【発明の詳細な説明】
バリアー性被覆を有する可撓性の容器又は瓶型容器
本発明は、一般に、可撓性の容器又は瓶型容器に関するものであり、特に、流
体の器壁への吸着、透過または通過を防止する多層バリアー構造又はそのような
被覆を有する容器又は瓶型容器に関する。
容器(又は瓶型容器)について、中に入れている流体の汚染を防止すること及
び瓶型容器又は容器の器壁を通して流体が漏れ出ることの両者を防止するために
、容器又は瓶型容器は中に入れることを意図する内容物との相互作用がほとんど
又は全くない材料から形成する必要があるということは非常によく知られている
。このような容器の材料の選択は薬剤/医薬については非常に重要である。それ
は、容器の器壁を通して又は器壁によって不純物が導入されることによって特定
の薬剤処方に変化が生じたり、容器の器壁を通って種々の成分が移行することに
よって薬剤処方に経時的な変化が生じたりすると、それによって物理的及び化学
的面において製品の特性が重大な影響を受け得るためである。
このような影響は、通常、可撓性の容器、例えば、静脈輸液バッグ及び複数回
投与(マルチドーズ(multidose))用の防腐薬を添加した又は未添加のドラッグ・
デリバリー・システム等において見受けられる。容器の材料について不適当な選
択をすると、水分/重量の損失(減少)、気体の透過、薬剤の不安定化、並びに
薬剤の吸収及び吸着などの問題を引き起こし得る。中に入っている処方を排出供
給するために絞ったりするように設計されている可撓性の又は柔軟な容器につい
ては、当然ながら、これらの問題は深刻である。可撓性の容器を形成するのに好
適な大部分のポリマー、例えば、ポリエチレン、KRATON、C−Flex、
SARLINKは、薬剤処方、例えば、Liquifilm(登録商標)、Prefrin(登録商
標)、Betagan(登録商標)、又は防腐薬、例えばBAK(塩化ベンザルコニウム)
等(尤も、これらに限定されるわけではない)を吸着したり透過させたりするの
で、容器の好適な材料とはいえない。
このような問題点を解決するために、容器に十分な可撓性を付与する一方で、
処方又はその中の成分の移行に対するバリアーとなり得るラミネート構造システ
ムが開発された。残念ながら、そのようなシステムは高コストであり、積層の問
題によって使用が厳しく制限され得るという傾向がある。
本発明は、通常的に入手可能であり、コストが高くつかないエラストマーを、
内側被覆と組み合わせて使用することにより、エラストマー材料の可撓性又は柔
軟性の性質を損なうことなくバリアーを形成して、従来技術において認識されて
いた問題点を克服しようとするものである。
発明の要旨
可撓性の容器は、薬剤処方に特に好適なものとして供給されており、その場合
に可撓性の容器は、薬剤処方によって透過されやすいエラストマーで形成されて
おり、薬剤処方を収容するための周囲の側壁部(周囲壁部)及び中空の内部空間
を有する形状に形成されている。
壁部の内側表面を被覆するパリレンの層は、薬剤処方をエラストマー材料の中
に通過させる可撓性バリアーを形成するのに有効である。利用するパリレンは、
パリレンC、パリレンN、パリレンD及びこれらの混合物からなる群から選択さ
れる。
本発明は、薬剤処方を、薬剤処方を透過させ、薬剤処方を入れるための内側チ
ャンバーを有する形状に形成されている弾性材料と組み合わせて、含む柔軟な瓶
型容器の供給システムを更に包含する。内側チャンバーは、絞ることができるよ
うになっている周囲壁部及び、内部チャンバーと液が連絡するようになっている
チップ部に結合されており、周囲壁部が絞られると、薬剤処方を排出供給する手
段を提供する。
パリレンの層は内側チャンバーの内側表面に設けられており、パリレンはパリ
レンC、パリレンN、パリレンD及びこれらの混合物からなる群から選択される
。パリレンの層は薬剤処方の通過を防止するのに有効な厚さを有している。
特に、エラストマー材料は、改質されたブロックコポリマーゴムの純粋なポリ
マー、例えば、KRATON、又は他の医療用として適するポリマー、例えば、
塩化ポリビニル、SILASTIC、C−FLEX等からなる群から選択するこ
とができ、周囲壁部は約0.01インチ〜約0.4インチの範囲の厚し、パリレン
層は約0.00002インチ(0.5μm)〜約0.0003インチ(4.62μm
)の厚さを有する。
図面の簡単な説明
以下の説明を、添付図面と組み合わせて参照することにより、本発明の利点及
び特徴をより良好に理解することができよう。
図1は、本発明を用いる柔軟な瓶型の排出供給システムの断面図である。
図2は、薄いパリレン被覆を施したパウチ(袋)についての40℃における減
量(損失重量)を示している。
図3は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての40℃における減量を示
している。
図4は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての25℃における減量を示
している。
図5は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての25℃における減量を示
している。
図6は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての40℃におけるBAK濃
度を示している。
