JP2000287470A - 複合磁性体の起電力発生装置 - Google Patents

複合磁性体の起電力発生装置

Info

Publication number
JP2000287470A
JP2000287470A JP11127508A JP12750899A JP2000287470A JP 2000287470 A JP2000287470 A JP 2000287470A JP 11127508 A JP11127508 A JP 11127508A JP 12750899 A JP12750899 A JP 12750899A JP 2000287470 A JP2000287470 A JP 2000287470A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnetic
electromotive force
composite magnetic
composite
component
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP11127508A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3106144B2 (ja
Inventor
Akira Matsushita
昭 松下
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP11127508A priority Critical patent/JP3106144B2/ja
Priority to DE2000111448 priority patent/DE10011448A1/de
Priority to CN 00106892 priority patent/CN1266992A/zh
Publication of JP2000287470A publication Critical patent/JP2000287470A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3106144B2 publication Critical patent/JP3106144B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Hard Magnetic Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の強磁性体を用いた起電力発生装置は、
その強磁性体の形状に応じて必然的に生じる反磁界のた
め電磁変換効率の低下をもたらし、また外部磁界の鎖交
磁束割合の減少に伴って誘導起電力は低下するものとさ
れてきた。 【解決手段】 ソフト成分とハード成分とを含み一軸磁
気異方性を備えた複合磁性体を用い、その反磁界機能を
活用した起電力発生装置を構成することにより、正方向
だけの外部磁界を例え低周期で印加した場合にも常にほ
ぼ一定の起電力を誘起させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気電子機器の構
成材料として用いられる強磁性体に、複合磁性体を適用
して成る誘導起電力発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、複合磁気細線に検出コイルを巻い
て構成したパルス発生用の磁気センサに関する技術があ
る(例えば特公昭55−15797号公報、特公昭59
−12142号公報、特公昭61−28196号公報あ
るいは特公平4−49070号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の強磁性体を用い
た電気電子機器は、多くの場合その強磁性体の形状に応
じて必然的に生じる反磁界による減磁作用のため、電磁
変換効率の低下をもたらすなどの弊害として扱われるこ
とが多かった。しかるに、反磁界の機能を活用すること
により、複合磁性体中に含まれる特定の磁気成分に対す
る磁化反転を自律的に行わせるための駆動源として寄与
させることが考えられる。
【0004】本発明は、このような反磁界の活用手段を
究明し効率的な各種の起電力発生装置の創案に寄与せん
とするものである。複合磁性体に着目した電磁誘導起電
力の発生技術として、応力加工等を施した磁性金属細線
に検出コイルを巻いて成る磁気センサがある。これは正
負の外部磁界を交互に作用させる手段を用い、パルス状
検出信号電圧を発生させようとするものである。
【0005】しかしながら、その検出信号電圧は一般に
半値幅が小さいシャープなパルス電圧であるため、トラ
ンジスタその他の能動素子を直接駆動させたり、情報信
号処理あるいは周辺回路の電源用エネルギとして用いる
ことができなかった。しかも、小型化のため磁性金属細
線を短くして用いようとする場合、必然的に反磁界係数
が大きくなって反磁界の作用を増大し有効磁気エネルギ
の減少をきたす。あるいは線長を短くした際の検出コイ
ルの装着が極めて困難になるなど磁気センサの構成上に
も問題があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、反磁界機能を
有する複合磁性体を起電力発生用コイル等の磁心として
適用することにより、正負の反復外部磁界の印加に対応
し複合磁性体の磁化方向を転位させて起電力を発生させ
るのみならず、正方向だけの外部磁界を低周期で印加し
た場合にも起電力を発生させることのできる、磁気セン
サや発電機等の電磁デバイスを提供しようとするもので
ある。
【0007】本発明の起電力発生装置に用いる反磁界機
能を有する複合磁性体は、互いに磁気的結合状態にある
比較的保磁力の小さいソフト成分と、比較的保磁力が大
きいハード成分とを含む複合磁気成分の多数を寄合わせ
て一軸磁気異方性を備えるように形成されたものであ
る。
【0008】そして前記各ハード成分のそれぞれは定常
状態において正方向に磁化されており、外部磁界により
磁化方向を転位し難い固定磁気成分の性状を保有してい
る。また前記各ソフト成分のそれぞれは、複合磁性体の
反磁界により負方向の磁化作用を受けてハード成分とは
反平行の安定な磁化状態(セット状態と呼ぶ)に転位さ
れている。これに正方向の外部磁界が印加された時点で
は急速に磁化反転を生じ平行磁化状態(リセット状態と
呼ぶ)で安定する。さらにその外部磁界が消勢された時
点で再び反転しセット状態に復帰するという、双安定磁
気成分の性状を有する。
【0009】また、一般の強磁性体について従来から知
られているように、複合磁性体にある程度大きい正負の
外部磁界が交互に印加された時に生じる磁化反転があ
る。本発明は、これらの磁化転位に伴って発生する各磁
束変化に対応して電磁コイルに連続的な誘導起電力を誘
発するように構成したことを特徴とするものである。
【0010】この場合、反磁界の大きさは複合磁性体全
体の最終的な形状に依存する反磁界係数によって定ま
る。このような自律的に発生する反磁界によって各ソフ
ト成分を負方向に磁化せんとする機能が作用し、ハード
成分とは互いに反平行のセット状態の静磁結合を形成す
