JP2000312953A - 鋼の連続鋳造方法および連続鋳造鋳片 - Google Patents

鋼の連続鋳造方法および連続鋳造鋳片

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、中心近傍の粗い粒状晶とそれを取
り囲む粗い柱状晶を、共に微細な等軸晶にできる鋼の連
続鋳造方法およびそれを用いて鋳造した連続鋳造鋳片に
関す提供する。 【解決手段】 鋼の連続鋳造用タンディッシュ、或いは
取鍋において、プラズマ加熱装置の作動ガスを用いてA
l、Zr、Ti、Caの内1種類又は複数種類を含有さ
せたMgOフラックスを溶鋼表面に吹き付け、これによ
り得られた溶鋼を連続鋳造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】通常の連続鋳造鋳片の横断面
には、中心にポロシティを伴う最終凝固部を取り囲むよ
うに配された中心近傍の粗い粒状晶部と、粗い粒状晶部
を取り囲む粗い柱状晶部とが観察される。この粗い粒状
晶と粗い柱状晶とを微細な等軸晶にすることができれ
ば、例えばスラブを薄板にした際には成形加工性が顕著
に優れた薄板になり、また例えば厚板にした際には低温
靱性に優れた厚板となる。本発明は、この粗い粒状晶と
柱状晶を微細な等軸晶にできる溶鋼の連続鋳造方法およ
びそれを用いて鋳造した微細な凝固組織を有する連続鋳
造鋳片に関するものである。
【0002】
【従来の技術】「鉄鋼便覧」第3版、II 製銑・製鋼、
p.653には、等軸晶は溶鋼過熱度が低いと増加する
ことから、等軸晶化には低温鋳造が有効であることが示
されている。また、特開昭50−23338号公報に
は、誘導電磁攪拌装置を用いて、凝固界面近傍の溶鋼に
一方向の旋回流を与え、柱状デンドライトを分断するこ
とにより柱状晶を等軸晶にする技術が記載されている。
現状、凝固組織の等軸晶化には上記2つの技術が最も効
果的であるとされており、これら技術は単独で、又は、
組み合わせて使用することにより凝固組織をある程度等
軸晶化し、鋳片の中心偏析低減に効果を発揮している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、低温鋳
造では、溶融金属の過熱度を液相線に近い温度にし、こ
れを浸漬ノズルから鋳型内に注入する必要があるため、
浸漬ノズルの閉塞や鋳型内でのディッケル生成等の凝固
異常を招く場合がある。このため、現状の連続鋳造では
注入する溶融金属の過熱度は20〜30K程度を採用し
ており、このような温度条件では薄板の成形加工性や厚
板の低温靱性を改善できる程の微細等軸晶化は達成され
ていない。また、誘導電磁攪拌を用いる方法について
も、材質が改善できるまでの十分な微細等軸晶が安定し
て得られているわけではなく、例えば等軸晶が生成し難
いC含有率が0.1%以下の溶鋼に対しては、柱状晶を
十分に等軸晶化することは難しい。
【0004】本発明は、このような現状を鑑み、中心近
傍の粗い粒状晶とそれを取り囲む粗い柱状晶を、共に微
細な等軸晶にできる連続鋳造方法およびそれを用いて鋳
造した微細な凝固組織を有する連続鋳造鋳片の提供を課
題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)プラズ
マ加熱装置の作動ガスを用いてAl、Zr、Ti、Ca
の内1種類又は複数種類を含有させたMgOフラックス
を溶鋼表面に吹き付け、これにより得られた溶鋼を連続
鋳造することを特徴とする鋼の連続鋳造方法である。ま
た、(2)鋼の連続鋳造用タンディッシュにおいて、プ
ラズマ加熱装置の作動ガスを用いてAl、Zr、Ti、
Caの内1種類又は複数種類を含有させたMgOフラッ
クスを溶鋼表面に吹き付け、これにより得られた溶鋼を
連続鋳造することを特徴とする鋼の連続鋳造方法であ
る。また、(3)請求項1または2記載の鋼の連続鋳造
方法により凝固組織を超微細にしたことを特徴とする連
続鋳造鋳片である。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の基本思想は、微細な酸化
物を溶鋼中に分散させ、これを等軸晶の核として鋳片内
部に微細な等軸晶を生成させることにある。
【0007】この基本思想を実現するためには、鋳型内
の溶鋼中に等軸晶の核となり得る微細な酸化物を均一に
分散させることが重要となる。Al脱酸溶鋼には多数の
Al 23系介在物が存在するが、この介在物は極めて凝
集・合体し易く粗大な酸化物となるため、等軸晶の核と
して有効には作用しない。これに対し、本発明者らは、
