【発明の詳細な説明】
治療方法
本発明は宿主哺乳類の疾病症状に対する防御機構を高用量インターフェロンを
口腔粘膜を介して投与することによって刺激する方法を提供する。詳細には、本
発明は自己免疫疾患、腫瘍形成性疾患、神経変性疾患、寄生虫性およびウイルス
性疾患の治療方法として適用し得る。背景技術
-α−インターフェロン類はヘアリー細胞白血病などの血液性癌、慢性骨髄性白
血病、低級リンパ腫、皮膚T−細胞白血病、および固形腫瘍例えば腎細胞腫、メ
ラノーマ、癌性腫瘍、およびエイズ関連カポジ肉腫などの治療に広く使われてい
る(Gutterman,J.U.,Proc.Natul.Acad.Sci.USA,1994 91:1198-1205)。インタ
ーフェロンによる抗腫瘍作用は通常高用量投与の場合に認められ、しばしば数千
万ユニットオーダーのインターフェロン-α(IFN-α)が非経口投与される。イ
ンターフェロン−β(IFN-β)は再発-緩解を繰り返す多発性硬化症及び慢性ウイ
ルス性B型およびC型肝炎に対する臨床使用が認められている。
インターフェロン-αおよびインターフェロン-βは共にタイプIインターフェ
ロンである。タイプIインターフェロンは天然のサイトカインの大きなクラスで
あり、このクラスにはIFN-αプラスIFN-β及びIFN-ωの16以上のサブクラスを含
有する。タイプIインターフェロンは単一の細胞表面レセプターに結合し、最終
的に抗ウイルス、抗増殖及び、サイトカイン誘導およびHLAクラスI及びクラスII
制御のごとき他の免疫調節作用を示す複雑な一連の信号伝達系を刺激する(Pestk
aら、Annu.Rev.Biochem.,1987 56:727)。タイプIIFNの個々のサブタイプに
よって活性は異なる。各部位において最も頻繁に観察されるアミノ酸を多数のIF
N-αの対立サブタイプのスキャンによって決定し、コンセンサス配列を有する合
成タイプIIFNが合成されている(Altonら、"The Bio1ogy of the Interferon Sy
stem")E de MaeyerとH.Schellkens編集、Elsevier社(1983)1991-128)。このコ
ンセンサスインターフェロンは市販されており(インフ
ェルゲン(Infergen)Amgen,Inc.)、最近、IFN-α2aまたはIFN-α2aより高い活性
(w/w)を有することが明らかとなった。コンセンサスIFNは臨床的には天然の個々
のIFNサブタイプよりも優れているであろうと示唆されている(Blattら、J.Inter
feron and Cytokine Research,1996 16:489-499)。
静脈内、皮下、筋肉内、局所および病巣内投与など、数多くの投与経路がタイ
プIインターフェロンの投与に採用されているが、経口投与は一般には用いられ
ていない。というのは、インターフェロンはタンパク質分解酵素によって不活性
化され、またそのままでは消化管から吸収されにくいと考えられているタンパク
質であるからである。実際、経口投与した後、血中インターフェロンが検出され
ないという報告が数多くある(CantellとPyhala,J.Gen.Virol.,1973 20:97-
104; Willsら、J.IFN Res.,1984 4:399-409; Gilsonら、J.IFN Res.,19855:40
3-408)。
最高の治療効果を得るためには、可能な限りの高用量のインターフェロンを使
用するべきであると広く考えられている。しかしながら、組替え体が入手できる
ため、高用量投与は可能であるものの、実際にはインターフェロン投与による副
作用によって用量および投与期間が厳しく制限されている。副作用は、重篤な倦
怠感、うつ、などで、いくつかの症例では自殺まで引き起こすものである。最近
ホーフネーグルによってニューイングランドジャーナルオブメディシン誌にこれ
らの問題がまとめられた(Hoofnagle,J.H.とLau,D,New.Eng.J.Medicine 1996334
:1470-1471)。B型肝炎e抗原陽性慢性B型肝炎患者におけるインターフェロン-
αの効果のメタ-分析によれば、典型的慢性B型肝炎患者に対して五百万IUを毎
日、または1千万IUを週に3回、3から6ヶ月間投与した患者における緩解率が25か
ら40%であった。この結果は、ポリメラーゼ連鎖反応にて試験すれば試験したほ
とんどの患者が依然として肝炎表面抗原陽性、潜伏ウイルスDNA陽性であり治
癒したとはいえない。さらに、このインターフェロンの用量はほとんど耐容性が
なく、10%から40%の患者は耐えられない副作用のために用量を落とす必要があ
る。耐容性の確立された用量である一日百万IUでは、緩解率は17%のみである(P
errilloら、New Eng.J.Medicine,1990 323:295-3)。慢性C型肝炎の患者に対し
ては、持続した長期の緩解がHCV RNAの減少と共に生じるが、この緩解は3百
万IUを週に3回6ヶ月間投与した患者のうちの10から20%にのみ認められる
(Hoofnag1eとLau、前掲)。ガン患者においては、通常インターフェロン-αの最
も高い耐容性濃度を投与した場合にのみ、有意な応答率が認められる。即ち、例
えば多発性骨髄腫の患者においては、二千万から三千万IUを毎日投与した患者で
は50%の応答率が得られるが、三百万IUを投与した患者ではたった15ないし20%
の応答率が得られるのみである。しかしながら、短期間を超えて高用量の投与に
耐え得る患者は非常に少ない(Ahreら、Eur.J.Hematol.,1988 41:123-130)。当
業者においては、高用量のインターフェロンを重篤な副作用を生じさせることな
く投与する方法に対するニーズがある。
経鼻スプレーまたは経口液体製剤として低用量インターフェロンを投与する、
低用量インターフェロンの様々なウイルス疾患、特にインフルエンザに対する有
用性に関する数多くの裏づけのない報告がある。しかしながら、これらの報告の
ほとんどにおいて、インターフェロン製剤は比較的粗製である。ライノウイルス
感染の治療のため、比較的高用量の鼻腔内インターフェロン投与のプラセボ対照
試験の報告によれば、治療は有効であったものの副作用の重大な影響があった(H
aydenら、J.Infect.Dis.,1983 148:914-921)。同様に、2つの無作為二重盲検臨
床試験を含む数多くの研究がなされているが、鼻腔内投与した高用量組替えイン
ターフェロンーα2には、ライノウイルス感染に暴露された対象を保護するとい
う全身作用は認められなかった(Douglasら、New Engl.J.Med.,1986 314:65-80;H
ydenら、New Engl.J.Med.,1986 314:71-75)。
より最近では、一連の特許明細書には異種由来のインターフェロンをウシの感
染性鼻気管炎(シッピングフィーバー)の治療、およびネコの白血病の治療のた
め、他の治療たとえばワクチンの有効性の向上のため、食餌療法の効果の向上の
ため、そしてウシタイレリア感染症の予防のために経口投与することが開示され
ている。それぞれ米国特許第4,462,985号、オーストラリア特許第608519号、オ
ーストラリア特許第583332号および米国特許5,215,741号を参照されたい。さら
に米国特許第5,017,371号にはインターフェロンを、癌化学療法および放射線摩
法の副作用の軽減のために、この経路で用いることが開示されている。これらの
明細書において、使用されているインターフェロンはキャンテル(Cantell)の
方法によって調製されたヒトインターフェロン-αであって、リン酸緩衝生理塩
水溶液として体重1ポンドあたり0.01から5IUの量が投与されている。これらの明
細書はかかる低用量のインターフェロンを口腔粘膜に、好ましくは口腔粘膜との
接触時間を延長し得る製剤にて投与することが、癌を含む広範囲の疾患の治療に
有用であり得ることを示唆するが、シッピング熱、ネコ白血病、イヌパルボウイ
ルスおよびタイレリア症以外の症状に対しての試験結果はその大部分が裏付けの
無いものであった。特に、ヒト癌のいかなる動物モデルにおいても、癌を実質的
に制御し得ることを示す試験はなかった。
低容量インターフェロンの経口または口腔咽頭粘膜投与の効果についてのさら
に最近の研究の総説が出されている(Bocci..Clin.Pharmacokinet.,1991 21:411-
417;Critic.Rev.Therap.Drug Carrier Systems,1992 9:91-133; Cummins Georgi
ades,Archivum Immun.Therap.Exp.,1993 41:169-172)。このような療法は特
に、HIV感染の治療に有用であり、そしてAIDS患者に対して、少なくともその生
活の質(quality of life)を向上させることができると提案されている(Kaiserら
、AIDS,1992 6:563-569; Koechら、Mol.Biol.Ther.,1990 2:91-95)。しかし
ながら、他の報告では、かかる治療は何ら臨床上の効果を示さないことを指摘し
