【発明の詳細な説明】
IL-1/TNF-α活性化キナーゼ(ITAK)、並びに当該キナーゼを
作成しそして使用する方法
技術分野
本発明は一般的に、炎症に関連する情報伝達経路、およびより詳細にはIL-1/T
NF-α活性化キナーゼ(ITAK)に向けられる。
発明の背景
インターロイキン-1(IL-1)および腫瘍壊死因子-α(TNF-α)は感染、負傷
または免疫的誘発に反応して、全身でおよび局所的に産生される2つのサイトカ
インである。一方(またはもう一方)のサイトカインの作用が特異的に遮断され
ている、あるいは精製サイトカインが投与されている研究に基づき、IL-1および
TNF-αは多くの疾患過程に関連づけられている。例えば、IL-1は、慢性関節リウ
マチおよびその他の変性関節疾患、炎症性腸疾患、I型糖尿病、乾癬、アルツハ
イマー病、およびアレルギーを含む炎症性疾患に関連づけられている。
TNF-αの過剰産生は、同様に、再灌流損傷、慢性関節リウマチ、心臓血管疾患、
HIV感染およびHIV誘導神経障害などの感染性疾患、アレルギー性/アトピー性疾
患、炎症性疾患/自己免疫、悪性疾患、器官移植拒絶または移植片対宿主疾患を
含む移植困難、悪液質、および先天性、皮膚、神経、腎、毒性および代謝/特発
性疾患などの疾患に関連づけられている。2つのサイトカインが共同で作用して
いると考えられる特定の特異な事例は、全身性炎症反応症候群の誘導におけるも
のである。
IL-1およびTNF-αが制御なしに産生された結果が重大なものとなる可能性があ
るため、当該サイトカインの1つ、または好ましくは両方の産生または活性を制
限しうる療法に関し、かなりな努力が払われてきた。普及している療法は、循環
するサイトカインに特異的に結合するタンパク質を投与し、その結果サイトカイ
ンが細胞受容体と相互作用するのを妨げるものである。こうしたタンパク質に
基づいた治療薬は典型的には、抗体または「可溶性」受容体(すなわち、天然細
胞受容体の組換え型で、膜貫通および情報伝達領域が欠失しているもの)である
。さらに別の、タンパク質に基づく治療薬は、IL-1受容体アンタゴニストタンパ
ク質(IL-1ra)であり、IL-1のアゴニスト型と同じ細胞受容体に結合において競
合するが、細胞内情報を誘導しない。
IL-1またはTNF-αによりごく少数のIL-1またはTNF-α受容体が占有されただ
けで細胞反応(そしてしたがって上述の有害な影響)が生成されるため、タンパ
ク質に基づく3種の治療の効果はいずれも、限定されている。 したがって、複
合体形成に有利な平衡に追いやるために(すなわち、IL-1またはTNF-αがそれぞ
れの受容体に結合するのを効果的に妨げるために)、抗サイトカイン抗体、可溶
性受容体またはアンタゴニストタンパク質を比較的高いレベルに維持する必要が
ある。そのようなタンパク質に基づく治療薬の別の欠点は、各治療薬は2種のサ
イトカインのうち1種のみに選択的であるということである。したがって、IL-1
およびTNF-α産生を制御しようと試みるなら、多数の治療薬を大量に患者に投与
しなければならない。
TNF-αおよびIL-1の生物学的効果は全く同様であるが、これらサイトカインの
構造、およびこれらの受容体の構造は大変異なっている。IL-1およびTNF-αは、
それぞれのサイトカインがその受容体に結合すると、同様の受容体後情報伝達経
路に影響を及ぼすらしいため、これらは重複する生物学的活性を有しているよう
である。これらの経路の詳細の多くは明らかでない。
例えば、どちらのサイトカインも転写因子NF-κBおよびAP-1を活性化し、広い
範囲のさまざまな遺伝子の制御された転写を導くが、この過程を制御する受容体
に近接した特異的なエフェクターは明らかでない。さらに、どちらのサイトカイ
ンも、それぞれセラミドおよびアラキドン酸を生成するスフィンゴミエリナーゼ
およびホスホリパーゼの活性化を引き起こすことが報告されている。どちらのサ
イトカインもまた、ERK1、 ERK2、並びにストレス活性化キナーゼJNK-1およびp3
8を含むマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)ファミリーのメンバー
を活性化する。このキナーゼファミリーは、さまざまな程度に、広範囲のホルモ
ン、成長因子、重金属、タンパク質合成阻害因子および紫外線光によって活性
化され、したがって、これらキナーゼの活性化はIL-1/TNF-α情報伝達経路に特
有のものとは考えられない。
IL-1およびTNF-α双方に活性化されるものに加え、IL-1はIL-1受容体関連キナ
ーゼ、IRAKを特異的に活性化することが報告されている(Cao,HenzelおよびGao
,Science 271:1128(1996))。TNF受容体の細胞質領域もまた、TRAF1およびTRAF
2、FADD、MORTおよびTRADDなどのその他の情報伝達分子と相互作用することが報
告されている。こうしたTNF-α受容体相互作用タンパク質もまた、T-およびB-細
胞活性化物質CD40およびアポトーシス仲介物質fasなどの全く異なった細胞反応
を仲介する受容体を含む広範な受容体ファミリーと相互作用することが可能なよ
うである(TewariおよびDixit,Curr.Opin.Genet.Dev.6:39,1996;Leeら,J
.Exp.Med.183:669,1996)。
IL-1、TNF-α、またはその他の仲介物質により、ある種の細胞反応を誘導する
ことが可能である一方、IL-1またはTNF-αに特有に誘導されるが、その他の限定
された刺激剤によっては誘導されないと見られる唯一の既知の情報伝達は、in v
itroでβ-カゼインリン酸化能として検出することができるタンパク質セリン/
スレオニンキナーゼ活性である(Guesdonら,J.Biol.Chem.268:4236(1993);
Biochem.J.304:761 (1994))。このβ-カゼインキナーゼ活性は、繊維芽細胞
およびその他の結合組織由来細胞で、IL-1およびTNF-αによって誘導されるが、
試験された他の21の剤では誘導されなかった。β-カゼインキナーゼの構造はこ
の報告では明らかにされなかった。
しかし、IL-1およびTNF-α双方の細胞内効果の抑制または刺激を提供する基質
およびまたは方法に対する要求は満たされていない。また、IL-1およびTNF-αの
受容体後経路との相互作用を提供する基質および方法に対する要求も、IL-1およ
びTNF-α双方に対しアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する単一の化合
物を含む、IL-1またはTNF-αに対するアゴニストおよび/またはアンタゴニスト
を検出する機会を提供する基質および方法に対する要求と同様、満たされていな
い。本発明はこれらおよびその他の関連する利点を提供する。
発明の概要
本発明は、IL-1およびTNF-α双方の受容体後細胞内経路の少なくとも1つと相
互作用する、好ましくはヒトの、タンパク質キナーゼの核酸およびアミノ酸配列
を提供する。こうしたキナーゼは本明細書中ではIL-1/TNF-α活性化キナーゼ(I
TAK)と呼ぶ。こうしたキナーゼは、適切な細胞をIL-1またはTNF-αにより処置
することで、特異的な基質タンパク質をリン酸化することができる、酵素活性の
あるキナーゼとして誘導される。本発明はさらに、ITAKをコードする核酸分子の
単離および精製のための組成物および方法も提供する。さらに本明細書中に開示
されるのは、ITAKを発現しそして精製する方法、並びに、IL-1およびTNF-αのア
ンタゴニストまたはアゴニストとして有用であるかもしれないITAK活性の阻害因
子または刺激剤を検出する特異的な検定である。
これに加え、本発明はITAKをコードする単離核酸、および好ましくはITAKをコ
ードするcDNA由来より、ITAKを発現できる発現ベクターを含むベクターに向けら
れる。本発明はこうした発現ベクターを含む宿主細胞、および、こうした宿主細
胞を工業的な量を含めてITAKの発現および好ましくは精製を助ける条件下で、培
養を行うことにより、ITAKを産生する過程を含む。ある程度はこうしたITAK精製
のため、本発明はまた、ITAKに特異的な抗体、好ましくはモノクローナル抗体に
も向けられる。
本発明はまた、例えばIL-1またはTNF-αに反応して伝達された情報の遮断手段
として、ITAK活性に対する潜在的な阻害因子または刺激剤をスクリーニングする
ITAKを使用した検定にも向けられる。さらにITAKを使用してITAK活性の阻害因子
を設計する方法もまた開示される。
特に、1つの側面において、ヒトIL-1/TNF-α活性化キナーゼ(ITAK)などのIT
AKをコードする単離核酸分子、またはその変異体が提供される。1つの態様にお
いて、単離核酸分子は、ヌクレオチド番号1からヌクレオチド番号2940までの配
列番号1のヌクレオチド配列を含む。この単離核酸分子は、配列番号2のアミノ酸
配列を有するタンパク質をコードする。関連する態様において、Lys81がAlaに置
換されたITAK変異体を含むITAK変異体をコードする核酸分子が提供される。関連
する側面の範囲内で、単離ITAKまたはその変異体が提供される。
別の関連する側面の範囲内で、ITAKコード配列に機能可能であるように連結さ
れたプロモーターを含む組換え発現ベクターを含む組換えベクターが提供される
。本発明はさらに、こうした組換えベクターいずれかを含む宿主細胞を提供する
。
さらに別の側面において、本発明は、IL-1/TNF-α活性化キナーゼ(ITAK)を
コードする核酸配列に特異的にハイブリダイズできる、少なくとも15ヌクレオチ
ド長の核酸プローブを提供する。
本発明のさらにまた別の側面の範囲内で、IL-1/TNF-α活性化キナーゼ(ITAK
)のキナーゼ活性を調節する剤をスクリーニングする方法であって:
(a)候補剤と生物学的に活性をもつITAKを、候補剤にITAKのキナーゼ活性を調
節させる条件下で、そして十分な時間をかけて接触させ;そして(b)候補剤がI
TAKキナーゼ活性を調節する能力を測定する、ことを含む方法が提供される。1つ
の態様の範囲内では、この方法はさらに、当該候補剤を単離することも含む。
本発明のさらに別の側面の範囲内で、選択された剤がIL-1/TNF-α活性化キナ
ーゼ(ITAK)アゴニストであるかどうか決定する方法であって:(a)選択され
た剤を未刺激のITAK反応経路に、経路を刺激させる条件下で、そして十分な時間
をかけて曝露し;そして(b)反応経路の刺激を検出し、そしてそこからITAKア
ゴニストの存在を決定する、ことを含む方法が提供される。関連する側面の範囲
内で、選択された剤がIL-1/TNF-α活性化キナーゼ(ITAK)アゴニストであるか
決定する方法であって:(a)ITAK反応経路のITAKキナーゼ活性を測定し;
(b)選択された剤を測定されたITAK反応経路に曝露し;そして(c)当該反応経路
において増加したITAKキナーゼ活性を検出する、ことを含む方法が提供される。
本発明のさらにまた別の側面の範囲内で、選択された剤がIL-1/TNF-α活性化
キナーゼ(ITAK)アンタゴニストであるかどうか決定する方法であって:(a)
選択された剤を、ITAKアゴニストの存在下で、経路の刺激を減少させる条件下で
、そして十分な時間をかけてITAK反応経路に曝露し;そして(b)ITAKアゴニス
トのみの反応経路刺激と比較して反応経路の刺激の減少を検出し、そしてそこか
らITAKアンタゴニストの存在を決定することを含む方法が提供される。こう
した方法を利用して、ITAKアゴニストおよびITAKアンタゴニストが提供される。
さらに別の側面の範囲内で、ITAKリン酸化基質ペプチド受容体配列(ITAK pho
sphorylation substrate peptide acceptor sequence)であり、哺乳類β-カゼ
インでなく、そして単離ITAKにより少なくとも40nmol、好ましくは少なくとも80
nmol、さらに好ましくは少なくとも98nmolリン酸/mgタンパク質/分の速度でリ
ン酸化されうる配列が提供される。
本発明のさらにまた別の側面の範囲内では、IL-1/TNF-α活性化キナーゼ(ITA
K)活性を検出する方法であって:(a)ITAKを哺乳類β-カゼインではないITAK
リン酸化基質ペプチド受容体配列と、ATP存在下で、ATP供与体からITAKリン酸化
基質ペプチド受容体配列にγ-リン酸基を輸送させる条件下で、そして十分時間
をかけて接触させ;そして(b)当該ITAKリン酸化基質ペプチド受容体配列によ
るリン酸の取り込みを測定する、ことを含む方法が提供される。1つの態様の範
囲内で、このATPはγ-(32P)-ATPである。本発明の関連する態様において、ITA
Kリン酸化基質ペプチド受容体配列は、アミノ酸配列:Arg-Arg-Arg-His-Leu-Pro
-Pro-Leu-Leu-Leu-Gln-Ser-Trp-Met-His-Gln-Pro-His-Gln(配列番号3)を有す
る。
本発明の別の側面の範囲内で、ITAKアンタゴニストを治療上有効な量、患者に
投与することを含む、IL-1またはTNF-αが仲介する炎症性障害を治療する方法が
提供される。本発明はさらに、試料中のITAKを検出するキットであって:β-カ
ゼインではなく、そして単離ITAKにより少なくとも40nmol、好ましくは少なくと
も80nmol,さらに好ましくは少なくとも98nmolリン酸/mgタンパク質/分の速度
でリン酸化されうるITAKリン酸化基質ペプチド受容体配列;およびITAKリン酸化
基質ペプチド受容体配列により取り込まれたリン酸を測定する手段、を含むキッ
トを提供する。
本発明はさらに、ITAKと関与する遺伝子産物を同定する方法であって:(a)I
TAKポリペプチド配列をコードする核酸配列を、宿主細胞の生存率に本質的であ
るタンパク質の機能的に不完全な第一の部分を含む融合タンパク質の一部として
ITAK配列が発現するように第一の発現ベクターに導入し;(b)ITAKに関与す
る複数の候補遺伝子産物をコードする核酸配列を、候補遺伝子産物がいずれも、
宿主細胞の生存率に本質的である当該タンパク質の機能的に不完全な第二の部分
を含む融合タンパク質の一部として発現するように第二の発現ベクターに導入し
;(c)第一および第二の発現ベクターを、宿主細胞の生存が、当該タンパク質
の第一および第二の機能的に不完全な部分双方が再構成され機能的に完全なタン
パク質になることに依存するような条件下で、そして十分な時間をかけて導入し
;そして(d)生存宿主細胞を同定し、そしてそこから第二の発現ベクター中のI
TAKと関与する候補遺伝子産物をコードする核酸配列を決定することを含む方法
を提供する。
本発明のこの側面の1つの態様において、宿主細胞は酵母宿主細胞である。本
発明のこの側面の別の態様において、当該酵母は酵母株Y190である。関連する態
様において、宿主細胞の生存率に本質的なタンパク質はモジュラー(modular)
酵母転写因子GAL4である。関連する別の態様において、宿主細胞の生存率に本質
的なタンパク質の機能的に不完全な第一の部分は、モジュラー酵母転写因子GAL4
のN末端の147アミノ酸を含み、一方他の態様において、機能的に不完全な第二の
部分はモジュラー酵母転写因子GAL4のC末端の114アミノ酸を含む。さらにまた別
の態様の範囲内では、宿主細胞の生存率に本質的なタンパク質の機能的に不完全
な第一の部分はモジュラー転写因子のDNA結合領域を含む。関連する態様におい
て、単細胞宿主の生存率に本質的なタンパク質の機能的に不完全な第二の部分は
モジュラー転写因子の転写活性化領域を含む。
本発明のこれらおよび別の側面は、以下の詳細な記載および添付の図表に論及
することで明確になるであろう。ある種の方法または組成物(プラスミドなど)
を記載するさまざまな論及が本明細書中に述べられる。本明細書中に言及された
論及は本明細書中に全体が援用される。
図の簡単な説明
図1A-1Fは代表的なヒトITAKヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列(
配列番号8)を図示している。
発明の詳細な説明
上述のように、本発明は、適切な細胞をIL-1またはTNF-αに曝露することで特
異的に誘導されるキナーゼ活性を有するITAKタンパク質の単離および精製のため
の組成物および方法を提供する。IL-1情報伝達阻害因子は、アレルギー、慢性関
節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬、およびアルツハイマー病などの、IL-1過剰産
生または未制御産生によって特徴づけられるさまざまな炎症および免疫障害の治
療に臨床的な用途を有する。TNF-α情報伝達阻害もまた、全身性炎症反応症候群
、再灌流損傷、心臓血管疾患、HIV感染およびHIV神経障害などの感染性疾患、炎
症性疾患/自己免疫、アレルギー性/アトピー性疾患、悪性疾患、器官移植拒絶
または移植片対宿主疾患を含む移植困難、悪液質、先天性、皮膚、神経、腎、毒
性および代謝/特発性疾患などの、TNF-α過剰産生または未制御産生によって特
徴づけられる疾患の治療に臨床的な用途を有する。ITAKをコードするcDNAを本明
細書中に開示することにより、IL-1およびまたはTNF-αの阻害に適した方法およ
び組成物が、さまざまなその他の利点と共に提供される。
出願人がITAKを発見したことは、とりわけ、ITAKをコードする核酸配列を含む
、発現ベクターを含むベクターの構築、こうしたベクターを含む宿主細胞(例え
ばトランスフエクションまたは形質転換によって)、工業量のITAKを含むITAKの
産生、およびITAKに免疫的に反応する抗体を可能にする。さらに、ITAKがIL-1お
よびTNF-αの情報伝達において機能する機構を理解することで、IL-1および/ま
たはTNF-α活性の阻害因子を検出する検定の設計が可能になる。
本明細書中で用いられる際、「ITAK」という用語は、ITAK源細胞がIL-1または
TNF-αに曝露されて特異的に誘導されたキナーゼ活性を有し、そして脱リン酸化
されたウシβ-カゼインのリン酸化、またはウシβ-カゼインのリン酸化受容部位
と構造的に相同であることで同定されるその他の適切なペプチドまたはポリペプ
チド基質のリン酸化が可能であるキナーゼ活性を有するポリペプチド種を指す。
一般的に、こうした活性はPMA、10%ウシ胎児血清、PDGF、ブラディキニン、EGF
、TGF-βl、bFGF、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、ヒスタミン、
プロスタグランジンE2、フォルスコリン、A23187、44℃熱ショックまたは亜ヒ酸
ナトリウムによっては誘導されない(Guesdonら,Biochem.J.