図7は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての40℃におけるBAK濃
度を示している。
図8は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての25℃におけるBAK濃
度を示している。
図9は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての25℃におけるBAK濃
度を示している。
図10は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての40℃におけるLevobu
nolol・HClの濃度を示している。
図11は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての40℃におけるLevobu
nolol・HClの濃度を示している。
図12は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての25℃におけるLevobu
nolol・HClの濃度を示している。
図13は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての25℃におけるLevobu
nolol・HClの濃度を示している。
図14は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての40℃におけるpH値
を示している。
図15は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての40℃におけるpH値
を示している。
図16は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての25℃におけるpH値
を示している。
図17は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての25℃におけるpH値
を示している。
詳細な説明
図1を参照すると、本発明の可撓性の容器又は柔軟な瓶型容器の排出供給シス
テム10が一般的に示されており、薬剤処方を収容するための内部空間(又はチ
ャンバー)16を有するパウチ12の形状に形成されているエラストマー材料が
示されている。
容器12の寸法及び形状は取扱いが容易となるように構成されており、容器壁
部12は、以下において更に詳細に説明するように、本発明の用途に適する厚さ
に形成されている。
ポンプシステム18は、本発明の一部ではないが、ノズル20から液体処方を
滴下する様式で排出供給することができる。
容器は、パウチ端部28からパウチ・ネック24を通して液体レベルの上限2
6までパウチ12に充填するのに適するパウチ・ロート部22を有することがで
きる。以下において更に詳細に説明するように、容器12の内側表面32上の被
覆30は、弾性を有するパウチ12の中に及びそれを通って処方が通過すること
に対する可撓性バリアーを形成するのに有効な厚さを有している。
更に、以下において更に詳細に説明するように、パウチ12はパウチの外側表
面36に設けられる被覆34を有していてもよい。
本発明に用いることができる弾性体材料には、可撓性容器、例えば、図1に示
すような複数回投与供給システム及び静脈輸液バッグ等を形成するのに適する、
従来技術において既知のエラストマー材料、例えば、ブロックコポリマーゴム、
例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、C−FLEX、SARLINK、低密度ポ
リエチレン(LDPE)、KRATON、SILASTIC等が含まれる。
これらの材料は、薬剤処方、例えば、β−遮断薬(例えば、Levobuno
lol、timolol、betaxolol)、α−アゴニスト(例えば、b
rimonidine)、プロスタグランジン(例えば、Latanopros
t)、ketorolac、dipivalyl、epinedphrine、
flurbiprofen、防腐薬、例えば、塩化ベンザルコニウム、クロロブ
タノール等を透過させるものであることが知られている。
本発明の柔軟な瓶型容器の供給システム及び可撓性容器10には、内側表面3
8に、少なくとも1種のパリレンを含む層が被覆されている。
本発明に用いることができるパリレンの特定の例には、パリレンN、パリレン
C、パリレンD及びこれらの混合物が含まれる。
パリレンというのは、特定の系列のポリマーの要素についての一般的名称であ
り、例えばパリレンNという場合には、基本的構成要素はポリ−パラ−キシリレ
ンである。パリレンCはこの系列の市販されている要素の2番めのものであって
、同じモノマーから、芳香環の水素原子の1つを塩素原子に置換して改質して製
造されるポリマーである。
パリレンDは、この系列の3番目のものであり、同じモノマーから、芳香環の
水素原子の2つを塩素原子に置換して改質して製造されるポリマーである。これ
らのパリレンは、ジ−パラ−キシリレン、ポリ−パラ−キシリレンの化学薬品供
給業者、例えば、Specialty Coating Systemsから入手することができる。
パリレンポリマーは、容器12の内側表面38に、気相から付着(蒸着)させ
てあり、蒸着の操作は約10-5Torr又はそれ以下で行う。パリレンは約0.
