JP2000298130A - ネコ又はイヌの血管炎を伴う疾患の検査方法 - Google Patents

ネコ又はイヌの血管炎を伴う疾患の検査方法

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JP2000298130A
JP2000298130A JP11106753A JP10675399A JP2000298130A JP 2000298130 A JP2000298130 A JP 2000298130A JP 11106753 A JP11106753 A JP 11106753A JP 10675399 A JP10675399 A JP 10675399A JP 2000298130 A JP2000298130 A JP 2000298130A
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dog
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cats
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Koichi Ono
耕一 大野
Takeshi Maeda
健 前田
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Kyoritsu Shoji KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡便で客観的にネコ、イヌの血管炎疾患を検
査できる方法を提供すること。 【解決手段】 ネコあるいはイヌの固定された好中球、
ヒト、イヌあるいはネコのミエロパーオキシダーゼ又は
ヒト、イヌあるいはネコのプロテアーゼ−3を抗原とし
て用いた抗原抗体反応を利用した免疫測定法により、ネ
コ又はイヌの血清中の抗好中球細胞質抗体を検出するネ
コ又はイヌの血管炎を伴う疾患の検査方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ネコ又はイヌの血
管炎を伴う疾患の検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】抗核抗体(anti−nuclear
antibodies:ANA)は自己免疫疾患のスク
リーニング検査上、極めて重要な自己抗体であり、間接
蛍光抗体法で染色パターンにより対応抗原が鑑別され、
膠原病の診断に広く応用されている。膠原病は、関節炎
・関節痛があること、自己成分に対する過剰な免疫応答
によって組織傷害を起こすこと、病変の主座が血管・結
合組織であることからリウマチ性疾患、自己免疫疾患、
血管結合組織疾患の3つの特徴を合せ持つ全身性多臓器
疾患の総称である。近年、膠原病あるいは膠原病近縁疾
患に属する血管炎症侯群の一群に好中球細胞質に対する
自己抗体(anti−neutrophil cyto
plasmic autoantibodies:AN
CA)が高率に認められ、抗核抗体とともに膠原病の血
清学的指標として疾患診断、病態の把握、治療内容およ
びその効果判定、予後判定に利用されている。獣医学領
域では、ANCAは比較的新しく発見された自己抗体で
あるため、これまでほとんど研究されていない。
【0003】一方、ネコ又はイヌで血管炎を伴う疾患は
少なくない。例えば、感染症、膠原病、腎疾患などがあ
る。ネコやイヌの場合、血管炎を伴う疾患に冒されてい
るかどうかは、臨床病理学的に総合診断して判定する。
例えば、血管炎を生じる代表的な疾患の一つに、猫伝染
性腹膜炎(以下、「FIP」と記す)がある。この病気
は、コロナウイルスの一種である猫伝染性腹膜炎ウイル
ス(FIPV)を原因とする。進行性で致死的な全身免
疫介在性疾患である。臨床的には、滲出型と非滲出型に
分類されている。滲出型は、多臓器に化膿性肉芽腫性変
