダラビン、イドクスウリ
ジン、ファムシクロビル、プロスタグランジン類及びプロスタグランジン類似体
類から成る群から選択される抗ウイルス剤と共に投与される、請求項1記載の使
用。
13.前記ヒト又は動物が免疫抑制されたヒト若しくは動物、又はウイルス
感染症の発症を高めることが知られている薬物によって治療されたヒト若しくは
動物である、請求項1記載の使用。
14.前記薬物がアザチオプリン、コルチコステロイド類、アドリアマイシ
ン及びメトトレキセートから成る群から選択される、請求項13記載の使用。
15.ヒト又は動物においてオンコウイルスによって引き起こされる癌を治
療するためのインターロイキン8剤の使用であって、前記インターロイキン−8
剤が下記式:
Glu−Leu−Arg−Cys−Xaa1−Cys Xaa2−Xaa3−Xa
a4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−X
aa12
[式中、
Xaa1はGln、Met又はValであり;
Xaa2はIle又はValであり;
Xaa3はLys、Gln又はSerであり;
Xaa4はThr又はIleであり;
Xaa5はTyr、Leu、Met、His、Val又はThrであり;
Xaa6はSer、Gln、Thr又はAlaであり;
Xaa7はLys、Arg又はHisであり;
Xaa8は不存在であるか、又はPro、Phe若しくはGlyであり;
Xaa9は不存在であるか、又はPhe、Ile若しくはValであり;
Xaa10は不存在であるか、又はHis、Lys若しくはArgであり;
Xaa11は不存在であるか、又はPro、Leu若しくはPheであり;
Xaa12は不存在であるか、又はLys、His若しくはArgである]
を有する約17アミノ酸のペプチドとは異なるものである上記使用。
16.前記インターロイキン8剤がアドリアマイシン、シクロホスファミド
及びメトトレキセートから成る群から選択される抗癌剤と共に用いられる、請求
項15記載の使用。
17.薬理学的に受容される治療有効量のインターロイキン−8剤を、製薬
的に受容されるキャリヤーと組み合わせて含む、ヒト又は動物におけるウイルス
感染症を治療するための抗ウイルス性薬剤製剤であって、前記ウイルス感染症が
HIV−1及びHIV−2以外のウイルスの感染症であり、前記インターロイキ
ン−8剤が下記式:
Glu−Leu−Arg−Cys−Xaa1−Cys Xaa2−Xaa3−Xa
a4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−X
aa12
[式中、
Xaa1はGln、Met又はValであり;
Xaa2はIle又はValであり;
Xaa3はLys、Gln又はSerであり;
Xaa4はThr又はIleであり;
Xaa5はTyr、Leu、Met、His、Val又はThrであり;
Xaa6はSer、Gln、Thr又はAlaであり:
Xaa7はLys、Arg又はHisであり;
Xaa8は不存在であるか、又はPro、Phe若しくはGlyであり;
Xaa9は不存在であるか、又はPhe、Ile若しくはVa1であり;
Xaa10は不存在であるか、又はHis、Lys若しくはArgであり;
Xaa11は不存在であるか、又はPro、Leu若しくはPheであり;
Xaa12は不存在であるか、又はLys、His若しくはArgである]
を有する約17アミノ酸のペプチドとは異なるものである上記抗ウイルス性薬剤
製剤。
18.ヒト又は動物におけるウイルス感染症を治療するための薬剤の製造へ
のインターロイキン8剤の使用であって、前記ウイルス感染症がHIV−1及び
HIV−2以外のウイルスの感染症であり、前記インターロイキン−8剤が下記
式:
Glu−Leu−Arg−Cys−Xaa1−Cys Xaa2−Xaa3−Xa
a4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−X
aa12
[式中、
Xaa1はGln、Met又はValであり;
Xaa2はIle又はValであり;
Xaa3はLys、Gln又はSerであり;
Xaa4はThr又はIleであり;
Xaa5はTyr、Leu、Met、His、Val又はThrであり;
Xaa6はSer、Gln、Thr又はAlaであり;
Xaa7はLys、Arg又はHisであり;
Xaa8は不存在であるか、又はPro、Phe若しくはGlyであり;
Xaa9は不存在であるか、又はPhe、Ile若しくはValであり;
Xaa10は不存在であるか、又はHis、Lys若しくはArgであり;
Xaa11は不存在であるか、又はPro、Leu若しくはPheであり;
Xaa12は不存在であるか、又はLys、His若しくはArgである]
を有する約17アミノ酸のペプチドとは異なるものである上記使用。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
A61P 37/02 A61P 37/02
43/00 121 43/00 121
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG
,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT
,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,
CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,F
I,GB,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE
,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,
LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,M
X,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE
,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,
UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZW
(72)発明者 ダマイ,バッサム
アメリカ合衆国ニュージャージー州08648,
ローレンスヴィル,タウン・センター・ノ
ース 4121