JP2000279511A - 抗血栓性多糖類をコーティングした高分子材料からなる医療用具 - Google Patents

抗血栓性多糖類をコーティングした高分子材料からなる医療用具

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Abstract

(57)【要約】 【課題】抗血栓性多糖類がコーティングされた高分子材
料よりなる、血液適合性、特に抗血液凝固性および抗血
栓性に優れた医療用具を提供する。 【解決手段】医療用具の基体をなす高分子材料の表面
に、アニオン性グラフト分子を重合し、このグラフト層
上にカオチン性高分子よりなるリンカー分子を介して血
液接触表面をなす坑血栓性多糖類をコーティングするこ
とにより坑血栓被膜を形成してなり、この坑血栓被膜の
表面部分におけるXPSによる硫黄含量S2p/C1s
が0.040以上で且つ坑ファクターXa活性による初
期固定化量が40×10ー3IU/cm2 以上とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗血液凝固性に優
れた医療用具に関する。より詳しくには、プラズマ照射
による開始グラフト重合技術を用いることにより、化学
的官能基が乏しい高分子材料表面に反応性官能基を導入
し、抗血栓性多糖類を固定化させた医療用具に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】抗血栓性が要求される医療用具におい
て、リンカー分子としてポリエチレンイミンを介して、
ヘパリンが基材に固定化されたものが知られており、リ
ンカーを架橋するための官能基導入方法と結合様式の違
いにより、複数の基材処理手法が報告されている。
【0003】例えば、(1) 過マンガン酸カリウムを含有
する濃硫酸で硫酸基を導入した特公平3−70722、
(2)(1)と同様に過マンガン酸カリウムを含む硫酸水溶液
で処理した後、シランカップリング剤を使用してリンカ
ーを共有結合させた特開平6−218038、(3) オゾ
ン処理により酸化物官能基を与えた特開平6−1059
02、および(4) セリウムイオンの酸化力を主に用いて
アクリル酸を重合させた特開平10−52488が挙げ
られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
特公平3−70722、および特開平6−218038
の手法では、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)等
の酸に弱い材質を使用した場合には、硫酸による基材そ
のものの溶解が見られ、一般によく用いられるポリカー
ボネート等の場合においても同様に、材質に与える影響
が大きく、充分量の官能基の導入が期待されない。
【0005】特開平6−105902によるオゾン処理
法においては、反応の選択性および制御性の低さを伴
い、リンカー分子との結合に有効な化学的官能基の導入
は、基材の性質に大きく依存するため、基材の種類によ
り官能基の密度が低い欠点を有する。
【0006】また、特開平10−52488で特に推薦
されるように、セリウムイオンの酸化力を用いたアクリ
ル酸溶液のグラフト重合法では、反応過程で基材に与え
られた活性点の損失が大きいため、基材表面でのグラフ
ト重合反応よりアクリル酸自身による塊重合反応が優先
的に起こり、形成されたアクリル酸重合体は基材表面か
ら容易に剥離してしまう欠点がある。
【0007】すなわち、上記に挙げた液相酸化反応を用
いた基材への反応性官能基あるいはグラフト分子の導入
は、基材高分子の化学構造に大きく依存するため、基材
によっては充分な密度が得られない欠点を有している。
【0008】このように従来より知られる手法において
は、ポリカーボネート等の化学反応性に乏しい高分子材
料に化学的官能基を導入し、さらにリンカー分子を介し
て多数のヘパリンを固定化する場合には、基材表面への
官能基の導入密度が不充分であったため、結果としてヘ
パリンが十分に固定化することは不可能であった。
