JP2000317215A - 凝集沈澱装置およびそれを用いた水処理方法 - Google Patents

凝集沈澱装置およびそれを用いた水処理方法

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JP2000317215A JP11130976A JP13097699A JP2000317215A JP 2000317215 A JP2000317215 A JP 2000317215A JP 11130976 A JP11130976 A JP 11130976A JP 13097699 A JP13097699 A JP 13097699A JP 2000317215 A JP2000317215 A JP 2000317215A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 中間槽を設けることなく、沈澱槽における処
理の線速度が30〜100m/hという高速処理を可能
とし、かつ、原水量に対する粒状物の注入率を実質的に
管理することなく長時間にわたって目標とする高速処理
を安定して行うことのできる、より安価で設置面積も小
さくて済む凝集沈澱装置を提供する。 【解決手段】 原水中の懸濁物質を凝集剤と粒状物の添
加によりフロックとして凝集させる凝集槽と、凝集槽か
らの導入水中のフロックを沈澱させ処理水とフロックと
に分離する沈澱槽とを備えた凝集沈澱装置において、凝
集槽内の粒状物の濃度が5g/l以上であることを特徴
とする凝集沈澱装置、およびそれを用いた水処理方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原水中の懸濁物質
を凝集沈澱により汚泥と処理水とに分離する凝集沈澱装
置、およびそれを用いた水処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】原水中に懸濁している物質(以下、SS
[Suspended Solid] と称することもある。)を沈澱によ
り分離除去する装置が知られている。従来の原水中のS
Sを除去するための凝集沈澱装置として、原水に単に凝
集剤を添加して凝集物を沈澱させ、凝集物を汚泥として
引き抜くとともに上部から処理水を導出するようにした
装置はよく知られている。
【0003】このような一般的な凝集沈澱装置では、凝
集物の沈澱に長時間を要し、沈澱槽としても極めて大型
のものが要求されることから、より効率よく凝集沈澱を
行わせるようにした凝集沈澱装置が提案されている。
【0004】たとえばフランス特許第1411792号
には、凝集槽において、原水に凝集剤とともに、粒径1
0〜200μm程度の粒状物(代表的には、砂)を添加
し、原水中のSSを比重の大きい粒状物を含んだ比較的
大きなフロックとして凝集させ、沈澱槽において凝集槽
から導入された被処理水中のフロックを沈澱させて処理
水と分離する凝集沈澱装置が開示されている。沈澱槽か
ら引き抜かれた沈澱フロックは、サイクロン等の分離器
により汚泥と粒状物とに分離され、分離された粒状物は
凝集槽に戻されて循環使用される。
【0005】ところが現実には、凝集剤の添加量が少量
であることから、粒状物もそれに対応して少量しか添加
されておらず、迅速かつ分離効率のよい沈澱を実現させ
るだけのフロックまで成長させることが困難であった。
したがって、現実の運転においては、沈澱槽における水
処理の線速度は6〜8m/h程度しか達成できず、より
高流速の線速度の達成は困難であるというのが実情であ
った。
【0006】このような実情に対し、特許第26342
30号公報には、凝集槽と沈澱槽との間に攪拌機を備え
た中間槽を設けることにより、高流速の線速度での処理
を可能とした凝集沈澱装置が開示されている。
【0007】この凝集沈澱装置は、たとえば図6に示す
ように構成されており、原水101にたとえば無機凝集
剤102と高分子凝集剤103とともに粒状物としての