1Torr、及び蒸着チャンバー内の気体分子の平均自由工程が0.1cmのオ
ーダーであるような条件にて形成する。このことは、容器12を真空チャンバー
(図示せず)内に配すると、達成される蒸着がサイトのラインに依存せず、従っ
て、内側表面38の全体を均一に被覆することができるので、重要である。
パリレンの付着には、毎分約0.2μmにて付着させることができる常套の被
覆チャンバー(図示せず)を利用することができる。
パリレンの付着プロセスには3つの工程が含まれる。1番めの工程は、固体の
ジ−パラ−キシリレンを約150℃にて気化させる工程である。2番目の工程は
、キシリレン二量体を、メチレン−メチレン結合部において約680℃にて開裂
又は熱分解させ、安定な単量体ジラジカルパラ−キシリレンを生じさせる工程で
ある。その後、単量体を室温付着チャンバーに導入すると、容器の表面で吸着及
び重合が同時に行われる。内側表面38のみを単量体に接触させることができ、
そうすることによって、内側表面38のみの被覆を行うことができる。
パリレン層の厚さは、約0.1μm〜5.0μmの範囲となるようにすることが
好適であることが見出された。
容器12、パリレンの厚さ及び薬剤処方の機能としてのパリレン被覆の有効性
を以下の検討において示す。
実施例1方法 ロットの説明/安定性の検討
Liquifilm(登録商標)及びPrefrin(登録商標)は100ppmのBAK濃度にて
処方した。Betagan(登録商標)はBAKを使用せずに処方した。
これらの処方を、Pharmaceutical Sciences Ope
rationsによって、例えばALCRYN、C−FLEX、可塑化PVC、
SARLINK、KRATON、及びKRATON−A等を含む種々のポリマー
から形成した可撓性パウチの中に充填した。
充填する前に、すべてのパウチをガンマ線照射に付した。KRATON−Aは
照射後、更にオートクレーブ処理した。KRATON及びKRATON−Aパウ
チには装着されたポンプを用いて充填を行い、その他のパウチにはポンプを用い
ずに充填を行った。Liquifilm(登録商標)又はBetagan(登録商標)を充填したパウ
チは、40℃/75%の相対湿度にて貯蔵し、適用できる場合、BAK、減量及
びLevobunololについて1週間及び2週間にて試験した。Prefrin(登録商標)を充
填した装置は40℃にて貯蔵し、BAK、減量、pH及びPhenylephrineについ
て1週間、2週間及び3ヶ月にて試験した。Prefrin(登録商標)の一部は25℃
/60%の相対湿度にて貯蔵し、減量及びpHについて3ヶ月にて試験した。
Phenylephrine、BAK及びLevobunololのそれぞれの分析(アッセイ)には、
標準的な分析方法を用いた。減量は、充填前のパウチの初期風袋から求めた。適
当な時点における製品重量及び初期製品の充填重量から、特定の単位(unit)に
ついての水の損失割合が得られる。pH及びBAKの零時点データについてはバ
ルクの処方の分析を用いた。製品規格
Liquifilm(登録商標)(7527X)、Prefrin(登録商標)(7533X)、Be
tagan(登録商標)(7667X)についての製品規格をBAK、Phenylephrine、
Levobunolol及びpHに関して以下の表に示す。
結果及び検討
保存薬BAKの可撓性パウチへの吸着は、いずれのポリマーを使用することに
よっても改善されなかった。BAKについての40℃における安定性データの結
果を表1及び2にまとめている。1週間での処方中のBAK濃度は、調べたいず
れのポリマーについても、損失割合(%)基準で、規格下限値(lower specific
ation limit)以下に降下した。唯一の例外は、KRATONパウチ中のLiquifi
lm(登録商標)処方であって、1週間で下限規格の80%まで降下した。Alcr
yn及びPPVCパウチは、例外的によくない結果を示し、全ての処方について
1週間以内でほぼ完全に吸着した。SARLINK及びKRATONポリマーは
、処方からのBAK吸着に関して2週間でほぼ同等の性能を示した。SARLI
NK及びKRATONパウチの中に充填した処方中にBAKは約50%が残存し
た。C−FLEXパウチは、Liquifilm(登録商標)及びPrefrin(登録商標)処方か
