JP2000333678A - 弱毒生エイズワクチン用の組換えvzv/hivとその作製方法 - Google Patents

弱毒生エイズワクチン用の組換えvzv/hivとその作製方法

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JP2000333678A
JP2000333678A JP11104337A JP10433799A JP2000333678A JP 2000333678 A JP2000333678 A JP 2000333678A JP 11104337 A JP11104337 A JP 11104337A JP 10433799 A JP10433799 A JP 10433799A JP 2000333678 A JP2000333678 A JP 2000333678A
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hiv
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recombinant
vaccine
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Kimiyasu Shiraki
公康 白木
Masaaki Takahashi
理明 高橋
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HANDAI BISEIBUTSUBIYOU KENKYUKAI
Osaka University NUC
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HANDAI BISEIBUTSUBIYOU KENKYUKAI
Osaka University NUC
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安全かつ有効な生エイズワクチンの有効成分
として適格の弱毒ウイルスとその製造方法を提供し、エ
イズ蔓延の制圧に寄与する。また、2価の生ワクチンを
提供し予防接種の省力化を図る。 【解決手段】 現行の弱毒生水痘ワクチンの有効成分と
して公認の弱毒VZV岡株ゲノムのTK遺伝子内にHI
VのEnv遺伝子を挿入連係し作出された組換えVZV
/HIV岡株とその作製方法。この組換え体を有効成分
として用いる弱毒生エイズワクチン、及びエイズと水痘
に対する免疫を併せて同時に発揮する2価の弱毒生ワク
チン。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は弱毒生エイズワクチンの
有効成分として適格な組換え水痘/AIDSウイルスな
いしは組換えVZV/HIVとその作製方法に関するも
のであり、これより得られる組換えVZV/HIVとそ
の抗原並びに遺伝子DNAは、エイズの予防と治療に有
用であるのみならず、免疫学的診断剤、遺伝子診断剤、
遺伝子工学試薬等としても利用できる。
【0002】
【従来の技術】[略記の説明]この明細書で使用する次
の各略記はそれぞれ、( )内に記載の用語を意味す
る:VZV(水痘ウイルス)、HIV(ヒト免疫不全ウ
イルス)、SIV(サル免疫不全ウイルス)、HBV
(B型肝炎ウイルス)、TK(チミジンキナーゼ)、E
nv(エンベロープ),tk(TK遺伝子)、env
(Env遺伝子)、gp(糖タンパク質)、p(タンパ
ク質)、及びHBs(HBV表面抗原)。 [ウイルスベクターに関する技術]ワクチニアウイルス
やVZV等の種々のウイルスゲノムを、異種遺伝子ある
いは外来遺伝子の発現ベクターとして用いる技術開発の
経緯は、本願発明者らによる過去の組換えVZV/HB
Vに係る特許発明の明細書(米国特許第5,653,9
76号公報、欧州特許第0510996号公報等)に詳
述されているので省略する。 [異種遺伝子発現ベクターとしての弱毒VZV岡株]V
ZVは通常その感染性が生細胞内でのみ維持される細胞
依存性ウイルス(cell−assosiated v
irus)であり、該ウイルスの分離、試験管内での培
養・継代、及び量産はいずれも困難であるため、VZV
ワクチン及び診断剤の開発は言うに及ばず、水痘の病原
体としてのVZVの基礎及び臨床研究は躊躇される傾向
にあった。そのため、VZVの研究は、本発明者の高橋
らが1974年に細胞遊離(cell−free)の、
生水痘ワクチン用の弱毒VZV岡株を確立するまで(T
he Lancet,2,pp.1288−1290,
1974;特公昭51−19018号公報;特公昭53
−41202号公報;及び米国特許第3,985,61
5号公報)、遅々として進展していなかった。しかし、
上記の弱毒VZV岡株を用いる生ワクチンの開発が契機
となり、爾来、世界各地でVZVの基礎と臨床並びに応
用研究が急速に展開され、現在では、この弱毒VZV岡
株を有効成分として用いる弱毒生水痘ワクチンが世界各
国で広く実用に供されている[Requirement
s for VarecellaVaccine(Li
ve),Adopted 1984,Revised
1993:WHO Technical Report
Series,No.848,pp.22−52(A
nnex 1),1994]。また、VZVの基礎、臨
床、診断、疫学等に係るデータも既に多様に蓄積されて
いる[“Virology”、第3版、第2巻、第25
25−2585頁、N.Fieldsら編、Lippi
ncott− Raven Publishers(U
SA)1996年発行]。就中、VZVゲノムの構造解
析に関しては、1980年代に入り、遺伝子のクローニ
ングとその発現、遺伝子解析、モノクローナル抗体等の
技術の発展と普及に伴い、VZVゲノムDNAの制限酵
素地図、全塩基配列決定、VZV株間の遺伝子の比較等
(例えば,欧州公開特許第0839911号公報)によ
り、長足の進歩を遂げている。ところで、上記の文献に
基づくVZVに関するウイルス学上の主な知見は次の通
りである:VZV(human herpesviru
s 3,又はvaricella−zoster vi
rus 1)は、エンベロープを有し、分類学的にはヘ
ルペスウイルス科アルファヘルペス亜科Varicel
lovirus属に属する直径が約180−200nm
のDNA型ウイルスである。そのゲノムは、長さが約1
20kb(kilobase)の線状の2本鎖DNAか
らなり、ヌクレオキャブシド内部の直径約75nmのド
ーナツ状のコアに内在している。このゲノムDNAには
合計71個のORF(open reading fr
ame)が存在し、5′から3′末端方向に順に1から
71まで番号が付されている。これ等の遺伝子のうち、
ORF36(又は遺伝子36)は、チミジンキナーゼを
コードする遺伝子(tk、即ちTK遺伝子)であり、V
ZVのin vitro増殖には必須でなく、その長さ
は約1kbで,VZVゲノム全長のほぼ中央部に位置す
る。 [外来遺伝子の発現を目的として構築された組換えVZ
V]VZVのgpI遺伝子プロモーターの下流領域にE
BV(エプスタイン・バーウイルス)のgp350−g
p220遺伝子を挿入連係して作出した組換えVZV
(特開昭63−141589号公報又は欧州公開特許第
260012号公報;Journal of Viro
logy,61,1796−1807,1987)、V
ZVのgpI遺伝子プロモーターの下流にEBVのgp
350−gp220遺伝子、又はHBVのPreS1−
PreS2−HBs遺伝子を連結し構築したカセット遺
伝子断片を更にVZVのtk内に挿入連係し、これ等の
EBV又はHBV各遺伝子をTKとの融合蛋白として発
現させるよう作成した組換えVZV[欧州公開特許第2
51534号公報;Proceedings of t
he National Academy of Sc
iences(USA),84,3896−3900,
1987]、VZVのtkプロモーターの直接支配下に
HBVのPreS2(部分)−HBsを挿入連係し作成
した組換えVZV(米国特許第5,653,976号公
報又は欧州特許第0510996号公報)等が公知であ
る.しかしながら,弱毒生エイズワクチンの有効成分と
して適格な組換えVZV,即ち、組換えVZV/HIV
は未だ知られていない。 [エイズの病原体としてのHIV]最初のエイズ症例が
1981年に米国で確認されて以来、1998年11月
15日現在、報告された全世界のエイズ患者総数は、既
に約200万例にも達しつつある(WHO Weekl
y Epidemiological Record,
No.48,27 November 1998)。エ
