JP2000340127A - 酸素イオンビーム用マイクロ波イオン源 - Google Patents

酸素イオンビーム用マイクロ波イオン源

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JP2000340127A JP11146121A JP14612199A JP2000340127A JP 2000340127 A JP2000340127 A JP 2000340127A JP 11146121 A JP11146121 A JP 11146121A JP 14612199 A JP14612199 A JP 14612199A JP 2000340127 A JP2000340127 A JP 2000340127A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】寿命の長い酸素イオンビーム用マイクロ波イオ
ン源を提供することにある。 【解決手段】酸素ガスのプラズマを発生するプラズマ室
と、プラズマ室110において発生したプラズマから引
き出し電極130,132,134により、酸素イオン
ビームを引き出す。ここで、引き出し電極の基材130
A,132A,134Aとしてモリブデンを用い、その
表面の薄膜130B,132B,134Bの材料として
ニッケル若しくはイリジウムを用いる。また、支持ベー
ス142,144の基材142A,144Aとしてモリ
ブデンを用い、その表面の薄膜142B,144Bの材
料としてニッケル若しくはイリジウムを用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラズマから大電
流イオンビームを引き出すマイクロ波イオン源に係り、
特に、酸素の大電流イオンビームを長時間安定に引き出
すに好適な酸素イオンビーム用マイクロ波イオン源に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来から、2.45GHzのマイクロ波
を使った磁場中のマイクロ波プラズマから大電流イオン
ビームを引き出すマイクロ波イオン源は、フィラメント
等のイオン源損耗部分が少ないことから半導体素子作製
用イオン注入装置のイオン源として利用されてきてい
る。特に、酸素イオンビームをシリコン半導体にイオン
打ち込みし、シリコン基板内にいわゆる埋め込み酸化膜
(SiO2)を形成するための酸素イオン注入装置で
は、マイクロ波イオン源の使用は特に好適である。これ
は、熱フィラメント等を含むプラズマ源ではフィラメン
トが酸素により短時間で損耗するのに対し、マイクロ波
プラズマではこのような損耗部分がないからである。
【0003】ところで、従来の酸素イオン注入装置にお
ける埋め込み酸化膜形成のための酸素イオン注入量は、
通常の半導体素子作製用のボロン,リン,砒素イオン注
入に比べて、2〜3桁以上多い1017〜1018個/cm
2の桁である。また、実用的な生産量を得るため、従来
の酸素イオン注入装置におけるイオン注入電流は、通常
の半導体素子作製用イオン注入電流より約1桁高い10
0mA級の酸素イオン電流値で注入が行われる。注入は
多数枚のシリコンウエハに同時注入するバッチ処理注入
で行われる。このような大電流ビーム注入でも注入処理
に要する時間は、半導体素子作製用が典型的には10分
以内であるのに対し、約3時間以上の長時間を必要とす
る。従って、イオン源に対してはとりわけ長時間安定に
動作することが求められている。
【0004】一方、イオン源の定期的メインテナンス
は、イオン引き出し電極等が汚れ、電極間で放電が多発
し、安定にビームが引き出せなくなった場合に実施され
る。イオン源の清掃には、取り外し,分解,清掃,組み
込み,ビーム出し調整等を含め数日を要するので、イオ
ン源寿命が短く,清掃周期間隔が短いと、頻繁にメイン
テナンス清掃を行わなければならずイオン注入処理枚数
が著しく減ることになる。清掃回数を減らし装置稼動時
間を長くするためには、汎用の半導体イオン注入装置用
マイクロ波イオン源の寿命(>>120時間)と同等以
上の長寿命化が要求される。
【0005】しかしながら、従来の酸素イオン注入装置
のイオン源においては、長時間(120時間以上)酸素
イオンビームを引き出すと、徐々に電極間で放電を多発
するようになり最後には安定にビームが引き出せなくな
っていた。
【0006】そこで、例えば、特開平9−17367号
公報に記載されているように、イオン源の引き出し電極
の基材をモリブデン等で構成するとともに、その表面を
白金の薄膜で覆うことにより、引き出し電極表面に酸化
物が形成されることを低減することが知られている。酸
化物の形成を低減することにより、従来よりもイオン源
の寿命を長くすることが可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
9−17367号公報に記載されているように、引き出
し電極の表面を白金の薄膜で覆う方法では、白金の膜厚
は、せいぜい10μm程度の薄いものである。ところ
で、100mAを越える大電流酸素イオンビームを引き
出す場合、ビーム自身の空間電荷によるビーム広がりが
大きくなるため、電極にビームを全く当てることなくイ
オンを引き出すことは現実には不可能であり、数mAレ
ベルの酸素ビームが当たることは通常避けられないもの
である。従って、引き出し電極の表面に、イオンビーム
が衝突することにより、引き出し電極表面に形成された
白金薄膜はスパッタリングされ、除去される。その結
果、その下の基材電極であるモリブデン等が露出するこ
ととなり、モリブデンの表面に酸化膜が形成されるた
め、従来と同様に、安定なビームが引き出せなくなるこ
とが判明した。
【0008】本発明の目的は、さらに、寿命の長い酸素
イオンビーム用マイクロ波イオン源を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】(1)上記目的を達成す
るために、本発明は、酸素ガスのプラズマを発生するプ
ラズマ室と、このプラズマ室において発生したプラズマ