304:761(1994))。異なる記述がされない限り、ITAKはまた、その変異体および
誘導体も指す。好ましい態様において、ITAKは配列番号2の1-979アミノ酸配列を
有するタンパク質を、こうしたアミノ酸配列と高い配列相同性(典型的には少な
くとも90%の配列相同性、好ましくは少なくとも95%の相同性、より好ましくは
少なくとも98%の相同性)を有するタンパク質と共に含む。ITAKはまた、配列番
号1のヌクレオチド1-2940の遺伝子産物およびこれらのヌクレオチドがコードす
るアミノ酸配列を、その他のITAKをコードする核酸分子の遺伝子産物と共に含む
。こうしたタンパク質および/または遺伝子産物は、好ましくは生物学的に活性
がある。完全長ITAKはSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で決定
するとおよそ110-125kDの分子量を有する。ITAKはまた、ITAKをコードする核酸
分子も含む。
本明細書中で用いられる「ITAK変異体」は、天然ITAKに実質的に相同であるが
、天然または非天然に起こった1つまたはそれ以上の欠失、挿入または置換によ
って天然ITAK(ヒト、ウサギ、ネズミまたはその他の哺乳動物種)と異なるアミ
ノ酸配列を有するポリペプチドを指す。変異体アミノ酸配列は、天然アミノ酸配
列に好ましくは少なくとも約80%相同、より好ましくは少なくとも約90%相同、
そしてさらに好ましくは少なくとも約95%相同である。%相同性は例えば、Deve
reuxら(Nucl.Acids Res.12:387,1984)に記載され、そしてウィスコンシン
大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)から入手可能なGAPコンピューター
プログラム、バージョン6.0を用いて配列情報を比較することによって決定する
ことが可能である。GAPプログラムはSmithおよびWaterman(Adv.Appl.Math 2:
482,1981)が改訂したNeedlemanおよびWunsch(J.Mol/Biol.48:443,1970)
の並列法を利用している。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターに
は:(1)ヌクレオチドに対する比較マトリックス(同一に対する1および非同一
に対する0の値を含む)、およびSchwartzおよびDayhoff監修,Atlas of Protein
Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,pp.35
3-358,1979に記載されるGribskovおよびBurgess,Nucl.Acids Res.14:6745,
1986の加重比較マトリックス;(2)それぞれのギャップに対する3.0のペナルテ
ィおよびギャップごとのそれぞれの記
号に対しさらに0.10のペナルティ;および(3)末端ギャップに対するペナルテ
ィなし、が含まれる。
ITAK変異体の1つの種類は、タンパク質キナーゼが酵素活性を最大にするのに
有利であるように、触媒サブドメインIIにリジン残基を含む傾向があることに基
づいている。特に、このリジン残基(配列番号2に開示されたITAKの81位に対応
する)に突然変異が起こると、タンパク質キナーゼの触媒機能の欠失につながる
。したがって、こうした突然変異体(好ましくは組換え体)キナーゼは、細胞中
で過剰発現すると「優性ネガティブ」表現型を表わし、それにより野生型ITAKが
通常機能する生化学経路を通した情報伝達を妨げることが可能である。例えばリ
ジン-81がアラニンに置換されたITAKA 81などのこうした変異体は、さらに後で
論じられるように、IL-1またはTNF-α情報伝達の阻害を治療目的で使用する際、
特に利点がある可能性がある。ITAKのタンパク質キナーゼ活性を失ったその他の
ITAK変異体、例えばITAKA 81のリジンからアラニンへのアミノ酸置換以外の置換
を有する、およびアミノ酸の欠失、挿入または置換を含むITAK変異体は、本発明
のITAK変異体に含まれる。
ITAK変異体は、保存性置換配列、つまり、あるアミノ酸残基が同様の物理化学
的特性を有する残基と置き換えられている配列を含んでもよい。保存性置換の例
には、1つの脂肪族残基の別のものへの置換、例えばIle、Val、LeuまたはAlaな
どの相互置換、または1つの極性残基の別のものへの置換、例えばLysおよびArg
、GluおよびAsp、またはGlnおよびAsn同士の置換を含む。その他のこうした保存
性置換、例えば同様の疎水特性を有する領域全体の置換が周知である。天然に発
生したITAK変異体もまた、本発明に含まれる。こうした変異体の例は、選択的mR
NAスプライシングの結果、またはITAKタンパク質のタンパク質分解切断の結果、
ここでタンパク質分解された断片はITAKの生物学的活性を保持している切断であ
る、生じるアミノ酸置換を有するタンパク質である。例えば、細胞または組織か
ら単離される天然発生ITAKのNまたはC末端の相違、または、ITAKタンパク質から
1つまたはそれ以上の末端アミノ酸(通常1-5末端アミノ酸)がタンパク質分解で
除かれることによる、異なる種類の宿主細胞で発現され検出された同様の変異で
ある。
「ヌクレオチド配列」は、標準的な生化学的方法(Maniatisら,Molecular Cl
oning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1982,およびSa
mbrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Sprond Harb
or Laboratory,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989)に略述された
ものなど)により、その構成要素であるヌクレオチド配列の同定、操作および回
収が可能であるように、少なくとも1度は実質的に純粋な(すなわち外因性成分
の混入がない)形および量または濃度で単離されたDNAまたはRNA由来である、分
離された断片の形またはより大きな核酸構築物の構成要素としてのポリヌクレオ
チドを指す。こうした配列は好ましくは、真核生物遺伝子に典型的に存在する内
部の翻訳されない配列、イントロンにより中断されていない読み枠の形で提供さ
れる。翻訳されないDNAの配列は、読み枠から5'または3'に存在してもよく、こ
こで同はコード領域の操作または発現に干渉しない。
「単離された」という用語は本明細書中で使用される際、ITAKタンパク質がク
ーマシーブルー(Coomassie blue)染色を使用したドデシル硫酸ナトリウム−ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)による組成物の染色パターンに基づ
き、組成物のタンパク質含有量の少なくとも約90%を含むように、ITAKタンパク
質が組換えまたは非組換え体として、産生細胞から分離されたことを意味する。
典型的には、精製タンパク質は少なくともタンパク質含有量の約92%を含み、好
ましくは少なくともタンパク質含有量の約94%を含み、さらに好ましくは少なく
ともタンパク質含有量の約96%を含み、そしてさらにより好ましくは少なくとも
タンパク質含有量の約98%を含む。別の態様において、他のいかなる(望ましく
ない)タンパク質も、SDS-PAGE解析に続くクーマシーブルー染色に応じて検出さ
れず、そして好ましくは他のいかなる(望ましくない)タンパク質もSDS-PAGE解
析に続く銀染色に応じて検出されない。「単離(された)」核酸分子は、本明細
書中にさらに論じられるようにITAKをコードし、そして産生細胞から単離された
核酸分子を意味する。さらに、ITAK遺伝子(またはその断片、または変異体など
、やはり本明細書中に論じられる)は、染色体など、生物学的産生細胞核酸分子
から分離されていれば、単離されたとみなす。こうした単離遺伝子は組換え核酸
分子内に含まれていてもよい。
ITAKに関し「生物学的に活性がある」という用語は、本明細書中で用いられる
際、脱リン酸化されたウシβ-カゼインのリン酸化、または1つまたはそれ以上の
ウシβ-カゼインのリン酸化受容部位に実質的に相同性を有するリン酸化合成ペ
プチド基質(本発明により提供されるITAKリン酸化基質ペプチド受容体配列など
)のリン酸化ができるITAKを意味する。こうした基質の1つは、ポリペプチドRRR
HLPPLLLQSWMHQPHQ(配列番号3)である。脱リン酸化されたウシβ-カゼインのリ
ン酸化に好ましい条件は、Guesdonら,J.Biol.Chem.268:4236(1993); Guesdo
nら,Biochem.J.304:761(1994)で見い出すことができ、一方、合成ポリペプチ
ドRRRHLPPLLLQSWMHQPHQ(配列番号3)のリン酸化に好ましい条件は、実施例1に
見い出すことができる。基質ペプチドのITAKによるin vitroリン酸化は、シンチ
レーション近接検定(scintillation proximity assay; SPA)などの高効率スク
リーニングに適用してもよい。したがって、ITAKを通じてβ-カゼインまたはITA
Kリン酸化基質ペプチド受容体配列に取り込まれたリン酸を測定する方法は、取
り込まれた32Pの検出;当業に知られるSPA検出法;蛍光定量、比色分析、または
分光光度測定法;免疫化学検出、例えばリン酸化されたアミノ酸またはペプチド
に特異的に反応する抗体を使用した検出;または当業者に知られる関連する検出
法を含む。
本発明にしたがって単離されたITAKは、後述される組換え発現系によって産生
してもよく、また天然発生した細胞から産生してもよい。ITAKはまた、SDS-ポリ
アクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で110kDから125kDの構成要素として移
動し、そしてペプチド地図および部分的配列解析で示されるように同一のアミノ
酸配列を有する一連のリンタンパク質により示されるように、実質的に精製する
ことも可能である。ITAKを産生する1つの過程は、ITAKをコードするDNA配列を含
む発現ベクターにより形質転換した宿主細胞を、ITAKの発現を促進するに足る条
件下で培養することを含む。ITAKはその後、使用した発現系次第で、培地または
細胞抽出物から回収される。当業者に知られるように、組換えタンパク質を精製
する過程は、使用した宿主細胞の種類、および組換えタンパク質が培地に分泌さ
れるかどうかといった要因により異なるであろう。例えば、組換えタンパク質を
分泌する発現系が使用された場合、培地はまず、例えばAmicon
またはMillipore Pellicon限外ろ過装置などの、商業的に入手可能なタンパク質
濃縮フィルターを用いて濃縮してもよい。濃縮段階後、濃縮物はゲルろ過基剤な
どの精製マトリックスに適用してもよい。または、例えばジエチルアミノエチル
(DEAE)基側鎖を有するマトリックスまたは支持体といった陰イオン交換樹脂を
使用してもよい。マトリックスにはアクリルアミド、アガロース、デキストラン
、セルロースまたはタンパク質精製によく用いられるその他の種類のものを使用
してもよい。または、陽イオン交換段階を使用してもよい。適当な陽イオン交換
体には、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含むさまざまな不溶性マ
トリックスが含まれる。スルホプロピル基が好ましい。最後に、疎水性逆相高速
液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)基剤(例えば、遊離の(pendant)メチル基
または他の脂肪属基側鎖を有するシリカゲル)を使用した1つまたはそれ以上のR
P-HPLC段階を使用して、ITAKをさらに精製してもよい。さまざまに組み合わされ
た、前述の精製段階のいくつかまたは全ては、周知であり、そして単離および精
製組換えタンパク質を提供するのに使用してもよい。
組換えにより産生されたITAKに加え、ITAKは次の細胞株のいずれから単離およ
び精製してもよい:C122(Simsら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:8946-8950,
1989)、HUT102(ATCC TIB162)、KB(ATCC CCL17)、Raji(ATCCCCL86)、SK-H
ep-1(ATCC HTB52)、およびWI-26(ATCC CCL95.1)。ITAKのその他の産生源を
用いてもよく、そしてITAKはまた、IL-1またはTNF-αを産生する、またはこれら
に反応するその他の細胞種に見い出される。候補細胞によるITAK産生は、例えば
ITAKの生物学的活性の決定に関連する上述の、および実施例1に記載される検定
、および/または適切な核酸ハイブリダイゼーション検定による検定などの、本
明細書中に論述される検定を使用して検出してもよい。
ITAK産生細胞または細胞株が一度同定されれば、ITAKは、所望によりまずIL-1ま
たはTNF-αで産生細胞を刺激して単離および精製してもよい。望むならば、こう
した刺激は当業に周知の技術を用いて行ってもよい。IL-1は好ましくは1-50ng/m
lで使用し、そしてTNF-αは好ましくは20-200ng/mlで使用する(Guesdonら,199
3,1994)。細胞はその後回収し、洗浄し、そして細胞質タンパク質を慣用過程
によって抽出する。
部分的に精製されたITAKは、ITAK活性制御に重要な特異的に関連する種類を含
む可能性がある350kDより大きい高分子量複合体として見い出される。ITAKはま
た、グリコシル基、ポリエチレングリコール(PEG)基、脂質、リン酸、アセチ
ル基および類似物などの、その他の化学物質部分と共有または凝集結合体を形成
することによりITAK誘導体を作るよう修飾してもよい。ITAKの共有結合誘導体は
、化学物質部分をITAKアミノ酸側鎖の官能基、またはITAKポリペプチドのN末端
またはC末端に結合させることで調製してもよい。本発明の範囲内のITAKのその
他の誘導体には、組換え培養においてN末端またはC末端融合体として合成される
