JP2000308907A

JP2000308907A - サーメット工具及びその製造方法

Info

Publication number: JP2000308907A
Application number: JP2000028245A
Authority: JP
Inventors: Kohei Abukawa; 宏平虻川
Original assignee: NGK Spark Plug Co Ltd
Current assignee: Niterra Co Ltd
Priority date: 1999-02-26
Filing date: 2000-02-04
Publication date: 2000-11-07
Also published as: EP1036618A3; EP1036618A2; EP1036618A9; US6410121B1; KR20000058179A; KR100654524B1

Abstract

(57)【要約】【課題】耐欠損性及び耐摩耗性に優れたサーメット工
具及びその製造方法を提供すること。【解決手段】サーメット工具１は、工具表面を覆う非
常に硬質な硬質層１１と、その硬質層１１に覆われて、
硬質層１１より柔らかい内部１３から構成されている。
このサーメット工具１の角部分には、切削加工の際に被
削材に当接させる刃先先端部７が設けられている。この
刃先先端部７の先端には、ホーニング加工により、Ｒ半
径が０．０４〜０．１６ｍｍの範囲のＲ加工が施されて
いる。つまり、刃先先端部７には、いわゆるＲ面取りに
よる面取り加工が施されており、それによって、工具内
部１３が露出したＲ加工部（露出部）１５が形成されて
いる。従って、このＲ加工部１５の周囲に、硬質層１１
が配置される構成となっている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば鋼の高速加
工を行うことができるサーメット工具及びその製造方法
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より、例えば特開平９−１０４９４
３号公報に示される様に、鋼の切削加工においては、サ
ーメット工具が用いられる。このサーメットとは、Ｎｉ
等の鉄族金属である結合相金属とＴｉＣＮ等の硬質相材
料などからなる焼結硬質合金である。

【０００３】この種のサーメット工具の表面には、焼結
時のままの焼結肌が残されているものがあるが、この焼
結肌には、通常、Ｎｉ等の結合相金属のしみ出しが認め
られる。しかし、結合相金属が焼結肌にしみ出した場合
には、このしみ出した結合相金属と被削材が溶着を起こ
して、工具刃先に過度の切削抵抗がかかり、刃先が欠損
に至るケースが多々見られる。

【０００４】この対策として、図８に示す様に、サーメ
ット工具の表面に、（工具の内部Ｐ１とは異なる組成
で）内部Ｐ１より硬質な硬質層Ｐ２を設ける技術があ
る。この技術とは、工具の内部Ｐ１と比べて、結合相金
属量を減少させた（即ち、硬質相材料の割合を増やし
た）硬質層Ｐ２を工具の表面に存在させることにより、
工具の耐摩耗性及び耐欠損性を改善するものである。

【０００５】つまり、硬質層Ｐ２の存在により、耐摩耗
性を向上させるとともに、硬質層Ｐ２中の（溶着の原因
となる）結合相金属量を低減することにより、溶着を防
止して耐欠損性を向上させるものである。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来技術では、耐摩耗性及び耐欠損性の改善にある程
度の効果はあるものの、必ずしも十分ではない。つま
り、結合層金属であるＮｉ等の熱膨張係数と硬質層Ｐ２
に多く含まれるＴｉＣＮ等の硬質相材料の熱膨張係数
は、大きく異なるので、温度変化が大きく熱的負荷の大
きい加工条件においては、工具刃先に欠損が生じること
があるという問題があった。

【０００７】本発明は、上記の問題点を鑑みてなされた
ものであり、耐欠損性及び耐摩耗性に優れたサーメット
工具及びその製造方法を提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】（１）前記目的を達成す
るための請求項１の発明は、表面に硬質層を備えたサー
メット工具において、該工具の角の刃先先端部に、該工
具内部が露出する露出部を有するとともに、該露出部の
周囲に前記硬質層を有することを特徴とするサーメット
工具を要旨とする。

