JP2000306969A - 金属配線の信頼性評価装置及び方法、並びに金属配線の信頼性評価のためのプログラムを格納した記録媒体 - Google Patents
金属配線の信頼性評価装置及び方法、並びに金属配線の信頼性評価のためのプログラムを格納した記録媒体Info
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Abstract
値シミュレーションにより、ボイド形成および断線故障
に関する予測を行う。 【解決手段】 数値シミュレーションにおいて、金属配
線は要素に分割される。電流密度および温度の分布は数
値解析により得られる(S304)。各要素の原子流束
発散AFDgenは、これらの分布と前もって加速試験に
より決定される材料物性の定数(S306)を用いるこ
とにより計算される(S308)。シミュレーションに
おける1計算ステップあたりの体積減少(S312)
は、各要素の体積、1計算ステップに対応する時間、お
よび計算されたAFDgenに対応する原子体積を乗じる
ことにより与えられる(S310)。体積に関する減少
量を基に、各要素の厚さを減少する(S314)。厚さ
が減少した要素において、ボイドが形成されたことを示
している。金属配線における電流密度と温度の分布の数
値解析を各要素の厚さを考慮して再び行う(S30
4)。計算は繰り返し行われる。
Description
因であるエレクトロマイグレーション(EM)損傷を予
測して、信頼性を評価する技術に関する。
子を接続する金属配線に関し、その微細化に伴う信頼性
低下が重要な問題である。金属配線の主な故障原因とし
てエレクトロマイグレーション(EM)が挙げられる。
EMとは、高密度電子流により配線を構成する金属原子
が移動する現象のことである。EMによる原子流束が不
均一な場所では、局所的な原子の損失あるいは蓄積が生
じ、これを原子流束の発散という。原子の損失あるいは
蓄積によりそれぞれボイド(空隙部)やヒロック(金属
原子塊)が生じる。通電に伴いボイドが成長し配線の断
面積が減少すると、電流密度は増加しそれに伴い局所的
に温度が上昇して溶断に至る。配線の信頼性確保のため
には、ボイドあるいはヒロックの形成および断線といっ
たEM損傷の的確な予測が肝要である。
分布がボイド形成に与える影響についての検討がなさ
れ、配線の電流密度、電流密度勾配、温度、温度勾配、
配線を構成する材料の物性がボイド形成の影響因子であ
ることが明らかにされている。原子流束の発散を如何に
高精度にしかも容易に求めるかがEM損傷予測の鍵であ
る。これまでも一次元の温度分布を考慮した原子流束の
発散の定式化が行われてきており、これに基づいて直線
状の多結晶配線を対象に断線予測が行われている。しか
し、配線の結晶粒組織すなわち、配線構造を考慮してい
ないため、その適用は限られたものであった。また、単
結晶の連続であるバンブー配線に関しては電流密度と温
度の二次元分布を考慮した原子流束の発散については未
だ検討がされていない。
験結果を実用条件下に外挿することにより行われる。こ
の外挿には現在経験式が用いられているが、加速試験条
件の選択や配線形状により予測結果が異なるといった問
題があり普遍的な寿命予測法の開発が待たれていた。
晶配線およびバンブー配線各々のEM損傷支配パラメー
タである原子流束発散(AFDgen)により、ボイド或
いはヒロック形成といったEM損傷および同損傷による
配線の断線故障に関する予測を行うことである。
に、本発明は、数値解析手法により、金属配線の電流密
度および温度分布を求め、求めた前記電流密度および温
度分布と配線材料の物性定数とにより、各要素の原子流
束発散(AFDgen)を計算し、各計算ステップの各要
素の体積減少を求め、各要素の厚さの変化を求めるとと
もに、各動作を繰り返すことにより、厚さを貫通する要
素が配線幅を占める状態或いは厚さを貫通する要素また
は温度が材料の融点を超える要素が配線幅を占める状態