化と激しい壊死性血管炎を起こし、腹水、胸水の滲出を
伴う。疾患診断は、臨床症状および腹水・胸水の所見、
血液化学所見、FIPV抗体価の上昇、肝腎の生検所見
など、臨床病理学的に総合して行う。
【0004】FlPの診断、特に非滲出型の診断は困難
である。例えば、FIPV抗体価は近縁の腸コロナウイ
ルスに対する抗体との交差反応がある。他の所見に関し
てもFIPに特異的とは言えないからである。その他に
も、病態を把握する有用な指標がなく、治療計画、予後
の判定を困難にしている。小動物疾患で血管炎を呈する
疾患には、FlP以外にも、全身性紅斑性狼瘡、フィラ
リア症、犬伝染性肝炎、秋田犬・スピッツ・ドーベルマ
ンの特発性脈管炎などがあるが、血管炎とその病因・病
態との関連性は明らかにされていない。そのため、疾患
の有効な検査方法は実質的にないというのが現実であ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、診
断、病態の把握が困難であったネコ、イヌの血管炎を伴
う疾患(血管炎症候群)を簡便に検査できる方法を提供
することを目的とする。本発明の別の目的は、ネコ伝染
性腹膜炎(FIP)の診断、病態を簡便に検査すること
ができる検査方法を提供することである。本発明の別の
目的は、イヌにおけるバベシア感染症の診断、病態を簡
便に検査することができる検査方法を提供することであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、今回、鋭
意検討の結果、上記の課題を以下の手段で解決できるこ
とを見いだした。 (1) ネコあるいはイヌの固定された好中球、ヒト、
イヌあるいはネコのミエロパーオキシダーゼ、又はヒ
ト、イヌあるいはネコのプロテアーゼ−3を抗原として
用いた抗原抗体反応を利用した免疫測定法により、ネコ
又はイヌの血清中の抗好中球細胞質抗体を検出すること
を特徴とするネコ又はイヌの血管炎を伴う疾患の検査方
法。
【0007】(2) 抗原抗体反応を利用した免疫測定
法が、酵素免疫測定法であることを特徴とする前記
(1)に記載のネコ又はイヌの血管炎を伴う疾患の検査
方法。 (3) 血管炎を伴う疾患が、泌尿器疾患又は感染症で
あることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のネ
コ又はイヌの血管炎を伴う疾患の検査方法。 (4) 血管炎を伴う疾患がネコ伝染性腹膜炎である前
記(1)に記載のネコ又はイヌの血管炎を伴う疾患の検
査方法。 (5) 血管炎を伴う疾患がイヌバベシア感染症である
前記(1)に記載のネコ又はイヌの血管炎を伴う疾患の
検査方法。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
するが、本発明はこれに限定されない。本発明の検査方
法において、抗原抗体反応を利用した免疫測定法として
は、公知の免疫測定法を使用することができるが、具体
的には蛍光物質を標識とする方法(例えば間接蛍光抗体
法(Indirect immunofluorescence test ; IIF))、酵
素を標識とする方法(例えばELISA法(enzyme-lin
ked immunosorbent assay))、放射性物質を標識とす
る方法(例えばRIA法(radioimmuno assay))等が
用いることができる。本発明においては、酵素を標識と
する酵素免疫測定法が好ましく、中でもELISA法が
好ましい。これにより、より簡単で、且つ明確な疾患の
検査が可能となる。ここで標識する酵素としては、アル
カリフォスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ等
が挙げられ、基質もこれら酵素に対応したものを用いる
ことができる。
【0009】本発明において、上記免疫測定法に用いる
抗原としては、ネコ又はイヌの固定された好中球、ミエ
