JP2000271761A - 電縫鋼管、その製造方法および製造装置 - Google Patents

電縫鋼管、その製造方法および製造装置

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JP2000271761A
JP2000271761A JP11081571A JP8157199A JP2000271761A JP 2000271761 A JP2000271761 A JP 2000271761A JP 11081571 A JP11081571 A JP 11081571A JP 8157199 A JP8157199 A JP 8157199A JP 2000271761 A JP2000271761 A JP 2000271761A
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welding
steel pipe
electric resistance
cooling
open pipe
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JP11081571A
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Tatsuhiko Uezono
龍彦 上薗
Yasuhiko Arii
保彦 有井
Tomotaka Hayashi
智隆 林
Keisuke Ichiiri
啓介 一入
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高周波法を用いて電縫鋼管を製造する際に、
ポストパニーラを用いた熱処理を行わないと、溶接部の
硬化を確実に防止できない。 【解決手段】 鋼帯を管状にロール成形してオープンパ
イプ8とし、オープンパイプ8の両エッジ部を突き合わ
せて高周波抵抗誘導溶接により接合した後に2スタンド
の3ロール式レデューサ6を用いた冷間絞り圧延と、1
セットの2ロール式定径機7を用いた定径加工とからな
る整形加工を行う電縫鋼管0の製造方法である。高周波
抵抗誘導溶接は、予熱機2および溶接機3により、溶接
温度を一定のままで、下記(1) 式で規定される熱投入電
力密度が2.5 kV・A/(cm3/sec) 以上である入熱により溶
接した後に、放冷装置4によるマルテンサイト率が50%
未満となる所定時間以上の放冷と、水冷装置5による急
冷とにより冷却することにより、行われる。 【数1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電縫鋼管、その製
造方法および製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知のように、電気抵抗溶接鋼管(本明
細書では「電縫鋼管」と略称する。)の製造時に用いら
れる電気抵抗溶接法は、接合時に使用する電流の周波数
により、直流法、低周波法(0.5〜40 kHz程度) および高
周波法(200〜450 kHz 程度) に分類される。このうち、
高周波法は、低周波法に比較して、ステッチ効果がない
ために高速製管が可能であること、消費電力が極めて小
さいこと、給電時の電流密度の制約が少ないために帯鋼
の前処理が不要であること、電極輪による加圧が不要で
あるために薄肉管の製造が容易であること、さらには、
高炭素当量材や合金鋼さらには非鉄金属等の広範囲の材
質に適用できることといった特徴を有する。このため、
近年では、電気抵抗溶接鋼管の電気抵抗溶接法として、
高周波法が多用される。
【0003】この高周波法では、素材である帯鋼を一群
の成形ロールによって円筒状に連続成形したオープンパ
イプを、高周波電流を通電されることにより加熱電流を
誘起するワークコイルの内部に導き、この加熱電流によ
るジュール熱によって、オープンパイプの両エッジ部を
集中的に加熱した後にスクイズロールで加圧することに
より、両エッジ部を接合する。そして、両エッジ部を接
合した後に整形加工を行うことにより、所望の寸法を有
する電縫鋼管とされる。
【0004】高周波法を用いた溶接では、溶接部である
オープンパイプの両エッジ部は、高周波による電気抵抗
誘導溶接における高周波電流が有する近接効果、高周波
電流がオープンパイプの表面に集中する表皮効果、さら
には、オープンパイプの外面に誘起された電流の一部が
内面を還流することにより生じる無効電流を低減するた
めにオープンパイプの内部に挿入されるインピーダ(磁
性酸化物)の効果を利用して、局部的かつ集中的に加熱
される。このため、溶接部であるオープンパイプの両エ
ッジ部は、不可避的に急熱および急冷されて焼き入れ組
織を生じ、硬化が助長される。このようにして、溶接部
に硬化が生じると溶接部の靱性が劣化し、溶接後の定径
加工時や矯正時等に脆化割れを発生してしまう。
【0005】このため、従来は、シームアニーラ等の溶
接後局部熱処理装置 (ポストアニーラ) を用いて溶接部
の熱処理を行うことにより、溶接部の組織改善を図って
いた。しかしながら、このポストアニーラを溶接機の下
流工程に配置することには、以下に列記する問題およ