から酸素イオンビームを引き出す引き出し電極とを有す
る酸素イオンビーム用マイクロ波イオン源において、上
記引き出し電極の少なくとも表面を形成する金属材料と
して、ニッケル若しくはイリジウムを用いるようにした
ものである。かかる構成により、引き出し電極表面の酸
化の影響を低減して、イオン源の寿命を長寿命化し得る
ものとなる。
【0010】(2)上記(1)において、好ましくは、
上記引き出し電極を支持する支持ベースを備えるととも
に、この支持ベースの少なくとも表面を形成する金属材
料として、ニッケル若しくはイリジウムを用いるように
したものである。かかる構成により、支持ベース表面の
酸化の影響を低減して、イオン源の寿命を長寿命化し得
るものとなる。
【0011】(3)上記(2)において、好ましくは、
上記支持ベースの少なくとも表面を形成する金属材料と
してニッケルを用いるとともに、上記支持ベースの基材
を銅として、その表面にニッケル薄膜を形成するように
したものである。かかる構成により、引き出し電極の温
度を低下させて、ニッケルの表面に形成される酸化ニッ
ケルを安定化して、イオン源の寿命を長寿命化し得るも
のとなる。
【0012】(4)上記(2)において、好ましくは、
上記支持ベースの少なくとも表面を形成する金属材料と
してイリジウムを用いるとともに、上記支持ベースの基
材をSUSとして、その表面にイリジウム薄膜を形成す
るようにしたものである。かかる構成により、引き出し
電極の温度を高めて、イリジウムの表面への酸化膜の付
着を低減して、イオン源の寿命を長寿命化し得るものと
なる。
【0013】(5)上記(2)において、好ましくは、
上記支持ベースの少なくとも表面を形成する金属材料と
してニッケルを用いるとともに、上記引き出し電極の温
度が100℃以下となるように、上記支持ベースの熱抵
抗を設定するようにしたものである。かかる構成によ
り、引き出し電極の温度を低下させて、ニッケルの表面
に形成される酸化ニッケルを安定化して、イオン源の寿
命を長寿命化し得るものとなる。
【0014】(6)上記(2)において、好ましくは、
上記支持ベースの少なくとも表面を形成する金属材料と
してイリジウムを用いるとともに、上記引き出し電極の
温度が700℃以上となるように、上記支持ベースの熱
抵抗を設定するようにしたものである。かかる構成によ
り、引き出し電極の温度を高めて、イリジウムの表面へ
の酸化膜の付着を低減して、イオン源の寿命を長寿命化
し得るものとなる。
【0015】(7)上記目的を達成するために、本発明
は、酸素ガスのプラズマを発生するプラズマ室と、この
プラズマ室において発生したプラズマから酸素イオンビ
ームを引き出す引き出し電極とを有する酸素イオンビー
ム用マイクロ波イオン源において、上記引き出し電極の
材料として白金を用いるようにしたものである。かかる
構成により、引き出し電極表面の酸化の影響を低減し
て、イオン源の寿命を長寿命化し得るものとなる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図1〜図4を用いて、本発
明の一実施形態による酸素イオンビーム用マイクロ波イ
オン源の構成について説明する。最初に、図1を用い
て、本実施形態による酸素イオンビーム用マイクロ波イ
オン源の構成について説明する。
【0017】本実施形態による酸素イオンビーム用マイ
クロ波イオン源100は、プラズマ室110と、コイル
120と、引き出し電極130,132,134とを備
えている。
【0018】プラズマ室110は、円筒型をしており、
その直径は、約10cmである。プラズマ室110に
は、絶縁物からなるマイクロ波窓140を通して、周波
数2.45GHzのマイクロ波が、円筒軸方向から供給
される。円筒プラズマ室110には、コイル120によ
って発生した磁場が印加される。コイル120によって
印加される磁場強度は、プラズマ室110の軸中心にお
いて、約0.1テスラである。プラズマ室110に、バ
ルブ145を開いて酸素ガスを流すと、マイクロ波放電
が起き、プラズマ室110は酸素プラズマで満たされ
る。
【0019】プラズマ室110に形成された酸素プラズ
マから、3枚の引き出し電極130,132,134を
用いて、酸素イオンビームが引き出される。ここで、3
枚の引き出し電極を、それぞれ、加速電極130,減速
電極132,接地電極134と称する。加速電極130
には、電源150から正の電圧(通常30〜80kV程
度)が印加されている。減速電極132には、電源15
5から負の電圧(通常−0.5〜−5kV程度)が印加
されている。接地電極134は、接地電位に保たれてい
る。プラズマ室110からは、加速電極130の加速電
圧に対応したエネルギーの酸素イオンビームが引き出さ
れる。
【0020】ここで、引き出し電極130,132,1
34の簡単な構成について説明する。なお、詳細な構成
については、図2を用いて後述する。加速電極130,
減速電極132,接地電極134は、それぞれ、円盤状
であり、その中央付近に、酸素イオンビームが通過する
ための複数のイオン引き出し穴が形成されている。減速
電極132は、減速電極支持ベース142によって固定
支持されている。接地電極134は、接地電極支持ベー
ス144によって固定支持されている。加速電極130
は、プラズマ室110に固定されている。減速電極支持
ベース142及び接地電極支持ベース144は、それぞ
れ、絶縁碍子161,163を介して、プラズマ室11
0に対して固定されているとともに、加速電極130,
減速電極132,接地電極134は、互いに絶縁されて
いる。
【0021】減速電極支持ベース142には、水冷管1
72が接触している。水冷管172の中には、冷却水が
流通しており、減速電極支持ベース142を介して、減
速電極132を冷却している。接地電極支持ベース14
4には、水冷管174が接触している。水冷管174の
中には、冷却水が流通しており、接地電極支持ベース1
44を介して、接地電極134を冷却している。
【0022】次に、図2を用いて、本実施形態による酸