となるまで処理を行うことを特徴とする。
配線の双方に対して適用される。上記の方法を実行する
装置および上記の方法をコンピュータに実行させるプロ
グラムを格納した記録媒体も本発明である。
して詳細に説明する。まず、EM損傷支配パラメータ
(AFDgen)の導出の概要を説明する。
は、結晶粒界に沿って、さらに格子拡散として結晶粒内
でも生じる。よって、配線における原子流束の発散の総
和AFDgenを結晶粒界および結晶粒内における原子流
束の発散(Atomic Flux Divergence)の和で表し、次式
で定義する。
および結晶粒内における原子流束の発散である。式
(1)は、多結晶配線およびバンブー配線の双方につい
て成立する。AFDgbおよびADFlatを、多結晶配線
およびバンブー配線の各々の配線構造を考慮して導出す
る。ここで結晶粒界および結晶粒内における原子の移動
はともに次式で与えられる。
ツマン定数、Tは絶対温度、Z*は有効電荷数、eは単
位電荷、およびρは電気抵抗率であり、Dは次式で表さ
れる拡散係数である。
る。またj*はJ方向の電流密度であり、結晶粒界にお
いては原子が粒界にそって移動することから、j*は電
流密度ベクトルjの結晶粒界方向成分である。一方、結
晶粒内においては、Jとjの方向が一致することから、
j*は|j|と等しくなる。図1に示す様に、jと結晶
粒界とのなす角をφとすれば、
ぞれQgb、Qlatと表す。
に結晶粒界における原子流束の発散を考える。まず多結
晶配線における結晶粒界を扱う。多結晶配線における結
晶粒界を考慮するために、結晶粒界構造のモデルを導入
する。図2に示す様に、平均結晶粒径bの√3/6倍の
長さを持つ3本の結晶粒界で構成される三重点を内部に
一つだけ含む単位厚さの四角形要素を仮定する。同要素
の面積は√3b2/4である。結晶粒界IIおよびII
Iは結晶粒界Iに対して対称であり、その挟角は120
°に近いが、わずかに偏差2Δφが存在するものとす
る。
方向成分をそれぞれjx,jyとし、結晶粒界Iとx軸と
のなす角をθとすると、結晶粒界I,IIおよびIII
の端部における電流密度ベクトル成分および温度は、図
2に示すようにそれぞれ次のように表される。
よび(3)に代入することにより、それぞれの結晶粒界
端における結晶粒界にそった原子流束が得られる。ここ
に要素から外に出る方向を正と定義する。結晶粒界I,
IIおよびIIIの端部における原子流束に粒界の幅δ
および単位厚さを乗じることにより、それぞれの粒界端
における単位時間あたりの原子の移動数を得、それらを
各々加える。そして微小項を無視し、さらに電流保存則
を用いることで式を簡単化し、要素の体積√3b2/4
で除す。このようにして、結晶粒界Iとx軸とのなす角
がθなる場合の結晶粒界拡散における単位時間、単位体
積あたりの減少原子数、すなわち原子流束の発散AFD
gb θが次のように与えられる。
的な抵抗率、およびQgbは結晶粒界における活性化エネ
ルギである。式(5)の右辺におけるかぎ括弧内の第一
項は結晶粒界三重点での原子流束の発散に関係する項で
あり、第二項および第三項は結晶粒界自身での原子流束
の発散に関係した項である。また、AFD gb θが正の値
をとる場合はボイド(空隙部)の形成を、負の場合はヒ
ロック(金属原子塊)の形成を意味する。
とる。よってθのとり得るすべての範囲(0<θ<2
π)を考慮した流束の発散を求める必要がある。ここで
ボイド形成のみに着目するものとして、θが0から2π
まで変化する場合のAFDgb θの正値のみの期待値を求
める。ここに、AFDgb θの負の値はボイド形成に寄与
しないために0とみなす。AFDgb θとAFDgb θの絶
対値との和をとり2で除すことよって、AFDgb θのボ
イド形成への寄与分のみを抽出できる。このようにし
て、多結晶配線の結晶粒界におけるボイド形成に関する
原子流束の発散AFDgbを次式のように導出する。
う。バンブー配線においては結晶粒界がほとんど存在せ
ず、存在したとしても配線長さ方向に垂直であるため、