びがあった。
【0006】ポストアニーラを生産工程中に配置する
ことに伴って生産工程が長くなり、相応のスペースが必
要となる。このため、既存の生産工程の途中にポストア
ニーラを追加するのは極めて困難である。どうしてもポ
ストアニーラを追加するには、電縫鋼管の生産工程全体
を別の場所に移設するしかなく、設備費の著しい上昇は
免れない。
【0007】溶接後の溶接部、つまりシームは必ずし
も真上を向いていない。このため、シーム追従設備や追
従させるための作業要員が必要となり、さらなる設備費
増加やコストアップを招いてしまう。そこで、従来よ
り、設備費増加やコストアップをできるだけ抑制しなが
ら、溶接部の硬化を防止する発明が提案されている。
【0008】例えば、特公昭59−48709 号公報には、C
当量が0.55% (本明細書においては特にことわりがない
限り「%」は「重量%」を意味するものとする。) 以上
の鋼からなるオープンパイプを、周波数が60〜70 kHzで
ある溶接電流を用いて溶接部の冷却速度を調整すること
により、溶接後の冷却時にベイナイト領域を通過させる
とともにMs点を通過させる発明が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特公昭59−48
709 号公報により提案された発明は、周波数を限定した
溶接電流で溶接までを行うため、溶融温度に達するのに
必要な被加熱材の単位体積および単位時間当たりの入熱
量は基本的に同じである。また、加熱後の冷却速度は、
空冷域においては、鋼管自身が有する保温効果のみによ
り決定される。ここで、CCT線図の様相は材質特有の
ものであるから、材質が異なれば当然CCT線図の様相
も異なる。このため、この発明では、材質によっては、
溶接後の冷却時にベイナイト領域を通過させ、かつMs点
を通過させることができないことがあり、溶接部の硬化
を確実に防止できない。
【0010】したがって、この発明は、C当量が0.55%
以上である鋼からなるオープンパイプにしか適用でき
ず、C当量が0.55%未満である鋼からなるオープンパイ
プの場合には溶接部の硬化を確実に防止することができ
ない。
【0011】また、電縫鋼管は、程度の差こそあれ、い
かなる材質のものであっても溶接部の硬度は母材の硬度
よりも高くなる。硬度の低い母材部の増肉に比べて硬度
の高い溶接部の増肉は少ないため、溶接部および母材そ
れぞれの硬度の差が大きくなればなるほど、溶接後の定
径加工時や矯正時に増肉差を生じ、最終製品の肉厚分布
が悪化してしまう。
【0012】ここに、本発明の目的は、高周波法を用い
て電縫鋼管を製造する際に、オープンパイプの溶接後の
ポストアニーラを設けなくとも、溶接部の硬化を確実に
防止することである。また、本発明の目的は、溶接部の
硬化を確実に防止することにより、最終製品の肉厚分布
の悪化を防止することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ポストア
ニーラを用いることなく、溶接部の硬化を確実に防止す
ることができる手段について鋭意検討を重ねた結果、従
来の技術のように高々2KV・A/(cm3/sec) 程度の熱投入
電力密度で溶接するのではなく、下記(1) 式で規定され
る熱投入電力密度が2.5 KV・A/(cm3/sec) 以上出力可能
な電源装置を有する溶接機を用いて、溶接温度を一定と
した状態で、熱投入電力密度が2.5 KV・A/(cm3/sec) 以
上となるように電気抵抗誘導溶接を行った後、材料に応
じたCCT曲線上マルテンサイト率50%未満、残部はパ
ーライト、フェライト、ベイナイトまたはこれらの混粒
組織となるような所定時間、具体的には5秒間以上の放
冷を行い、その後に急冷を行うことにより、ポストアニ
ーラを用いることなく、溶接部の硬化を確実に防止で
き、これにより、最終製品の肉厚分布の悪化を防止でき
ることを新規に知見し、さらに検討を重ねて本発明を完
成した。
【0014】ここに、本発明は、高周波抵抗誘導溶接に
よる溶接部の熱影響部の幅が3.5mm以上であることを特
徴とする。この本発明により、外径が15mm以上100 mm以
下、外径Dに対する肉厚tの比 (t/D) が0.2 以上の
厚肉小径電縫鋼管も提供できる。
【0015】また、別の面からは、本発明は、素材であ
るオープンパイプの両エッジ部を突き合わせて、高周波
抵抗誘導溶接した後にマルテンサイト率が50%未満とな
る所定時間以上の放冷と急冷とにより冷却することによ
り溶接部の熱影響部の幅を3.5mm 以上としてから、整形
加工を行うことを特徴とする電縫鋼管の製造方法であ
る。
【0016】また、別の面からは、本発明は、素材であ
るオープンパイプの両エッジ部を突き合わせて、下記
(1) 式で規定される熱投入電力密度が2.5 kV・A/(cm3/s
ec) 以上である入熱により溶接温度を一定のままで溶接
した後にマルテンサイト率が50%未満となる所定時間以
上の放冷と急冷とにより冷却する高周波抵抗誘導溶接に
よって接合してから、整形加工を行うことを特徴とする
電縫鋼管の製造方法である。
【0017】
【数2】