【0009】従って、本発明は、化学反応性官能基が乏
しい高分子材料表面に、抗血栓性多糖類が化学的に結合
することができる必要十分量の化学反応性官能基を付加
することによって、血液接触材料表面が抗血栓性多糖類
で完全に被覆された、抗血栓性および抗血液凝固性に優
れた医療用具を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明は、医療用具の基体をなす高分子材料の表面に、
アニオン性グラフト分子を重合し、このグラフト層上に
カオチン性高分子よりなるリンカー分子を介して血液接
触表面をなす坑血栓性多糖類をコーティングすることに
より坑血栓被膜を形成したものにおいて、この坑血栓被
膜の表面部分におけるXPSによる硫黄含量S2p/C
1sが0.040以上で且つ坑ファクターXa活性によ
る初期固定化量が40×10ー3IU/cm2 以上とした
ことを特徴とする。
【0011】なお、上記XPSによる硫黄含量S2p/
C1sは密度を表す指標であり、坑ファクターXa活性
による初期固定化量は活性を表す指標である。XPSに
よる硫黄含量S2p/C1sが0.040未満の場合は
坑血栓性多糖類の被覆が疎となり、基体表面が部分的に
露出するなどして坑血栓性が不十分となり、坑ファクタ
ーXa活性による初期固定化量が40×10ー3IU/c
2 未満でも活性不足により坑血栓性作用が不十分とな
る恐れがある。
【0012】すなわち、血液接触材料表面に高密度、且
つ高活性であって量、質とともに高位の抗血栓性多糖類
を導入した高分子材料からなる医療用具であって、従来
には坑血栓性多糖類の固定密度と活性を高レベルで両立
させたものが存在していなかったのに対して、本発明は
それを実現する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図を参
照しつつ詳細に説明する。
【0014】図1は補助人工心臓における血液接触部を
構成する用具の如き本発明の医療用具の表面断面構造を
示す模式図であって、図中、1はポリカーボネートなど
の高分子材料からなる基体、2はアクリル酸などのアニ
オン性グラフト分子、3はポリエイレンイミンなどのカ
オチン性高分子よりなるリンカー分子、4はヘパリンな
どの坑血栓性多糖類を示す。
【0015】また、上記構成要素の接合部位に示される
+、−の記号は、各々の構成要素の帯電が正または負で
あることを示す。
【0016】同図に示すように上記医療用具は、基体1
の表面に、アニオン性グラフト分子2を重合し、このグ
ラフト層上にカオチン性高分子よりなるリンカー分子3
を介して血液接触表面をなす坑血栓性多糖類4をコーテ
ィングすることにより坑血栓被膜を形成した基本構成を
有し、且つ、坑血栓性多糖類4をコーティングする最表
層のXPSによる硫黄含量S2p/C1sが0.040
以上で且つ坑ファクターXa活性による初期固定化量が
40×10ー3IU/cm2 以上としたものである。
【0017】なお、アニオン性グラフト分子2とリンカ
ー分子3並びにリンカー分子3と坑血栓性多糖類4の結
合は図に示すようにイオン結合が好ましい。ただし、共
有結合であっても構わない。
【0018】このような特徴を有する医療用具は次のよ
うな方法で作製可能である。
【0019】ポリカーボネート等の化学的官能基が乏し
い高分子材料に対して、プラズマ照射による開始グラフ
ト技術を用いて、ラジカル重合性のアニオン性モノマー
を気相グラフト重合させた後、アニオン性グラフトマト
リックス上に一つのカチオン性リンカー高分子を多点接
触による静電的相互作用によって結合させ、さらにヘパ
リン等の抗血栓性多糖類を最表面に化学的に固定させ
る。
【0020】本発明は、あらゆる高分子材料に機能性分
子を固定化する場合に適用されるが、特にポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオ
レフィン系樹脂、ポリカーボネートおよびポリスチレン
などの化学的官能基が乏しい汎用高分子材料を用いる場
合に好適である。
【0021】また、前記方法に使用するプラズマとは、