る。
【0011】このセット状態の複合磁性体に対し外部磁
界を正方向に印加して反磁界を相殺すると、これがトリ
ガとなって各ハード成分との協働による磁気的相互作用
に基づき各ソフト成分を急速にリセット状態に反転す
る。そして次に、印加中の外部磁界の磁化作用が無くな
ると、各ソフト成分は再び反磁界の作用を受けて自律的
に元の状態に反転し、あるいはセット状態に定常化す
る。
【0012】従って、上記のように正方向だけの外部磁
界を断続的に印加させるだけでも、反磁界と相俟って両
者の相互作用により各ソフト成分の急速な反転現象が繰
り返される。故に、これらに対応する磁束変化を電磁コ
イルに鎖交させれば起電力が発生できることになる。
【0013】そこで、複合磁性体と電磁コイルとの多数
を円筒状固定子の外周に沿って配列しておき、その内周
に沿って回動する永久磁石を回転子として構成すれば、
例え超低速回転であってもほぼ一定の誘導起電力を順次
連続的に発生できる。
【0014】すなわち、従来の電磁誘導に基づく起電力
Uは電磁コイルに対し外部から鎖交する磁束φの時間的
変化割合に比例し、一般にU=−dφ/dtで表わせる
から、超低速回転時においては起電力が小さくなり、遂
には発生しなくなるものとされてきた。しかるに本発明
に係る起電力発生装置は、従来から定説になってきた外
部磁界の単位時間当たりの磁束鎖交割合に依存する起電
力の発生原理とは異なる。
【0015】本発明は、複合磁性体内部におけるソフト
成分とハード成分および反磁界などとの磁気的相互作用
に基づき、ソフト成分に常に一定速度の磁化反転を生じ
させ、その時の磁束変化により起電力を発生させようと
する現象である。外部磁界は主として複合磁性体内部の
磁化挙動に対する一種のトリガとしての作用があり、外
部磁界が例え超低速回転で作用したとしてもソフト成分
の磁化反転は一定速度である。
【0016】依って、複合磁性体における各ソフト成分
mの部分に主として作用する磁束密度をB、その時に生
じる反転速度がVであるとき、発生起電力eは次式のよ
うになる。 この起電力eは、複合磁気成分中の磁化転位条件の整っ
た各ソフト成分が比較的短時間に状態転位を行うことに
より、それぞれ誘発する起電力の総和である。故に、外
部磁界の鎖交に依存する従来の起電力Uとは別の発生現
象である。
【0017】依って、複合磁性体の材質や完成形状その
他の磁気的性状が決まると、複合磁性成分を形成するソ
フト成分m、磁束密度Bおよび転位速度vなどは自ずか
ら所定の値に決まる。これが結果的に常にほぼ一定の大
きさの起電力を誘発するという卓越した現象の要因にな
っているものとみなせる。このような各ソフト成分の転
位が比較的短時間に生じる現象は、種々の波高値や半値
幅の多数のパルスが重畳的に発生する起電力として観測
することができる。
【0018】故に、本発明に係る起電力発生装置で得ら
れる起電力Eは、次式で与えられる。E=e+U (但
し、低速回転ではU≒0)このような電磁現象の作用原
理と磁化挙動の詳細については更に検討中であるが、以
上に述べた磁気的態様を論拠として代表的な実施例を次
に説明する。
【0019】なお、各ソフト成分のそれぞれを保磁力の
大きさが段階的に異なる各種の成分で形成することによ
り、前記反磁界あるいは外部磁界の近接離間に伴う磁束
変化に追随して順次段階的に磁化方向を転位し、それら
に対応して連続的に起電力を誘起する発電用デバイスに
なる。また、間欠的に比較的弱い外部磁界を負方向に作
用させる手段は、反磁界により惹起されるソフト成分の
セット状態への急速な反転作用を補うような効果があ
り、誘導起電力の効率的な発生に寄与する。
【0020】
【発明の実施の形態】発明の実施の形態を実施例にもと
づき図面を参照して説明する。先ず、本発明に用いる反
磁界機能を有する複合磁性体の磁化挙動に関する概要に
ついて述べる。
【0021】図1は、互いに一軸磁気異方性を備えたソ
フト成分1の磁性層とハード成分2の磁性層とが直接ま
たは中間層(図示せず)を介して間接的に静磁結合され
た複合磁気成分3を模式的に示した図である、そして、
それらの多数層が密接に寄合わされて一体状に構成され
た複合磁性体4の構成例である。
【0022】比較的保磁力の大きいハード成分2(大白
矢印)のそれぞれは、正方向(右向き)に磁化された定
常状態を示している。比較的保磁力の小さいソフト成分
1(中黒矢印)のそれぞれは、反磁界5(小白矢印)に
依存して自律的に負方向(左向き)に磁化され、各ハー
ド成分2とは互いに反平行のセット状態を形成してい
る。
【0023】そして、図2に示すように複合磁性体4に
対し外部磁界6(大黒矢印)を正方向(右向き)に印加
すると、反磁界5が相殺されて消滅すると同時に、正方
向に磁化されている各ハード成分2との交換相互作用を
含む磁気的協働により、各ソフト成分1(中黒矢印)を
急速に正方向(右向き)に反転し、互いに平行のリセッ
ト状態になる。
【0024】次に、印加中の外部磁界6の作用を消勢す
ると、各ソフト成分1は反磁界5の誘導異方性に基づく
制御機能により急速に反転し、再び図1のように各ハー
ド成分2と反平行のセット状態に定常化する。
【0025】図3(a),(b)は、1本の磁性合金線
の線心部から外周部にかけて保磁力が異なる複数の磁性
層を積層することにより、本発明に用いる反磁界機能を
有する複合磁性体7が構成されている。この複合磁性線
は最外周部8にソフト成分1を、その内層部にハード成
分2を、さらにその内層部にソフト成分1を、そして線
心部にハード成分2を有するように処理した実施例であ
って、図1と同様に反磁界9が作用するセット状態にお
ける磁化態様を示している。これに外部磁界が正方向
(右向き)に印加された時(図示せず)のソフト成分1
の磁化反転によるリセット状態えの転位現象等について
は、図2で説明した態様とほぼ同様である。
【0026】図1、2および3で説明したように、外部
磁界が印加された時点でリセット状態になる時と、その
外部磁界を消勢した時点で反磁界の作用により再びセッ
ト状態に復帰する時に、各ソフト成分の反転に基づく磁
束変化を電磁コイルに鎖交させるようにすれば誘導起電
力を発生する電磁デバイスを構成できる。
【0027】また、図4および同図に併記した拡大図に
みるように、各1本の磁性合金細線の外周部と線心部と
で保磁力が異なるように加工して成る複合磁性線10の
複数本を、互いに近接して直線状や撚り線状に束ね一体
化した複合磁性体を構成したものである。そして外周部
にソフト成分11を、線心部にハード成分12を有する
ように処理した各複合磁性線10の多数を一体状に束ね
た複合磁性体13に、電磁コイル14を巻回して構成し
た起電力発生用電磁デバイスの構成例である。
【0028】このような複合磁性体における反磁界は、
一般に複合磁性体の磁化の強さとその形状によって決ま
る平均反磁界係数Nとの積に比例する。故に断面形状の
小さい長い線ほどNは減少し、反磁界の作用は小さくな
る。反磁界係数Nは、1本の複合磁性線の半径をr、長
さをLで表わした時の寸法比k(=L/2r)との間に
図5の“N−k”特性に示したような関係がある。
【0029】一定の長さLの複合磁性線の多数を束ねて