【0018】ただし、Ep はワークコイルのプレート電
圧(kV)を示し、Ip はワークコイルのプレート電流(A)
を示す。また、A はオープンパイプの断面積(cm2) を
示し、A=π×t× (D−t)×10-2により求められ
る。ここで、Dはオープンパイプの外径 (cm) を示し、
tはオープンパイプの肉厚 (cm) を示す。さらに、Vは
溶接速度(cm/sec)を示し、nは予熱機および溶接機の電
源装置の使用数を示す。
【0019】上記の本発明にかかる電縫鋼管の製造方法
では、高周波抵抗誘導溶接を行う前にオープンパイプを
予熱するとともに、熱投入電力密度は予熱時における熱
投入電力密度を加えた合計の熱投入電力密度であること
が、望ましい。
【0020】これらの本発明にかかる電縫鋼管の製造方
法では、高周波抵抗誘導溶接が、オープンパイプの内部
にインピーダを挿入しないで行われることが、望まし
い。上記の本発明にかかる電縫鋼管の製造方法では、整
形加工が、2スタンド以上の3ロール式レデューサを用
いた冷間絞り圧延と、1セット以上の2ロール式定径機
を用いた定径加工とを含むことが、例示される。
【0021】また、別の観点からは、本発明は、少なく
とも、2.5 kV・A/(cm3/sec) 以上の熱投入電力密度を発
生する電源装置を有し、オープンパイプを溶接する溶接
機と、溶接機により溶接された鋼管を5秒間以上放冷す
る放冷装置と、放冷装置により放冷された鋼管を常温ま
で急冷する急冷装置とを備えることを特徴とする電縫鋼
管の製造装置である。
【0022】この本発明にかかる電縫鋼管の製造装置で
は、電源装置の周波数が150 〜350kHz であることが望
ましい。また、上記に本発明にかかる電縫鋼管の製造装
置は、さらに、溶接機により溶接される前のオープンパ
イプを予熱する予熱機を備えることが望ましく、この場
合、予熱機の電源装置の周波数が20〜150 kHz であるこ
とが例示される。
【0023】さらに、これらの本発明にかかる電縫鋼管
の製造装置が、さらに、水冷装置により水冷された鋼管
に、冷間で絞り圧延を行う2スタンド以上の3ロール式
レデューサと、絞り圧延を行われた鋼管に定径加工を行
う1セット以上の2ロール式定径機とを備えることが、
望ましい。
【0024】なお、特開平1−241386号公報、同2−29
9782号公報または同2−299783号公報には、オープンパ
イプの両エッジ部の突き合わせ溶接に先立って、オープ
ンパイプの溶接部近傍をいわゆるキューリ点以上に予熱
する発明が提案されている。しかし、これらの発明は、
いずれも、オープンパイプの両エッジ部をいわゆるキュ
ーリ点以上に均一に予熱することによって溶接欠陥およ
びフラッシュの発生を防止するものであり、溶接部の硬
化防止を図るものではない。
【0025】また、特許第2682356 号、同第2661491 号
さらには同第2682387 号には、高い外径縮小率によって
冷間絞り圧延を行い、外径Dに対する肉厚tの比(t/
D)が高い小径厚肉鋼管を製造する発明が提案されてい
る。しかし、これらの発明は、得られる製品の外径寸法
精度を向上させるものであり、高い外径縮小率で冷間絞
り圧延を行えば、溶接部硬度が高い高炭素鋼 (0.30%C
以上) の場合には溶接部横切れが発生してしまい、製品
にはなり得ない。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる電縫鋼管、
その製造方法および製造装置の実施の形態を、添付図面
を参照しながら詳細に説明する。まず、本発明にかかる
電縫鋼管の製造装置および製造方法の実施形態を、説明
する。
【0027】図1(a) は、本実施形態の電縫鋼管0の製
造装置1の説明図である。同図に示すように、本実施形
態の製造装置1は、予熱機2と、溶接機3と、放冷装置
4と、急冷装置5と、2スタンドの3ロール式レデュー
サ6と、1組の2ロール式定径機7とを有する。以下、
これらの構成要素について順次説明する。
【0028】〔予熱機2〕図1において、素材である鋼
帯に公知のロール成形を行うことにより得られる管状の
オープンパイプ8が、予熱機2のワークコイル2aに導か
れる。
【0029】予熱機2は、オープンパイプ8を所望の温
度に加熱することができる公知の加熱機を用いればよ
く、特定の型式の加熱機には限定されない。本実施形態
では、ワークコイル2aおよび電源装置2bをともに有する
公知の高周波誘導加熱式の加熱機を用いた。
【0030】予熱機2のワークコイル2aは電源装置2bか
ら高周波電流を通電されることにより加熱電流を誘起
し、この加熱電流によるジュール熱によって、後述する
溶接機3により電気抵抗誘電溶接を行われる前のオープ
ンパイプ8の両エッジ部を局所的かつ集中的に予熱す
る。
【0031】本実施形態では、予熱機2の電源装置2bに
設定する周波数は、高周波として一般的な値よりも低い
値である20〜150 KHz に設定した。また、本実施形態で
は、予熱機2の電源装置2bによる熱投入電力密度と、後
述する溶接機3の電源装置3bによる熱投入電力密度との
合計を、2.5 kV・A/(cm3/sec) 以上に設定した。
【0032】なお、この予熱機2は設けずに、後述する