アルゴンなどの不活性ガス雰囲気の適当な減圧下(およ
そ101 〜10ー3to rr)において、13.56MH
zの高周波を利用して発生させた、自由電子などに富ん
だ、紫外光成分を放射する高エネルギー状態を示す。
【0022】この低温プラズマ照射は、高分子材料表面
の活性化に有効であり、ラジカル重合性のモノマーをグ
ラフト重合させるのに必要な活性部位、すなわちラジカ
ルを基材に与えることができる。
【0023】従って、任意の条件によりプラズマ照射技
術を用いれば、基材を損傷することなく、液相酸化反応
において官能基やグラフト分子の付加が困難であった化
学的官能基が乏しい高分子材料に対して、効果的にグラ
フト重合をさせることが可能であり、官能基を導入する
のに有利である。
【0024】本発明に使用されるアニオン性グラフト分
子は、揮発性を有するカルボキシル基含有ラジカル重合
性ビニルモノマーより選択され、具体的には、アクリル
酸、メチルアクリル酸およびビニル酢酸などが挙げられ
る。
【0025】高分子材料表面にグラフト重合されたアニ
オン性高分子鎖は、カチオン性リンカー分子を固定する
ための多数のカルボキシル基を供給することができる。
従って、アニオン性グラフト分子鎖とカチオン性リンカ
ー分子の結合は、双方が有する大多数の官能基間で静電
的相互作用が生じるため、多点接触型の強固なイオン結
合が形成される。
【0026】本発明に使用されるカチオン性リンカー分
子は、ポリエチレンイミン、ポリアルキルアミンおよび
ポリアリールアミンなどのポリアミン官能性高分子であ
り、アミン官能基がグラフト分子鎖および抗血栓性多糖
類のいずれのアニオン性官能基とも、高い反応性に富む
利点を有している。
【0027】リンカー分子の高分子量化によって、リン
カー分子がアニオン性グラフト層からの溶出や遊離を抑
制するため、リンカー分子の分子量は10,000以上
であることが望ましい。
【0028】本発明に使用される抗血栓性多糖類は、ヘ
パリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デキスト
ラン硫酸およびこれらの誘導体より選択される。リンカ
ー分子への抗血栓性多糖類の固定化は、イオン結合およ
び共有結合のいずれであってもよい。
【0029】共有結合の場合には、抗血栓性多糖類が基
材表面に長期間に渡って安定的に固定されることが期待
され、この場合には亜硝酸塩あるいは過ヨウ素酸塩で処
理する方法により、抗血栓性多糖類にアルデヒド基を導
入することができる。イオン結合の場合には、固定化に
おいて反応工程を簡略化できる利点を有する。
【0030】このイオン結合の場合においても、アニオ
ン性の抗血栓性多糖類はカチオン性リンカー分子と多点
接触型の強固な静電的相互作用を保っており、表面から
容易に遊離や溶出するようなことはなく、共有結合に劣
らない安定性を示す。いずれの固定化方法においても、
反応溶液のpHは、2.5〜7.0が望ましい。
【0031】このような構成による本発明の医療用具
は、低温プラズマ照射技術による基材へのラジカル生成
によって、アニオン性ビニルモノマーを気相グラフト重
合させており、基材ポリマーの機械的強度や特性をほと
んど変性させることなく、多量に化学的官能基を導入す
ることができ、しかも導入されたアニオン性グラフト
層、カチオン性リンカー分子、および表面に固定された
抗血栓性多糖類が、それぞれ多点接触型で強く静電的相
互作用によって結合されているため、基材表面の抗血栓
性および抗血液凝固性が長期に渡って持続するものであ
る。
【0032】本発明の医療用具としては、例えば人工心
臓、血液ポンプ、血液回路などの血液接触材料を例示す
ることができる。
【0033】以下、本発明を実施例に基づいて説明する
が、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
【実施例1】<プラズマ照射技術によるポリカーボネー
トへのアクリル酸グラフト分子鎖の導入>ポリカーボネ
ートフィルム試験片(グッド フェロー社製, 厚み0.