ている。低容量のインターフェロンを含有する経口トローチをB型肝炎の治療に
用いるための第I相試験についても報告されている(Zielinskaら、Archiv.Immu
nol.Therap.Exp.,1993 41:241-252)。
これに対して、ブリハムとウイメンズホスピタルによる国際特許公開第WO95/2
7499は、抗原を誘導する前にインターフェロン-βを消化管に挿管することによ
って投与すれば、I型糖尿病、多発性硬化症、自己免疫性関節炎のごとき自己免
疫疾患の進行を最低でも一部押さえることができることを、よく知られた動物モ
デルを用いて報告している。インターフェロン-βをこの経路または腹腔内に、
消化管内の「傍観(bystander)」抗原と共に投与することは、耐容性を誘導する
のに、かなり効果的である。このことは、インターフェロン-βが外因性の抗原
に対する液性及び細胞性応答を誘導するよりむしろ、経口投与の耐性の誘導を向
上させるのに有用であることを示唆する。
オーストラリア仮特許出願PN9765号において、低容量のインターフェロンを口
腔咽頭洞内に、口腔粘膜を介して投与することが、高転移性腫瘍を移植したマウ
スを保護するのに有用であることを開示した。これらの結果の示す非常に例外的
な性質は、このような非常に攻撃的な腫瘍に対する効果を示す物質がほとんどな
いということと相俟って、インターフェロンの口腔咽頭洞への投与が癌の治療に
有用であることを示すものである。インターフェロンの低容量口腔粘膜投与はま
た、通常,その感染により中枢神経系の関与及び脳炎に特徴付られる迅速に進行
する致死疾患が誘導される脳心筋炎ウイルス(EMCV)を腹腔内投与したマウ
スの治療に対しても有用であった。この系は抗ウイルス活性を調べるための非常
に厳しい試験であるにもかかわらず、インターフェロンの経口腔粘膜投与は腹腔
内投与に匹敵する有用性を示すものであった。発明の開示
本発明は、非経口投与した際に病的応答を誘導する用量より高い用量のインタ
ーフェロンを口腔粘膜を介して投与することによって、宿主哺乳類の防御機構を
刺激するための方法を提供する。この用量は、ヒトへのホモロガスなインターフ
ェロンαの投与では一般に20×106IUである。他のインターフェロンの、非経口
投与にて病的応答を誘導する量は、このインターフェロン-αの場合と異なるか
もしれない。
本発明のひとつの見方において、本発明は、哺乳類の免疫応答を該哺乳類に免
疫刺激量のインターフェロンを口腔粘膜を介して投与することによる免疫応答増
強方法に関し、この量は同じインターフェロンを非経口投与にて投与した場合に
病的応答を誘導する量を超える量である。
または、本発明はインターフェロンを口腔粘膜を介して投与することによって
、インターフェロンの治療係数を向上させる方法に関する。
口腔粘膜投与としては、有効用量のインターフェロンを一回量として投与して
も、一回量投与による免疫刺激と同等の刺激を生じさせるのに十分なよう、小用
量のものを複数回に分けて投与してもよい。同様に、インターフェロンの有効量
をある一定期間持続的に投与して、一回量投与で得られるのと同等の効果を得て
もよい。
この観点から、本発明は自己免疫疾患、マイコバクテリウムによる疾患、神経
変性疾患、腫瘍形成疾患およびウイルス感染を、インターフェロンの有効量を口
腔粘膜を介して哺乳類に投与することによって治療する方法を提供する。ここで
該有効量は同じインターフェロンを非経口投与した場合に病的応答を誘導する量
である。特に、本発明は関節炎、I型糖尿病、ループス性および多発性硬化症、
、癩病及び結核などのマイコバクテリアによる疾患、海綿状脳炎およびクロイツ
フェルド-ヤーコブ病などの神経変性不全症、マラリアのごとき寄生虫による疾
患および子宮頸癌、生殖器ヘルペス、B型およびC型肝炎、HIV、HPV、HS
V−1および2のごときウイルス性疾患の治療方法を提供する。
本発明はさらに、多発性骨髄腫、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄性白血病、低
級リンパ腫、皮膚T−細胞リンパ腫、癌性腫瘍、子宮頸癌、カポジ肉腫を含む肉
腫、腎腫瘍、腎臓細胞癌を含む癌腫、肝細胞癌、鼻咽頭癌、血液性悪性疾患、直
腸癌、膠芽腫、喉頭パピローマ、肺癌、大腸癌、および、悪性メラノーマおよび
悪性脳腫瘍を含む脳腫瘍の治療方法も提供する。ひとつの態様においては、本発
明は一般に非ウイルス性腫瘍の治療に有用である。
他の態様において、本発明は少なくとも1種のインターフェロンの治療有効量
と薬学的に許容される担体を含有する口腔粘膜投与のための医薬組成物を提供す
る。ここで、治療有効量とは、非経口投与にて同じインターフェロンを投与した
場合に病的応答を惹起する量を超える量である。この組成物は溶液、錠剤、トロ
ーチ剤、ゲル、シロップ、ペーストまたは口腔粘膜分配系徐放性製剤であり得る
。組成物は任意に緩衝剤、安定化剤、濃厚化剤、吸収および粘性増強剤などを含
んでいてもよい。
ひとつの態様において、本発明の医薬組成物は約20×106IUから約1000×106IU
のインターフェロン、好ましくは約20×106IUから約500×106IUのインターフェ
ロン、もっとも好ましくは約50×106IUから約500×106IUのインターフェロンを
含有する1用量単位として提供される。
本発明の方法は、単独の治療手段として、または化学療法もしくは放射線療法
との併用療法として、あるいはインターロイキン2,12または15などの他のサイ
トカイン類、もしくはIFN-インデューサーと共に投与して実施してもよい。
本発明の方法は、インターフェロンーα、β、γ、ωおよびコンセンサスイン
ターフェロンから選択されるタイプIまたはタイプIIのインターフェロンを用
いて行えばよいが、最も好ましいのは組替インターフェロン-αである。発明の詳細な説明
以下の定義および実施例は本発明の説明のため、参考にのみ用いられる。本明
細書において言及した特許および文献は、本明細書に明示的に含まれる。
定義
本明細書において、「インターフェロン」はタイプIまたはタイプIIのイン
ターフェロンであり、一般にはインターフェロン-α、β、γ、ωと名づけられ
るもの、およびその混合物を含み、さらにコンセンサス配列も含む。インターフ
ェロンは、広く市販のものが入手可能であり、数多くの適応症が承認されている
。インターフェロンは天然由来のものであってもよいが、遺伝子組替えによる製
品がより好ましい。本明細書において、「インターフェロン」の語にはさらにイ
ンターフェロン活性を有するポリペプチドフラグメント、および例えば安定性向
上等を目的として配列の改変が導入されたキメラあるいは変異体であって、本来
の性質を維持しているもの(例えば米国特許第5,582,824号、第5,593,667号、お
よび第5,594,107号参照)も含まれる。
「高用量」という用語は、インターフェロンが静脈内または腹腔内のごとき非
経口投与にて投与された際に、通常耐容性である最大用量を超える量を意味する
。現在のところこの用量は、体重70kgの成人に対するホモロガスなインターフェ
ロン-αでは、約20×106IUを超える量である。好ましくは、約30×106IUを超え
る量のインターフェロンである。本発明の特に好ましい態様においては、総用量
が約50×106IUから約1000×106IU、もっと好ましくは約50×106IUから約500×106
IUである。本明細書で用いられる「高用量」の語は、口腔粘膜経路で投与した
場合には治療有効量であるが、非経口投与した場合には病的応答を示す量である
。この病的応答は、許容できない副作用の発生あるいは毒性を示す指標の発現の
いずれであってもよい。高用量は、個々の患者の感受性、大きさ、体重及び年齢
、治療しようとする症状の重篤度とその性質、どのインターフェロンを使用する
か、および投与のビヒクルなどに依存して変化するため必然的にその定義は流動
的である。特定のインターフェロンを用いて患者を治療する医者は、当該患者に
最適
の用量を容易に決定することができるであろう。
インターフェロンを投与する際、任意にインターフェロン合成及び放出のイン
デューサーを投与してもよい。インデューサーはインターフェロンと同時に投与
しても別に投与してもよい。インターフェロンのインデューサーには例えばポリ
I:Cなどのポリヌクレオチドが含まれ、好ましくは低分子量の経口投与し得る
インターフェロンインデューサーが用いられる。好ましいインデューサーは当業
者に知られており、例えばティロロン(Tilorone)(米国特許第3,592,819号;Albr
echtら、J.Med.Chem.1974 17:1150-1156)およびキノロン誘導体イミキモド(Imiq
uimod)(Savageら、Brit.J.Cancer.,1996 74:1482-1486)が挙げられる。
本発明の方法および組成物は、特定の症状の治療のための任意に1または複数
の他の治療法と併用してもよく、治療に関与する医師もしくは獣医師はかかる他
の治療法を状況によって適当に選択すればよい。