【０００９】本発明では、図１に例示する様に、サーメ
ット工具の刃先先端部（ノーズ部）には、工具内部が
（例えばＲ面取り加工により）露出した露出部が設けら
れ、その周囲には硬質層が設けられている。尚、図１
は、略直方体のサーメット工具（ネガチップ）をすくい
面側から見たものであって、すくい面側の硬質層を除い
て示してある。

【００１０】従って、サーメット工具の刃先先端部によ
って被削材の加工を行う場合には、硬質層より柔らかく
且つ靭性のある露出部を被削材に当てて切削加工を行う
ので、刃先先端部に大きな力が加わっても欠損が生じ難
い。また、露出部の周囲は、工具内部より硬質な硬質層
で覆われているので、切削時に切粉が硬質層に当って
も、硬質層に摩耗が生じ難い。

【００１１】つまり、本発明のサーメット工具は、工具
内部が露出した露出部と（その周囲の）極めて硬質な硬
質層を備えているので、優れた耐欠損性及び耐摩耗性を
共に実現できる。尚、本発明において、サーメットと
は、Ｎｉ等の鉄族金属である結合相金属とＴｉＣＮ等の
硬質相材料などからなる焼結硬質合金であり、サーメッ
ト工具とはそのような合金からなる工具である。

【００１２】（２）請求項２の発明は、前記露出部は、
前記サーメット工具内部が露出するように、Ｒ面取り加
工されたＲ加工部又はＣ面取り加工されたＣ加工部であ
ることを特徴とする前記請求項１に記載のサーメット工
具を要旨とする。

【００１３】本発明は、露出部を例示したものである。
この露出部としては、工具の角の刃先先端部に、工具内
部が露出するようにＲ面取り加工により形成されたＲ加
工部や、Ｃ面取り加工により形成されたＣ加工部を採用
できる。（３）請求項３の発明は、前記Ｒ加工部のＲ半径が、
０．０４〜０．１６ｍｍの範囲であることを特徴とする
前記請求項２に記載のサーメット工具を要旨とする。

【００１４】本発明は、Ｒ加工部のＲ半径を例示したも
のである。このＲ半径であれば、刃先先端部を研磨して
Ｒ加工部を適度に露出させることができる。これによ
り、切削時には、刃先先端部が欠損し難く、好適な切削
が可能である。（４）請求項４の発明は、前記硬質層の厚さが、２〜２
０μｍの範囲であることを特徴とする前記請求項１〜３
のいずれかに記載のサーメット工具を要旨とする。

【００１５】本発明は、硬質層の厚さを例示したもので
ある。この厚さであれば、刃先先端部を研磨してＲ加工
部を露出させる際に、Ｒ加工部の周囲に適度に硬質層が
配置された構成とすることができる。これにより、切削
時には、刃先先端部に摩耗が生じ難く、好適な切削が可
能である。

【００１６】また、硬質層の厚さが２μｍ以上である
と、硬質層が存在することによる耐摩耗性の効果が十分
に得られる。一方、硬質層の厚さが２０μｍ以下である
と、上述したＲ面取り加工を通常の範囲で行った場合
に、Ｒ加工部を容易に露出させることができる。

【００１７】尚、特に、Ｒ加工部のＲ半径が０．０４〜
０．１６ｍｍの範囲で、且つ硬質層の厚さが２〜２０μ
ｍの範囲である場合には、刃先先端部にＲ面取り加工を
施すことにより、その先端に適度な大きさにて工具内部
が露出するＲ加工部を、容易に形成できるので好適であ
る。

【００１８】（５）請求項５の発明は、前記サーメット
工具は、結合相として、鉄族金属うちの少なくとも２種
以上、硬質相として、周期律表の４Ａ、５Ａ、６Ａ族の
炭化物、窒化物、炭窒化物のうち少なくとも２種以上を
有することを特徴とする前記請求項１〜４のいずれかに
記載のサーメット工具を要旨とする。