溶鋼中にMgを添加し、Al23系介在物をMgO、或
いはMgO・Al23に改質することにより、微細な酸
化物を溶鋼中に均一に分散できること、さらにこれら酸
化物が等軸晶生成の核になり易いことを実験的に見いだ
した。しかしながら、Mgは蒸気圧の高い元素であり、
溶鋼中に添加しても蒸発によるロスが大きく、さらに酸
素との親和力が強く溶鋼−大気界面では容易に酸化され
るため、実機の連続鋳造では安定してAl23系介在物
の改質効果が得られなかった。
【0008】本発明者等は、安定して溶鋼中のAl23
系介在物を改質でき、MgO、或いはMgO・Al23
の微細な酸化物を溶鋼中に均一に分散できるMgの添加
方法として、従来のMg金属、Mg合金およびMg含有
ワイヤーによる添加とは全く異なる、プラズマ加熱装置
の作動ガスを用いてMgOとAl、Zr、Ti、Caの
内1種類又は複数種類からなるフラックスを溶鋼中に吹
き付ける新たな方法を発案した。図1にタンディッシュ
プラズマ加熱装置及び本発明の実施形態を示す。プラズ
マ加熱装置はプラズマトーチ1とタンディッシュ2内の
溶鋼3を対極として、その間に直流電流を生起させ、発
生した熱を溶鋼3の昇温に利用するものである。このプ
ラズマ加熱装置の作動ガス4を利用してAl、Zr、T
i、Caの内1種類又は複数種類を含有させたMgOフ
ラックス5を溶鋼表面6に吹き付けると、作動ガス4は
高温に加熱され体積膨張するため、MgOフラックス5
は高温・高速で溶鋼3内部まで侵入させることができ
る。その結果、MgOフラックス5は溶鋼3中のAl2
3系介在物を効率的に改質して、MgO・Al23
することができる。さらに、MgOフラックス5の一部
は、(1)式〜(4)式で示すように、高温の作動ガス
4中でAl、Zr、Ti、Caにより還元され、活性度
の高いMg蒸気となり、MgOフラックス5に随伴して
溶鋼中に吸収されるため、MgOフラックス5だけの吹
き付けに比べてAl23系介在物の改質能は格段に向上
する。 3MgO+2Al=Al23+3Mg(ガス) (1) 2MgO+Zr=ZrO2+2Mg(ガス) (2) 2MgO+Ti=TiO2+2Mg(ガス) (3) MgO+Ca=CaO+Mg(ガス) (4)
【0009】したがって、本発明により、Al23系介
在物の改質能を向上させることができるため、等軸晶の
核となる微細なMgOまたはMgO・Al23を溶鋼中
に多量に分散させることができ、その結果として鋳片の
凝固組織を微細化できる。
【0010】本発明のMgOフラックスはMgOを主成
分とするものであれば良く、その他の成分としてAl2
3、ZrO2、CaO等の安定な酸化物が含まれても本
発明の効果は損なわれないが、MnOやSiO2等の低
級酸化物は溶鋼中のAlと反応し、Al23系介在物を
生成するため、低級酸化物の総含有率は10%以下にす
ることが好ましい。また、本発明は極めて高いAl23
改質能を有するため、MgOフラックス全部を(1)式
〜(4)式によりMg蒸気にする必要がないため、Mg
O量と等モルよりも小さいAl、Zr、Ti、Caの含
有率で良い。本発明者等の知見では、MgOフラックス
中のMgO量に対してAl、Zr、Ti、Caの総重量
が重量%で2%以上であれば十分な凝固組織の微細化効
果が得られた。
【0011】本発明に関する上記説明はタンディッシュ
を想定しているが、タンディッシュ以外、例えば取鍋等
で本発明を実施しても、十分な凝固組織の微細化効果を
得ることができる。Al、Zr、Ti、Caを含有させ
たMgOフラックス5の作動ガス4中への混合方法は、
図1に示すようにMgOフラックス5をホッパー7から
事前に作動ガス4中に混合してから溶鋼表面6に吹き付
ける方式以外に、図2に示すようにホッパー7からMg
Oフラックスをプラズマトーチ1から吹き出した作動ガ
ス4中に直接混合する方法でも良い。また、使用するプ
ラズマ装置もここで説明した移行型である必要はなく、
非移行型で本発明を実施しても、十分な効果が得られ
る。さらに、本発明は、上記説明からも分かるように、
スラブへの適用に限られたものではなく、ブルームやビ
レットに適用しても、十分な凝固組織の微細化効果が得
られる。また、(1)式〜(4)式で生成したMgは溶
鋼中のSと結合してMgSとなるため、本発明は溶銑や
溶鋼の高速脱硫に適用することも可能である。
【0012】
【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明
について説明する。
【0013】(実施例1)容量50tのタンディッシュ
を用いて、温度1550℃、炭素濃度0.1%のAl脱
酸溶鋼を鋳型内に注入し、厚み250mm×幅1500
mmの鋳片を鋳造速度1.8m/minで鋳造した。
【0014】タンディッシュでは出力2.0MWの直流
移行型プラズマトーチを用いて、10%Al含有MgO
フラックスを1kg/minで連続的に吹き付けた。本
発明の方法で得られた鋳片を調査したところ、鋳片横断
面の平均結晶粒径は1.3mmであり、鋳片全面の凝固
組織が微細等軸晶化されていた。なお、平均結晶粒径は
結晶粒の長径aと短径bから式2(a・b)0.5によっ
て求めた。
【0015】(実施例2)容量50tのタンディッシュ
を用いて、温度1550℃、炭素濃度0.1%のAl脱
酸溶鋼を鋳型内に注入し、厚み250mm×幅1500
mmの鋳片を鋳造速度1.8m/minで鋳造した。
【0016】タンディッシュでは出力2.0MWの直流
移行型プラズマトーチを用いて、5%Ti−5%Zr含
有MgOフラックスを1kg/minで連続的に吹き付
けた。本発明の方法で得られた鋳片を調査したところ、
鋳片横断面の平均結晶粒径は1.2mmであり、鋳片全
面の凝固組織が微細等軸晶化されていた。
【0017】(実施例3)容量50tのタンディッシュ
を用いて、温度1550℃、炭素濃度0.1%のAl脱
酸溶鋼を鋳型内に注入し、厚み250mm×幅1500
mmの鋳片を鋳造速度1.8m/minで鋳造した。
【0018】タンディッシュでは出力2.0MWの直流
移行型プラズマトーチを用いて、5%Ca含有MgOフ
ラックスを1kg/minで連続的に吹き付けた。本発
明の方法で得られた鋳片を調査したところ、鋳片横断面
の平均結晶粒径は1.4mmであり、鋳片全面の凝固組
織が微細等軸晶化されていた。
【0019】(比較例1)容量50tのタンディッシュ
を用いて、温度1550℃、炭素濃度0.1%のAl脱
酸溶鋼を鋳型内に注入し、厚み250mm×幅1500
mmの鋳片を鋳造速度1.8m/minで鋳造した。
【0020】タンディッシュでは出力2.0MWの直流
移行型プラズマトーチを用いて、加熱は実施したが、A
l含有MgOフラックスの添加は実施しなかった。本鋳
造で得られた鋳片を調査したところ、鋳片横断面の平均
結晶粒径は4.0mmであり、鋳片の凝固組織は微細化
されなかった。
【0021】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明による
と、鋳片表層と鋳片内部の凝固組織を、共に微細に等軸
晶化した連続鋳造鋳片を製造することができるため、薄
板では成形加工性に、厚板では低温靱性に優れた材料を
製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】タンディッシュプラズマ加熱装置及び本発明の
実施形態を示す図。
【図2】MgOフラックスをプラズマトーチから吹き出
した作動ガス中に直接混合する本発明の実施形態を示す
図。
【符号の説明】
1・・・プラズマトーチ 2・・・タンディッシュ 3・・・溶鋼 4・・・作動ガス 5・・・MgOフラックス 6・・・溶鋼表面 7・・・ホッパー 8・・・取鍋
フロントページの続き (72)発明者 竹内 栄一 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内 (72)発明者 山村 英明 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内 Fターム(参考) 4E004 JA00

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プラズマ加熱装置の作動ガスを用いてA
    l、Zr、Ti、Caの内1種類又は複数種類を含有さ
    せたMgOフラックスを溶鋼表面に吹き付け、これによ
    り得られた溶鋼を連続鋳造することを特徴とする鋼の連
    続鋳造方法。
  2. 【請求項2】 鋼の連続鋳造用タンディッシュにおい
    て、プラズマ加熱装置の作動ガスを用いてAl、Zr、
    Ti、Caの内1種類又は複数種類を含有させたMgO
    フラックスを溶鋼表面に吹き付け、これにより得られた
    溶鋼を連続鋳造することを特徴とする鋼の連続鋳造方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の鋼の連続鋳造方
    法により凝固組織を超微細化したことを特徴とする連続
    鋳造鋳片。
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