本発明の一態様においては、インターフェロンを上述のごとく投与することを
含む、哺乳類の腫瘍形成性疾患の治療のための方法を提供する。腫瘍形成性疾患
は、転移性腫瘍であってもよい。
本発明の方法は、他の剤と併用せずに行うことができるが、本発明のこの態様
においては、以下の状況で用いることが特に好ましい:
a)アジュバント療法として、通常のプロトコルによる外科治療、化学療法ま
たは放射線療法に続いて行う、
b)インターフェロン感受性腫瘍形成性疾患の治療のため、本発明の方法を単
独または従来の化学療法もしくは放射線療法と併用して用いる、
c)インターフェロン抵抗性腫瘍形成性疾患に対しては、本発明の方法を単独
またはもっとも好ましくは従来の化学療法もしくは放射線療法と併用して用いる
。
上記の方法は、疾患の緩解の誘導および/またはその維持のためのものである
。「他の治療と組み合わせて」という表現は、インターフェロンを放射線療法ま
たは他の化学療法の前、その最中および/または後に投与することを意味する。
もっとも適当なプロトコルは以下に記載するごとき各種要因に依存する。
特に本発明の方法は、細胞増殖抑制薬を用いる化学療法、1または複数の他の
サイトカイン類であってインターフェロンとは作用機構の異なる抗癌性を有する
もの、抗−血管新生剤、およびインターフェロンの活性を増強する処理からなる
群から選択される少なくとも1の他の療法と共に行うことが意図されている。好
ましい第2のサイトカインはインターロイキン−1(IL-1)、インターロイキン-2(I
L-2)、インターロイキン−12(IL-12)またはインターロイキン−15(IL-15)で
あり、好ましい抗−血管新生剤はAGM-1470であり、好ましいインターフェロ
ン活性の増強は、高熱誘導もしくはアルギニンブチレートによって行うことであ
る。
本発明のインターフェロンの投与と併用する好ましい細胞増殖抑制剤は、シク
ロフォスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU;N,N−
ビス(2−クロロエチル)−N−ニトロソウレア)、メソトレキサート、アドリアマ
イシン−α−ジスルフォロメチルオルニチンおよび5−フルオロウラシルである
が,これらに限定されない。
本発明の方法の対象となりうる腫瘍形成性疾患には、高用量のIFN-αの非経口
投与に応答する癌、血液性癌、例えば多発性骨髄腫、ヘアリー細胞白血病、また
は慢性骨髄性白血病など、低級リンパ腫、皮膚T−細胞リンパ腫、および固形腫
瘍例えば腎細胞腫、メラノーマ、癌性腫瘍、またはエイズ関連カポジ肉腫が含ま
れるが、これらに限定はされない。特に非ウイルス性悪性腫瘍に有用である。ウ
イルス性疾患はライノウイルス、インフルエンザ、ヘルペス性水痘、ヘルペス性
帯状痘疹、デング熱または、はしかウイルス脳炎、マリーバレー脳炎、日本脳炎
B型、ダニ脳炎、及びヘルペス性脳炎を含む;エボラウイルス、マールブルグ病
ウイルス、ラッサ熱、及びウマはしかウイルスのごとき他の動物からヒトへと感
染すると考えられているウイルスの感染などが含まれる。これらの症状の多くは
、治療法および/またはワクチンが現在無いものであり、考えられている治療で
は不適当である疾患である。または、ウイルス性疾患は例えばB型肝炎、C型肝炎
、D型肝炎または他のウイルス性肝炎、およびCMV、HIV、HPV、HSV IおよびIIに
依る感染症のごときウイルスによって生じた慢性感染症であってもよい。B型肝
炎およびC型肝炎は現在、インターフェロンの腹腔内投与にて治療されている。
エイズへ推移するHIV感染に対する、長期インターフェロン治療に付いては、臨
床試験中である。
本発明の第2の態様で治療され得る疾患はマラリアであり、再びタイプIまたは
IIインターフェロンを上記と同様にして投与する。マラリアの原因となる生物体
は、プラスモディウム・マラリア(Plasmodium malarjae)、プラスモディウム・
ヴィヴァックス(Plasmodium vivax)、プラスモディウム・ファルシパルム(Plasm
odium falciparum)またはプラスモディウム・オバール(P1asmodium ovale)であ
り得る。本発明の方法は特に、マラリアが大脳へ進行するのを防止する方法を意
図している。
本発明の第3の態様ではHIV、リューマチ性関節炎および多発性硬化症のごとき
自己免疫不全であって、悪化と緩解を繰り返すか、また慢性に進行する、あるい
はエイズのごとき免疫不全に対する治療方法を提供する。
さらに、本発明の方法および投与処方は他の治療とともに用いてもよい。例え
ば、ヘルペスウイルス感染には、アシクロビルまたはガンシクロビルを用い得る
。HIV感染に対しては、アジドチンミジン(ジドブジン)または1または複数の他
のHIV逆転写酵素阻害剤、および/またはHIVプロテアーゼ阻害剤を用い得る。
本発明の医薬組成物を調製する際には、当業者には明らかであるIFNのための
広範囲の媒体および賦形剤を用いることができる。代表的な製剤の方法は、レミ
ントン「ザサイエンスアンドプラクティスオブファーマシー(The Science and Pr
actice of Pharmacy)第19版、マックパブリッシング社、アメリカ合衆国ペンシ
ルバニア州イーストン1995年およびこの前の版に開示されている。米国特許第4,
496,357号に記載のごとく、本発明のIFN製剤にはグリシンまたはアラニンのごと
き安定化増強剤を添加してもよく、及び/または1または複数の担体、例えば担体
タンパク質を添加してもよい。例えば、ヒトの治療のためには、医薬グレードの
ヒト血清アルブミンが、任意に希釈剤としてのリン酸緩液と共に通常用いられる
。ヒトIFNのための賦形剤をヒト血清アルブミンとする場合には、ヒト血清アル
ブミンはヒトの血清由来のものであっても、組替により得られるものであっても
よい。通常、血清アルブミンを用いる場合には、同種由来のものが用いられる。
IFNはIFNが投与対象の口腔粘膜洞と接触するようないずれかの方法で投与すれ
ばよい。すなわち本発明はいかなる特定の製剤にも限定されるものでないことが
理解されなくてはならない。本明細書においてIFNを深部口腔粘膜洞内に投与す
る方法を説明する。これは、液状、固形状、エアロゾル状製剤によっても、また
点鼻剤またはスプレーによっても、達成し得る。従って、本発明は液状、固形状
、シロップ剤、トロ−ーチ剤、頬錠剤、およびネブライザーの処方を含むが、こ
れらに限定はされない。エアロゾルまたはネブライザー処方の場合には、製剤の
粒子サイズが重要であり、当業者は粒子サイズを調節する適当な方法を見出し得
る。
ひとつの態様において、インターフェロンは毎日一回量を投与する。他の態様
においては、インターフェロンはより低い容量のものを複数回投与して、あるい
は一定時間の間持続的に分配させて、高用量の一回量投与と均等な効果を得るよ
うにしてもよい。この持続分配の一例としては、放出遅延あるいは放出調節装置
を咽頭腔内に付着させ、もしくは埋め込み、インターフェロンの高濃度一回量に
匹敵する量を一定期間放出させるようにする方法がある。
インターフェロンの口腔粘膜投与のための代表的な製剤は以下の処方である(
%はw/wを示す):
錠剤:デキストロースBP 45%;ゼラチンBP 30%;小麦デンプンBP11
%;ナトリウムカーメロース(carmellose sodium)BP 5%;卵アルブミンBP
C 4%;ロイシンUSP 3%;プロピレングリコールBP 2%;およびIFN-
α2 50×106IU。この錠剤はそのまま用いて口内でゆっくり溶解させても、水中
に溶解させたものを必要に応じて口中に保持して口腔粘膜と接触させてもよい。
インターフェロンペースト製剤は米国特許第4,675,184号に開示されているご
とく調製すればよい。グリセリン 45%、ナトリウムCMC 2%、クエン酸緩
衝液(pH4.5) 25%,蒸留水 全体を100%とする量、およびIFN-α2 50×106I
U。インターフェロンペーストは、頬粘膜に貼り付ければよい。
同様に、含漱剤またはシロップの場合には所望の量のインターフェロンを市販
のマウスウオッシュもしくは咳止めシロップの処方に加えて調製すればよい。
上記特定の用量の範囲内において、個々の症例における最適な治療は症状、疾
患の段階、先に行った治療、他の継続している治療、対象哺乳類の総合的な健康
状態とインターフェロンに対する感受性などに依存するものである。従って、医
師もしくは獣医師がこれらの状況すべてを考慮して、その裁量により決定すれば
よい。治療期間は当然のことながら治療すべき症状によって異なり、例えば前立
腺癌のごとき成長の遅い癌の治療と、肝細胞癌のごとき急激に成長する癌の治療
の場合とでは異なるコースの治療が採用される。また同様に、エボラウイルス感
染によるような、急性の感染症は、肝炎のような慢性症状の場合と異なる治療コ
ースが採用されるであろう。
本明細書に開示した有効用量は、哺乳類に非経口投与した場合に病的応答を生
じるが、口腔粘膜へ投与した場合には、無毒性もしくは低毒性であってかつ有効
である量である。病的応答は、急性、慢性もしくは累積的なものであり得、白血