【００１９】サーメット工具は、例えば図２に模式的に
示す様に、通常、ＴｉＣＮ等の硬質粒子を含む硬質相、
結合相金属やバインダからなる結合相、結合相及び硬質
相の成分からなる固溶体などから構成されているが、本
発明は、その組成を例示したものである。

【００２０】ここで、前記鉄族金属としては、Ｎｉ、Ｃ
ｏ、Ｆｅが挙げられる。また、前記４Ａ、５Ａ、６Ａ族
の炭化物、窒化物、炭窒化物としては、例えば４Ａ族の
炭化物のＴｉＣ、４Ａ族の窒化物のＴｉＮ、４Ａ族の炭
窒化物のＴｉＣＮや、５Ａ族の炭化物のＶＣ、ＮｂＣ、
ＴａＣ、６Ａ族の炭化物のＭｏ₂Ｃ、ＷＣなどが挙げら
れる。

【００２１】（６）請求項６の発明は、前記サーメット
工具の焼結肌への前記結合相金属のしみ出しが、実質上
見られないことを特徴とする前記請求項１〜５のいずれ
かに記載のサーメット工具を要旨とする。

【００２２】サーメット工具の焼結肌への結合相金属の
しみ出しが見られない場合には、工具の刃先と被削材の
間に溶着が生じ難いので、溶着に起因する刃先の欠損を
防止することができる。尚、結合相金属のしみ出しが実
質上見られない程度とは、例えばＳＥＭ（走査型電子顕
微鏡に付属したエネルギー分散Ｘ線分析装置）による測
定においては、１．９重量％以下を示す。これは、ＳＥ
Ｍにおいては、表面だけでなくわずかに内部における量
をも測定するためであり、この範囲内であれば、しみ出
しが実質的に見られないと見なしてよい。

【００２３】（７）請求項７の発明は、前記サーメット
工具の内部の略中央における前記結合相金属量を１００
重量％とした場合、前記硬質層における前記結合相金属
量が１１重量％以下であることを特徴とする前記請求項
１〜６のいずれかに記載のサーメット工具を要旨とす
る。

【００２４】本発明は、硬質層内の結合相金属量を規定
したものである。従って、本発明における硬質層は、硬
質層内の結合相金属量により定義することができる。硬
質層における結合相金属量が１１重量％以下の範囲であ
れば、焼結肌にしみ出す元となる表面近傍の結合相金属
量自体が少ないので、溶着が起こり難く、耐欠損性に優
れている。

【００２５】尚、結合相金属量が１１重量％を上回る
と、切削加工時に刃先の溶着による欠損が生じること
が、後述する実験により確認されている。また、その組
成の硬質層の厚さが２〜２０μｍあれば、耐摩耗性に優
れている。尚、工具内部の略中央とは、組成比較の基準
となる結合相金属量の測定位置を示すものであり、工具
内部の略中央であれば、組成のばらつきが少ないので、
好適である。

【００２６】（８）請求項８の発明は、前記サーメット
工具の逃げ面及び／又はすくい面に、焼結肌が存在する
ことを特徴とする前記請求項１〜７のいずれかに記載の
サーメット工具を要旨とする。工具表面に焼結肌が残っ
ている場合、例えば硬質層の表面が焼結時のままの焼結
肌の場合には、例えばコーティング等の工具の表面処理
を省略でき、コストの上で有利である。

【００２７】（９）請求項９の発明は、前記請求項１〜
８のいずれかに記載のサーメット工具の製造方法であっ
て、前記サーメット材料の成形体を焼結した後に、５〜
５０Ｔｏｒｒの減圧窒素雰囲気下で、１５〜２５分間降
温を行うことを特徴とするサーメット工具の製造方法を
要旨とする。

【００２８】本発明は、上述したサーメット工具の方法
を例示したものであり、この製造方法によれば、工具表
面に硬質層を形成する際に、硬質層に含まれる結合相金
属量を（例えば１１重量％以下に）低減し、結合相金属
の焼結肌へのしみ出しを抑制することができる。

【００２９】本発明において、冷却時の雰囲気ガスを窒
素に限定したのは、窒素ガスの導入により、工具表面の
例えば４Ａ，５Ａ、６Ａ族成分が窒化し、表面に結合相
金属成分との濡れ性の悪い、４Ａ、５Ａ、６Ａ族成分の
窒化物からなる窒化相が形成され、この窒化相により、
結合相金属の焼結体表面への析出が抑制されるからであ
る。

【００３０】更に、降温時間について１５〜２５分とし
たのは、１５分未満であると、結合相金属の析出抑制効
果が十分ではなく、２５分を上回ると、グラファイト相
が形成されるからである。尚、前記成形体の焼結の際に
は、（例えば窒素以外の不活性ガスの）減圧雰囲気下に
て１４００〜１６００℃の温度まで焼結を行うと、十分
な焼結を行うことができるので好適である。

【００３１】（１０）請求項１０の発明は、前記減圧窒
素雰囲気の窒素分圧を５〜５０Ｔｏｒｒとしたことを特
徴とする前記請求項９に記載のサーメット工具の製造方
法を要旨とする。ここで、窒素分圧を５〜５０Ｔｏｒｒ
に限定したのは、５Ｔｏｒｒ以下では結合相金属の析出
抑制効果が十分ではないからである。一方、５０Ｔｏｒ
ｒ以上であると、例えば４Ａ、５Ａ、６Ａ族成分の窒化
により余剰となった炭素が、グラファイト相を形成し
て、物理特性（強度等）の低下を招くからである。

【００３２】

【発明の実施の形態】以下、本発明のサーメット工具及
びその製造方法の実施の形態の例（実施例）を説明す
る。（実施例１）ａ）まず、本実施例のサーメット工具の構造について説
明する。

【００３３】図３に示す様に、本実施例のサーメット工
具１は、ＩＳＯ規格；ＤＣＭＴ０７０２０４形状のサー
メットチップである。つまり、このサーメット工具１
は、図３の上面側であるすくい面３側の各辺（切刃）５
の長さが６．８８ｍｍ、厚さが２．３８ｍｍで、しかも
上限側ほど径が大きな略ひし形であり、角部分の刃先先
端部７の（逃げ面側からみた）角度が、鋭角（例えば８
３゜）のいわゆるポジタイプのサーメットチップであ
る。尚、サーメット工具１の上面（すくい面）３及び全
ての側面（逃げ面）９は焼結肌である。

【００３４】前記サーメット工具１は、図４に拡大して
示す様に、工具表面を覆う非常に硬質な硬質層１１と、
その硬質層１１に覆われて、硬質層１１より柔らかい内
部１３から構成されている。尚、図４は、サーメット工
具１をすくい面３側から見たものであって、すくい面３
側の硬質層１１を除いて示してある。

【００３５】このうち、表面の硬質層１１は、厚さ２〜
２０μｍであり、ＴｉＣＮ等の硬質相成分とＦｅ，Ｎｉ
等の結合相金属などを含んでいる。特に、硬質層１１に
含まれる結合層金属は、工具内部の略中央における結合
相金属量を１００重量％とした場合、１１重量％以下の
少ない量である。また、硬質層１１の表面の焼結肌に
は、実質的に結合相金属のしみ出しはない。

【００３６】一方、工具内部１３は、ＴｉＣＮ等の硬質
相成分とＦｅ等の結合相金属などを含んでいるが、硬質
相成分が硬質層１１より少なく、しかも結合相金属が硬
質層１１より多いので、硬質層１１より柔らかくなって
いる。また、サーメット工具１の角部分には、切削加工
の際に被削材（図示せず）に当接させる刃先先端部７が
設けられている。