ロパーオキシダーゼ(MPOともいう)、プロテアーゼ
−3(PR−3ともいう)のうちいずれか1種又は二種
以上を用いる。上記固定された好中球は、ネコ又はイヌ
から採血して、得られた血液から遠心分離等により好中
球を分離し、それを固定液(例えばエタノール、ホルム
アルデヒド)で固定して得られる。上記MPO、PR−
3は、ネコ、イヌ、ヒト等の好中球から精製されたもの
や、MPO、PR−3の遺伝子を大腸菌にて発現させた
組み換えタンパク質、あるいは市販されたものを使用で
きる。本発明においては、抗原としてMPO、PR−3
又はこれらの混合物が、検出がより確実になる点と操作
が簡単になる点等で好ましい。
【0010】上記各種抗原は、基体(例えば、多穴スラ
イドグラス、多穴マイクロタイターウェル等)上に、固
定(固相化)する。上記抗原を含有する溶液(界面活性
剤やBSA等の添加剤を含んでいてもよいPBS溶液
等)を基体に分注し、風乾するか、所定時間インキュベ
ートすることにより固定できる。固定後に余分な抗原を
洗浄、除去する。上記抗原が固定された基体上に、被検
個体の血漿(血清)を(そのままあるいは必要により希
釈したもの)分注して、抗原と所定条件(例えば、室温
で1〜3時間)で反応させる。
【0011】反応後、基体をPBS等により洗浄し、放
射線物質、蛍光物質あるいは酵素標識された抗ネコある
いは抗イヌIgG抗体等の標識抗体を基体上に分注し、
所定時間(例えば、室温で1〜3時間)反応させる。こ
こで各種標識抗体は、市販のものを使用できる。反応後
洗浄し、蛍光標識抗体を用いた場合には蛍光顕微鏡で蛍
光を観察する。発色したものの蛍光色素量を蛍光光度計
で測定することにより、ANCAを定量的に測定でき
る。
【0012】一方酵素標識抗体を用いた場合には、該酵
素の基質を添加し、酵素反応させ、発色したものを観察
する。発色したものを特定の波長(例えば405nm)
の光で吸光度(OD)を測定して、それを抗体価とし、
定量的にANCAを検出できる。放射線物質で標識され
た抗体を用いた場合には、上記マイクロタイターウェル
を洗浄後、それぞれのウェルを単離し、γ(ガンマ)−
カウンター等を用いてその放射活性を測定することによ
り、高感度且つ定量的にANCAを検出できる。上記の
ように血清中のANCAを定量的に測定することで、そ
の量から血管炎を伴う疾患の病態を把握できる。
【0013】本発明において、血管炎を伴う疾患として
は、腎炎等の泌尿器疾患、伝染性腹膜炎、バベシア感染
症等の感染症、腫瘍、膵炎、皮膚炎等が挙げられる。こ
れらの中では、ネコ伝染性腹膜炎(FIP)、バベシア
感染症において、本発明の方法がより有効に適用でき
る。
【0014】以下、本発明の方法の好ましい態様を示
す。 1)抗原としてヒトのMPO及び/又はヒトのPR−3
を用いたELISA法により、ネコまたはイヌの血清中
のANCAを検出することを特徴とするネコ又はイヌの
血管炎を伴う疾患の検査方法。 2)抗原としてヒトのMPO及び/又はヒトのPR−3
を用いたELISA法により、ネコの血清中のANCA
を検出することを特徴とするネコ伝染性腹膜炎の検査方
法。 3)抗原としてヒトのMPO及び/又はヒトのPR−3
を用いたELISA法により、イヌの血清中のANCA
を検出することを特徴とするバベシア感染症の検査方
法。
【0015】以下、抗原としてヒトのMPOを用いたE
LISA法(MPO−ANCA−ELISA法)と抗原
としてヒトのPR−3を用いたELISA法(PR−3
−ANCA−ELISA法)の具体的方法を以下に示す
が、本発明の内容がこれらに限定されるものではない。 (1) MPO−ANCA−ELISA法 基体上に、5〜10μg/mlの濃度に調整した、ヒト
好中球細胞質より精製したMPO(Myelopero
xidase)を含むPBSを分注し、温度4℃で1晩
(12時間)放置、固相化させる。固化したMPOをP