球減少などの血液化学的な変化、骨髄の減少、または他の病理パラメーターによ
って見出される。本明細書において、病的応答の語には熱、倦怠あるいは流感様
症状、静脈炎のごとき血管の反応および注射部位の局所炎症反応などの好ましく
ない副作用を含むものとする。かかる応答は患者個々のインターフェロンに対す
る感受性の相違からしても、患者間でかなり異なる。
多くの患者にとって、口腔粘膜投与用量は認可されている非経口投与のプロト
コルにおいて耐容性であると知られている濃度を超える。ある態様においては、
総用量を低用量を時間をかけて複数回投与することによって投与してもよく、ま
たは持続的に分配されるようあるいは脈動的に放出されるよう、口腔粘膜内に接
着もしくは埋め込んだ調節放出装置によって投与してもよい。インターフェロンおよびインターフェロン処方 マウスインターフェロン-α/β
マウスIFN-α/β(Mu IFN-α/β)は、先に開示されているごとくニューカッス
ル病ウイルス(NDV)で誘導した培養C243−3より調製し、精製した(Toveyら
,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.1974 146:809-815)。調製した標品は水泡性口内炎ウ
イルス(VSV)でチャレンジしたマウス929細胞を用いて、以前に開示された
ごとく(Toveyら,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.1974 146:809-815)アッセイした
ところ4×106国際単位(IU)/mlの力価を有しており、5×107IU/mgタンパク質の
特異活性を示した。標品は国立衛生局(NIH)のマウスIFN-α/βの国際基準
試料(G−002−9004-5411)に基づき標準化した。ヒトIFN-α 1−8
組替えヒトIFN-α 1-8(Hu IFN-α1-8;BDBBロット番号CGP35269-1、
チバガイギー、スイス国バーゼル)は先に開示されているごとく(Meisterら、J.G
en.Virol.1986 67:1633−1643)調製及び精製したものである。この研究に用いら
れた標品をVSVでチャレンジした同種ヒトWISH細胞上で既知の方法(Toveyら、
Nature1977 267:455-457))によりアッセイしたところ70×106IU/mlの力価を、
そして異種マウスL929細胞でアッセイしたところ1×106IU/mlの力価を有してい
た。試料はNIHヒトIFN-α国際基準試料(G-023-901-527)およびマウスIFN-α/
β基準試料(G-002-9004-5411)に対して標準化した。このIFN試料の特異活性は2
×108IU/mgタンパク質であった。組替えマウスインターフェロン-α
組替えマウスインターフェロン-αはライフ・テクノロジーズ・インコーポレ
イテッドより購入した。この試験に用いた試料(ロット番号HKK404)はVSV
でチャレンジしたマウスのL929細胞で調べた場合(Toveyら,Proc.Soc.Exp.Bi
ol.Med.1974 146:406-415)6×106IU/mlの力価、特異活性は6×108IU/mgタン
パク質を有していた。組替えマウスインターフェロン
組換えマウスインターフェロンβはR&Dシステムズ・インコーポレイテッド
より購入した。この実験に使用した試料(ロット番号1976-01S)は既知の方法で
VSVにてチャレンジしたマウスL929細胞にて測定した場合(Toveyら,Proc.Soc
.Exp.Biol.Med.1974 146:406-415)、3.2×104IU/mlの力価で、特異活性は8
×106IU/mgタンパク質であった。組替えマウスインターフェロンγ
組替えマウスンターフェロンγはR&Dシステムズ・インコーポレイテッドよ
り購入した。この実験に使用した試料(ロット番号2580-03SA)は既知の方法でV
SVにてチャレンジしたマウスL929細胞にて測定した場合(Toveyら,Proc.Soc.
Exp.Biol.Med.1974 146:406-415)、2×105IU/mlの力価で、特異活性は1×107
IU/mgタンパク質であった。
すべてのインターフェロン試料は、同時に同じアッセイにて力価測定を行い、
米国の国立衛生局のマウスインターフェロン-α/βの基準試料(G-002-9004-
5411)に対して標準化した。
マウスインターフェロン-α/βおよび組替えインターフェロンは投与に先立ち
賦形剤フェリミュン(商標;FerimmuneTM)に溶解して用いた。賦形剤
インターフェロン試料はウシ血清アルブミン(BSA)を含有する、リン酸緩
衝生理塩水または以下に示す賦形剤にて希釈した。ウシ血清アルブミンフラクシ
ョンV(RIAグレード;イムノグロブリン含まず;カタログ番号A7888(米国シ
グマ社)を最終濃度が100μg/mlとなるよう、PBS(pH7.4)にて希釈し、フィル
ターを通して(0.2μ、ミリレックスGV,米国ミリポア社)滅菌した。
明細書に記載した試験において、インターフェロン試料は適当な賦形剤で希釈
して用いた。使用した賦形剤は以下の通り、錠剤(ファルマパシフィック社フェ
リミュン(商標))として提供されるものである。 **:無水物として計算***
:以下の組み合わせである:
デキストロース(グルコース)BP(無水) 44.64%
グルコースBP(デキストラン40注射剤用BPとして) 0.03%
錠剤1個を1.5mlのリン酸緩衝生理塩水に溶解させ、16,000gにて15分間遠心分
離し、そしてろ過滅菌(0.2ミクロン、ミレックス-GV、ミリポア)した後に4℃に
て使用する前まで保存した。賦形剤は使用前に毎日調製した。インターフェロン分配系
予備試験において、5μlのクリスタルバイオレットを正常成体マウスの両鼻腔
へP20エッペンドルフマイクロピペットを用いて投与すれば、ほとんどその直後
に染料が口腔咽頭洞表面の全体に広がることが示された。口腔咽頭洞の染色は、
染料投与約30分後においても依然明白であった。本質的に同じ結果が、125I-標
識化組換えヒトIFN-α1-8を同じ方法で投与した場合にも得られた。従って、以
下の実施例ではこの投与方法を用いた。
本明細書の動物実験の記載において、IFN投与経路に関しての「口腔粘膜」、
「口腔咽頭」または「鼻腔内/経口」または「鼻腔内プラス経口」または「in/or
]の用語は、IFN試料の深部鼻腔洞へ口腔粘膜洞内に迅速に分配されるよう投与す
ることを意味する。すなわち投与対象哺乳類のの口および喉に投与して、その洞
内の粘膜層と接触させるのである。EMCV(脳心筋炎ウイルス)
バッチ:ロット番号095001
有効期限:1997年12月
調製:EMCVのJH株は、マウスL929細胞上で、既知の方法にて増殖させた(Gresse
r I.Bourali C,Thomas MY,Falcoff E.,脳心筋炎ウイルス感染マウスにおけ
る、インターフェロン製剤の繰り返し投与の効果:Proc Soc Exp BiolMed 1968 F
eb;127:491-6)
分析:本試験に用いたウイルスの保存液の力価はマウスL929細胞上で、5×108.6 2
TCID50であった。
保存:保存EMCVは-70℃で保存した。ウイルスタイトレーションの1日目に電源を
切断するのでほぼ同じ温度での保存のバックアップが必要になる。残りの物質は
常に凍結したままを保たせた。ウイルスタイトレーションの+8日に、-70℃のフ
リーザー温度を−60℃にまで上昇させた。希釈したEMCVは使用直前に調製し、氷
上あるいは動物室の冷蔵庫内で使用まで保存した。フレンド赤白血病細胞
フレンド赤白血病細胞(FLC)のIFN-α/β抵抗性クローンである3C18はロ
ーマのアフラブリス博士(E.Affrabris)より入手した。この細胞についてはアフ
ラブリスらにより1982年に詳しく報告されている(Virology,120:441-452)。細
胞をその後、インビボ継代により維持した。簡単に方法を説明する。およそ100L
D50の3C18細胞をDBA/2マウス腹腔内投与(ip)し、1週間後に腫瘍細胞を当該マウ
スの腹腔から回収し、細胞数を数え、他のマウスにふたたび100LD50の3C18細胞
を投与した。この方法を60から100代繰り返した。60代目から100代目の継代した
3C18細胞は、肝臓及び脾臓への転移率が非常に高い事が示されている(Gresserら
、Int.J.Cancer 1987 39:789-792)。IFN抵抗性フェノタイプはインビボ継代し
て得た細胞をその都度インビトロでIFN-α/β存在下で培養して確認した(Belard
elliら,Int.J.Cancer,1982 30:813-820)。L1210R6 クローンおよびEL4移植可能腫瘍
インターフェロン-α/β抵抗性クローンであるL1210リンパ腫細胞のL1210R6
クローンは、われわれの研究所で単離した(Grasserら、1974、インターフェロン
と細胞分化 IXインターフェロン抵抗性L1210細胞:性質と由来J.Nat.Cancer
Inst.,52:553-559)。