【００３７】この刃先先端部７の先端には、ホーニング
加工により、Ｒ半径が０．０４〜０．１６ｍｍの範囲の
Ｒ加工が施されている。つまり、刃先先端部７には、い
わゆるＲ面取りによる面取り加工が施されており、それ
によって、工具内部１３が露出したＲ加工部（露出部）
１５が形成されている。従って、このＲ加工部１５の周
囲に、硬質層１１が配置される構成となっている。

【００３８】尚、Ｒ面取りの場合には、通常、露出部以
外の硬質層１１もＲ面取りされるが、ここでは、Ｒ面取
りにより工具内部１３が露出した部分をＲ加工部と称す
る。ｂ）次に、上述した構成のサーメット工具の製造方法に
ついて説明する。まず、原料粉末として、平均粒径１．５μｍのＴｉＣ
Ｎ粉末（ＴｉＣ／ＴｉＮ＝５０／５０）、平均粒径１．
０μｍのＴｉＣ粉末、平均粒径１．４μｍのＴｉＮ粉
末、平均粒径１．７μｍのＶＣ粉末、平均粒径１．４μ
ｍのＮｂＣＮ粉末、平均粒径１．６μｍのＴａＣ粉末、
平均粒径３．３μｍのＭｏ₂Ｃ粉末、平均粒径１．６μ
ｍのＷＣ粉末、平均粒径３．０μｍのＮｉ粉末、平均粒
径１．５μｍのＣｏ粉末を用意した。

【００３９】それらを、例えば下記表１の配合割合に
て、アセトン中、ボールミルで湿式混合した後、１．５
ｔｏｎ／ｃｍ²の圧力にて、圧粉体にプレス成形するこ
とにより圧粉体（成形体）Ａ〜Ｅを作成し、脱ワックス
を行った。次に、これらの圧粉体Ａ〜Ｅを、焼成炉内にいれ、減
圧下の窒素ガス以外の不活性ガス雰囲気下で、１４００
〜１６００℃まで５〜１５℃／ｍｉｎで昇温した後、１
時間キープを行った。

【００４０】その後、５〜５０Ｔｏｒｒの減圧窒素雰囲
気で、５℃／ｍｉｎの降温速度にて、１５〜２５ｍｉｎ
にわたり降温を行った後、６５０Ｔｏｒｒのアルゴンガ
ス雰囲気中で、炉冷を行い、本実施例のサーメット工具
となるサーメット焼結体（試料No.Ａ〜Ｅ）を作成し
た。

【００４１】尚、同様に、下記表１の圧粉体Ａ〜Ｅを、
焼成炉に入れ、上述した製造条件と同条件にて、１４０
０〜１６００℃の１時間キープまでを行った。その後、
前記１５〜２５ｍｉｎの降温を行うことなく、６５０Ｔ
ｏｒｒのアルゴンガス雰囲気中で炉冷を行い、比較例の
サーメット焼結体（試料No.６〜１０）を作成した。

【００４２】これらの焼成条件及び冷却条件を下記表２
に記す。

【００４３】

【表１】

【００４４】

【表２】

【００４５】次に、この様にして製造されたサーメッ
ト焼結体について、その焼結肌における結合相金属の定
量を、走査型電子顕微鏡（ＳＥＭ）の付属のエネルギー
分散型Ｘ線分析装置により行った。また、サーメット焼
結体を中央部より切断し、鏡面研磨を施した後、焼結体
中央部の結合相金属量と焼結肌近傍に形成された硬質層
中の結合相金属量の定量を、前記走査型電子顕微鏡の付
属のエネルギー分散型Ｘ線分析装置により行った。