バンブー配線における結晶粒界での原子流束の発散は無
視することができる。よって次式を得る。
粒内におけるEMによる格子拡散を考える。多結晶配線
においてもバンブー配線においても格子拡散は同様に扱
うことができる。結晶粒内においては原子流束ベクトル
Jに関してベクトル解析が可能である。式(2),
(3)および(4b)に基づいて単位時間、単位体積あ
たりの原子の減少数AFD´latは次式で得られる。
ネルギである。さらに結晶粒界における原子流束の発散
AFDgbの導出と同様に、ボイド形成のみに着目する
と、多結晶配線およびバンブー配線の結晶粒内における
ボイド形成に関する原子流束の発散は次式にように導出
される。
傷支配パラメータ)式(1)のAFDgbとAFDlatの
和で表される配線の原子流束の発散の総和AFDgenに
基づいて、多結晶配線およびバンブー配線における原子
流束の発散を考える。さて、一般的な使用温度において
は、結晶粒内での原子流束の発散は結晶粒界のそれと比
較して無視できるほど小さい。よって、多結晶配線にお
ける原子流束の発散は、結晶粒界での原子流束の発散の
みを考慮すれば十分である。したがって、多結晶配線に
おけるEM損傷の支配パラメータは以下の式で表され
る。
子流束の発散には、電流密度、電流密度勾配、温度およ
び温度勾配が影響を及ぼしていることが分かる。
散を考える。バンブー配線における原子流束の発散は、
式(7)と式(9)の和で表されるので、結晶粒内の発
散のみを考慮すればよい。したがって、バンブー配線に
おけるEM損傷の支配パラメータは以下の式で表され
る。
求める。解析の基礎式は、次のように表される。電界の
ポテンシャルφeを支配する式は
り、Hは配線から基板への熱の流れに関する定数で、∇
2=∂2/∂x2+∂2/∂y2である。
いた加速試験(acceleration test)により決定され
る。定数ρ0およびαは、直線形状の金属配線の電気抵
抗を計測することで得られる。定数Hは数値解折から得
た温度分布を基に計算した金属配線の電気抵抗値が計測
値と等しくなるように決める。多結晶配線に対する活性
化エネルギQgbは、1/Tに対するlnVT/(j
inρ)のプロットの傾斜から与えられる。ここでjinは
入力電流密度、Vは3つの加速条件の場合における一定
時間通電後の配線の中心領域のボイドの体積である。ボ
イドの体積は走査電子顕微鏡(scanning electron micr
oscope:SEM)により計測したボイドの全面積に薄膜
の厚さを乗じることで推定する。一方、バンブー配線に
おける結晶粒内の活性化エネルギQlatは、lnVT2/
ρを1/Tに対してプロットした直線の傾きから求め
る。ここでVは、直線形状のバンブー配線に3種類の異
なる基板濃度において電流を一定時間入力し、通電後そ
れぞれについて配線陰極端近傍を原子間力顕微鏡(Atom
ic Force Microscope AFM)により計測して得られる
ボイド体積である。定数Δφは、配線の中心領域内のボ
イド体積と陰極側の端近傍のボイド体積の比の計算値
が、計測値の比と等しくなるように決める。定数Cgbは
実験で計測されたボイド体積と計算値との関係から得ら
れる。このように、すべての未知定数は直線の配線を用
いた実験結果のみから決定できる。
ン)金属配線における寿命および断線箇所は、ボイドの
初生、成長から断線故障までのプロセスの数値シミュレ
ーションを多結晶配線やバンブー配線のAFDgenを用
いて行うことにより予測する。ここで、ボイド成長に伴
う電流密度および温度の分布の変化をAFDgenの計算
において考慮する。
は要素に分割される。より小さい要素サイズを用いると
より現実に近い結果を得ることができる。要素の厚さ
は、図3のフローチャートに示される手順で変化させ
る。まず、電流密度および温度の分布は2次元有限要素
解析(FEM解析)などの数値解析手法により得られる
(S304)。各要素の原子流束の発散AFDgenは、