砂104が添加され、凝集槽105内で攪拌機106で
攪拌されつつ原水中のSSが凝集され、被処理水が中間
槽107に導入されて、さらに攪拌機108で攪拌され
つつ、フロックの成長がより助長されるようになってい
る。成長した砂含有のフロックを含む被処理水が沈澱槽
109に導入されるので、フロックはより効率よく迅速
に沈澱し、より短時間で処理水110と分離できるよう
になる。特許第2634230号公報によると、この凝
集沈澱装置により、線速度が30〜60m/h、さらに
は90m/hという高流速での処理が可能になると記載
されている。この凝集沈澱装置では、砂104は、原水
に対し1〜4g/lの濃度で運転されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
許第2634230号に提案されている装置において
は、凝集槽105と沈澱槽109の間に攪拌を伴う中間
槽107を設ける必要があるので、その分、設備費、電
力量、設置面積の増大を招くことになっている。
【0009】また、上記特許においては、原水量に対す
る砂の注入率をある狭い範囲(1〜4g/l)にするこ
とが提案されているが、原水量の変動、原水水質の変
動、それら変動に伴う凝集剤の添加量の変更により、原
水量に対する砂の注入率は変化するので、現実の運転に
際してはその管理が非常に困難である。
【0010】さらに、図6に示したように、沈澱槽10
9の底部に沈澱したフロックは汚泥引抜ポンプ111に
より引き抜かれ、サイクロン等からなる分離器112に
よって汚泥113と砂104とに分離され、分離された
砂104が凝集槽105に戻されて循環使用されるよう
になっているが、砂104は、分離器112では完全に
分離されずにその一部が汚泥とともに系外に排出された
り、処理水110中のSSとして系外に排出されること
があるので、系内の砂量が運転時間の経過とともに減少
することになる。そのため、初期的に系内の砂の濃度を
原水量に対し前述したような濃度に管理したとしても、
長時間にわたって安定的に運転することは困難であっ
た。
【0011】そこで本発明の課題は、上記のような中間
槽を設けることなく、沈澱槽における処理の線速度が3
0〜100m/hという高速処理を可能とし、かつ、原
水量に対する粒状物の注入率を実質的に管理することな
く長時間にわたって目標とする高速処理を安定して行う
ことのできる、より安価でしかも設置面積も小さくて済
む凝集沈澱装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明の凝集沈澱装置は、原水中の懸濁物質を凝集
剤と粒状物の添加によりフロックとして凝集させる凝集
槽と、凝集槽からの導入水中のフロックを沈澱させ処理
水とフロックとに分離する沈澱槽とを備えた凝集沈澱装
置において、凝集槽内の粒状物の濃度が5g/l以上で
あることを特徴とするものからなる。
【0013】凝集槽内の粒状物の濃度は、好ましくは5
g/l〜200g/lの範囲にあり、より好ましくは1
0g/l〜150g/lの範囲、さらに好ましくは10
g/l〜120g/lの範囲、特に好ましくは15g/
l〜80g/lの範囲である。
【0014】また、使用する粒状物の粒径はとくに限定
しないが、粒状物の数と凝集されるフロックの大きさ、
あるいはフロックの成長との間には相関関係があると考
えられることから、粒状物の平均粒径と凝集槽内の粒状
物の濃度との比率を特定の範囲に管理することは、粒状
物を含むフロックを効率よく沈澱に最適な大きさや比重
にまで成長させるのに有効である。この面から、粒状物
の平均粒径d(μm)に対する凝集槽内の粒状物の濃度
C(g/l)の比C/dが0.1〜2の範囲にあること
が好ましい。
【0015】粒状物としては、代表的には砂を使用する
ことができ、とくに粒径を揃えた、平均粒径が上記のよ
うな範囲を満足するものが好ましい。また、凝集剤とし
ては、通常、無機凝集剤と高分子凝集剤を使用すること