EL-4移植可能腫瘍は、化学誘癌物質1−2ジメチルベンズアンセリンを注射した
マウスから誘導した腫瘍に由来する(Gorer,P.A.,Br.J.Cancer4:372-381)。
L1210リンパ腫細胞は特別無菌DBA/2マウスにおいて、インビボで継続的に植
え継いで維持した。
EL4腫瘍は、特別無菌C57BL/6マウスにおいて、インビボで継続的に植え継いで
維持した。B16 メラノーマ
B16メラノーマはC57BL/6マウスから分離された自然発生腫由来の移植可能腫瘍
(Fidler I.J.とKriple,M.L.1977 Science 197,893-897)。B16メラノーマは迅
速に増殖し、高度に未分化であるメラニン生成性の腫瘍であり、主に肺に転移す
る。B16メラノーマは迅速に成長する、高度に攻撃的なヒトの腫瘍のよいモデル
であると考えられている。
B16メラノーマ細胞は特別無菌C57BL/6マウスにおいて、インビボで継続的に植
え継いで維持した。動物
本研究で用いたマウスは特別無菌コロニーで生育されたマウスである(IFFAC
REDO、フランス)。使用マウスは、ヴィレジュー(Villejuif)にあるインス
ティテュートフェデラティフCNRS内の、EEC基準に基づく特別な無菌状態の
部屋で飼育して用いた。インターフェロンバイオアッセイ
インターフェロンのアッセイは常套の方法に基づいて行った。簡単に説明する
と、試料(20μl)を、2%熱非動化ウシ胎児血清(FCS)(フランス、ギブコ社)含有
イーグル最小限必要培地(MEM)(フランス、ギブコ社)80plに希釈して、多チャ
ンネルマイクロピペット(フィンピペット、ラブシステム社 50-300マイクロリ
トル)を用い、マイクロタイタープレート(ファルコン社、カタログ番号3072)
の各ウエルヘ添加した。WISHまたはL929細胞(2×104細胞/ウエル)を2%FCS含
有MEM100μlに希釈し、各ウエルヘ添加し、37℃、空気中のC025%という環境下
にて(フォーミュラ3029 C02インキュベーター)一晩インキュベートした。細胞
をその後10倍の対物レンズを装着したオリンパスIM GLDW倒立顕微鏡にて観
察し、毒性を示す兆候がないかどうかを調べた。検出可能な毒性を示さなかった
試料につき連続的二倍希釈物を調製した。最初の全量200μlの2%FCS含有イーグ
ルMEM培地で1:10希釈しているものから出発し、その100μlを多チャンネルマイ
クロピペットで取り、これを新しい2%FCS含有イーグルMEM培地を各ウエルにつ
き100μl入れておいたマイクロプレートに移した。NIHヒトIFN-α基準試料(G
-023-901-527)およびNIH Mu IFN-α/β基準試料(G-002-9004-5411)をそれぞれ連
続二倍希釈して基準試料も調製した。100μlの2%FCS含有イーグルMEMにWISHも
しくはL929細胞(2×104細胞/ウエル)を分散したものを、各基準試料プレート
に添加して、37℃で一晩、空気中5%CO2という条件下でインキュベートした。細
胞単層を観察して、明らかな毒性が認められるかどうかをチェックし、その後明
らかな毒性の認められなかったものは培養液を吸い取り、100TCID50のVSVを含む
(WISH細胞に対しては2×10-4VSV23、L929細胞に対しては10-5VSV23)FCS含有イ
ーグルMEMに培地を置き換えた。プレートを37℃、5%CO2空気という条件下でさ
らに一晩インキュベートした。ウイルス特異的細胞病理学的影響を細胞単層をオ
リンパスIM ULWD倒立顕微鏡を用いて観察して調べた。インターフェロンの
力価は、ウイルス特異的細胞病理学的影響から50%保護する希釈濃度の逆数から
決定し、国際基準単位/mlとして示した(IU/ml)。実施例1 致死量のEMCV(脳心筋炎ウイルス)を投与したマウスの生存に及ぼす高用量インタ ーフェロンの効果
1,000,10,000IUおよび100,000IUのIFN-αを口腔粘膜経路で投与した場合の効
果を、致死量のEMCVに感染させたオスおよびメスのマウスにおいて調べた。異な
った種類のIFN-αを試験し、その口腔粘膜経路で投与した場合の効果を、腹腔内
投与(ip)した場合の効果と比較した。致死量投与後の生存の観察に加えて、IFN
治療による毒性もまた、様々な臨床化学および病理学パラメータを用いて調べた
。
マウスへ、105IUのIFN-αを口腔粘膜経路で1日1回、4日間投与する治療では
、ウイルス感染後に治療を開始した場合、すべての動物において、完全な保護が
認められた。致死量のEMCV(100LD50)感染後、すべてのウイルス感染非処理動物
は7日目までに死亡したが、100%のIFN投与動物は感染100日後にも生存し、良好
な状態であった。
体重から計算すれば、マウスに105IUを口腔粘膜経路で投与することは、ヒト
では2億4千万IUを投与することと同じになり、この量は今までヒトに投与された
ことのない量である。
マウスに105IUのIFN-αをin/or経路で投与する治療によって、104IUのIFN-α
を投与した場合より、より高度の保護作用が認められたため、さらに高い効果(
より多量のウイルスの感染あるいは腫瘍の負荷に対抗する)がより高い容量のIF
N-αの投与によって得られると考えられる。今まで、用量効果曲線における定常
曲線を認めていない。
我々の結果は、高用量-超高用量のIFNをin/or経路で投与すれば、高度に保護
的な抗ウイルス作用が得られ、そしてこの経路で投与された105IUのIFN-αが使
用した用量のEMCV感染に対して完全な治癒をもたらしたというものである。この
量は、ヒトの体重で換算すれば240×106IUとなり、ヒトに対して現在投与されて
いる量よりはるかに多いものであるにもかかわらず、毒性の臨床、生化学または
血液学的証拠は見出されなかった。これに対して、実際の臨床におけるIFNの非
経口投与の最大耐容量は1日につき20から30×106IUである。実施例2 高転移性腫瘍細胞を移植したマウスに対する、高用量IFN-αの効果
一群10匹、6週令のDBA/2マウスへ105のフレンド赤白血病細胞のインターフェ
ロン抵抗性株3CI8または105のL1210リンパ腫細胞(インターフェロン抵抗性L1210
R細胞)をそれぞれ静脈内に接種した(0日)。接種後、各群のマウスは非処理、105
IUのIFN-α/βを賦形剤にて10μlに調製し、1日2回、20日間投与、あるいは、
10μlの賦形剤単独投与(コントロール)のいずれかの処理を行った。
IFNをin/or経路で投与したうちの50%のマウスが高転移性フレンド赤白血病細
胞を接種した100日後に生存し、良好な状態であった。IFNをin/or経路で投与し
たうちの30%のマウスが、L1210リンパ腫細胞を接種した100日後でも生存し、良
好な状態であった。臨床所見からは、接種100日後に生存したすべてのIFN投与マ
ウスは、殺傷されなければ正常な寿命を生きたであろうことが示唆される。これ
に対して、非処理マウスおよびコントロールのマウスはフレンド赤白血病細胞の
接種後13日までに、そしてL1210リンパ腫細胞接種後14日までに、それぞれ死亡
した。
これらの結果は、高度に有意である、というのは使用した両腫瘍細胞株は高攻
撃性であり、また接種量は、LD50のおよそ20000培に等しい。さらに、フレンド
白血病とL1210リンパ腫はまったく異なる種類の腫瘍であり、フレンド白血病細
胞はレトロウイルスであるフレンド白血病ウイルスを有しているが、L1210リン
パ腫についてはウイルスの関連がまったく知られていない。L1210リンパ腫細胞
を接種した動物に対するin/orIFN-α治療の結果は、このモデルにおいてIFN-α
を全身投与した場合と同等あるいはそれ以上の効果を示している(I.Gresser未発
表の結果)。オーストラリア仮出願第PN9765として開示した我々の先の研究にお
いて、フレンド白血病細胞を接種し、100または1000IUのIFN-αを投与したマウ
スのうちには生存したマウスはおらず、10,000IUを投与したマウスの10-20%の
みが治癒したと考えられる。実施例3 高転移性B16メラノーマ細胞またはEL-4腫瘍細胞を接種したマウスに対する、高 用量IFN-αの効果
1群10匹の6週令のC57BL/6マウスへ105B16メラノーマ細胞または105EL4腫瘍細
胞を接種した。接種後、各群のマウスは非処理、105IUのIFN-α/βを10μlの賦
形剤にて調製し、1日2回、20日間投与、あるいは、10μlの賦形剤単独投与(コン
トロール)のいずれかの処理を行った。
IFNをin/or経路で投与したうちの30%のマウスが高転移性B16メラノーマ細胞
もしくはEL4腫瘍細胞接種100日後に生存し、良好な状態であった。これに対して
、非処理及びコントロールのマウスはB16メラノーマ接種20日後までに、EL4腫瘍
細胞接種22日後までにそれぞれすべて死亡した。臨床所見からは、接種100日後
に生存したすべてのIFN投与マウスは、20日目でインターフェロンによる治療を
終了したのにもかかわらず、殺傷されなければ正常な寿命を生きたであろうこと
