【発明の詳細な説明】
α(1,4)グルカンアセチル-トランスフェラーゼをコードするDNA
本発明は酵素に関する。本発明はまた、酵素をコードするヌクレオチド配列に
関する。
Boosおよび共同研究者ら(1981および1982(1、2))は、E.coliにおける、
アセチル基のアセチル-補酵素Aからマルトースへの転移を介してマルトースを
アセチル化し得る酵素の存在の証拠を示した。特に、Boosら(1)は、E.coliに
おけるマルトースおよびマルトオリゴシドの蓄積後の、アセチル-マルトースお
よびアセチル-オリゴマルトシドの形成を観察した。彼らはまた、マルトースま
たはマルトトリオース、アセチル-補酵素A、および細胞質ゾルE.coli抽出物を
一緒に混合した場合の、インビトロにおけるアセチル-マルトースおよびアセチ
ル-オリゴマルトシドの形成を観察した(Boosら(2))。
Boosら(1981)は、マルトースおよびマルトデキストリンのアセチル化を担う
活性は未知であると述べた。しかし、1982年の彼らのさらなる研究において(2
)、FeundliebおよびBoosは未知の酵素を「マルトーストランスアセチラーゼ」
と名付けたが、次いで、E.coliにおけるマルトーストランスアセチラーゼの機能
は不明であると言った。
後に、BrandおよびBoos(3)は、マルトーストランスアセチラーゼをコード
する遺伝子を欠損するE.coli変異体を単離した。この変異体は、彼らが、この遺
伝子を、E.coli連鎖地図上の10.4分にマップすることを可能にした。さらに、彼
らは、この遺伝子を含む3.4kb DNAフラグメントを、高コピープラスミド上にク
ローン化した。次いで、過剰発現されたマルトーストランスアセチラーゼは、上
記のプラスミドを保有するE.coli株の無細胞抽出物から、均質まで精製された。
この酵素は、20kDaの2つの同一のサブユニットを有するホモダイマーであるこ
とが示された。基質グルコース、マルトース、およびアセチル-補酵素Aについ
てのこの酵素のkm(mM)およびVmax(μmol/分×mg酵素)値は、それぞれ62およ
び200、90および110、ならびに0.018および166であった。マルトトリオース
および他のオリゴ糖は、グルコースについて決定された速度の2%の速度でアセ
チル化されることが見出された。さらに、BrandおよびBoosは、以下の相対的ア
セチル化速度を示した:グルコース1、マルトース0.55、マンノース0.2、フル
クトース0.07、ガラクトース0.04、マルトトリオースおよび他のマルトオリゴ糖
0.22。オリゴ糖は、10未満の糖単位を有するサッカライドである。
これらの知見にかかわらず、BrandおよびBoosは、酵素も、マルトーストラン
スアセチラーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列も配列決定しなかった。
本発明の第1の局面によれば、α(1,4)グルカンアセチル-トランスフェラーゼ
活性を有する酵素(ここでこの酵素は、配列番号1として示されるアミノ酸配列
を含む)、またはその改変体、ホモログ、もしくはフラグメントが提供される。
本発明の第2の局面によれば、α(1,4)グルカンアセチル-トランスフェラーゼ
活性を有する組換え酵素(ここでこの酵素は、配列番号1として示されるアミノ
酸配列を含む)、またはその改変体、ホモログ、もしくはフラグメントが提供さ
れる。
本発明の第3の局面によれば、α(1,4)グルカンアセチル-トランスフェラーゼ
活性を有する組換え酵素が提供される。ここでこの酵素は、配列番号1として示
されるアミノ酸配列を有する。
本発明の第4の局面によれば、α(1,4)グルカンアセチル-トランスフェラーゼ
活性を有する組換え酵素が提供される。ここでこの組換え酵素は、本発明の上記
の局面による精製組換え酵素に対して惹起された抗体と免疫学的に反応性である
。
本発明の第5の局面によれば、本発明の酵素をコードするヌクレオチド配列ま
たはそれに相補的である配列が提供される。
本発明の第6の局面によれば、配列番号2として示される配列、またはその改
変体、ホモログ、もしくはフラグメント、またはそれに相補的である配列を含む
ヌクレオチド配列が提供される。
本発明の第7の局面によれば、配列番号2として示される配列を有するヌクレ
オチド配列が提供される。
本発明の第8の局面によれば、本発明のヌクレオチド配列または酵素を含むか
または発現する構築物が提供される。
本発明の第9の局面によれば、本発明による構築物もしくはヌクレオチド配列
または酵素を含むかまたは発現するベクターが提供される。
本発明の第10の局面によれば、本発明によるベクター、構築物もしくはヌクレ
オチド配列または酵素を含むかまたは発現するプラスミドが提供される。
本発明の第11の局面によれば、本発明によるプラスミド、ベクター、構築物も
しくはヌクレオチド配列または酵素を含むかまたは発現するトランスジェニック
生物が提供される。
本発明の第12の局面によれば、本発明を含むもしくは発現するまたは使用する
方法により調製される、修飾炭水化物(好ましくはデンプン)が提供される。
本発明の酵素は、細菌、真菌、藻類、酵母、または植物の任意のものから得ら
れ得る。好ましくは、酵素はE.coliから得られ得る。
本発明のα(1,4)グルカンアセチル-トランスフェラーゼは、時々Macといわれ
る。本発明のα(1,4)グルカンアセチル-トランスフェラーゼをコードする遺伝子
はまた、時々mac遺伝子といわれる。
好ましくは、酵素は、配列番号1として示されるアミノ酸配列、またはその改
変体、ホモログ、もしくはフラグメントを含む。
好ましくは、酵素は、配列番号1として示されるアミノ酸配列を有する。
好ましくは、酵素は、配列番号2として示されるヌクレオチド配列、またはそ
の改変体、ホモログ、もしくはフラグメント、またはそれに相補的な配列を含む
ヌクレオチド配列によりコードされる。
好ましくは、酵素は、配列番号2として示されるヌクレオチド配列によりコー
ドされる。
好ましくは、生物は植物である。
好ましくは、ヌクレオチド配列はDNA配列である。
酵素またはそれをコードするヌクレオチド配列(単数または複数)は、インビ
トロまたはインビボにおいて、1つ以上の他の酵素またはそれをコードするヌク
レオチド配列(単数または複数)と組み合わせて使用され得、この酵素またはそ
れをコードするヌクレオチド配列(単数または複数)は、好ましくは、組換えDN
A技術の使用により調製される。