構成したような棒状複合磁性体は、断面積の実質的な増
大に匹敵するから寸法比kの値を減少し平均反磁界係数
Nの増大をもたらし、反磁界の作用が大きくなる。また
図5の右の縦軸は、密着して束ねた複合磁性線の本数n
を表わしたもので、直径2r=0.25(mm)、長さ
L=50(mm)の実際の複合磁性線について計算した
結果を例示した。
【0030】図に見るように1本の複合磁性線では寸法
比kが十分に大きく、従って反磁界係数Nが小さいため
反磁界の機能による自律的なソフト成分の磁化反転は生
じない。故にソフト成分をセット状態に磁化反転させる
ためには、負方向の外部磁界(Hs)すなわちセット磁
界Hsを印加する必要がある。しかるのち、正方向の外
部磁界すなわちリセット磁界Hrが印加されて、ソフト
成分が元のリセット状態に磁化反転する時の磁束変化に
基づき起電力Eが誘起される。
【0031】図6は、複合磁性線の本数nの異なる各種
の複合磁性体における、セット磁界Hsとリセット磁界
Hr(80エルスッテド、一定)を印加した時に電磁コ
イルに誘起する起電力eの代表的な実験結果を例示した
ものである。
【0032】図にみるようにn=25(本)を束ねた磁
性体では、セット磁界Hs=0の場合にもソフト成分が
反磁界の作用である程度反転し、それが起電力eの誘起
に寄与していることが判る。n=100(本)の束ね磁
性体では、反磁界の機能によりソフト成分の殆どがセッ
ト状態に磁化される結果、リセット磁界Hrの印加だけ
でほぼ一定の起電力を発生し、その極めて安定な再現性
のよい現象を観測することができる。
【0033】依って、図4に併記したように正方向の外
部磁界6を断続的に鎖交させると、その度ごとに各ソフ
ト成分は反磁界の作用と相俟って磁化反転現象を繰り返
す。このとき電磁コイル14に鎖交する磁束変化に基づ
き、束ねた複合磁性線10の本数に対応する多数のパル
ス状電圧が連続的に重畳された起電力eを発生する。
【0034】この場合、複合磁性体に印加する外部磁界
の断続速度が、例えば10ヘルツ以下の比較的遅い時で
も、反磁界を駆動源とするソフト成分のセット状態への
転位速度はほぼ一定の比較的高速であるから、誘導起電
力の尖頭値はほぼ一定の大きさになる。
【0035】上述の複合磁性線10の具体的な製法につ
いて一言すると、例えば比較的磁気歪の大きいFe−C
o−V系のバイカロイ合金細線にひねりと張力との応力
を内蔵するように捻り処理を加えると、図4の拡大図に
みるように外周部に保磁力の小さいソフト成分11が形
成される。依って、線心部が比較的保磁力の大きいハー
ド成分12の性状を備えた1本の複合磁性線10になる
から、その多数を図のように束ねて所定の反磁界係数を
もつ棒状の複合磁性体13を構成することができる。
【0036】あるいは、Fe−Ni系のパーマロイ合金
線にひねり応力処理を加えると、その外周部に保磁力の
大きいハード成分が形成される。線心部にソフト成分の
性状を備えた1本の複合磁性線10が形成されるから、
それらの多数を束ねて棒状の複合磁性体13を構成して
もよい。
【0037】なお、複数の異種の円筒磁性合金を1本の
棒状に嵌合し、これを線引きして成るクラッドワイヤや
異種の磁性合金をメッキ、蒸着、スパッタまたは噴射法
等により磁性層を被着して成る複合磁性線について、そ
の多数を寄合わせまたは束ねる等の手段により一体化し
ても本発明の反磁界機能を有する複合磁性体13を構成
することができる。
【0038】図7は、混成磁性酸化物で形成した棒状の
複合磁性体15に電磁コイル14を巻回して成る磁気セ
ンサ16を例示したものである。外部磁界として永久磁
石17を矢印のように近接離間させる度ごとに、複合磁
性体15のソフト成分が前述と同様の作用原理によって
磁化反転する時に起電力Eが誘起される。この場合、複
合磁性体15はA→B方向に一軸磁気異方性を有するよ
うに、酸化鉄粉の異種微粒子によるソフト成分とハード
成分とを含む多数の複合磁気成分で形成されたものであ
って、その反磁界の機能および磁気的態様は完成形状に
基づいて定められるものである。
【0039】複合磁性体15に電磁コイル14を巻回し
て成る磁気センサ16に対し、図8に示すように同様の
複合磁性体18に電磁コイル19を巻回して成る磁気セ
ンサ20を対向させる。そして、例えば図の矢印で示す
方向に互いに近接離間させた場合にも起電力Eを誘起さ
せることができる。
【0040】複合磁性体15はS→N(図7のA→Bと
同じ)方向に誘導磁気異方性を有するように磁化されて
いるので、そのハード成分は図のようにN極とS極とを
有する磁石と同様に磁力線を分布する。複合磁性体18
も磁極NSを有する磁石の性状を備え外部磁界の発生源
になり得る。従って、対向する磁気センサ16と20と
が互いに近接しあるいは離間した時点で、それぞれの各
ソフト成分の磁化転位に伴う起電力Eがほぼ同時に電磁
コイル14と19とに誘起されることになる。
【0041】図9は、図3で例示した反磁界機能を有す
る複合磁性体7に電磁コイル14を巻回して成る磁気セ
ンサ16に対し、図のように近接させた永久磁石17を
回転軸21を中心に回動させることにより起電力Eを誘
起する磁化態様を示したものである。
【0042】この場合、複合磁性体7はA→B方向が正
方向であるように構成されたものであって、永久磁石1
7が図示の状態ではソフト成分に正方向(右向き)磁界
が印加されてリセット状態えの磁化反転を生じ起電力E
を誘起する。次に永久磁石17が180度回転する過程
でセット状態えの転位を誘起し、同様に順次リセット、
セット状態えの転位を繰り返す度ごとに起電力Eを誘起
する起電力発生装置として動作する。
【0043】複合磁性体7に代えて前記複合磁性体13
あるいは15を用いても、その作用効果はほぼ同様であ
る。図10は、円筒28の内面に沿って回動する複数
(図では2本)の永久磁石22、23と、その円筒外面
に沿って多数の複合磁性線10を束ねた複合磁性体24
のそれぞれに電磁コイル25を巻回して配列し固定子を
構成したものである。29は回転軸を示す。
【0044】この場合、25、27等の電磁コイルを直
列や並列に接続することにより誘起電圧を重畳させた
り、発生電力の増大を図ることができる。例えば、図示
のように永久磁石22の近接により起電力を発生した電
磁コイル25と、その同時刻に同極性の他の永久磁石2
3が近接して起電力を発生する複合磁性体26の電磁コ
イル27とを接続しておく。依って両者の起電力を重畳
させて波高値を増大するように、あるいは出力幅を増大
するように発生することができる。
【0045】殊に、永久磁石の磁界を低速回転で順次鎖
交させるような場合にも、先に述べたように常にほぼ一
定の波高値の誘導起電力を連続して発生できる。図11
は、円筒30の全外周に沿って多数の複合磁性線10に
より円筒状複合磁性体31を固定子として構成したもの
である。そして、電磁コイル32を円筒状複合磁性体3
1の全体を包囲するように巻回して成る起電力発生装置
の構成例である。この場合も回転軸29に懸架された複
数の永久磁石22等を円筒内で回動させる仕組みは同様
である。
【0046】なお、円筒30を磁性材料で構成した比較