01mm)を、 PEARL KOGYO社製RP- 500高周波電
源を使用してプラズマ照射(周波数13.56MHz,
入射電力30W, A rガス雰囲気下0.10to rr,
照射時間20se c)した。
【0035】続いて、減圧下にある反応チャンバー(円
筒縦型, φ45×140mm)中に、予め脱気されたア
クリル酸蒸気を注入することにより、気相グラフト重合
反応を1時間実施した。
【0036】反応終了後、未反応のアクリル酸モノマー
を除去するため、チャンバー内を真空吸引した後、フィ
ルム表面は蒸留水にて洗浄し乾燥させた。これらの操作
によるポリカーボネート表面へのアクリル酸のグラフト
量は、およそ2.6×10ー3mg/cm2 であった。
【0037】<アクリル酸がグラフト重合されたポリカ
ーボネートフィルムのヘパリン化反応>前記アクリル酸
がグラフトされたポリカーボネートフィルムは、室温下
にてポリエチレンイミンの(ポリサイエンス社製;分子
量5〜10万)の0.1%水溶液(pH=9.0)に3
0分間浸漬させた後、蒸留水で3回洗浄し、乾燥させ
た。
【0038】このポリエチレンイミンで被覆されたポリ
カーボネートフィルムは、ヘパリン(シグマ社製)を
0.5mg/ml濃度で溶解させた生理食塩水と37℃
で5時間反応させた後、蒸留水にて十分に洗浄し、デシ
ケーター中にて表面を完全に乾燥させた。
【0039】
【比較例1】<一般的な酸化試薬を用いた基材処理およ
びヘパリン化>ポリカーボネートフィルム試験片を2g
/lの過マンガン酸カリウムを含有する濃硫酸に2分間
浸漬させることにより、フィルム表面に硫酸基を付加さ
せた。
【0040】フィルムは蒸留水で洗浄した後、実施例1
と同様に、ポリエチレンイミンをリンカー分子に用いて
ヘパリンと反応させた。
【0041】
【比較例2】<セリウムイオン技術を用いた基材処理お
よびヘパリン化>ポリカーボネートフィルム試験片は、
アルゴンガスの気流下で10%の過硫酸カリウム水溶液
に70℃で30分間浸漬させた後、蒸留水で洗浄し乾燥
させた。
【0042】続いて、予め脱気させた40%のアクリル
酸, 6mMの硝酸アンモニウムセリウム( IV)、 お
よび0.06Mの硝酸よりなる混合液に、アルゴンガス
の気流下で、フィルムを30℃で20分間反応させた。
反応後、フィルムは0.05Mの酒石酸ナトリウム水溶
液に浸漬させた後、蒸留水で洗浄した。
【0043】1−エチル−3−ジメチルアミドプロピル
カルボジイミドを使用して、このアクリル酸がグラフト
されたフィルムにポリエチレンイミンを共有結合させた
点を除けば、フィルムを実施例2と同様に、ポリエチレ
ンイミンをリンカー分子に用いてヘパリンと反応させ
た。
【0044】
【評価1】上記実施例1品と比較例1、2品にコーティ
ングしたヘパリンについて以下の評価を行った。
【0045】<XPSによる固定化ヘパリンの検出>グ
ラフトされたアクリル酸およびリンカー分子であるポリ
エチレンイミンを介して、ポリカーボネート基材上に固
定されたヘパリンの存在を確認するため、本発明により
得られたポリカーボネートフィルムの表面をX線光電子
分光分析(XPS)により解析した。
【0046】実施例品および比較例品の結果を図2に示
す。
【0047】ヘパリンは硫酸化部位を有するため、これ
に由来する硫黄元素を検出することによって、ヘパリン
が基材の表面に固定されたことを確認できる。
【0048】図2に示すように、実施例1品のフィルム
表面は、比較例品と比べ2倍以上の0.04以上の高い
硫黄含量を有することが確認された。
【0049】すなわち、実施例1品は比較例よりもヘパ
リンの固定密度(量)が多いことを意味する。
【0050】これらの相違は、実施例1品、比較例1、
2品のいずれも、リンカー分子とヘパリンとの結合は同
条件を用いて反応させていることから、ポリカーボネー
ト基材への官能基の導入方法、導入量、および導入され
た官能基とリンカー分子の結合の相違のみによって生じ
たものである。
【0051】したがって、プラズマ照射技術を用いたア
クリル酸のグラフト分子鎖構造を有する本発明のヘパリ
ン化方法は、硫黄含有量から明かであるように、ヘパリ
ンの表面被覆率が最も高いことから、ヘパリンを高分子
表面に固定するための最も優れた手法である。
【0052】
【評価2】<ヘパリン化ポリカーボネートフィルムの溶
出試験>表面に固定化されたヘパリンの溶出特性および
生理活性の持続安定性を確認するため、ヘパリン化ポリ
カーボネートフィルム片(表面積;10×10mm)
は、50mlの生理食塩水あるいは牛血漿中において、
37℃で6時間攪拌された。攪拌後、フィルムは蒸留水