従って、本発明の1つの局面によれば、インビボ酵素的修飾プロセスには、イ
ンビトロ酵素的修飾プロセスが続き得る。これらの修飾工程において、使用され
る酵素は、必ずしも同じ酵素である必要はない。
酵素に関して、用語「改変体」、「ホモログ」、または「フラグメント」は、
得られるアミノ酸配列がα(1,4)グルカンアセチル-トランスフェラーゼ活性を有
する、好ましくは、配列番号1として示される酵素と少なくとも同じ活性を有す
るのであれば、配列からのまたは配列への、1つ(またはそれより多く)のアミ
ノ酸の、任意の置換(substitution)、変形、修飾、置き換え(replacement)
、欠失、または付加を含む。特に、用語「ホモログ」は、得られる酵素がα(1,4
)グルカンアセチル-トランスフェラーゼ活性を有するのであれば、構造および/
または機能に関する相同性をカバーする。配列相同性に関して、好ましくは、配
列番号1として示される配列に対する、少なくとも75%、より好ましくは少なく
とも85%、より好ましくは少なくとも90%の相同性が存在する。より好ましくは
、配列番号1として示される配列に対する、少なくとも95%、より好ましくは少
なくとも98%の相同性が存在する。
酵素をコードするヌクレオチド配列に関して、用語「改変体」、「ホモログ」
、または「フラグメント」は、得られるヌクレオチド配列がα(1,4)グルカンア
セチル-トランスフェラーゼ活性を有する、好ましくは、配列番号1として示さ
れる酵素と少なくとも同じ活性を有する酵素をコードするのであれば、配列から
のまたは配列への、1つ(またはそれより多く)の核酸の、任意の置換(substi
tution)、変形、修飾、置き換え(replacement)、欠失、または付加を含む。
特に、用語「ホモログ」は、得られるヌクレオチド配列がα(1,4)グルカンアセ
チル-トランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードするのであれば、構造およ
び/または機能に関する相同性をカバーする。配列相同性に関して、好ましくは
、配列番号2として示される配列に対する、少なくとも75%、より好ましくは少
なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の相同性が存在する。より好まし
くは、配列番号2として示される配列に対する、少なくとも95%、より好ましく
は少なくとも98%の相同性が存在する。
上記の用語は、配列の対立遺伝子変形と同義である。
用語「相補的」は、本発明がまた、本発明のヌクレオチド配列にハイブリダイ
ズし得るヌクレオチド配列をカバーすることを意味する。
本発明に関して、用語「ヌクレオチド」は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、およ
びRNAを含む。好ましくは、ヌクレオチドは、本発明のコード配列に対するDNA、
より好ましくはcDNAを意味する。
好ましくは、ヌクレオチド配列は、ネイティブのヌクレオチド配列ではない。
これに関して、用語「ネイティブのヌクレオチド配列」は、その天然の環境にあ
る全体のヌクレオチド配列を意味し、そしてそれが天然に結合している全体のプ
ロモーターに作動可能に連結される場合、そのプロモーターはまた、ネイティブ
の環境にある。
従って、本発明の酵素は、そのネイティブの生物においてヌクレオチド配列に
より発現され得るが、ここでこのヌクレオチド配列はその生物内でそれが天然に
結合しているプロモーターの制御下にはない。
本発明の酵素は、他の酵素とともに使用され得る。
好ましくは、酵素は、ネイティブの酵素ではない。これに関して、用語「ネイ
ティブの酵素」は、そのネイティブの環境にあり、そしてそれがそのネイティブ
のヌクレオチド配列により発現されている場合の全体の酵素を意味する。
用語「構築物」(これは、「結合体」、「カセット」、および「ハイブリッド
」のような用語と同義である)は、プロモーターに直接的にまたは間接的に付着
または融合されたヌクレオチド配列を含む。間接的な付着の例は、プロモーター
とヌクレオチド配列とを仲介する、イントロン配列(例えば、Sh1-イントロンま
たはADHイントロン)のような適切なスペーサー基の提供である。
各々の場合において、酵素をコードする遺伝子が、通常野生型遺伝子プロモー
ターと結合しており、そしてそれらの両方がその天然の環境にある場合の、天然
の組合わせを、用語がカバーしないことが、高度に好ましい。それゆえ、本発明
の1つの高度に好ましい実施態様は、異種プロモーターに作動可能に連結された
本発明のヌクレオチド配列に関する。
構築物は、それが移入されている、例えば、ジャガイモのような植物における
、遺伝子構築物の選択を可能にするマーカーをさらに含み得るかまたは発現し得
る。
例えば、マンノース-6-ホスフェートイソメラーゼをコードするマーカー(特に
植物用)、または抗生物質耐性(例えば、G418、ハイグロマイシン、ブレオマイ
シン、カナマイシン、およびゲンタマイシンに対する耐性)を提供するマーカー
のような、使用され得る種々のマーカーが存在する。
用語「ベクター」は、発現ベクターおよび形質転換ベクターを含む。
用語「発現ベクター」は、インビボまたはインビトロ発現が可能な構築物を意
味する。
用語「形質転換ベクター」は、1つの種から別の種へ(例えば、E.coliプラス
ミドからAgrobacteriumから植物へ)移入され得る構築物を意味する。
用語「組織」は、組織および器官を含み、この組織および器官は、単離された
組織および単離された器官、ならびに生物内の場合の組織および器官であり得る
。
本発明に関して、用語「生物」は、本発明による酵素をコードするヌクレオチ
ド配列および/もしくはそれから得られる産物を含み得る、ならびに/または、
その生物中に存在する場合に、本発明によるヌクレオチド配列が発現され得る、
任意の生物を含む。
好ましくは、生物は植物である。
本発明に関して、用語「トランスジェニック生物」は、本発明による酵素をコ
ードするヌクレオチド配列および/もしくはそれから得られる産物を含み得る、
ならびに/または、本発明によるヌクレオチド配列がその生物内で発現され得る
、任意の生物を含む。好ましくは、ヌクレオチド配列は、生物のゲノム中に組み
込まれる。
好ましくは、トランスジェニック生物は植物である。
それゆえ、本発明のトランスジェニック生物は、本発明による酵素をコードす
るヌクレオチド配列、本発明による構築物、本発明によるベクター、本発明によ