イズは,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染による
CD4Tリンパ球の減少に伴う免疫不全を生じ、種々
の感染因子や悪性腫瘍による日和見疾患をもたらす。ま
た、HIV感染による原発性の脳症に伴う痴呆が症例の
半数以上で観察されている。かかるエイズ蔓延の制圧は
人類にとって緊急かつ最重要課題であり、1983年に
エイズの病原体LAV(又はHIV)が分離されて以
来、エイズの研究は世界各地で極めて集中的かつ精力的
に展開され既に、これに係る膨大な量のウイルス学的知
見が得られている[“Virology”、第3版、第
2巻、第2525−2585頁、N.Fieldsら
編、Lippincott− Raven Publi
shers(USA)1996年発行]。上記文献によ
れば、HIVは、レトロウイル科レンチウイルス属に属
し、HIV−1とHIV−2の2種に大別され、直径が
80−100nmの球状であり、エンベロープを有す
る。HIVゲノムは、約9.7kbの線状単鎖のRNA
であり、逆転写酵素及びビリオン内部(コア)の構造タ
ンパク質と複合体を形成し、プライマーtRNAと共に
ウイルス粒子に内在し、gag、pol、env、re
v、tat、nef等の合計10種の遺伝子で構成され
ている。基本的には、ウイルス増殖に必須のビリオン構
成成分をコードする3つの主要な遺伝子、即ち、コアの
構造タンパク質(p17,p24、及びp9)の前駆体
をコードするgag(group−specifica
ntigens)、3種の酵素(プロテアーゼ、逆転写
酵素、及びインテグラーゼ)の前駆体をコードするpo
l(polymerase)、及びエンベロープ糖タン
パク質(gp120とgp41)の前駆体をコードする
env(envelope)の各遺伝子が、5′から
3′方向に,gag(隣接領域のコドンが互いに重複)
pol…envの順に並んでいる。これ等のうち、HI
V−1のenvは、株により多少異なるが、850−8
80アミノ酸からなるエンベロープ糖タンパク質(En
v)をコードしている。かかるEnvは、前駆体として
gp160のかたちで発現かつ糖鎖修飾された後、細胞
性プロテアーゼにより,gp120(surface糖
タンパク質:SUサブユニット)とgp41(tran
smembran糖タンパク質:TMサブユニット)と
に開裂される。gp120は細胞へのHIV粒子の吸着
に、また、gp41は細胞への該粒子の融合と侵入にそ
れぞれ関与すると考えられている。なお、gp120に
は、N末端にシグナルペプチド(S:シグナル発揮の
後、細胞内プロテアーゼで切除される)が、更に、5つ
の高度可変領域(V1〜V5:hypervariab
le)、6つの保存領域、及び4つのCD4結合サイト
(C:CD4レセプターへの結合に関与する)がそれぞ
れ存在する。特にV3は免疫原性の主要エピトープであ
り、HIV株間のV3エピトープ変異は細胞への親和性
に影響を及ぼす。また、gp41には、N末端側に融合
ドメイン(F)が、更に、ロイシンジッパー(Z)、T
Mドメトン、及び2つのレンチウイルス溶解ペプチド
(L:細胞溶解を生じる)がそれぞれ存在する。上記の
概要をNからC末端方向に左から右へ以下に示す(な
お、☆はSの切除サイト、また,*はgp160の開裂
サイトを各々意味する): S☆−V1−V2−C−V3−C−V4−C−C−V5
−* *F−Z−T−L−L [エイズワクチン]既に前臨床試験あるいは臨床試験に
供されているワクチンとして、例えば、以下に示す種々
の形態のワクチンが知られている[The Jorda
n Report 98,pp.66−69,及びp
p.109−113,1998年(米国NIH)発
行]。 (a)ブユニットワクチン(22種):HIVのgp1
20,gp160,p24,逆転写酵素、Tat等のH
IVサブユニットを用いる; (b)合成ペプチドワクチン(27種):V3、V2、
p24−V3、CD4結合ドメイン等の合成ペプチドを
用いる; (c)粒子ワクチン(10種):不活化HIV−1、G
ag、Pol、Env、p17−p24等の粒子を用い
る; (d)組換え感染性ベクターワクチン(40種):Ga
g−V3、gp160、p24等の遺伝子を組込んだワ
クチニア、ポリオ、アデノ等のウイルスやサルモネラ、
BCG、ラクトコッカス等の組換え体; (e)DNAワクチン(11種):gp160、gp1
20、Nef、Tat等の遺伝子を組込んだプラスミ
ド; (f)レトロウイルスベクターワクチン(3種):En
v、Rev等を発現する組換えレトロウイルス、治療
用; (g)CD4ワクチン(1種):組換えCD4タンパク
質を免疫原として用いる、治療用; (h)抗イディオタイプワクチン(2種):抗gp12
0や抗CD4イディオタイプを用いる、治療用; (i)植物生産ワクチン(3種):V3、gp41等の
遺伝子を植物ウイルスゲノムに組込み、これ等を植物で
培養産生した抗原を用いる; (j)生ワクチン(3種):弱毒HIVや組換えHIV
/SIV弱毒株を用いる等々。 これ等のワクチンの効果は、中和抗体やCTL(cyt
otoxic T lympocyte)の誘導、T細
胞のヘルパー活性、K(キラー)細胞によるADCC
(antibody−dependent cell−
mediatedcytotoxicity)等の観点
から種々検討されている。しかし、最終の前臨床の動物
実験系は、HIV−1ではチンパンジーやオランウータ
ン等の類人猿に、また、HIV−2やSIVでもアカゲ
ザル、マカクザル、ブタオザル等の霊長類に限定される
ため、これ等の動物の確保は容易ではなく、その上、こ
れ等の動物、他の実験動物、in vitro試験、及
びヒトとの相互の感受性の相違は、予測不能の実験誤差
や誤認判定をもたらすので、かかるワクチンの安全性と
効果の両者の確認は難渋である。なお、いわゆる不活化
ワクチン[上記(a)〜(c)及び(g)〜(i)]は
安全ではあるが免疫原性や効果の確保に更なる創意工夫
を要するため、また、DNAワクチン[上記(e)]は
安全性と効果が共に現状では未知あるいはみ未確定であ
るので,かかるワクチンは未だ実用化の域に達していな
い。更に、弱毒HIVを有効成分として用いる生エイズ
ワクチン[上記(j)]の開発は、躊躇される。なぜな
ら、HIVの病原性の発現には長期間を要するので、た
とえ弱毒HIV候補株が得られても、その弱毒性の証明
が困難であり、また、潜伏感染の成立と毒性復帰変異の
否定が難渋あるいは不能であり、生ワクチンとしての安
全性の保証が確保され得ない。従って、現状では、かか
る生ワクチンはヒトを対象として使用されるべきではな
いと一般に考えられている。なお、上記(d)と(f)
については、いわゆる組換え体ワクチンとして、以下に
詳述する。 [組換え体を有効成分として用いる生エイズワクチン]
いわゆる組換え体を有効成分とする生エイズワクチンと
しては、次のものが知られている[The Jorda
n Report 98,pp.109−113,19
98年(米国NIH)発行;及び“Vaccine”、
第2版、第823−866頁、S.A.plotoki
n及びE.A.Mortimer著、W.B.Saun
ders Co.1994年発行]:例えば、HIVの
gp120、gp125、gp130、gp160、G
ag、Pol、Env、V3、p27、Nef等をコー
ドする遺伝子を組込んだワクチニアウイルス(PCT公
表特許WO 97/27311号公報)、カナリア痘ウ
イルス(米国特許第5,766,598号公報、及び米
国特許第5,863,542号公報)、SIV(米国特
許第5,654,195号公報)、アデノウイルス(欧
州公開特許第0638316号公報)、ヒトライノウイ
ルス(米国特許第5,714,374号公報)、ポリオ
ウイルス、メンゴウイルス、マウスメンゴウイルス、イ
ンフルエンザウイルス、ヘネズエラウマ脳炎ウイルス、
セルミキホレストウイルス、水庖性口炎ウイルス、ブル
セラ、サルモネラ、BCG、ラクトコッカス、リステリ
ア等の組換体を有効成分として用いる生エイズワクチ
ン。しかし、これ等の組換え体を有効成分として用いる
生ワクチンの安全性と有効性の確認に関する報告、ま
た、市場化の動向は現在いずれも知られていないので、
未だ実用の域には到達していないと判断される。その理
由については、既に前述した。従って、安全かつ有効な
弱毒生ウイズワクチンの実用化は、人類にとって待望か
つ緊急の最重要課題である。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前述の組
換えVZV/HBs−PreS2(部分)を完成した1