で十分に洗浄し乾燥させた。
【0053】<生理活性型ヘパリン固定量の定量>ポリ
カーボネートフィルム表面上に固定化されたヘパリンの
結合量は、第一化学薬品(株)製「テストチーム ヘパ
リンS」キットを用いることにより、血液凝固系酵素で
ある第Xa 因子の活性阻害を指標として算出した。実施
例および比較例の結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】表1に示すように、プラズマ照射技術を用
いて基材処理を行った実施例1品のヘパリン化フィルム
は、インキュベート前のヘパリン固定量(初期活性)が
比較例と比べて高い値を示したばかりでなく、37℃で
生理食塩水あるいは牛血漿に6時間接触させた後におい
ても、高い抗血液凝固性を維持した。
【0056】一方、比較例1、2品では、固定化された
ヘパリンの生理活性が、経時的に著しく低下することが
明白である。従って、これらヘパリン固定量および安定
性の大きな相違は、リンカー分子を基材表面に架橋する
ための基材処理方法の違いのみによって現れたものであ
り、プラズマ照射技術を利用した本発明が、ヘパリン固
定化の最も有効な手段であることが示された。
【0057】
【実施例2】本発明の有効性をさらに確認するべく上記
実施例1における装置や条件等を以下に変えた実施例を
行った。
【0058】・プラズマ装置:ULVAC製 RFS0
02高周波電源、MBX002Aマッチングボックス、
AMC02Aオートマッチングコントローラのユニット ・反応チャンバー:円筒横型、φ120×300mm ・(ヘパリン化条件は同一) ・入射電力:可変(20、30、50W) ・照射時間:10秒 この結果、坑血栓被膜の表面部分におけるXPSによる
硫黄含量S2p/C1sが0.049で且つ坑ファクタ
ーXa活性による初期固定化量が40×10ー3IU/c
2 以上、安定性試験(6h)の生理食塩水、牛血漿と
もに40×10ー3IU/cm2 以上であった。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、血液接触材料表面に高
密度、且つ高活性であって量、質とともに高位の抗血栓
性多糖類を導入した高分子材料からなる医療用具を提供
でき、高い抗血栓性および抗血液凝固性による著しく向
上された耐久性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の医療用具の構成を示すための表面部位
断面の模式図である。
【図2】評価1の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基体 2 アニオン性グラフト分子 3 リンカー分子 4 坑血栓性多糖類
フロントページの続き (72)発明者 ヤン ヨハンソン 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術院 物質工学工業技術研究所内 (72)発明者 村松 和明 滋賀県蒲生郡蒲生町川合10番地の1 京セ ラ株式会社滋賀工場内 (72)発明者 下唐湊 俊彦 滋賀県蒲生郡蒲生町川合10番地の1 京セ ラ株式会社滋賀工場内 (72)発明者 藤沢 章 京都府京都市伏見区竹田鳥羽殿町6番地 京セラ株式会社内 Fターム(参考) 4C081 AB32 AB33 AB34 BA02 BA05 BA06 CA021 CA031 CA062 CA082 CA201 CC03 CC06 CC07 CC08 CD052 CD062 CD072 DC03 DC04 DC05 DC06 EA05 EA06 EA15

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】医療用具の基体をなす高分子材料の表面
    に、アニオン性グラフト分子を重合し、このグラフト層
    上にカオチン性高分子よりなるリンカー分子を介して血
    液接触表面をなす坑血栓性多糖類をコーティングするこ
    とにより坑血栓被膜を形成してなり、この坑血栓被膜の
    表面部分におけるXPSによる硫黄含量S2p/C1s
    が0.040以上で且つ坑ファクターXa活性による初
    期固定化量が40×10ー3IU/cm2 以上であること
    を特徴とする抗血栓性多糖類をコーティングした高分子
    材料からなる医療用具。
  2. 【請求項2】アニオン性グラフト分子とカチオン性リン
    カー分子が、主にイオン結合により固定された請求項1
    記載の医療用具。
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