るプラスミド、本発明による細胞、本発明による組織、またはその産物の、任意
のものまたはその組み合わせを含む生物を含む。例えば、トランスジェニック生
物はまた、異種プロモーターの制御下で、本発明の酵素をコードするヌクレオチ
ド配列を含み得る。トランスジェニック生物は、プロモーターおよび本発明によ
る酵素をコードするヌクレオチド配列の組み合わせを含まない。ここで、このプ
ロモーターおよびヌクレオチド配列の両方は、その生物にとって天然であり、そ
して天然環境にある。
用語「プロモーター」は、当該分野の通常の意味で用いられる(例えば、遺伝
子発現のジャコブ-モノー(Jacob-Mond)理論におけるRNAポリメラーゼ結合部位
)。
プロモーターは、さらに、適切な宿主における発現を確実にするまたは増加さ
せるための1つ以上の特徴を含み得る。例えば、特徴は、Pribnowボックスまた
はTATAボックスのような保存領域であり得る。プロモーターはなお、本発明のヌ
クレオチド配列の発現レベルに影響を及ぼすための(例えば、維持、増強、減少
するための)他の配列を含み得る。例えば、適切な他の配列としては、 Sh1-イ
ントロンまたはADHイントロンが挙げられる。他の配列としては、誘導性エレメ
ント(例えば、温度、化学物質、光、またはストレス誘導性エレメント)が挙げ
られる。
また、転写または翻訳を増強するための適切なエレメントが存在し得る。後者
のエレメントの例は、TMV 5'シグナル配列である(Sleat Gene 217[1987]217
-225;およびDawson Plant Mol.Biol.23[1993]97を参照のこと)。
従って、1つの局面において、本発明によるヌクレオチド配列は、ヌクレオチ
ド配列の発現を可能にするプロモーターの制御下にある。この局面において、プ
ロモーターは細胞または組織特異的プロモーターであり得る。例えば、生物が植
物である場合、プロモーターは、種子、茎、塊茎、芽、根、および葉組織の1つ
以上の任意のものにおけるヌクレオチド配列の発現に影響するプロモーターであ
り得る。
組換えDNA技術の一般的な教示は、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.,Maniatis T.(
編)Molecular Cloning.A laboratory manual.第2版.Cold Spring Harbour Lab
oratory Press.New York1989に見出され得る。
本発明の酵素およびヌクレオチド配列はEP-B-0470145およびCA-A-2006454には
開示されていないが、それら2つの文書は、本発明によるトランスジェニック植
物を調製するために用いられ得る技術のタイプについてのいくらか有用な背景注
解を提供する。これらの背景技術のいくつかは、ここで、以下の注解中に含まれ
る。
遺伝的に改変された植物の構築における基本原理は、挿入された遺伝物質の安
定な維持を得るように、遺伝情報を植物ゲノム中に挿入することである。
いくつかの技術が遺伝情報を挿入するために存在し、2つの主な原理は、遺伝
情報の直接的導入およびベクターシステムの使用による遺伝情報の導入である。
一般的な技術の総説は、Potrykus(Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol[1
991]42:205-225)およびChristou(Agro-Food-Industry Hi-Tech 3月/4月 19
94 17-27)による論説において見出され得る。
従って、1つの局面において、本発明は、本発明によるヌクレオチド配列また
は構築物を有し、そして生物(例えば、植物)のゲノム中にそのヌクレオチド配
列または構築物を導入し得るベクターシステムに関する。
ベクターシステムは1つのベクターを含んでもよいが、ベクターシステムは2
つのベクターを含み得る。2つのベクターの場合、ベクターシステムは通常バイ
ナリーベクターシステムといわれる。バイナリーベクターシステムは、Gynheung
Anら、(1980),Binary Vectors,Plant Molecular Biology Manual A3,1-19にさ
らに詳細に記載されている。
所定のプロモーターまたはヌクレオチド配列または構築物での植物細胞の形質
転換のために十分に用いられている1つのシステムは、Agrobacterjum tumefaci
ens由来のTiプラスミドまたはAgrobacterium rhizogenes由来のRiプラスミドの
使用に基づく(Anら、(1986),Plant Physjol.81,301-305およびButcher D.N.ら
、(1980),Tissue Culture Methods for Plant Pathologist,編:D.S.Ingramsお
よびJ.P.Helgeson,203-208)。
上記の植物または植物細胞構築物の構築に適切である、いくつかの異なるTiお
よびRiプラスミドが構築されている。
本発明のヌクレオチド配列または構築物は、好ましくは、T-DNA境界のすぐ周
囲の配列の破壊を回避するように、T-DNAの末端配列の間にまたはT-DNA配列に隣
接してTiプラスミド中に挿入されるべきである。なぜなら、これらの領域の少な
くとも1つは、改変T-DNAの植物ゲノムへの挿入のために必須であるようである
からである。
上記の説明から理解されるように、生物が植物である場合、本発明のベクター
システムは、好ましくは、植物を感染させるために必要な配列(例えば、vir領
域)およびT-DNA配列の少なくとも一方の境界部分を含むベクターシステムであ
り、この境界部分は遺伝子構築物と同じベクター上に配置される。
さらに、ベクターシステムは、好ましくは、Agrobacterium tumefaciens Tiプ
ラスミドまたはAgrobacterium rhizogenes Riプラスミドまたはその誘導体であ
る。なぜなら、これらのプラスミドは、周知であり、そしてトランスジェニック
植物の構築において広く用いられており、これらのプラスミドまたはその誘導体
に基づく多数のベクターシステムが存在するからである。
トランスジェニック植物の構築において、本発明のヌクレオチド配列または構
築物は、まず、植物中への挿入前に、その中でベクターが複製し得、そして操作
が容易である微生物において、構築され得る。有用な微生物の例はE.coliである