素イオンビーム用マイクロ波イオン源の中の引き出し電
極130,132,134の構成について説明する。な
お、図1と同一符号は、同一部分を示している。加速電
極130は、プラズマ室110に固定されている。加速
電極130は、酸素イオンビームが通過するための複数
のイオン引き出し穴130Cが形成されている。また、
加速電極130は、基材130Aと、基材130Aの表
面(両面)に形成された薄膜130Bとから形成されて
いる。ここで、基材130Aとしては、モリブデン(M
o)を用い、薄膜130Bとしては、ニッケル(Ni)
を用いている。薄膜130Bは、めっきにより、基材1
30Aの表面に約10μmの膜厚で形成されている。
【0023】減速電極132は、減速電極支持ベース1
42により固定支持され、さらに、減速電極支持ベース
142は、絶縁碍子161,163に固定されている。
減速電極支持ベース142には、水冷管172が接触し
ており、減速電極支持ベース142を介して、減速電極
132を冷却している。減速電極132は、酸素イオン
ビームが通過するための複数のイオン引き出し穴132
Cが形成されている。また、減速電極132は、基材1
32Aと、基材132Aの表面(両面)に形成された薄
膜132Bとから形成されている。ここで、基材132
Aとしては、モリブデン(Mo)を用い、薄膜132B
としては、ニッケル(Ni)を用いている。薄膜132
Bは、めっきにより、基材132Aの表面に約10μm
の膜厚で形成されている。
【0024】接地電極134は、接地電極支持ベース1
44により固定支持され、さらに、接地電極支持ベース
144は、絶縁碍子163に固定されている。接地電極
支持ベース144には、水冷管174が接触しており、
接地電極支持ベース144を介して、接地電極134を
冷却している。接地電極134は、酸素イオンビームが
通過するための複数のイオン引き出し穴134Cが形成
されている。また、接地電極134は、基材134A
と、基材134Aの表面(両面)に形成された薄膜13
4Bとから形成されている。ここで、基材134Aとし
ては、モリブデン(Mo)を用い、薄膜134Bとして
は、ニッケル(Ni)を用いている。薄膜134Bは、
めっきにより、基材134Aの表面に約10μmの膜厚
で形成されている。
【0025】減速電極支持ベース142は、円筒部14
2Xと円盤部142Yとから構成されている。円筒部1
42Xは、円筒型のプラズマ室110の中心軸と同軸で
あるとともに、一方の端部に減速電極132が固定さ
れ、他方の端部に円盤部142Yが固定されている。円
盤部142Yは、リング状であり、プラズマ室110の
中心軸と同軸であるとともに、一方の端部に円筒部14
2Xが固定され、他方の端部は絶縁碍子161,163
に固定されている。円筒部142X及び円盤部142Y
は、ともに、基材142Aと、基材142Aの表面(両
面)に形成された薄膜142Bとから形成されている。
ここで、基材142Aとしては、銅(Cu)を用い、薄
膜142Bとしては、ニッケル(Ni)を用いている。
薄膜142Bは、めっきにより、基材142Aの表面に
約10μmの膜厚で形成されている。
【0026】接地電極支持ベース144は、円筒部14
4Xと円盤部144Yとから構成されている。円筒部1
44Xは、円筒型のプラズマ室110の中心軸と同軸で
あるとともに、一方の端部に接地電極134が固定さ
れ、他方の端部に円盤部144Yが固定されている。円
盤部144Yは、リング状であり、プラズマ室110の
中心軸と同軸であるとともに、一方の端部に円筒部14
4Xが固定され、他方の端部は絶縁碍子163に固定さ
れている。円筒部144X及び円盤部144Yは、とも
に、基材144Aと、基材144Aの表面(両面)に形
成された薄膜144Bとから形成されている。ここで、
基材144Aとしては、銅(Cu)を用い、薄膜144
Bとしては、ニッケル(Ni)を用いている。薄膜14
4Bは、めっきにより、基材144Aの表面に約10μ
mの膜厚で形成されている。
【0027】以上説明したように、本実施形態において
は、加速電極130,減速電極132,接地電極134
及び減速電極支持ベース142,接地電極支持ベース1
44の表面は、ニッケルの薄膜130B,132B,1
34B,142B,144Bによって被覆している。プ
ラズマ室110から引き出し電極130,132,13
4によって酸素イオンビームを引き出すと、100mA
を越える大電流酸素イオンビームを引き出す場合、ビー
ム自身の空間電荷によるビーム広がりが大きくなるた
め、引き出し電極にも、数mAレベルの酸素ビームが当
たる。その結果、ニッケルの薄膜130B,132B,
134B,142B,144Bの表面は酸化して、酸化
ニッケルが形成される。本発明者らの研究によると、引
き出し電極130,132,134の表面に形成された
酸化ニッケルは、極めて安定しており、イオン源の稼働
時間が長くなっても、膜厚が増えないことが判明した。
【0028】従って、従来の薄膜として白金等を用いる
場合には、白金がスパッタリングにより除去され、基材
が露出することによる基材の酸化の問題が生じていた
が、本実施形態では、かかる基材の酸化を防止すること
ができ、イオン源の寿命を長くすることができる。
【0029】また、ニッケルの薄膜130B,132
B,134B,142B,144Bの表面に形成された
酸化ニッケルは、引き出し電極132,134の温度が
100℃以下であると、安定性が優れていることが判明
した。引き出し電極132,134の温度を100℃以
下にするために、本実施形態においては、減速電極支持
ベース142及び接地電極支持ベース144の基材14
2A,144Aとして、熱伝導率の良い銅を用いてい
る。また、減速電極132及び接地電極134の温度
は、イオン源引き出し電流が大きいほど、減速電極13
2及び接地電極134へのイオンビームの衝突量が増え
るため、高くなる。そこで、引き出し電極132,13
4の温度を100℃以下にするために、イオン源引き出
し電流Iと、減速電極支持ベース142及び接地電極支