溶接機3のみにより高周波抵抗誘導溶接を行うこととし
てもよい。図1(b) は、予熱機2を設けない場合の製造
装置1' の説明図である。この場合、後述するように、
オープンパイプ8の内部にインピーダを挿入しない。本
実施形態の予熱機2は、以上のように構成される。
【0033】〔溶接機3〕溶接機3は、予熱機2の直下
流に配置される。溶接機3はワークコイル3a、電源装置
3bおよびスクイズロール9を有する。ワークコイル3a
は、電源装置3bから高周波電流を通電されることにより
加熱電流を誘起する。
【0034】本実施形態では、予熱機2により両エッジ
部を予熱されたオープンコイル8は、溶接機3のワーク
コイル3aの内部に導かれ、ワークコイル3aに誘起された
加熱電流によるジュール熱によって、オープンパイプ8
の両エッジ部が、さらに局所的かつ集中的に加熱され
る。
【0035】この溶接機3の電源装置3bは、予熱機2を
設けない場合、(1) 式により規定される熱投入電力密度
を2.5 kV・A/(cm3/sec) 以上発生する。例えば、外径
D:50.8mm、肉厚t:5.0 mmであるオープンパイプ8を
50m/min の溶接速度で溶接する場合には、(1) 式におけ
るA=π×t× (D−t)=7.19cm2 、V=50m/min =
83.3cm/secであるから、 (A×V) は 599.2 cm3/secと
なる。したがって、上記(1) 式から、 (Ep ×Ip)=14
98kV・A となるため、溶接機3の電源装置3bは、ワーク
コイル3aに、 (Ep ×Ip)が1498kV・A 以上となるプレ
ート電圧Ep(kV)およびプレート電流Ip(A)を発生す
る。
【0036】なお、予熱機2を設けずに電源装置3bが1
基の場合には、1基で (Ep ×Ip)が1498kV・A 以上と
なるプレート電圧Ep(kV) およびプレート電流Ip(A)を
発生すればよく、また、予熱機2を設けて2基の場合に
は、例えば、 749kV・A 以上となるプレート電圧Ep(k
V) およびプレート電流Ip(A)を発生する電源装置2b、3
bを2基並列に設ければよい。電源装置3bの周波数は、
高周波として一般的な値であればよく、本実施形態では
150 〜350 KHz に設定した。
【0037】ワークコイル3aの下流には、一対のスクイ
ズロール9が設けられる。スクイズロール9は、ワーク
コイル3aにより加熱されたオープンパイプ8の両エッジ
部を、適宜加圧力で加圧することにより、両エッジ部を
接合する。このようにして、溶接機3は、オープンパイ
プ8の両エッジ部を突き合わせて、高周波抵抗誘導溶接
により接合する。本実施形態では、溶接機3は以上のよ
うに構成される。
【0038】〔放冷装置4〕スクイズロール9の直下流
には、放冷装置4が設けられる。溶接機3およびスクイ
ズロール9により溶接された鋼管0’は、放冷装置4に
導かれる。
【0039】本実施形態の放冷装置4は、鋼管0’を搬
送する搬送工程により構成され、鋼管0’の溶接部を放
冷または空冷する。本実施形態の放冷装置4は、鋼管
0’を少なくとも5秒間以上放冷することができる装置
である。本実施形態では、放冷装置4は以上のように構
成される。
【0040】〔急冷装置5〕放冷装置4の直下流には、
急冷装置5が設けられる。本実施形態では、急冷装置と
して、鋼管0’を完全に水没させることにより鋼管0’
を急冷する水冷装置を用いた。水冷装置5は、放冷装置
4により5秒間以上放冷された鋼管0’を、常温まで水
冷する。本実施形態では、水冷装置5は以上のように構
成される。
【0041】〔3ロール式レデューサ6、2ロール式定
径機7〕水冷装置5の直下流には、2スタンドの3ロー
ル式レデューサ6と、1セットの2ロール式定径機7と
が設けられる。図2は、本実施形態で用いる3ロール式
レデューサおむすび型キャリバーを模式的に示す説明図
である。
【0042】この3ロール式レデューサ6は、水冷装置
5により水冷された鋼管0’に、特許第2682356 号、同
第2661491 号または同第2682387 号により提案された冷
間圧延方法を用いて、冷間で高い外径縮小率で絞り圧延
を行う。また、2ロール式定径機7は、3ロール式レデ
ューサ6により絞り圧延を行われた鋼管0’に、定径加
工を行う。
【0043】これらの2スタンドの3ロール式レデュー
サ6と、1セットの2ロール式定径機7とのそれぞれの
構成については、特許第2682356 号、同第2661491 号ま
たは同第2682387 号により公知であるため、これ以上の
説明は省略する。
【0044】なお、本実施形態では2スタンドの3ロー
ル式レデューサ6と、1セットの2ロール式定径機7を
用いたが、本発明はこの実施の形態には限定されず、3
ロール式レデューサ6を3スタンド以上設け、2ロール
式定径機7を2セット以上設けることとしてもよい。
【0045】本実施形態の製造装置1は、以上のように
構成される。次に、この製造装置1により、電縫鋼管0
が製造される状況、すなわち本実施形態の製造方法を経
時的に説明する。
【0046】〔溶接工程〕本実施形態では、図1(a) に
示すように、まず、予熱装置2によりオープンパイプ8