ものなどの、ITAKまたはその断片とその他のタンパク質またはポリペプチドとの
共有または凝集結合体を含む。例えば、結合体は、ITAKポリペプチドのN末端に
リーダーポリペプチド配列(サッカロミセス(Saccharomyces)のα-因子リーダ
ーなど)を含んでもよい。シグナルまたはリーダーペプチドは翻訳と同時に、ま
たは翻訳後に、結合体の合成部位から細胞膜または細胞壁の内側または外側の部
位への輸送を指示する。
ITAK結合抗体などのITAK結合タンパク質を含むアフィニティカラムを使用して
、発現したITAKポリペプチドをアフィニティ精製することも可能である。ITAKポ
リペプチドは、慣用技術を用いてアフィニティカラムから除去することもできる
。例えば、高塩溶出緩衝液に溶出し、その後、使用したアフィニティマトリック
ス次第で、より低塩の緩衝液中で透析し、またはpHまたはその他の構成要素を変
えて、使用する。
望ましい生物学的活性を保持する天然ITAKの変異体および誘導体は、天然ITAK
ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の突然変異により得てもよい。天然
アミノ酸配列の改変は、数多くの慣用法のいずれを用いて達成してもよい。突然
変異は、天然配列の断片に連結することができるよう制限酵素を隣接した突然変
異配列を含む合成オリゴヌクレオチドにより、特定の遺伝子座に導入することが
可能である。連結後、その結果生じた再構築配列は、望ましいアミノ酸挿入、置
換、または欠失を有する類似体(analog)をコードする。
または、あらかじめ決められたコドンが置換、欠失または挿入によって改変さ
れてもよい改変遺伝子を提供するため、オリゴヌクレオチドによる部位特異的突
然変異誘発手法を用いもよい。上述の改変を作成する典型的な方法はWaldersら
(Gene 42:133,1986);Bauerら(Gene 37:73,1985);Craik(BioTechniques
,January 1985,12-19);Smithら(Genetic Engineering:Principles and Met
hods,Plenum Press,1981);Kunkel(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488,19
85);Kunkelら(Methods in Enzymol.154:367,1987)および米国特許第4,518
,584号および第4,737,462号に開示されている。
アミノ酸残基または配列のさまざまな追加または置換、または生物学的活性に
不要な末端または内部残基または配列の欠失をコードする均等のDNA構築物もま
た、本発明に含まれる。例えば、生物学的活性に本質的でないCys残基をコード
する配列は、Cys残基が欠失するか他のアミノ酸に置き換えられるように改変し
、再生の際、誤った分子内ジスルフィド架橋が形成されるのを防いでもよい。そ
の他の均等物は、KEX2プロテアーゼ活性が存在する酵母系で、発現を高めるため
、隣接した2つの塩基性アミノ酸残基を修飾することで調製することも可能であ
る。EP212,914号は、タンパク質中のKEX2プロテアーゼ作用部位を不活性化する
ための部位特異的突然変異誘発法を開示している。KEX2プロテアーゼ作用部位で
は、残基を欠失、追加または置換することにより、Arg-Arg、Arg-LysおよびLys-
Arg対を改変し、これら隣接する塩基性残基の出現を除く。Lys-Lys対はKEX2切断
をかなり受けにくく、そしてArg-LysまたはLys-ArgのLys-Lysへの変換は、KEX2
部位を不活性化する保存的で好ましい方法を代表する。
本発明の範囲内の核酸配列は、本明細書中に開示される天然ITAKヌクレオチド
配列に、中程度または高度に厳密な(stringent)条件でハイブリダイズし、そ
して生物学的に活性のあるITAKをコードする、およびその相補配列である単離DN
AおよびRNA配列を含む。本明細書中で用いられる際、中程度に厳密な条件は、当
業者に知られるように、そしてSambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory M
anual,第2版.Vol.1,pp.1.101-104,Cold Spring Harbor Laboratory Press
,(1989)に定義されるとおり、ニトロセルロースフィルターに対し前洗浄溶液と
して5X SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH 8.0)を使用し、ハイブリダイゼーション
条件は50%ホルムアミド、6X SSCで42℃(または同様のハイブリダイゼーション
溶液またはスタークの溶液(Stark's solution)を用
い50%ホルムアミド中で42℃)であり、そして洗浄条件は約60℃、0.5 X SSC、0.
1% SDSである。高度に厳密な条件は、ハイブリダイゼーション条件は上述のもの
で、そして洗浄を68℃、0.2X SSC、0.1% SDSで行うことで定義される。当業者
はハイブリダイゼーションおよび洗浄溶液の温度、塩濃度、およびカオトロープ
(chaotrope)組成物は、プローブの長さおよびヌクレオチド塩基組成物などの
要素により必要に応じて調節してもよいことを認識するであろう。
既知の1つ以上のコドンが同じアミノ酸をコードできるという遺伝暗号の縮重
のため、DNA配列は、例えば図1に示されたものとは異なり、そしてなお配列番号
2のアミノ酸配列を有するもののように、ITAKタンパク質をコードする可能性が
ある。こうした変異体DNA配列はサイレント突然変異(例えばPCR増幅の際、発生
するもの)の結果生じてもよいし、また天然配列に意図的に突然変異誘発した産
物であってもよい。
したがって本発明は、生物学的に活性のあるITAKをコードする同等の単離核酸
配列を含み、核酸配列には:(a)天然哺乳動物ITAK遺伝子のコード領域由来の
核酸分子;(b)ヌクレオチド配列、配列番号1および配列番号8からなる群から
選択された核酸分子;(c)中程度に厳密な条件下で(a)(またはその相補鎖)
の核酸分子とハイブリダイズでき、そしてITAKをコードする核酸分子;および(
d)遺伝暗号の結果、(a)、(b)または(c)に定義された核酸分子に関し、縮
重しており、そしてITAKをコードする核酸分子から選択されたものを含む。好ま
しくは、核酸分子はDNAであり、そしてさらに好ましくはITAKは生物学的に活性
がある。こうした均等な核酸配列にコードされるITAKタンパク質および遺伝子産
物は本発明に含まれる。
図1、配列番号1のDNA配列と均等な核酸分子は、中程度に厳密な条件下で配列
番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする二本鎖天然DNA配列にハイ
ブリダイズするであろう。こうしたDNAにコードされるITAKの例は、限定される
わけではないが、上述のものも含め、不活性化されたKEX2プロテアーゼ作用部位
、または保存性アミノ酸置換を含むITAK断片およびITAKタンパク質である。その
他の哺乳動物種由来のDNAにコードされるITAKタンパク質であって、当
該DNAが図1または配列番号1または配列番号8のcDNAの相補鎖に特異的にハイブリ
ダイズするようなタンパク質もまた含まれる。
ITAKポリペプチド結合体(conjugate)はITAKの精製および同定を容易にする
ためにITAKに加えられたペプチドを含んでもよい。こうしたペプチドには、例え
ば、ポリHisまたは米国特許第5,011,912号およびHoppら,Bio/Technology6:1204
,1988に記載された抗原同定ペプチドが含まれる。ITAK融合タンパク質はさらに
、ITAKの精製、同定および局在化を容易にするためITAKに加えられた免疫グロブ
リン定常部ポリペプチドを含んでもよい。定常領域ポリペプチドは好ましくは、
可溶性ITAKのC末端に融合される。抗体由来ポリペプチドのさまざまな部分に融
合した異種性ポリペプチドを含む融合タンパク質の一般的な調製は、例えばAshk
enaziら(PNAS USA 88:10535,1991)およびByrnら(Nature 344:677,1990)に
よって記載されている。ITAK:Fc融合タンパク質をコードする遺伝子融合体は、
適切な発現ベクターに挿入される。ITAK:Fc融合タンパク質は、抗体分子とほぼ
同様に組み合わされ、その結果、鎖間のジスルフィド結合がFcポリペプチド間に
形成され、二価のITAKが得られる。
ITAKをコードする核酸配列を含む、発現ベクターを含む組換えベクターは、周
知の方法を用いて調製することが可能である。発現ベクターは、例えば哺乳動物
、微生物、ウイルスまたは昆虫遺伝子由来の適切な転写または翻訳制御ヌクレオ
チド配列に機能可能であるように連結したITAK DNA配列を含む。制御配列の例に
は、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結
合部位、および転写および翻訳の開始および終止を制御する適切な配列が含まれ
る。ヌクレオチド配列は、制御配列が機能的にITAK DNA配列に結び付けられた際
、「機能可能であるように連結」している。したがって、プロモーターヌクレオ
チド配列は、プロモーターヌクレオチド配列がITAK DNA配列の転写を制御してい
るならば、ITAK DNA配列に機能可能であるように連結している。通常複製起点に
より与えられる、望ましい宿主細胞中で複製する能力および形質転換体を同定す
るための選択遺伝子を、さらに発現ベクターに組み込んでもよい。
さらに、天然にはITAKと関与しない、適切なシグナルペプチドをコードする配
列を発現ベクターに組み込んでもよい。例えば、シグナルペプチド(分泌リー
ダー)のDNA配列をITAK配列にインフレームに融合させ、ITAKが初めはシグナル
ペプチドを含む融合タンパク質として翻訳されるようにしてもよい。意図した宿
主細胞で機能するシグナルペプチドは、ITAKポリペプチドの細胞外への分泌を高
める。シグナルペプチドは細胞からITAKが分泌される際、ITAKポリペプチドから
切断されてもよい。
ITAKポリペプチドの発現に適した宿主細胞には、原核細胞、酵母細胞またはよ
り高次の真核細胞が含まれる。細菌、真菌、酵母および哺乳動物細胞宿主への使
用に適したクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Pouwelsら,Cloning V
ectors:A Laboratory Manual,ニューヨーク州エルセビア(1985)に記載されて
いる。細胞不含翻訳系もまた、本明細書中に開示されたDNA構築物由来のRNAを用
いて、ITAKポリペプチドを産生するのに使用してもよい。
原核生物は、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば大腸菌(E.coli)ま
たはバチルス属(Bacilli)を含む。形質転換に適した原核宿主細胞は、例えば
、大腸菌、枯草菌(Bacilus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimu
rium)およびシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Strepto
myces)およびブドウ球菌(Staphylococcus)属のさまざまなその他の種を含む
。大腸菌のような原核宿主細胞では、原核宿主細胞中の組換えポリペプチドの発
現を容易にするため、ITAKポリペプチドはN末端メチオニン残基を含んでもよい
。N末端Metは発現された組換えITAKポリペプチドから切断してもよい。
原核宿主細胞で使用される発現ベクターは、一般的に1つまたはそれ以上の表
現型選択マーカー遺伝子を含む。表現型選択マーカー遺伝子は、例えば、抗生物
質耐性を与える、または独立栄養必要条件を供給するタンパク質をコードする遺
伝子である。原核宿主細胞に使用できる発現ベクターの例は、クローニングベク
ターpBR322(ATCC 37017)などの商業的に入手可能なプラスミド由来のものを含む
。pBR322はアンピシリンおよびテトラサイクリン耐性遺伝子を含み、そしてした
がって、形質転換細胞を同定する単純な方法を提供する。pBR322を用いた発現ベ
クターを構築するために、適切なプロモーターおよびITAK DNA配列がpBR322ベク
ターに挿入される。その他の商業的に入手可能なベクターには、例
えば、pKK223-3(Pharmacia Fine Chemicals,ウプスラ、スウェーデン)および
pGEM1(Promega Biotec,ウィスコンシン州マディソン、米国)が含まれる。
組換え原核宿主細胞発現ベクターによく用いられるプロモーター配列には、β
-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモーター系(Changら,Natu
re 275:615,1978;およびGoeddelら,Nature 281:544,1979)、トリプトファン
(trp)プロモーター系(Goeddelら,Nucl.Acids Res.8:4057,1980;およびEP
-A第36776号)およびtacプロモーター(Maniatis,Molecular Cloning:A Labora
tory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,p.412,1982)が含まれる。特
に有用な原核宿主細胞発現系には、λファージPLプロモーターおよびcI857ts熱
不安定性リプレッサー配列を使用する。アメリカン・タイプ・カルチャー・コレ
クション(American Type Culture Collection)から入手可能な、λPLプロモー
ター誘導体を組み込んだプラスミドベクターには、プラスミドpHUB2(大腸菌株J
MB9(ATCC 37092)に内在)およびpPLc28(大腸菌RR1(ATCC 53082)に内在)が
含まれる。
ITAKポリペプチドはまた、酵母宿主細胞、好ましくはサッカロミセス属(例え
ばS.セレビシエ(S.cerevisiae))で発現してもよい。ピキア属(Pichia),K.