的弱い例えば磁石33を永久磁石22等とは逆極性に円
筒状に配置しておいた場合には、複合磁性線10に対し
セット状態には達しない程度の弱い外部磁界を負方向に
作用させる手段に相当する。この磁化作用は永久磁石2
2等が近接する度ごとに間欠的に消滅されるから、ソフ
ト成分が反磁界により惹起されるセット状態への急速な
磁化反転作用を補い前記誘導起電力を効率的に発生する
うような効用がある。
【0047】以上の各実施例で述べた複合磁性体の構成
材料としては、磁性金属、磁性酸化物、金属間化合物お
よび非晶質磁性材料などの同種または異種材料の組み合
わせや、複合磁気成分の磁性粒子を混在させたもの、あ
るいは結晶層と非晶質磁性層との混成磁性層を用いるこ
とができる。そして、その薄膜状、積層状、圧接状、角
材や丸棒に束ねたりして形態を整えることにより、反磁
界機能を有する複合磁性体を構成することができる。
【0048】これらの構成において、ソフト成分とハー
ド成分との層間や多数の各複合磁気成分間あるいは複合
磁性体間に、電気絶縁層や非磁性層および異種磁性層そ
の他の中間層を介在させて、層間における磁気的相互作
用の助長または制御効果、渦流損の防止などに役立たせ
ることができる。例えば、特に図示はしてないが図1、
2および3の各層間、または図4の各複合磁性線10の
表面絶縁や線間の絶縁処理、あるいは図5等のような複
合磁性体の構成において混在させた異種磁性粒子表面に
絶縁処理を施したものとか、積層状の混成磁性層等で形
成した複合磁気成分間の各層間処理は有効である。
【0049】さらに、これらとは別の構造として同心軸
上に設置した複数の回転円板と固定円板に対し、固定円
板には複数単位の前記複合磁性体をそれぞれ半径方向に
配列しておき、回転円板に半径方向に装着した永久磁石
による磁界を前記複合磁性体に間欠的に印加するように
構成しても、同様の作用効果に係る起電力発生装置にな
る。
【0050】なお、前記外部磁界を交流を通電したコイ
ルにより発生させて、前記複合磁性体に間欠的に印加す
るように構成しても同様の起電力発生装置になる。この
場合には励磁コイルを回転させる必要がなく、交番磁界
を発生できる静止型の複合発電機の構成が可能になる。
【0051】また、前記固定子と回転子との組合せによ
り構成される起電力発生装置を1構成単位とし、その複
数構成単位を同一の回転軸上に段重ね式に装着して一体
状に構成することにより発電容量の増大が図れる。以上
に述べた起電力発生装置において、固定子に磁界発生源
を、回転子に多数の複合磁性体を装着させるように上述
とは逆に構成したとしても、その作用効果は同様であ
る。
【0052】
【発明の効果】本発明の起電力発生装置は、複合磁性体
のソフト部をハード部と同方向に転移させる外部磁界さ
え印加してやれば、例えその回転子が超低速回転であっ
ても、あるいは回転速度にムラがあっても常にその外部
磁界の時間的変化割合には無関係にほぼ一定の大きささ
の起電力を誘発するという卓越した作用効果を有する。
【0053】故にこのような起電力発生装置は、出力エ
ネルギの比較的大きい磁気センサから従来の高速回転発
電機と同様の電力供給手段の一助として、あるいは補助
用電源等の効用がある。また、従来の火力、原子力発電
のような消耗燃料や反応後の廃棄物が無く、従来の水力
発電における水量とその落差で発電容量が一概に決めら
れるものとも本質的に異なるクリーンエネルギーのみの
起電力発生装置であるという特徴をもつ。
【0054】例えば回転駆動源に流水を利用する場合
に、水車の回転翼を駆動するだけの流量さえあれば良
い。しかも引き続き同じ流水をそのまま川下で利用し次
々と直列的に設置した多数の起電力発生装置を動作させ
得るので、そのエネルギー源の有効利用と変換効率は大
きいものがある。
【0055】しかも、回転速度の高速性や均一性および
貯水池から発電機までの落差などに関する制約が殆どな
い。また例えば各家庭の屋外に風車を設置して発電機の
回転駆動源とし、さらに充電可能な電力貯蔵装置を構成
しておけば恒久的な電源システムになる可能性が見込ま
れる。さらに、離島や過疎地域、僻地などにおいても自
己給電による通信情報の授受や防災システムなどへの効
用が期待できる。
【0056】何れにしても本発明に係る電源システムの
起電力発生装置における駆動源は低速でもよいから、先
に述べた水力、風力の他に潮力、気圧や温度差、歩行者
等を含む動くもの総てが対象になるといっても過言では
ない。また、前記起電力発生用の電磁コイルを超電導線
により構成した発電装置を製造できるという効果が期待
できる。このように本発明の装置は、格別な物理的、科
学的反応装置あるいは動力装置を特に必要とせず、いわ
ゆるクリーンエネルギーのみによる作用効果の達成が期
待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複合磁性体の模式的構成と、そのセット状態の
磁気的態様を例示する概要図である。
【図2】複合磁性体のリセット状態の磁気的態様を例示
する概要図である。
【図3】1本の磁性合金線に磁性層を積層して成る複合
磁性体の実施例で、(a)は各磁性層の一部断面の態様
を示す斜視図,(b)は全体の切断面の態様を示す概要
図である。
【図4】磁気センサの構成原理と実施例の態様を示す概
要図である。
【図5】複合磁性体の寸法比kと、反磁界係数Nとの関
係および棒状複合磁性体の構成に束ねた複合磁性線の本
数nとの関係を示した図表である。
【図6】反磁界機能を検証するため、束ねた複合磁性線
に対する外部磁界の印加条件と起電力Eとの関係を究明
した代表的な実験結果を例示したものである。
【図7】他の態様の複合磁性体に電磁コイルを装着した
起電力発生装置の原理的構成を示す概要図である。
【図8】複合磁性体に電磁コイルを巻回して成る磁気セ
ンサの1対を、互いに近接離間させる実施例の態様を示
す概要図である
【図9】反磁界機能を有する1本の複合磁性体に電磁コ
イルを巻回して成る磁気センサに、永久磁石を近接させ
る磁化態様の概要図である。
【図10】円筒の外周に電磁コイルを巻回した多数の複
合磁性体を配列し、その円筒内面に沿って永久磁石が回
転するように構成した起電力発生装置の概要図である。
【図11】円筒状複合磁性体の内面に沿って永久磁石が
回転するように構成した他の実施態様の起電力発生装置
を示す概要図である。
【符号の説明】
1、11:ソフト成分 2、12:ハード成分 3:複合磁気成分 4、7、13、15、18、24、26:複合磁性体 5:反磁界 6:外部磁界 8:最外周部 9:反磁界 10:複合磁性線 14、19、25、27、32:電磁コイル 16、20:磁気センサ 17、22、23:永久磁石 21、29:回転軸 28、30:円筒 31:円筒状複合磁性体
【手続補正書】
【提出日】平成12年2月21日(2000.2.2
1)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 複合磁性体の起電力発生装置
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気電子機器の構