が示唆される。100日目にインターフェロン処置マウスを屠殺し、各臓器を病理
学的に調べたところ、腫瘍の痕跡は認められなかった。実施例4 水泡性口内炎ウイルスに対する、インターフェロンの口腔粘膜投与の効果
特別無菌飼育コロニーから得た1群10匹の6週令のマウスへ、100LD50の水泡性
口内炎ウイルス(VSV)(Toveyら、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.,1974 146:406-4
15)を10μlの体積として経鼻感染させた。ウイルス感染7時間後に感染マウスに
対して、無処置、一定量のマウスインターフェロンα/βをフェリミュン賦形剤
で10μl量としたものを口腔粘膜経路で1日1回、4日間投与、同じスケジュールで
の10μlの賦形剤単独投与(コントロール)のいずれかの処置を行った。
成体マウスをマウスインターフェロンα/βにて処置することによって、VSVの
致死量で感染させた動物の生存率に顕著な増加が認められた。即ち、致死量のSV
Sウイルスの感染後10日目に無処置およびコントロールのマウスがすべて死亡し
たという系において、10,000IUのインターフェロンα/βを投与されたうちの30
%の動物が、ウイルス感染後21日目でも生存していた。臨床所見からは、21日目
に生存していたほとんどの動物は、なお生存しつづけることが示唆された。実施例5 細胞タンパク質の発現における口腔粘膜インターフェロンの効果
IFN-αは細胞受容体に結合した後、数多くの細胞タンパク質の発現を誘導する
ことが知られている。これらのタンパク質は、インターフェロンの作用のマーカ
ーとして有用であると考えられている。
われわれは、in/or経路でIFN-αを投与した場合の3種類のIFN誘導タンパク質
、MHCクラスI抗原、Ly6 A/E抗原および2'5'-オリゴアデニル酸合成酵素の発現を
調べた。
ip投与した場合にはたった20IUのMu IFN-αによって末梢血単球および顆粒球
のH-2Kd抗原の発現が顕著に増加する系において、DBA-2マウス(H-2Kd)に対し
、20,000IUまでのMu IFN-αをin/or経路にて投与したが、末梢血リンパ球、単球
もしくは顆粒球上のH-2Kdの発現の有意な増加は認められなかった。実際には、
単球上への発現は少し減少した。
同様に、I型IFNの腹腔内投与によって、リンパ球細胞上のLy6 A/E抗原の発現
は顕著に増強されている(Dumontら、J.Immunol,1986 137:201-210)のであるが
、20,000IUまでのMu IFN-αのin/or経路による投与は、Ly6 A/E抗原の発現に対
して、有意な効果を及ぼさなかった。同様の結果がMu IFN-αもしくはHu IFN-α
1-8の200および20,000IUをin/or経路で投与した場合にも得られた。
スイスまたはDBA/2マウスのいずれにおいても20IUという少量のMu IFN-αを腹
腔内に投与すると、末梢血単核球および脾細胞の両方に顕著な2'5'-オリゴアデ
ニル酸成酵素活性の上昇が認められた。これに対して、同じ試験において、20,0
00 IUまでのMu IFN-αをin/or経路にて投与しても、2'5'-オリゴアデニル酸合成
酵素発現の有意な増加は認められなかった。さらに、Mu IFN-αもしくはHuIFN-
α 1-8の200および20,000IUをin/or経路で投与した場合、IFNの投与開始後10日
間にわたるいずれの時点においても、2'5'-オリゴアデニル酸合成酵素発現の有
意な変化は認められなかった。実施例6 インターフェロンの口腔粘膜投与後の生体利用度
IFNの生体利用度および薬物動態を調べるため、かかる研究に最も適した薬物-
血液量比を有するマウスを用いた。マウスに、一回量の高用量の組替えIFN-αを
投与したが、この際に、可能な限り高い比放射能の125Iで標識したものを用いた
。
精製した70×106IUのHuIFN-α 1-8を1.4mlのPBSに溶解させ、Mogensenら(I
nt.J.Cancer,1981 28:575-582)による、HunterとGreenwood(Nature,1962194:49
5-496)のクロラミン-T法の改良法を用いてヨウ素化した。
ヒトWISH細胞をVSVに暴露したものでは、125I標識Hu IFN-α 1-8(ロット番号C
GP35269-1)は2×107IU/mlの生物活性を示し、L929細胞をVSVに暴露したものでは
1×106IU/mlの活性を示した。
6−7週令のメスのスイスマウスにiv、ipもしくはin/orにて2×107IU、即ち1×
106マウスIUに等しい量の1251Hu IFN-α 1-8(1.0369×107cpm/マウス)を処置し
た。示した時間おいて、各群3匹をマウスを殺し、血液を集め、その量を測定し
た。腎臓、肝臓、肺、脾臓、および胃/食道を取り、水分を吸い取った後に±10
μgの精度にて重量を測定した。各試料の放射活性をγカウンターを用いてそれ
ぞれ測定した。次いで全血を遠心分離(800g×10分、4℃)で分離して、血清を分
取し、計測した後に-80℃にて凍結した。血清は上記のごとくヒトWISH細胞およ
びマウスL929細胞の両方による標準バイオアッセイによってIFN濃度を調べた。
血清試料中の放射活性物質を次いでアフィニティー免疫沈降によって単離させ、
SDS-PAGEにて分析した。
1.0369×107cpm/マウスの125I標識Hu IFN-α 1-8のiv-括投与5分後に、非常に
高レベルの放射活性(>2×106cpm/ml)が動物の末梢血から検出された。全血の放
射活性は15分及び30分の時点では連続的に低下した。1.0369×107cpm/マウスの1 25
I標識Hu IFN-α 1-8のip-括投与5分後に動物の末梢血から検出された放射活性
は、iv一括投与の5分後に検出されたものの約20倍低かった。この場合放射活性
のレベルは注射後15分及び30分において、累進的に増加した。125I標識Hu IFN-
α 1-8のin/or投与後、5、10または15分後に動物の血中に検出される放射活性レ
ベルは、同じ量の放射線標識IFNをip投与した後同じ時間に認められた量より、
有意に低かった。これら3つの経路による投与において、125I標識Hu IFN-α 1-8
のin/or投与後、全血より血清により高いレベルの放射活性が検出された。全血1
ミリリットルあたりの放射活性が、同じ量の血清よりも低いということは、全血
の細胞成分を除けば測定される血清の量が有意に多くなることによる。
すべてのマウスからの血清サンプルにつき、生理活性IFNの存在の有無を、上
記に記載した標準的なバイオアッセイ法を用いて調た。その結果、ivまたはipの
経路で125I標識Hu IFN-α 1-8を投与したすべてのマウスにおいて、計測したい
ずれの時間においても容易に検出し得るレベルのIFNが認められた。これに対し
て、1251標識Hu IFN-α 1-8をip/or投与した群では、血清中に比較的高いレベル
の放射活性が認められたのにもかかわらず、試験を行ったいずれの動物、いずれ
の時間においても生物活性を有するIFNは検出されなかった。
125I標識Hu IFN-α 1-8投与動物の血清から検出された放射活性物質が実際に
本来のIFNの存在を示すものであるかどうかを調べるため、試料をタンパク質A
−Gアガロースを用いて免疫沈降させ、試料中にある免疫グロブリンを沈降させ
るため、アフィニティ-精製ずみポリクローナル抗IFN-α抗体で処理し、さらに
免疫沈降を行った。試料を次いで上記のごとくSDSポリアクリルアミドゲル電
気泳動(SDS−PAGE)にかけた。
125I標識Hu IFN-α 1-8のivまたはip投与の後の血清内の放射活性物質のSD
S−PAGE分析によって、非投与125I標識Hu IFN-α 1-8と同一の電気泳動パ
ターンを示して移動する、単一の均一なバンドが認められた。この物質の見かけ
上の分子量はおよそ20000ダルトンであると測定されたが、これはそのままのHu
IFN-α1-8の分子量に対応する。一方、in/or経路により125I標識Hu IFN-α 1-8
を投与したマウスの血清サンプルにおいては、各ゲルに等量の放射活性物質が検
出されたが、いずれもがIFNと類似の見かけの分子量を有する物質を含有してい
なかった。
放射線標識した物質の臓器分布を調べたところ、125I標識Hu IFN-α 1-8のiv
投与5分後に、非常に高いレベルの活性が腎臓に、高レベル活性が肝臓、肺およ
び脾臓に認められな。これら4つの臓器の放射活性のレベルはそれぞれ、その後1
5分及び30分後には迅速に減少していくのが認められた。これに対して胃の放射
活性レベルは15分及び30分において迅速に増加し、iv一括投与後30分の血清内と
同じレベルにまで達することが認められた。
125I標識Hu IFN-α 1-8のip投与では、調べたすべての臓器において15分以内
に活性がピークに達し、30分では減少した。同様に、125I標識Hu IFN-α 1-8のi
n/or投与の場合でも調べたすべての臓器における放射活性のピークレベルは15