が、上記の特性を有する他の微生物が使用され得る。上記で定義されたベクター
システムのベクターがE.coliにおいて構築された場合、それは、必要であれば、
適切なAgrobacterium株(例えば、Agrobacterium tumefaciens)中に移入される
。従って、本発明のヌクレオチド配列または構築物を保有するTiプラスミドは、
好ましくは、本発明のヌクレオチド配列または構築物を保有するAgrobacterium
細胞を得るために、適切なAgrobacterium株(例えば、A.tumefaciens)中に移入
され、このDNAは次に改変されるべき植物細胞中に移入される。
CA-A-2006454において報告されるように、E.coliにおける複製系および形質転
換細胞の選択を可能にするマーカーを含む、多量のクローニングベクターが入手
可能である。ベクターは、例えば、pBR322、pUCシリーズ、M13mpシリーズ、pACY
C 184などを含む。このように、本発明のヌクレオチドまたは構築物は、ベクタ
ー中の適切な制限位置中に導入され得る。含まれるプラスミドは、E.coliにおけ
る形質転換のために使用される。E.coli細胞は適切な栄養培地中で培養され、次
いで回収および溶解される。次いで、プラスミドが回収される。分析の方法とし
ては、一般に使用される配列分析、制限分析、電気泳動、およびさらに生化学的
−分子生物学的方法が存在する。各操作の後、使用されるDNA配列は制限され得
、そして次のDNA配列と連結され得る。各配列は同一のまたは異なるプラ
スミド中にクローン化され得る。
植物における本発明による構築物またはヌクレオチド配列の各導入方法の後に
、さらなるDNA配列の存在および/または挿入が必要であり得る。例えば、形質
転換のために植物細胞のTiプラスミドまたはRiプラスミドが使用される場合、Ti
プラスミドおよびRiプラスミドT-DNAの少なくとも右境界およびしかししばしば
右および左境界が、導入される遺伝子の隣接する領域として、連結され得る。植
物細胞の形質転換のためのT-DNAの使用は、十分に研究されており、そしてEP-A-
120516;Hoekema:The Binary Plant Vector System Offset-drukkerij Kanters
B.B.,Alblasserdam,1985,第V章;Fraleyら、Crit.Rev.Plant Sci.,4:1-46;
およびAnら、EMBOJ.(1985)4:277-284に記載されている。
Agrobacteriumによる植物組織の直接感染は、広く用いられており、そしてBut
cher D.N.ら(1980),Tissue Culture Methods for Plant Pathologist,編:D.S
.IngramおよびJ.P. Helgeson, 203-208に記載されている単純な技術である。こ
の話題に関するさらなる教示については、Potrykus(Annu Rev Plant Physiol P
lant Mol Biol[1991]42:205-225)およびChristou(Agro-Food-Industry Hi-T
ech 3月/4月 1994 17-27)を参照のこと。この技術を用いて、植物の感染は、
植物の特定の部分または組織に対して(すなわち、植物の葉、塊茎、根、茎、ま
たは別の部分に対して)行われ得る。
代表的には、本発明のヌクレオチド配列を有するAgrobacteriumによる植物組
織の直接感染を用いて、感染されるべき植物は、植物をカミソリで切断する、ま
たは植物を針で穿孔する、または植物を研磨材でこすることにより、傷つけられ
る。次いで、この傷にAgrobacteriumが接種される。次いで、接種された植物ま
たは植物部分は、適切な培養培地上で増殖させられ、そして成熟植物に発達させ
られる。
植物細胞が構築されると、これらの細胞は、周知の組織培養方法に従って(例
えば、細胞を、アミノ酸、植物ホルモン、ビタミンなどのような必要な増殖因子
を補充した適切な培養培地中で培養することにより)、増殖および維持され得る
。
形質転換細胞の遺伝的に改変された植物への再生は、細胞または組織培養物か
らの植物の再生のための公知の方法を使用して、例えば、形質転換されたシュー
トを抗生物質を使用して選択することにより、およびシュートを適切な栄養素、
植物ホルモンなどを含有する培地上で継代培養することにより、達成され得る。
植物の形質転換についてのなおさらに有用な教示は、デンマーク特許出願第94
0662号(1994年6月10日出願)および/または英国特許出願第9702592.8号(199
7年2月7日出願)において見出され得る。
なお、Spngstadら(1995 Plant Cell Tissue Organ Culture 40 1-15頁)が参
照され得る。なぜなら、これらの著者は、トランスジェニック植物構築について
の一般的な概説を提示するからである。
要約すると、本発明は、α(1,4)グルカンアセチルトランスフェラーゼ活性を
有する酵素およびそれをコードするヌクレオチドに関する。本発明はまた、その
使用から得られ得る修飾炭水化物(好ましくは、デンプン)を提供する。
以下のサンプルは、ブダペスト条約に従って、承認された寄託機関であるThe
National Collections of Industrial and Marine Bacteria Limited(NCIMB)(
23 St.Machar Drive, Aberdeen, Scotland, United Kingdom, AB2 1RY)に1996
年3月7日に寄託された。
DH5α-pMAC3(これはmac遺伝子を含むE.coli由来の3.2kb EcoRI-pst1フラグメ
ントを含む)。
寄託番号はNCIMB 40789である。
この寄託物はプラスミドpMAC3に関する。
以下のサンプルは、ブダペスト条約に従って、承認された寄託機関であるThe
National Collections of Industrial and Marine Bacteria Limited(NCIMB)
(23 St.Machar Drive,Aberdeen,Scotland,United Kingdom,AB2 1RY)に1996年
3月7日に寄託された。
NF1830-pMAC5(これはE.colimac遺伝子を含む)。
寄託番号はNCIMB 40790である。
この寄託物はプラスミドpMAC5に関する。