成材料として用いられる強磁性体に、複合磁性体を適用
した誘導起電力発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、複合磁性体を用いて電磁誘導起電
力を発生させようとする、特公昭55−15797号公
報、特公昭59−12142号公報、特公昭61−28
196号公報あるいは特公平4−49070号公報など
にみられる技術がある。例えば、応力加工等を施した1
本の磁性金属細線に検出コイルを巻いて成る磁気センサ
などがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】強磁性体を用いた従来
の電気電子機器は、その強磁性体の形状に基づいて必然
的に生じる反磁界が、減磁作用を惹起し電磁変換効率の
低下をもたらしている。磁気センサにおいても、自己減
磁率に基づき有効磁気エネルギを減少する問題等のた
め、出力の増大をはかるうえの障害とされてきた。
【0004】また、最近の検出感度のよい小型化された
磁気センサは、一般に検出信号や半値幅が小さいシャー
プなパルス電圧であるため、トランジスタ等の能動素子
や記憶回路を直接駆動させたり、情報信号処理その他の
周辺回路の電源用エネルギとして用いることが困難であ
った。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述のような
問題点を克服して比較的大きい起電力を効率的に発生さ
せる手段を提供し、さらに磁気センサや起電力発生装置
の具体的な構成方法を提供するものである。
【0006】本発明に用いる複合磁性体は、磁気異方性
を有する固定磁気成分と双安定磁気成分とか互いに磁気
結合して成る、複合磁気成分の多数を累積して一体状に
構成したものである。そして、この複合磁性体は最終的
な完成形状と前記磁気成分の性状とに依存して定まる自
己減磁率に基づき、負方向に作用する反磁界機能を有す
る。
【0007】この場合、固定磁気成分の磁気的性状は比
較的保磁力が大きく所定方向(正方向と呼ぶ)に磁気異
方性を備えており、双安定磁気成分の性状は比較的保磁
力が小さく前記正方向および逆方向(負方向と呼ぶ)を
含む一軸磁気異方性を有するものである。
【0008】このような複合磁性体に、第1の外部磁界
として負方向に比較的弱いセット磁界を作用させると、
先に反磁界により補助的に負方向磁化を受けていた双安
定磁気成分が磁化反転を完了し、固定磁気成分とは反平
行の安定な磁化状態(セット状態と呼ぶ)を達成する。
【0009】次に第2の外部磁界として正方向に比較的
強いリセット磁界を印加すると、反磁界が相殺されて、
双安定磁気成分に正方向の磁化が働く。これがトリガと
なって双安定磁気成分は、隣接する固定磁気成分による
磁化とリセット磁界による磁化との協働に基づく磁気的
相互作用を受けて、急速に磁化反転を達成し平行磁化状
態(リセット状態と呼ぶ)で安定する。
【0010】従って、例えば電磁コイルを装着した所定
の複合磁性体に、外部磁界として負方向のセット磁界と
正方向のリセット磁界とを交互に作用させた時、双安定
磁気成分は反磁界との相互作用と相俟って反転現象を繰
り返す。そして、この時の磁束変化により起電力を発生
させるものである。故に、その外部磁界が極めて緩慢に
所定の大きさに達するような場合でも、ほぼ一定の起電
力を誘起するという特異性がある。
【0011】しかるに本発明に係る複合磁性体を用いた
起電力の発生原理は従来の方式とは異なり、各双安定磁
気成分が状態転位を行った時に誘発する起電力である。
依って、複合磁性体の材質や完成形状その他の磁気的性
状が決まると、双安定磁気成分の転位速度は自ずから所
定の値に定まる。これが常にほぼ一定の大きさの起電力
eを誘発する卓越した現象の要因になっているものと考
える。
【0012】故に、本発明に係る起電力発生装置で得ら
れる起電力Eは、E=e+U但し、起電力Uは従来から
定説の電磁誘導に基づき電磁コイルに外部から鎖交する
磁束φの時間的変化割合に比例し、一般にU=−dφ/
dtで与えられるものである。印加磁界の時間的変化割
合が小さい場合とか、あるいは超緩慢な磁束鎖交状態に
おいては起電力が小さくなり、遂にはU≒0になる。
【0013】なお、各双安定磁気成分を保磁力の大きさ
が段階的に異なる各種の成分で形成した場合には、反磁
界あるいは外部磁界の作用に追随して順次段階的に磁化
反転を生じるから、これに対応した連続的な起電力を発
生できる。さらに、比較的弱い外部磁界を間欠的に負方
向に作用させておく手段は、反磁界により惹起される双
安定磁気成分のセット状態への急速な反転作用を補う効
果があり、誘導起電力の効率的な発生に寄与する。
【0014】
【発明の実施の形態】以上のような作用原理と磁気的態
様にもとづく実施例について説明する。先ず、本発明に
用いる複合磁性体の磁気的性状について述べる。図1
は、互いに一軸磁気異方性を備えた双安定磁気成分1の
磁性層と固定磁気成分2の磁性層とが直接または中間層
(図示せず)を介して磁気結合された複合磁気成分3を
示した図である。そして、それらの多数層が密接に寄合
い累積されて構成された一体状の複合磁性体4を示した
ものである。
【0015】比較的保磁力の大きい固定磁気成分2(大
白矢印)のそれぞれは、正方向(右向き)に磁化された
定常状態を示している。比較的保磁力の小さい双安定磁
気成分1(中黒矢印)のそれぞれは、反磁界5(小白矢
印)の大きさに依存して自律的に負方向(左向き)に磁
化されようとする機能が働く。これに負方向の外部磁界
(図示せず)を作用させて、各双安定磁気成分1と各固
定磁気成分2とが互いに完全な反平行のセット状態を形
成した場合を示している。
【0016】そして、図2に示すように複合磁性体4に
対し外部磁界6(大黒矢印)を正方向(右向き)に印加
すると、反磁界5が相殺されて消滅すると同時に、各双
安定磁気成分1は外部磁界6の磁化作用と各固定磁気成
分2による磁気交換相互作用との磁気的協働により、急
速に正方向に反転し互いに平行のリセット状態になる。
【0017】次に、印加中の外部磁界6の作用を消勢す
ると、各双安定磁気成分1は反磁界5の作用に基づく制
御機能により、再び図1のように各固定磁気成分2と反
平行のセット状態に移行せんとする。この場合、弱い負
方向のセット磁界(図示せず)を作用すると、より完全
なセット状態に定常化させることができる。
【0018】図3(a),(b)は、1本の磁性合金線
の線心部から外周部にかけて保磁力が異なる複数の磁性
層を積層し、反磁界機能を有する複合磁性体4を構成し
ている。この複合磁性線は最外周部8に双安定磁気成分
1を、その内層部に固定磁気成分2を、さらにその内層
部に双安定磁気成分1を、そして線心部に固定磁気成分
2を有するように処理したものである。これは図1と同
様に反磁界5および負方向のセット磁界を作用させたセ
ット状態の磁化態様を示している。
【0019】そして、正方向(右向き)の外部磁界が印
加されて双安定磁気成分1が磁化反転しリセット状態へ
転位する現象は、図2で説明した態様とほぼ同様であ
る。このように、リセット状態になる時と再びセット状