分後に達成され、30分後の測定では放射活性はいくらか減少していた。1251標識
HuIFN-α 1-8をin/or投与した場合の胃/食道における放射活性のレベルは、非経
口投与で臓器にて検出された量より1オーダー多く、同量の放射線標識Hu IFN-
α 1-8をivまたはipのいずれかの経路で投与した場合よりもかなり高いものであ
った。実施例7 鼻腔/口腔に投与したインターフェロンの薬動態学
Hu IFN-α 1-8の精密な動態を調べるため、1.0369×107cpm/マウスの125I標識
Hu IFN-α 1-8をiv、ipまたはin/orにてマウスに投与し、全血および血清の放射
活性のレベルを24時間にわたり、一定時間毎に調べた。
一回のiv一括投与後のマウス血中125I標識Hu IFN-α 1-8の薬動態は、ほぼ対
数カーブに沿ったものであった。これは非常によく似た分子である組換えヒトα
A/D(Bgl)を用いてマウスで行われた先の試験の結果(Bohoslawedら、J.IFN Res19
86 6:207-213)と合致する。生物学的利用可能物質の量、即ち濃度対時間のカー
ブの下領域から計算される量もまた、ヒトαA/Dと同様であった。2相性時間消費
クリアランスカーブが125I標識Hu IFN-α1-8のiv一括投与後に認められたが、こ
れは腎臓で排除されるものの特徴を示すものであり、この結果は実施例6の結果
と合致する。125I標識Hu IFN-α 1-8をip投与した場合の薬物動態は、先に報告
されているIFNをim投与した場合のものと非常によく似ていた。
容易に検出し得るレベルの生物活性IFNが、125I標識Hu IFN-α 1-8のiv-括投
与あるいはip投与後のいずれにおいても、すべての動物の血清に認められた。1 .抗腫瘍活性についての考察
フレンド赤白血病モデルは、抗腫瘍活性の非常に厳しい前臨床試験となってい
る、というのはFLCはivで移植した場合に高い悪性度と肝臓および脾臓への転
移を示すからである。実際、このモデルを用いて得られた結果は、ヒト癌治療の
ためのIFN-αの非経口投与の採用の基礎となったものである。即ち、この研究に
おいて行われたすべての試験において、非処理マウスおよびコントロール試料を
投与されたすべてのマウスは10から11日目に死亡している。たった4または5個の
FLC細胞を移植しただけでも、何ら処置をしなければマウスは死ぬ。これに対し
て、口腔粘膜経路にてマウスIFN-αを投与したマウスでは、そのうちの一部が、
105のFLCの移植100日後でもなお生存しており、そして治癒したとみなし得る
。
実際に、先の研究に示されているFLCを移植されたマウスの生存日数を数日の
み延長するシクロフォスファミド、5-フルオロウラシルまたはメトトレキサート
を非経口投与にて投与する場合(Gresserら、J.Natl.Cancer Inst1988 80:126-13
1)より口腔粘膜経由で投与されたIFN-αは、有効である。また、シスプラチン、
ビンクリスチン、デオキソルブリシン、ブレオマイシンまたはエトポシドのごと
き他の薬物はこの腫瘍には効果が無い(Gresserら、J.Nal.Cancer Inst198880:12
6-131)。
また、口腔粘膜経由で投与されたIFN-αは、IL-1β、IL-2およびTNF-αなどの
、このモデルにおいて全身投与で非常に低い活性を示す他のサイトカインよりも
、明らかにFLCに対してより有効である。
先の研究によれば、IFNの非経口投与がこのモデルにおいて最も活性のある抗
腫瘍薬であり、腫瘍の転移がすでに始まり、肝臓に腫瘍が存在する場合でもIFN
治療が有効であるということが示されている(Gresserら、Intl.J.Cancer,1987
39:789-792)。本結果は口腔粘膜経路へのIFN投与がこれと同等あるいはこれに
もまして有効であることを示すものである。
リンパ腫の形成が認められた後、IFN-αを単一用量のシクロフォスファミドと
共に毎日注射することによって、リンパ腫を有するAKRマウスの生存期間を、い
ずれかを単独投与する場合と比して延長することが報告されている(Gresserら、
Eur.J.Cancer,,1978 14:97-99)。IFN-αZβとBCNU、シス−DDP(シス
プラチン)、メトトレキセート、アドリアマイシンおよびα−ジフルオロメチル
オルニチンを用いた組み合わせ治療の成功例もまた、様々な前臨床動物腫瘍モデ
ルにおいて報告されている。5-フルオロウラシル(5−FU)とIFNはまた、ヒ
トの大腸癌の治療にも有用であることが報告されている(Ernstoffら、Journalof
Clinical Oncology,1989 7:1764-1765)。しかしながら、他の報告において
は、IFN治療とを組み合わせると抗腫瘍活性が低下するという報告もあり、サイ
クロホスファミド(Marquetら、J.Cancer,1983 31:223-226; Leeら,Biochem.Pha
rmacol.,1984 33:4339-3443)、アドリアマイシン(Blackwillら、Cancer
Res.,1984 44:904-908)または5−Fu(Marquet,1985 109:156-158)などの使用
とIFNの組み合わせた場合の報告がある。これらは、IFN非経口投与と組み合わせ
て有益な効果を生むと報告されている、まさにその同じ薬品である。IFNと他の
化学療法剤との併用の効果を、ここに説明されている方法を用いて容易に試験す
ることができる。
インターロイキン-1(IL-1)とIFN-α/βの併用療法は、FLCを注入したマウスに
おいて、相乗的抗腫瘍効果を示す(Belardelliら、Int.J.Cancer,199149:274-
278)。同じ処置は、Ebリンパ腫の転移性変異株(p11−R−Eb)に対して有
効であるが、この株にはいずれの剤も単独では効果が無い(Gabrieleら、Invasio
n Metastasis,1993 13:147-162)。タイプI IFN療法と併用する場合、IL-1がす
べての試験したサイトカインのうちで最も有効であった。
血管新生抑制剤AGM-1470[(クロロアセチル)-カルバミックアシッド(3R-(3α,
4α(2R*,3R*),5β,6β))-5-メトキシ-4-(2-メチル-3-(3-メトキシ-2−ブテニル
)オキシラニル)-1-オキサスピロ(2,5)オクト-6-イルエステル]をIFN-α/βと
同時に投与すると、いずれか一方を単独で投与した場合と比して顕著な抗腫瘍効
果の増強が認められる(Bremら,J.Peridatric Surgery,1993 28:1253-1257)。
温熱療法がIFN-α/βのルイス肺癌腫に対する抗腫瘍作用を高めることが報告
されている(Yerushalmiら、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.,1982 169:413-415)。
アルギニンブチレートもまた、IFN-αの抗腫瘍活性を増強することが示されてい
る(ChanyとCerutti,Int.J.Cancer,1982 30:489-493)。
一定の型および用量のIFNを口腔粘膜経路にて投与した場合の保護の程度を、
全身投与(ip注射)によって得られる結果と比べたところ、IFNの非経口投与は
一部のケースにおいては口腔粘膜投与よりわずかに有効であるが、他のケースに
おいては同等より上であるということはない。2. 抗ウイルス活性についての考察
抗ウイルス活性は125I IFN-α 1-8,Mu IFN-α/βおよひ情uIFN-αのin/or投与
後の動物血清中に検出することはできなかったが、投与群固体において致死量の
EMCVの感染に対して統計的に有意な保護作用が認められた(表1)。
急性ウイルス感染の確立された基本的なモデルにおいて我々の得たこれらの結
果は、高用量IFNの口腔粘膜投与をヒト急性ウイルス感染症の治療用いるための
「原理の立証」を支持する疑う余地のない証拠を提供するものであり、このモデ
ルにおいて、天然の複合IFN-αサブタイプ混合物および単一リコンビナントIFN-
αアイソタイプ(例えばMu IFN-α)の両方が、統計的に有意な抗ウイルス活性を
生ずることを示すものである。天然Mu IFN-α/βおよびHu IFN-α 1-8は口腔粘
膜経路で投与した場合に等しく有効であった。組替えMu IFN-βおよびMu IFN-γ
もまた、同等の抗ウイルス活性を示した。
一定の型および用量のIFNを口腔粘膜経路で投与した場合に得られる保護の程
度を、全身投与(ip注射)により得られるものと比較したところ、いくつかのケー
スにおいてはIFNの非経口投与のほうがほんの少し有効度が高いが、他のケース
では、おいては同等より上であるということはない。 3 .総合考察
生物マーカーのパイロット試験の結果は、3つの試験したバイオマーカー(MHC
クラスI抗原、Ly6 A/E抗原、2'5'-オリゴアデニル酸合成酵素活性)のうちのい
ずれもが、IFN-αの口腔粘膜経路による投与の、この非常に顕著な生物活性(例