991年以来、そこでの経験を生かすと共に、上述の従
来技術において山積する難点の渦中にあって、実に7年
余にもわたる試行錯誤の結果、弱毒生エイズワクチンの
有効成分として優れて適格な組換えVZV/HIV岡株
を完成した。本発明によれば、HIVのEnv抗原を発
現する組換えVZV/HIV岡株とその作製方法、並び
にかかる組換え岡株を培養し製造される弱毒生エイズワ
クチンや診断剤、試薬等が提供される。特筆すべきは、
この発明に係る組換えVZV/HIV岡株ウイルスは、
エイズの予防と治療に適格な生エイズワクチンと、生水
痘ワクチンの両者の機能を同時に併せて発揮することに
ある。以下、その構成につき説明する。
【0004】[組換えVZV/HIV作出の留意点]こ
の発明の完成に7年余を要した理由としては、特に、後
述するVZV−HIV遺伝子を保有のキメラプラスミド
の構築が極めて困難であったことが上げられる。即ち、
本発明の筆頭発明者の体験によれば、VZVからクロー
ニングしたtk遺伝子のプローモータ下流にHIVのE
nv遺伝子の制限酵素断片を連係挿入し構築したキメラ
プラスミドを増幅すると、envの制限酵素サイトは維
持されているにも拘らず、その制限酵素断片の全長が短
くなり、目的とするenvの制限酵素断片の増幅が不可
能であった。例えば、キメラプラスミドを増幅すると、
そこに予め連係挿入した約2.5kbのenv制限酵素
断片は、増幅後に短くなり約1kbになった。その理由
は、本発明者らの深い学識経験と遜色のない勤勉を以て
しても、未だ不明である。しかしながら、かかる未踏の
障壁は、挿入連係するenv制限酵素断片を短くすると
共に、本発明者らがVZVのTK遺伝子プロモータ下流
にHBs−PreS2(部分)を挿入連係し構築したキ
メラプラスミドpHH(米国特許第5,653,976
号公報又は欧州特許第0510996号公報)を用いる
ことにより克服された。例えば、pHHが保有のHBs
−PreS2(部分)遺伝子の領域の制限酵素断片とH
IVenvのそれとを置換することにより解決できる。
【0005】VZVの取り扱いに関し、通常のゲノムの
長さが約10kbである小型ウイルスに比べ、前述の通
り、VZVは大型であり、その感染性ゲノムは約120
kbと極めて長く、斯かるDNA長鎖は切断され易く不
安定である;また、VZVは本来、熱に極めて不安定な
細胞依存性ウイルスであり、その感染性維持には−60
℃以下での保存を必須する等、その取扱い、培養、量産
等が容易ではない;更に、ウイルス培養における1細胞
当たりの感染性ウイルス粒子生産数に関し、他のウイル
スが通常、約10−100粒子であるのに対し、VZV
では約0.1個と生産収率が極めて低い;等々の理由に
より、VZV培養によるゲノムの量産のみならず、試験
研究段階での使用に耐えるVZV遺伝子DNAの調製と
クローニングは甚だ困難であり、かつ、産業利用上、質
と量共に適格な組換えVZVを選別採取する確率が極め
て低い。換言すれば、組換えVZV株の確立には、斯か
る著しく難渋な条件を克服する必要がある。従って,産
業上利用の観点から、量産コストに見合った遺伝子発現
機能を有し、しかも、かかる発現能が継代下で遺伝学的
に安定であり、かつ、生ワクチンの有効成分として適格
な安全性と有効性を兼備した組換えVZV株の完成に
は、机上の論理を絶する未踏の暗中での模索と綿密な創
意、そして多大の勤勉を要することが理解されるべきで
ある.
【0006】[ウイルスベクターとしてのVZV株]本
発明では、安全性、有効性及び均質性を併有する弱毒生
エイズワクチン株ウイルスの作出を主な目的とし、ベク
チターとしてのVZVゲノムにHIV遺伝子を挿入連係
することにより組換えVZV/HIVを構築する。本発
明でよれば、VZVとして、例えば、岡(ATCC V
R−795)、Webster(ATCC VR−91
6)、Ellen(ATCC VR−586)、YS、
YG、scott、河口、Dumas等の既存の公知株
(Journal of General Virol
ogy,67,1816−1829,1986:ウイル
ス,37,71−80,1987)の各株や将来分離さ
れるVZV株等を随意に使用できる。これ等のVZV株
のうち、試験研究や製造上での取扱いでの安全性の確
保、及び安全性と有効性とを兼備した生ワクチンや診断
剤の提供等の産業上利用を考慮すると、弱毒VZV株の
使用が望ましい。特に、上記の主目的の観点から、弱毒
VZV岡株は、水痘生ワクチン株[Requireme
nts for Varecella Vaccine
(Live),Adopted 1984,Revis
ed 1993:WHO Technical Rep
ortSeries,No.848,pp.22−52
(Annex 1),1994]として、その安全性と
有効性が世界的に確定かつ公認され、現在、世界のレベ
ルで使用されている唯一のDNA型の弱毒ウイルスであ
るため、外来遺伝子の発現ベクターとして最適である。
【0007】[VZVの培養とその宿主細胞の選択]ヒ
ト、サル、モルモット等に由来のVZV感受性の公知の
細胞を使用できる。これ等の細胞のうち、迷入因子や癌
原性因子の混入の確率、ワクチン用ウイルス株培養の細
胞としての適格性、産生ウイルス量等を考慮すると、生
ワクチン製造用として公認のヒト2倍体細胞、例えば、
HEL299(ATCC No.CCL 137)、M
RC−5(ATCC No.CCL 117)、WI−
38(ATCC No.CCL 75)等の使用が望ま
しい。細胞培養の増殖と維持両培地、及びウイルス培養
培地として、市販の合成培地、例えば、199培地[D
ifco社(米国)製]、MEM培地[Gibco社
(米国)製]等を使用できる。かかる培地は使用直前
に、約7%(W/V)のNaHCO水溶液を滴下混合
してpHを約6.8−8.0に調整の後、更に、市販の
ウシ胎児血清[例えば、Flow社(米国)製]を最終
濃度が約2−15%(W/V)になるよう追加して添加
混合し、培養に供する。VZVの培養は、予め調製した
細胞培養にそのシードウイルスを接種した後、維持培地
を用いて行う。培養温度は25−40℃、好ましくは、
33−38℃が推奨される。
【0008】[HIV遺伝子を挿入連係するVZV遺伝
子の選択]HIV遺伝子を挿入連係する際の留意点とし
て、挿入連係されたVZV遺伝子のプロモーターが機能
できるよう、プロモーターの下流を占めるORF領域に
HIV遺伝子を挿入連係する;及び翻訳が円滑に進行す
るようVZV遺伝子とHIV遺伝子相互のコドンを破壊
することなく挿入連係する等である。また、HIV遺伝
子が挿入連係された遺伝子は破壊され本来の機能を発揮
しなくなることがあるので、ウイルスの感染性や増殖性
に影響を及ぼさない遺伝子で、しかも、多量発現能を有
する(プロモーターの強度の強い)遺伝子、例えば、t
kやgp遺伝子等の採用が望ましい。特に、弱毒VZV
岡株を用いる場合には、遺伝子14(gpV遺伝子)の
欠損又は発現機能の低下(Journal of Vi
rology,64,4540−4548,1990)
が知られているため、この遺伝子の使用は推奨できな
い。また、遺伝子62の変異は上記の弱毒岡株に特異な
弱毒マーカーであるので(PCT公表特許WO 97/
43420号公報)、この遺伝子の使用も推奨できな
い。しかし、野生株の遺伝子14や遺伝子62の使用は
可能であり、そのプロモーターの下流にHIV遺伝子を
挿入連係することにより、これ等の遺伝子の破壊や機能
低下の惹起が可能であるので、これより得られる組換え
VZVは、弱毒VZV岡株に類似の弱毒株として極めて
高い有用性が期待される。
【0009】[VZV遺伝子内に挿入連係するHIV遺
伝子の選択]HIVのEnv遺伝子の部分を用いる。e
nvは,分離かつ同定された種々のHIV株からクロー
ニングし、用いることができる。例えば、HIV−1プ
ロゲノムクローンであるpNL4−3(Journal
of Virology,59,pp.248−29
1,1986;GeneBank,Accession
No.M19921)、上記pNL4−3のenvの
全長を保有する大腸菌JM109/pNS210(微工
研条寄第3020号)等を利用できる。なお、上記プラ
スミドpNS210が保有のenvがコードするEnv
全長のアミノ酸配列は、配列番号1と配列番号2に示す
通りである。ところで、envの部分については以下に
留意し、慎重に選定する必要がある:即ち、作出した組
換えVZV/HIVの弱毒生ワクチン株としての安全性
の保証を確保するため、毒性物質、為害作用物質、毒素
等をコードする遺伝子領域が連座しないよう細心の注意
を払い、例えば、細胞へのHIVの吸着や侵入に関与す