それゆえ、本発明の高度に好ましい局面は、α(1,4)グルカンアセチルトラン
スフェラーゼ活性を有する酵素に関する。ここで、この酵素は、配列番号1とし
て示されるアミノ酸配列、またはその改変体、ホモログ、もしくはフラグメント
を含み;そしてここで、この酵素は、寄託番号NCIMB 40789または寄託番号NCIMB
40790のいずれかから得られ得るヌクレオチド配列により発現される。
それゆえ、本発明の別の高度に好ましい局面は、配列番号2として示される配
列、またはその改変体、ホモログ、もしくはフラグメント、またはそれに相補的
な配列を含むヌクレオチド配列に関し、そしてここで、このヌクレオチド配列は
、寄託番号NCIMB 40789または寄託番号NCIMB 40790のいずれかから得られ得るヌ
クレオチド配列である。
本発明はまた、この同じプラスミドの使用から得られ得る修飾炭水化物(好ま
しくはデンプン)を提供する。
本発明は、ここで、その中で以下の図面が参照される実施例によってのみ記載
される:
図1。これは配列番号2に対応するヌクレオチド配列を示す;
図2。これは配列番号1に対応するアミノ酸配列を示す;
図3。これは配列番号2に対応する配列を含むヌクレオチド配列を示す;
図4。これはpMAC1のプラスミドマップである;
図5。これはpMAC2のプラスミドマップである;
図6。これはpMAC3のプラスミドマップである;
図7。これはpMAC5のプラスミドマップである;
図8。これはpMAC8のプラスミドマップである;
図9。これはpMAC9のプラスミドマップである;および
図10。これはpMAC10のプラスミドマップである。
図面についてのいくらかの詳細は以下のとおりである:
図1
配列番号2に対応するヌクレオチド配列
図2
配列番号1に対応するアミノ酸配列
183アミノ酸
20073 MW
図4
プラスミドの名称:pMAC1
プラスミドのサイズ:7.26kb
コメント:λ151由来の4.3kb EcoR1フラグメントの、Bluescript II SK+のEcoR1
部位中への挿入。
図5
プラスミドの名称:pMAC2
プラスミドのサイズ:7.26kb
コメント:λ151由来の4.3kb EcoR1フラグメント(Koharaコレクション)の、Bl
uescript II SK+のEcoR1部位中への挿入。
図6
プラスミドの名称:pMAC3
プラスミドのサイズ:7.26 kb
コメント:pMAC2からの1.1kb Pst1フラグメントの欠失。
図7
プラスミドの名称:pMAC5
プラスミドのサイズ:4060bp
コメント:E.colimac遺伝子を、以下のプライマーを用いてpMAC3をテンプレート
として使用して増幅した:
#B411(EcoR1部位を有する上方プライマー)
CGG AAT TCC GCC ATG AAG ACA TAC CC
#B412(HindIII部位を有する下方プライマー)
CAC AAG CTT ATT TTG CAT AAC AGT TGC。
704bpのPCR産物をEcoR1およびHindIIIで消化し、そして同じ制限酵素で消化した
pUHE21-1中に挿入した。
図8
プラスミドの名称:pMAC8
プラスミドのサイズ:4935bp
コメント:E.colいmac遺伝子を、以下のプライマーおよびテンプレートとしての
pMAC3を用いて増幅した:
#B478 CGG GAT CCG AGC ACA GAA AAA GAA AAG ATG(BamHI部位を有する上方プ
ライマー)
#B479 AAC TGC AGA TTT TGC ATA ACA GTT GC(PstI部位を有する下方プライマ
ー)。PCR産物をBamHIおよびPstlで消化し、そして同じ制限酵素で消化したpBET
P5中に挿入した。
SBE TP-mac融合体を、プライマー#C028を用いてコントロール配列決定した。3
5Sターミネーター-mac融合体を、プライマー#B456または#C027を用いて配列決定
した。
図9
プラスミドの名称:pMAC9
プラスミドのサイズ:9.37kb
コメント:pMAC8由来の2294bp EcoRIフラグメント(パタチンプロモーター−SBE
TP-mac-35Sターミネーター)のpVictor IV ManのEcoRI部位中の挿入。
図10
プラスミドの名称:pMAC10
プラスミドのサイズ:9.37kb
コメント:pMAC8由来の2294bp EcoRIフラグメント(パタチンプロモーター−SBE
TP-mac-35Sターミネーター)のpVictor IV ManのEcoRI部位中の挿入。
E.coliからのmac遺伝子のクローニングおよび配列決定
最初にBoosおよびBrand(3)の教示に従って、mac遺伝子をKoharaコレクション(
4)由来のλファージ8C4(151)由来の4.3kb EcoRIフラグメントから単離した。こ
のフラグメントをプラスミドpBluescript II SK(+)のEcoRI部位中に両方向で挿
入して、プラスミドpMAC1およびpMAC2(図4および5)を得た。E.coli中に保有
される場合、これらのプラスミドは、高度に上昇したマルトースアセチルトラン
スフェラーゼレベルを生じる。このことは、4.3kb EcoRIフラグメントがmac遺伝
子を含むことを示す。
4.3kb EcoRIフラグメント上でmac遺伝子を位置付けるために、1.1kb PstIフラ
グメントをプラスミドpMAC2から欠失させた。このプラスミド構築pMAC3(図
6)はまた、このプラスミドを含む株における増加したマルトースアセチルトラ
ンスフェラーゼレベルを生じる。従って、このことは、mac遺伝子が3.2kb EcoRI
-PstIフラグメント上に存在することを実証する。
次いで、pMAC3中の3.2kb EcoRI-PstIインサートのヌクレオチド配列を、A.L.F
.シーケンサーでの自動化配列決定により決定した。3137bpのDNA配列は、E.coli
acrB遺伝子の3'末端の372bp領域、ならびに124、126、および183アミノ酸のタ
ンパク質を潜在的にコードする3つのオープンリーディングフレームを明らかに
した(図3)。
同様に、pMAC3を含むE.coliミニセルを用いる35S-メチオニン標識実験は、こ
れらのサイズに対応する分子量を有するタンパク質の合成を示した。
推定分子量20073のタンパク質をコードする183コドンのorf(図2)がmac遺伝
子である。なぜならE.coliマルトースアセチル-トランスフェラーゼは、20,000
