JP2000290707A - 複合焼結機械部品の製造方法 - Google Patents

複合焼結機械部品の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 軸部を持つ鉄系金属の圧粉体(内側部材)と
孔部を持つ圧粉体(外側部材)を嵌め合わせた状態で焼
結して一体の機械部品を得る方法の応用として、外側部
材は焼結済みの焼結体,内側部材のみ圧粉体としたい場
合があるが、この組み合わせでは、圧粉体同士の場合に
比べて両部材の接合強度が劣っていた。 【解決手段】 圧粉体(内側部材)への銅の配合,焼結
体より多い炭素の配合,亜鉛を配合して浸炭性雰囲気で
焼結,などの手段により焼結中の圧粉体を焼結体よりも
膨脹させて両部材を密着状態で焼結させ、接合強度を向
上させた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は形状の複雑な焼結
機械部品の製造に用いられる、複数の部分に分割成形し
た圧粉体を組み合わせて焼結することにより1箇の焼結
部品を得る方法を応用したところの、圧粉体の部分と焼
結体の部分とを焼結により接合する方法の改良に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】複数の圧粉体を組み合わせて1箇の焼結
部品とするためには、一方の圧粉体は軸部を有する形状
に,他方の圧粉体は孔部を有する形状に成形しておき、
軸部を有する部材(嵌め合わせで内側になることから、
以下内側部材という)と孔部を有する部材(以下外側部
材という)の軸部と孔部を嵌め合わせた状態で焼結して
拡散接合により一体化させるのが通例である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、部品の機能
面その他の必要から部材の一方には予め焼結した焼結体
を用いたい場合があるが、その場合単に圧粉体と焼結体
を嵌め合わせて焼結しても、通常の焼結条件では圧粉体
同士のような高い接合強度は得られない。長時間高温の
焼結を行なえば接合強度は向上するが、生産性とコスト
に問題が生じ実用にはなり難かった。
【0004】この発明は、焼結体と圧粉体の焼結による
接合に際し、とくに外側部材が焼結体,内側部材が圧粉
体という組み合わせを対象としている。ちなみに、この
明細書における焼結体は純鉄,炭素鋼,合金鋼など鉄系
金属組成の焼結体を総称している。
【0005】
【課題を解決するための手段】焼結体の外側部材に圧粉
体の内側部材を嵌め合わせて焼結接合する際、得られる
複合部品が高い接合強度を持つためには単なる機械的な
焼き嵌めだけでなく、両部材の接合面が十分に密着した
状態での焼結によって、合金成分の固相拡散による接合
を図る必要がある。それには先ず、両部材を嵌め合わせ
る際の嵌め合い寸法差(焼結体の孔部の内径と圧粉体の
軸部の外径の寸法差)が重要で、圧粉体の方を太め(締
まり嵌め)に設定して焼結体に圧入するのが好ましく、
締め代は大きいほど両者の密着度が高くなる。ただし焼
結前で強度が低い圧粉体の破損を避けるため、緩衝作用
のある圧粉体同士の場合より締め代を小さく、好ましく
は30μm以内,多くとも40μm以内に止める必要が
ある。通り嵌めを選ぶ場合でも隙間は小さいほどよく、
5μm以下に止めるべきである。
【0006】次の要因としては焼結中における各部材の
寸法的挙動(膨脹・収縮)が重要であって、即ち合金成
分の固相拡散は鉄系金属の場合は略750℃以上の高温
域で生じるので、この高温域での圧粉体の膨張量が焼結
体の膨張量より大きければ、焼結体が圧粉体を締め付け
て両者が密着する。従ってこの状態で圧粉体の焼結と合
金成分の固相拡散が進行して両部材が一体化され、高い
接合強度が得られる。ところが、焼結合金では焼結過程
で粉末粒子の隙間の気孔化〜気孔の消失による緻密化
(収縮)を生じるので、普通に焼結した場合の熱膨張量
は同等組成の鋼材に比べて原則的に小さくなる。一方、
焼結体は既に各合金元素が拡散しており、また焼結が終
了しているため、再度焼結工程の熱処理を加えても、む
しろ鋼材と同様の寸法変化を示す。その結果、内側部材
(圧粉体)の方が相対的に収縮して外側部材(焼結体)
との密着を緩める方向に作用し、接合強度が低くなる。
【0007】そこでこの発明では、750℃以上の高温
域における圧粉体の熱膨張量を焼結体よりも増大させる
手段を施して両者を密着状態で焼結させることにより、
接合強度の向上を実現した。その手段としては、以下に