る融合ドメインや細胞溶解ペプチドをコードする領域は
制限酵素で切除し、採用しないこと;弱毒組換えVZV
/HIVが、VZVに係る両者の抗原性と免疫原性を併
有し、しかも、予防と治療のための生ワクチンの効果と
てしの中和抗体やCTLの誘導、T細胞のヘルパー活
性、K細胞によるADCC等を優れて発揮し、エイズと
水痘に対する同時両免疫が可能な2価生ワクチンの適格
な有効成分として、また、HIVとVZV両抗原からな
る診断用の2価抗原として実用に供し得ること。本発明
によれば、以上の条件を満たすHIVenvの部分とし
ては、少なくとも1つのCD4結合サイトをコードする
と共に、更に、次に示すアミノ酸番号の領域のうち、少
なくとも1つの高度可変領域(V1〜V5)、好ましく
は少なくともV3をコードする遺伝子断片の採用が望ま
しい。なお、この明細書でのコドン番号(アミノ酸番
号)の記載は、配列番号1の記載に基づき、Env遺伝
子の開始コドンatg(メチオニン)を起点、即ち、第
1番コドン(第1番アミノ酸)として序数付けされてい
る。シグナルペプチド(第1番〜第28番アミノ酸)が
切除された後のgp120のN末端のコドンagt(セ
リン)、即ち、配列番号1に基づく第29番コドン(第
29番アミノ酸)を起点にしていない。 第1番〜第508番 (gp120); 第1番〜第28番 (シグナルペプチド); 第29番〜第508番 (シグナルペプチド切除後の
gp120); 第134番〜第151番 (V1); 第185番〜第188番 (V2); 第303番〜第309番 (V3); 第394番〜第401番 (V4);及び 第458番〜第463番 (V5)。 例えば、HIVenvの部分として、第29番〜第50
8番、第130番〜第470番、第165番〜第503
番、第296番〜第463番等々の各アミノ酸配列をコ
ードするHIVenv断片の採用が適している。但し、
これ等のenv断片にのみ限定されず、上記の諸条件を
満たす限り随意に選定かつ採用できる。なお、HIV株
が異なる場合、採用するHIVenvの選定は、その株
の遺伝子解析に基づくEnvのアミノ酸配列と、前述の
配列番号1との間のアミノ酸配列ホモロジーの検索結果
に基づき、CD4結合サイトと高度可変領域(V1〜V
5)をそれぞれ決定することにより行うことができる。
【0010】[組換えVZVの作製]次の手順で行う。
HIV遺伝子を挿入連係しようとするVZV遺伝子のク
ローニンク;HIV遺伝子のクローニング;クローニン
グしたVZV遺伝子にHIV遺伝子を挿入連係したキメ
ラプラスミドの構築;斯かるキメラプラスミドとVZV
ゲノムとの間の組換えによる、組換えVZV/HIVの
作出。以下、この順序で説明する。
【0011】(1)VZV遺伝子のクローニング 後述の実施例1に記載の要領でVZVゲノムDNAをそ
の感染細胞から抽出精製の後、このDNAを制限酵素で
消化し、常法のアガロースゲル電気泳動で分画し調製し
たVZV遺伝子DNA断片を、市販又は公知のベクター
とその宿主(P.H.Pouwels著,“Cloni
ng Vector−A Laboratory Ma
nual”,全2巻,Elsevier 1985年発
行)を用いて、ベクターの制限酵素サイトにクローニン
グする。例えば、VZVのtkは、VZVゲノムを制限
酵素SacIで消化して調製したH断片(Interv
irology,29,301−310,1988)を
大腸菌プラスミド−ベクターpUC12[Method
s in Enzymology,vol.101,p
p.20−78,Academic Press(米
国)1983年発行]のSacIサイトに挿入連係の
後、これを大腸菌JM109株(ATCC No.53
323)に移入して形質転換させることにより、クロー
ニングできる。また、この工程の簡略化には、既にクロ
ーニング済みのVZV遺伝子(例えば、Journal
of Virology,67,1817−182
9,1986)を利用できる。
【0012】(2)HIVenvのクローニングとen
v断片の調製 クローニング済みのenvを利用できる。env断片
は、例えば、前述のpNL4−3やpNS210等が保
有のenvDNAを鋳型とし、所望のenv断片の塩基
配列に基づき合成したプライマーを用いるPCR法によ
りその断片を増幅の後、これをアガロースゲル電気泳動
にかけ回収することにより調製できる。
【0013】(3)VZV−HIV遺伝子のキメラプラ
スミドの構築 上述(1)の要領でVZV遺伝子をクローニングしたベ
クター内のVZV遺伝子の下流領域を制限酵素で開裂
し、その開裂サイトに、上記(2)でクローニングした
HIV遺伝子を制限酵素により消化し調製したDNA断
片を挿入連係の後、これを宿主細胞に移入して形質転換
させることにより、VZV遺伝子とHIV遺伝子が連係
のキメラプラスミドを構築することが、論理的には可能
である。しかしながら、これが難渋な場合には、既に作
出済みのキメラプスミド、例えば、VZV−HBV遺伝
子を保有のpHH(米国特許第5,653,976号公
報又は欧州特許第0510996号公報)のTK遺伝子
の下流にあるHBV遺伝子を制限酵素で除去した後、そ
の制限酵素サイトに、上記(2)で調製したHIV遺伝
子のDNA断片を挿入連係することにより構築できる。
【0014】(4)組換えVZV/HIVの作出 前述のVZVゲノムと上記(3)で調製のキメラプラス
ミドを同時に宿主細胞に導入し、これ等の両者の間で、
組換えを起こさせることにより、組換えVZVを作出す
る。細胞へのDNAの導入には、公知の常法、例えば、
DEAEデキストラン法、電気穿孔法、リン酸カルシウ
ム法等を適用できる。リン酸カルシウム法(virol
ogy,52,465−467,1973)の場合、リ
ン酸イオンとカルシウムイオンの共存下で形成される上
記両DNAの共沈殿物を調製の後、これを細胞培養に接
触させ、コ・トランスフェクションさせる。また、VZ
V親株を事前に接種して約2−3時間培養した感染細胞
に、キメラプラスミドDNAのリン酸カルシウム共沈殿
物を滴下し接触させ、該DNAをVZV感染細胞に導入
することもできる。次いで、これ等の細胞を培養し、そ
の培養系でVZVゲノムとキメラプラスミド両DNAの
間で組換えを起こさせ、組換えVZV/HIVを作出で
きる。
【0015】(5)組換えVZV/HIVとその培養 本発明により得られる種々の組換えVZV/HIVクロ
ーンはいずれも、弱毒VZV/HIV株であり、生ワク
チンの有効成分として使用できる。例えば、VZVとH
IV両遺伝子の間の組換えVZV/HIVクローンは、
後述の実施例8に記載の通り、rVA岡株シリーズと総
称かつ命名された次の20株からなる:rVA1岡株、
以下、rVA2、rVA3、…rVA19,及びrVA
20各岡株。なお、本発明の組換えVZV/HIVは、
後述の参考例3に記載の要領で、培養細胞にそのシード
ウイルス、例えば、rVA岡株のシードウイルスを接種
し培養できる。その培養上清および感染細胞内には、感
染性の組換えVZV/HIV粒子以外に、組換えVZV
/HIVゲノムの発現産物であるVZV及びHIVの両
抗原が生産される。例えば、上記のrVA3岡株を培養
すると、組換えVZV粒子以外に、その培養上清や感染
細胞細胞内にはVZVの可溶性抗原や、HIVのEnv
由来抗原がそれぞれ生産される。このように組換えVZ
V/HIVの培養物中に生産されるウイルス粒子とその
遺伝子DNA、並びに抗原類はいずれも、予防あるい治
療用のワクチン、免疫学的診断剤、遺伝子診断剤、又は
遺伝子工学試薬として様々なかたちで、多方面に利用で
きる。
【0016】[組換えVZV/HIゲノムDNAの遺伝
子解析]公知の常法、例えば、サザン・ブロット法やP
CR法等により解析できる。即ち、VZVゲノムを制限
酵素で消化し調製したDNA断片をアガロースゲル電気
泳動で分画し、これ等の画分をニトロセルロースフィル
ター上に移した後、RI(ラジオアイソトープ)で標識
のプローブとの間でハイブリダイゼーションを行い、上
記泳動画分の反応像をラジオオートグラフィーにより解
析する。また、ゲノムの特定領域の塩基配列からなるプ
ラマーを用い、PCRにより増幅した目的領域の遺伝子
DNA断片を電気泳動にかけ、それをエチジウムブロマ
イドで染色により分析できる。
【0017】[組換えVZVHIV抗原の測定、検出及
び同定]組換えVZV培養により生産されるウイルス粒
子や各種抗原の測定、検出及び同定は、免疫学や血清診
断で常用されている公知の方法、例えば、抗体でコート
した赤血球をもちいるRPHA(逆受身赤血球凝集反
応)法、酵素で標識した抗体を使用するELISA(酵
素結合抗体免疫アッセイ)又はEIA(酵素免疫アッセ