えば,抗腫瘍及び抗ウイルス活性)を反映するものではなかった。
腹腔内投与した場合には、20IUという非常に少ない量のIFN-αでも、上記3つ
のバイオマーカーすべてを非常に顕著に発現する一方、口腔粘膜経路ではIFN-α
を20,000IUまで投与しても何ら検出可能な変化が出ないというこの両者の間の差
異は非常に大きなものである。
生物マーカーのうちのいずれかに対する効果が、より早い時期、もしくは中間
時において認められるかもしれない可能性を除くことはできないが、これはあり
そうにない。というのは、IFNがこれらのタンパク質をコードする遺伝子の転写
に影響を及ぼすよう働き、そのためにIFN処置後数時間まではいずれかの生物マ
ーカーの変化が認められるということは通常は考えられないからである。
また、他の多数のIFN誘導性タンパク質のうちのいずれかがIFN-αの口腔粘膜
経路投与の後に何らかの全身性作用を及ぼす可能性も除くことはできないが、特
定のIFN-誘導遺伝子の発現の分化制御を含むことになり、この可能性も低い。し
かしながら、IFNバイオマーカーへの影響が局所で、例えば口腔粘膜経路でIFN-
αを投与した後、鼻リンパ球上で観察されることはあり得る。
試験した生物マーカーの検出可能な影響が認められなかったことと対応して、
IFNの口腔粘膜投与療法中にモニターした血液学的または血液化学的パラメータ
ーには、20000IUまでのIFN-αを投与された動物においても相応する変化はなか
った。
薬動態-生理活性試験の結果は、一回投与量の放射標識Hu IFN-α 1-8の口腔粘
膜投与後、以前に使用されていた方法より1オーダー感受性の高い方法にて測定
しても末梢血中に循環IFNの認められない条件下で、統計的に有意な抗ウイルス
活性が得られるということを、非常に明白に示す。この結果と調和して、口腔粘
膜投与されたIFNによる抗ウイルス活性は、古典的な用量効果曲線に沿うもので
あった。
容易に検出し得るレベルの放射性標識物質が125I標識IFN-α 1-8の口腔粘膜投
与後の全血および血清に認められた。この結果は大量の非標識IFNの経口投与後
の動物の血清にIFNを検出することができなかったとする先の結果と反する。し
かしながら、口腔粘膜投与の後に全血および血清の両方に検出された放射活性物
質は、生物的には不活性であった。さらに、SDS-PAGE分析の結果から、この物質
は低分子量のものであり、胃及び小腸におけるIFNの消化後の分解生成物である
との可能性が最も高い。口腔粘膜投与後の放射標識物質の組織移行分析では、他
のいずれの臓器よりも顕著に高いレベルの放射活性が胃に認められた。これらの
結果は、生物的に活性なIFNは口腔粘膜投与の後には吸収されないにもかかわら
ず、この投与によって統計的に有意な抗腫瘍活性がインビボで示されるというこ
とをはっきりと示す。
見出された有用な効果をいかなる既に提案されている機構と結びつけるつもり
はない。われわれの結果は、口腔粘膜経路で投与されたIFNは現在、まだ見出さ
れていない新規な機構によって腫瘍細胞またはウイルスに影響を及ぼしているこ
とを示唆するものである。この新規な機構は、外部から投与されたIFNの直接作
用を含まず、また体内のIFNの誘導も含まないものである。これは、検出し得る
レベルの循環IFNが認められなかったこと、または3つの生物マーカー試験で支持
される。この機構は少なくともその一部分には、鼻腔及び口腔をとりまく大量の
リンパ組を刺激することによるものであると考えられる。われわれは、口腔粘膜
IFNが全身投与したインターフェロンと少なくとも同等の効力を有することを示
したが、この結果は本発明のIFNを腫瘍形成性疾患またはウイルス性疾患の治療
においてインターフェロンを口腔粘膜経路で投与することを強力に支持するもの
である。これは、IFNの臨床使用に、重要なかかわりを持ち得る。
発明の明確性および理解のために発明をかなり詳しく説明したが、本技術分野
においての知識を有する者にとっては、開示した態様および方法の様々な改良お
よび改変は本明細書に開示した発明のコンセプトの範囲からはずれることなく、
実施され得ることは明らかである。
【手続補正書】
【提出日】1999年7月22日(1999.7.22)
【補正内容】
請求の範囲
1.20×106IUから1000×106IUの刺激量のインターフェロンを含 み、該刺激量が非経口投与した場合に病的応答を惹起する量を超えている、腫瘍 形成性、自己免疫性、慢性ウイルス性または急性ウイルス性疾患あるいは結核に 罹患している哺乳類の宿主防御機構もしくは免疫応答を刺激するための、口腔粘 膜接触投与のためのインターフェロン組成物。
2.50×106IUから500×106IUのインターフェロンを含む、請求項 1記載の組成物。
3.インターフェロン感受性の腫瘍形成性疾患の治療のためのものである、請求 項1記載の組成物。
4.多発性骨髄腫、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄性白血病、低級リンパ腫、細 胞リンパ腫、癌性腫瘍、腎臓腫瘍、腎臓細胞癌、肝細胞癌、癌腫、直腸癌、膠芽 腫、肺癌、大腸癌、および悪性脳腫瘍から成る群から選択される腫瘍形成性疾患 に罹患している哺乳類の宿主防御機構もしくは免疫応答を刺激するための、口腔 粘膜接触投与のための、請求項3記載のインターフェロン組成物。
5.インターフェロン感受性の、ウイルス感染または慢性ウイルス性感染を治療 するためのものである、請求項1記載の組成物。
6.慢性ウイルス性疾患、もしくはインフルエンザウイルス、ヘルペス水痘、ヘ ルペス帯状痘疹、デング熱、または麻疹ウイルス脳炎、マレーバレー脳炎、日本 B型脳炎、ダニ媒介性脳炎およびヘルペス脳炎を含むウイルス性脳炎、エボラウ イルス、マーブルクウイルス、ラッサ熱を含む出血熱、ハンタウイルス感染症、 およびウマの麻疹ウイルスを含む、動物からヒトへ媒介されるとされるウイルス 感染症から成る群から選択される急性ウイルス性攻撃に罹患している哺乳類の宿 主防御機構もしくは免疫応答を刺激するための、口腔粘膜接触投与のための、請 求項5記載のインターフェロン組成物。
7.ヘルペス水痘(鶏痘)の治療のためのものである、請求項6記載の組成物。
8.結核の治療のためのものである、請求項1記載の組成物。
9.インターフェロンおよびインターフェロンーインデューサーを含む、請求項 1 記載の組成物。
10.他の治療剤を含む、請求項1記載の組成物。
11.他の治療剤が、細胞増殖抑制剤、抗癌剤、抗血管新生剤および抗ウイルス 剤から成る群から選択される、請求項10記載の組成物。
12.インターフェロンがタイプIインターフェロンである、請求項1記載の組 成物。
13.タイプIインターフェロンが、IFN−α、IFN−β、IFN−ω、コ ンセンサスIFN、組換え体およびこれらの混合物から成る群から選択される、 請求項12記載の組成物。
14.インターフェロンがタイプIIインターフェロンである、請求項1記載の 組成物。
15.タイプIIインターフェロンがIFN−γであるか、または組換え体であ る、請求項14記載の組成物。
16.インターフェロンの有効投与量を一回投与量として投与するためのもので ある、請求項1−15のいずれかに記載の組成物。
17.インターフェロンの有効投与量を、一回投与量の投与にて惹起される治療 応答と同等の応答を得るのに十分な期間にわたり低用量を複数回投与するための ものである、請求項1−15のいずれかに記載の組成物。
18.インターフェロンの有効投与量を、一回投与量の投与にて惹起される治療 応答と同等の応答を得るのに十分な期間にわたり持続投与するためのものである 、請求項1−15のいずれかに記載の組成物。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
A61P 43/00 117 A61P 43/00 117
(31)優先権主張番号 PO4387
(32)優先日 平成8年12月24日(1996.12.24)
(33)優先権主張国 オーストラリア(AU)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ
,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU
,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,
CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,G
B,GE,HU,IL,IS,JP,KE,KG,KP
,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,
LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,N
Z,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI
,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,
VN,YU