【発明の詳細な説明】
流動接触アルキル化方法
本発明は、循環流動床反応装置を使用し、触媒が連続的に再生される、流動接
触イソパラフィン−オレフィンアルキル化方法に関する。
ガソリン用オクタン価向上剤としての四エチル鉛の使用が削減された結果、無
鉛ガソリンの生産量が増加したばかりでなく、あらゆる等級のガソリンのオクタ
ン価仕様も向上した。イソパラフィン−オレフィンアルキル化は、ガソリンに配
合される高分岐パラフィンオクタン価向上剤の生産にとって重要な経路である。
アルキル化は有機分子へのアルキル基の付加を伴う。従って、イソパラフィン
とオレフィンとを反応させると、より高い分子量のイソパラフィンが得られる。
工業的には、アルキル化は酸性触媒の存在下において、C2−C5オレフィンとイ
ソブタンとの反応を伴うことが多い。アルキレートはその高いオクタン価ゆえに
プレミアムガソリンの製造にとって貴重な配合成分である。
従来、アルキル化方法には、温度が制御された条件下で、触媒としてフッ化水
素酸又は硫酸が使用されてきた。硫酸法では、望ましくないオレフィン重合副反
応を最小限に抑えるために低温が使用され、酸強度は一般に新しい酸を連続的に
添加し、使用済みの酸を連続的に除去することにより88〜94%に維持される
。フッ化水素酸法は温度感受性がより低く、酸の回収及び精製は容易である。
高オクタン価ガソリンの配合成分の製造に今日使用されている典型的なアルキ
ル化方法(即ち、上記フッ化水素酸アルキル化方法と硫酸アルキル化方法)には
、環境問題、酸消費及び腐蝕性物質の処理に関わる固有の問題点がある。オクタ
ンの需要が増大し、環境への関心が高まると共に、固体触媒系に基くアルキル化
方法の開発が望ましくなっている。本発明の触媒は、現在使用されているフッ化
水素酸アルキル化方法及び硫酸アルキル化方法よりも、環境的により許容され得
るアルキル化方法を精油業者に提供するものである。
本発明の固体アルキル化方法において、フォージャサイト、REX、REY等
の大孔寸法結晶性メタロシリケートを含んでなる触媒が有効であることが見出さ
れている。そのような触媒は典型的なFCC操作でも有効である。これらの触媒
は高い選択性と活性を示すが失活するのも速く、頻繁に再生する必要がある。本
発明は流動床で行なう接触アルキル化方法を開示する。触媒は連続的に再生され
、触媒の老化問題はこの特徴によって解決され得る。ライザー反応装置の技術は
、FCC操作において頻繁に用いられているので、容易に利用することができる
。本発明では、この技術をイソパラフィン−オレフィンアルキル化に適合させた
。
結晶性メタロシリケート、又はゼオライトは、イソパラフィン−オレフィンア
ルキル化の接触反応での使用について広く研究されている。例えば米国特許第3
,251,902号には、C2−C12オレフィンによるC4−C20分枝鎖パラフィン
の液相アルキル化に、利用可能な酸部位(acid site)の数が減少しているイオン
交換処理した結晶性アルミノシリケートの固定床を使用することが開示されてい
る。またこの特許には、オレフィンをアルキル化反応装置に導入する前に、結晶
性アルミノシリケートをC4−C20分枝鎖パラフィンで飽和させておくべきであ
ることも開示されている。
米国特許第3,450,644号には、カルボニウムイオン中間体が関与する炭
化水素転化方法に使用されるゼオライト触媒を再生する方法が開示されている。
米国特許第3,549,557号には、固定床、移動床もしくは流動床システム
において、特定の結晶性アルミノシリケートゼオライト触媒を使用するC2−C3
オレフィンによりイソブタンをアルキル化することが記載されており、ここでは
オレフィンを反応装置の種々の部位で注入することが好ましいとされている。
米国特許第3,644,565号には、結晶性アルミノシリケートゼオライト上
に存在するVIII族貴金属を含んでなる触媒の存在下で、オレフィンによりパラフ
ィンをアルキルすることが開示されており、この触媒は選択性を向上させるため