イ)、RIで標識した抗体を用いるRIA(ラジオ免疫
アッセイ)、FITC(Fluorescein is
othiocyanate)で標識した抗体で感染細胞
を染色し蛍光顕微鏡下で抗原の存在を判定する免疫蛍光
法、また、RI標識した培地成分を添加混合の培地中で
組換えVZVを培養し調製したRI標識抗原と予め作製
した抗体との間の免疫沈降反応物をSDS−PAGE
(SDS−ポリアクリルアミド電気泳動)にかけ分子量
の大きさにより分画の後、その泳動像をオートラジオグ
フィーで解析する免疫沈降法等の採用が可能である。
尚、この工程を簡略化するため、市販されている種々の
測定キットを使用できる。また、抗原密度は、公知の常
法、例えば、密度勾配平衡遠心法により測定できる。抗
原粒子の形状は、電子顕微鏡で観察できる。
【0018】[組換えVZV/HIVの感染価の測定]
公知の常法、例えば、感染細胞のラウンディングを指標
とするCPE(細胞変性効果)を光学顕微鏡下で判定す
るCPE法;ニュートラルレッドとアガロースを含有の
固形培養培地を重層した感染細胞の培養により形成され
る各プラークを1単位とするPFU(プラーク形成単
位)を肉眼で数えるプラークアッセイ;ホルマリンで固
定した感染細胞をメチレンブルー溶液で染色しPFUを
肉眼で数えるプラークアッセイ;感染細胞が形成するフ
ォーカスの数、FFU(フォーカス形成単位)を光学顕
微鏡下で計数するフォーカス法;等を採用できる。
【0019】[組換えVZV/HIVのクローニング]
公知の常法、例えば、感染細胞のクローニングにはフォ
ーカス法、組換えVZVのクローニングにはプラークア
ッセイが採用できる。フォーカスやプラークの採取に
は、ガラス製、プラスチック製、金属製等の円筒細管な
いしはシリンダーを使用できる。クローニングした感染
細胞や組換えVZV/HIVは、クローン毎に新鮮な細
胞培養に接種し、ウイルスを培養する。
【0020】
【組換えVZV免疫原性の判定】組換えVZVを含有の
溶液をサル、ウサギ、モルモット、マウス等の実験小動
物の皮下に接種の後、これ等の免疫動物を飼育管理す
る。斯かる飼育の間、ウイルス接種後、週又は月単位で
一定期間毎に、例えば、モルモットの場合には、その大
腿部静脈から約3mlの部分採血を行い、その血中抗体
価を測定する。抗体価の測定には、免疫学や血清診断で
常用されている公知の方法、例えば、免疫に使用した抗
原を付着させた赤血球を用いるPHA(受身赤血球凝集
反応)法、既知の一定量の感染ウイルスとその抗血清と
の間で抗原抗体反応させた後、その感染ウイルス量を5
0%中和減少させる抗血清の最高希釈倍数を、CPE法
やプラークアッセイにより測定する中和試験法等を採用
できる。また、遅延型過敏反応あるいは遅延型皮膚過敏
反応により、細胞性免疫を証明できる。これには、例え
ば、マウスやモルモット等での皮内反応を用いる。な
お、皮内反応は、予め抗原で感作した動物において、そ
の抗原に対するT細胞が増加(細胞性免疫が成立)して
いる場合には、同じ抗原を皮内接種すると、接種局所に
発赤や硬結が生じるので、その大きさや程度を測定する
ことにより行う。
【0021】[組換えVZV/HIVを有効成分として
含有する生ワクチンの製造]ヒト2倍体細胞培養を用い
て組換えVZVを培養の後、その培養物を、例えば、遠
心法により精製し、組換えVZV画分を採取する。これ
にワクチン安定化剤としてアミノ酸や糖類等の溶液を添
加混合てし、生ワクチン1ドーズ当たりのウイルス含量
が1,000PFU以上になるよう希釈調整し、生ワク
チンを製造する。生ワクチンは、その一部サンプルにつ
き、厚生省告示第217号に規定の生物学的製剤基準
(1993年)、例えば、「乾燥弱毒生水痘ワクチ
ン」、「組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)」
(エイズワクチンの基準が未定であるのでB型肝炎ワク
チンの基準の援用かつ併用が考えられる)等に準拠し
て、安全性、有効性及び均質性に関する各種試験検定を
行い、そのワクチンとしての適格性を確認・確定の後、
使用に供する。ワクチンは液状又は乾燥のかたちで提供
される。なお、乾燥ワクチンは、約3−30ml容のバ
イヤル瓶又はアンプル中で凍結乾燥され、気密密閉の状
態で提供され、5℃以下に保存する。かかるワクチンの
使用は、これに添付の使用書の記載に従い、使用直前に
滅菌蒸留水で乾燥内容物を完全に再溶解した後、例えば
1ドーズ、0.2〜0.5mlを皮下に接種する。
【0022】[組換えVZV/HIV抗原を有効成分と
して含有する診断剤の製造]ヒト2倍体細胞培養を用い
て組換えVZV.HIVを培養の後、その培養物を、例
えば、遠心法により精製し、組換えVZV/HIV抗原
画分を採取する。その抗原を、例えば、ホルマリン、5
6℃で加熱等により不活化した後、抗原蛋白量が1−1
0μg/mlになるよう、例えば、PBSで希釈調整
し、診断剤を調製する。かかる抗原は、2−50ml容
のバイヤル瓶又はアンプル中で密閉され、液状又は乾燥
の状態で提供される。斯かる抗原は、これに添付の使用
書の記載に従い、種々の血清診断、例えば、ELIS
A、PHA等の抗原として、また、抗体の作製に使用で
きる。尚、乾燥製品の場合には、蒸留水で乾燥内容物を
完全に再溶解して用いる。以下、本発明の具体例につ
き、参考例及び実施例をあげて説明する。但し、本発明
は、かかる参考例及び実施例にのみ限定されるものでは
ない。
【0023】
【参考例】参考例1 [細胞培養とその培地]ヒト2倍体繊維芽細胞、MRC
−5を37℃で培養する。基礎培地としてMEM培地
[Gibco社(米国)製]を使用した。尚、該基礎培
地は使用直前に7%(W/V)NaHCO33水溶液を
添加混合し、増殖培地はpH7.4、維持培地はpH
7.8に各々調整した。次いで、市販のウシ胎児血清を
最終濃度が、増殖培地では10%(V/V)、また、維
持培地では3%(V/V)になるよう追加混合し使用し
た。
【0024】参考例2 [VZV培養]参考例1で得たMRC−5細胞培養に、
VZV岡株(ATCC VR−795)シードウイルス
をMOI(感染多重度)0.01にて接種の後、37℃
で3日間。培養した。培地には、参考例1に記載の維持
培地を使用した。VZV培養の間、VZVの増殖に伴い
感染細胞領域が次第に広がった。VZV感染細胞は、検
鏡下でラウンディングを呈し、いわゆる、CPE(細胞
変性効果)として検出した。即ち、かかるCPEに基づ
く感染細胞の広がりを検鏡下で観察することにより、V
ZV増殖の程度を判定した。CPEが細胞培養モノシー
ト全域で認められる時点で、VZV培養を終了した。
【0025】参考例3 [生水痘ワクチン株の培養]弱毒生水痘ワクチン株であ
る岡株(WHO Technical Report
Series,No.848,pp.22−52(An
nex 1),1994]のシードウイルスを、参考例
2の記載と同様の要領で培養した。培養容器として、培
養面積210cmのルー瓶5本を使用した。
【0026】参考例4 [PBS(リン酸塩緩衝食塩水)の調製]NaClを
8.0g、KClを0.2g、NaHPO・12H
Oを2.0g、KHPOを0.2g、CaCl
を0.1g、及びMgCl・6HOを0.1g、蒸
留水に溶解して1,000mlにし、PBSを調製し
た。また、2価のイオン、CaClとMgCl・6
Oとを含まないPBS(−)も別途に調製した。
【0027】
【実施例】実施例1 [VZVゲノムDNAの抽出と調製]参考例3で得た岡
水痘ワクチン株の感染細胞を採取した。即ち、ウイルス
培養終了後、培養液を捨て、0.1%(W/V)EDT
A−2NaのPBS(−)溶液を16ml、各ルー瓶に
添加し感染細胞をルー瓶の内壁面から剥離させた後、こ
れ等をプールした。次に、3,000rpm、10分
間、室温で遠心し、感染細胞のペレットを採取する。こ
れに、0.5%(V/V)NP40[BDH Chem
icals社(英国)製]及び10mM EDTA−2
Na含む10mMTris−HCI(pH8.0)を3
mlを添加し細胞を浮遊させ、室温で30分間静置して
細胞を溶解させた。次いで、細胞破片を除去するため、
3,000g、20分間、4℃で遠心し、その上清を採
取した。この操作を3回繰り返し行い、採取した各上清
をプールした。次いで、この上清を、SW27ローター
[Beckman Instruments社(米国)
製]にて27,000rpm、1時間、4℃で遠心し、
ペレットを採取した。そのペレットを、2mlのTE液
[10mM Tris−HCI(pH8.0),1mM
EDTA−2Na]に浮遊させた後、これにVZV粒
子可溶化液[10mM Tris−HCl(pH8.