これらの分布と予め加速試験により決定される配線材料
の物性定数(S306)を用いることにより計算される
(S308)。シミュレーションにおける1計算ステッ
プあたりの体積減少(S312)は、各要素の体積、1
計算ステップに対応する時間、原子体積を計算されたに
乗じることにより与えられる(S310)。ここで1計
算時間は現実の時間を割り当てる。体積の減少量を、各
要素における厚さの減少量に換算する(S314)。厚
さが減少した要素においては、ボイドが形成されたこと
を示しており、そのボイドの深さは要素の厚さの減少量
に対応している。金属配線における電流密度と温度の分
布の数値解析を各要素の厚さを考慮して再び行う(S3
04)。このように図3に示す計算を繰り返し行う。
ン)この手順による多結晶配線に対する数値シミュレー
ションは、ある時間経過後のボイドの分布および故障箇
所を十分に予測することができる。さらに寿命の予測を
行うために、次のことをシミュレーションにおいて考慮
する必要がある。結晶粒界に沿って選択的に成長し、ス
リット状に成長したボイドが互いに結合しながら配線幅
の方向へ伸びるという、多結晶配線におけるボイドの成
長形態(morphology)である。パラメータAFD
genは、ボイド形成が結晶粒界において行われるとの仮
定に基づいて導出されているが、最終的に金属配線の任
意の点におけるボイド形成の期待値に拡張されている。
ここで、もう一度ボイド形成の形態を、結晶粒界に沿っ
たスリット状のボイドの形成に変換する。配線の要素分
割において、スリット状のボイドを構成するための専用
の要素を、図4のように配置する。ここで、図4Aは、
後に図6で用いられる配線の有限要素モデルの例を示し
ている。図4B、図4C、図4Dはそれぞれの箇所の拡
大図である。
厚さは、その要素および隣接する要素におけるAFD
genの計算に基づいて減少する。スリットのピッチは平
均結晶粒径により定められる。スリットの幅は、配線材
料の物性定数の1つであるが、図5に示す手順に従って
得ることができる。
加速試験を断線故障が起こるまで実施する(S50
4)。故障が起きる寸前に得た金属配線のSEM画像か
ら、スリット状のボイドが密集する領域、即ち断線故障
がまもなく生じる場所を抽出する(S502)。配線の
長手方向軸に沿った密集する領域の長さ(S506)を
スリットのピッチで割って、密集領域に含まれるスリッ
トの数を得る(S510)。他方、密集領域中のスリッ
ト状のボイドの全面積を測定する(S508)。ボイド
の全面積をスリットの数および配線幅で割ると、シミュ
レーションにおけるスリットの実効幅が得られる(S5
12)。スリット幅の決定の実験は、定数ρ o ,α,
H,Δφ,およびCgbを決定するために使用される試料
を用いて行われる。
化を考慮して、寿命予測に対する数値シミュレーション
の計算プロセスは、厚さを貫通する要素が配線幅を占め
る状態或いは厚さを貫通する要素または温度が材料の融
点を超える要素が配線幅を占める状態と定義した金属配
線の故障まで繰り返し実行される。このように、数値シ
ミュレーションは、動作条件における金属配線の寿命と
ともに故障箇所を予測することができる。
6に示す2つのアルミニウム多結晶配線を寿命と故障箇
所の予測に使用した。折れ曲がった金属配線は電流密度
と温度が2次元分布となる。また予測に必要な定数は、
直線配線を用いた簡単な加速試験により与えられる。2
つの配線を試料1および試料2と呼ぶ。これらは図6A
に示す様に、形状のみならず試験条件も異なっている。
度と温度を試験条件として選択した。この理由は、実験
による検証に必要な時間を短縮するためである。AFD
genを計算するための物性定数は、図14の表に示すよ
うに求められる。平均結晶粒経サイズは、集束イオンビ
ーム(focused ion beam :FIB)装置を用いて測定さ
れる。数値シミュレーションを実行することにより、エ
レクトロマイグレーションによる断線故障は、試料1お