に水素により前処理されている。
米国特許第3,647,916号には、イオン交換処理した結晶性アルミノシ
リケート、3:1以下のイソパラフィン/オレフィンモル比、及び触媒の再生を
用いることを特徴とするイソパラフィン−オレフィンアルキル化方法が記載され
ている。
米国特許第3,655,813号には、結晶性アルミノシリケートゼオライト
触
媒を用いてC4−C5イソパラフィンをC3−C9オレフィンによりアルキル化する
方法が開示されており、ここではアルキル化反応装置中でハロゲン化物補助剤が
使用される。イソパラフィンとオレフィンはアルキル化反応装置に特定の濃度で
導入され、触媒はアルキル化反応装置の外部で連続的に再生される。
米国特許第3,893,942号には、VIII群金属含有ゼオライトを触媒として
使用するイソパラフィン−オレフィンアルキル化方法が記載されており、このVI
II群金属含有ゼオライトは部分的に失活した場合に、触媒を再活性化するため、
気相の水素により定期的に水素化される。
米国特許第3,236,671号には、3以上のシリカ/アルミナモル比を有
する結晶性アルミノシリケートゼオライトをアルキル化に使用することが記載さ
れており、そのようなゼオライト上において交換及び/又は含浸される種々の金
属を使用することも開示されている。
米国特許第3,706,814号には、別のゼオライト触媒を用いるイソパラフ
ィン−オレフィンアルキル化方法が開示されており、またUdexラフィネート
等のC5+パラフィン又はC5+オレフィンをアルキル化反応装置フィードへ添加す
ること、及び特定の反応体の割合、ハロゲン化物補助剤等を使用することが記載
されている。米国特許第3,624,173号には、ガドリニウムを含有するゼオ
ライト触媒をイソパラフィン−オレフィンアルキル化において使用することが開
示されている。
米国特許第3,312,615号には、6〜15オングストロームの孔直径を
有する結晶性アルミノシリケート粒状物を含んでなるアルキル化触媒が開示され
ている。これらの触媒は希土類金属により交換されたものであってよい。少なく
とも1種の炭化水素ストリームをオレフィンストリームと接触させるアルキル化
方法も特許請求の範囲に記載されている。
米国特許第3,541,180号には、アルミノシリケート触媒の存在下で、イ
ソブタンをエチレン又はプロピレンでアルキル化するアルキル化方法であって、
気体物質が反応を受ける時にその気体中に触媒を粉塵として分散させる方法が開
示されている。
米国特許第3,851,004号には、大孔寸法アルミノシリケートの存在下で
、
オレフィンによりイソパラフィンを接触アルキル化する方法が開示されている。
この方法は流動床で行なうことができる。
米国特許第3,917,738号には、オレフィンを吸着できる固体粒状触媒を
使用して、オレフィンによりイソパラフィンをアルキル化する方法が記載されて
いる。このイソパラフィンは、オレフィンを吸着できる固体粒状触媒を使用して
、そのオレフィンでアルキル化される。イソパラフィンとオレフィンとを混合し
て、吸着ゾーンの上流端部にて触媒粒子と接触する反応体ストリームを形成し、
その後、制御された量のオレフィンが触媒に吸着されてから、反応体と触媒を組
み合わせたものがアルキル化ゾーンに導入されるように、反応体は触媒と同時に
送られる。この制御されたオレフィンの吸着は、アルキル化中のオレフィンの重
合を防止するためであるとされている。
米国特許第4,377,721号には、触媒としてZSM−20、好ましくはH
ZSM−20又は希土類カチオン交換したZSM−20を使用するイソパラフィ
ン−オレフィンアルキル化方法が記載されている。
米国特許第4,384,161号には、2,2,4−トリメチルペンタンを吸着で
きる大孔寸法ゼオライト、例えばZSM−4、ZSM−20、ZSM−3、ZS
M−18、ゼオライトβ、フォージャサイト、モルデナイト、ゼオライトY及び
それらの希土類金属を含有する形態のもの、並びにルイス酸、例えば、三フッ化