の見積もられるサブユニット分子量を有するからである(3)。
E.coliにおけるMac酵素の過剰発現
Mac酵素を精製するために、mac遺伝子をpUHE21-1中のイソプロピルチオガラク
トシダーゼ(IPTG)誘導性ファージT7-プロモーターA1の後に挿入して、pMAC5を
得た(図7)。pMAC5を保有するE coli NF1830株(MC1000,recA1,F'lacIq1Z::
tm5、Niels Fiil,University of Copenhagenからの贈与)の培養物は、mac遺伝
子の発現を、IPTGの増殖培地への添加により誘導する場合、高度に上昇したレベ
ルのマルトースアセチルトランスフェラーゼを有することが見出された。
増殖条件
アンピシリン(100μg/ml)およびカナマイシン(25μg/ml)を補充したNF183
0-pMAC5の1LのLB培養物を、37℃で激しく振とうしながらA600が0.7に達するまで
増殖させた。IPTGを2mMの最終濃度まで添加し、そして増殖を4時間継続した。
細胞を遠心分離(10分間、4000×gで)により回収し、そして200mlの0.9%NaCl
中の再懸濁により洗浄した。次いで、細胞ペレットを、0.4mM PMSF、0.4mg/mlペ
プスタチン、および1.6m MEDTAを含有する20mMリン酸カリウム(pH7.5)2
50ml中に再懸濁した。懸濁物を19mm High Gain Hornおよびエキステンダーとと
もにVibra Cell VC 600を使用して(全て、Sonics and Materials Inc.,USAより
)5×1分間超音波処理した。ホモジネートを60分間90 000×g、4℃の遠心分
離およびその後の0.22μmフィルターを通しての濾過により明澄化した。
組換えMacの精製
得られた粗抽出物を、20mMリン酸カリウム(pH7.5)(本明細書中以下で「緩
衝液A」と呼ぶ)で平衡化したQ-Sepharose 26/10カラム(Pharmacia Biotech)
に2ml/分の流速で供した。カラムを300mlの緩衝液Aで洗浄し、そして結合した
タンパク質を、緩衝液A中0〜0.3M NaCl直線勾配(300ml)をかけることにより
溶出した。酵素活性を含む画分をプールし、そして緩衝液Aで平衡化した8mlのA
ffi-Gel Blue(Biorad)カラム(16mm×26cm)に1ml/分の流速でかけた。カラム
を0.4M NaClを含有する同じ緩衝液50mlで洗浄した。次いで、酵素を、2M NaClを
含有する同じ緩衝液で溶出した。活性プールを一晩緩衝液Aに対して透析し、そ
してその後Centriprep-30(Amicon)中で約3mlに濃縮した。この画分を、緩衝
液Aで平衡化した6mlのAcetyl-coA-Minileakカラムに0.3ml/分の流速で供した
。このアフィニティー樹脂を、200mgのアセチル-coAの5g(乾燥重量)をMinile
al High(Kem-En-Tek,Denmark)へ10mlの1M NaCO3(pH11)中で20時間室温でカ
ップリングすることにより作製した。カラムを20mlの緩衝液Aで洗浄した。次い
でこれを逆転し、そして純粋な酵素を、0.5M NaClを含有する緩衝液Aで20ml未
満中に溶出した。
マルトースアセチルトランスフェラーゼの均質までの精製は、3つのクロマト
グラフィー工程の後に達成された。11の培養物から、本発明者らは、5.8mgの純
粋なMacを得ることができた。収率は29%であり、そして酵素は80倍精製された
。酵素の純度を、SDS-PAGEおよび質量分析の両方により評価した。後者は、19,9
82Daの分子量を明らかにした。
酵素濃度および活性の測定
純粋なMac溶液の濃度を、(5)によるMacのアミノ酸組成から決定した0.66の
吸光係数を使用して、280nmにおいて分光光学的に見積もった。Macのアセチル-
トランスフェラーゼ活性を、改変したAlpersのアッセイ(6)に従って、分光光
学的にアッセイした。Perkin Elmer Lambda 18分光光度計を使用した。ヌmlの総
用量のアッセイ混合物は、50mMリン酸カリウム、2mMEDTA緩衝液(pH7.5)、100μl
のマルトース1M、100μlのアセチル-coA 0.4mM、メタノール中に溶解した5,5'−
ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)40mM 10μl、および10μlの酵素を含有
した。反応を、酵素またはマルトースの添加により開始し、そして412nmで25℃
でモニターした。1活性単位を、25℃における1分間あたりの吸光度の増加を生
成した酵素の量として定義した。アセチル補酵素Aの消費を算出するために、13
600M-1×cm-1の吸光係数を、DTNBについて使用した。
組換えMacのN末端配列決定
純粋なMacのN末端配列決定を、Applied Biosystems 476Aタンパク質シーケン
サーを使用して実施した。1ナノモルのタンパク質を、シーケンサーヘロードす
る前に、C2カラム(4.6/30)でのRP-HPLCにより脱塩した。MacのN末端配列を残
基48まで決定し、そしてこれはmac遺伝子のヌクレオチド配列(図1)と完全に
一致した。さらに、N末端メチオニン残基は、成熟タンパク質上には存在しなか
った(図2)。
組換えMacに対するポリクローナル抗体の産生
ウサギを、6週間の間2週間隔で、そしてその後4週間隔で、フロイントのア
ジュバントと乳化した(1:1、vol/vol)90μgの純粋なタンパク質で、皮下で
免疫した。抗血清をMacに対してイムノブロットにおいて試験し、そしてこれは
高度に特異的であると見出された。
組換えMacの特徴付けおよび活性プロフィール
質量分析研究は、Macが三量体であり得ることを示した。
Macの等電点を、PhastGel IEF 4-6.5(Pharmacia)での等電点電気泳動により
測定し、そしてこれは5.7であることが見出された。
MacのpHプロフィールを、pH5とpH8.5との間で、100mM NaClを含有する50mM緩
衝液中100mMマルトース濃度で研究した。これらの条件下において、至適pHは7.7
であった。
MacのpH安定性を、25℃で、pH3.0とpH10.0との間で検討した。MacはpH3.0にお
いて即座に不活化されるが、pH4.0とpH10.0との間では、少なくとも6時間安定
であった。
Macの熱安定性を、pH7.5で、40℃と70℃との間で研究した。4時間の40℃およ