述べるような鉄系焼結合金における銅膨脹現象の利用,
焼結体(外側部材)の炭素量よりも0.2%以上多い炭
素(黒鉛)を圧粉体に含ませておく手段,予め圧粉体に
亜鉛を含有させて浸炭性雰囲気中で焼結する手段などが
用いられる。焼結は固相焼結によるのが通常であるが、
一部に液相を生じる状態で焼結すると、拡散接合がさら
に促進される。その場合、液相の生成量が5%以内であ
れば浸蝕や形崩れなどの懸念はないが、製品の寸法精度
も良好な状態に保つためには3%以内に止めることが好
ましい。なおこの明細書中の組成等に関する%は、特に
断わらない限り重量%である。
【0008】
【発明の実施の形態】先ず、鉄に銅を配合して焼結する
際の銅膨脹現象は銅が鉄の格子内に侵入して膨脹させる
もので、この膨脹が焼結に伴う収縮を相殺する結果、高
温域での圧粉体の膨脹量が焼結体より大きくなる。なお
銅膨脹は銅の融点(1083℃)以上で激しくなる。こ
の作用は銅の配合量1%以上で有意となるが、外側部材
と十分密着させて拡散接合を図るためには2%以上の配
合が好ましい。なおこの作用は銅自身の量のほか、他の
合金成分にも影響される。例えばアルミニウム,硫黄,
リチウムなどは膨脹を増大させる方向に、ホウ素,炭
素,リンなどは膨脹を抑制する方向に作用する。従って
成分組成を適切に選択することにより、所望の膨脹量に
制御することができる。
【0009】次に圧粉体の炭素量を多くすることの作用
効果については、圧粉体が加熱膨脹する過程で鉄の焼結
が始まると、焼結に伴う収縮分だけ熱膨張量は相殺され
る。ところが炭素は鉄の焼結の進行を遅らせるので黒鉛
が多いほど収縮が遅くなり、その分膨張量が増大する。
また、炭素は鉄格子中に侵入する形で拡散するため、鉄
中に炭素が拡散するだけで鉄の格子定数が拡大し、全体
として膨脹量が大きくなる。更に温度が上昇するとα→
γ変態を起こして一旦収縮するが、この変態点は炭素が
多いほど低温側に移行する。そして熱膨張係数はα相よ
りもγ相の方が大きいため、圧粉体の炭素量が多いほど
α→γ変態が早まって膨張が増大する。この様な理由か
ら、経験的には炭素量を外側部材より0.2%以上多く
すれば、圧粉体(内側部材)の高温域での熱膨張量が焼
結体よりも大きくなる。
【0010】この炭素による内側部材の膨脹作用は、鉄
系の圧粉体に予め炭素を含有させる代わりに浸炭性の雰
囲気中で焼結しても生じるが、圧粉体中に亜鉛を存在さ
せると、この作用が著しくなる。即ち、亜鉛が含まれる
鉄系の圧粉体を浸炭性の雰囲気中で焼結すると、鉄と雰
囲気中の炭素の反応に対して亜鉛が微量で触媒作用を示
し、亜鉛を含まない場合に比べて焼結中の熱膨脹量が大
きくなる。亜鉛の添加は単味でも可能ではあるが、成形
に必要な粉末潤滑剤を兼ねてステアリン酸亜鉛の形で添
加するのが手間も掛からず、且つ、亜鉛を均一に分散さ
せる上でも好ましい。焼結雰囲気には天然ガスやメタン
系炭化水素などを変成して作られる精製エキソサーミッ
クガス,例えば浸炭性のブタン変成ガスが適している。
【0011】なお上述の各手段を通じて、両部材が焼結
過程の略750℃以上の全域で密着状態を保つことは望
ましいが必須ではなく、この高温域の少なくとも一部の
域で(所要時間は温度により異なるが合金成分の拡散深
さが5μm前後に達する間)密着していれば十分な接合
が行なわれる。
【0012】(実施例1) 組成がCu…1.5%,C
…0.7%およびFe残部で、焼結密度7.0g/cm
3 の焼結体で内径30mm,外径36mm,長さ10m
mの円板を作製して外側部材とした。次に銅粉3%およ
び黒鉛0.5%を鉄粉に配合し粉末潤滑剤のアクラワッ
クス(商品名)を0.7%添加した混合粉を用意し、こ
の混合粉を圧縮して外径30mm,内径10mm,長さ
20mmで圧粉密度が7.0g/cm3 の円筒状の圧粉
体を形成して内側部材とした。次いで両部材を締め代2
0μmで圧入して嵌め合わせ、窒素雰囲気ガス中113
0℃で40分間焼結し、両部材を一体に接合した。得ら
れた焼結体を材料試験機に掛け、外側部材を架台上に支
えて内側部材に負荷する破壊試験を行なった結果、両部
材の接合強度は120MPaであった。この例は鉄−銅
系における銅膨張作用により内側部材(圧粉体)が外側
部材に密着した状態で焼結が進行する結果、充分高い接
合強度に達している。
【0013】(実施例2) 組成がCu…1.5%,C
…0.4%およびFe残部で、焼結密度7.0g/cm
3 の焼結材で外側部材を、銅粉1.5%および黒鉛0.