ができる。無機凝集剤は、原水中の懸濁物質を効率よく
凝集させることができ、高分子凝集剤は、無機凝集剤に
よって生成した微細な凝集フロックをさらにポリマーを
絡めてより大きなフロックへと成長させる。この成長し
たフロック内に、比重の大きい砂等からなる粒状物が混
在し、全体として比重(密度)の大きい沈澱しやすいフ
ロックが形成されることになる。
【0016】凝集槽には、汚泥濃度を測定するためのサ
ンプリング装置を付設しておくことが好ましい。汚泥濃
度の測定は、必ずしも連続的に行う必要はなく、比較的
長時間の間隔をもって、定期的にあるいは不定期に測定
すればよい。装置運転中には、初期に添加した粒状物の
ほとんどは凝集槽の中にあり、沈澱槽や沈澱槽からの循
環ライン中の粒状物の量はわずかしかないので、粒状物
量の監視には、凝集槽内の汚泥濃度の測定が最適であ
る。すなわち、凝集剤の添加量は粒状物の添加量に比べ
はるかに少なく、かつ、凝集槽内における、5g/l以
上と高濃度でしかも比重の大きい粒状物と汚泥成分との
比率は重量比で、たとえば30:1〜300:1程度で
あるので、汚泥全体(つまり、粒状物を含むフロックに
成長した汚泥成分)の濃度は粒状物の濃度を実質的に代
表していることになる。したがって、この凝集槽内の汚
泥濃度を測定することにより、凝集槽内の粒状物の濃度
を前述した所定の範囲内に管理することができる。
【0017】また、凝集槽の下部は、下方に向かって狭
まるコーン状に形成されていることが好ましい。このよ
うな形状の槽に形成しておけば、攪拌によりフロックと
して成長させる際に、凝集槽の底部まで良好に攪拌さ
れ、成長したフロックが凝集槽底部に溜まることが抑制
され、良好に沈澱槽へと移送される。
【0018】沈澱槽に対しては、図6に示した装置と同
様に、沈澱されたフロックを引き抜くラインが接続され
ればよく、該引抜ラインには、引き抜かれたフロックを
汚泥と凝集槽に循環される粒状物とに分離する手段(た
とえば、サイクロン)が設けられればよい。
【0019】本発明に係る水処理方法は、上記のような
凝集沈澱装置を用いて原水の処理を行う方法からなる。
【0020】長期間にわたる処理に際しては、凝集槽内
の汚泥濃度を測定し、測定された汚泥濃度に基づいて、
凝集槽内の粒状物の濃度を管理することが好ましい。前
述したように、凝集槽内の汚泥濃度は凝集槽内の粒状物
の濃度を代表するから、この管理によって粒状物の濃度
を目標とする濃度範囲内に維持することが可能になる。
【0021】上記のような本発明に係る凝集沈澱装置お
よびそれを用いた水処理方法においては、凝集槽内にお
ける粒状物の濃度が、5g/l以上と従来にない高濃度
で運転される。このような粒状物濃度とすることによ
り、驚くべきことに、中間槽を設けることなく、比較的
大きな、粒状物を含むフロックが迅速に成長、形成さ
れ、沈澱槽において30〜100m/hという高流速の
線速度での処理が可能となる。形成されたフロック全体
内に占める粒状物の割合も高いから、フロックの比重
(密度)も大きくなり、沈澱槽におけるより高速の沈澱
が可能になる。中間槽を設けなくて済むので、設備費も
安価であり、設置面積も小さい。
【0022】また、本発明においては、基本的に、原水
量に対する粒状物の注入量を管理する必要はなく、凝集
槽内における粒状物の濃度が所定の範囲になるように運
転を続ければよいから、原水変動や水質変動に対しても
煩雑なメンテナンス、管理は不要になる。したがって、
長時間にわたって安定した、処理水水質の良好な水処理
が可能になる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の望ましい実施の
形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発
明の一実施態様に係る凝集沈澱装置1を示している。凝
集沈澱装置1は、凝集槽2と、それに隣接配置された沈
澱槽3を備えている。凝集槽2には、原水供給ライン4