持ベース144の熱抵抗Rの関係が次のようになるよう
に設定している。
【0030】プラズマ室110から引き出された酸素イ
オンビームが引き出し電極132,134に衝突すると
きのビームパワーGは、以下の式(1)によって、 G=I・Co・V …(1) として与えられる。ここで、Iはイオン引き出し電流で
あり、Coはプラズマ室110から引き出されたイオン
ビームが引き出し電極に衝突する割合であり、Vはイオ
ン源の加速電圧である。
【0031】イオン引き出し電流Iは、通常100mA
程度であるが、将来的には、200mA程度まで用いら
れる可能性がある。また、プラズマ室110から引き出
されたイオンビームが引き出し電極に衝突する割合Co
は、2〜3%である。プラズマ室110から引き出され
たイオンビームの内、残りの98〜97%は、イオン引
き出し穴130Cを通過する。さらに、イオン源の加速
電圧Vは、通常、40〜70kVである。
【0032】従って、例えば、イオン引き出し電流Iを
200mAとし、引き出し電極に衝突する割合Coが3
%とし、イオン源の加速電圧Vを70kVとすると、ビ
ームパワーGは、420W(=200mA×0.03×
70kV)となる。
【0033】また、引き出し電極132,134の温度
Tは、引き出し電極支持ベース142,144を冷却す
る冷却水の温度をT0とすると、平衡状態において、以
下の式(2)によって、 T=T0+(L/(λ・S))×G …(2) として求めることができる。ここで、Lは、引き出し電
極支持ベース142,144の長さである。図2に示す
例では、円筒部142X,144Xの長さをLとしてい
る。円盤部142Y、144Yは、円筒部142X、1
44Yに比べて断面積が大きいため、熱抵抗も小さいも
のである。λは、熱伝導率(W/cm・K)である。S
は、引き出し電極支持ベース142,144の断面積で
ある。
【0034】さらに、式(2)において、熱抵抗Rは、
(L/(λ・S))で定義されるため、式(2)は、以
下の式(3)によって、 T=T0+R・G …(3) として表すことができる。
【0035】従って、引き出し電極支持ベース142,
144の熱抵抗Rは、以下の式(4)から、 R=(T−T0)/G …(4) として求められる。
【0036】従って、冷却水の温度T0を20℃とし、
ビームパワーGが、上述したように420Wの場合に、
引き出し電極132,134の温度Tを100℃以下に
抑えるための条件としての熱抵抗Rは、0.19(K/
W)(=(100−20)/420)となる。
【0037】そして、この熱抵抗Rを満たすための具体
的な寸法を求めると、引き出し電極支持ベース142,
144の材質を銅(Cu)とし、長さLを10cmとす
ると、円筒部142X,144Xの内径r1が4cm
で、外径r2を5cmにすればよいことになる。
【0038】次に、図3を用いて、本実施形態による酸
素イオンビーム用マイクロ波イオン源の性能を評価する
ためのイオン源評価試験機の構成について説明する。イ
オン源100は、図1及び図2に示した構成を有する本
実施形態によるイオン源である。イオン源100は、高
電圧シールドケース10の中に配置されている。イオン
源100の出口には、引き出しビームを受ける可動板2
0が置かれる。可動板20によって受けられたイオンビ
ームは、電流計22によって、イオン源引き出し電流と
して測定される。ビーム引き出しの途中には、イオン成
分を調べるために、質量分離器30が配置されている。
質量分離器30の偏向角は、75度である。質量分離器
30によって分離された特定成分のイオンビームは、フ
ァラデーカップ40によって受けられる。ファラデーカ
ップ40で受けられたイオンビームは、電流計42によ
ってイオン電流として測定される。質量分離器30によ
って分離されたイオンの質量をスキャンすることによ
り、質量分離スペクトルを得ることができる。以上の構
成のイオン源評価試験機を用いて、本実施形態によるイ
オン源100の運転寿命,動作特性等を測定した。
【0039】次に、本実施形態によるイオン源の試験評
価結果について説明する。最初に、従来のイオン源の評
価結果について説明する。ここで、従来のイオン源とし
ては、引き出し電極の材料としてモリブデンを用い、電
極支持ベースの材料としてSUSを用いている。引き出
し電極の表面に薄膜は形成されていないものである。
【0040】実験条件としては、マイクロ波電力,酸素
ガス流量,引き出し電圧等は全て同一としている。従来
のイオン源を用いて120〜300時間運転した場合、
モリブデン電極(直径約50mm、厚み2〜5mm)表
面には数10μmの厚みの酸化物が付着した。また、電
極温度は、400〜500℃以上に上がっていた。
【0041】一方、図1及び図2に示した本実施形態に
よるイオン源の結果は、次のようになった。電極温度は
100℃以下になることが実測された。また、引き出し
電極の表面に形成される酸化ニッケルの膜厚は、イオン
源の動作時間が長くなっても増加しないものである。そ
の結果、安定に連続運転できる時間は、700時間以上
に改善された。安定運転時間は、引き出し条件(マイク
ロ波電力,ガス圧力,磁場強度等)によっては1000
時間を超える場合もあった。
【0042】次に、図4を用いて、本実施形態による酸
素イオンビーム用マイクロ波イオン源を用いた酸素イオ
ン注入装置の構成について説明する。イオン源100
は、図1及び図2に示した構成を有する本実施形態によ
るイオン源である。マイクロ波イオン源100から引き
出された酸素イオンビームは、質量分離器30で質量分
離され、原子状酸素イオンビームだけが選別される。選
別された酸素イオンビームは、後段加速管50で追加速
され、通常は120〜200keVのエネルギーで使わ
れる。その後、レンズ60,偏向器70を通って注入室
80に導入される。注入室80内には、回転円盤82の
円周方向に複数枚のシリコンウエハ84が取り付けられ
ており、シリコンウエハ84にイオン打ち込みされる。
打ち込まれるイオン電流は、ファラデーカップ40によ
って測定される。イオン打ち込みの終了したシリコンウ