ラクティス(K.lactis)またはクロイベロミセス属(Kluyveromyces)などこの
他の属の酵母も使用してもよい。酵母ベクターはしばしば、2μ酵母プラスミド
由来の複製起点、自律複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化配
列、転写終止配列、および選択マーカー遺伝子を含むであろう。酵母ベクターに
適したプロモーター配列には、他のものの中でも、メタロチオネイン、3-ホスホ
グリセリン酸キナーゼ(Hitzemanら,J.Biol.Chem.255:2073,1980)または
エノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ
、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リ
ン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリ
オースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナ
ーゼなどのその他の解糖酵素(Hessら,J.Adv.Enzyme Reg.7:149,1968;およ
びHollandら,Biochem.17:4900,1978)が含まれる。その他、酵母発現に使用
するのに適したベクターおよびプロモーター
はさらに、Hitzeman,EPA-73,657号またはFleerら,Gene 107:285-195(1991);お
よびvan den Bergら,Bio/Technology 8:135-139(1990)に記載されている。また
別に、Russellら(J.Biol.Chem.258:2674,1982)およびBeierら(Nature 30
0:724,1982)に記載されるグルコース抑制性のADH2プロモーターがある。酵母
および大腸菌双方で複製可能なシャトルベクターを、大腸菌での選択および複製
のためのpBR322由来DNA配列(Ampr遺伝子および複製起点)を上述の酵母ベクタ
ーに挿入することによって構築してもよい。
酵母α-因子リーダー配列はITAKポリペプチドの分泌を支配するのに使用して
もよい。α-因子リーダー配列はしばしば、プロモーター配列および構造遺伝子
配列の間に挿入する。例えば、Kurjanら,Cell 30:933,1982; Bltterら,Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 81:5330,1984;米国特許第4,546,082号;およびEP324,
274号を参照されたい。酵母宿主からの組換えポリペプチドの分泌を容易にする
のに適したその他のリーダー配列は、当業者に知られている。リーダー配列はそ
の3'端近くに1つまたはそれ以上の制限酵素部位を含むように修飾してもよい。
これにより、リーダー配列と構造遺伝子の融合が容易になるであろう。
酵母形質転換プロトコルは当業者に知られている。こうしたプロトコルの1つ
はHinnenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1929,1978に記載されている。Hi
nnenらのプロトコルは、Trp+形質転換体を選択培地中で選択し、ここで当該選択
培地は0.67%酵母窒素基剤、0.5%カザミノ酸、2%グルコース、10μg/mlアデ
ニンおよび20μg/mlウラシルからなる。
ADH2プロモーター配列を含むベクターにより形質転換された酵母宿主細胞は、
「リッチな」培地で、発現を誘発するように成長させてもよい。豊富な培地の例
は、80μg/mlアデニンおよび80μg/mlウラシルを補った、1%酵母抽出物、2%
ペプトン、および1%グルコースからなるものである。ADH2プロモーターの抑制
は、グルコースが培地から枯渇した際に起こる。
哺乳動物または昆虫宿主細胞培養系もまた、組換えITAKポリペプチドを発現す
るため使用してもよい。昆虫細胞内で、異種性タンパク質を産生するバキュロウ
イルス系は、LuckowおよびSummers,Bio/Technology 6:47(1988)により論評され
ている。哺乳動物由来の樹立細胞株も使用してもよい。適切な哺乳動物宿
主細胞株の例は、サル腎臓細胞のCOS-7株(ATCC CRL 1651)(Gluzmanら,Cell
23:175,1981)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハ
ムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、およびBHK(ATCC CRL 10)細胞株、およ
びMcMahanら(EMBO J.10:2821,1991)に記載されたアフリカミドリザル腎臓細
胞株CVI(ATCC CCL 70)由来のCV-1/EBNA-1細胞株である。
哺乳動物宿主細胞発現ベクターの転写および翻訳調節配列はウイルスゲノムか
ら切り出してきてもよい。よく用いられるプロモーター配列およびエンハンサー
配列はポリオーマウイルス、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)、
およびヒトサイトメガロウイルス由来である。SV40ウイルスゲノム由来のDNA配
列、例えばSV40起点、初期および後期ブロモーター、エンハンサー、スプライシ
ングおよびポリアデニル化部位は、哺乳動物宿主細胞中で、構造遺伝子の発現に
他の遺伝的要素を提供するために使用してもよい。ウイルスの初期および後期プ
ロモーターは、双方ともウイルスゲノムからウイルス複製起点も含んでもよい断
片として容易に得ることができる(Fiersら,Nature 273:113,1978)ため、特
に有用である。SV40ウイルス複製起点部位に位置するHind III部位からBgl I部
位に渡るおよそ250bp配列が含まれているならば、より小さいまたはより大きいS
V40断片もまた、使用してもよい。
哺乳動物宿主細胞に使用する典型的な発現ベクターはOkayamaおよびBerg(Mol
.Cell.Biol.3:280,1983)に開示されたように構築してもよい。C127ネズミ
乳腺上皮細胞で哺乳動物cDNAを安定して高レベルで発現する有用な系は、実質上
Cosmanら(Mol.Immunol.23:935,1986)に記載されたように構築してもよい。
Cosmanら,Nature 312:768,1984に記載された有用な高発現ベクター、PMLSV N1
/N4はATCC 39890として寄託されている。別の有用な哺乳動物発現ベクターはEP-
A-0367566号および1991年5月16日に提出された米国特許出願第07/701,415号に記
載されている。ベクターはレトロウイルス由来でもよい。天然シグナル配列の代
わりに、異種性シグナル配列、米国特許第4,965,195号に記載されたIL-7シグナ
ル配列;Cosmanら,Nature 312:768(1984)に記載されたIL-2受容体シグナル配列
;EP367,566号に記載されたIL-4シグナルペプチド;米国特許第4,968,607号に記
載されたI型IL-1受容体シグナルペプチド;および
EP460,846号に記載されたII型IL-1受容体シグナルペプチドなどを付加してもよ
い。
細菌培養中で産生される組換えタンパク質は、通常、まず宿主細胞の破壊、遠
心、不溶性ポリペプチドであれば細胞沈殿物からの、または可溶性ポリペプチド
であれば上清液からの抽出の後、1度またはそれ以上の遠心、塩析、イオン交換
、アフィニティ精製またはサイズ排除クロマトグラフィー段階により単離される
。最後にRP-HPLCを最終精製段階として使用してもよい。微生物細胞は、凍結融
解サイクル、超音波、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む、都合のよい
方法いずれで破壊してもよい。
形質転換された酵母宿主細胞は好ましくは、精製を単純化するため、分泌ポリ
ペプチドとしてITAKを発現するために使用される。酵母宿主細胞発酵から分泌さ
れた組換えポリペプチドは、Urdalら(J.Chromatog.296:171,1984)に開示さ
れたものと類似の方法により精製してもよい。Urdalらは、分離用HPLCカラム上
で組換えヒトIL-2を精製する、2つの連続した逆相HPLC段階を記載している。
上述のように、本発明はITAK、IL-1および/またはTNF-αのアゴニストまたは
アンタゴニストを検出する方法を提供する。本明細書中で用いる際、「ITAKアゴ
ニスト」はIL-1またはTNF-αを含まない。こうした方法はIL-1およびTNF-αそれ
ぞれの情報伝達経路要素の同定を可能にする。
したがって、1つの態様において、本発明は一般的にITAKに関与する遺伝子産
物を同定する方法であって:(a)ITAKポリペプチドをコードする核酸配列を、
宿主細胞の生存率に本質的であるタンパク質の機能的に不完全な第一の部分を含
む融合タンパク質の一部として、ITAK配列が発現されるように第一の発現ベクタ
ーに導入し;(b)ITAKと相互作用または関与する複数の候補遺伝子産物をコー
ドする核酸配列を、候補遺伝子産物いずれも、宿主細胞の生存率に本質的である
ような当該タンパク質の機能的に不完全な第二の部分を含む融合タンパク質の一
部であるように発現されるように第二の発現ベクターに導入し;(c)第一およ
び第二の発現ベクターを、宿主細胞の生存が(宿主細胞の生存率に本質的な)当
該タンパク質の第一および第二の機能的に不完全な部分双方が再構成され機能
的に完全なタンパク質になることに依存するような条件下で、そして十分な時間
をかけて導入し;そして(d)第二の発現ベクター中のITAKと関与する候補遺伝
子産物をコードする核酸配列を同定することを含む方法である。
例えば、酵母ツーハイブリッド(two-hybrid)系(FieldsおよびSong,Nature
340:245(1989); Fieldsら、米国特許第5,283,173号)は、ITAKおよびその他の
タンパク質間、またはITAKおよび選択された化合物間またはプールされた化合物
間、ここで化合物はITAK、IL-1およびまたはTNF-αの活性を増加または減少する
、またはそうでなければITAKを生物学的シグナルを伝達するため使用すると疑わ
れるもの、の相互作用を検出するために用いてもよい。こうした相互作用は酵母
転写因子の機能的な再構成をスクリーニングすることにより検出することもでき
る。
簡潔には、酵母ツーハイブリッド系は2つのタンパク質が直接互いに関与また
は相互作用しているか調べる方法として開発され、そしてその後、関心事の既知
タンパク質または「おとり」と相互作用する候補タンパク質を「捕える」方法と
して働くように修整された。おとりタンパク質は酵母転写因子GAL4のDNA結合領
域との融合タンパク質として、GAL4に制御されるリポーター遺伝子を含む特に設
計された酵母株(Y190)で発現される(Durfeeら,Genes & Devel.7:555,1993
)。GAL4は、モジュラー酵母転写因子であり、DNA結合領域はN末端の147残基の
範囲にあり、一方転写活性化機能残基は完全にC末端114残基の範囲にある。ツー
ハイブリッド系に使用されるライブラリーはGAL4活性化領域融合タンパク質を発
現するクローンを有する。この方法は、2つの融合タンパク質が互いに関与する
タンパク質をコードする際、GAL4機能を再構成し、DNA結合領域融合体が活性化
領域融合体をGAL4プロモーターの位置に誘い、GAL4に調節されるリポーター遺伝
子の転写活性化につながるのを検出する。
本明細書中に開示されるITAK核酸配列は、当業に周知の方法を用いて、GAL4の
DNA結合領域を持つ適切なベクターにクローニングし、そしてGAL4 DNA結合領域
/ITAK領域融合タンパク質を発現する酵母細胞を産生するため適切な酵母株を形
質転換してもよい。活性化領域cDNAライブラリーはその後、適切なベクター中で
スクリーニングしてもよい。こうしたツーハイブリッド検定の陽性信号は
ITAKの基質または活性化因子などのITAKと特異的に関与するタンパク質をコード
するcDNAクローンに起因する可能性もある。ITAKと関与するタンパク質を知るこ
とは、またIL-1およびまたはTNF-α情報伝達の阻害因子の検索を可能にする。
ITAKおよびその関連タンパク質の機能的相互作用はまた、ITAK/基質またはITA
K/活性化因子の関与に干渉し、そしてそれによってIL-1またはTNF-α活性を阻害
する小分子のスクリーニングも可能にする。例えば、酵母ツーハイブリッド系は
次のように、IL-1およびまたはTNF-α阻害因子のスクリーニングに使用してもよ
い。ITAKおよび活性化因子/基質、または相互作用能を有するその一部は、それ
ぞれGAL4 DNA結合領域およびGAL4転写活性化領域に融合し、そしてヒスチジンを
欠損しているプレート上での培養をGAL4活性に依存する株に導入してもよい。IL
-1およびまたはTNF-αの阻害因子を同定するために、成長を阻害する化合物をス
クリーニングすることができる。または、スクリーニングをITAK/活性化因子ま
たはITAK/基質相互作用が成長を阻害するように修飾して、相互作用を阻害する
ことによって成長が見られるようにしてもよい。または、in vitroで、IL-1およ
びまたはTNF-α阻害をスクリーニングする方法は、ITAKやその部分などの構成要
素の1つを、ミクロタイタープレートのウェルに固定すること、またはその他の
構成要素に容易に検出できる指示物質(indicator)と共役させることでもよい
。相互作用の阻害因子は、ウェルから検出可能な指示物質が欠失していることで
同定される。
高効率スクリーニング検定もまた、ITAK活性を阻害する化合物を同定するのに
使用できる。例えば、植物および海洋性源からの天然産物抽出物及び微生物発酵
ブロスは、キナーゼ阻害因子の産生源である可能性があるし、そして潜在的ITAK
アンタゴニストのスクリーニングを行うことができる。ITAKアンタゴニストのそ
の他の産生源には、小有機分子のすでに存在するまたは新規に作成されたライブ
ラリー、およびすでに存在するまたは新規に作成されたコンビナトリアルケミス
トリーライブラリーを含む。内因性のITAK基質の同定、および特異的認識モチー
フを決定するためのリン酸化部位の地図作成は、ペプチド擬似阻害因子の開発を
可能にする。さらに、ITAK活性のin vivo制御は内因性タンパク質阻害
因子を含んでいるようであり、本明細書中に記載される検定を用いて同定するこ
とが可能である。
こうした検定はまた、内因性基質、活性化因子および前述の天然タンパク質阻
害因子のような、生理学的に同等の方法でITAKと相互作用するその他の分子の同
定を容易にする。こうした分子は、限定されるわけではないが、受容体および受
容体関連ポリペプチド、グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)
、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)、グアニンヌクレオチド活性化タンパ
ク質(GAP)、転写活性化因子、およびリプレッサーを含む。さらにITAK検定を
読み出し装置として、情報伝達カスケードに関わるその他の酵素、例えばその他
のキナーゼ、ホスファターゼおよびホスホリパーゼの同定に利用してもおよい。
したがって、本発明は、IL-1またはTNF-α情報伝達の下流反応経路作用を検定
することによって、ITAK、IL-1および/またはTNF-αのアゴニストまたはアンタ
ゴニストを検出する方法を提供する。本発明の1つの側面において、選択された
剤がITAKアゴニストであるかどうかを決定する方法は(a)選択された剤を未刺
激のITAK反応経路に、経路を刺激させる条件下で十分な時間曝露し;そして(b
)反応経路の刺激を検出し、そしてそこからITAKアゴニストの存在を決定するこ
とを含む。関連する側面において、選択された剤がITAKアゴニストかどうか決定
する方法は、(a)ITAK反応経路のITAKキナーゼ活性を測定し;(b)選択された
剤を測定したITAK反応経路に曝露し;そして(c)反応経路において増加したITA
Kキナーゼ活性を検出することを含む。別の側面の範囲内で、本発明はまた、選
択された剤がITAKアンタゴニストであるかどうか決定する方法であって:(a)
選択された剤をITAKアゴニストの存在下で、経路の刺激を減少させる条件下で十
分な時間、ITAK反応経路に曝露し;そして(b)反応経路の刺激の減少を、ITAK
アゴニストのみによる反応経路の刺激に比較して検出し、そしてそこからITAKア
ンタゴニストの存在を決定することを含む方法も提供する。こうした方法は、細
胞増殖(Rainesら,Science 243:393,1989)、プロスタグランジン産生(Curti
sら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:3045,1989)、コロニー刺激因子産生(Cu
rtisら,1989)、細胞表面免疫グロブリン
上向き制御(up-regulation)(Giriら,J.Immunol.131:223,1984)、NF-κB
活性化(Shirakawaら,Mol.Cell.Biol.9:959,1989)検定または当業者に知
られたその他の確立された生物学的情報伝達検定を含んでもよい。
関連する側面において、本発明のいうところのITAKポリペプチドは、ITAK阻害
因子の設計と共に、IL-1またはTNF-α下流作用の阻害因子の構造に基づく設計に
使用してもよい。こうした構造に基づく設計はまた、「合理的薬剤設計」として
も知られる。こうした設計には、こうしたITAKポリペプチドの三次元構造を決定
し、(分子の静電電位、タンパク質のフォールディングなどについてのITAKの解
析と共に、)基質が結合すると思われる部位の三次元構造を決定し、ここで部位
は予測される反応部位である、1つ(またはそれ以上)の予測される反応部位を
組み込んだ分子を合成し、そして分子がITAKを阻害する活性を決定する段階を含
んでもよい(Sudarsanamら,J.Comput.Aided.Mol.Design 6:223,1992)。I
TAKポリペプチドは例えば、X線結晶学、核磁気共鳴法または相同性模型制作など
いずれも周知である方法いずれを用いて三次元的に解析してもよい。例えば、メ
タロプロテアーゼの種特異的阻害因子設計のほとんどは、触媒作用を持つ亜鉛原
子をキレートまたは亜鉛原子に結合する試みに焦点を当てている。合成阻害因子
は通常、特定のプロテアーゼの特異性ポケットに適合するように設計された一連
の他の基を結合させた負電荷の部分を含むよう設計される。
サイトカイン、IL-1およびTNF-αのみがITAK活性を誘発するらしいため、本発
明はこれらサイトカインに対する機能的細胞反応を選択的に遮断する利点を提供
する。したがってITAKは、ITAK阻害因子およびしたがってIL-1およびTNF-αの過
剰放出作用に対する阻害因子の発見を容易にする。ITAKをその潜在的阻害因子の
スクリーニングに使用する、この用法は重要で、そして反応を汚染物質により妨
げる可能性を除去または減少させる可能性がある。