らBAKをそれぞれ約53%及び37%吸着した。C−FLEX、SARLIN
K及びKRATONの性能に関するより顕著な違いは、3ヶ月目に認められた。
C−FLEX及びKRATONは、90日の間、製品からBAKを吸着し続けた
。しかしながら、SARLINKパウチは、2週間の後にBAKの飽和が観察さ
れ、製品からのBAKの損失が最高で50%であった。このことは、C−FLE
X及びKRATONは、SARLINKよりも、BAKに対してより高い結合能
を有することを示している。SARLINKはBAKについて飽和することが観
察されているが、Liquifilm(登録商標)及びPrefrin(登録商標)を40℃にて3週
間、規格内に留まらせるためには、100%過時効(overage)を用いる必要があ
る。
すべてのポリマーパウチからかなりの水の損失が観察された。減量に関する安
定性データを表III(3)及びIV(4)にまとめて示している。減量はAlcry
nパウチについて最も顕著であり、40℃において、Liquifilm(登録商標)及びP
refrin(登録商標)処方からそれぞれ18重量%及び16重量%の損失があったこ
とに特に注意すべきである。PPVCパウチもかなりの量の水分を失い、Liquif
ilm(登録商標)を充填したパウチからは7重量%、Prefrin(登録商標)を充填した
パウチからは6.3重量%であった。C−FLEX及びKRATONパウチは2
週間で約1重量%の損失を示したが、3ヶ月ではそれぞれ6.4重量%まで及び
5.4重量%までに増加した。SARLINKパウチは、水分の損失に関しては
最も良好であり、3ヶ月で3.6%までであった。BETAGAN(登録商標)処方
を充填したすべてのパウチにおいて、減量はわずかに増大した(表5参照)。こ
のことは、BAKが存在しない場合にポリマー表面の効果的な湿潤化が劣ること
に起因するようである。
3ヶ月で、Phenylephrine濃度は、試験したすべてのポリマー製パウチの中でP
refrinについての規格上限値を越えて上昇した。水分の損失のデータに基づけば
、このPhenylephrineにおける上昇は予期されたものであった。BETAGAN(登録商
標)(40℃にて2週間、0.5%)の場合、Levobunololは規格内に留まった。
pHについては、試験期間中、すべてのデータが規格内に留まった。40℃にお
いて、Prefrin(登録商標)処方のpH値は6.4までドリフトした。しかしながら
、ポリマー製パウチと対照用のガラス製パウチとの間では、pHに関して差はな
かった(表6参照)。
自己滴下型(Self-Instill)パウチ中の処方を紫外線/可視光線スキャンに付し
ても検出されたものは示されなかった。1週間及び2週間の期間におけるSAR
LINK及びPPVCパウチから、BAKアッセイにおける異質なピークがあっ
たことが注目される。これらの異質なピークは、ポリマーから処方中へ紫外線吸
収性の抽出性の移行の可能性があることを示している。
ALCRYNNC−FLEX、PPVC、SARLINK及びKRATONを
含む5種のポリマー製パウチの処方/ポリマー適合性について、40℃にて促進
化した安定条件にて試験した。パウチの中に充填した処方からの水分及びBAK
の損失は著しいものであった。ALCRYN及びPPVCは、試験したポリマー
の中で最低の性能を示した。水分の損失は、ALCRYNについての2週間で1
8重量%までから、C−FLEX、KRATON及びSARLINKのそれぞれ
について6.4重量%まで、5.4重量%まで、3.6重量%までに及んだ。ポリ
マー製パウチ中のすべての処方からの防腐薬の驚くべき損失が認められた。ポリ
マーのBAK吸着についての序列は、ALCRYN>PPVC>C−FLEX>
KRATON>SARLINKのように求められた。処方からのSARLINK
パウチへの防腐薬の吸着は、100ppmの初期BAK濃度にて飽和することが
示された。しかしながら、40℃にて3ヶ月の間、処方を規格内に留めるために
は、BAKの100%過時効が必要と考えられる。ポリマー製パウチへのBAK
吸着は、処方の適合性において制限される問題点のようである。PPVC及びS
ARLINKは、試験した製品の中に移行したそれらの処方中に抽出し得る物質
を含むようである。