【００４６】更に、硬質層の厚みを、走査型電子顕微鏡
による観察により調査した。それらの結果を、下記表３
に記す。尚、図５及び図６に、サーメット焼結体の断面
のＳＥＭ及び焼結体表面のＳＥＭ写真をり示す。ここ
で、本発明例として、図５（ａ）は試料No.１の焼結体
中央の断面の倍率５０００倍のＳＥＭ写真、図５（ｂ）
は同試料の硬質層を含む断面の倍率２０００倍のＳＥＭ
写真、図６（ａ）は同試料の焼結体の焼結肌表面の倍率
２０００倍のＳＥＭ写真である。また、従来例として、
図６（ｂ）は試料No.６の焼結体の焼結肌表面の倍率２
０００倍のＳＥＭ写真である。

【００４７】次に、サーメット焼結体の刃先先端部
を、Ｒ＝０．０８ｍｍの曲率半径となる様にホーニング
加工し、ＩＳＯ規格；ＤＣＭＴ０７０２０４形状のサー
メット工具を完成した。尚、このホーニング加工によ
り、本実施例の試料No.１〜５のサーメット工具は全
て、刃先先端部の先端にて硬質層が除去され、工具内部
が露出するＲ加工部が形成されたが、比較例の試料No.
６〜１０のサーメット工具には、工具内部が露出するＲ
加工部は形成されなかった。

【００４８】次に、前記サーメット工具を用い、下記
切削条件にて乾式高速連続切削試験を行い、工具刃先の
逃げ面摩耗量ＶＢを調査した。その結果を同じく下記表
３に記す。＜切削条件＞被削材；ＪＩＳＳＮＣＭ４３９（ＨＢ３００）の丸
棒切削速度；２５０ｍ／ｍｉｎ送り速度；０．１ｍｍ／ｒｅｖ切り込み；１．０ｍｍ切削時間；３ｍｉｎ

【００４９】

【表３】

【００５０】ｃ）前記表１〜表３から明らかな様に、本
発明の範囲の実施例のサーメット工具（試料No.１〜
５）は、溶着から欠損が生じることがなく、耐欠損性に
優れている。それとともに、ＶＢ摩耗量が少なく耐摩耗
性にも優れている。それに対して、比較例のサーメット
工具（試料No.６〜１０）は、欠損が生じたり、耐摩耗
性が低く、好ましくない。

【００５１】また、図５及び図６のＳＥＭ写真から明ら
かな様に、本発明例（試料No.１〜５）のものは、結合
相及び硬質相からなる組織を有し、焼結体表面には硬質
粒子成分が多い緻密な硬質層を備え、しかも、その焼結
肌の表面には、結合相金属のしみ出しは見られないの
で、好適である。一方、比較例（試料No.６〜１０）の
ものは、焼結肌の表面には、結合相金属のしみ出しが見
られるので、好ましくない。

【００５２】（実施例２）次に、実施例２について説明
する。図７に示す様に、本実施例のサーメット工具２１
は、前記実施例１の様に、Ｒ面取りによりＲ加工部を設
けたものではなく、刃先先端部２３の先端に、Ｃ面取り
加工（角部チャンファ加工）によりＣ加工部（角部チャ
ンファ加工部）２５を設け、それにより工具内部２６を
露出させたものである。

【００５３】このＣ加工部２５は、例えば傾斜角度２５
°、逃げ面２７側０．０４ｍｍ、すくい面２９側０．１
０ｍｍとなる様に、角部分が平面状にカットされてお
り、例えばダイヤモンド砥石を用いた研削により形成さ
れる。前記Ｃ面取り加工の場合には、通常、露出部以外
の硬質層３１もＣ面取り加工されるが、ここでは、Ｃ面
取り加工により工具内部２６が露出した部分をＣ加工部
２５と称する。

【００５４】また、このＣ加工部２５の形状は、通常Ｔ
Ｎチャンファと呼ばれ、サーメット工具では一般的なも
のである。尚、本発明は前記実施例になんら限定される
ものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲において
種々の態様で実施しうることはいうまでもない。