よび試料2のそれぞれに対して予測される。試料1の場
合の、AFDgen分布およびボイド分布における時間に
対する変化は、図7および図8にそれぞれ示されてい
る。試料2の場合の、AFDgen分布およびボイド分布
における時間に対する変化は、図9および図10にそれ
ぞれ示されている。時間に関するボイド分布の変化は、
膜厚の等値線により示されている。ボイド成長による電
流密度と温度の分布の変化により、AFDgen分布は時
間とともに変化する。試料1の場合、金属配線故障は、
7700sの寿命で起こり、故障箇所は配線の陰極端部
であると予測される。他方、試料2に対する故障は、寿
命3400sで起こるとともに、故障箇所としては角部
の陰極側であると予測される。
ーションと同じ配線の寸法および条件で実験が行われ
た。試料1として11個の試験片が使用され、試料2と
して12個の試験片が使用された。アルミニウム薄膜を
真空蒸着により、シリコン酸化膜に覆われているシリコ
ン基板上に形成する。試験片は、アニーリングの後、エ
ッチングによりパターン化する。試験片は図11に示す
装置を用いて、金属配線が開路(open)するまで試験さ
れる。その後、試験片はSEMで観察される。
布と故障するまでの平均時間の実験結果を示す。図12
Aに示すように、試料1の場合、11個の試験片全てか
ら得られた故障までの平均時間は6731sである。最
も頻度が高い故障箇所は、配線の陰極端である。予測さ
れた故障箇所、即ち陰極端で開路した6個の試験片の平
均断線時間は6820sであり、これは11個の試験片
から得られた故障までの平均時間に近い。他方、試料2
では、12個全ての試験片から得られた故障までの平均
時間は3655sであり、角部の陰極側が最も故障の頻
度の高い箇所の1つである(図13A参照)。
ョン)バンブー配線EM損傷の支配パラメータAFD
genを用い、EMによるボイドの形成、成長から断線に
至る過程の数値シミュレーションを行う。これにより、
ボイドの形成、成長に伴う電流密度の分布および温度分
布の時間変化を考慮して配線寿命および断線箇所を予測
することが可能となる。
15に示すように要素分割し、各々の要素厚さを図3の
フローチャートに示した方法で変化させる。二次元有限
要素解析等の数値解析手法により配線内の電流密度およ
び温度の分布を求め(S304)、その結果と予め実験
で求めた配線の物性定数(S306)を用いて、各要素
のAFDgenを計算する(S308)。これに各要素の
体積、シミュレーション上の1タイムステップの時間お
よび原子体積を乗じる(S310)ことにより、各要素
で1タイムステップの間に減少する体積を算出する(S
312)。ここに1タイムステップの時間は実際の時間
に対応している。各要素の体積を減少させ、これに応じ
て各要素の厚さを変化させる(S314)。厚さが減少
した要素においてはその減少分に対応した厚さのボイド
が形成されたとみなす。次いで、厚さ変化に対応した電
気抵抗変化および熱伝導変化を各要素に考慮した上で、
再度電流密度、温度の数値解析を行い、以降の計算を繰
り返す。厚さが初期の厚さに比べ十分に零とみなせるよ
うになった要素が配線幅方向に貫通した時点、或いは厚
さが零の要素または温度が材料の融点を超える要素が配
線幅を占めた時点シミュレーション上の断線と定義し、
計算を終了する。
断線予測対象として図16に示す三種類のAlバンブー
配線を用いた。ここで折れ曲がる配線においては電流密
度分布、温度分布は二次元分布を呈する。配線角部から
陽極端までの長さをA、配線角部から陰極端までの長さ
をBとする。A=14.0μm、B=8.0μmの配線をAS
YM(+)、A=11.2μm、B=10.9μmの配線をSY
M、A=8.0μm、B=13.9μmの配線をASYM
(−)と呼ぶことにする。それぞれの形状において、入
力電流密度、基板温度の試験条件は同一とした。配線幅
は図16に示すが如く一定ではなく、角部より陽極側の
配線幅の方が陰極側よりわずかに細い。検証実験に要す