0),1%(W/V)SDS,10mM EDTA−2
Na,200μg/ml Proteinase K,
100μg/ml RNase A]2mIを添加混合
し、37℃で一夜、反応させる。反応終了後、等量の水
飽和フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール
(1:1:1)混合液で2回、DNAの抽出を行い、水
層を採取した。次に、この水層に2倍量の冷エタノール
を添加混合の後、−20℃で一夜、静置しDNAを沈殿
させた。このDNAは、遠心により回収の後、上記のT
E液2mlに再浮遊し、VZVゲノムDNAとして、爾
後の使用に供した。尚、DNAの濃度は、吸光度OD
260により決定した。
【0028】実施例2 [HIV遺伝子env(165−503)DNAの調
製]env全長を保有のpNS210(微工研条寄第3
020号)を鋳型に用い、配列番号1に示すenvの第
165番〜第503番コドンのDNA断端の5′側に
hoIの、3′側にSphIの制限酵素切断配列をそれ
ぞれ加えた配列を、PCR法で増幅した後、これを1.
0%(W/V)アガロースゲル電気泳動にかけ回収し、
HIVのEnvアミノ酸番号、第165番〜第503番
をコードし、かつ、制限酵素XhoIとSphIの両サ
イトを有するDNA断片を調製した。
【0029】実施例3 [HIV遺伝子env(296−463)DNAの調
製]前記の実施例2と同様にして、配列番号1に示すe
nvの第296番〜第463番コドンのDNA断端の
5′側にXhoIの、3′側にSmaIの切断配列を各
々加えた配列を、PCR法で増幅の後、これをアガロー
スゲル電気泳動で回収し、HIVのEnvアミノ酸番
号、第296番〜第463番をコードし、かつ、制限酵
XhoIとSmaIの両サイトを有するDNA断片を
調製した。
【0030】実施例4 [HBV遺伝子PreS2(部分)−HBsDNAの調
製]HBVの亜型adr株のPreS1−PreS2−
HBs遺伝子をpBR322のBamHIサイトにクロ
ーニングしたプラスミドpM1B11(微工研条寄第1
081号)を制限酵素HpaIIで消化した。次いで、
これを0.5%(W/V)アガロース電気泳動にかけ、
HpaII断片を回収の後、T4DNAポリメラーゼに
より両末端を平滑末端にした。
【0031】実施例5 [VZV遺伝子tkDNAのクローニング]実施例1で
得たVZVゲノムDNAを、制限酵素SacIで消化
し、これを0.5%(W/V)アカロースゲル電気泳動
にかけ、H断片(Intervirology,29,
301−310,1988)を回収した。このDNA断
片を、SacIで開裂したプラスミドpUC12(Me
thods in Enzymo logy,第101
巻,pp.20−78、Academic Press
[米国]1983年発行)に挿入連係の後、大腸菌JM
109株(ATCC No.53323)に移入し、形
質転換させることにより、プラスミドpUC12−tk
を作製した。更に、pUC12−tkを制限酵素Eco
RIとFokIで消化の後、1.0%(W/V)アカロ
ースゲル電気泳動により回収したEcoRI−Fok
断片を再度、pUC12にクローニングし、VZV遺伝
子tkDNAを保有のプラスミドpEF6を得た。
【0032】実施例6 [VZV/HBVキメラプラスミドpHHの構築]実施
例4で調製したHBVのHpaII断片を、実施例5で
得たpEF6のtkのHincIIサイトに挿入連係の
後、これを大腸菌JM109株に移入し形質転換させる
ことにより、キメラ・プラスミドpHHを得た。また、
HBV遺伝子DNA断片の挿入連係部位の塩基配列を、
7−DEAZAシークエンスキット[宝酒造社(日本)
製]を用いて決定した。その結果、このキメラpHH
は、HBVのpreS2−HBs遺伝子DNAの1,0
80塩基対断片がVZV遺伝子のSacI−FokI断
片4.8kbの間に挿入連係されており、VZVtkの
真性のプロモーターとエンハンサーの機能下で、VZV
tkの真性の開始コドンATG(メチオニン)とHBV
preS2遺伝子のTCC(セリン)とが連係した状態
で転写かつ翻訳され、VZV遺伝子tkの発現に代わ
り、HBVのpreS2の27個のアミノ酸とHBs全
長ペプチドとを発現する遺伝子を保有していた。
【0033】実施例7 [VZV/HIVキメラプラスミドpVA1の構築]実
施例2で得たenv(165−503)DNAを、実施
例6のpHHのXhoIとSphIの切断サイトに挿入
したプラスミドを構築の後、そのSacIIとSph
による断片を切り出し、これをプラスミドSstHの
acIIとSphIの切断サイトに挿入連係し、キメラ
プラスミドpVA1を構築した。
【0034】実施例8 [VZV/HIVキメラプラスミドpVA2の構築]実
施例3で調製したenv(296−463)DNAを、
実施例6で得たpHHのXhoIとSmaIの切断サイ
トに挿入連係し、キメラプラスミドpVA2を構築し
た。
【0035】実施例9 [組換えVZV/HIVの作製]実施例1で調製のVZ
VゲノムDNA(2.5μg/ml)及び実施例8で構
築したキメラプラスミドpVA2(20μg/ml)
を、リン酸カルシウム法(Virology,52.4
65−467,1973)により、直径60mmのプラ
スチック製シャーレで培養のMRC−5細胞にコ・トラ
ンスフェクションさせた。次いで、これを培養し、VZ
Vゲノムの導入により形成される各VZVフォーカスか
ら、感染細胞をシリンダーにより釣り上げた。斯かる感
染細胞をフォーカス毎にそれぞれ、25cmのプラス
チ製フラスコに培養のMRC−5細胞に接種し、増殖さ
せた。同時に、感染細胞の一部をフォーカス別にそれぞ
れ、カバースリップ上に培養のMRC−5細胞に接種し
増殖させた後に、これ等を抗HIV−1gp120(a
a307−320)モノクローナル抗体[ABI(Ad
vanced Biotechnologies In
corporated(米国)製]を用いる免疫蛍光法
で検鏡した。即ち、各カバースリップ上の細胞を、PB
S(リン酸塩緩衝食塩水)で洗浄の後、冷メタノールと
冷アセトンの等量混合液にて−20℃で5分間、固定
し、脱水させた。次に、マウスの上記モノクローナル抗
体、及びFITCで標識の抗マウスIgG抗体で染色し
た。染色済みの各標本につき、蛍光顕微鏡下で蛍光度を
指標としてHBs抗原産生の有無と強弱を検定した。そ
の結果、合計153個のウイルス株(S1−S153)
を取得し、これ等のうち、6株が組換えVZV/HIV
クローン候補株として選定された。また、この検定結果
に基づき、上述のフラスコ内で増殖させた感染細胞のう
ち、各組換え体クローン候補株の感染細胞から、細胞遊
離の組換えVZV/HIVを調製しの後、使用に供する
まで−70℃で保存した(Jouranal of G
eneral Virology,61,255−26
9,1982)。次いで、直径60mmのプラスチック
製シャーレに培養のMRC−5細胞を用いて、上記の組
換えVZV/HIV候補株のうち蛍光度が最高のS14
9につきプラークアッセイを行った。なお、プラークア
ッセイでは、基礎培地として199培地(Difco社
[米国]製)を用い、参考例1の記載と同様にして調製
した維持培地に、アガロースを最終濃度が0.8%(W
/V)になるよう添加混合して固型培地を調製した。こ
の培地は、感染細胞モノシートに重層して用いた。感染
培養細胞の染色は、上記の固形培地にニュートラルレッ