の両エッジ部が局所的かつ集中的に予熱され、引き続い
て、溶接装置3により予熱されたオープンパイプ8の両
エッジ部が局所的かつ集中的に加熱される。そして、ス
クイズロール9により、両エッジ部が適宜加圧力で加圧
されることにより、オープンパイプ8の両エッジ部が、
突き合わされて高周波抵抗誘導溶接される。
【0047】この高周波抵抗誘導溶接は、溶接温度を一
定としたままで、(1) 式で規定されるとともに予熱装置
2による予熱時における熱投入電力密度を加えた合計の
熱投入電力密度が2.5 kV・A/(cm3/sec) 以上となる入熱
により、行われる。
【0048】溶接温度を一定にするとは、高周波電流が
流れる領域を溶接線を中心に拡大することにより、投入
電力を増加しても溶接温度を上昇させないことを意味す
る。また、本実施形態における高周波抵抗誘導溶接は、
オープンパイプ8の内部に、インピーダを挿入しないで
行われる。
【0049】図3は、C含有量が0.20%または0.45%の
オープンパイプ8を素材とし、オープンパイプ8の内部
にインピーダを挿入して溶接機3による加熱を行った場
合と、オープンパイプ8の内部にインピーダを挿入せず
に溶接機3による加熱を行った場合と、オープンパイプ
8の内部にインピーダを挿入して比較的周波数の低い予
熱機2 (周波数:50 kHz) による予熱と溶接機3による
加熱とを行った場合とについて、熱投入電力密度 (入熱
量) と溶接部のピーク硬度との関係を調べた結果を、ま
とめて示すグラフである。
【0050】予熱機2による予熱と溶接機3による加熱
とを行った場合は、予熱機2の電源装置2bと溶接機3の
電源装置3bとを用いているため、熱投入電力密度は、下
記(2) 式により計算される。
【0051】
【数3】
【0052】(2) 式において、Ep1は予熱機2のワーク
コイル2aのプレート電圧(kV)を示し、Ip1は予熱機2の
ワークコイル2aのプレート電流(A) を示す。また、Ep2
は溶接機3のワークコイル3aのプレート電圧(kV)を示
し、Ip2は溶接機3のワークコイル3aのプレート電流
(A) を示す。
【0053】また、熱投入電力密度(入熱量)は、溶接
温度が一定になるように、溶接機3のワークコイル3aの
プレート電圧Ep2を調整することにより、制御した。ま
た、予熱機2を用いた場合には、予熱機2による予熱量
を変更することにより、合計の熱投入電力密度(入熱
量)を変更した。
【0054】図3に示すグラフにおいて、オープンパイ
プ8の内部にインピーダを挿入して比較的周波数の低い
予熱機2による予熱と溶接機3による加熱とを行った場
合は、予熱機2の周波数が比較的低いために、オープン
パイプ8の両エッジ部の電流浸透深さΔ (Δ=5.03×√
[(ρ/(f×μ)] cm 、μ:比透磁率、ρ:固有抵抗 (μ
Ωcm) 、f:周波数(Hz)) が大きくなる特性を利用し
て、オープンパイプ8の両エッジ部を、オープンパイプ
8の内部にインピーダを挿入して溶接機3による加熱を
行った場合よりも、幅広く加熱することができる。この
ため、得られる電縫鋼管0の溶接部における熱影響部は
拡大される。
【0055】また、オープンパイプ8の内部にインピー
ダを挿入せずに溶接機3による加熱を行った場合は、誘
導電流がオープンパイプ8の両エッジ部に集中する特性
が緩和され、高周波溶接のみで非効率的にエッジ部を、
オープンパイプ8の内部にインピーダを挿入して溶接機
3による加熱を行った場合よりも、幅広く加熱すること
ができる。このため、得られる電縫鋼管0の溶接部にお
ける熱影響部は拡大される。
【0056】図3に示すグラフから、溶接機3だけによ
り高周波抵抗誘導溶接を行った場合の入熱量に比較し
て、予熱機2による予熱と溶接機3による加熱とを行う
か、若しくは、オープンパイプ8にインピーダを挿入し
ないで溶接機3による加熱を行って従来の入熱量(2kV
・A/(cm3/sec) 程度)を超えた大入熱を行うことによ
り、溶接部のピーク硬度が著しく低下することがわか
る。
【0057】また、図3に示すグラフから、特に、オー
プンパイプ8が0.20%炭素鋼であるときには2.5 kV・A/
(cm3/sec) 以上の熱投入電力密度であること、または、
オープンパイプ8が0.45%炭素鋼であるときには3.2 kV
・A/(cm3/sec) 以上の熱投入電力密度であることによ
り、溶接部のピーク硬度は母材の硬度と略同程度まで顕
著に低下することがわかる。
【0058】そこで、本実施形態では、図1(a) に示す
ように、予熱機2および溶接機3を用いるとともにオー
プンパイプ8の内部にインピーダを挿入することによ
り、(1) 式により規定される熱投入電力密度が2.5 kV・
A/(cm3/sec) 以上である入熱により溶接温度を一定のま
まで、高周波抵抗誘導溶接を行うことにより、溶接部に
おける熱影響部を拡大する。
【0059】なお、図1(b) に示すように、溶接機3だ
けを用いるとともにオープンパイプ8の内部にインピー
ダを挿入しないことにより、(1) 式により規定される熱
投入電力密度が2.5 kV・A/(cm3/sec) 以上である入熱に