を介して原水5が供給され、本実施態様では、無機凝集
剤6と、高分子凝集剤7がライン注入される。無機凝集
剤6の注入位置の下流側には、スタティックミキサー等
からなるミキサ8が介装されており、注入された凝集剤
が原水に良好に混合されるようになっている。ただし、
これら凝集剤は、凝集槽2に直接投入することも可能で
ある。
【0024】無機凝集剤6としては、たとえばポリ塩化
アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、硫酸第二鉄を使
用でき、高分子凝集剤7としては、たとえばノニオン
性、アニオン性あるいは両性の高分子凝集剤を用いるこ
とができる。アニオン性の高分子凝集剤としては、たと
えば、アクリル酸またはその塩の重合物、アクリル酸ま
たはその塩とアクリルアミドとの共重合物、アクリルア
ミドと2−アクリルアミド−2メチルプロパンスルホン
酸塩の共重合物、アクリル酸またはその塩とアクリルア
ミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホ
ン酸塩の3元共重合物、ポリアクリルアミドの部分加水
分解物などが挙げられるが、特にこれらに限定されるも
のではない。ノニオン性の高分子凝集剤としては、代表
的なものとしてポリアクリルアミドが挙げられるが、特
にこれに限定されるものではない。両性の高分子凝集剤
としては、たとえば、ジメチルアミノエチル(メタ)ア
クリレートの3級塩および4級塩(塩化メチル塩等)等
の少なくとも1種のカチオン性単量体と、アクリル酸お
よびその塩(ナトリウム、カルシウム等の塩類)、2−
アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩(ナ
トリウム、カルシウム等の塩類)等の少なくとも1種の
アニオン性単量体の共重合物、あるいは、上記の少なく
とも1種のカチオン性単量体および上記の少なくとも1
種のアニオン性単量体とアクリルアミド等の少なくとも
1種のノニオン性単量体との三元もしくは四元以上の共
重合物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるもの
ではない。高分子凝集剤の分子量の範囲は特に限定され
ないが、500万〜2000万の範囲が好ましい。これ
らの高分子凝集剤は、単独で又は混合物として用いるこ
とができる。高分子凝集剤の添加量は、一般的に経済的
な観点から0.3〜2mg/l程度である。
【0025】凝集槽2内には、粒状物としての砂9が添
加される。添加量は、凝集槽2内における砂9の濃度が
5g/l以上になるように初期添加され、後述の如く、
所定の濃度を維持できるように、定期的にあるいは不定
期に不足分が補充される。添加量は、好ましくは5g/
l〜200g/lの範囲、より好ましくは10g/l〜
150g/lの範囲、さらに好ましくは10g/l〜1
20g/lの範囲、特に好ましくは15g/l〜80g
/lの範囲とされる。
【0026】凝集槽2には、モータ10によって駆動さ
れる攪拌機11が設けられており、攪拌により原水中の
懸濁物質が、無機凝集剤6、高分子凝集剤7、砂9を含
むフロックとして凝集される。
【0027】この凝集においては、無機凝集剤6が懸濁
物質を凝集させて微細なフロックを生成させ、それに高
分子凝集剤7が絡まってより大きなフロックに成長さ
せ、成長したフロックには比重の大きい粒状物としての
砂9が含有され、全体として比較的大きな、比重の大き
い沈澱しやすいフロックに成長する。とくに本発明にお
いては、砂9の濃度が従来よりも大幅に高いので、より
沈澱しやすいフロックに形成される。
【0028】フロックの成長は、攪拌機11の攪拌翼近
傍よりはむしろその上方部位で進む。凝集槽2の下部2
aは、下方に向かって狭まるコーン状に形成されてお
り、攪拌翼の回転に伴って回動する被処理水の回転流の
流速が下部2aにおいて高められるため、凝集槽2の下