態に復帰する時に、各双安定磁気成分の反転に基づく磁
束変化を電磁コイルに鎖交させることにより誘導起電力
を発生させる。
【0020】図4は多数の複合磁性線10を一体状に束
ねた複合磁性体13に、電磁コイル14を巻回したもの
である。複合磁性体13に対し断続的に負方向磁界6s
の次に正方向の外部磁界6rを鎖交させると、そのたび
ごとに各双安定磁気成分は反磁界の作用と相俟って磁化
反転現象を繰り返す。このとき束ねた複合磁性線10の
本数に対応した大きさの起電力Eを連続的に電磁コイル
14に発生する。
【0021】この場合、複合磁性体に印加する外部磁界
の断続速度が極めて遅い時、例えば1ヘルツ以下の時で
も誘導起電力の波高値は20ヘルツの時と同じ大きさに
なる。このような複合磁性体における反磁界は、一般に
複合磁性体の磁化の強さとその形状によって決まる自己
減磁率Nとの積に比例する。故に断面形状が小さく長い
線の場合ほどNは減少し、反磁界の作用は小さくなる。
【0022】自己減磁率Nは、1本の複合磁性線の半径
をr、長さをLで表わした時の寸法比k(=L/2r)
との間に図5に示したような関係をもつ。長さLの複合
磁性線の多数を束ねて棒状に構成した複合磁性体は、断
面積の実質的な増大に匹敵するから寸法比kの値を減少
し、平均自己減磁率Nの増大をもたらすから反磁界の作
用は大きくなる。
【0023】また右の縦軸は、密着して束ねた複合磁性
線の本数nを表わし、直径2r=0.25(mm)、長
さL=50(mm)の実際の複合磁性線について求めた
結果を例示した。図に見るように1本の複合磁性線では
寸法比kが十分に大きく、従って自己減磁率Nが小さ
い。そのため双安定磁気成分の反磁界の作用だけによる
自律的な磁化反転は殆ど生じない。故に双安定磁気成分
をセット状態に完全に磁化反転させるためには、負方向
のセット磁界Hsを印加してやればよい。
【0024】図6は、複合磁性線の本数nの異なる各種
の複合磁性体において、セット磁界Hsとリセット磁界
Hr(80エルステッド、一定)とを順次印加した時に
誘起する起電力eの実験結果を例示したものである。n
=25および100(本)を束ねたものでは、セット磁
界Hs=0の場合にも双安定磁気成分が反磁界の作用で
転位が行なわれており、それが起電力eの発生に寄与し
ていることが判る。
【0025】殊に、n=100(本)を束ねたもので
は、強力な反磁界機能により双安定磁気成分の総てがセ
ット状態に磁化反転しているような現象を示している。
従って外部磁界としては、リセット磁界Hrを印加する
だけでほぼ一定の起電力を発生する。しかしながら、起
電力は必ずしも束ねた本数に比例して増大しない場合が
あり、発生効率の減少傾向がみられる。
【0026】次に、複合磁性線10の具体的な製法につ
いて一言する。例えば比較的磁気歪の大きいFc−Co
−V系のバイカロイ合金細線に所定のひねり応力を内蔵
するように捻り処理を加えると、外周部に保磁力の小さ
い双安定磁気成分が形成される。線心部は比較的保磁力
の大きい固定磁気成分の性状を保有した1本の複合磁性
線10になるから、所定の本数を束ね自己減磁率をもつ
棒状の複合磁性体13を構成する。
【0027】あるいは、Fc−Ni系のパーマロイ合金
線にひねり応力処理を加えると、その外周部に保磁力の
大きい固定磁気成分が形成される。線心部に双安定磁気
成分の性状を備えた1本の複合磁性線10が形成される
から、それらの多数を束ねて棒状の複合磁性体13を構
成してもよい。
【0028】図7は、混成磁性酸化物で形成した棒状の
複合磁性体15に電磁コイル14を巻回して成る磁気セ
ンサ16である。これに予め作用させる負方向の外部磁
界(図示せず)と、正方向の外部磁界が作用する永久磁
石17を矢印のように近接離間させると、そのたびごと
に複合磁性体15の双安定磁気成分が磁化反転し起電力
Eを誘起する。
【0029】この場合、複合磁性体15はA→B方向に
配向磁化した固定磁気成分と、反磁界機能および負方向
の外部磁界によって磁化方向が定まる双安定磁気成分と
が結合して成る酸化鉄粉のごとき微粒子の多数を累積さ
せて形成したものである。図8は,複合磁性体15と1
8とにそれぞれ電磁コイル14と19を巻回して成る磁
気センサ16と20を対向させる。そして矢印で示すよ
うに互いに近接離間させた場合に起電力Eを誘起させる
態様である。
【0030】複合磁性体15の固定磁気成分はS→Nの
方向に配向磁化されており、図のようにN極とS極とを
有する磁石として外部へ磁力線を分布する。複合磁性体
18も同様である。従って、対向する磁気センサ16と
20とが互いに近接し離間する時点で、それぞれの各双
安定磁気成分の磁化転位に伴う起電力Eを電磁コイル1
4と19とに誘起する。
【0031】図9は、図3で例示した反磁界機能を有す
る多層状の複合磁性体7に電磁コイル14を巻回して成
る磁気センサ16である。これに近接させた永久磁石1
7の回転軸21を中心にして回動させることにより起電
力Eを誘起する。この場合、複合磁性体7はA→B方向
が配向磁化方向であるように構成されたものであれば、
図示の状態では永久磁石17の正方向(右向き)磁界が
作用して双安定磁気成分をリセット状態に磁化した時を
表している。
【0032】永久磁石17が180度回転した時にはセ
ット状態に転位する。同様にして順次セット、リセット
状態への反転を繰り返すたびごとに起電力Eを誘起す
る。このように交番磁界を印加する場合には、複合磁性
体7に対し正方向のバイアス磁界を常時作用させておけ
ば、交互にセットとリセット状態の磁化過程を形成させ
る非対称励磁手段になる。なお、複合磁性体7に代えて
前記複合磁性体13あるいは15を用いても、その作用
効果は同様である。
【0033】図10は、円筒28の内面に沿って回動す
る2本の永久磁石22、23を備えた回転子と、円筒外
面に複合磁性線10の多数を束ねた複合磁性体24のそ
れぞれに電磁コイル25、27等を巻回して配列した固
定子である。29は回転軸を示す。この場合、各電磁コ
イルを直列や並列等に接続することにより起電力を重畳
させて波高値あるいは出力幅を増大するように構成する
ことができる。
【0034】図11は、円筒30の外周に多数の複合磁
性線10をまとめて円筒状複合磁性体31を形成した固
定子と、その円筒状複合磁性体31の全体を包囲するよ
うに電磁コイル32を巻回して成る起電力発生装置であ
る。その円筒内で回動させる回転子は、回転軸29に懸
架された複数の永久磁石22等である。
【0035】なお、円筒状複合磁性体31がセット状態
には達しない程度の比較的弱い負方向の永久磁石33に
より円筒30を構成しておく。この磁化作用は双安定磁
気成分が反磁界によるセット状態への急速な磁化反転を
補うように作用する。従って永久磁石22等が近接した
時の複数の複合磁性線10から効率的に誘導起電力を発
生させることができる。以上に述べた起電力発生装置に
おいて、固定子に磁界発生源を、回転子に多数の複合磁
性体を装着する、上述とは逆の構成にしても作用効果は
同様である。
【0036】以上の各実施例で述べた複合磁性体の構成
材料としては、磁性金属、磁性酸化物、金属間化合物お
よび非晶質磁性材料などの同種または異種材料の組み合