より溶接温度を一定のままで、高周波抵抗誘導溶接を行
うことにより、溶接部における熱影響部を拡大してもよ
い。これにより、溶接部のピーク硬度が母材並みの硬度
に低下する。
【0060】〔冷却工程〕本実施形態では、溶接機3に
よる高周波抵抗誘導溶接を行われた鋼管0’を放冷装置
4により5秒間以上放冷し、引き続いて、急冷装置5に
より常温まで急冷することにより、鋼管0’を冷却す
る。
【0061】本実施形態では、溶接工程により、熱投入
電力密度が2.5 kV・A/(cm3/sec) 以上である大入熱の溶
接が行われるために鋼管0’の溶接部の保温効果が拡大
される。このため、放冷装置4による放冷時の急激な温
度低下が緩和され、確実に放冷が行われる。
【0062】図4は、1200℃に1秒間保持したS45C
からなる鋼管0’を、放冷装置4および急冷装置5によ
り冷却した際の各種冷却曲線〜を示すグラフであ
る。同図に示すグラフにおいて、各冷却曲線〜の傾
きが緩やかな部分は放冷装置4による放冷が行われてい
ることを示し、各冷却曲線〜の傾きが急な部分は急
冷装置5による急冷が行われていることを示す。また、
各冷却曲線〜にしたがって冷却された鋼管0’の溶
接部のピーク硬度は、:HV773 、:HV338 、HV31
9 、HV318 であった。
【0063】図4に示すように、冷却曲線にしたがっ
て冷却されることにより製造される従来の高周波抵抗誘
導溶接法 (熱投入電力密度:2kV・A/(cm3/sec) 程度、
予熱機2:不使用、インピーダ:使用) では、高周波抵
抗誘導溶接後に放冷を行っても、溶接部は急激に温度低
下してしまう。急激な温度低下に伴ってMs点を通過して
マルテンサイト変態を伴い、マルテンサイトが析出す
る。このため、溶接部の硬度は、Hv:773 程度に上昇し
てしまう。
【0064】これに対し、冷却曲線〜にしたがって
冷却されることにより製造される本実施形態の高周波抵
抗誘導溶接法 (熱投入電力密度:2.5kV・A/(cm3/sec)
以上、予熱機2:使用、インピーダ:使用) によれば、
鋼管0’の溶接部の保温効果により、放冷装置4により
溶接部に確実に放冷を行うことができる。このため、ベ
イナイト、パーライトまたはフェライト生成領域を冷却
され、マルテンサイト変態率が50%未満となる点、すな
わちベイナイト、パーライト、フェライトまたはそれら
の混粒組織が50%以上となる点から、溶接部の硬度は、
HV338 〜HV318と母材の硬度並みに低下する。
【0065】図5は、図3におけるテストデータの一部
について、放冷時間と溶接部のピーク硬度との関係を示
すグラフである。なお、予熱機2および溶接機3による
総入熱量は、0.20%炭素鋼の場合には2.5 kV・A/(cm3/s
ec) 以上に設定し、0.45%炭素鋼の場合には3.2 kV・A/
(cm3/sec) 以上に設定した。
【0066】図5に示すグラフから、0.20%炭素鋼の場
合は、2.5 kV・A/(cm3/sec) 以上の熱投入電力密度の溶
接を行った後に5秒間以上の放冷時間を確保すれば、溶
接部の硬度が母材の硬度と同程度にまで低下することが
わかる。また、0.45%炭素鋼の場合は、3.2 kV・A/(cm3
/sec) 以上の熱投入電力密度の溶接を行った後に22秒間
以上の放冷時間を確保しないと、溶接部の硬度が母材の
硬度と同程度にまで低下しないことがわかる。これは、
鋼管0’の材質によりCCT曲線の様相が異なるからで
ある。
【0067】したがって、本実施形態では、溶接機3に
よる高周波抵抗誘導溶接を行われた鋼管0’を放冷装置
4により5秒間以上放冷する。そして、この5秒間以上
の放冷により鋼管0’のマルテンサイト率を50%未満に
低減することができるため、この放冷に引き続いて、水
冷装置5により常温まで冷却する。
【0068】(整形工程〕このようにして、溶接工程お
よび冷却工程を終了した鋼管0’に対して、整形工程が
行われる。本実施形態における整形工程は、2スタンド
の3ロール式レデューサ6を用いた冷間絞り圧延と、1
セットの2ロール式定径機7を用いた定径加工とによ
り、行われる。
【0069】特許第2682356 号、同第2661491 号または
同第2682387 号にも開示されているように、図2に示す
2スタンドの3ロール式レデューサ6は、噛み出し疵の
発生を防止するために、いわゆる「おむすび型キャリバ
ー部」で高外径縮小率で冷間絞り圧延を行い、最終パス
で真円成形を行う。
【0070】このように、本実施形態では高外径縮小率
で冷間絞り圧延を行うために、母管ままでは溶接不可能
な、外径が15mm以上100 mm以下、外径Dに対する肉厚t
の比(t/D) が0.2 以上と高い小径厚肉電縫鋼管を整
形することができるとともに、予熱機2および溶接機3
により大入熱溶接を行った後に放冷するために溶接部の
硬度が母材の硬度と同程度に低下する。このため、本実
施形態によれば、硬度の高い熱影響部は長手方向に伸び
難いことに起因して冷間絞り時に熱影響部が円周方向に
脆性破壊を起こす、いわゆる溶接部横切れが発生しな
い。
【0071】図6は、従来の高周波抵抗誘導溶接法 (熱
投入電力密度:2kV・A/(cm3/sec)程度、予熱機2:不
