JP4515131B2 - 多層構造配線のem損傷による原子濃度分布評価システム - Google Patents
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昨今の半導体デバイスの微細高集積化に伴い、ビア導体(ビア)と呼ばれる端子で接続された多層構造の回路が形成されるようになっており、このような構造を呈する配線に対する高精度信頼性評価の手法の開発が待望されている。
前記AFD * li は、
であることを特徴とする。
また、上述の多層構造配線のEM損傷による原子濃度分布評価システムの機能をコンピュータシステムに実現させることを特徴とするプログラムも本発明である。
まず、保護膜で被覆されたバンブー配線中の損傷支配パラメータについて説明する。定式化は、被覆していない金属配線に対するパラメータADFli(特許文献1参照)に基づいて行われる。保護膜で被覆されたバンブー配線中の原子流束発散ADF* liは、被覆されていない配線のEM損傷に対する支配パラメータADFliに原子濃度勾配の影響を付加することで定式化される。
ところで、ビア接続された配線のカソード端は、EMの結果により電子流の方向に移動(ドリフト)することが知られている。バンブー配線の場合のドリフト(移動)速度は、原子拡散に関する配線端における境界条件(配線端での原子の流入及び流出)を考慮することで、理論的に表現できる。ここで表現されたドリフト速度はADF* liを含んでいる。薄膜の特性定数は、ドリフト速度を計測することで決定される。ドリフト速度計測のための実験には、ビア接続を模擬した試験用配線を用いる。AFD* liによる理論的なドリフト速度と実験によるものとを等しいと置くことにより、ADF* li内の薄膜の特性定数が得られる。
保護膜で被覆されたバンブー配線に対する原子流束発散ADF* liが、ここで定式化される。保護膜で被覆されたバンブー配線中の原子の移動は、下記のように与えられると仮定する。
この式では、応力勾配による原子の逆流及びEMにより金属配線中に生じた応力の影響が考慮されている。これはまた、バンブー配線中では、結晶粒界での原子発散は無視することができ、EMによる界面拡散を含む格子拡散が支配的であることを仮定している。この仮定の背景には、結晶粒界は少なく、存在したとしても、それらは配線の長さ方向に対して垂直であることがある。被覆されていないバンブー配線においては、結晶粒界の質量移動に対する所謂ブロッキング効果が存在し、EM誘発のボイドは、結晶内ではなく、結晶粒界のみで形成され、成長することが報告されている。
結晶粒界がバンブー配線でのEM損傷の形成にかなり寄与しているとすれば、ボイドは結晶粒界に沿ってスリット状となって現れるはずである。電流負荷後における保護膜被覆したAl/TiN配線の平面図と断面図(図示せず)からは、カソード端でのドリフトによるEM損傷だけが見つかり、スリット状ボイドはどこにも見つからなかった。従って、結晶粒界はEM損傷の形成にほとんど寄与していないと考えられるので、ここでは、結晶粒界は存在しないものとみなす。式(1)に基づき、バンブー配線のEMによる原子流束発散AFD* liは、
で与えられる。ここで、C* li=D0/kであり、AFD*’ liは、結晶内および、配線とその周辺の境界面における原子流束の発散量を表している。ボイド形成に寄与する原子流束発散量に着目することとし、AFD*’ liの正値のみの期待値を求めると、以下のようにパラメータAFD* liが定義される。
ICに使用する金属配線はビア接続されることが多く、多層配線の構造となっている。このような配線では、カソード端とアノード端それぞれでは原子の出入りがない。これは、大電流入力パッド/出力パッド等の原子貯蔵部が金属配線に接続されていないからである。その結果、配線のカソード端では電子流への方向にドリフトが発生する。図1は、配線10のカソード端で発生するドリフトの概略図である。図1で、Δxは、ドリフト長ldから得られる微小長を示すもので、これは大きな数:mで等分して得られたものである。原子流がx軸に沿って非線形に変化すると、x=ldでの原子流束J|x=ldは、近似的に、
式AFD* liに含まれる薄膜特性定数は、Q* li,Z*,C* liおよびκ・∂N/∂xである。ここでは、直線状の配線を想定して、これらの特性を決める方法を導く。ブレック(Blech)によれば、原子濃度勾配は配線長に依存し、その長さに反比例する。EM損傷の初期段階では、原子濃度分布は、配線に沿って線形とみなされる。積κ・∂N/∂xは、直線配線の長さに依存する特性として与えられる。
薄膜特性Q* li[=Qli−σTΩ],Z*,C* liおよびκ・∂N/∂xは、以下のように、直線配線のカソード端におけるドリフト現象を利用し、一定の期間、加速試験を行って、実験的に決める。この実験は、3つの異なる基板温度Ts1,Ts2,Ts3のもとで、配線に電流密度j1を入力する。さらに、j1とは異なる電流密度j2においても温度Ts2で加速試験を行う。各実験条件をそれぞれ、条件−1:j1とTs1、条件−2:j1とTs2、条件−3:j1とTs3、条件−4:j2とTs2とする。そして、各試験条件における配線のカソード端の温度をそれぞれT1,T2,T3,T4とする。これらの温度値を得るため、熱伝導電気問題のFEM解析を行う。配線端のドリフト長は、一定の期間、電流の負荷を与えた後に測定する。ドリフト速度vdの値は、上記の4種類の試験条件下で実験的に得る。未知の薄膜特性定数は、最小2乗法を使用して得ることができる。即ち、次の差の総和が最小値となるように特性値を決める。
実験に使用した金属配線は、以下のように製造した。シリコン酸化膜で被覆されたシリコン基板上にスパッタリング装置でTiN層を成膜し、これに続いて、真空蒸着によりTiN上にAl薄膜を蒸着した。試料には、通常のフォトリソグラフィによりパターンが形成され、RIE技術でエッチングした。Alの試験配線両端の微小部分を化学的にエッチングし、そこでのみTiN部分を露出した。金属配線の構築後、バンブー構造を形成するため、試料を673Kで90分間アニール処理した。次に、試料表面にPE−CVDによりTEOS膜を蒸着した。このTEOS膜の厚さは1.0μmであった。上記のように形成した金属配線の外形寸法を図2に示す。図2(a)は平面図,図2(b)は断面図である。FIB装置とFE−SEMによるミクロ組織の観察から、配線幅と配線厚の両方向に1つだけ結晶粒があるため、使用した金属配線はバンブー状の構造であることが確認された。断面画像は、FIBを使用して、金属配線をその縦軸に沿って切断した後にFE−SEMによって得た。
実験では、端部のドリフトやボイド形成が始まるまでの潜伏期間を得るため、配線における電圧降下の変化を観測した。3つの異なる基板温度508,523,538Kを選択した。各温度において、金属配線に4.5MA/cm2の密度の直流電流を与える(条件−1,−2,−3)。さらに、基板温度が523K、4.8MA/cm2の電流密度のもとで試験を行った(条件−4)。各試験条件で10個の試料を使用した。電流供給の前後で、図3に示すように、レーザー顕微鏡で金属配線のカソード端を観察した。図3(a),(b)に示すように、電流負荷の前後で、電流出力パッドからカソードエッジまでの距離を測定し、減算をしてドリフト長を得た。正味の電流供給時間で除したドリフト長より、ドリフト速度を得た。正味の電流供給時間は、電流供給時間から潜伏期間を減算して得た。
ドリフト速度の実験データを式(7)に代入し、最小2乗法を使用して未知の薄膜特性値を最適化した。得られた定数を表1に掲載する。
なお、バンブー配線における原子拡散経路は、いくつかの文献で議論中の問題であり、ある研究者は、主たる拡散経路は格子であると報告し、ある研究者は、境界面の拡散が主要なメカニズムであると主張している。バンブー配線における拡散経路は、材料システム(配線とその周辺との組み合わせ)、配線そのものの材料、あるいは製造条件に依存するといえる。従って、どのメカニズムが支配的であるとか、あるいは除外されると結論づけることは適当ではなく、バンブー配線では、両方のメカニズムが作用していると予想される。
他方、得られたZ*値は−1.2であり、以前に報告された値である−1〜−15の範囲内にある。なお、関数G* li|endは、式(6)の両辺の対数をとることで定義され、
ここでは、EM損傷の支配パラメータAFD* liを使用して、保護層で被覆されたバンブー配線についてしきい電流密度jthを評価する方法を説明する。ビア接続配線を模擬したパッドなし配線を想定して、原子濃度分布の生成プロセスの数値シミュレーションを行う。この数値シミュレーションの評価結果と実験結果を比較して、しきい電流密度の評価方法が有用であることを示す。しきい電流密度の評価方法が、支配パラメータAFD* liに基づいてうまく構築されたものであるという事実は、同時にAFD* liの適切さを示すものである。
しきい電流密度を評価する数値シミュレーションは、支配パラメータAFD* liを使用して行う。仮定した配線を、図5に示すような要素に分割して、原子濃度分布生成プロセスのシミュレーションを行う。試験配線部分の両端は、他の配線部分の要素よりも細かい要素で分割される。微小要素の配線長さ方向の大きさは、図5に示すようにΔlである。各要素の原子濃度を支配パラメータ値に基づいて変えて、原子濃度分布生成プロセスの数値シミュレーションを行う。要素の大きさが微細なほど、シミュレーションが正確になるため、実際の現象を表わすことができる。使用する要素は、シミュレーションの結果が収束するために十分に細かくなければならない。
図6に、原子濃度分布生成プロセスの計算手順を示す。最初に2次元FEM解析によって、配線の電流密度分布と温度分布を得る(S204)。FEM解析の結果と、前に説明したAFD* liに基づく方法で得た薄膜特性定数(205)とを利用して、各要素の原子流束発散AFD* liを求める。実時間で割り当てられた時間増分における各要素中の原子の減少量あるいは増加量を計算することにより原子濃度Nを求める(S208)。原子濃度の変化は、端部の要素についてはJend+AFD* li|str・Δlの値をもとに計算し、他の要素についてはAFD* liの値をもとに計算する(S206)。そして、各要素における原子濃度Nを計算し、このNの分布に基づいて、原子濃度勾配を計算する。図6のフローチャートに示すように、これらの計算を、繰り返し実行する(S210)。
なお、ボイド形成に対する臨界原子濃度Nminと、ヒロック形成に対する臨界原子濃度Nmaxとがあると想定できる。これらの値と、原子濃度の変化と応力の変化とを関連づける定数κは、原子濃度分布の生成プロセスの数値シミュレーションを実行するために必要である。これらは、以下のようにして決めた。定数κの推定値を用い、図6に示す反復計算を、実験で測定した潜伏期間の間実行する。シミュレーション後に配線における原子濃度勾配∂N/∂xが与えられる。シミュレーションによる∂N/∂xの値と推定したκとの積が、薄膜特性として実験で得たκ・∂N/∂xの値と一致するようにκの値を決める。そして、得られた値を用い、再度原子濃度分布生成プロセスに関するシミュレーションを実行後、全要素での原子濃度値Nを得る。全要素での原子濃度の最小値をNminとし、最大値をNmaxとする。
ここでは、図2に示す金属配線でのしきい電流密度を評価する。基板温度を523Kとする。κ,Nmin,Nmaxの値は、前に説明した方法で定めた。シミュレーションで得たκ・∂N/∂xの値が表1に示す実験値と一致するようにκの値を決めた。このようにして、κ=50.6,GPa,Nmin=5.99×1010μm−3,Nmax=6.07×1010μm−3が得られた。
図7は、j=1.0MA/cm2の場合における、配線での原子濃度分布の時間変化である。横軸は、配線の中央からの距離を示す。図7(a)〜(e)に示すように、原子濃度分布は時間とともに徐々に発達し、最終的には、定常状態分布となる。従って、しきいjth以下の入力電流密度では、このように原子濃度分布は定常状態となる。
図8は、入力電流密度jに対する定常状態における、N0で正規化したNの最小値すなわち、シミュレーション後における全要素中の原子濃度Nの最小値を示している。Nの定常最小値は、実線で示すように電流密度が増すにつれてNminに近づくことが分かる。その結果、しきい電流密度は、実線と、破線で示すNmin/N0の値との交点から3.62MA/cm2と評価された。
評価結果を検証するため、同じ配線形状(図2参照)についてしきい電流密度を実験的に得た。実験に使用した金属配線は、以下のようにして製造した。酸化シリコンで絶縁保護されたシリコン基板上にスパッタリング装置でTiNの薄膜を成膜し、続いて、そのTiN層の上に真空蒸着によりAl薄膜を蒸着した。実際のICでは、TiNといった高融点金属をビア接続されたAl配線の下に敷くことが多い。金属配線は、配線に形成されたボイド周辺の電流をバイパスする下層によって、電気的に不連続となることを回避できる。Al蒸着の後、フォトリソグラフィにより試料にパターンを形成し、RIE技術でエッチングした。Alの配線両端の微小部分を化学的にエッチングし、そこのTiN層を露出させた。金属配線の形成後、バンブー構造を形成するために、試料を673Kで90分間アニール処理した。次に、試料の表面にPE−CVDによりTEOS膜を蒸着した。図2に、形成された配線の寸法を示す。上述した配線構造は、ドリフト速度あるいはしきい電流密度の測定に研究者がしばしば使用するものである。
しきい電流密度について、評価値と実験値の良好な一致が得られた。このように一旦、薄膜特性値が与えられれば、AFD* liに基づく数値シミュレーションによってしきい電流密度の評価が可能となるということが明らかになった。数値シミュレーションでは、任意の動作温度で、どのような形状の金属配線のしきい電流密度をも評価することができる。しきい電流密度の評価方法にAFD* liをうまく適用できたという事実から、支配パラメータAFD* liも有効であったと結論づけることができる。
なお、ここでは、実際のビア接続された配線に代えて、電流入出力パッドに直接接続されていない金属配線を扱った。ここで提案した、パッドのない配線のしきい電流密度の評価方法は、実際にビア接続された配線にも適用可能である。
Claims (3)
- 多層構造配線のEM損傷による原子濃度分布評価システムであって、
2次元FEM解析による前記多層構造配線の各要素の電流密度分布、温度分布を計算するFEM解析手段と、
予め得た配線薄膜特性の定数と、前記FEM解析手段から得た電流密度分布、温度分布により、バンブー配線の原子流束発散AFD* liを計算するAFD* li計算手段と、
前記各要素の原子数の変化を、前記AFD* liの値をもとに計算することで、実時間で割り当てられた時間増分における前記各要素中の原子濃度Nを計算する原子濃度変化計算手段と、
前記AFD* li計算と、原子濃度変化計算とを、いずれかの要素において原子濃度Nの値が臨界原子濃度になるまで、あるいは、Nの値が臨界原子濃度に達することなく原子濃度分布が定常状態を維持するまで実行させる反復手段とを備え、
前記AFD * li は、
であることを特徴とする多層構造配線のEM損傷による原子濃度分布評価システム。 - 前記予め得た配線薄膜特性の定数は、AFD* liによる理論的な配線端ドリフト速度と複数の電流密度と基板温度の組の実験による計測値とを、最小2乗法により最適化パラメータとして決定することを特徴とする、請求項1に記載の多層構造配線のEM損傷による原子濃度分布評価システム。
- 請求項1又は2に記載の多層構造配線のEM損傷による原子濃度分布評価システムの機能をコンピュータシステムに実現させることを特徴とするプログラム。
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