エハ84は、ウエハ搬送装置86によって外部に取り出
される。
【0043】次に、本発明の第2の実施形態による酸素
イオンビーム用マイクロ波イオン源の構成について説明
する。なお、本実施形態における酸素イオンビーム用マ
イクロ波イオン源の構成は、図1及び図2に示したもの
と同様である。
【0044】本実施形態においては、加速電極130
は、基材130Aと、基材130Aの表面(両面)に形
成された薄膜130Bとから形成されている。ここで、
基材130Aとしては、モリブデン(Mo)を用い、薄
膜130Bとしては、イリジウム(Ir)を用いてい
る。薄膜130Bは、めっきにより、基材130Aの表
面に約10μmの膜厚で形成されている。
【0045】減速電極132は、基材132Aと、基材
132Aの表面(両面)に形成された薄膜132Bとか
ら形成されている。ここで、基材132Aとしては、モ
リブデン(Mo)を用い、薄膜132Bとしては、イリ
ジウム(Ir)を用いている。薄膜132Bは、めっき
により、基材132Aの表面に約10μmの膜厚で形成
されている。
【0046】接地電極134は、酸素イオンビームが通
過するための複数のイオン引き出し穴134Cが形成さ
れている。また、接地電極134は、基材134Aと、
基材134Aの表面(両面)に形成された薄膜134B
とから形成されている。ここで、基材134Aとして
は、モリブデン(Mo)を用い、薄膜134Bとして
は、イリジウム(Ir)を用いている。薄膜134B
は、めっきにより、基材134Aの表面に約10μmの
膜厚で形成されている。
【0047】減速電極支持ベース142は、円筒部14
2Xと円盤部142Yとから構成され、円筒部142X
及び円盤部142Yは、ともに、基材142Aと、基材
142Aの表面(両面)に形成された薄膜142Bとか
ら形成されている。ここで、基材142Aとしては、S
USを用い、薄膜142Bとしては、イリジウム(I
r)を用いている。薄膜142Bは、めっきにより、基
材142Aの表面に約10μmの膜厚で形成されてい
る。
【0048】接地電極支持ベース144は、円筒部14
4Xと円盤部144Yとから構成され、円筒部144X
及び円盤部144Yは、ともに、基材144Aと、基材
144Aの表面(両面)に形成された薄膜144Bとか
ら形成されている。ここで、基材144Aとしては、S
USを用い、薄膜144Bとしては、イリジウム(I
r)を用いている。薄膜144Bは、めっきにより、基
材144Aの表面に約10μmの膜厚で形成されてい
る。
【0049】以上説明したように、本実施形態において
は、加速電極130,減速電極132,接地電極134
及び減速電極支持ベース142,接地電極支持ベース1
44の表面は、イリジウムの薄膜130B,132B,
134B,142B,144Bによって被覆している。
プラズマ室110から引き出し電極130,132,1
34によって酸素イオンビームを引き出すと、100m
Aを越える大電流酸素イオンビームを引き出す場合、ビ
ーム自身の空間電荷によるビーム広がりが大きくなるた
め、引き出し電極にも、数mAレベルの酸素ビームが当
たる。その結果、イリジウムの薄膜130B,132
B,134B,142B,144Bの表面は酸化して、
酸化膜が形成される。しかしながら、本発明者らの研究
によると、表面がイリジウムの場合、形成された酸化膜
の蒸気圧が高く、速やかに気化するため、イオン源の稼
働時間が長くなっても、常に、表面はきれいなイリジウ
ムの状態が保たれていることが判明した。 従って、イ
オン源の寿命を長くすることができる。
【0050】また、イリジウムの薄膜130B,132
B,134B,142B,144Bの表面に形成される
た酸化膜は、引き出し電極132,134の温度が70
0℃以上であると、速やかに蒸発することが判明した。
引き出し電極132,134の温度を700℃以上にす
るために、本実施形態においては、減速電極支持ベース
142及び接地電極支持ベース144の基材142A,
144Aとして、銅に比べて熱伝導率の悪いSUSを用
いている。また、減速電極132及び接地電極134の
温度は、イオン源引き出し電流が大きいほど、減速電極
132及び接地電極134へのイオンビームの衝突量が
増えるため、高くなる。そこで、引き出し電極132,
134の温度を700℃以上にするために、イオン源引
き出し電流Iと、減速電極支持ベース142及び接地電
極支持ベース144の熱抵抗Rの関係が次のようになる
ように設定している。
【0051】引き出し電極支持ベース142,144の
熱抵抗Rは、上述した式(4)によって求められるた
め、冷却水の温度T0を20℃とし、ビームパワーG
が、上述したように420Wの場合に、引き出し電極1
32,134の温度Tを700℃以上に保持するための
条件としての熱抵抗Rは、1.6(K/W)(=(70
0−20)/420)となる。
【0052】次に、図3に示した評価試験機を用いた本
実施形態によるイオン源の試験評価結果について説明す
る。実験条件としては、マイクロ波電力,酸素ガス流
量,引き出し電圧等は、上述の例と全て同一としてい
る。
【0053】電極温度は700℃以上になることが実測
された。また、引き出し電極の表面にはイリジウムの酸
化膜は、イオン源の動作時間が長くなっても殆ど形成さ
れないものである。その結果、安定に連続運転できる時
間は、700時間以上に改善された。安定運転時間は、
引き出し条件(マイクロ波電力,ガス圧力,磁場強度
等)によっては1000時間を超える場合もあった。
【0054】次に、図5を用いて、本発明の第3の実施
形態による酸素イオンビーム用マイクロ波イオン源の構
成について説明する。なお、本実施形態における酸素イ
オンビーム用マイクロ波イオン源の全体構成は、図1に
示したものと同様である。また、図2と同一符号は同一
部分を示している。
【0055】加速電極130’は、プラズマ室110に
固定されている。加速電極130’は、酸素イオンビー
ムが通過するための複数のイオン引き出し穴130Cが
形成されている。また、加速電極130は、ニッケル