わせや、複合磁気成分の磁性粒子を混在させたもの、あ
るいは結晶層と非晶質磁性層との混成磁性層などを用い
ることができる。そして、その薄膜状、積層状、圧接状
あるいは角材や丸棒状に束ねたりして形態を整えること
により、所定の反磁界機能を有する複合磁性体を構成す
ることができる。
【0037】また、異種の複数の円筒磁性合金を1本の
棒状に嵌合したものを線引きして成るクラッドワイヤ
や、異種の磁性合金をメッキ、蒸着、スパッタまたは噴
射法等により被着して成る複合磁性線を用いても、反磁
界機能を有する複合磁性体を構成することができる。こ
のような棒状磁性体に継鉄部を付加したり、あるいは曲
げ加工により閉磁路の形状に構成して適用できることは
いうまでもない。
【0038】これらの構成において、双安定磁気成分と
固定磁気成分との層間や多数の各複合磁気成分間あるい
は複合磁性体間に、電気絶縁層や非磁性層および異種磁
性層その他の中間層を介在させることができる。このよ
うな中間層により、層間における磁気的相互作用の助長
または反磁界制御効果、渦流損の防止などに役立たせる
ことができる。
【0039】例えば図示はしてないが、図1、2および
3の各層間、または図4の各複合磁性線10の表面絶縁
や線間の絶縁処理、あるいは図9のような複合磁性体の
構成において混在させる異種磁性粒子表面に絶縁処理を
施したものとか、積層状の混成磁性層等で形成した複合
磁気成分間の各層間処理は有効である。
【0040】
【発明の効果】本発明にかかる複合磁性体を用いて発生
させる起電力は、従来のように外部磁界の磁束鎖交数の
変化割合に依存するものとは異なる。外部磁界を一種の
トリガのように働らかせ、反磁界機能を備えた複合磁性
体内部における双安定磁気成分と固定磁気成分との相互
作用による、自律的な高速磁化反転に基づく起電力であ
る。
【0041】依って、外部磁界として例えば永久磁石を
超低速で回転させて作用させても、あるいは回転速度に
ムラがあっても、ほぼ一定の大きささの起電力を誘発す
るという卓越した効果を有する。このように外部磁界の
作用が緩慢でもよいから、その駆動源は風力、流水その
他各種の動くものが利用の対象となり、検出起電力の大
きい磁気センサや回転型起電力発生装置のごとき電力発
生手段の一助となることが期待される。
【0042】さらに本発明に係る起電力発生装置は出力
エネルギが比較的大きいので、その出力信号でトランジ
スタや記憶装置などの電子回路を充分に直接駆動するこ
とができる。故に、例えば長期にわたって無電源で信号
発生時点を記録しておけるデバイスなどが構成できる。
しかも、これらの起電力の発生時点をLEDで直接観測
したり、光ファイバーに導入して遠隔地で観測するデバ
イスを構成できるなどの効用がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】反磁界機能をもつ複合磁性体の模型的構成と、
そのセット状態の磁気的態様を例示する概要図である。
【図2】複合磁性体のリセット状態の磁気的態様を例示
する概要図である。
【図3】1本の磁性合金線に多数の磁性層を積層して成
る複合磁性体の実施例で、(a)は各磁性層の一部断面
の態様を示す斜視図,(b)は全体の切断面の態様を示
す概要図である。
【図4】多数の複合磁性線を束ねたものに電磁コイルを
装着したて成る実施例の態様を示す概要図である。
【図5】複合磁性体の寸法比kと、自己減磁率Nとの関
係および束ねた複合磁性線の本数nとの関係を示す図表
である。
【図6】反磁界機能を検証するため、束ねた複合磁性線
に対する外部磁界の印加条件と起電力eとの実験結果を
例示したものである。
【図7】他の態様の複合磁性体に電磁コイルを装着した
起電力発生装置の原理的構成を示す概要図である。
【図8】複合磁性体に電磁コイルを巻回して成る磁気セ
ンサの1対を、互いに近接離間させる実施例の態様を示
す概要図である
【図9】1本の複合磁性体に電磁コイルを巻回して成る
磁気センサに、永久磁石を近接して回転させる磁化態様
の概要図である。
【図10】円筒の外周に多数の複合磁性体を配列し、そ
の円筒内面に沿って永久磁石が回転するように構成した
起電力発生装置の概要図である。
【図11】円筒状複合磁性体の内面に沿って永久磁石が
回転するように構成した、他の実施態様の起電力発生装
置を示す概要図である。
【符号の説明】 1:双安定磁気成分 、2:固定磁気成分、
3:複合磁気成分、4、7、13、15、18、
24、26:複合磁性体、5:反磁界、
6:外部磁界、8:最外周部、
9:反磁界、10:複合磁性線、14、19、2
5、27、32:電磁コイル、16、20:磁気セン
サ、17、22、23、33:永久磁石、21、29:
回転軸、 28、30:円筒、31:円筒状複合
磁性体
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図 1】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図 3】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図 4】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正内容】
【図 10】

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気的に結合するソフト成分とハード成
    分とを含む多数の複合磁気成分を寄合わせて一軸磁気異
    方性を備えるように形成した複合磁性体に、反復磁界を
    印加した時の磁化方向の転位に基づき誘導起電力を発生
    するように構成された装置において、該複合磁性体の反
    磁界によってセット状態の負方向に磁化されている前記
    ソフト成分が、正方向の外部磁界を印加された時点でリ
    セット状態に磁化反転を生じる時と、前記外部磁界が消
    勢された時に再び元のセット状態に復帰するための磁化
    反転を生じる時に、それぞれ発生する磁束変化を、当該
    複合磁性体の近くに設けた電磁コイルに鎖交させるよう
    に構成したことを特徴とする複合磁性体の反磁界機能を
    用いた起電力発生装置。
JP11127508A 1999-03-11 1999-03-30 複合磁性体の起電力発生装置 Expired - Fee Related JP3106144B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11127508A JP3106144B2 (ja) 1999-03-30 1999-03-30 複合磁性体の起電力発生装置
DE2000111448 DE10011448A1 (de) 1999-03-11 2000-03-10 Generator zur Erzeugung einer elektromotorischen Kraft unter Verwendung eines Magnetbündels
CN 00106892 CN1266992A (zh) 1999-03-11 2000-03-11 采用复合磁性物质的电动势发生器