る時間の短縮のため、一般的な実用条件よりも高い約15
MA/cm2なる高密度電流と393Kなる温度を試験条件
として選んだ。流した電流量は72.0mAである。AFD
gen計算に必要な薄膜の物性値は、図17に示す表のよ
うに求まった。なお本予測において定数Hとλは、直線
形状の配線と折れ曲がる配線の各々について、二次元有
限要素解析による温度分布のシミュレーションに基づい
て計算した配線抵抗値とそれぞれの形状における実験で
計測した配線抵抗値が一致するように決定した。一般に
薄膜の熱伝導率はバルクのそれよりも低いといわれてい
るが、得られたλは1.55×10-4W/(μm・K)であ
り、バルク値よりも低い。以上のような物性を用いて数
値シミュレーションを行い、ASYM(+)、SYM、
ASYM(−)の三種類の配線各々についてEMによる
断線を予測した。
分布とボイドの分布の経時変化をそれぞれ図18および
19に示す。また同様に、SYMの場合を図20および
21に、ASYM(−)の場合を図22および23にそ
れぞれ示す。ここでボイド分布は配線厚さの等値線によ
り表示している。AFDgenの分布はボイドの成長に伴
う電流密度および温度分布の変化により通電開始後、時
間の経過とともに変化をしている。ASYM(+)につ
いては、配線角部の陽極側で通電開始後7100s後の断線
を予測した。また、SYMについては、角部陽極側で70
00s後の断線を予測した。一方ASYM(−)について
は、配線の陰極端近傍で5200s後の断線を予測した。
予測で想定した三種類の形状の配線を用い、同様の試験
条件で断線試験を行った。この断線試験は、図11に示
す実験装置を用い断線まで通電を行った。断線後、電界
放出型電子顕微鏡(FE-SEM)で観察を行った。実験には
それぞれASYM(+)で9本、SYMで10本、ASY
M(−)で11本の試験片を用いた。以上の断線実験につ
いて、ASYM(+)、SYMおよびASYM(−)の
試験片の実験結果をそれぞれ図24〜26に示す。図中
に配線の断線の度数分布と配線寿命の平均値を示す。A
SYM(+)の場合、9本の試験片における平均断線時
間は9160sであり、配線が最も多く破断した箇所は配線
角部陽極側であった。数値シミュレーションで予測した
断線箇所である角部陽極側で断線した4本の試験片の平
均断線時間は7965sであり、9本すべての試験片におけ
る平均断線時間と近かった。一方、SYMの場合、10本
の試験片における平均断線時間は7836sであり、配線が
最も多く破断した箇所は配線角部陽極側であった。断線
した5本の平均断線時間は7344sであり、ASYM
(+)と同様に10本すべての試験片における平均断線時
間と近かった。さらにASYM(−)の場合、11本の試
験片における平均断線時間は6996sであり、最も多く破
断した箇所は配線の陰極端近傍であった。数値シミュレ
ーションで予測した断線箇所である配線陰極端で断線し
た6本の試験片の平均断線時間は6160sであり、11本す
べての試験片における平均断線時間と近かった。
箇所の両者において良好な一致を示した。実験の断線箇
所には若干のばらつきが存在するが、本予測法では配線
が最も多く破断した箇所を予測することができた。この
ことから、配線を構成する薄膜の物性値と実用条件が与
えられれば、EM損傷の支配パラメーターであるAFD
genを用いた数値シミュレーションを実行することによ
り、任意の形状の金属薄膜配線の任意の実用条件下にお
ける寿命と断線箇所の予測を行うことが可能であること
が示され、本予測法の有効性が実証できた。
れるボイド形成は、電流密度、温度、これらの勾配のほ
か、電気抵抗率、平均結晶粒径、活性化エネルギー、結
晶粒界間の相対角度、原子密度、拡散係数、実効電荷、
結晶粒界の実効幅のような材料物性に依存する。これら
の因子の関数として求められたパラメータAFD
genは、ボイド形成を支配している。金属配線の断線故