び50℃でのインキュベーションの後、Macの残存活性は、それぞれ100%および75
%であった。その半減期は、それぞれ60℃および70℃において70分および22分で
あった。
Macの炭水化物アセチル-アクセプター基質に対する基質優先性(substrate pr
eference)を、「酵素濃度および活性の測定」に記載の手順に従って種々の炭水
化物(50および100mM濃度で使用)のアセチル化の初速度を測定することにより
研究した。結果を表1、2、および3に示す。試験した単糖の中でグルコースが
最良の基質であり、そして試験した二糖の中でマルトースおよびイソマルトース
が最良の基質であった。
表1.アセチル-アクセプターとしての種々の単糖に対するMacの相対活性の比較
。表2.アセチル-アクセプターとしての種々の二糖に対するMacの相対活性の比較
。
表3.アセチル-アクセプターとしての種々のマルトオリゴ糖に対するMacの相対
活性の比較。
反応速度研究
Mac触媒性アセチル化反応の反応速度研究は、Kmが、アクセプター基質に対し
てはmMの範囲にあり、一方アセチル-補酵素Aに対してはμMの範囲にあることを
明らかにした。従って、Macは、アクセプターに対してよりもアセチル-補酵素A
に対して約1000倍高い親和性を有する。
NMR研究
Macによるグルコースおよびマルトースのアセチル化の産物のIH-NMR構造決定
を研究した。
アクセプター基質のアセチル化部位に関してMacの基質位置特異性を研究する
ために、本発明者らは、ミリグラム量のアセチル化グルコースおよびマルトース
を、10mgのグルコースまたはマルトースをE.coli Macおよび1mgのアセチル-補
酵素Aと、pH7.5のリン酸緩衝液中48時間インキュベートすることにより、調製
した。1mgのアセチル-補酵素Aのさらなるアリコートをインキュベーションの
間に添加した。反応産物を薄相クロマトグラフィーにより分離し、そしてアセチ
ル化されたグルコースおよびマルトースをクロマトグラムから単離し、そして凍
結乾燥した。これらのアセチル化された糖の構造を、1H-NMRにより決定した。グ
ルコースはC6位においてのみアセチル化され、そしてマルトースはその非還元グ
ルコース部分のC6位においてアセチル化された。これらの結果は、Macがヘキソ
ースをそのC6位においてアセチル化することを明らかにする。
E.coliにおけるSBE-Mac融合体の活性
下記のpMAC9およびpMAC10におけるSBE-Mac融合体の27アミノ酸SBE部分が、ア
セチルトランスフェラーゼ活性を妨害し得るので、融合酵素をE.coliにおいて過
剰発現させ、そして活性を分析するために、SBE-Mac融合体をE.coli発現ベクタ
ーpAL781(Invitrogene,San Diego,USA)中に挿入した。高度に過剰発現させ
たSBE-Mac融合体および精製野生型Mac酵素のSDSゲルでの比較は、融合体が27ア
ミノ酸延長に起因してわずかによりゆっくりと移動したことを示した。さらに、
融合体は、マルトースをアセチル化のために使用する能力を維持した。従って、
融合酵素はインタクトであるようであり、そしてE.coliにおいて完全に活性であ
る。それゆえ、SBE-Mac融合酵素はジャガイモ中で活性であることが予想され得
る。
ジャガイモにおけるデンプンのインビボ修飾
ジャガイモ形質転換についての一般的な教示は、本発明者らの同時係属特許出
願PCT/EP96/03053、PCT/EP96/03052、およびPCT/EP94/01082(その各々の内容は
本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。
本研究のために、以下のプロトコルを採用した。ジャガイモにおけるE.coli mac遺伝子の発現のためのプラスミドの構築。
E.coli mac遺伝子を以下のプライマーおよびテンプレートとしてのpMAC3を用
いて増幅した:
5'-CGG GAT CCG AGC ACA GAA AAA GAA AAG ATG-3'(BamHI部位を有する上方プラ
イマー)
および
5'-AAC TGC AGA TTT TGC ATA ACA GTT GC-3'(pstI部位を有する下方プライマー
)。
PCR産物をBamHIおよびPstIで消化し、そして同じ酵素で消化したpBETP5(PCT
特許出願第WO 94/24292号(その内容は、本明細書中に参考として援用される)
を参照のこと)中に挿入して、pMAC8を得た。それにより、mac遺伝子を、パタチ
ンプロモーター由来の塊茎特異的発現およびCaMV 35Sターミネーターにおける転
写終結を提供する発現カセット中に挿入する。さらに、Mac酵素を、75アミノ酸
運搬ペプチド(transit peptide)(これは、mac遺伝子産物をジャガイモ塊茎ア
ミロプラストに指向させる)を含むジャガイモデンプン枝つくり酵素のN末端の
102アミノ酸に融合する。アミロプラストへの輸送に際して75アミノ酸運搬ペプ
チドは切断されて、成熟デンプン枝つくり酵素N末端由来の27アミノ酸を有する
Mac融合タンパク質を与える。2294bp EcoRI発現カセットをpMAC8から単離し、そ
して植物形質転換ベクターpVictor IV Man(PCT特許出願第WO 94/24292号およ
び英国特許出願第951443.8号(その各々の内容は、本明細書中に参考として援用
される)を参照のこと)のEcoRI部位中に挿入して、プラスミドpMAC9およびpMAC
10(それぞれ、図9および図10)を与えた。
ジャガイモミニ塊茎(minituber)の調製
小節(nodium)を含むセグメント(すなわち、小節の2mm上および5mm下から採
取したセグメント)を、インビトロ成長ジャガイモ植物またはマンノース選択シ
ュートから切断した(マンノース選択については、本発明者らの以前の特許出願
第WO 93/05163号および/または第WO 94/20627号を参照のこと)。葉を小節セグ
メントから除去し、そしてこのセグメントを、60gスクロース/lおよび2mg 6-ベ
ンジル-アミノプリン/lを補充したMS培地(Sigma)を含む寒天プレート上に垂直
に置いた。小節セグメントを7日間20℃で、16時間の照射期間および8時間の暗
期間を有して成長させた。その後、プレートをアルミホイル中に包み、そして暗
所に20℃で置いた。ミニ塊茎を約28日後に回収し、そしてMac発現を検出するた