BSで洗浄し、MPOをブロッキングする。ブロッキン
グは、ゼラチンを添加したPBS−Gelを注入して行
う。PBS−Gelのゼラチン濃度は、1〜2重量%が
よい。
【0016】次に、その基体をTween20等の界面
活性剤を濃度0.05〜0.1重量%添加してあるPB
S(PBST)を使用して洗浄する。洗浄後、1〜2重
量%ゼラチン添加PBSTで10〜100倍に希釈した
被験血漿を注入し、室温(25℃)で1〜2時間で抗原
と反応させる。洗浄後、そこに酵素標識抗体を注入し反
応させる。反応後PBSTで洗浄後、アルカリフォスフ
ァターゼ基質を注入し、波長405nmにて吸光度(O
D)を測定する。OD平均値をその検体の抗体価とす
る。
【0017】(2)PR−3−ANCA−ELISA法 MPOの代わりに、PBSで5〜10μg/mlの濃度
に調整した、ヒト好中球細胞質より精製したPR−3
(Proteinase−3,East Coast
Biologics,U.S.A.)を用い、上記の方
法に準じて行うことができる。
【0018】本発明において、同じ被検個体血清につい
て、抗原として固定された好中球、MPO及びPR−3
のいずれか1つの抗原で本発明の方法を実施したのち、
更にそれとは別の抗原を用いて2回目の本発明の方法を
実施してもよい。このように二種以上の抗原を用いて別
々に複数回検査することにより、検査の精度が上がると
ともに、ANCAの対応抗原が異なる場合にも対応でき
る。
【0019】
〔実施例1〕
<MPO−ELISA法>図1に、本実施例の工程図を
示す。 1 被験血漿(血清) 描血漿サンプルとして、FIP自然発症猫21頭(東京
大学家畜附属病院より供与)、ネコ伝染性腹膜炎ウイル
ス(FIPV)KUK−H、M91−266、M91−
267株を接種したFIP実験感染猫6頭(以下、FI
P実験感染猫A群とする)およびFIPV M91−2
67株を接種し経時的にサンプルを採取したFIP実験
感染猫6頭(実験感染猫B群:山口大学農学部微生物学
研究室より供与)、山口大学農学部家畜附属病院に来院
した何らかの疾患を持った猫39頭(内訳を下記表1に
示す)、健常描8頭(山口大学農学部微生物学研究室に
て飼育されたSPF猫6頭、山口大学農学部家畜附属病
院に来院した臨床上異常を認めない猫2頭)、計80頭
の猫由来の血漿(血清)を用いた。
【0020】
【表1】
【0021】なお、FIP実験感染猫B群においては、
安楽死後、山口大学農学部病理学研究室にて病理解剖を
行いその病理組織学的所見を得た。また、犬血漿サンプ
ルとして、山口大学農学部家畜附属病院に来院した何ら
かの疾患を持った犬76頭(内訳を表2に示す)、およ
び健常犬として当研究室で飼育されているビーグル犬7
頭、計83頭の血漿を用いた。これらの血漿(血清)
は、検査時まで−20℃で保存した。
【0022】
【表2】
【0023】2 固相化 PBS(リン酸緩衝食塩水)で10μg/mlの濃度に
調整された、ヒト好中球細胞質より精製したMPO(M
yeloperoxidase,NACALAI TE
SQUE,Inc.JAPAN)溶液を、96穴ELI
SA用プレート(Greiner,Germany)に
100μlずつ分注し4℃で一晩、固相化した。
【0024】3 中間処理 翌日、MPO溶液を回収した後、該プレートをPBSで
1回洗浄し、2%ゼラチン添加PBS(PBS−Ge
l)にて室温で2時間ブロッキングを行った。次に、
0.05%Tween20を添加したPBS(PBS
T)で1回洗浄後、該プレートに、1%ゼラチン添加P
BSTで50倍に希釈した上記被験血漿を100μlず
つ分注し、室温で2時間反応させた。
【0025】4 抗体反応 上記反応後、プレートをPBSTで3回洗浄後、PBS
T−Gelで500倍に希釈したアルカリフォスファタ
ーゼ標識ウサギ抗猫IgG抗体(ROCKLAND,
U.S.A.)またはアルカリフォスファターゼ標識抗