表1
自己滴下型パウチの中へ充填したLiquifilm(登録商標)
についての40℃におけるBAK安定性の結果
表2
自己滴下型パウチの中へ充填したPrefrin(登録商標)
についての40℃におけるBAK安定性の結果
表3
自己滴下型パウチの中へ充填したLiquifilm(登録商標)
についての40℃における減量の結果 表4
自己滴下型パウチの中へ充填したPrefrin(登録商標)
についての40℃における減量の結果
表5
自己滴下型パウチの中へ充填したBetagan(登録商標)
(0.5%)についての減量の安定性の結果 表6
自己滴下型パウチの中へ充填した処方についての
Phenylephrine、Levobunolol及びpH安定性の結果
実施例II 材料及び方法
2種の異なる厚さにてパリレン−Cを被覆した3種の材料のパウチについて試
験した。(約0.5〜約1.5mmの厚さを有する)KRATON−Thickパウ
チの内側表面及び外側表面の両方に、約3.8μm及び約7.6μmにてパリレン
の被覆を施した。C−FLEXパウチには、約3.8μm及び約7.6μmにてパ
リレンの被覆を施した。SARLINKには、約3.8μm及び約7.6μmにて
パリレンの被覆を施した。パウチは、被覆処理前に、2.5MRADまでのガンマ線
照射による殺菌処理も行った。対照用試料は、こはく色のガラスアンプル中に貯
蔵した。パウチ及び対照用試料には、Betagan(登録商標)(平均充填容量:5.0
〜5.5ml)を充填した。安定性試験の間、試料は、40℃/75%の相対湿度
及び25℃/60%の相対湿度にて貯蔵した。すべての試料はラベルなしで貯蔵
し、光から保護するためにボックス中に貯蔵した。アッセイは、2日、4週間及
び8週間で行った。試料は、塩化ベンザルコニウム(BAK)及び
Levobunolol・HClの濃度について試験した。減量は、(ロット毎のすべての
ユニットの重量を平均して求めた)初期平均充填重量及び試験時における充填重
量から計算した。各パウチの風袋は、空にして、洗浄及び乾燥した後に測定した
。適当なpH計及び電極を用いて、キャリブレーションを行った後、室温にてp
Hを測定した。結果/考察
2ヶ月/40℃における減量は、KRATONの7.6μm被覆及びSarl
inkの3.8μm被覆について3重量%である。Sarlinkの7.6μm
被覆について、2ヶ月/40℃における減量は3重量%である。
このデータは、KRATON−THICKパウチ(3.8μm被覆及び7.6
μm被覆の両者)において、BAKの15%W/V損失を示している。KRAT
ON−THICKパウチにおけるBAKの損失は、パリレン被覆のないパウチ(
実施例I)において観察されたBAKの75〜100%W/V損失よりもかなり
低い。
以上、本発明の容器に関して説明したが、これは本発明を有利に用いることが
できる態様について説明することを目的としたものであり、本発明は上記のよう
な態様に限定されるものではないと理解されるべきである。従って、本発明につ
いて、当業者がなし得るような同程度の置き換え、改良、又は変更等を行うこと
は、請求の範囲の記載に基づく本発明の要旨の範囲に含まれるものであると考え
るべきである。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成9年9月18日(1997.9.18)
【補正内容】
明細書
バリアー性被覆を有する可撓性の容器又は瓶型容器
本発明は、一般に、可撓性の容器又は瓶型容器に関するものであり、特に、流
体の器壁への吸着、透過または通過を防止する多層バリアー構造又はそのような
被覆を有する容器又は瓶型容器に関する。
容器(又は瓶型容器)について、中に入れている流体の汚染を防止すること及
び瓶型容器又は容器の器壁を通して流体が漏れ出ることの両者を防止するために
、容器又は瓶型容器は中に入れることを意図する内容物との相互作用がほとんど
又は全くない材料から形成する必要があるということは非常によく知られている
。このような容器の材料の選択は薬剤/医薬については非常に重要である。それ
は、容器の器壁を通して又は器壁によって不純物が導入されることによって特定
の薬剤処方に変化が生じたり、容器の器壁を通って種々の成分が移行することに
よって薬剤処方に経時的な変化が生じたりすると、それによって物理的及び化学