障は、ボイド形成とその成長の結果起こる。故障箇所は
配線の形状や基板温度および入力電流密度等の動作条件
により決まるこれら因子の組合せで変化する。すなわ
ち、ある場合には折れ曲がる金属配線の角部で故障が生
じ、ある場合には折れ曲がる配線の陰極端部で起こる。
ADFgenを基礎とする本発明のシミュレーションによ
り、金属配線の寿命および断線故障箇所の予測が的確に
行われる。
ータ・システムばかりではなく、複数のシステムから構
成される例えばクライアント・サーバ・システム等に適
用してもよい。本発明に関する予測を行うためのプログ
ラムを格納した記憶媒体から、プログラムをシステムで
読み出して実行することにより、本発明の構成を実現す
ることができる。この記録媒体には、フロッピー・ディ
スク、CD−ROM、磁気テープ、ROMカセット等が
ある。
ーションにより、金属配線の寿命および故障箇所の的確
な予測を行うことができる。
である。
つだけ含む単位厚さの四角形要素の結晶粒界構造のモデ
ルを示す図である。
ートである。
素分割の例を示す図である。
求めるための手順を示すフローチャートである。
の試料について示した図である。
の数値シミュレーション結果を示す図である。
値シミュレーション結果を示す図である。
数値シミュレーション結果を示す図である。
数値シミュレーション結果を示す図である。
る。
す図である。
す図である。
材料物性の定数である。
る要素分割の例を示す図である。
3つの試料について示した図である。
レーションに用いる材料物性の定数である。
Dgen分布の数値シミュレーション結果を示す図であ
る。
ド分布の数値シミュレーション結果を示す図である。
分布の数値シミュレーション結果を示す図である。
の数値シミュレーション結果を示す図である。
FDgen分布の数値シミュレーション結果を示す図であ
る。
イド分布の数値シミュレーション結果を示す図である。
結果を示す図である。
示す図である。
験結果を示す図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 数値解折手法により、電流密度および温
度分布を求める手段と、 求めた前記電流密度および温度分布と配線材料の物性定
数とにより、評価対象を分割する各要素の原子流束発散
(AFDgen)を計算する手段と、 各計算ステップの各要素の体積減少を求める手段と各要
素の厚さの変化を求める手段とを有し、各手段の動作を
繰り返すことにより、厚さを貫通する要素が配線幅を占
める状態、或いは厚さを貫通する要素または温度が材料
の融点を超える要素が配線幅を占める状態となるまで処
理を行い、配線寿命および断線箇所を予測することを特
徴とする金属配線の信頼性評価装置。 - 【請求項2】 前記金属配線は、多結晶配線またはバン
ブー配線であることを特徴とする請求項1記載の金属配
線の信頼性評価装置。 - 【請求項3】 数値解折手法により、電流密度および温
度分布を求めるステップと、 求めた前記電流密度および温度分布と配線材料の物性定
数とにより、評価対象を分割する各要素の原子流束発散
(AFDgen)を計算するステップと、 各計算ステップの各要素の体積減少を求めるステップと
各要素の厚さの変化を求めるステップとを有し、各ステ
ップの動作を繰り返すことにより、厚さを貫通する要素
が配線幅を占める状態或いは厚さを貫通する要素または
温度が材料の融点を超える要素が配線幅を占める状態と
なるまで処理を行い、配線寿命および断線箇所を予測す
ることを特徴とする金属配線の信頼性評価方法。 - 【請求項4】 前記金属配線は、多結晶配線またはバン
ブー配線であることを特徴とする請求項3記載の金属配
線の信頼性評価方法。 - 【請求項5】 請求項3又は4に記載の信頼性評価方法
をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録
媒体。
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