犬IgG抗体(ROCKLAND,U.S.A.)を1
00μlずつ分注し2時間反応させた。反応後プレート
をPBSTで5回洗浄後、アルカリフォスファターゼ基
質(Bio−Rad,U.S.A,)を100μlずつ
分注し反応させ、反応後ELISAリーダー(Mult
iscan bicromatick,Labosys
tem,U.S.A.)を用いて波長405nmにて吸
光度(OD)を測定した。1検体につき2穴ずつ行い、
その2つのウェルのOD平均値をその検体の抗体価とし
た。
【0026】〔実施例2〕 <PR−3−ANCA−ELISA法>MPOの代わり
に、PBSで10μg/mlの濃度に調整した、ヒト好
中球細胞質より精製したPR−3(Proteinas
e−3,East CoastBiologics,
U.S.A.)溶液を用いた外は、実施例1に準じて行
った。
【0027】〔実施例1、2の結果〕図2は、健常猫
(検体数n=6)、FIP実験感染猫A(n=6)、F
IP自然発症猫(n=21)のMPOを認識するANC
A抗体価(MPO−ANCA抗体価)の分布を示す。健
常猫とFIP実験感染猫および自然発症猫のMPO−A
NCA抗体価の差を、Mann−Whitney検定に
てそれぞれ比較したところ、FIP実験感染猫および自
然発症猫のMPO−ANCA抗体価はともに健常猫の抗
体価より有意(p<0.01)に高かった。
【0028】図3は、健常猫(n=6)、FIP実験感
染猫A(n=6)、FIP自然発症猫(n=21)のP
R−3を認識するANCA抗体価(PR−3−ANCA
抗体価)の分布を示す。健常猫とFIP実験感染猫およ
びFIP自然発症猫のPR−3−ANCA抗体価の差
を、Mann−whitney検定にてそれぞれ比較し
たところ、FIP実験感染猫および自然発症猫のPR−
3−ANCA力価は、有意(p<0.01)に高かっ
た。図4および図5はFIP実験感染猫B(n=6)の
FIPウィルス接種後の経過日数におけるMPO−AN
CA、PR−3−ANCA抗体価の推移を個体別に示し
た。
【0029】MPO−ANCA抗体価において、ウィル
ス接種後第14病日よりANCA抗体価の上昇が認めら
れた。第30病日では、抗体価にばらつきが認められ、
症例1、2で抗体価の上昇が顕著であり、症例5、6は
軽度であった。これは臨床症状及び剖検所見と一致して
いた。PR−3−ANCA抗体価においても同様の傾向
が認められた。
【0030】図6および図7は、健常猫(n=6)と各
種疾患猫(n=39)におけるMPO−ANCA、PR
−3−ANCA抗体価のそれぞれの分布を示す。MPO
−ANCA抗体価においてOD値が0.3以上の疾患
は、全て腎炎(膀胱炎併発)、腎不全、膀胱炎などの泌
尿器疾患であった。一方、PR−3−ANCA抗体価に
おいて、PR−3−ANCA抗体価が健常猫に比べて明
らかに高値を示したのは、わずか1例(腎炎・膀胱炎併
発)で、その他に特徴的な傾向は見られなかった。
【0031】図8および図9に健常犬(n=7)と各種
疾患犬(n=76)におけるMPO−ANCA、PR−
3−ANCA抗体価のそれぞれの分布を示す。MPO−
ANCA抗体価においてOD値が0.3以上の疾患は、
全てバベシア感染症であった。一方、PR−3−ANC
A抗体価においてOD値が0.3以上を示したのは、わ
ずか1例(腎不全)だけであった。
【0032】図10および図11に疾患別のMPO−A
NCA抗体価およびPR−3−ANCA抗体価の分布を
示す。健常犬と各疾患群間のMPO−ANCA抗体価、
およびPR−3−ANCA抗体価の差をStudent
のt検定を用いて比較した結果、MPO−ANCA抗体
価において健常犬との間に有意差(p<0.05)が認
められたのは、バベシア感染症、毛包虫症、膵炎、腫
瘍、皮膚炎、膿皮症であった。また、PR−3−ANC
A抗体価において健常犬との間に有意差(p<0.0
5)が認められたのは、毛包虫症と膿皮症であった。
【0033】以上の結果から、第1にFIPでANCA
が高率に検出され、病態と相関して変動することが分か
った。ANCAとFIPの病態との関連性を検討するた
めにFIP実験感染猫におけるANCA抗体価の経時的
な変動を観察したところ、ほとんどの症例で顕著な抗体
価の上昇が見られた第14病日は神経症状や発熱などの
臨床症状が現れ始めた時期と一致していた。また、高い
抗体価を示した症例は急性経過をとり、臨床症状も激し
く、安楽死後の病理組織学的所見においても各臓器に重
篤な化膿性肉芽腫および壊死性血管炎が認められたのに
対し、低い抗体価を呈した症例は慢性経過をとり、臨床
症状も比較的に軽く、病理学的所見では腹水の滲出、腹
・胸膜炎を認める程度であった。これらの結果は、AN
CAが病態と相関して変動することを強く示唆するもの
であった。次に、小動物疾患におけるPR−3−ANC
AおよびMPO−ANCAの疾患特異性を検討するた
め、さまざまな疾患症例を対象にPR−3−ANCAお
よびMPO−ANCA抗体価の測定を試みた。各種疾患
猫(n=38)のPR−3−ANCAおよびMPO−A
NCA抗体価をそれぞれ測定したところ、健常猫にくら
べ明らかに高値を示すものがあった。特にMPO−AN
CA抗体価において、OD値が0.3以上を示した疾患
は全て、腎炎、腎不全、膀胱炎などの泌尿器であり、小
動物疾患においてMPO−ANCAは、腎糸球体などの
毛細血管レベルの太さの血管に壊死性血管炎をおこす可
能性が示唆された。
【0034】小動物疾患において、泌尿器疾患およびウ
イルス感染症は、最もよく見られる重要な疾患であり無
治療であれば予後不良になる場含も多い。従って、今後
これらの疾患に関してANCAが、疾患特異的抗体ある
いは疾患活動性を示す血清学的指標となる可能性を示唆
した。
【0035】各種疾患犬(n=76)のPR−3−AN
CA、MPO−ANCA抗体価においても、それぞれ健
常犬の抗体価にくらべ明らかに高値を示すものがあっ
た。特にMPO−ANCA抗体価がOD値0.3以上を
示した疾患は全てバベシア感染犬であり、バベシア感染
症でANCAが高頻度に検出される可能性が示唆された
バベシア感染症はマダニ媒介性の血液原虫疾患でこの病
気の臨床症状が進行する原因は進行性の溶血性貧血であ
る。バベシア自然感染犬の約90%が赤血球のクームス
試験で陽性を示し、しばしば球状赤血球が出現すること
から自己免疫性溶血性貧血の関連性が示唆されており、
最近バベシア感染犬血清の自己赤血球に対する反応性
が、赤血球膜成分の変化により増長することも報告され
ている。今回バベシア感染犬においてANCAの上昇が
認められたことから、その病態には、赤血球または好中
球に対する自己抗体が深く関与している可能性が考えら
れた。その他、アトピー性皮膚炎や落葉性天疱瘡などの
免疫介在性疾患で比較的高いANCA値を示しているこ
とからも、ANCAがこれらの免疫介在性疾患の発症お
よび病態に関与している可能性が示唆された。
【0036】〔実施例3〕 <間接蛍光抗体法(IIF)>図12に、本実施例の工
程図を示す。 1 血漿(血清)サンプル FIP自然発症猫2頭、FIP実験感染猫2頭、FIV
感染猫1頭、腎不全猫1頭、腎炎猫(膀胱炎併発)1
頭、および健常猫としてSPF猫2頭、臨床上異常を認
めない猫2頭の計11頭および犬血漿サンプルとしてフ
ィラリア感染犬1頭、バベシア感染犬1頭、腎不全犬1
頭および健常犬2頭の計5頭を用いた。
【0037】2 方法 健常猫および健常犬の頚静脈から3.5ml採血した。
採血にはヘパリンを含んだ注射筒を使用した。採取した
血液をFicoll−Paque (Polymorp
hoprep,NYCOMED,Norway)3.5
mlの上に静かに重層し、室温で450×g、35分間
遠心した。遠心後Ficoll−Paqueの上部に生
じた層を好中球として分画した。得られた好中球を同量