的面において製品の特性が重大な影響を受け得るためである。薬物が容器の器壁
を通って移行することを防止するため、瓶型容器又は栓にパリレン(parylene)
によるバリアー層を形成することができる(日本国特開平5−146730号参
照)。
このような影響は、通常、可撓性の容器、例えば、静脈輸液バッグ及び複数回
投与(マルチドーズ(multidose))用の防腐薬を添加した又は未添加のドラッグ・
デリバリー・システム等において見受けられる。容器の材料について不適当な選
択をすると、水分/重量の損失(減少)、気体の透過、薬剤の不安定化、並びに
薬剤の吸収及び吸着などの問題を引き起こし得る。中に入っている処方を排出供
給するために絞ったりするように設計されている可撓性の又は柔軟な容器につい
ては、当然ながら、これらの問題は深刻である。可撓性の容器を形成するのに好
適な大部分のポリマー、例えば、ポリエチレン、KRATON(登録商標)、C−
Flex(登録商標)、SARLINK(登録商標)は、薬剤処方、例えば、Liquif
ilm(登録商標)、Prefrin(登録商標)、Betagan(登録商標)、又は防腐薬、
例えばBAK(塩化ベンザルコニウム)等(尤も、これらに限定されるわけでは
ない)を吸着したり透過させたりするので、容器の好適な材料とはいえない。
塩化ポリビニル、SILASTIC(登録商標)、C−FLEX(登録商標)等から
なる群から選択することができ、周囲壁部は約0.01インチ〜約0.4インチの
範囲の厚し、パリレン層は約0.5μm(0.00002インチ)〜約4.62μ
m(0.0003インチ)の厚さを有する。
図面の簡単な説明
以下の説明を、添付図面と組み合わせて参照することにより、本発明の利点及
び特徴をより良好に理解することができよう。
図1は、本発明を用いる柔軟な瓶型の排出供給システムの断面図である。
図2は、薄いパリレン被覆を施したパウチ(袋)についての40℃における減
量(損失重量)を示している。
図3は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての40℃における減量を示
している。
図4は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての25℃における減量を示
している。
図5は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての25℃における減量を示
している。
図6は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての40℃におけるBAK濃
度を示している。
図7は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての40℃におけるBAK濃
度を示している。
図8は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての25℃におけるBAK濃
度を示している。
図9は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての25℃におけるBAK濃
度を示している。
図10は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての40℃におけるLevobu
nolol(登録商標)HClの濃度を示している。
図11は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての40℃におけるLevobu
nolol(登録商標)HClの濃度を示している。
図12は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての25℃におけるLevobu
nolol(登録商標)HClの濃度を示している。
図13は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての25℃におけるLevobu
nolol(登録商標)HClの濃度を示している。
図14は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての40℃におけるpH値