7%を鉄粉に配合し粉末潤滑剤としてステアリン酸亜鉛
を0.7%添加した混合粉を圧粉密度7.0g/cm3
に成形した圧粉体で内側部材を形成し、両部材を嵌め合
わせた。両部材の形状寸法や嵌め合い条件は、実施例1
の場合と同じである。次に実施例1と同じく、窒素雰囲
気ガス中1130℃で40分間焼結した。得られた焼結
体について実施例1と同様に破壊試験を行なった結果
は、両部材の接合強度は70MPaであった。この例
は、各部材の炭素濃度差によって内側部材を膨張させた
ものである。なお、上述の実施例1,2の場合は窒素ガ
スを主とする焼結雰囲気でも充分接合されるが、浸炭性
雰囲気を用いればより有効である。
【0014】(実施例3) 実施例2の場合と同じく組
成がCu…1.5%,C…0.4%およびFe残部で焼
結密度7.0g/cm3 の焼結材で外側部材を形成し、
内側部材は、配合組成は実施例2と同一で粉末潤滑剤の
みアクラワックス(商品名)0.7%に変更した圧粉体
で形成した。両部材の形状寸法は、実施例1の場合と同
じである。次いで両部材を締め代30μmの圧入により
嵌め合わせ、雰囲気を浸炭性のブタン変成ガスに変更し
1130℃で40分間焼結した。得られた焼結体を実施
例1と同様に破壊試験を行なった結果、両部材の接合強
度は80MPaであった。
【0015】この例では、実施例2の場合と同じく炭素
濃度差の効果に加え、雰囲気からの浸炭による内側部材
(圧粉体)の膨張も働いている。但し外側部材(焼結
材)も連続気孔を介して同様の作用を受けるため部材間
の膨張量差が減殺される結果、接合強度は僅かな増加に
止まっている。ちなみに、この点が焼結材と溶製材との
違いであって、外側部材が溶製材の場合は浸炭性雰囲気
の気孔を介しての浸透は有り得ないので、この様な膨張
量の減殺は生じない。
【0016】(実施例4) 実施例3の場合と同じく組
成がCu…1.5%,C…0.4%およびFe残部で焼
結密度7.0g/cm3 の焼結材で外側部材を形成し、
内側部材は外側部材と同じ組成、即ち銅粉1.5%およ
び黒鉛0.4%を鉄粉に配合し、粉末潤滑剤のステアリ
ン酸亜鉛を0.7%添加した混合粉を圧粉密度7.0g
/cm3 に成形した圧粉体で形成した。両部材の形状寸
法は実施例1の場合と同じである。次いで両部材を締め
代30μmの圧入により嵌め合わせ、浸炭性のブタン変
成ガス雰囲気中1130℃で40分間焼結した。得られ
た焼結体の破壊試験を実施例1と同様にして行なった結
果、両部材の接合強度は120MPaであった。この例
は、圧粉体(内側部材)には含まれ外側部材(焼結材)
には存在しない亜鉛の触媒作用により焼結雰囲気から内
側部材への浸炭が促進され、内側部材の焼結中の膨張量
が相対的に増大して接合強度を高めたものである。
【0017】(実施例5) 実施例4と同じく組成がC
u…1.5%,C…0.4%およびFe残部で焼結密度
7.0g/cm3 の焼結材で外側部材を形成し、内側部
材は黒鉛の配合量を0.4%から0.7%に増加したこ
と以外は実施例4の圧粉体と同一のもので形成した。両
部材の形状寸法は実施例1の場合と同じである。次に両
部材を締め代20μmの圧入により嵌め合わせ、浸炭性
のブタン変成ガス雰囲気中、1130℃で40分間焼結
した。得られた焼結体の破壊試験を実施例1と同様にし
て行なった結果、両部材の接合強度は150MPaであ
った。この例は実施例2に示した炭素濃度差の作用と、
実施例4に示した亜鉛による浸炭の促進作用との相乗効
果によって著しく高い接合強度に達したものである。
【0018】(比較例1) 焼結材の外側部材,圧粉体
の内側部材とも、それぞれの材質・寸法および嵌め合い
の条件は実施例4の場合と同様にして両部材を嵌め合わ
せた後、焼結条件のみ変更して、窒素雰囲気ガス中11
30℃で40分間焼結した。得られた焼結体の破壊試験
を実施例1と同様にして行なった結果、両部材の接合強
度は10MPaであった。この例の場合、圧粉体(内側
部材)には粉末潤滑剤由来の亜鉛があるものの、焼結雰
囲気が炭素を含まないため、浸炭による膨張は生じな