(Ni)によって形成されている。
【0056】減速電極132’は、減速電極支持ベース
142’により固定支持され、さらに、減速電極支持ベ
ース142’は、絶縁碍子161,163に固定されて
いる。減速電極支持ベース142’には、水冷管172
が接触しており、減速電極支持ベース142’を介し
て、減速電極132’を冷却している。減速電極13
2’は、酸素イオンビームが通過するための複数のイオ
ン引き出し穴132Cが形成されている。また、減速電
極132は、ニッケル(Ni)によって形成されてい
る。
【0057】接地電極134’は、接地電極支持ベース
144’により固定支持され、さらに、接地電極支持ベ
ース144’は、絶縁碍子163に固定されている。接
地電極支持ベース144’には、水冷管174が接触し
ており、接地電極支持ベース144’を介して、接地電
極134’を冷却している。接地電極134’は、酸素
イオンビームが通過するための複数のイオン引き出し穴
134Cが形成されている。また、接地電極134は、
ニッケル(Ni)によって形成されている。
【0058】減速電極支持ベース142’は、円筒部1
42X’と円盤部142Y’とから構成されている。円
筒部142X’は、円筒型のプラズマ室110の中心軸
と同軸であるとともに、一方の端部に減速電極132’
が固定され、他方の端部に円盤部142Y’が固定され
ている。円盤部142Y’は、リング状であり、プラズ
マ室110の中心軸と同軸であるとともに、一方の端部
に円筒部142X’が固定され、他方の端部は絶縁碍子
161,163に固定されている。円筒部142X’及
び円盤部142Y’は、ともに、ニッケル(Ni)によ
って形成されている。
【0059】接地電極支持ベース144’は、円筒部1
44X’と円盤部144Y’とから構成されている。円
筒部144X’は、円筒型のプラズマ室110の中心軸
と同軸であるとともに、一方の端部に接地電極134’
が固定され、他方の端部に円盤部144Y’が固定され
ている。円盤部144Y’は、リング状であり、プラズ
マ室110の中心軸と同軸であるとともに、一方の端部
に円筒部144X’が固定され、他方の端部は絶縁碍子
163に固定されている。円筒部144X’及び円盤部
144Y’は、ともに、ニッケル(Ni)によって形成
されている。
【0060】以上説明したように、本実施形態において
は、加速電極130’,減速電極132’,接地電極1
34’及び減速電極支持ベース142’,接地電極支持
ベース144’は、ニッケルによって形成されている。
プラズマ室110から引き出し電極130’,13
2’,134’によって酸素イオンビームを引き出す
と、100mAを越える大電流酸素イオンビームを引き
出す場合、ビーム自身の空間電荷によるビーム広がりが
大きくなるため、引き出し電極にも、数mAレベルの酸
素ビームが当たる。その結果、ニッケルの表面は酸化し
て、酸化ニッケルが形成される。引き出し電極13
0’,132’,134’の表面に形成された酸化ニッ
ケルは、極めて安定しており、イオン源の稼働時間が長
くなっても、膜厚が増えないことが判明した。従って、
イオン源の寿命を長くすることができる。
【0061】また、ニッケルの表面に形成された酸化ニ
ッケルは、引き出し電極132’,134’の温度が1
00℃以下であると、安定性が優れていることが判明し
た。引き出し電極132’,134’の温度を100℃
以下にするために、本実施形態においては、減速電極支
持ベース142’及び接地電極支持ベース144’とし
て、ニッケルを用いている。また、減速電極132’及
び接地電極134’の温度は、イオン源引き出し電流が
大きいほど、減速電極132’及び接地電極134’へ
のイオンビームの衝突量が増えるため、高くなる。そこ
で、引き出し電極132’,134’の温度を100℃
以下にするために、イオン源引き出し電流Iと、減速電
極支持ベース142’及び接地電極支持ベース144’
の熱抵抗Rは、式(4)を満たすように設定している。
【0062】次に、図3に示した評価試験機を用いた本
実施形態によるイオン源の試験評価結果について説明す
る。実験条件としては、マイクロ波電力,酸素ガス流
量,引き出し電圧等は、上述の例と全て同一としてい
る。
【0063】電極温度は100℃以下になることが実測
された。また、引き出し電極の表面に形成される酸化ニ
ッケルの膜厚は、イオン源の動作時間が長くなっても増
加しないものである。その結果、安定に連続運転できる
時間は、700時間以上に改善された。安定運転時間
は、引き出し条件(マイクロ波電力,ガス圧力,磁場強
度等)によっては、1000時間を超える場合もあっ
た。
【0064】次に、本発明の第4の実施形態による酸素
イオンビーム用マイクロ波イオン源の構成について説明
する。なお、本実施形態における酸素イオンビーム用マ
イクロ波イオン源の構成は、図1に示したものと同様で
ある。
【0065】本実施形態においては、図5に示したよう
に、加速電極130’は、イリジウム(Ir)によって
形成されている。減速電極132’は、イリジウム(I
r)によって形成されている。接地電極134’は、イ
リジウム(Ir)によって形成されている。
【0066】また、図2に示したように、減速電極支持
ベース142は、円筒部142Xと円盤部142Yとか
ら構成され、円筒部142X及び円盤部142Yは、と
もに、基材142Aと、基材142Aの表面(両面)に
形成された薄膜142Bとから形成されている。ここ
で、基材142Aとしては、SUSを用い、薄膜142
Bとしては、イリジウム(Ir)を用いている。薄膜1
42Bは、めっきにより、基材142Aの表面に約10
μmの膜厚で形成されている。
【0067】接地電極支持ベース144は、円筒部14
4Xと円盤部144Yとから構成され、て円筒部144
X及び円盤部144Yは、ともに、基材144Aと、基
材144Aの表面(両面)に形成された薄膜144Bと
から形成されている。ここで、基材144Aとしては、
SUSを用い、薄膜144Bとしては、イリジウム(I