部2aへのフロックの沈澱や堆積は適切に防止されてい
る。
【0029】成長した凝集フロック13を含む被処理水
は、越流ぜき12を介して沈澱槽3へと導入される。沈
澱槽3では、導入水中のフロックが下方に沈澱され、沈
澱されたフロックは上方の処理水14に対して分離され
る。沈澱槽3内の上部には、複数の傾斜板15が並設さ
れており、処理水14とともにフロックが流出するのを
抑制している。
【0030】沈澱槽3の底部には、沈澱されたフロック
を引き抜くための引抜ライン16が接続されており、汚
泥引抜ポンプ17によって、沈澱した凝集フロックが引
き抜かれる。引き抜かれたフロックは、分離器としての
サイクロン18に送られ、サイクロン18内における遠
心分離により、汚泥19と砂9とに分離される。分離さ
れた砂9は、再び凝集槽2内に戻されて循環使用され
る。
【0031】本実施態様においては、凝集槽2に、凝集
槽2内における汚泥濃度を測定するためのサンプリング
装置20が付設されている。このサンプリング装置20
は、常時設置される装置としてもよく、たとえば移動
式、可搬式として、必要なときにのみ濃度を測定できる
手段に構成してもよい。前述の如く、凝集槽2内におけ
る汚泥濃度は、凝集槽2内における砂の濃度を代表す
る。
【0032】上記のように構成された凝集沈澱装置1に
おいては、凝集槽2内における砂9の濃度が目標値以上
を維持できるように、砂9の初期投入量が設定される。
この設定は、少し余裕をもって多目に設定され、運転中
に系外に持ち去られる砂の量によって系内を循環使用さ
れる砂の量が減少した場合には、目標値以上の砂量を維
持できるように適宜補充される。補充の間隔は、初期投
入量にもよるが、この補充は、凝集槽2内における汚泥
濃度の測定結果に基づいて、定期的にあるいは不定期に
行えば十分である。
【0033】たとえば、40g/lの濃度になるように
砂9を凝集槽2に初期投入し、濃度が10g/lまで減
少したときに、30g/l分の砂を補充するようにす
る。砂9の濃度の低下(系外への砂の持ち去り)には長
時間を要するので、実際には上記のような運転管理方法
により長時間にわたって安定した運転が可能である。
【0034】本発明では、凝集槽2内における砂9の濃
度が5g/l以上と、従来よりもはるかに高濃度の状態
で運転されるので、砂9を含有した比重の大きい、比較
的大きなフロックが形成され、沈澱槽3においては、迅
速な沈澱が可能となって、30〜100m/hという高
い線速度での処理が可能となる。
【0035】凝集槽2内における砂9の濃度が5g/l
未満では、生成されるフロックが軽いためフロックが流
出するおそれがあり、沈澱槽3における高速処理は難し
くなる。また、このような低濃度で高速処理を行うため
には、前述したような中間槽の設置が必要になる。ま
た、凝集槽2内における砂9の濃度は200g/l以下
であることが好ましく、従来と同様の無機凝集剤6、高
分子凝集剤7の添加量では、砂9の濃度が200g/l
を越えると、凝集力が不足して生成されるフロックの径
が小さくなり、フロックが処理水中に混入する量が多く
なって処理水の水質を悪化させるおそれがある。凝集剤
は高価なものであるため、極端に増量することはできな
いから、砂9の濃度の増加を凝集剤の増量で補う方法は
現実的ではない。この面からも、砂9の濃度を200g
/l以下に抑えることが好ましい。
【0036】凝集槽2内における砂9の濃度を上記の範
囲とすることにより、中間槽を設けることなく、線速度
が30〜100m/hという高速処理にて、長時間にわ
たって安定した水処理が可能になる。
【0037】また、本発明ではこのように砂9の濃度を
従来にはない濃度にまで高めて運転するが、フロックの
凝集による成長をミクロ的にみると、原水中の懸濁物質
に対する砂の絶対数が効いてくることも考えられる。こ
れに対しては、砂9の平均粒径d(μm)に対する凝集
槽2内の砂9の濃度C(g/l)の比C/dを0.1〜
2の範囲とすればよい。この範囲内のC/dにすること