【００５５】例えば本発明は、ポジタイプのサーメット
チップ及びネガタイプのサーメットチップのいずれにも
適用できることは勿論である。

【００５６】

【発明の効果】以上詳述した様に、本発明のサーメット
工具では、刃先先端部に工具内部が露出した露出部を備
えるとともに、露出部の周囲に硬質層を備えているの
で、耐摩耗性及び耐欠損性ともに優れたものである。

【００５７】また、本発明のサーメット工具の製造方法
では、焼結後に、減圧窒素雰囲気下で５〜２５分間降温
を行うので、硬質層に含まれる結合相金属量を低減し、
結合相金属の焼結肌へのしみ出しを抑制することがで
き、それにより、上述した耐摩耗性及び耐欠損性に優れ
たサーメット工具を製造することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】サーメット工具の刃先先端部の構成を例示す
る説明図である。

【図２】サーメット工具の組織を模式的に示す説明図
である。

【図３】実施例１のサーメット工具を示す斜視図であ
る。

【図４】実施例１のサーメット工具の刃先先端部近傍
を拡大して示す断面図である。

【図５】サーメット焼結体の試料の断面の組織を示す
写真である。

【図６】サーメット焼結体の試料の表面の組織を示す
写真である。

【図７】実施例２のサーメット工具の刃先先端部近傍
を拡大して示す断面図である。

【図８】従来技術を示す説明図である。

【符号の説明】

１、２１…サーメット工具（サーメットチップ）３、２９…すくい面５…刃先７、２３…刃先先端部９、２７…逃げ面１１、３１…硬質層１３、２６…内部１５…Ｒ加工部２５…Ｃ加工部

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】表面に硬質層を備えたサーメット工具に
おいて、該工具の角の刃先先端部に、該工具内部が露出する露出
部を有するとともに、該露出部の周囲に前記硬質層を有
することを特徴とするサーメット工具。
【請求項２】前記露出部は、前記サーメット工具内部
が露出するように、Ｒ面取り加工されたＲ加工部又はＣ
面取り加工されたＣ加工部であることを特徴とする前記
請求項１に記載のサーメット工具。
【請求項３】前記Ｒ加工部のＲ半径が、０．０４〜
０．１６ｍｍの範囲であることを特徴とする前記請求項
２に記載のサーメット工具。
【請求項４】前記硬質層の厚さが、２〜２０μｍの範
囲であることを特徴とする前記請求項１〜３のいずれか
に記載のサーメット工具。
【請求項５】前記サーメット工具は、結合相として、
鉄族金属のうち少なくとも２種以上、硬質相として、周
期律表の４Ａ、５Ａ、６Ａ族の炭化物、窒化物、炭窒化
物のうち少なくとも２種以上を有することを特徴とする
前記請求項１〜４のいずれかに記載のサーメット工具。
【請求項６】前記サーメット工具の焼結肌への前記結
合相金属のしみ出しが、実質上見られないことを特徴と
する前記請求項１〜５のいずれかに記載のサーメット工
具。
【請求項７】前記サーメット工具の内部の略中央にお
ける前記結合相金属量を１００重量％とした場合、前記
硬質層における前記結合相金属量が１１重量％以下であ
ることを特徴とする前記請求項１〜６のいずれかに記載
のサーメット工具。
【請求項８】前記サーメット工具の逃げ面及び／又は
すくい面に、焼結肌が存在することを特徴とする前記請
求項１〜７のいずれかに記載のサーメット工具。
【請求項９】前記請求項１〜８のいずれかに記載のサ
ーメット工具の製造方法であって、前記サーメット材料の成形体を焼結した後に、減圧窒素
雰囲気下で、１５〜２５分間降温を行うことを特徴とす
るサーメット工具の製造方法。
【請求項１０】前記減圧窒素雰囲気の窒素分圧を５〜
５０Ｔｏｒｒとしたことを特徴とする前記請求項９に記
載のサーメット工具の製造方法。