い。また銅膨張も炭素濃度差による膨張もないので両部
材が焼結中によく密着せず、従って接合強度が高くなら
ないものと考えられる。
【0019】(比較例2) 比較例1の場合と同じく組
成がCu…1.5%,C…0.4%およびFe残部で焼
結密度7.0g/cm3 の焼結材で外側部材を形成し、
内側部材は、配合組成は比較例1と同一で粉末潤滑剤の
みアクラワックス(商品名)0.7%に変更した圧粉体
で形成した。両部材の形状寸法は、実施例1の場合と同
じである。次いで両部材を締め代30μmの圧入により
嵌め合わせ、雰囲気を浸炭性のブタン変成ガスに変更し
1130℃で40分間焼結した。得られた焼結体につい
て実施例1と同様にして破壊試験を行なった結果、両部
材の接合強度は10MPaであった。この例では、銅膨
張や炭素濃度差による膨張がないことは比較例1と同じ
であり、雰囲気からの浸炭による膨張も圧粉体が亜鉛を
含まないため外側部材の膨張と相殺され、比較例1と同
程度の接合強度に止まっている。
【0020】
【発明の効果】外側部材を焼結体,内側部材を圧粉体と
し、両部材を嵌め合わせた状態で焼結接合して一体の複
合部品を製造する場合、両部材が所要の強度で接合され
るためには通常よりも高温または長時間の焼結を要して
いたが、この発明によって通常の焼結条件で充分に高い
接合強度が得られるようになり、製造コストや生産性が
改善された。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄系の焼結合金から形成された孔部を有
    する部材(以下外側部材という)と、鉄系の合金粉末ま
    たは混合粉を圧縮成形して得た軸部を有する圧粉体(以
    下内側部材という)とを、それぞれの孔部と軸部を嵌め
    合わせた状態で一体に焼結接合するに際し、内側部材と
    して焼結過程の750℃以上の高温域における熱膨張量
    が外側部材の熱膨張量よりも大きくなる組成の圧粉体を
    用いることを特徴とする、複合焼結機械部品の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 外側部材の孔部と内側部材の軸部との嵌
    め合い寸法差が締め代40μm以内の締まり嵌めもしく
    は隙間5μm以下の通り嵌めである、請求項1に記載の
    複合焼結機械部品の製造方法。
  3. 【請求項3】 内側部材として重量比で2%以上の銅が
    配合された圧粉体を用いる、請求項2に記載の複合焼結
    機械部品の製造方法。
  4. 【請求項4】 内側部材として、炭素量が外側部材より
    も重量比で0.2%以上多い圧粉体を用いる、請求項2
    に記載の複合焼結機械部品の製造方法。
  5. 【請求項5】 内側部材として、亜鉛を含有する粉末潤
    滑剤を添加して成形された圧粉体を用い、且つ焼結を浸
    炭性雰囲気で行なう、請求項2に記載の複合焼結機械部
    品の製造方法。
  6. 【請求項6】 焼結雰囲気が精製エキソサーミックガス
    である請求項2,請求項3,請求項4または請求項5に
    記載の複合焼結機械部品の製造方法。
  7. 【請求項7】 焼結雰囲気が浸炭性のブタン変成ガスで
    ある請求項6に記載の複合焼結機械部品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008121055A (ja) * 2006-11-10 2008-05-29 Hitachi Powdered Metals Co Ltd 複合焼結機械部品の製造方法
JP2013505359A (ja) * 2009-09-23 2013-02-14 ゲーカーエヌ・ジンター・メタルス・ホールディング・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング 複合部材の製造方法
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