を示している。
図15は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての40℃におけるpH値
を示している。
図16は、薄いパリレン被覆を施したパウチについての25℃におけるpH値
を示している。
図17は、厚いパリレン被覆を施したパウチについての25℃におけるpH値
を示している。
例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、C−FLEX(登録商標)、SARLINK
(登録商標)、低密度ポリエチレン(LDPE)、KRATON(登録商標)、SI
LASTIC(登録商標)等が含まれる。
これらの材料は、薬剤処方、例えば、β−遮断薬(例えば、Levobuno
lol、timolol、betaxolol)、α−アゴニスト(例えば、b
rimonidine)、プロスタグランジン(例えば、Latanopros
t)、ketorolac、dipivalyl、epinedphrine、
flurbiprofen、防腐薬、例えば、塩化ベンザルコニウム、クロロブ
タノール等を透過させるものであることが知られている。
本発明の柔軟な瓶型容器の供給システム及び可撓性容器10には、内側表面3
8に、少なくとも1種のパリレンを含む層が被覆されている。
本発明に用いることができるパリレンの特定の例には、パリレンN、パリレン
C、パリレンD及びこれらの混合物が含まれる。
パリレンというのは、特定の系列のポリマーの要素についての一般的名称であ
り、例えばパリレンNという場合には、基本的構成要素はポリ−パラ−キシリレ
ンである。パリレンCはこの系列の市販されている要素の2番めのものであって
、同じモノマーから、芳香環の水素原子の1つを塩素原子に置換して改質して製
造されるポリマーである。
パリレンDは、この系列の3番目のものであり、同じモノマーから、芳香環の
水素原子の2つを塩素原子に置換して改質して製造されるポリマーである。これ
らのパリレンは、ジ−パラ−キシリレン、ポリーパラーキシリレンの化学薬品供
給業者、例えば、Specialty Coating Systemsから入手することができる。
パリレンポリマーは、容器12の内側表面38に、気相から付着(蒸着)させ
てあり、蒸着の操作は約1.32×10-8ATM(気圧)(10-5Torr)又
は
それ以下で行う。パリレンは約0.13×10-3ATM(気圧)(0.1Torr
)、及び蒸着チャンバー内の気体分子の平均自由工程が0.1cmのオーダーで
あるような条件にて形成する。このことは、容器12を真空チャンバー(図示せ
ず)内に配すると、達成される蒸着がサイトのラインに依存せず、従って、内側
表面38の全体を均一に被覆することができるので、重要である。
パリレンの付着には、毎分約0.2μmにて付着させることができる常套の被
覆チャンバー(図示せず)を利用することができる。
パリレンの付着プロセスには3つの工程が含まれる。1番めの工程は、固体の
ジ−パラ−キシリレンを約150℃にて気化させる工程である。2番目の工程は
、キシリレン二量体を、メチレン−メチレン結合部において約680℃にて開裂
又は熱分解させ、安定な単量体ジラジカルパラ−キシリレンを生じさせる工程で
ある。その後、単量体を室温付着チャンバーに導入すると、容器の表面で吸着及
び重合が同時に行われる。内側表面38のみを単量体に接触させることができ、
そうすることによって、内側表面38のみの被覆を行うことができる。
パリレン層の厚さは、約0.1μm〜5.0μmの範囲となるようにすることが
好適であることが見出された。
C−FLEX(登録
商標)、SARLINK(登録商標)及びKRATON(登録商標)の性能に関する
より顕著な違いは、3ヶ月目に認められた。C−FLEX(登録商標)及びKRA
TON(登録商標)は、90日の間、製品からBAKを吸着し続けた。しかしなが
ら、SARLINK(登録商標)パウチは、2週間の後にBAKの飽和が観察され
、製品からのBAKの損失が最高で50%であった。このことは、C−FLEX
(登録商標)及びKRATON(登録商標)は、SARLINK(登録商標)よりも、
BAKに対してより高い結合能を有することを示している。SARLINK(登