の赤血球溶解液(0.017MTris,0.75%の
NH4Cl,pH7.2)に浮遊させ、室温で400×
g、10分間遠心して混入した赤血球を溶解させた。溶
解処理後、ペレットを生理食塩水(0.9%NaCl)
に浮遊させて、1回洗浄し(400×g,10分間)、
さらにリン酸緩衝食塩水(PBS,pH7.2)で2回
洗浄した(400×g,10分間)。
【0038】塗抹標本をニューメチレン・ブルーにて染
色し、好中球の確認を行った。分離した好中球の生存率
はTrypan blue染色にて算出し、その後2%
の濃度で牛血清アルブミン(BSA)を添加されたPB
S(BSA−PBS)にて細胞数を6.0×106/m
lに調節し、これを好中球浮遊液とした。この好中球浮
遊液を2枚の12穴スライドガラス(12WELL M
ULTITEST SLIDE,ICN Biomed
icals,Inc.,U.S.A.)上に伸展し、4
℃で10分間一方をエタノールで、もう一方をホルムア
ルデヒドで固定し、風乾させた。次に好中球を固定した
各ウエルに2%BSA−PBSで20倍に希釈した上記
被験血漿(血清)およびコントロールとして2%BSA
−PBSを分注し、室温にて湿潤箱内で1時間反応させ
た後、PBSで10分間、3回洗浄した。
【0039】続いてPBSで100倍に希釈したFIT
C標識ヤギ抗猫IgG(CAPPEL,U.S.A.)
およびFITC標識ヤギ抗犬IgG(CAPPEL,
U.S.A.)を100μ1分注し、湿潤箱内で1時間
反応させた後PBSで10分間3回洗浄した。風乾後、
落射式蛍光顕微鏡(Nikon,Japan)を用いて
485nmexcitation filter、50
0nm barrier filterで観察した。光
源として水銀ランプ(Nikon.Japan)を使用
した。判定は、好中球細胞質が明らかに染色されている
ものを腸性とした。
【0040】〔実施例3結果〕SPF猫2頭、および臨
床上異常を認めない健常猫2頭中の1頭は陰性を示した
が、他の1頭で、陽性とは判断できないが好中球細胞質
の弱染が認められた。 <FIP実験>感染猫は2頭とも陽性であった。FIP
自然発症猫2頭のうち1頭は陽性、他方は陰性であっ
た。図13に陽性を示したFIP自然発症猫の蛍光顕微
鏡写真像を示す。また犬においては、健常犬2頭および
フィラリア感染犬では陰性を示したが、バベシア感染症
犬では陽性を示した。図14に陽性を示したバベシア感
染症犬の蛍光顕微鏡写真像を示す。腎不全犬で好中球細
胞質の弱染が認められたが、陽性と判断できなかった。
また今回、エタノール固定、ホルムアルデヒド固定の両
方を行ったが、ホルムアルデヒド固定では固定・染色さ
れず、判定不可能であった。以上、IIFを用いた方法
では、疾患の判定に不安定さが残るものの、MPO、P
R−3以外のANCA対応抗原を検出することが可能で
あると思われ、ある程度の疾患の有無の判定の目安には
使用できる。
【0041】上記結果から、小動物疾患でもFIPをは
じめ、バベシア症、泌尿器疾患、感染症などにおいて、
ANCA抗体価が高値を示すものがあることが確認され
た。この結果から獣医領域においてANCAが膠原病や
腎疾患などの血管炎症候群の診断、疾患活動性および予
後判定の有用な血清学的指標となる可能性が示唆され
た。
【0042】
【発明の効果】本発明は上記のような構成でなるから、
診断、病態の把握が困難であったネコ、イヌの血管炎を
伴う疾患(血管炎症候群)を簡便に検査できる方法を提
供することができる。本発明により、特に、ネコ伝染性
腹膜炎(FIP)の診断、病態を簡便に検査することが
でき、また、イヌにおけるバベシア感染症の診断、病態
を簡便に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の工程図である。
【図2】健常猫、FIP実験感染猫A、FIP自然発症
猫のMPO−ANCA抗体価の分布を示す図である。