使用、インピーダ:使用) による従来の溶接工程および
冷却工程により製造された電縫鋼管について、高外径縮
小率での冷間絞り圧延が可能な3ロールレデューサを用
いて冷間絞り圧延を行った場合の、外径縮小率と溶接部
横切れの発生との関係を、C量毎に示すグラフである。
【0072】図6に示すグラフから、C量が高いほど、
溶接部の硬度が高まるために横切れが発生し易くなるこ
とがわかる。したがって、C量の高い材料では高い外径
リダクションを作用させることができないことがわか
る。
【0073】一方、表1には、従来の高周波抵抗誘導溶
接法 (熱投入電力密度:2kV・A/(cm3/sec) 程度、予熱
機2:不使用、インピーダ:使用) と、本実施形態の高
周波抵抗誘導溶接法 (熱投入電力密度:2.5kV・A/(cm3
/sec) 以上、予熱機2:使用、インピーダ:使用) によ
って、0.45%炭素鋼からなる溶接された外径21.7mmの電
縫鋼管に冷間絞り圧延を行って、外径19.1mm、肉厚3.0
mmの鋼管とした場合(サイジングリダクション12%)に
ついて、横切れの発生個数を示す。
【0074】
【表1】
【0075】表1に示すように、本実施形態の高周波抵
抗誘導溶接法によれば、高炭素鋼である0.45%炭素鋼で
あっても、横切れが発生しないことがわかる。また、一
般的に、硬度の高い熱影響部は、肉厚方向にも増肉し難
いとともに冷間絞り圧延時の母材部の増肉程度より小さ
いため、冷間絞り圧延後の肉厚分布は不均一になり易
い。しかし、本実施形態によれば、溶接部および母材そ
れぞれの硬度が均一化されるために、冷間絞り圧延時の
増肉率も均一となり、製品の肉厚分布が均一化される。
【0076】図7は、従来の高周波抵抗誘導溶接法 (熱
投入電力密度:2kV・A/(cm3/sec)程度、予熱機2:不
使用、インピーダ:使用) および冷却工程を経た後に、
3ロールレデューサにより12%の外径縮小率で外径を縮
小した場合の、母材部および溶接部それぞれの増肉率を
調査した結果を示すグラフである。
【0077】図7にグラフで示すように、溶接部の硬度
は母材部の硬度よりも高いため、母材部の増肉率よりも
溶接部の増肉率が低くなることがわかる。また、図7に
示すグラフから、溶接部の硬度が高い高炭素量の材料で
あるほど、母材部と溶接部との間の増肉率の差が大きく
なることもわかる。
【0078】これに対し、図8は、本実施形態の高周波
抵抗誘導溶接法 (熱投入電力密度:2.5kV・A/(cm3/se
c) 以上、予熱機2:使用、インピーダ:使用) および
冷却工程を経た後、3ロールレデューサにより12%の外
径縮小率で外径を縮小した場合の、母材部および溶接部
それぞれの増肉率を調査した結果を示すグラフである。
【0079】図8にグラフで示すように、本実施形態に
より溶接部の硬度を母材部の硬度と同程度にすることが
できたため、母材部と溶接部との間の増肉率の差を解消
できたことがわかる。
【0080】ここで、鋼管0’は、2スタンドの3ロー
ル式レデューサ6による冷間絞り圧延および真円成形を
行われるために、加工後の成品には、材料に応じて外径
差が不可避的に生じる。しかし、この外径差は、1セッ
トの2ロール式定径機7により、製品外径公差内に収ま
るように定径加工が行われることにより、修正される。
【0081】図9は、材料の違いによる外径差と2ロー
ル式定径機による外径調整との結果の一例を示すグラフ
である。図9にグラフで示すように、本実施形態でも用
いる2ロール式定径機7により、材質には関係なく、製
品外径公差内に収まるように定径加工が行われ、製品の
寸法精度が確保される。
【0082】このようにして、本実施形態の製造装置1
によれば、高外径縮小率で冷間絞り圧延を行うにもかか
わらず、高外径縮小を行わない一般的な製法で製造され
た電縫鋼管と同等の溶接部品質および寸法精度を有する
電縫鋼管0を、製造することができる。
【0083】図10は、製造された電縫鋼管0の溶接部近
傍を拡大して示す説明図である。なお、図10において、
符号10は溶接線を示す。同図に示すように、この電縫鋼
管0は、前述したように溶接工程により溶接部における
熱影響部が拡大され、高周波抵抗誘導溶接による溶接部
の熱影響部(本明細書では、A3 変態点以上に加熱され
る領域を意味する。)の幅、すなわち管断面の肉厚中心
厚さの地点における熱影響部の幅w1 が3.5mm 以上とな
る。
【0084】図11は、予熱機2による予熱および溶接機
3により加熱を行う図1(a) に示す本発明法と、溶接機
3だけにより加熱を行う従来法とにより製造された、外
径:54.0mm、厚さ:3.2 mmの0.21%C−1.43%Mn鋼と、
外径:60.5mm、厚さ:1.6 mmの0.17%C−1.25%Mn−0.
3 %Mo鋼とについて、溶接後の製品における溶接部の熱
影響部幅と、溶接部最高硬度との関係を示すグラフであ
る。
【0085】また、図12は、インピーダを挿入しないで
溶接機3により加熱を行う図1(b)に示す本発明法と、
インピーダを挿入して溶接機3により加熱を行う従来法
とにより製造された、外径:45.0mm、厚さ:3.2 mmの0.