めに、ウエスタン分析に供した。
ジャガイモミニ塊茎におけるSBE-Mac融合体の発現
pMAC9またはpMAC10構築物で形質転換したジャガイモミニ塊茎を、ウエスタン
分析により、E.coli mac遺伝子の発現について、E.coli マルトースアセチルト
ランスフェラーゼに対して惹起された抗体を用いて検討した。分析は、5つのMA
C9ミニ塊茎のうち3つおよび7つのMAC10ミニ塊茎のうち5つが、E.coliマルト
ースアセチルトランスフェラーゼの明瞭な発現を与えたことを明らかに実証した
。陽性のミニ塊茎は、E.coliにおいて発現された類似の構築と共移動する(co-m
igrate)209アミノ酸SBE-Mac融合体を発現した。これらの結果は、75アミノ酸SB
E運搬ペプチド(これは、もとは209アミノ酸SBE-Mac融合体に融合されていた)
が、SBE-融合体から除去されていることを示す。さらに、このことは、運搬ペプ
チドがアミロプラスト膜中のシグナルペプチダーゼにより正確にプロセシングさ
れたこと、およびSBE-Mac融合体がアミロプラストに指向されたことを意味する
。
ジャガイモ塊茎抽出物に対するイムノブロット
0.5mlのジャガイモタンパク質抽出物を、20%TCAで30分間氷上で沈殿させた。
タンパク質沈殿物を遠心分離後に回収し、そして50μlのSDS-PAGEサンプル緩衝
液中に再懸濁した。その後、25μlを15%ポリアクリルアミドゲルにロードした
。電気泳動後、タンパク質をProblotPVDFメンブレン上にセミドライブロッティ
ングにより移した。免疫検出のために、Mac抗血清を1:2000希釈し、そして二
次抗体をアルカリホスファターゼにカップリングした。
上記のミニ塊茎のウエスタンブロット分析と同様に、トランスジェニック塊茎
のウエスタン分析は、209 a SBE-Mac融合体が塊茎中で発現されることを明らか
に実証した。
Mac活性についてのジャガイモ塊茎の分析
匹敵する大きさのジャガイモ塊茎を選択し、そして断片に切断し、そして抽出
緩衝液およびDowex(1%、w/vol)中で、乳鉢および乳棒または電動ブレンダー
を使用してホモジナイズした。5mlの抽出緩衝液(50mMリン酸カリウム(pH7.5
)、2mM EDTA、0.5mM PMSF)をジャガイモ1グラムあたり使用した。混合物を
氷上で30分間放置し、そして不溶性物質を遠心分離により除去した。タンパク質
濃度をBCA試薬(Pierce)を使用して測定した。
Mac活性を、二連または三連で、以下のように測定した:0、50、100、または
200μlのジャガイモ抽出物、10μlの1mMアセチル-補酵素A、25μlの1Mグル
コースおよびアッセイ緩衝液(50mMリン酸カリウム、2mM EDTA(pH7.5))を1
マイクロタイタープレートウェルあたり混合して、250μlの総容量を得た。反応
を、アセチル-補酵素Aの添加により開始した。室温での10分間の反応後、25μl
の新鮮に作製した4mM DTNBを添加し、そしてA405をすぐに測定した。各々の単一
のアッセイについて2つのウェルを調製し、1つはグルコースを含みそして1つ
は含まなかった。活性を、グルコースを含むウェルの吸光度からグルコースを含
まないウェルの吸光度(バックグラウンド吸光度)を差し引くことにより算出し
た。
比較的高レベルのMac活性が、9つのトランスジェニック塊茎のうち8つにお
いて測定され得た。塊茎のいくつかは、非形質転換塊茎において見出されるほと
んど無視できる活性より15〜20倍高いMac活性を有した。
粘度法研究
非形質転換塊茎および本発明による形質転換ジャガイモから得たデンプンのサ
ンプルを、Newport Scientific Rapid Visco Analyser 3Cを使用する水性懸濁物
のビスコアミログラフ(viscoamylograph)により分析した。結果は、形質転換
ジャガイモ由来のデンプンが、非形質転換ジャガイモ由来のデンプンとは異なる
粘度法プロフィールを有することを示した。
DSC研究
非形質転換ジャガイモの塊茎および本発明による形質転換ジャガイモから得た
デンプンのサンプルを、示差走査熱量測定(differential scanning colometry
)(10%w/w水性デンプン懸濁物を使用する)により分析した。サンプルを20℃
から100℃に1分あたり10℃の速度で加熱した。結果は、形質転換ジャガイモ由
来のデンプンが、非形質転換ジャガイモ由来のデンプンとは異なるエンタルピー
を有することを示した。本発明者らは、さらに、非形質転換ジャガイモ由来のデ
ンプンに比較して、形質転換ジャガイモについてのゼラチン化温度の差異を見出
した。
本発明のその他の改変は、当業者に明らかとなる。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ
,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU
,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,
CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,G
B,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE,KG
,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,
LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,N
O,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG
,SI,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,
US,UZ,VN,YU
(72)発明者 ポールセン,ピーター
デンマーク国 コペンハーゲン ケイ デ
ィーケイ―1001,ピー.オー.ボックス
17,ランゲブロガード 1,ダニスコ エ
イ/エス内
(72)発明者 マルカッセン,ヤン
デンマーク国 コペンハーゲン ケイ デ
ィーケイ―1001,ピー.オー.ボックス
17,ランゲブロガード 1,ダニスコ エ
イ/エス内
(72)発明者 オクセンバル,スザンヌ
デンマーク国 コペンハーゲン ケイ デ
ィーケイ―1001,ピー.オー.ボックス
17,ランゲブロガード 1,ダニスコ エ
イ/エス内