録商標)はBAKについて飽和することが観察されているが、Liquifilm(登録商
標)及びPrefrin(登録商標)を40℃にて3週間、規格内に留まらせるためには、
100%過時効(overage)を用いる必要がある。
すべてのポリマーパウチからかなりの水の損失が観察された。減量に関する安
定性データを表III(3)及びIV(4)にまとめて示している。減量はAlcryn
パウチについて最も顕著であり、40℃において、Liquifilm(登録商標)及びPre
frin(登録商標)処方からそれぞれ18重量%及び16重量%の損失があったこと
に特に注意すべきである。PPVCパウチもかなりの量の水分を失い、Liquifil
m(登録商標)を充填したパウチからは7重量%、Prefrin(登録商標)を充填したパ
ウチからは6.3重量%であった。C−FLEX(登録商標)及びKRA
TON(登録商標)パウチは2週間で約1重量%の損失を示したが、3ヶ月ではそ
れぞれ6.4重量%まで及び5.4重量%までに増加した。SARLINKパウチ
は、水分の損失に関しては最も良好であり、3ヶ月で3.6%までであった。BET
AGAN(登録商標)処方を充填したすべてのパウチにおいて、減量はわずかに増大し
た(表5参照)。このことは、BAKが存在しない場合にポリマー表面の効果的
な湿潤化が劣ることに起因するようである。
3ヶ月で、Phenylephrine濃度は、試験したすべてのポリマー製パウチの中でP
refrinについての規格上限値を越えて上昇した。水分の損失のデータに基づけ
請求の範囲
1.周囲壁部及び中空の内部空間を有する形状に弾性体材料から形成された可
撓性容器、及び塩化ベンザルコニウムを含む薬剤処方を有する可撓性容器システ
ムであって、パリレンの層を周囲壁部の内側表面に被覆させて周囲壁部が塩化ベ
ンザルコニウムを吸着することを防止することにより、貯蔵中における薬剤処方
中の塩化ベンザルコニウム濃度を維持すること、並びにパリレンは、パリレンC
、パリレンN、パリレンD及びこれらの混合物からなる群から選択することを特
徴とする可撓性容器システム。
2.弾性体材料がブロックコポリマーゴムを含んでなる請求の範囲1記載の可
撓性容器。
3.弾性体材料がKRATON(登録商標)、可塑化ポリ塩化ビニル、SILA
STIC(登録商標)、C−FLEX及び低密度ポリエチレンからなる群から選択
されることを特徴とする請求の範囲2記載の可撓性容器。
4.周囲壁部が約0.25mm〜約10mmの範囲の厚さを有することを特徴
とする請求の範囲2記載の可撓性容器。
5.パリレン層が約0.1μm〜約5.0μmの範囲の厚さを有することを特
徴とする請求の範囲3記載の可撓性容器。
6.周囲壁部及び中空の内部空間を有する形状に弾性体材料から形成された可
撓性容器、及び塩化ベンザルコニウムを含む薬剤処方、並びに、内部チャンバー
と液体が流通するように連絡しており、周囲壁部が絞られることによって薬剤処
方を排出供給するチップ部を有する柔軟な瓶型排出供給システムであって、弾性
体材料の周囲壁部が薬剤処方に対して透過性を有すること、周囲壁部が塩化ベン
ザルコニウムを吸着することを防止するのに十分な厚さのパリレンの層を周囲壁
部の内側表面に被覆させることによって貯蔵中における薬剤処方中の塩化ベンザ
ルコニウム濃度を維持すること、及び周囲壁部の中を薬剤処方が通過することに
対する可撓性バリアーを供給するのに十分な厚さのパリレンの層を周囲壁部の外
側表面に被覆させること、並びにパリレンは、パリレンC、パリレンN、パリレ
ンD及びこれらの混合物からなる群から選択することを特徴とする瓶型容器型排
出供給システム。
7.周囲壁部が約0.25mm〜約10mmの範囲の厚さを有することを特徴
とする請求の範囲12記載の可撓性容器。
8.パリレン層が約0.1μm〜約5.0μmの範囲の厚さを有することを特
徴とする請求の範囲13記載の可撓性容器。
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(72)発明者 ジェンキンズ,クリスタル・エフ
アメリカ合衆国92653カリフォルニア州
ラグナ・ヒルズ、カミニト・フローレス
22885番
(72)発明者 オレジニク,オレスト
アメリカ合衆国92679カリフォルニア州
トラブコ・キャニオン、ミアンダー・レイ
ン21121番