ドを最終濃度0.01%(W/V)になるよう添加混合
し調製した培地を更に重層して行った。ウイルス接種
は、シャーレ当たり1〜2個のプーラクが形成されるよ
うウイルス濃度を調整して行った。また、培養は5%
(V/V)炭酸ガス保温器内で行い、培養温度等の他の
条件は、参考例3と同じであった。出現したプラークを
各々、個別に、シリンダーで釣り上げることにより、組
換えVZV/HIVをクローニングした。得られた組換
えVZV/HIVのうちの1クローン(S149C8)
を、未感染細胞5−10個に対しクローン感染細胞1個
の割合で接種し、細胞から細胞へ10代継代した。そし
て、継代第10代の各感染細胞培養からそれぞれ、細胞
遊離の組換えVZV/HIVを調製した。これ等の組換
えVZV/HIVにつき、上述と同様に免疫蛍光法で検
定し厳選した結果、HIVのEnv抗原を産生する細胞
遊離の組換えVZV/HIVを20クローン分離した。
これ等のクローンをrVA岡株シリーズとし、このシリ
ーズを構成する20株について、rVA1岡株、rVA
2岡株の要領で以下順次、rVA3岡株からrVA20
岡株まで命名した。また、これ等の20株では全て、H
IVのEnv抗原の同程度の産生が確認されたため、か
かる組換えVZVによるEnv抗原の産生はいずれも、
ウイルス継代下で遺伝学的に安定かつ良好であると判断
された。以下の実施例では、rVA岡株シリーズ中の組
換えVZV/HIV株の代表例として、rVA3岡株を
使用する。なお、rVA3岡株の親株は、参考例3及び
実施例1に記載の通り、弱毒生水痘ワクチンの有効成分
として現在、使用されている弱毒VZV岡株である。
【0036】実施例10 [組換え体ゲノムでのVZVtk/HIVenv両遺伝
子の存在の確認]実施例9で得たrVA3岡株(組換え
VZV/HIV岡株)から、実施例1の記載に従ってゲ
ノムを調製し、そのゲノムにおける上記両遺伝子の存在
をPCR法により確認した。即ち、5′から3′末端方
向に左から右に示す[tkプロモータ]−[env]−
[tk]領域の存在は、5′と3′両側が次のtkに基
づくプライマーを用いるPCR Cにより確認した: 5′側 64650−CCTCGACGTACGTTA
TCAAT−64669;及び 3′側 65891−CGCGAGTATGACAAT
GTGTA−65872。 また、[env(3′側領域)]−[tk]領域の存在
は5′側が次のenvに基づくプライマーを用いるPC
R Bにより確認した: 5′側 7172−ATAGGAAAAATAGGAA
ATATGAGAGACAAG 3′側 上記tkの3′側プライマーに同じ。 更に、[tk−プロモータ]−[env(5′側領
域)]領域の存在は3′側が次のenvに基づくプライ
マーを用いるPCR Aにより確認した: 5′側 上記tkの5′側プライマーに同じ;及び 3′側 7525−GGGTAGTCACCTGTTT
AATCTACAAG。 なお、上記プライマーに付した数字はそれぞれ塩基番号
を意味し、VZVtkについてはDavidsonとS
cott(Jouenal of general V
iroplogy,67,1759−1816,198
6)に、また、HIVenvについてGeneBank
Accession No.M19921に基づいて
いる。これ等のPCRにより得られたDNA断片は、4
%(W/V)アガロースゲル電気泳動にかけ、エチジウ
ムブロマイド染色し分析した。その結果を図1に示す。
これにより、rVA3岡株ゲノムにVZVtk/HIV
env両遺伝子の存在することが確認された。
【0037】実施例11 [組換え体が感染した細胞が産生するVZVとHIV両
抗原の検出と同定]上記両抗原の検出と同定は免疫沈降
法により行った。先ず、参考例1の記載と同様して、直
径100mmのシャーレ4枚にMRC−5細胞を培養す
る。各シャーごとに個別に、実施例9で得たrVA3岡
株(組換えVZV/HIV株)、rVA3の親株(生水
痘ワクチン岡株)、及び組換えVZV/HBV岡株(E
CACC No.V9201523)をそれぞれ接種し
た。残り1枚の細胞培養は、ウイルスを接種せず、Mo
ck(疑似対照)の調製に用いた。そして、これ等の各
細胞を、メチオニンを含有しないMEM培地に50μC
i/mlの[35S]メチオニンとシスティンを添加し
調製した基礎培地を用いて、参考例2の記載と同様に4
時間、培養を行った。次いで、各細胞を剥離し、RIP
A緩衝液[20ml Tris−HCl(pH8.
0),1%(W/V)Triton X−100,0.
1%(W/V)SDS,150mM NaCl,及び1
mM phenylmethlsulfonyl fr
uoride]と超音波で細胞破砕の後、40,000
rpmで40分間、遠心し、その上清を採取した。これ
等の各上清(いわゆるlysate)について、VZV
に対する抗モルモット血清、及び抗HIV−1gp12
0(aa307−320)モノクローナル抗体[前記の
ABI社(米国)製]を用い、免疫沈降反応させた後、
これ等をSDS−PAGE電気泳動にかけ、ラジオオー
トグラフィーを行うことにより解析した。その結果を図
2に示す。rVA岡株の感染細胞においてのみHIVの
Env抗原(30k)が検出かつ同定され、また、rV
A3岡株がEnv抗原とVZV抗原とを同時に産生する
ことが確認された。
【0038】実施例12 [実施例11における結果の追加確認]抗HIV−1抗
体として、次の3種(3メーカー製)、抗HIV−1g
p120モノクローナル抗体[Chemicon In
ternational Inc.(USA)製]、抗
HIV−1gp120モノクローナル抗体[ViroS
tat(米国)製]、及び抗HIV−1gp120ヤギ
抗体[OEM Concepts(米国)製]をそれぞ
れ用い、実施例10と同様にして、組換え体rVA岡株
の感染細胞で産生されるVZVとHIV両抗原の検出と
同定を行い、いずれも、実施例10の記載と同一の結果
を得た。即ち、rVA岡株の感染細胞においてのみHI
VのEnv抗原(30k)が検出かつ同定され、また、
rVA3岡株がEnv抗原とVZV抗原とを同時に産生
することが確認された。
【0039】実施例13 [組換えVZVを有効成分として含有する生ワクチンの
試作]培養面積210cmのルー瓶20本のMRC−
5細胞培養に、実施例9で得たrVA3岡株シードウイ
ルスを接種の後、参考例3の記載と同様にして培養し
た。培養終了後、培養液を捨て、各ルー瓶内の感染細胞
を200mlのPBS(−)にて2回洗浄した。次い
で、20mlの0.03%(W/V)EDTA−3Na
を各ルー瓶内の感染細胞に重層し、細胞をルー瓶内壁面
から剥離させ浮遊させる。各ルー瓶内の感染細胞浮遊液
をプールし、2,000rpmにて10分間、4℃で遠
心し、感染細胞のペレットを採取した。これを100m
lのPBS(−)に再浮遊の後、凍結融解を1回、行
う。次に、氷水浴中で超音波処理(20kHz、150
mA,0.3秒/ml)した後、3,000rpmで2
0分間、4℃で遠心し、細胞遊離ウイルスを含有の上清
を採取し、これを生ワクチン原液とする。この原液から
検定用として30mlをサンプリングし、残りの原液7
0mlに、PBS(−)に溶解したサッカロース及びゼ
ラチン加水分解物をワクチン安定化剤として最終濃度が
5%(W/V)及び2.5%(W/V)になるよう添加
混合し、140mlの生ワクチン最終バルクを調製し
た。この最終バルクから検定用として30mlをサンプ
リングの後、残りバルクを3ml容のバイヤル瓶に0.