により、より良好に比較的大きなフロックの成長が確保
され、それによって沈澱処理の高速性も確保される。
【0038】本発明で規定したように凝集槽内における
砂の濃度を、5g/l以上、あるいは5g/l以上20
0g/l以下とすることの効果を確認するために、以下
のような実験を行った。
【0039】〔実験〕懸濁物質としてカオリンを原水に
添加した人口濁水に、無機凝集剤としてPACを注入し
てラインミキシングし、凝集槽に高分子凝集剤としての
ポリマーを注入し、以下の条件で実験して、処理水の濁
度を測定した。(実験は図1に示した装置にて行っ
た。)
【0040】 ・実験機 : 凝集槽容量 : 500リットル 沈澱槽 : 500mm□×3000mmH ・運転条件: 原水流量 : 15m3 /h (沈澱槽線速度〔LV〕=60m/h) カオリン注入量 : 20mg/l PAC注入量 : 20mg/l ポリマー注入量 : 0.1〜3.0mg/l (ポリアクリルアミド系アニオン性ポリマー) 分子量≒1300万 砂添加量 : 2.5〜250g/l(凝集槽内濃度) 砂平均粒径 : 100μm 水温 : 6℃,12℃
【0041】砂添加量を2.5g/lから添加していく
と、図2、図3に示すように、5g/l以上程度で急激
に処理水濁度は良くなったが、さらに砂を添加してある
量を越えた場合には悪化し、砂の添加量には適切な範囲
があった。この適切な範囲は、ポリマー添加量の増加と
ともに砂添加量の多い方に広がった。
【0042】処理水濁度の目標値を3度以下とした場
合、ポリマー(高分子凝集剤)注入量を通常の経済的観
点からの上限値2.0mg/lとした場合、砂の添加量
は200g/l以下(図3、水温12℃の場合)、ある
いは150g/l以下(図2、水温6℃の場合)が好適
である。
【0043】また、ポリマー注入量は、通常は0.3m
g/l〜1.0mg/l程度であるので、より好ましい
砂添加量の範囲は、10g/l〜150g/lの範囲、
さらに好ましくは10g/l〜120g/lの範囲、よ
り高い処理水質を得るために(たとえば濁度1度以下に
するためには)、特に好ましくは15g/l〜80g/
lの範囲である。
【0044】このように、本発明で規定した凝集槽内に
おける砂濃度とすることにより、中間槽を設けることな
く、水質の良好な処理水を高速でかつ安定して得ること
ができる。
【0045】なお、凝集槽内における粒状物の最適な濃
度は、図2や図3に示したように、高分子凝集剤の注入
量や水温等によって、とくに濃度の上限値がばらつくこ
とが判明した。
【0046】この上限値のばらつきに対しては、以下の
ような考え方によって対処が可能である。砂(粒状物)
の凝集槽内における濃度の目標上限値α(g/l)、つ
まり、砂(粒状物)の凝集槽内における濃度範囲を5〜
α(g/l)とすると、 α=β√x (1) で表わすことが可能である。ここで、 β : 高分子凝集剤の種類や水温等によって変化する
係数 x : 原水に対する高分子凝集剤注入量(mg/l) である。
【0047】すなわち、前述の実験結果において、処理
水濁度の許容値を3度とした場合、水温6℃と12℃の
場合のデータは図4、図5に示すようになった。図4、
図5では、高分子凝集剤(ポリマー)添加量の平方根
(√x)を横軸にとり、砂添加量の上限値αを縦軸にと
ってある。図4(水温6℃)の場合には、特性線の傾
き、つまりβは108.07となり、図5(水温12
℃)の場合には、βは165.65となった。
【0048】求められたβの値、そのときの高分子凝集
剤添加量から、水温に応じた、最適な砂添加量の上限値
を求めることができる。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の凝集沈澱
装置およびそれを用いた水処理方法によれば、粒状物の
凝集槽内における濃度を最適な高濃度範囲とすることに
より、凝集槽と沈澱槽との間に中間槽を設けることな