本発明の別の側面に目を向けると、IL-1活性は、IL-1分子が膜結合型IL-1受容
体に結合し、続いてIL-1受容体がIL-1受容体の細胞質領域と関与する細胞質タン
パク質と相互作用するすることにより、開始される。例えば、I型IL-1受容体の
細胞質領域は、本明細書中ではIIP1と呼び、そして”IL-1 Receptor Interactin
g Protein”(U.S.S.N.08/584,831、1996年1月11日提出)と題さ
れた出願に大変詳しく記載されているGTP-ase活性化タンパク質(GAP)と関与す
る。IIP1のようなGAPタンパク質は、Gタンパク質と相互作用し、Gタンパク質は
続いて初期情報伝達機能を実行する細胞質作用分子(例えばタンパク質キナーゼ
またはイオンチャンネル)と相互作用する。Gタンパク質はグアニンヌクレオチ
ド(GDPまたはGTP)と結合する。Gタンパク質はGTPと結合する際、作用分子と相
互作用し、生物学的情報を発生させる(「オン」配置)。逆に、Gタンパク質がG
DPと結合する際、相互作用は起こらず、そして生物学的情報は発生しない(「オ
フ」配置)。Gタンパク質はGTP結合およびGDP結合型間で安定した平衡状態にあ
る。IL-1がIL-1受容体に結合していなければ、IIP1はGTPからGDPへの加水分解を
触媒し、GTP結合およびGDP結合Gタンパク質間の平衡をGDP結合「オフ」型に押し
やり、したがってIL-1情報を妨げる。IL-1がIL-1受容体に結合する際、IIP1のG
タンパク質GTP結合およびGDP結合型との相互作用が遮断され、その結果平衡がGT
P結合「オン」型へと移動し、そしてしたがってIL-1情報が伝達される。したが
って、IIP1の最終効果はGタンパク質関連情報を抑制する。
同様のGタンパク質制御情報伝達経路は、IL-1またはTNF-αに反応しITAK活性
誘導を制御する可能性がある。逆に、IL-1またはTNF-αが仲介するITAK活性の誘
導が、1つまたはそれ以上のGタンパク質の機能を調節する可能性もある。本明細
書中に開示される、既知のグアニンヌクレオチド交換因子(RCC1など(Bischoff
およびPonstingl,Nature 354:80,1991))と明白に相同なアミノ酸配列を有す
るITAKポリペプチド領域は、互いに排除しないこれらの計画どちらとも共存でき
る。したがって本明細書中で、ITAKの提供は、Gタンパク質関連経路の研究、検
出および制御可能性への別の手段を提供する。ITAKは(a)ITAKを制御するまた
はITAKに制御される、そしてIL-1またはTNF-α情報伝達に関与するGタンパク質
、および(b)IL-1またはTNF-α情報伝達経路に関与しているかもしれない、ITA
Kと相互作用するその他のタンパク質を同定するための試薬として使用してもよ
い。Gタンパク質を含むこれらその他のタンパク質は、さらにIL-1またはTNF-α
情報伝達のその他の阻害因子の検索に有用な道具となる。ITAKはまた、組換えIT
AKタンパク質をアフィニティマトリックスに共役させるのに使用してもよい。
別の側面において、本発明はまた、ITAKをコードする核酸分子に基づいた核酸
プローブをも提供する。こうしたプローブはハイブリダイゼーションおよび当業
に知られるその他の検定、例えば候補細胞株または動物系統または種由来の試料
などの候補試料中のITAK遺伝子を検出する検定に用いてもよい。こうしたプロー
ブは好ましくは、中程度または高度に厳密な条件(例えばSambrookら、前記を参
照されたい)でもよい適切に決定された条件下で、ITAK遺伝子に特異的にハイブ
リダイズし、そして一般的に少なくとも約15ヌクレオチド、典型的には少なくと
も約18ヌクレオチドまたは少なくとも約20ヌクレオチド、そして好ましくは約18
から約35ヌクレオチドそしてさらにより好ましくは数100ヌクレオチドを含む。
しかしこうしたプローブは、望ましい場合、全ITAK遺伝子までを含んでもよい。
本発明はまた、単鎖核酸配列(RNAまたはDNA)を含むアンチセンスまたはセン
スヌクレオチドで、標的ITAK mRNA配列(二重構造を形成する)または二重鎖DNA
らせん(三重らせんを形成する)に結合できるヌクレオチドも提供する。こうし
たヌクレオチドはしばしば、ITAK cDNAのコード領域断片を含むが、ITAK cDNAの
非コード領域断片も含んでもよい。典型的にはこうしたヌクレオチドはITAKに特
異的な断片を含む。こうした断片は一般的に少なくとも約15ヌクレオチド、典型
的には少なくとも約18ヌクレオチドまたは少なくとも約20ヌクレオチド、そして
好ましくは約18から約35ヌクレオチドそしてさらにより好ましくは数100ヌクレ
オチドを含む。与えられたタンパク質のcDNA配列に基づいてアンチセンスまたは
センスヌクレオチドを生み出す手法は、例えばSteinおよびCohen,Cancer Res.
48:2659,1988およびvan der Krolら,BioTechniques 6:958,1988に記載されて
いる。
アンチセンスまたはセンスヌクレオチドを標的核酸配列に結合させることによ
って、複合体が形成され、二重構造の崩壊の増大、転写または翻訳の早期終止、
または他の方法を含むいくつかの方法で、翻訳(RNA)または転写(DNA)が遮断
される。したがってアンチセンスヌクレオチドはITAKタンパク質発現を遮断する
ために使用してもよい。この方法でのITAK発現の遮断は、炎症性疾患状態におい
て治療法として有用である可能性がある。アンチセンスまたはセンスヌク
レオチドはさらに、修飾された糖リン酸ジエステル主鎖(またはWO91/06629に記
載されたようなその他の糖結合)を有するオリゴヌクレオチドを含み、そしてこ
こでこうした糖結合は内因性ヌクレアーゼに耐性がある。耐性糖結合を有するこ
うしたオリゴヌクレオチドは、in vivoで安定(すなわち酵素による分解に耐性
がある)であるが、標的ヌクレオチド配列に結合できる配列特異性を保持する。
センスまたはアンチセンスヌクレオチドのその他の例には、WO90/10448に記載さ
れたような有機部分、およびポリ(L-リジン)のような標的核酸配列ヘのオリゴ
ヌクレオチドの親和性を高めるようなその他の部分に共有結合しているオリゴヌ
クレオチドが含まれる。さらにまた、エリプチシンなどの挿入剤、およびアルキ
ル化剤または金属錯体をセンスまたはアンチセンスヌクレオチドに結合させ、ア
ンチセンスまたはセンスヌクレオチドの標的ヌクレオチド配列に対する結合特性
を修飾してもよい。
アンチセンスまたはセンスヌクレオチドは、標的核酸配列を含む細胞に、例え
ばCaPO4が仲介するDNAトランスフェクション、エレクトロポレーション、または
エプスタイン・バーウイルスなどの遺伝子導入ベクターの使用を含む遺伝子導入
法のいずれを用いて導入してもよい。アンチセンスまたはセンスヌクレオチドは
好ましくは、適切なレトロウイルスベクターにアンチセンスまたはセンスヌクレ
オチドを挿入し、その後挿入配列を含むレトロウイルスベクターを細胞とin viv
oまたはex vivoで接触させることにより、標的核酸配列を含む細胞に導入する。
適切なレトロウイルスベクターには、限定されるわけではないが、ネズミレトロ
ウイルスM-MuLV、N2(M-MuLV由来のレトロウイルス)、またはDCT5A、DCT5Bおよ
びDCT5Cと称す二重コピーベクター(PCT出願US90/02656を参照されたい)が含ま
れる。
センスまたはアンチセンスヌクレオチドはまた、WO91/04753に記載されるよう
に、リガンド結合分子と結合体を形成することにより、標的ヌクレオチド配列を
含む細胞に導入してもよい。適切なリガンド結合分子には、限定されるわけでは
ないが、細胞表面受容体、成長因子、その他のサイトカイン、または細胞表面受
容体に結合する他のリガンドが含まれる。好ましくは、リガンド結合分子の結合
体は、実質的に、リガンド結合分子が対応する分子または受容体に結合する能
力を妨げたり、あるいはセンスもしくはアンチセンスヌクレオチドまたはその結
合体型が細胞に入るのを遮断しない。
あるいは、センスもしくはアンチセンスヌクレオチドは、WO90/10448に記載さ
れるように、ヌクレオチド−脂質複合体を形成することにより、標的核酸配列を
含む細胞に導入してもよい。センスまたはアンチセンスヌクレオチド−脂質複合
体は、好ましくは、内因性のリパーゼにより細胞内で分離される。
別の側面において、本発明はITAKと特異的に相互作用する結合相手を提供する
。こうした結合相手は典型的には抗体で、in vivoでIL-1またはTNF-α活性を阻
害し、そして試料中のITAKの存在を検出するのに有用である可能性がある。適切
なITAK結合相手には、ITAKに免疫的に反応する抗体、および好ましくはITAKに対
するモノクローナル抗体、およびITAKに高い親和性で結合できるその他のタンパ
ク質が含まれる。「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナ
ル抗体、F(ab')2、およびFab断片のようなその断片が、組換えによって産生され
た結合相手同様含まれる。抗体は、ITAKに約107M-1より大きいか等しいKaで結合
するとき、特異的に結合すると定義される。結合相手または抗体ヘの親和性は、
例えばScatchardら,Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660(1949)に記載されたもののよ
うな、慣用技術を用いて容易に決定できる。例えば本明細書中に記載された酵母
ツーハイブリッドスクリーニング系を用いて、他のタンパク質をITAKの結合相手
として決定することも可能である。本発明はまた、ITAKに特異的に結合する結合
相手および抗体を調製するための、ITAK、およびITAKのアミノ酸配列に基づくペ
プチドの使用を含む。
ポリクローナル抗体であるITAK結合相手は、例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツ
ジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウスまたはラットなどのさまざまな産生源から
、当業に周知の手法を用いて、容易に産生することが可能である。一般的に、精
製ITAKあるいは適切に結合されたITAKのアミノ酸配列に基づくペプチドは、典型
的には注射により宿主動物に投与される。ITAKの免疫原性は例えばフロイント完
全または不完全アジュバントのようなアジュバントを使用することで高めてもよ
い。追加免疫後、少量の血清試料を収集しそしてITAKまたはITAKペプチドに対す
る反応性を試験する。こうした決定に有用なさまざまな検定の例には:
逆電流免疫電気泳動(CIEP)、放射免疫検定、放射免疫沈降、酵素結合免疫吸着
検定法(ELISA)、ドットブロット検定およびサンドイッチ検定(米国特許第4,3
76,110号および第4,486,530号を参照されたい)のような手法と共に、Antibodie
s:A Laboratory Manual,HarlowおよびLane(監修),ColdSpring Harbor Labor
atory Press,1988に記載されるものを含む。
ここに提供される単離ITAKによって、ITAKに特異的なモノクローナル抗体が周
知の手法を用いて容易に調製される。手法の例としては、米国特許第RE32011号
、第4,902,614号、第4,543,439号および第4,411,993号;Monoclonal Antibodies
,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,Kenne
tt,McKearnおよびBechtol(監修),1980; Harlow,前記を参照されたい。簡潔
には、マウスなどの宿主動物は、少なくとも1度、そして好ましくは約3週間間隔
でに少なくとも2度、単離されそして精製されたITAKまたは結合したITAKペプチ
ドを、任意でアジュバントの存在下で、腹腔内に注射される。マウス血清はその
後、慣用ドットブロット技術または抗体捕獲(ABC)により検定し、どの動物が
融合に最適かを決定する。およそ2から3週間後、マウスはITAKまたは結合された
ITAKポリペプチドで静脈内追加免疫される。マウスはその後、屠殺し、そして確
立されたプロトコルにしたがって、脾臓細胞をAg8.653(ATCC)のような商業的
に入手可能な骨髄腫細胞と融合させる。簡潔には、当該骨髄腫細胞を培地中で数
回洗浄し、そして1つの骨髄腫細胞あたりおよそ3つの脾臓細胞という割合になる
ようにマウス脾臓細胞を融合させる。融合剤は当業に用いる、例えばポリエチレ
ングリコール(PEG)などの適切な剤いずれを用いてもよい。融合物は、融合細
胞を選択的に成長させるような培地を含むプレートにまく。当該融合細胞は、そ
の後、およそ8日間成長させる。結果として生じたハイブリドーマからの上清を
回収し、そしてヤギ抗マウスIgでまず覆われたプレートに添加する。洗浄後、12 5
I-ITAKのような標識をそれぞれのウェルに加え、その後培養する。陽性のウェ
ルは、続いてオートラジオグラフィーによって検出することが可能である。陽性
クローンは、全体培養で成長させ、そして引き続いて上清をプロテインAカラム
(Pharmacia)上で精製する。
本発明のモノクローナル抗体は、Alting-Meesら,”Monoclonal Antibody Exp
ression Libraries:A Rapid Alternatibe to Hybridomas,”Strategies in Mole
cular Biology 3:1-9(1990)に記載されたもののような、別法を用いて産生して
もよい。同様に、結合相手は組換えDNA技術を用いて構築し、特異的に結合する
抗体をコードする遺伝子のさまざまな領域を組み込んでもよい。こうした技術は
Larrickら,Biotechnology 7:394(1989)に記載されている。
「抗体」の他の種類は、本明細書中に提供された情報を当業の知識状熊と組み
合わせたものを用いて産生してもよい。例えば、ITAKに特異的に結合できるヒト
抗体の構成分子を含むように設計された抗体もまた、本発明に含まれる。
一度単離され精製されたITAK結合相手は、確立された検定プロトコルを用いて
、試料中のITAKの存在を検出するのに用いてもよい。さらに、本発明の結合相手
、典型的には抗体は、in vivoでITAKに結合し、そしてその活性を阻害するため
、治療に用いてもよい。こうしたITAK結合相手は、カラムクロマトグラフィーマ
トリックス、またはITAKを発現する細胞から得られた分子構成要素を同定、分離
または精製するのに適当な同様の基質などの固相に結合させてもよい。固相接触
表面へのITAKまたはITAK結合タンパク質の接着は、どのような方法で達成しても
よく、例えばITAK結合タンパク質を磁気小球体で覆い、そして磁場中でインキュ
ベーション容器に保持してもよい。細胞抽出物はそのすぐ後で、ITAKまたはITAK
結合タンパク質を有する固相に接触させる。ITAKまたはITAK関連種は固定された
結合タンパク質に結合し、そして結合しない成分はその後洗い流される。このア
フィニティ結合法は、こうしたITAK関連分子を溶液から精製、スクリーニングま
たは分離するのに有用である。陽性に選択された構成要素を固相から放出する方
法は当業に知られており、そして例えば、pH変化、塩濃度改変またはカオトロピ
ック剤の利用を含む。
ITAKまたはその断片または変異体もまた、それ自体、IL-1および/またはTNF-
α情報伝達阻害における治療剤として有用である可能性がある。本発明によって
提供されるITAKアゴニストまたはITAKアンタゴニストもまた、単独でまたはITAK
またはその断片またはその変異体と組み合わせて、 IL-1および/またはTNF-α
情報伝達阻害における治療剤として有用である可能性がある。ITAKま
たはITAKアゴニストまたはITAKアンタゴニストは、リポソームへのITAK(または
そのアゴニストまたはアンタゴニスト)の内包、または特定の種類の細胞を標的
としたモノクローナル抗体へのITAKの共役などの周知の方法によって、細胞内環
境に導入される。
治療剤として使用した際、ITAK、ITAKアゴニストまたはITAKアンタゴニストは
、既知の方法により、薬剤組成物に処方することが可能である。好ましい態様に
おいて、ITAKは81位のリジン残基が別のアミノ酸に変わる突然変異を含む。例え
ば、リジンからアラニンへの突然変異を含むITAKA 81として知られるITAK変異体
がある。ITAK、ITAKアゴニストまたはITAKアンタゴニストは分野に周知の方法、
例えばリポソームへのITAKの内包、または特定の種類の細胞を標的としたモノク
ローナル抗体へのITAKの共役を用いて細胞内環境に導入してもよい。
ITAK、ITAKアゴニストまたはITAKアンタゴニストは、単独の活性成分としてま
たはその他の既知の活性成分と共に、薬剤として適切な希釈剤(例えばTris
−HCl、酢酸、リン酸)、保存剤(例えばチメロサル、ベンジルアルコール、
パラベン)、乳化剤、可溶化剤、アジュバントおよび/またはキャリアーと混合
物として組み合わせてもよい。適切なキャリアーおよびその処方は、Remington'
s Pharmaceutical Sciences,第16版.1980,Mack Publishing Co.に記載されて
いる。さらに、こうした組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)、金属イオ
ンと複合体を作成した、またはポリ酢酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなどの
ポリマー化合物に取り込まれた、またはリポソーム、微小乳剤、ミセル、単層ま
たは複層小胞、赤血球ゴーストまたは球状芽細胞に取り込まれた、ITAK、または
ITAKアゴニストまたはITAKアンタゴニストを含んでもよい。こうした組成物はIT
AKの物理的状態、可溶性、安定性、in vivo放出速度、およびin vivo排除速度に
影響するであろう。
ITAKまたはその断片、ITAK変異体またはその断片、ITAKアゴニストまたはその
断片、またはITAKアンタゴニストまたはその断片をコードするヌクレオチド配列
である本発明の組成物は、遺伝子治療戦術にしたがって治療剤として使用される
。一般的に、こうしたヌクレオチド配列は、ベクターに組み込まれ、望まし
いヌクレオチド配列の発現につながる;こうしたベクターは当業者により容易に
構築できる。さらにこうしたベクターのさまざまな投与法は、当業者に周知であ
る。
遺伝子治療のためのこうしたベクターは、レトロウイルスベクター構築物でも
よく、または、例えばポリオウイルス(Evansら,Nature 339:385-388,1989;お
よびSabin,J.Biol.Standardization 1:115-118,1973);ライノウイルス;
カナリアポックスウイルスまたはワクシニアウイルスのようなポックスウイルス
(Fisher-Hochら,PNAS 86:317-321,1989; Flexnerら,Ann.N.Y.Acad.Sci.
569:86-103,1989; Flexnerら,Vaccine 8:17-21,1990;米国特許第4603112号お
よび第4769330号; WO 89/01973);SV40(Mulliganら,Nature 277:108-114,19
79);インフルエンザウイルス(Luytjesら,Cell 59:1107-1113,1989; McMich
aelら,N.Eng.J.Med.309:13-17,1983;およびYapら,Nature 273:238-239,
1978);アデノウイルス(Berkner,Biotechniques 6:616-627,1988;Rosenfeld
ら,Science 252:431-434,1991);アデノ関連ウイルスのようなパルボウイル
ス(Samulskiら,J.Vir.63:3822-3828,1989; Mendelsonら,Virol.166:154-
165,1988);およびヘルペス(Kit,Adv.Exp.Med.Biol.215:219-236,1989
)を含むその他のウイルスキャリアーを発展させそして利用してもよい。
一度ベクターが調製されれば、ベクターは温血動物に治療目的に投与してよい
。上述のように、ベクターの投与法は当業者に周知であり、そして例えば、直接
投与、またはリポフェクション(Felgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7
413-7417,1989)、直接DNA注入(Acsadiら,Nature 352:815-818,1991);微
小発射物衝撃(Williamsら,PNAS 88:2726-2730,1991);リポソーム(Wangら
,PNAS 84:7851-7855,1987);CaPO4(Dubenskyら,PNAS81:7529-7533,1984)
またはDNAリガンド(Wuら,J.Biol.Chem.264:16985-16987,1989)などのさ
まざまな物理的方法を用いたトランスフェクションを通じた方法を含む。
ITAKまたはその断片、ITAK変異体またはその断片、ITAKアゴニストまたはその
断片、またはITAKアンタゴニストまたはその断片をコードするヌクレオチド
配列を含む上述の組換えウイルスの1つを含む遺伝子療法のための薬剤組成物が
提供される。組成物は溶液として調製してもよいし、固体の形(凍結乾燥など)
で調製して投与前に溶液に懸濁してもよい。さらに、組成物は、注射、経口また
は直腸投与のいずれに対しても適切なキャリアーまたは希釈剤と調製してもよい
。一般的に、組換えウイルスは処方前に0.25%から25%の範囲、そして好ましく
は約5%から20%の濃度で使用する。続いて、組成物の調製後、組換えウイルス
は投与ごとに成分約1μgを、共に精製された約10倍量(10μg)の混入物質と
共に組成するであろう。好ましくは組成物は後述のように処方された0.1-1.0ml
の水を含む溶液中に調製される。
薬剤に認められるキャリアーまたは希釈剤は、使用される投薬および濃度で被
投与者に毒性がない。注射可能な溶液のキャリアーまたは希釈剤として代表的な
例には、ヒト血清アルブミンなどのポリペプチドやタンパク質と共に、水、好ま
しくは生理学的pHで緩衝されている(リン酸緩衝生理食塩水またはトリス緩衝生
理食塩水)等張塩溶液、マンニトール、デキストロース、グリセロール、および
エタノールがある。特に好ましい組成物は、ベクターまたは組換えウイルスを10
mg/mlマンニトール、1mg/ml HSA、20mMトリス、pH7.2および150mM NaClに含む。
この場合、組換えベクターは約成分1μgに相当するので、高分子量成分の1%よ
り少ないかもしれないし、そして全成分(水を含む)の1/100,000より少ないか
もしれない。この組成物は、少なくとも6か月間、-70℃で安定である。組成物は
静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、または筋肉内(i.m.)注射してもよい。経口
処方もまた、キャリアーまたは希釈剤として、例えば、セルロース、ラクトース
、マンニトール、ポリ(DL−ラクチド−コーグリコール酸)球体、および/また
はスターチのような炭水化物を使用してもよい。組成物は例えば、錠剤、ゲルカ
プセル、丸薬、溶液または懸濁液のいずれの形で服用してもよく、そしてさらに
、持続放出のために処方してもよい。直腸投与のため、ポリアルカリグルコース
、またはトリグリセリドなどの伝統的なキャリアーにより、座薬の調製を行って
もよい。
次の実施例は、本発明の態様の例証を提供し、そして添付の請求の範囲で述べ
られる本発明の範囲を制限すると解釈すべきではない。次の実施例において、記
載される全ての方法は異なって特定されない限り、慣用法である。
実施例
実施例1
ITAK活性の測定
クローン化されたITAK遺伝子配列は、まず、単離されそして精製されたウサギ
IL-1誘導β-カゼインキナーゼポリペプチド、IL-1/TNF-α活性化キナーゼ(ITAK
)の部分的アミノ酸配列の比較解析により検出された。クローン化されたヒトヌ
クレオチド配列はタンパク質キナーゼに特徴的なポリペプチド領域をコードし、
そしてITAK由来ペプチドと相同なアミノ酸を示すことが同定された。
ITAK活性は元来、損なわれていない(intact)β-カゼインをリン酸化する能
力により検出された(Guesdonら,J.Biol.Chem.268:4236(1993);Guesdonら,
Biochem.J.304:761(1994))。しかし、この精製を通じて使用される検定は第
二代ペプチドに基づいた検定である。ITAKが介するβ-カゼインのリン酸化の3つ
の部位(Ser 57、Ser124およびSer142)は当業に知られる方法により同定された
。脱リン酸化されたウシβ-カゼインはその後、以前記載された条件下(Guesdon
ら,1993; Guesdonら,1994;前記)でITAKにより32Pで標識された。放射標識さ
れたβ-カゼインはプロテイナーゼで消化され、そしてその結果生じたペプチド
は二次元薄層クロマトグラフィーおよび/または逆相高速液体クロマトグラフィ
ー(RP-HPLC)により分離された。単離された放射活性を持つペプチドを、その
後、配列分析し、リン酸化受容部位のアミノ酸配列を決定した。ホスホセリンを
を含む3つのペプチドがこの方法により同定された。これら3つのセリン残基の周
囲の、およびこれらを含む配列を含むさまざまなペプチド基質が、ABI Model 43
0 Peptide Synthesizerにより合成された。すべてのペプチド基質は、ホスホセ
ルロースフィルターへのペプチドの結合を介するよう
に、複数のN末端またはC末端塩基性残基を有するように合成された;これはペプ
チドに基づくキナーゼ検定の方法としてよく用いられるものである(Glassら,A
nal.Biochem.87:566,1978;Casnellieら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 79:282
,1982)。さまざまな潜在的ペプチド基質の動力学的解析の結果、次のペプチド
が標準的ITAK検定のために選択された:
標準的なITAK検定において、ITAKを含む10μlの試料を、2mMのペプチド基質
を含む10μlの2x検定緩衝液(40mMヘペス、pH7.4/20mM MnCl2/20μMATP/1μC
iγ-(32P)-ATP)に加え、反応を30℃、20分で進め、その後10μlのギ酸を加え
て停止する。ブランク対照は、ペプチド基質がない状態で行われる検定からなる
。反応が停止された後、検定混合物は丸い2.5cmのホスホセルロースフィルター
(P81,Whatman、ニュージャージー州フェアフィールド)上に染み込ませ、75mM
H3PO4で2度洗浄し、そして20mlのホウケイ酸シンチレーションバイアル内に入
れ、β−カウンター中でチェレンコフカウントを行う。1分当たりの総カウント
、cpm(試料cpmからブランクcpmを除いたもの)を、ペプチド基質に取り込まれ
たリン酸のピコモルを計算するのに用いる。ITAK活性の1ユニットは、標準検定
条件下で1分間に、1ピコモルのリン酸をペプチド基質、RRRHLPPLLLQSWMHQPHQ(
配列番号3)に取り込むのに必要なITAK量として定義される。比活性はタンパク
質ミリグラムあたりのITAK活性ユニットとして定義される。この検定の大規模な
スクリーニングへの適用は、シンチレーション近接検定(SPA)にストレプトア
ビジンで覆われたSPAビーズと共にビオチン化ITAK基質ペプチドを使用すること
、または当業に知られる技術により、ITAK基質ペプチドを蛍光標識で共有的に修
飾することを含んでもよい。
実施例2
ITAK の精製
本実施例は、ITAKタンパク質の部分的アミノ酸配列分析に十分な量の、IL-1に
より誘導されたウサギ肺ITAKの精製を記載する(表1を参照されたい)。ウサギ
肺は、未処置の対照動物組織と比較した際、IL-1αに反応してITAK活性が最も高
い増加を示したため選択された。本実施例はIL-1α処置ウサギから取られた70対
の肺からのITAK精製を詳細に述べる。
簡潔には、ニュージーランドシロウサギ(2.0-2.5kg)の耳に、PBS(リン酸緩
衝生理食塩水)で全体積0.5mlとした100μg/kg体重のヒト組換えIL-1αを静脈
注射した。注射後15分で動物を頚椎脱臼により屠殺し、そして肺を速やかに切除
した(2-3分以内)。除去された後、肺はドライアイス上で急速に凍結し、-80℃
で保存した。
肺は組織がまだ一部凍っている状態で、水冷した洗浄緩衝液(プロテイナーゼ
阻害因子、0.1mMロイペプチンおよび1.0mMフェニルメチルスルホニルフロリド(
PMSF)を含むPBS)中で、氷上で小片に切りわけられた(〜0.5cm3)。細かく刻
んだ肺は少なくとも2回、混入した血液タンパク質を除去するために、肺1対当た
り100mlの氷冷洗浄緩衝液で洗浄した。一般的に、1度に5対の肺を処理し;した
がってそれぞれの洗浄は500mlの洗浄緩衝液で、常に撹拌しながら10分間行わ
れ、その後緩衝液はデカントおよび吸引により除かれた。
2度目の洗浄後、細かく刻んだ肺組織は、すぐに氷冷したホモジェナイゼーシ
ョン緩衝液(HB: 25mM Tris−HCl、pH7.5/100mM β−グリセロリン酸/
25mMパラ−ニトロフェニルリン酸/10mMオルトバナジン酸ナトリウム/2mM DTT
(ジチオスレイトール)/1mM MgCl2/5mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)/5
mM EGTA(エチレングリコールビス(β-アミノメチル)エーテル)N,N,N',N'-四
酢酸)/5mMベンズアミジン/1μM E-64(トランス−エポキシスクシニル−L
−ロイシルアミド−(4−グアニジノ)ブタン)/1mM PMSF/0.1mMロイペプチン
)中に置き、そしてさらに細かく刻んだ。細かく刻んだ肺は、最終的に10:1(HB
容積(ml):組織重量(gm))の比率でホモジェナイズした。初めに、細かく刻
んだ肺は、総容積の75%のHB中でホモジェナイズし、
4℃で12,000rpm、30分遠心分離して固体成分を沈殿させ、そして沈殿は残った25
%の緩衝液で再ホモジェナイズした。
ホモジェナイゼーション(75%の緩衝液中での細かく刻んだ組織の)はBrinkm
an Homogenizerを#8の設定で20秒間2回用いて行った。固体成分は4℃で12,000rp
m、30分遠心分離して除いた。上清は除去し、沈殿物は残った25%のHBに再び懸
濁し、そして設定#8で30秒間再ホモジェナイズした。もう1度4℃で12,000rpm、
30分遠心分離して、不溶性成分を除いた。上清双方は混合し、グラスウールを通
して引力ろ過し、さらに浄化した。
この調製は、rHuIL-1αで処置されたウサギから単離した70対の肺(湿重量560
グラム)を使用し、5.7リットルの肺ホモジェネートを生じた。肺ホモジェネー
トは硫酸アンモニウムに対し、25%になるように、4℃で常にゆっくり撹拌しな
がら、固体の硫酸アンモニウム764グラムを徐々に加えた。全ての硫酸アンモニ
ウムを溶液内に加えた後、撹拌をやめ、そしてホモジェネートは4℃で1晩インキ
ュベートした。0-25%硫酸アンモニウム沈殿は、4℃で12,000rpm、30分遠心分離
して回収した。沈殿した沈殿物は4つの等しい群に分け、それぞれ500mlの緩衝液
A(20mMトリス、pH8.5/50mMβ−グリセロリン酸/2mM DTT/1mM EDTA/1mM EGT
A/1mM PMSF/0.1mMロイペプチン)に再度溶解した。再溶解した0-25%沈殿物は
、緩衝液A(10リットルずつ)を2度交換し、4℃で1晩透析した。透析後、残った
不溶性成分は4℃で20,000rpm、30分遠心分離して除去した。その結果生じた上清
は、続けてグラスファイバープレフィルター、0.8μmフィルターおよび最後に0
.45μmフィルター(Corning、ニューヨーク州コーニング)でろ過した。
全てのクロマトグラフィーに使用した緩衝液は、使用前に0.45μmフィルター
(Corning)でろ過した。4つのろ過した群(550-600mlを含む)のそれぞれは、
個々にあらかじめ緩衝液Aで平衡化したSource 15Q(Pharmacia、ニュージャージ
ー州ピスカタウェイ)の25ml(10.5x 1.6cm)カラムに6.0ml/分の流速度で適用
した。カラムはその後10総容積(250ml)の緩衝液Aで6.0ml/分の流速度で洗浄し
た。結合したタンパク質は、56.6分をかけ、6.0ml/分の流速度で緩衝液A中のNaC
lを一次勾配で増加(0-0.5M)させて溶出した。4.5mlの分
画を回収し、そしてそれぞれの分画から10μlを用いITAK活性を検定した。クロ
マトグラフィー段階は、異なる記述がされない限り全て4℃で行った。
ITAK活性は、Source 15QからNaCl濃度が200-300mMの時、溶出された(表1)。
4つの別々のSource 15Q流出から得られた、溶出されたITAK活性を含む分画はま
とめ、緩衝液B(10%グリセロールを含む緩衝液A)で1:2に希釈し、そしてあらか
じめ緩衝液Bで平衡化したReactive Green 19(Sigma、ミズーリ州セントルイス
)の50ml(9.5x 2.6cm)カラムに2.5ml/分の流速度で適用した。添加後、カラム
は4総容積(200ml)の緩衝液Bで2.5ml/分の流速度で洗浄した。
タンパク質は、Green 19カラムから、80分をかけ、2.5ml/分の流速度で緩衝液A
中のNaClを一次勾配で増加(0-2.0M)させて溶出した。4mlの分画を回収し、そ
してそれぞれの分画から5μlのアリコットを用いてITAK活性を検定した。ITAK
活性はNaCl濃度が1.0-1.5Mの時、溶出された。活性のある分画はまとめ、そして
Centriprep 30濃縮装置(Amicon,マサチューセッツ州ビバリー)で最終容積が5
.0mlになるように濃縮した。
ITAK濃縮物はあらかじめ緩衝液Bで平衡化したHiLoad 26/60 Superdex 200サイ
ズ排除クロマトグラフィーカラム(Pharmacia、ニュージャージー州ピスカタウ
エイ)に装填した。タンパク質は2.5ml/分の流速度で緩衝液Bで溶出した。4mlの
分画を回収し、そして5μlのアリコットのITAK活性を検定した。同一の条件下
でクロマトグラフィーにかけられたゲルろ過目盛標準(Biorad、カリフォルニア
州ハーキュルス)は、ITAKの見かけの分子量を評価するのに用いられ;その溶出
は常に分子量〜350kDの位置と一致した。
Superdex 200から溶出されたITAK活性のピーク分画はまとめて、10%NP-40溶
液(Pierce、イリノイ州ロックフォード)を適当量加えてNP-40が0.1%になるよ
うにし、37℃で5分間インキュベートし、その後すぐにあらかじめ緩衝液C(0.1
% NP-40を含む緩衝液B)で平衡化したHeparin-Sepharose(Pharmacia)の25ml(
12.5x1.6cm)カラムに流速度2.0ml/分で適用した。この段階および続く全てのク
ロマトグラフィー段階は、室温(20℃)で行われた。添加後、カラムは同じ流速
度で4カラム容積(100ml)の緩衝液Cで洗浄した。カラムは50分をかけ、2.0ml/
分の流速度で緩衝液C中のNaClを一次勾配で増加(0-
1.0M)させ展開した。全ての塩勾配で1mlの分画を回収し、そしてそれぞれの分
画から2μlを用いてITAK活性を検定した。ITAKはNaCl勾配領域が175-250mMで溶
出された。
活性のある分画はまとめ、そしてpHを8.0に合わせた緩衝液Cで1:5に希釈し、3
7℃で5分間インキュベートし、その後すぐにあらかじめpH8.0の緩衝液Cで平衡化
した1.0ml HR5/5 MonoQカラム(Pharmacia)に流速度1.0ml/分で適用した。カラ
ムは流速度1.0ml/分で10カラム容積(10ml)の緩衝液C pH8.0で洗浄した後、20
分をかけ、やはり1.0ml/分の流速度で緩衝液C pH8.0中のNaClを一次勾配で増加
(0-0.5M)させ展開した。全ての塩勾配で0.5mlの分画を回収し、そしてそれぞ
れの分画から1μlを用いてITAK活性を検定した(表1)。ITAK活性はNaCl勾配の
200-250mM部分で、単一のはっきりしたピークとして溶出された。さらにそれぞ
れの分画から1μlを除き、プレキャスト8-16% Novex(カリフォルニア州サンデ
ィエゴ)勾配ゲルを用いたドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-
PAGE)により解析した。
SDS-PAGEの前に、ITAKを含むMonoQカラムの分画1μlを、外因性に添加された
基質の非存在下で修飾キナーゼ検定条件下(20mMヘペス、pH7.4/10mM MnCl2/1
0μM ATP/0.5μCi γ-(32P)-ATP、30℃で45分間)でインキュベートした。こ
の過程により以前、〜110-125kDと概算される内因性部分が32P標識される結果が
得られていた。電気泳動後、ゲルを銀染色し、そして放射標識されたバンドはPh
osphoImager(Molecular Dynamics、カリフォルニア州サニーベール)を用いて
同定した。90、100および110kDと概算される目だって銀染色されたバンドが、IT
AK活性に対応して観察された。110kDのバンドおよび2つの弱く染色された120お
よび125kDのバンドは、ゲル上で32P標識部分と一致する位置に移動した。全ての
分子量概算は、同じゲル上で電気泳動されたNovex Wide Range Protein Standa
rdsとの直接比較に基づいた。
ITAK活性を有する、溶出されたMonoQカラム分画はまとめ、2.0MTris−H
Cl、pH7.0でpHを7.0に合わせ、その後4つの別々の群(それぞれ300-400μl)
にして、あらかじめ緩衝液D(20mMTris−HCl、pH7.0/10mMβ−グリセロ
リン酸/1mM DTT/1mM EDTA/2mM EGTA/1mM PMSF/0.1mMロイ
ペプチン/10%グリセロール/0.1%NP-40)で平衡化された60 x 0.75cm Bio-Sil
SEC-400 HPLCゲルろ過カラム(BioRad、カリフォルニア州ハーキュルス)に適用
した。タンパク質は流速度0.5ml/分でカラムから溶出し、0.5mlの分画を回収し
、そしてそれぞれの分画の0.5μlを用いてITAK活性を検定した。さらに0.5μl
を、上述のように、外因性に添加された基質の非存在下、修飾キナーゼ検定条件
下でγ-(32P)-ATPを用いた32P放射標識、SDS-PAGEおよび銀染色に用いた。再び9
0および100kDバンドが、ITAK活性と共に溶出し、32P放射標識された内因性の110
、120および125kDバンドも溶出された。ゲルろ過目盛標準(BioRad)は同一の条
件下で、最後のITAK流出直後にクロマトグラフィーにかけられた。ITAK(表1)
は、Bio-Sil SEC-400カラム(4流出全て)から常に分子量350kDの溶出容積で溶
出された。
HPLCゲルろ過カラムからのITAKを含む分画はまとめ、そしてあらかじめ緩衝液
E(20mMトリス塩酸、pH8.5/1 mMβ−グリセロリン酸/1mM DTT/1mM EDTA/1mM
EGTA/1mM PMSF/0.1mMロイペプチン/10%グリセロール/0.1%NP-40)で平衡化
された35μl(5 x 0.1cm)の小孔MonoQ(Pharmacia)カラムに適用した。ITAK
はカラムに50μl/分で適用し;複数の適用が必要であり、そしていずれの場合
もカラムは280nmの吸光度がベースラインに戻るまで緩衝液Eで洗浄した。最後の
添加後、カラムはさらに30カラム容積の緩衝液Eで洗浄した。全ての適用および
洗浄は全て流速度50μl/分で行った。タンパク質は10分をかけ、50μl/分の
流速度で緩衝液E中のNaClを一次勾配で急激に増加(0-0.5M)させ溶出した。50
μlの分画を回収し、そしてそれぞれの分画から0.25μlを除いてITAK活性を検
定した。さらに0.25μlを除き、上述のように、外因性に添加された基質の非存
在下、修飾キナーゼ検定条件下でγ-(32P)-ATPを用いた32P放射標識、SDS-PAGE
および銀染色に用いた。
事実上全ての(>95%)ITAK活性が、(32P)標識された110、120および125kDのバ
ンド同様、以前観察された標識されていない90および100kDバンドを含む単一の
分画(分画#12、表1)に溶出された。ITAKを含む分画のおよそ1/3を用い、分離
ゲル電気泳動を行った。試料はまず、上述のように内因性に32Pで標識し、その
後還元し(100℃で30分間、過剰のDTTを用いる)そしてその後、暗所
で過剰のヨード酢酸によりアルキル化した。電気泳動は8-16%プレキャストNove
x勾配ゲルを用いて行い、そして100V(定常電圧)で30分、その後150V(定常電
圧)でさらに90分泳動した。電気泳動後、ゲルはクーマシーブリリアントブルー
G-250で染色し、脱染色し、サランラップを巻いてPhosphorImagaerにより放射標
識されたバンドを同定するためにStorage Phosphor Screenに曝露した。放射標
識されたバンドを含む、ITAK活性と共に精製されたバンドは、ゲルから切り出さ
れ、当該分野に知られる修飾技術を用いてゲル内トリプシン消化した(Henzelら
,Methods:A Companion to Methods in Enzymology 6,pp.239-247,1994)。
ゲルの放射活性を持つ領域から切り出した3つの薄片は、同時に電気泳動され
たWide Range Protein Standards(Novex、カリフォルニア州サンディエゴ)と
の比較に基づき、110、120および125kDの分子量を有するタンパク質を含むと概
算された。これらのゲル薄片は、チェレンコフカウントされ、そしてそれぞれ3.
0 x105、6.9 x105および8.3 x105cpmを含んでいた。ゲル内トリプシン消化はこ
れらのゲル薄片上で、配列解析できる等級のトリプシン(Promega、ウィスコン
シン州マディソン)を1:10(w/w)の比率で用いて行った。消化は20mM NH4HCO3
、pH8.0中で、37℃、16時間行った。その結果生じたペプチドは、60%アセトニ
トリル/5%ギ酸中で、ペプチドの回収を容易にするために、37℃でのインキュ
ベーションおよび超音波処理両方を行って、ゲル小片から抽出することにより単
離した。
回収されたペプチドは、簡単に真空濃縮し(Speed-Vac SC 100,Savant、ニュ
ーヨーク州ファーミングデール)、アセトニトリルの大半を除去し、その後、あ
らかじめ0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)で平衡化したキャピラリーC18(Vydac、
カリフォルニア州ヘスペリア)カラムに、成分を流速度15μl/分で適用するこ
とにより分離した。装填後、キャピラリーカラムは0.1%TFAを用い15μl/分で
徹底して洗浄した。ペプチドはアセトニトリルの上昇勾配(0-90%、1.0%/分
)により90分かけて溶出した。溶出したペプチドは分光光度計により214nmでモ
ニターし、そして分画は手で回収された。110および120kDバンドのトリプシンペ
プチド地図は、実質的に同一であり、そして125kDバンド
の地図はこれほど明らかではないが同様であり、このことによりこれら3つのバ
ンドが同一のタンパク質の修飾された型であるらしいことが示唆された。それぞ
れの分画の小量(3-5%)は、Lasermat Mass Analyzer(Finnigan MAT)および
または三重四極質量分析(エレクトロスプレーイオン化と併用したFinnigan MAT
TSQ 700)を用いたMALDI(マトリックス補助レーザー放出質量分析)により解
析し、そして残った部分で、ABI 476AまたはABI 494自動タンパク質配列解析機
のいずれかを用いて、エドマン分解による配列解析を行った。これら3つの放射
標識されたバンド由来のペプチドのさらなる解析は、110、120および125kDバン
ドが関連しているという仮説を裏付けた。
ITAKは次の配列を有することが見い出されている:
他のキナーゼとの相同性を基にすると、配列番号4として示された配列は、キ
ナーゼサインモチーフの切断型に類似している(Hanksら,Sciecne 241:42,198
8)。この分子がキナーゼであると同定する、このウサギITAK配列断片の存在に
より、やはりキナーゼモチーフを含む別個の生物学的産生源成分由来のcDNAクロ
ーン(実施例3、4を参照されたい)の配列比較が可能になった。こうした部分的
クローン1つの翻訳物は、ヒト樹状細胞cDNAサブトラクトライブラリーから生成
されそしてHH0381と呼ばれているが、このcDNAクローンは配列番号4と同一の配
列を含むことがわかった。HH0381 cDNAの伸長型はクローン7と呼ばれているが、
精製されたウサギITAKペプチドに同定された配列番号4および5に示されたアミノ
酸配列双方に翻訳される、ヒトcDNA由来のヌクレオチド配列を含むことがわかっ
た。さらに精製ウサギ肺110、120および125kD ITAKから生成されたトリプシンペ
プチド中に存在するその他のアミノ酸配列もまた、クローン7にコードされるこ
とがわかった。これらの共通の配列はここに配列番号6および配列番号7として示
される。
表1
IL-1α誘導ウサギ肺からのITAKの単離および精製* 概算、正確な測定を行うには薄すぎた
$ 280nmでの吸光度および銀染色に基づいた概算
[] 高バックグラウンドおよび阻害のため検定不能
{} 異常に低い、比活性はHS添加に基づく
実施例3
ヒト樹状細胞cDNAライブラリーのヒトキナーゼ遺伝子配列の同定
ヒト樹状細胞(DC)は新たに集められたヒト骨髄から次のように精製された。
骨髄細胞は、Ficoll密度勾配により分画化し、そしてCD34+骨髄細胞を、製造
者の指示に従い、Ceprate LC CD34ビオチンキット(CellPro、ワシントン州ボセ
ル)を用いて、高密度(軟層(buffy coat))分画から単離した。簡潔には、軟
層細胞はビオチン化したモノクローナル抗CD34抗体とインキュベートし、通常の
生理食塩水を含む緩衝液で洗浄し、そして細胞懸濁を固相固定したストレプトア
ビジンのカラムに装填した。CD34+細胞は、ストレプトアビジン−ビオチン親和
性結合によりカラムに吸着し、一方、CD34-細胞はカラム流出物と共に洗い流さ
れた。陽性に選択されたCD34+細胞はその後、ストレプトアビジン−ビオチン相
互作用が抗体およびその同種のリガンド、CD34との相互作用より高い親和性を有
するため、しなやかなカラムを機械的に絞ることにより、放出された。
CD34+細胞は37℃で、湿度を与えたインキュベーター(10% CO2)内で、2週間
、10%ウシ胎児血清、20ng/ml顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、20ng/ml
IL-4、20ng/ml TNF-α、および100ng/ml FLT3リガンドを補ったスーパーマッコ
イの培地(Super McCoy's medium)中で、培養した。培養物から回収した生存細
胞は、既知のDC細胞表面マーカーCD1aおよびHLA-DRの発現を、これらのマーカー
に特異的な抗体を用いて、蛍光標示式細胞分取器(FACS)により、さらに選択し
た。
CD1a+/HLA-DR+総DC RNAは、グアニジニウムチオシアネート塩化セシウム勾配
遠心(標準プロトコールは、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Man
ual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)を参照されたい)
により単離された。ポリアデニル化されたRNAは、製造者の指示にしたがって、
オリゴdT共役ラテックスビーズ(Quiagen、カリフォルニア州チャツワース)上
で精製した。プラスミドpBluescristSK(-)(Stratagene、カリフォルニア州ラホ
ラ)中のDC cDNAライブラリーは、本質的にLarsenら,J.
Exp.Med.172:159(1990)に記載されたとおりに調製した。簡潔にはおよそ1μg
のポリA+DC RNAを、Timesaver cDNAキット(Pharmacia、ニュージャージー州ピ
スカタウェイ)を用い、ランダム6量体プライマーおよび逆転写酵素を用いて、
二重鎖cDNAに変換した。cDNA反応は平均して約400bpのcDNAサイズを生成するよ
うに最適化した。二重鎖cDNAはBglIIアダプター(Larsenら、前記に記載)によ
り修飾し、そして、BamHIで直線化しそして同様にBglIIアダプターにより修飾し
たpBluescristSK(-)に連結した。組換え構築物は大腸菌中に形質転換した。
ヒトDC cDNAライブラリーのサブトラクトハイブリダイゼーションは、ヒト繊
維芽細胞cDNAライブラリーを用いて行い、DCライブラリーに好んで含まれるcDNA
を濃縮した。簡潔には、pBluescrist中のDC cDNAライブラリーは、単鎖のファー
ジミド(phagemid)に変換し、そして当該単鎖ファージミドはヒト包皮繊維芽細
胞から調製されたSP6 RNAポリメラーゼプロモーターを含む修飾λgt10ベクター
中の、ドライバーcDNAライブラリーの挿入物から転写されたビオチン化されたRN
Aと共にサブトラクションした。関与する方法の一般的な記載には、Klarら(Cel
l 69:95(1992))およびOwenら(Mol.Cell.Biol.11:4177(1991))を参照され
たい。サブトラクションから回収された単鎖ファージミドは、大腸菌に再度形質
転換した。個々のコロニーを単離し、そしてプラスミドDNAを調製し、そしてダ
イターミネーター(dye terminator)法(ABI Prism DyeDeoxy Kit,Perkin-Elm
er、カリフォルニア州フォスターシティー)を用いて配列解析した。
それぞれのプラスミドは、ベクターに特異的な、BamHIクローニング部位に隣
接したプライマーを用いて一方向に配列解析した。配列は、BLASTアルゴリズム
(Altschulら,J.Mol.Biol.215:403,1990)を用い、重複を含まないタンパ
ク質およびヌクレオチドデータベース配列(米国バイオテクノロジー情報センタ
ー(National Ctr.for Biotechnol.Infomation(NCBI))、メリーランド州ベ
セスダ)と比較した。クローンHH0381(542nt)のITAK cDNA挿入物の翻訳により
、以前ウサギ肺ITAKトリプシンペプチドで検出された(実施例2を参照されたい
)GAFGEATLYRアミノ酸配列(配列番号4)をコードすることがわかった。
翻訳されたHH0381配列はまた、NCBIデータベース中のいくつかのタンパク質キナ
ーゼの触媒領域とも相同性を示した。HH0381がコードする部分的ITAKアミノ酸配
列は、データベース中のタンパク質キナーゼ配列の中でも、ネズミneklタンパク
質(Letwinら,EMBO J.11:354,1992)の対応する部分と最も強い配列相同性(
30%より高い同一性)を示した。
実施例4
ITAKをコードする全長遺伝子のクローニング
ITAKをコードする全長ヒト遺伝子を同定するため、HH0381ヒトcDNAクローン挿
入物を、標準的な方法にしたがったランダムプライマー法(Sambrookら、前記)
により32P標識し、製造者の推奨にしたがって、λZAPIIベクター(Stratagene、
カリフォルニア州ラホヤ)を用いて調製したヒト樹状細胞cDNAライブラリーをス
クリーニングするプローブとして用いた。簡潔には、クローンHH0381(542bp)
のcDNA挿入物はプラスミドから切り出し、ゲル精製し、Prime-It IIキット(Str
atagene、カリフォルニア州ラホヤ)により32P放射標識し、そしてバクテリオフ
ァージλベクターであるλZAPIIベクター(Stratagene)中に調製した別のDC cD
NAライブラリーのプローブとして用いた。この二番目のDC cDNAライブラリーは
、より大きな平均サイズ(400bpではなく約1000bp)のcDNA分画が用いられた以
外は、上述のDCライブラリーと同じDC mRNAから調製された。cDNA末端は、Times
aver cDNA合成キット(Pharmacia)に含まれるEcoRIアダプターで修飾し、そし
てEcoRI消化したλZAPIIに連結した。陽性クローン1つを、HH0381由来のプロー
ブとのハイブリダイゼーションに基づいて選択し、そして精製および再ハイブリ
ダイゼーションの周期を続けることにより単離した。クローン7と称すこのクロ
ーンの挿入物はダイターミネーター法により配列解析した。
図1(配列番号8)は、クローン7(ヌクレオチド1-2040)およびクローン16-1
(ヌクレオチド2041-3264)のITAKをコードするcDNA挿入物の合成ヌクレオ
チド配列を示す。読み枠の翻訳されたアミノ酸配列(640アミノ酸)は対応す
るヌクレオチド配列の下に示されている。クローン7挿入DNAコード配列を検討す
ると、翻訳によりアミノ酸配列中にキナーゼサインペプチド配列GRGAFGEATLYR(
Hanksら,Science 241:42,1988)をコードすることが示された。当該配列の一
部、GAFGEATLYRは、配列番号4としてウサギITAKトリプシンペプチドに同定され
ている(実施例2を参照されたい)。配列番号4-7のITAKペプチドを含む、別のウ
サギITAKトリプシンペプチドのアミノ酸配列もまた、ヒトクローン7DNA配列の一
部にコードされることが見い出された。クローン7は開始メチオニン残基をコー
ドする配列を含むが、クローン7が全長ITAK読み枠(ORF)をコードするDNA配列
を含んでいるようではなかった。
残りのITAK ORFをコードする配列を同定するため、クローン7配列データから
、別のヒトcDNAライブラリーでのハイブリダイゼーションに使用するための新た
なDNAプローブを設計した。918bpのDNAプローブを、次のようにクローン7挿入配
列から調製した:まず断片をここに示すプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反
応(PCR)で増幅した: 鋳型DNA(〜2 x106ファージ)はヒト上皮ガン細胞株KB(ATCC CCL17)からλg
t10中に作成したヒトcDNAライブラリーからなった。50μlの増幅反応は、鋳型
(〜2 x106ファージ)に加え、25pmolのそれぞれのプライマー、10mMTris−
HCl、pH8.3、1.5mM MgCl2、50mM KCl、それぞれ200μMのdATP、dGTP、dCTP
、dTTP、および2.5ユニットのTaqポリメラーゼ(Boehringer Mannheim、インデ
ィアナ州インディアナポリス)を含んだ。反応条件は:1周期の(5分、94℃;1
分、64℃;2分、72℃);29周期の(1分、94℃;1分、64℃;2分、72℃)に続き
;5分、72℃であった。
次に、この増幅された、クローン7由来の断片から、50pmolの3'プライマー(G
TCGTCCATATTCGCCACAG)(プライマー(b)上記;(配列番号10))、10mMTri
s−HCl
、pH8.3、1.5mM MgCl2、50mM KCl、それぞれ20μMのdATP、dGTP、dTTP、1μM
dCTP、100μCi[α-32P]dCTP、および5ユニットのTaqポリメラーゼ(Boehringer
Mannheim)を含む100μlの増幅反応中に、鋳型として7.5ngの断片を用いてプロ
ーブを作成した。反応条件は:5分、94℃に続き;29周期の(1分、94℃;1分、5
5℃;2分、72℃)に続き;5分、72℃であった。取り込まれなかった放射活性は
、プローブをSephadex G-50(Pharmacia)に通過させて除去した。
放射標識された918bpのプローブはその後、λgt10中に作成されたヒト皮膚繊
維芽細胞ライブラリー(Simsら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:8946,1989)
の500,000個のプラークをスクリーニングするのに用いられた。複数(60以上)
の陽性プラークが同定された。およそ20の陽性一次プラークを選択し、そしてク
ローン7配列由来のプライマーおよびλgt10ベクター由来のプライマーを組み合
わせて増幅することにより解析した。使用したプライマーは: プライマー(d)、(e)および(f)を用いて生成された増幅産物サイズの解
析により、11-1および16-1と称すクローンは、クローン7に存在していなかった
、ITAKコード領域の残り(C末端側)を含むと期待されうることがわかった。こ
の結論は、これら2つのクローンからのPCR産物を直接DNA配列決定することによ
り立証された。
繊維芽細胞および樹状細胞由来のクローンのDNA配列解析により、いくつかの
変異配列が示された。例えば、図1A(配列番号8)のヌクレオチド419は樹状細
胞由来のクローン(クローン7および2)では「A」であり、そして繊維芽細胞
由来のクローンでは「T」である。しかし、このヌクレオチド変異はサイレント
であり、どちらの場合もコドンはIleとなる。さらにヌクレオチド443は樹状細胞
クローン7および2では「C」が見い出され、繊維芽細胞クローン3および16では「
T」が見い出される。この変異もサイレントである。サイレントでない変異はヌ
クレオチド1405に見られ;繊維芽細胞クローン3、11および16は「A」(Hisコド
ン)を有する一方、樹状細胞クローン2および7は「G」(Argコドン)を有する。
さらにクローン16はヌクレオチド1649に、36塩基挿入を有する。この小さい挿入
は通常、成熟mRNAではスプライシングされるイントロンであるようである。その
他記載された変異部位の原因は天然ポリモルフィズムであるようである。それぞ
れの変異体は少なくとも2つの別個に由来したクローンで見い出されるため、こ
れらの改変がクローニングの間に導入されたとは考えにくい。
したがって、クローン7および11-1の合成物は、ITAKの完全な読み枠をコード
する(図1)。読み枠は長さ979アミノ酸である。タンパク質セリン/スレオニン
キナーゼに相同性を持つITAK領域は、N末端の〜300アミノ酸(アミノ酸〜50-300
)にある。最も近縁なのはneklと呼ばれるキナーゼ(GenBank寄託番号S25284)
である。アミノ酸〜300-750に対応するITAK領域は、低分予量Gタンパク質ranお
よびTC4に対するグアニンヌクレオチド交換因子ファミリーに相同性を有する。
最も近縁なものはRCCl(GenBank寄託番号A26691、BischoffおよびPonstingl,Na
ture 354:80,1991)と呼ばれている。
DNA配列決定はダイターミネーター法およびカスタムプライマーを用いてABI/P
erkin Elmer 373および377自動DNA配列解析機により行った。
実施例5
cDNAライブラリーからのITAKの直接ポリメラーゼ連鎖反応クローニング
ITAKポリペプチドの全コード領域を含むcDNAは細胞RNAから、適切なベクター
にサブクローニングするのに適した形で増幅される。ITAKを発現することが知ら
れる適切な細胞産生源、例えばヒト樹状細胞、ヒト皮膚繊維芽細胞またはKB細胞
(実施例3および4を参照されたい)のRNAは第一鎖cDNA合成の鋳型として使
用される。簡潔には、1-5μgの全RNAを12μl最終容積中で0.5μgのオリゴdT1 2-18
プライマーと混合し、そして70℃で1分間熱し、その後氷上で冷やす。上記
の混合物に2μlの10 x PCR緩衝液(200mM Tris−HCl、pH8.4、500mM KC
l)、2μlの25mM MgCl2、2μlの10mM混合dNTP(それぞれ10mMのdATP、dGTP、d
CTPおよびdTTP)および2μlの0.1Mジチオスレイトールを加え、そして反応を42
℃で5分進ませる。Superscript RTII逆転写酵素(200ユニット)(GibcoBRL、メ
リーランド州ゲイザーズバーグ)を反応に加え、42℃で50分間反応を進め、そし
て70℃で15分間インキュベーションして停止し、その後混合物は氷上に置く。RN
ase H(4ユニット)(GibcoBRL)を反応に加えそして37℃で20分間インキュベー
トする。
ITAKをコードするcDNAを生成するため、それぞれのプライマー25pmol、10mM
Tris−HCl、pH8.3、1.5mM MgCl2、50mM KCl、それぞれ200μMのdATP、d
GTP、dCTPおよびdTTP、および2.5ユニットのTaqポリメラーゼ(Boehringer Mann
heim、インディアナ州インディアナポリス)を含む50μlポリメラーゼ連鎖反応
(PCR)において、第一鎖をcDNA2μl鋳型として用いる。反応条件は:1周期の
(5分、94℃;1分、64℃;2分、72℃);29周期の(1分、94℃;1分、64℃;2分
、72℃)に続いて;5分、72℃である。適切なプライマーには次の配列が含まれ
るはずである:
ITAKコード部分を咄乳動物発現に適したベクター、例えば発現プラスミドpDC3
04(sfNACV,Immunex、ワシントン州シアトル)または当業に周知のその他の発
現ベクターにクローンするために、単離されたPCR産物断片を適切な制限酵素、
例えばpDC304の場合NotIにより切断し、そして次に制限酵素部位をT4 DNAポリメ
ラーゼおよびdNTPで埋め込むことにより平滑末端化したベクター中に連
結する(Sambrookら、前記)。また別に、プライマーは例えばその5'端のNotI制
限酵素部位を合成してもよい:
この例では、単離されたPCR産物はNotIで消化され、そして中間の末端埋め込み
段階なしにNotI切断ベクターに連結される。
本発明の特定の態様が、例証の目的でここに記載されたが、前記より、本発明
の思想および範囲から逸脱せずに、さまざまな修飾がなされてもよいとみなされ
るであろう。したがって、本発明は添付した請求の範囲によるもの以外に、制限
されるものではない。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
//(C12N 9/12
C12R 1:91)
(72)発明者 バード,ティモシー・エイ
アメリカ合衆国ワシントン州98110,ベイ
ンブリッジ・アイランド,オラリー・ドラ
イブ・ノース・イースト 10804
(72)発明者 アンダーソン,ダーク・エム
アメリカ合衆国ワシントン州98107,シア
トル,ノースウエスト 3616 シックステ
ィフォース・ストリート