5mlずつ分注し、凍結乾燥の後、窒素ガスを充填しゴ
ム栓で封をしバイヤル瓶内部を気密密閉した。この生ワ
クチン小分品は、4℃で保存し、使用の直前に注射用蒸
留水0.5mlを添加し乾燥内容物を完全に溶解し用い
た。一方、サンプリングした上記のワクチン原液と最終
バルク、及び小分品20につき、検定試験を行った。か
かる検定試験は、安全性、有効性及び均質姓を確認し、
生ワクチンとしての適格性を確定するため、厚生省告示
第217号に規定の生物学的製剤基準(1993年)
「乾燥弱毒生水痘ワクチン」に準拠し、かつ、同じく規
定の基準「組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)」
をも考慮し、実施した。かかる検定試験の結果、上記の
小分品は、そのウイルス含量が2×10PFU(プラ
ーク形成単位)/0.5mlであり、かつ、上記基準に
規定の各種試験に合格したため、適格性な生ワクチンで
あると判定された。
【0040】実施例14 [診断剤用の組換えVZV抗原の試作]培養面積210
cmのルー瓶20本のMRC−5細胞培養に、実施例
8で得たrVA3岡株シードウイルスを接種し、参考例
3の記載と同様にして培養する。1日間培養の後、各ル
ー瓶の培養液を捨て、各ルー瓶内の感染細胞を200m
lのPBSにて2回洗浄した。次いで、フェーノレッド
を抜いた199培地[Difco社(米国)製]を各ル
ー瓶に注入し、更に3日間、37℃で培養を続ける。培
養終了後、各ルー瓶から培養液を採取し、プールした。
これを3,000rpmにて20分間遠心し、その上清
をミニタン限外濾過機MW10000[ミリポア(米
国)製]で、体積を1/20に濃縮した。次に、この濃
縮液を56℃で30分間加熱し、ウイルスを不活化し
た。得られた不活化濃縮液中の組換えVZV/HIVの
抗原蛋白含量が5μg/mlになるようPBSで希釈調
整し、これを3ml容のアンプルに2mlずつ分注の
後、熔封し、水痘及びB型肝炎の診断剤とした。
【0041】実施例15 [rVA3岡株を有効成分として含有する生ワクチンの
免疫原性の判定]モルモットでの皮内反応により行っ
た。抗原として、[A]実施例13で製造したrVA岡
株を含有の弱毒生ワクチン,[B]比較対照としてrV
A岡株の親株を含有の市販の乾燥弱毒生水痘岡株ワクチ
ン(財団法人阪大微生物病研究会製)、及び[C]MR
C−5未感染細胞から実施例13と同様にして調製した
Mockワクチン(疑似対照)をそれぞれ用いた。先
ず、HIV−1(LAI株)感染細胞、即ち、67%の
割合でgp120抗原が検出されるヒトleukemi
a細胞CME(細胞数5×10)を採取し、56℃で
30分間、加熱処理した後、これを5mlのPBS
(−)に浮遊し、超音波にかけ細胞破砕物を調製した。
次ぎに、この細胞破砕物とFreund不完全アジュバ
ントとの混合液を調製し、これを、4週令の平均体重2
50gのモルモット3群(1群5匹、合計15匹)の各
々に0.5mlずつ皮下接種することにより基礎免疫し
た。その接種日から30日後に、A群5匹の各モルモッ
トに上記[A]を50,000PFU、皮下接種した。
同様にして、B群には上記[B]を50,000PFU
/モルモット、また、C群には上記[C]を1.25m
l/モルモット、それぞれ皮下接種した。次いで、皮下
接種から3週間後に、LAI株感染CEM細胞抗原、C
EM細胞抗原、及びVZV抗原を、各モルモットの背部
の2か所/抗原に、0.1mlずつ皮内接種し、その2
4時間後に判定した。なお、LAI株感染細胞抗原とし
て、9%の割合でgp120抗原が検出されるCME
(5×10゜細胞)を56℃で30分間、加熱処理した
後、5mlのPBS(−)に浮遊し、超音波にかけ、更
に、これを3,000rpmで10分間、低速遠心した
上清を用いた。CEM細胞抗原はCME(5×10
胞)から、また、VZV抗原はVZV感染MRC−5細
胞から、それぞれ、上記のLAI株感染細胞抗原と同様
にして調製した。また、上記判定は、皮内接種後24時
間の各モルモットの接種局所の発赤の長径と短径を測定
することにより行った。各免疫群の皮膚反応の程度は次
式: π×長径mm×短径mm/4の平均値±標準誤差 により算出し、免疫群間の有意差はt検定により推計し
た。その結果を表1に示す。rVA3岡株を有効成分と
する弱毒生ワクチンは、危険率5%以下で、エイズ及び
水痘両者の細胞性免疫を同時に誘導することが確認され
た。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】この出願の発明は、安全性と有効性を兼
ね備えた2価の生ワクチン、即ち、弱毒生エイズワクチ
ンと弱毒生水痘ワクチンの両機能を併せて同時に発揮す
る生ワクチンを世界に広く提供し、特に、待望のワクチ
ンによるエイズ予防の実現を確実にする。更に、エイズ
と水痘の2種混合生ワクチンと同等の免疫効果が得られ
るため、これ等の両者の予防を1回接種で達成可能に
し、予防接種における画期的な省力化をもたらす。ま
た、エイズの治療、診断、基礎研究等に係る有力な材料
を提供し、これ等を発展させる。
【0044】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】PCR法で増幅された3領域のDNAの電気泳
動図であり、組換え体ゲノムにおけるVZVtkとHI
Venv両遺伝子の存在を示す図である。なお、写真下
の長方形図は、VZVtkプロモーターHIVenv−
VZVtkからなる組換え遺伝子を表わす模式図であ
り、棒線と実線は、PCRプライマーA,B及びCがそ
れぞれ増幅した上記遺伝子の部分の位置を示す。
【図2】免疫沈降反応後のSDS−PAGEにおけるラ
ジオオートグラフイーの図であり、組換え体の感染細胞
で生産されたVZV抗原、及びHIVのEnv抗原、特
に、Env(30k)抗原の存在を示す。Lysat
e:未感染細胞の溶解物、Anti−VZV:抗VZV
抗体、Anti−HIVenv:HIVのEnv(第3
07−320番アミノ酸)に対するモクローナル抗体;
M:未感染細胞抗原、V:弱毒生水痘ワクチン岡株ウイ
ルス感染細胞抗原、R:弱毒組換えVZV/HBV感染
細胞抗原、及びH:rVA岡株(弱毒組換えVZV/H
IV)感染細胞抗原。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 7/04 C12N 7/04 G01N 33/569 G01N 33/569 H //(C12N 15/09 ZNA C12R 1:92) Fターム(参考) 4B024 AA01 AA14 BA35 CA04 DA03 EA02 FA02 GA11 HA15 4B065 AA93X AA95X AB01 BA02 CA24 CA45 4C085 AA03 AA08 BA69 BA79 CC08 DD62 EE01 4H045 AA10 AA11 AA20 AA30 BA10 CA05 DA86 EA31 FA72 FA74 GA15

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 VZVのTK遺伝子プロモーターの下流
    領域にHIV遺伝子を挿入連係することを特徴とする組
    換えVZV/HIVの作製方法。
  2. 【請求項2】 VZVのTK遺伝子プロモーターの下流
    領域にHIV遺伝子が挿入連係された組換えVZV/H
    IV。
  3. 【請求項3】 VZVが弱毒生水痘ワクチン用の水痘ウ
    イルス岡株である請求項2に記載の組換えVZV/HI
    V。
  4. 【請求項4】 HIV遺伝子がEnv遺伝子の部分であ
    る請求項2又は3にに記載の組換えVZV/HIV。
  5. 【請求項5】 rVA岡株シリーズを構成する組換えV
    ZV/HIV群から選ばれる少なくとも1クローンのウ
    イルス株。
  6. 【請求項6】 請求項2、3、4、又は5に記載の組換
    えVZV/HIVに由来の抗原。
  7. 【請求項7】 請求項2、3、4、又は5に記載の組換
    えVZV/HIVゲノムDNA。
  8. 【請求項8】 請求項2、3、4、又は5に記載の組換
    えVZV/HIVを免疫を奏する量、含有することを特
    徴とする生ワクチン。
  9. 【請求項9】 請求項6に記載の抗原を抗原抗体反応を
    呈する量、含有することを特徴とする診断剤。
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