く、沈澱槽における処理を線速度30〜100m/hと
いう高速処理で行うことが可能となる。また、粒状物の
凝集槽内の濃度を最適な範囲とすることにより、極めて
良好な処理水の水質も達成できる。中間槽を設けなくて
もよいから、装置全体を安価に構成でき、設置面積も小
さい。
【0050】また、原水量に対する粒状物の注入量を実
質的に管理する必要がなく、原水変動や水質変動に対し
ても煩雑なメンテナンスや管理を行う必要がなくなり、
長時間安定して所定の運転を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る凝集沈澱装置の全体
構成図である。
【図2】本発明による効果を確認するための実験で得
た、水温6℃時の特性図である。
【図3】同実験による水温12℃時の特性図である。
【図4】式(1)の係数βを求めるための水温6℃時の
特性図である。
【図5】式(1)の係数βを求めるための水温12℃時
の特性図である。
【図6】従来の凝集沈澱装置の全体構成図である。
【符号の説明】
1 凝集沈澱装置 2 凝集槽 2a 凝集槽の下部 3 沈澱槽 4 原水供給ライン 5 原水 6 無機凝集剤 7 高分子凝集剤 8 ミキサー 9 粒状物としての砂 10 モータ 11 攪拌機 12 越流ぜき 13 成長したフロック 14 処理水 15 傾斜板 16 引抜ライン 17 汚泥引抜ポンプ 18 分離器としてのサイクロン 19 汚泥 20 サンプリング装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B01D 21/30 B01D 21/30 A C02F 1/52 C02F 1/52 Z

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原水中の懸濁物質を凝集剤と粒状物の添
    加によりフロックとして凝集させる凝集槽と、凝集槽か
    らの導入水中のフロックを沈澱させ処理水とフロックと
    に分離する沈澱槽とを備えた凝集沈澱装置において、凝
    集槽内の粒状物の濃度が5g/l以上であることを特徴
    とする凝集沈澱装置。
  2. 【請求項2】 凝集槽内の粒状物の濃度が5g/l〜2
    00g/lの範囲にある、請求項1の凝集沈澱装置。
  3. 【請求項3】 粒状物の平均粒径d(μm)に対する凝
    集槽内の粒状物の濃度C(g/l)の比C/dが0.1
    〜2の範囲にある、請求項1または2の凝集沈澱装置。
  4. 【請求項4】 粒状物が砂である、請求項1ないし3の
    いずれかに記載の凝集沈澱装置。
  5. 【請求項5】 凝集剤が無機凝集剤と高分子凝集剤を含
    む、請求項1ないし4のいずれかに記載の凝集沈澱装
    置。
  6. 【請求項6】 凝集槽に、汚泥濃度を測定するためのサ
    ンプリング装置が付設されている、請求項1ないし5の
    いずれかに記載の凝集沈澱装置。
  7. 【請求項7】 凝集槽の下部が、下方に向かって狭まる
    コーン状に形成されている、請求項1ないし6のいずれ
    かに記載の凝集沈澱装置。
  8. 【請求項8】 沈澱槽に、沈澱されたフロックを引き抜
    くラインが接続され、該引抜ラインに、引き抜かれたフ
    ロックを汚泥と凝集槽に循環される粒状物とに分離する
    手段が設けられている、請求項1ないし7のいずれかに
    記載の凝集沈澱装置。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれかに記載の凝
    集沈澱装置を用いて原水の処理を行うことを特徴とする
    水処理方法。
  10. 【請求項10】 凝集槽内の汚泥濃度を測定し、測定さ
    れた汚泥濃度に基づいて、凝集槽内の粒状物の濃度を管
    理する、請求項9の水処理方法。
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