ホウ素、五フッ化アンチモン、三塩化アルミニウム等を触媒として使用して、イ
ソパラフィンをオレフィンによりアルキル化してアルキレートを製造する方法が
記載されている。この特許に従って大孔寸法ゼオライトをルイス酸と組み合せて
使用すると、ゼオライトの活性と選択性が著しく向上して、高いオレフィン空間
速度と低いイソパラフィン/オレフィン比を伴うアルキル化が達成されると報告
されている。
米国特許第4,992,615号、同第5,012,033号及び同第5,073
,665号には、MCM−22と呼ばれるゼオライトを触媒として使用するイソ
パラフィン−オレフィンアルキル化方法が記載されている。米国特許第5,25
8,569号と同第5,254,792号には、それぞれMCM−36及びMCM
−49を触媒として使用するイソパラフィン・オレフィンアルキル化方法が開示
され
ている。
米国特許第4,008,291号には移動床アルキル化方法が開示されており、
この方法では水素が触媒再活性化ゾーンに添加されるが、本発明で教示されるよ
うに水素が制御された量で反応ゾーンそのものに添加されることはない。
米国特許第4,746,762号には、オレフィンを中間孔寸法ゼオライトから
なる触媒に接触させることにより、流動床反応装置で軽質オレフィンを改質して
C5+液体に富む炭化水素を製造する方法が開示されている。連続再生法が使用さ
れている。本発明のようなイソパラフィン−オレフィンアルキル化の教示はない
。更に本発明では、分岐した物質を吸着するのに適した大孔寸法ゼオライトを使
用する。また本発明のようにライザー反応装置中で起る反応や内部再循環の使用
を教示していない。
米国特許第4,939,314号には、高圧流動床オリゴマー化反応装置中で使
用された中間孔寸法ゼオライトを含む触媒を比較的低い圧力で再生する方法が開
示されている。この特許には、ライザー反応装置の教示や、大孔寸法ゼオライト
の使用の教示はない。この特許はイソパラフィン−オレフィンアルキル化につい
て用いられるものではない。
本発明は、大孔寸法ゼオライトを含んでなる複合触媒の存在下にイソパラフィ
ンをオレフィン分子と反応させて高オクタン価アルキレートを製造する改良法に
関する。この反応は、反応装置内部での流出物再循環と連続的触媒再生を伴って
流動床反応装置中で起こる。
本発明の流動接触アルキル化方法は、流動床ライザー反応装置ないにおいて、
固体触媒を用いて、気相でのオレフィンによりイソパラフィンをアルキル化する
ことによって行われる。場合により水素を使用してもよい。水素の存在は触媒の
安定性とアルキレートの品質を向上させる。更に水素を使用することは、ライザ
ー反応装置での流動化を容易にする。反応相の後、固体触媒はサイクロン分離装
置中で炭化水素ストリームから分離される。その後、触媒は炭化水素を除去する
ために水蒸気ストリッピングされ、水分を除去するためにガスパージされる。水
蒸気ストリッピングとガスパージはどちらも流動床にて行われる。ガスパージさ
れた触媒の一部はライザー反応装置の底部に戻され、残りは流動床酸化再生装置
へ送られて、そこでコークスは空気によって燃焼される。再生された触媒はライ
ザー反応装置の底部に再循環される。反応装置流出炭化水素ストリームの一部は
ライザー反応装置の底部に再循環され、反応装置入口でのイソブタン/オレフィ
ン比を増大させる。反応装置流出炭化水素ストリームの一部はC5+アルキレート
を分離するために分留塔に送られる。未反応のイソブタンは分留塔からフィード
ストリームへ再循環される。
本発明の好ましい態様には、軽質オレフィン(即ちプロピレン及びブテン)に
よるイソブタンのアルキル化が含まれる。これらの反応体は流動床反応装置内に
おいて、上述したような希土類交換フォージャサイト触媒に気相で接触させられ
る。
軽質オレフィンによるイソブタンのアルキル化は、高オクタン価ガソリン配合
原料の製造に重要である。アルキレートは一般に、ガソリンプールの10〜15
%を占める。これは高いRON及びMONを有し、硫黄含量が低く、オレフィン
又は芳香族化合物を含まず、優れた安定性を示し、燃焼時に有害物質を放出しな
い。
図1は、水素の不在下で反応が起る場合の本発明アルキル化方法を示している
。フィード部からライザー反応装置、サイクロン分離装置、及び触媒の水蒸気処
理、パージ及び再生用の容器、並びにアルキレート生成物回収用の分留塔が図示
されている。
図2は、水素を使用する場合の本発明のアルキル化方法を示している。水素は
フィードと共にライザー反応装置に入り、再利用のために、サイクロン分離装置
から出た気体が分留塔に入る前に、その気体から回収される。フィード
本発明のアルキル化方法で有用なフィードには、少なくとも1種のイソパラフ
ィンと少なくとも1種のオレフィンが含まれる。本発明のアルキル化方法におい
て使用されるイソパラフィン反応体は、約4〜約8個の炭素原子を有する。その
ようなイソパラフィンの代表例には、イソブタン、イソペンタン、3−メチルヘ
キサン、2−メチルヘキサン、2,3−ジメチルブタン及び2,4−ジメチルヘキ
サン等がある。
フィード物質のオレフィン成分には、2〜12個の炭素原子を有する少なくと
も1種のオレフィンが含まれる。そのようなオレフィンの代表例としては、ブテ
ン−2、イソブチレン、ブテン−1、プロピレン、エチレン、ペンテン、ヘキセ
ン、オクテン及びヘプテン等が挙げられるが、これらはほんの一例に過ぎない。
好ましいオレフィンには、C4オレフィン、例えばブテン−1、ブテン−2、イ
ソブチレン又はそれらC4オレフィンの1種又はそれ以上の混合物があり、ブテ
ン−2が最も好ましい。本発明の方法に好適なフィード物質は、Huangらの、米
国特許第3,862,258号、第3欄、第44〜56行に記載されており、引用
することによってその開示内容を本明細書に含むものとする。
パラフィン及びオレフィンの混合物を含む炭化水素ストリーム、例えば、FC
Cブタン/ブテン原料等を使用することもできる。フィード中のイソパラフィン
/オレフィン重量比は1:1から1000:1以上に及び得る。100:1を越
える割合が望ましく、反応装置中において500:1を越える割合がより望まし
く、1000:1を越える割合は最も望ましい。高いイソパラフィン/オレフィ
ン比は、反応装置流出物の一部をリサイクルすること、又は反応装置内容物を逆
混合(back-mixing)することによって達成することができる。触媒
上述したようなフィードは、場合により水素の存在下において、大孔寸法ゼオ
ライトを含んでなるアルキル化触媒と接触させられる。この触媒は更に1種又は
それ以上の希土類元素を含有する。ゼオライト成分は、2,2,4−トリメチルペ
ンタンを吸着できる大孔寸法ゼオライトである。ゼオライトの孔直径は6オング
ストロームより大きく、7オングストロームより大きいものが好ましい。大孔寸
法ゼオライトには、フォージャサイト、例えば、ゼオライトX、ゼオライトY及
びUSY等が含まれる。ゼオライトXは米国特許第2,882,244号により詳
しく記載されている。本発明に関して、ゼオライトYには、合成された形態のゼ
オライトY、並びに骨格を脱アルミニウム化したゼオライトY、例えば、米国特
許第3,293,192号に記載されているような超安定Y(USY)、及び米国
特許第4,503,023号に記載されているようなLZ−210等を含むゼオラ
イトYの変種を含む。その他の好適なゼオライトには、ZSM−3(米国特許第
3,415,736号に記載)、ZSM−4(米国特許第4,021,947号及び
同第4,091,007号に詳述)、ZSM−18(米国特許第5,350,570
号に記載)、ZSM−20(米国特許第3,972,983号に記載)、モルデナ
イト(米国特許第5,219,547号及び同第5,211,935号に記載)、M
CM−22(米国特許第5,073,665号及び同第5,105,054号に記載
)、MCM−36(米国特許第5,310,715号及び同第5,296,428号
に記載)、MCM−49(米国特許第5,236,575号に記載)、MCM−5
6(米国特許第5,362,697号に記載)、ゼオライトL(米国特許第4,9
08,342号と同第5,063,038号に記載)、ゼオライトβ(米国特許第
5,164,170号と同第5,160,169号に記載)等がある。本発明ではフ
ォージャサイトが好ましい。上記の引用した特許のを引用することにより、その
開示内容を本明細書に含むものとする。
ゼオライトは好ましくは、少なくとも1種の希土類カチオン、例えばランタン
又はセリウム等のカチオンによって部分的に又は完全に交換される。希土類カチ
オンの混合物も使用できる。Ca+2等の他のカチオンも使用できる。大孔寸法ゼ
オライトは、ナトリウム含量が1.0重量%を越えないものであってもよい。
本発明方法においてアルキル化触媒としての使用に先立って、その触媒は少な
くとも部分的に脱水されなければならない。この脱水は触媒を、空気、窒素等の
雰囲気下において、大気圧、大気圧を下回る圧力又は大気圧を上回る圧力で、3
0分〜48時間の時間で200℃から595℃までの範囲の温度に加熱すること
によって達成できる。触媒を単に減圧下に置くだけで脱水を室温で行うこともで
きるが、好適な脱水の程度を達成するにはより長い時間が必要とされる。
触媒は広範な種々の粒子寸法に形成することができる。一般に、これらの粒子
は粉末の形態にすることができる。これらの粒状物は、20〜200ミクロン、
好ましくは50〜150ミクロン、より好ましくは70〜80ミクロンの範囲に
ある。触媒を押出等によって成形する場合は、結晶を乾燥する前に押出すか、部
分的に乾燥してから押出すことができる。
触媒活性を有する触媒結晶性物質を、本発明のイソパラフィンアルキル化方法
に使用する温度及びその他の条件について耐性を有するもう1種の材料、例えば
バインダー等と混合することが望ましい。好適なバインダー物質には、クレー、
シリカ及び/又は金属酸化物、例えばアルミナ等の活性物質及び不活性材料が含
まれる。これらは天然のものであってもよいし、シリカ及び金属酸化物の混合物
を含むゼラチン状の沈殿物又はゲルの形態で提供することもできる。触媒活性を
有する結晶性物質と共に、即ちそれと混合して、それ自体が触媒的に活性なバイ
ンダー物質を使用することにより、触媒の転化率及び/又は選択性を変化させる
こともできる。反応速度を制御するために他の手段を用いる必要なしに、生成物
が経済的かつ制御された様式で得られるように、転化の程度を制御するための希
釈剤として不活性材料は好適に利用できる。これらの材料を天然のクレー、例え
ばベントナイト及びカオリンと混合して、工業的操業条件下での触媒の圧潰強度
を向上させることができる。良好な圧潰強度は、その触媒が粉末状の物質に砕か
れることを防止し又は遅らせるので、工業的使用には有利な特性である。
本発明の触媒結晶と混合できる天然クレーには、モンモリロナイト及びサブベ
ントナイトを含むカオリン族が含まれ、カオリンは、主たる鉱物成分がハロイサ
イト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト若しくはアナウキサイトである
、ディキシー(Dixie)クレー、マクナミー(McNamee)クレー、ジョージア(Ge
orgia)クレー及びフロリダ(Florida)クレー又はその他のものとして知られて
いる。これらのクレーは、採鉱したままの未処理の状態で、又は最初に焼成、酸
処理又は化学的変性に付して使用することができる。触媒結晶と複合化するのに
有用なバインダーには、無機酸化物、特にアルミナが含まれる。
アルミナバインダーは焼成中に相転化を受けることにより、アルミナの水溶性
が低下する場合がある。アルミナの水酸基含量は焼成により減少し得る。特に、
焼成によって擬ベーマイト型のアルミナは、γ−アルミナに転化され得る。
上述のバインダー材料とは別に、あるいは上述のバインダー材料に加えて、本
発明の触媒結晶は、無機酸化物マトリックス、例えば、シリカ−アルミナ、シリ
カ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シ
リカ−チタニア等、並びにシリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジル
コニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア−ジルコニア等の
三元組成物と複合化することもできる。触媒成分の押出が容易になるように、上
述のマトリックス材料の少なくとも一部をコロイド形態で用いると有利な場合が
ある。
微細な粒状物形態の触媒結晶と無機酸化物マトリックスとの相対的割合は広い
範囲で変動することができ、触媒結晶含量はその複合体の約1〜95重量%の範
囲であってよく、より一般的には、特にその複合体をビーズ状に調製する場合は
、複合体の2〜80重量%の範囲であってよい。操業条件 A.ライザー反応装置
本発明のアルキル化方法の操作温度は、例えば483℃(900℃)以下、好
ましくは316℃(600°F)以下、より好ましくは149℃(300°F)
以下から、かなり広い範囲に及び得る。実際の操作温度の上限は望ましくない副
反応の過度の発生を避ける必要性によって決められることが多い。
本発明の方法で使用される圧力は、大気圧から100psigまで、好ましくは2
5psigから40psigまでと極めて低い。ライザー反応装置内の気体速度は、少な
くとも2フィート/秒であり、好ましくは10フィート/秒より速く、より好ま
しくは20フィート/秒より速い。ライザー反応装置内での滞留時間は、完全な
又はほぼ完全なオレフィン転化率が得られるように制御される。水素を使用する
場合、フィードストリーム中における水素のオレフィンに対するモル比は、0.
1:1から1000:1までの範囲、好ましくは2:1から50:1までの範囲
にすることができる。
本発明のアルキル化方法で使用する触媒の量は、比較的広い範囲で変化させる
ことができる。触媒の炭化水素フィードに対する重量比は、100:1から1:
100までの範囲とすることができる。当然ながら、特定の反応のために選択さ
れる触媒の量が、関与する反応体、並びに触媒の性質及び使用する操作条件を含
むいくつかの可変要素によって決定されるということは、当業者には理解される
であろう。
本発明のアルキル化方法で使用されるイソパラフィン反応体は、炭素原子数が
20までのものであってよく、炭素原子数4〜8のもの、例えばイソブタン、3
−メチルヘキサン、2−メチルブタン、2,3−ジメチルブタン及び2,4−ジメ
チルヘキサン等が好ましい。
本発明において使用されるオレフィン反応体は、一般的には2〜12個の炭素
原子を含有する。代表的な例としては、エテン、プロペン、ブテン−1、ブテン
−2、イソブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン及びオクテンがある。特に好
ましいものは、C3オレフィン及びC4オレフィン並びにそれらの混合物である。
一般に、炭化水素フィード中における全イソパラフィンの全オレフィンアルキ
ル化剤に対するモル比は、1:1から100:1までの値をとることができ、5
:1から50:1までの範囲にあることが好ましい。反応装置内では、500を
越える内部イソパラフィン/オレフィン比が望ましい。反応装置流出炭化水素ス
トリームの、混合フィードストリーム(アルキル化フィード+外部から再循環さ
れるイソブタン)に対する内部再循環比は、1:1から500:1の範囲、好ま
しくは10:1から100:1の範囲にすることができる。本発明において、イ
ソパラフィン及び/又はオレフィン反応体は気相で存在している。反応体はニー
ト(neat)(即ち、意図して他の物質と混合されたり又は他の物質により希釈され
ていないもの)であってもよいし、水素等のキャリヤーガスを用いて触媒組成物
と接触させてもよい。B.再生操作 1.ストリッピングゾーン
触媒のストリッピングに使用される条件は、プロセスへ戻されるストリップし
たガスを圧縮するコストに見合う程度に低いことが好ましい。一般に、25〜4
0psigの範囲でストリッピング装置を操作することが有利である。
好ましいストリッピング装置操作温度は121℃〜482℃(250°F〜9
00°F)の範囲であり、圧力は25〜40psigの範囲である。操作圧は、望ま
しい圧力の前後の狭い範囲内で変動してもよいが、比較的一定である。ストリッ
ピング媒体が通常の場合と同様に水蒸気である場合、圧力条件と温度条件は触媒
の失活曲線の限界によって決まり、この曲線を越えると触媒は許容されない程度
に失活する。最も好ましいストリッピング条件は、触媒が有害な影響を受けない
ような、最も高い温度及び最も低い経済的圧力を提供するように選択される。2.パージゾーン
ストリッピング装置によって除去されなかった炭化水素を触媒から取り除くた
めに、ガスパージ装置を使用する。このパージゾーンにおいて、過剰の水分も触
媒から除去される。好適な条件には、250°Fから900°Fまでの温度範囲
が含まれる。温度範囲は、ライザー装置と同様に、0〜100psig、好ましくは
25〜40psigとすることができる。ガスパージ装置は、触媒がストリッピング
装置からパージ装置の中へ流入させられる前に、ガスによって加圧される。一般
に、圧力は、再循環触媒ストリームの速度が、音速より低いにもかかわらず、高
すぎるために、再循環ライン内のバルブに損傷を与えることを避けるのに十分な
程度の高さである。この再循環ラインは触媒の一部を、パージの後であって再生
の前に、ライザーの底部に戻す。このパージプロセスは連続的工程である。3.再生ゾーン
コークスが付着した触媒を再生する条件は、反応装置の操作モードとは関わり
なく、一般にほぼ同様であり、この場合にも、選択したプロセスの態様を加圧下
にて操作する経済的側面によって決まる。好ましい再生装置操作温度は483℃
〜594℃(900°F〜1100°F)の範囲であり、圧力は240〜445
kPa(20〜50psig)の範囲にある。ストリッピングした触媒は再生装置へ断
続的にしか移送されないが、再生装置は連続的に操作することができる。「コー
クス生成量(coke make)」及び再循環される触媒の流量がそれぞれ十分に小さ
い場合には、ストリッピングされた触媒を、経済的に再生できるようになるまで
、再生装置内に蓄積させてもよい。従って、適当な条件下では、再生装置を半連
続的に操作することができる。触媒から炭化水素をストリップするプロセス条件
と、触媒にコークスが付着するプロセス条件のために、触媒は空気だけで活性化
することができ、空気と混合したり、再生装置の内容物を爆発限界の範囲外に保
つた
めに排ガスを再循環する必要はない。
本発明の好ましい態様を、簡略化した形態で図に示す。図1は水素不在下での
オレフィンによるイソパラフィンのアルキル化についての流れ図である。好まし
い反応は、REUSY触媒の存在下におけるイソブタンとブテンとの反応である
。好ましい条件を示す。
図1は、RE−USYを含有する市販のFCC(流動接触分解)触媒を用いて
、水素の不在下での、ブテンによるイソブタンのアルキル化に関する摸式的流れ
図である。このFCC触媒の平均粒子寸法は70ミクロンである。1:1のイソ
ブタン/ブテン(I/O)モル比を有するアルキル化フィード(ライン1)は、
留塔からの外部再循環イソブタンストリーム(ライン8)と混合されて、I/O
比が20:1に増大した混合フィードストリーム(ライン2)を形成する。予備
加熱した後、この混合フィードストリームは更に内部再循環反応装置流出炭化水
素ストリーム(ライン6)と1:50の体積比で混合され、反応装置フィードス
トリーム(ライン3)を形成する。この反応装置フィードストリームのI/O比
は約1000:1である。このフィードストリーム(ライン3)と再生された触
媒(ライン15)を、25psigで操作される流動床ライザー反応装置(ライン4
)の底部に供給する。固形物質及び炭化水素のストリームはサイクロンによって
分離される。分離された固体触媒はライン10を通して水蒸気ストリッピング装
置に移送され、そこで450°F及び25psigにて炭化水素がストリッピングさ
れる。得られたストリッピング済み触媒は、その後ライン11を通してガスパー
ジ装置に送られ、そこで触媒上の水分の少なくとも一部が750°F及び25ps
igにて除去される。ガスパージされた触媒の一部(ライン12)はライン13及
びライン15を通してライザー反応装置の底部に戻され、ガスパージされた触媒
の一部は再生装置へ送られて、そこで「コークス」が1000°F及び25psig
にて空気により燃焼に付される。酸化的に再生された触媒はライン14及びライ
ン15を通してライザー反応装置の底部に戻される。触媒温度を調節するために
熱交換装置を使用してもよい。反応装置流出炭化水素ストリームの一部(ライン
5)はライン6を通して、上述のように混合フィードストリーム(ライン2)に
再循環される。流出炭化水素ストリームの一部はライン7を通して分留区域へ送
ら
れ、そこでC5+アルキレート(ライン9)が分離され、イソブタンはライン8を
通してアルキル化フィード(ライン1)へ再循環される。
図2は、Re−USYを含有する市販のFCC(流動接触分解)触媒を用いて
、水素の存在下におけるブテンによるイソブタンのアルキル化に関する、好まし
い摸式的な流れ図である。FCC触媒の平均粒子寸法は約70ミクロンである。
このプロセススキーム並びに、ライザー反応装置、水蒸気ストリッピング装置、
ガスパージ装置及び再生装置についての操作条件は、次に挙げる点を除いて実施
例1に記載するものとすべて同じである:反応装置入口で、水素のオレフィンに
対するモル比が20:1になるように、水素(ライン16)をフィードストリー
ム(ライン3)と混合し、得られる混合物をライザー反応装置へ供給する。分留
塔の前に、炭化水素ストリーム(ライン7)から水素を分離するために高圧分離
装置が設置される。分離された水素はライン16へ再循環される。
実施例 実施例1
この流動床接触アルキル化実験には、粒子寸法が50〜200ミクロンの範囲
で、50%のアルミナと50%のREX(希土類含有フォージャサイト)を含有
する実験室で調製した流動床触媒を使用した。この固体触媒20ccを内径0.5
インチの石英流動床反応装置に充填した。その触媒を200cc/分の窒素ストリ
ームにより流動化させ、250℃にて2時間乾燥させた。次に反応装置温度を7
0℃に下げた後、窒素ガスを止めた。同時に、1重量%のn−ヘキサン(分析用
の内部標準として使用)を含有するイソブタン/ブテン−2のフィード(イソブ
タン/ブテン−2のモル比は50:1である)を58.5ml/時間の液体送出
流量にて反応装置に供給した。10分間流通した後、反応装置流出物をガスクロ
マトグラフにより分析した。ブテン−2の転化率は99重量%を超えていた。
C5+アルキレートは次の組成を示していた。
これらの結果は、接触時間がわずか5.5秒である場合であっても、この流動
床操作によってC5+が生成したことを示している。実施例2
実施例1で使用した触媒を232℃にて30分間水蒸気ストリッピングした後
、同じ温度にて2.5時間、窒素(220cc/分)によりパージした。次にその
触媒を80cc/分にて空気の存在下で538℃に加熱し、538℃にて1時間の
酸化的コークス燃焼を行なった。次に反応装置温度を70℃に下げ、窒素流を停
止した。次に、実施例1で使用したのと同じイソブタン/ブテン−2のフィード
を58.5ml/時間の同じ供給流量で反応装置に供給した。10分間流通させ
た後、反応装置流出物をガスクロマトグラフにより分析した。ブテン−2の転化
率は99%を超えており、C5+アルキレートは次の組成を示していた。
上記の結果は、酸化的に再生されたREX触媒が同様の活性を示しただけでな
く、イソオクタンの選択性をも向上させたことを示している。