【図3】健常猫、FIP実験感染猫A、FIP自然発症
猫のPR−3−ANCA抗体価の分布を示す図である。
【図4】FIP実験感染猫BのFIPウィルス接種後の
経過日数におけるMPO−ANCA抗体価の推移を個体
別に示した図である。
【図5】FIP実験感染猫BのFIPウィルス接種後の
経過日数におけるPR−3−ANCA抗体価の推移を個
体別に示した図である。
【図6】健常猫と各種疾患猫におけるMPO−ANCA
抗体価のそれぞれの分布を示す図である。
【図7】健常猫と各種疾患猫におけるPR−3−ANC
A抗体価のそれぞれの分布を示す図である。
【図8】健常犬と各種疾患犬におけるMPO−ANCA
抗体価のそれぞれの分布を示す図である。
【図9】健常犬(n=7)と各種疾患犬(n=76)に
おけるPR−3−ANCA抗体価のそれぞれの分布を示
す図である。
【図10】疾患別のMPO−ANCA抗体価の分布を示
す図である。
【図11】疾患別のPR−3−ANCA抗体価の分布を
示す図である。
【図12】本発明の実施例の工程図である。
【図13】腸性を示したFIP自然発症猫の蛍光顕微鏡
写真図である。
【図14】陽性を示したバベシア感染症犬の蛍光顕微鏡
写真図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2G045 AA40 BA13 BB01 BB10 BB14 BB22 BB24 BB41 BB46 BB50 CA12 CA26 CB17 FA26 FA29 FB01 FB03 FB16 GC10

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ネコあるいはイヌの固定された好中球、
    ヒト、イヌあるいはネコのミエロパーオキシダーゼ、又
    はヒト、イヌあるいはネコのプロテアーゼ−3を抗原と
    して用いた抗原抗体反応を利用した免疫測定法により、
    ネコ又はイヌの血清中の抗好中球細胞質抗体を検出する
    ことを特徴とするネコ又はイヌの血管炎を伴う疾患の検
    査方法。
  2. 【請求項2】 抗原抗体反応を利用した免疫測定法が、
    酵素免疫測定法であることを特徴とする請求項1に記載
    のネコ又はイヌの血管炎を伴う疾患の検査方法。
  3. 【請求項3】 血管炎を伴う疾患が、泌尿器疾患又は感
    染症であることを特徴とする請求項1又は2に記載のネ
    コ又はイヌの血管炎を伴う疾患の検査方法。
  4. 【請求項4】 血管炎を伴う疾患がネコ伝染性腹膜炎で
    ある請求項1に記載のネコ又はイヌの血管炎を伴う疾患
    の検査方法。
  5. 【請求項5】 血管炎を伴う疾患がイヌバベシア感染症
    である請求項1に記載のネコ又はイヌの血管炎を伴う疾
    患の検査方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009095340A (ja) * 2007-09-28 2009-05-07 St Marianna Univ School Of Medicine 自己免疫疾患の被験者に対する治療効果の予測方法
JP2009109301A (ja) * 2007-10-29 2009-05-21 Masaharu Yoshida Mpo−anca親和性検出方法

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JP2009109301A (ja) * 2007-10-29 2009-05-21 Masaharu Yoshida Mpo−anca親和性検出方法
JP4660530B2 (ja) * 2007-10-29 2011-03-30 雅治 吉田 Mpo−anca親和性検出方法

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