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11127508A JP3106144B2 (ja) 1999-03-30 1999-03-30 複合磁性体の起電力発生装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000287470A true JP2000287470A (ja) 2000-10-13
JP3106144B2 JP3106144B2 (ja) 2000-11-06

Family

ID=14961740

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP11127508A Expired - Fee Related JP3106144B2 (ja) 1999-03-11 1999-03-30 複合磁性体の起電力発生装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3106144B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2893780A1 (fr) * 2005-11-22 2007-05-25 Schneider Electric Ind Sas Dispositif autonome de generation d'energie electrique
JP2012196049A (ja) * 2011-03-16 2012-10-11 Toshiba Corp 発電装置、及びこれを用いたテレメータ水位観測システム
WO2022230652A1 (ja) * 2021-04-26 2022-11-03 パナソニックIpマネジメント株式会社 発電素子、エンコーダ、磁性部材の製造方法および信号取得方法
WO2024075465A1 (ja) * 2022-10-04 2024-04-11 パナソニックIpマネジメント株式会社 発電素子、発電システムおよびエンコーダ

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008093641A1 (ja) * 2007-01-29 2008-08-07 Nihon System Research Institute Inc. 振り子の駆動方法および装置

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2893780A1 (fr) * 2005-11-22 2007-05-25 Schneider Electric Ind Sas Dispositif autonome de generation d'energie electrique
WO2007060072A1 (fr) * 2005-11-22 2007-05-31 Schneider Electric Industries Sas Dispositif autonome de generation d'energie electrique
EP1952516A1 (fr) * 2005-11-22 2008-08-06 Schneider Electric Industries S.A.S. Dispositif autonome de generation d'energie electrique
US8148856B2 (en) 2005-11-22 2012-04-03 Schneider Electric Industries Sas Stand-alone device for generating electrical energy
JP2012196049A (ja) * 2011-03-16 2012-10-11 Toshiba Corp 発電装置、及びこれを用いたテレメータ水位観測システム
WO2022230652A1 (ja) * 2021-04-26 2022-11-03 パナソニックIpマネジメント株式会社 発電素子、エンコーダ、磁性部材の製造方法および信号取得方法
WO2024075465A1 (ja) * 2022-10-04 2024-04-11 パナソニックIpマネジメント株式会社 発電素子、発電システムおよびエンコーダ

Also Published As

Publication number Publication date
JP3106144B2 (ja) 2000-11-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9467031B2 (en) Method and apparatus for coil-less magnetoelectric magnetic flux switching for permanent magnets
US6362718B1 (en) Motionless electromagnetic generator
AU759140B2 (en) Motor utilizing basic factor and having generator function
CN102067412B (zh) 永磁式旋转电机
JP2010130818A (ja) 界磁子の製造方法
JPH0993996A (ja) 発電電動機
EP0998009B1 (en) Electronic timepiece with a generator
US5357232A (en) Magnetostrictive element
JPH05297083A (ja) 磁界感応装置
JP2000287470A (ja) 複合磁性体の起電力発生装置
JPWO2022153861A5 (ja)
JP2007067252A (ja) ハイブリッド型磁石並びにそれを用いた電動モータ及び発電機
JPS62221852A (ja) 電動体
EP1446862B1 (en) Motionless electromagnetic generator
Behera et al. Magnetostrictive materials
JP5445940B2 (ja) 微小回転電気機械の磁気回路
Matsushita et al. Power generating device using compound magnetic wire
JP3332125B2 (ja) 磁歪式アクチュエータ
JP2969123B2 (ja) 複合磁気デバイス
JP2000260613A (ja) 反磁界制御機能を有する複合磁性体
Takemura et al. Frequency dependence of output voltage generated from bundled compound magnetic wires
JPH07147745A (ja) 電動機
WO2021049327A1 (ja) アクチュエータ
JPH05167127A (ja) 磁歪素子
JP2020161820A (ja) 発電素子およびセンサ

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees