JP2000304674A - 軟化溶融石炭粘度の評価方法 - Google Patents

軟化溶融石炭粘度の評価方法

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JP2000304674A
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Seiji Nomura
誠治 野村
Kenji Kato
健次 加藤
Ikuo Komaki
育男 古牧
Yuji Fujioka
裕二 藤岡
Kouji Saito
公児 斎藤
Ikuro Yamaoka
育郎 山岡
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 軟化溶融状態における石炭粘度の評価方法に
関し、見せかけの粘性ではなく、物理的に意味がある、
コークス強度推定に使用可能な軟化溶融石炭の粘性を評
価できる評価方法を提供する。 【解決手段】 動的粘弾性測定装置により軟化溶融状態
にある石炭の複素粘性率の周波数依存性を測定し、複素
粘性率の周波数依存性から、任意のせん断速度における
軟化溶融石炭粘度を求めることを特徴とする軟化溶融石
炭粘度の評価方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軟化溶融状態にお
ける石炭粘度の評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、粘結性がある石炭を加熱する
と、軟化溶融することが知られている。コークス炉にお
けるコークス化過程においては、軟化溶融状態にある石
炭の物性がコークスの品質に大きな影響を与えるため、
軟化溶融状態にある石炭の性質を正確に評価することは
極めて重要であるといえる。
【0003】この軟化溶融状態にある石炭の性質を評価
する方法としては、従来からJIS−M8801に規定
されているギーセラープラストメーター法による流動度
測定法や、ジラトメーター法による膨張率測定法などが
知られており、これらのパラメーターは、冶金用コーク
ス製造用原料炭の粘結性、コークス化性および配合効果
の判定に用いられる石炭評価用のパラメーターである。
ギーセラープラストメーター法は石炭軟化溶融物内に挿
入した回転羽を一定トルクで回転させ、その回転速度を
もって流動性指数として評価しており、回転式粘度計と
たいへんよく似ているため、ギーセラー・プラストメー
ター法で測定される流動度が大きいと粘度が低く、流動
度が小さいと粘度が高いものと考えられてきた。
【0004】このギーセラー・プラストメーター法で測
定される流動度を用いたコークス強度の推定方法が従来
より多数提案されており、例えば以下のような式が示さ
れている(佐田ら、コークスサーキュラー,22(19
73),P189)。 DI=2.940×MF−0.045×VM+α ただしDIはコークスのドラム強度指数(ドラム150
回転後15mm指数)、MFはギーセラープラストメー
ターで測定された配合炭の最高流動度、VMは配合炭の
揮発分、αはコークス炉温度、石炭水分、置時間等の関
数で表される補正項である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一般に、濃厚高分子溶
液の粘度を回転式粘度計で測定すると、回転子の回転速
度(せん断速度)により粘度が変化し、せん断速度が大
きいほど粘度が低下することが知られている。しかしな
がら従来、軟化溶融した石炭の粘度を議論する際におい
ては、回転速度が粘度に及ぼす影響についてはほとんど
考慮されておらず、トルク一定型のプラストメーター
(ギーセラープラストメーター)により流動度(回転速
度)を測定して、相対的な粘性の評価を試みていた。し
たがって、ギーセラープラストメーターで測定される流
動度は、回転速度が異なる条件での測定値であり、回転
速度が粘度に影響を及ぼすということを考慮すると、必
ずしも相対的に粘度を比較していることとはならない。
すなわち、流動度の高い領域においては、回転子が高速
で回転するためにせん断速度が大きくなり、粘度が低下
してさらに回転子の回転数が早くなることが予測され、
流動度が高いほど、粘度の差が過剰に反映されることと
なる。
【0006】また、コークス炉において、軟化溶融した
石炭からコークスが形成される過程において、軟化溶融
石炭に作用するせん断速度は極めて小さく、ギーセラー
プラストメーターにおいて石炭に作用するせん断速度と
は比較にならぬほど小さい。したがって、コークス強度
を決定する因子の一つとしてギーセラープラストメータ
ーの流動度を用いるのは、実際のコークス炉で起ってい
る現象をシミュレートしているとはいえない点で問題で
ある。
【0007】したがって、ギーセラープラストメーター
で測定された配合炭の最高流動度を用いてのコークス品
質の推定の精度は、しばしば充分ではないという問題が
あり、ギーセラープラストメーターで測定される見せか
けの粘性ではなく、物理的に意味がある、コークス強度
推定に使用可能な軟化溶融石炭の粘性を評価するパラメ
ーターが求められていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するため、動的粘弾性測定装置により、軟化溶融状
態にある石炭の複素粘性率の周波数依存性を測定し、複
素粘性率の周波数依存性から、任意のせん断速度におけ
る軟化溶融石炭粘度を求めることを特徴とする、軟化溶
融石炭粘度の評価方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】発明者は、高分子の動的粘弾性を高温で測
定する装置が近年開発されたことに着目し、この装置を
用いて軟化溶融石炭の動的粘弾性を測定すれば良いので
はないかと考えた。一般に、弾性と粘性とを同時にもつ
力学的性質のことを粘弾性とよぶ。また、ここでいう動
的粘弾性とは、粘弾性体に振動を与えて応力または歪み
を時間的に変化させた場合に見られる粘弾性挙動のこと
である。動的粘弾性パラメーターの中で粘度に相当する
パラメーターは、次式のように応力σと歪みγの時間的
変化率の比で定義される複素粘性率(η*)である。 η*=σ/(dγ/dt)
【0011】発明者は、以下の方法により、石炭の動的
粘弾性パラメーターの一つである複素粘性率(η*)と
周波数の関係を求めた。まず、石炭を−150μmに粉砕し
た後、0.8gを錠剤成形機にて20MPaの圧力で成形し、20m
mφ×2.1mm 厚みのタブレット状とした。ここで、動的
粘弾性測定には、例えばアレス粘弾性測定システム2KST
D型(Rheometric Scientific F.E 社)を用いる。石炭
試料は25mmφの平行平板ではさみ、窒素雰囲気中におい
て300〜500℃まで3℃/minで加熱昇温した。温度が使用
石炭の最高流動温度に到達した後、その温度で保定し、
周波数を0.1〜12.8 rad/sの範囲で変化させて試料に振
動を加え、このときのσとγの関係から、上記式で複素
粘性率(η*)を求めた。この測定に基づいて、複素粘性
率(η*)と周波数の関係を求めた。
【0012】発明者は、複素粘性率(η*)と周波数の
関係について調査した結果、図1に示すように、周波数
が高いほど、複素粘性率が小さくなり、粘度が低くなる
ことを見出した。これは、濃厚高分子溶液と同様の挙動
である。また、最高流動度が大きいほど粘度は低くなる
と考えられていたのに対して、最高流動度の大きい領域
では、最高流動度の変化に基づく複素粘性率の変化の割
合が小さくなることを見出した。本発明はこれらの知見
に基づいて発明された。
【0013】以下、本発明を具体的に説明する。
【0014】最高流動度が大きい領域で、複素粘性率の
変化率の最高流動度への依存性が小さくなるのは、流動
度が大きい領域では、最高流動度の測定に用いる回転子
が高速で回転してせん断速度が大きくなるために粘度が
低下し、粘度が過小に評価されていたためと推察され
る。すなわち、軟化溶融石炭の粘性について炭種間の差
を議論する上においては、せん断速度一定下での粘性に
より評価することが重要である。
【0015】せん断速度一定下で粘性を測定する方法と
しては、回転式粘度計があるが、文献「新実験化学講座
1 基本操作I」第170頁(日本化学会編、昭和50
年発行)に示されている通常の回転粘度計では、石炭の
軟化開始温度である350℃〜450℃まで測定できな
いという問題点がある。軟化溶融状態における石炭の粘
度を測定するには、まず試料石炭が軟化溶融状態になけ
ればならない。
【0016】そこで、高温in-situで動的粘弾性が測定
可能な動的粘弾性測定装置により、軟化溶融状態にある
石炭の複素粘性率の周波数依存性を測定し、複素粘性率
の周波数依存性から、任意のせん断速度における軟化溶
融石炭粘度を求めることとした。
【0017】軟化溶融石炭の動的粘弾性の周波数依存性
を測定するに際しては、前述したような方法で測定可能
である。
【0018】軟化溶融状態にある石炭は最高流動温度に
おいて保定しておくと、熱分解反応が進行し、最終的に
は揮発分が抜けて固化してしまうので、所定温度に到達
後迅速に複素粘性率の周波数依存性を測定することが重
要である。標準的な条件であれば、複素粘性率の周波数
依存性の測定は約3分程度で終了するので、石炭が再固
化するまでの時間(約1時間のオーダー)と比較すれ
ば、その間における物性変化はほとんど無視できると考
えられる。
【0019】上記のような方法により、軟化溶融状態に
ある石炭の粘性を表すパラメーターとして、ギーセラー
プラストメーターにより測定される最高流動度の代わり
に、動的粘弾性測定装置により測定される、任意のせん
断速度における複素粘性率を求めることができ、軟化溶
融石炭粘度を従来より正確に評価できる。
【0020】コークス品質推定のパラメーターとして使
用する場合は、実施例にも記しているように低い周波
数、例えば0.1〜1rad/s程度の周波数における
複素粘性率を単独で用いるか、あるいはいくつかの周波
数での複素粘性率の平均値を用いるか、複素粘性率の周
波数依存性を示すグラフの傾き等を用いることが考えら
れる。
【0021】
【実施例】(実施例1)実炉において、ギーセラープラ
ストメーターによる最高流動度を用いてコークス品質
(ドラム強度)を予測した場合と、動的粘弾性測定装置
による周波数依存性を求め、周波数0.1rad/sに
おける複素粘性率の平均値を最高流動度の代わりに用い
てコークス品質を予測した場合のコークス品質の推定値
と実測値の推移を図2に示す。最高流動度を用いて予測
した場合の推定値と実測値の差の標準偏差は0.3であ
ったが、複素粘性率を用いて予測した場合の推定値と実
測値の差の標準偏差は0.2となり、推定精度が向上し
ていることがわかる。高炉プロセスにおいては、安定し
た高炉操業を実現するために、コークス強度の最低管理
値が定められている。コークス品質の推定精度が向上し
た結果、従来よりもより劣質で安価な石炭の配合割合を
増加させてコークス強度の最低管理値を達成することが
可能となり、コークス製造コストを低減せしめることが
できた。ここで、ドラム強度とは、JIS K2151
に記載のドラム強度試験法により測定される、ドラム1
50回転後に15mm篩上の残存した重量比で表すドラ
ム強度指数である。
【0022】
【発明の効果】本発明により、せん断速度一定条件下で
の、軟化溶融状態における石炭の粘度測定が可能となっ
た。これにより、石炭コークス化過程において最も重要
な軟化溶融状態の定量的な評価が可能となり、今後本発
明を踏まえたコークス化現象の解明により、コークス製
造のための最適条件の提示が期待され、その効果は大き
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】周波数と軟化溶融石炭の複素粘性率(η*)の
関係を示す図である。
【図2】実炉におけるコークス品質の推定値と実測値の
推移を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古牧 育男 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内 (72)発明者 藤岡 裕二 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内 (72)発明者 斎藤 公児 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内 (72)発明者 山岡 育郎 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内 Fターム(参考) 4H012 LA03 4H015 AA10 AB01 CB01

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動的粘弾性測定装置により軟化溶融状態
    にある石炭の複素粘性率の周波数依存性を測定し、複素
    粘性率の周波数依存性から、任意のせん断速度における
    軟化溶融石炭粘度を求めることを特徴とする軟化溶融石
    炭粘度の評価方法。
JP11115968A 1999-04-23 1999-04-23 軟化溶融石炭粘度の評価方法 Withdrawn JP2000304674A (ja)

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