r)を用いている。薄膜144Bは、めっきにより、基
材144Aの表面に約10μmの膜厚で形成されてい
る。
【0068】以上説明したように、本実施形態において
は、加速電極130,減速電極132,接地電極134
は、イリジウムにより形成するとともに、減速電極支持
ベース142,接地電極支持ベース144は、イリジウ
ムの薄膜142B,144Bによって被覆している。プ
ラズマ室110から引き出し電極130,132,13
4によって酸素イオンビームを引き出すと、100mA
を越える大電流酸素イオンビームを引き出す場合、ビー
ム自身の空間電荷によるビーム広がりが大きくなるた
め、引き出し電極にも、数mAレベルの酸素ビームが当
たる。その結果、イリジウムの表面は酸化して、酸化膜
が形成される。しかしながら、本発明者らの研究による
と、表面がイリジウムの場合、形成された酸化膜は速や
かに蒸発されるため、イオン源の稼働時間が長くなって
も、常に、表面はきれいなイリジウムの状態が保たれて
いることが判明した。従って、イオン源の寿命を長くす
ることができる。
【0069】また、イリジウムの表面に形成されるた酸
化膜は、引き出し電極132’,134’の温度が70
0℃以上であると、速やかに蒸発することが判明した。
引き出し電極132’,134’の温度を700℃以上
にするために、本実施形態においては、減速電極支持ベ
ース142及び接地電極支持ベース144の基材142
A,144Aとして、銅に比べて熱伝導率の悪いSUS
を用いている。また、減速電極132’及び接地電極1
34’の温度は、イオン源引き出し電流が大きいほど、
減速電極132’及び接地電極134’へのイオンビー
ムの衝突量が増えるため、高くなる。そこで、引き出し
電極132,134の温度を700℃以上にするため
に、イオン源引き出し電流Iと、減速電極支持ベース1
42及び接地電極支持ベース144の熱抵抗Rは、式
(4)を満たすように設定している。
【0070】次に、図3に示した評価試験機を用いた本
実施形態によるイオン源の試験評価結果について説明す
る。実験条件としては、マイクロ波電力,酸素ガス流
量,引き出し電圧等は、上述の例と全て同一としてい
る。
【0071】電極温度は700℃以上になることが実測
された。また、引き出し電極の表面にはイリジウムの酸
化膜は、イオン源の動作時間が長くなっても殆ど形成さ
れないものである。その結果、安定に連続運転できる時
間は、700時間以上に改善された。安定運転時間は、
引き出し条件(マイクロ波電力,ガス圧力,磁場強度
等)によっては、1000時間を超える場合もあった。
【0072】次に、本発明の第5の実施形態による酸素
イオンビーム用マイクロ波イオン源の構成について説明
する。なお、本実施形態における酸素イオンビーム用マ
イクロ波イオン源の構成は、図1及び図5に示したもの
と同様である。
【0073】本実施形態においては、図5に示したよう
に、加速電極130’は、白金(Pt)によって形成さ
れている。減速電極132’は、白金(Pt)によって
形成されている。接地電極134’は、白金(Pt)に
よって形成されている。
【0074】また、図2に示したように、減速電極支持
ベース142は、円筒部142Xと円盤部142Yとか
ら構成され、円筒部142X及び円盤部142Yは、と
もに、基材142Aと、基材142Aの表面(両面)に
形成された薄膜142Bとから形成されている。ここ
で、基材142Aとしては、銅(Cu)を用い、薄膜1
42Bとしては、白金(Pt)を用いている。薄膜14
2Bは、めっきにより、基材142Aの表面に約10μ
mの膜厚で形成されている。
【0075】接地電極支持ベース144は、円筒部14
4Xと円盤部144Yとから構成され、て円筒部144
X及び円盤部144Yは、ともに、基材144Aと、基
材144Aの表面(両面)に形成された薄膜144Bと
から形成されている。ここで、基材144Aとしては、
銅(Cu)を用い、薄膜144Bとしては、白金(P
t)を用いている。薄膜144Bは、めっきにより、基
材144Aの表面に約10μmの膜厚で形成されてい
る。
【0076】以上説明したように、本実施形態において
は、加速電極130,減速電極132,接地電極134
は、白金により形成するとともに、減速電極支持ベース
142,接地電極支持ベース144は、白金の薄膜14
2B,144Bによって被覆している。プラズマ室11
0から引き出し電極130,132,134によって酸
素イオンビームを引き出すと、100mAを越える大電
流酸素イオンビームを引き出す場合、ビーム自身の空間
電荷によるビーム広がりが大きくなるため、引き出し電
極にも、数mAレベルの酸素ビームが当たる。その結
果、白金の表面への酸化膜の形成は抑制される。また、
白金の表面は、酸素イオンビームによってスパッタリン
グされるが、加速電極130,減速電極132,接地電
極134は、白金により形成しているので、表面的に白
金が除去されても、常に、表面はきれいな白金の状態が
保たれている。従って、イオン源の寿命を長くすること
ができる。
【0077】また、支持ベースの表面の白金薄膜がスパ
ッタリングにより除去された場合でも、支持ベースの温
度を低くしておくことにより、基材である銅の表面に酸
化膜が形成されるのを低減することができる。そこで、
支持ベースの温度を100℃以下にするために、本実施
形態においては、減速電極支持ベース142及び接地電
極支持ベース144の基材142A,144Aとして、
熱伝導率の良い銅を用いている。また、減速電極13
2’及び接地電極134’の温度は、イオン源引き出し
電流が大きいほど、減速電極132’及び接地電極13
4’へのイオンビームの衝突量が増えるため、高くな
る。そこで、引き出し電極132,134の温度を10
0℃以下にするために、イオン源引き出し電流Iと、減
速電極支持ベース142及び接地電極支持ベース144
の熱抵抗Rは、式(4)から0.19(K/W)以下を
満たすように設定している。
【0078】次に、図3に示した評価試験機を用いた本
実施形態によるイオン源の試験評価結果について説明す
る。実験条件としては、マイクロ波電力,酸素ガス流
量,引き出し電圧等は、上述の例と全て同一としてい
る。
【0079】電極温度は100℃以下になることが実測
された。また、引き出し電極の表面には白金の酸化膜
は、イオン源の動作時間が長くなっても殆ど形成されな
いものである。その結果、安定に連続運転できる時間
は、700時間以上に改善された。
【0080】なお、引き出し電極130,132,13
4の基材の材料としては、モリブデン(Mo)の他に、
高融点金属であるタングステンやタンタルを用いる場合
もあり、これらの金属材料に対しても、本発明は同様に
適用できるものである。
【0081】また、上述した各実施形態では、3枚の引
き出し電極にニッケルメッキやイリジウムメッキを施し
たが、電極間の放電は、主に加速電極と減速電極の間で
発生することから、加速電極及び減速電極、若しくは、
減速電極のみにニッケルメッキやイリジウムメッキを施
したり、ニッケル,イリジウム,白金で構成するように
しても、従来に比べて長寿命化を図ることができる。
【0082】
【発明の効果】本発明によれば、酸素イオンビーム用マ
イクロ波イオン源の寿命をさらに長くすることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による酸素イオンビーム用
マイクロ波イオン源の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による酸素イオンビーム用
マイクロ波イオン源の中の引き出し電極の構成を示す断
面図である。
【図3】本発明の一実施形態による酸素イオンビーム用
マイクロ波イオン源の性能を評価するためのイオン源評
価試験機の構成の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態による酸素イオンビーム用
マイクロ波イオン源を用いた酸素イオン注入装置の構成
の説明図である。
【図5】本発明の第3の実施形態による酸素イオンビー
ム用マイクロ波イオン源の構成の説明図である。
【符号の説明】
10…シールドケース 20…ビーム受け板 26…真空排気装置 30…質量分離器 40…ファラデーカップ 50…後段加速管 60…レンズ 70…偏向器 80…イオン注入室 82…回転円盤 84…シリコンウエハ 86…ウエハ搬送装置 100…マイクロ波イオン源 110…プラズマ室 120…コイル 130…加速電極 130A,132A,134A…基材 130B,132B,134B…薄膜 132…減速電極 134…接地電極 140…マイクロ波窓 142…減速電極支持ベース 144…接地電極支持ベース 161,163…絶縁碍子 172,174…水冷管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ブレント オネイ 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 Fターム(参考) 5C030 DD02 DE04 DG09

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸素ガスのプラズマを発生するプラズマ室
    と、 このプラズマ室において発生したプラズマから酸素イオ
    ンビームを引き出す引き出し電極とを有する酸素イオン
    ビーム用マイクロ波イオン源において、 上記引き出し電極の少なくとも表面を形成する金属材料
    として、ニッケル若しくはイリジウムを用いたことを特
    徴とする酸素イオンビーム用マイクロ波イオン源。
  2. 【請求項2】請求項1記載の酸素イオンビーム用マイク
    ロ波イオン源において、 上記引き出し電極を支持する支持ベースを備えるととも
    に、この支持ベースの少なくとも表面を形成する金属材
    料として、ニッケル若しくはイリジウムを用いたことを
    特徴とする酸素イオンビーム用マイクロ波イオン源。
  3. 【請求項3】請求項2記載の酸素イオンビーム用マイク
    ロ波イオン源において、 上記支持ベースの少なくとも表面を形成する金属材料と
    してニッケルを用いるとともに、 上記支持ベースの基材を銅として、その表面にニッケル
    薄膜を形成することを特徴とする酸素イオンビーム用マ
    イクロ波イオン源。
  4. 【請求項4】請求項2記載の酸素イオンビーム用マイク
    ロ波イオン源において、 上記支持ベースの少なくとも表面を形成する金属材料と
    してイリジウムを用いるとともに、 上記支持ベースの基材をSUSとして、その表面にイリ
    ジウム薄膜を形成することを特徴とする酸素イオンビー
    ム用マイクロ波イオン源。
  5. 【請求項5】請求項2記載の酸素イオンビーム用マイク
    ロ波イオン源において、 上記支持ベースの少なくとも表面を形成する金属材料と
    してニッケルを用いるとともに、上記引き出し電極の温
    度が100℃以下となるように、上記支持ベースの熱抵
    抗を設定したことを特徴とする酸素イオンビーム用マイ
    クロ波イオン源。
  6. 【請求項6】請求項2記載の酸素イオンビーム用マイク
    ロ波イオン源において、 上記支持ベースの少なくとも表面を形成する支持ベース
    の少なくとも表面を形成する金属材料としてイリジウム
    を用いるとともに、上記引き出し電極の温度が700℃
    以上となるように、上記支持ベースの熱抵抗を設定した
    ことを特徴とする酸素イオンビーム用マイクロ波イオン
    源。
  7. 【請求項7】酸素ガスのプラズマを発生するプラズマ室
    と、 このプラズマ室において発生したプラズマから酸素イオ
    ンビームを引き出す引き出し電極とを有する酸素イオン
    ビーム用マイクロ波イオン源において、 上記引き出し電極の材料として白金を用いたことを特徴
    とする酸素イオンビーム用マイクロ波イオン源。
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