21%C−1.43%Mn鋼と、外径:31.8mm、厚さ:2.3 mmの
0.22%C−0.65%Mn−0.3 %Cr鋼とについて、溶接後の
製品における溶接部の熱影響部幅と、溶接部最高硬度と
の関係を示すグラフである。
【0086】図11に示すグラフと、図12に示すグラフと
から、オープンパイプ8の両エッジ部の加熱から冷却ま
での履歴を示す一つの指標である熱影響部の幅w1 が拡
大されると、溶接部の硬度は材質には影響されずに低下
する傾向にあり、特に、熱影響部の幅w1 が3.5mm を越
えると、溶接部の硬度が顕著に低下することがわかる。
【0087】図11に示すグラフと、図12に示すグラフと
から、オープンパイプ8の両エッジ部の加熱方法によら
ず、溶接温度は一定のままで熱投入電力密度が2.5 kV・
A/(cm3/sec) 以上となるような大入熱の溶接、すなわち
従来の高周波溶接法における熱投入電力密度(2kV・A/
(cm3/sec) 程度)よりも大きな入熱の溶接を行い、所定
時間以上の放冷と急冷を行うことにより、3.5mm 以上の
幅w1 を有する熱影響部が形成される。
【0088】この熱影響部は、溶接部の硬度が母材の硬
度と同程度に、低下している。このように、本実施形態
によれば、以下に列記する効果〜が得られる。
【0089】ポストアニーラを用いずに、電縫鋼管、
特に靱性劣化を防止した電縫鋼管を製造することができ
る。 ポストアニーラを用いずに、一般的なサイズの電縫鋼
管と同程度の溶接部品質および寸法精度を有する高t/
D (20%以上) の電縫鋼管、特に小径厚肉電縫鋼管を製
造することができる。
【0090】ポストアニーラを用いずに、溶接部の硬
化が解消され、さらには靱性に優れた電縫鋼管を製造す
ることができる。 ポストアニーラを用いずに、冷間絞り圧延を含む整形
加工を行っても、いわゆる溶接部横切れを発生せず、さ
らに、肉厚寸法精度に優れた電縫鋼管、特に高t/D
(20%以上) サイズの小径厚肉電縫鋼管を製造すること
ができる。
【0091】
【実施例】図13は、脆化割れを発生し易い材料(S45
C)からなる電縫鋼管(外径38.1mm、厚さ3.0 mm)を用
いて、製管ままで90°および0°扁平試験を行った結果
を示すグラフである。
【0092】図13にグラフで示すように、熱投入電力密
度が2.5 kV・A/(cm3/sec) 未満で高周波抵抗誘導溶接さ
れることにより製造された電縫鋼管は、アズへん平高さ
が大きいことからも分かるように、加工性が悪く、整形
加工時に溶接部で脆化割れを発生した。
【0093】これに対し、熱投入電力密度が2.5kV・A/
(cm3/sec) 以上となるように予熱機2も使用して高周波
抵抗誘導溶接されることにより製造された電縫鋼管は、
アズへん平高さが小さいことからも分かるように、加工
性が優れ、整形加工時にも溶接部の脆化割れは発生しな
かった。
【0094】
【発明の効果】以上説明してきたように、請求項1〜請
求項11の発明によれば、溶接後にポストアニーラを用い
た熱処理を行うことなく、溶接ままで、以下に列記する
効果(i) 〜(vi)が得られる。
【0095】(i) 電縫鋼管の矯正時や加工時等に発生す
る、溶接部の脆化割れや横切れを確実に防止することが
でき、溶接品質が優れた電縫鋼管を提供できる。 (ii)この(i) 項の効果を、溶接後にポストアニーラを用
いた熱処理を行わなくとも、得ることができる。
【0096】(iii) 高外径縮小が可能な3ロールレデュ
ーサを用いて冷間絞り圧延を行っても、横切れや偏肉が
発生しないため、高外径縮小かつ増肉の発生のためにこ
れまでの電縫鋼管では一般的には得難かった、溶接品質
および肉厚精度に優れた小径厚肉電縫鋼管、例えば、外
径が15mm以上100 mm以下、外径Dに対する肉厚tの比
(t/D) が0.2 以上の電縫鋼管を提供できる。したが
って、電縫鋼管の製造可能な寸法を拡大できる。
【0097】(iv)溶接部脆化割れや横切れ等が発生する
ためにこれまで製造できなかった高炭素鋼からなる電縫
鋼管を製造することができる。 (v) これまで、溶接後の熱処理を行っていた電縫鋼管に
ついて、熱処理工程の省略による低コスト化を図ること
ができる。
【0098】(vi)ポストアニーラを用いた熱処理を行う
必要がなくなるため、電縫鋼管の製造工程を低減でき
る。このため、長さが短いコンパクトな製造工程とする
ことができ、設備費を低減することができる。かかる効
果を有する本発明の意義は、極めて著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a) は、実施形態の電縫鋼管の製造装置の
説明図であり、図1(b) は、予熱機を設けない場合の製
造装置の説明図である。
【図2】実施形態で用いる3ロール式レデューサおむす
び型キャリバーを模式的に示す説明図である。
【図3】C含有量が0.20%または0.45%のオープンパイ
プを素材とし、オープンパイプの内部にインピーダを挿
入して溶接機による加熱を行った場合と、オープンパイ
プの内部にインピーダを挿入せずに溶接機による加熱を
行った場合と、オープンパイプの内部にインピーダを挿
入して比較的周波数の低い予熱機による予熱と溶接機に
よる加熱とを行った場合とについて、熱投入電力密度
(入熱量) と溶接部のピーク硬度との関係を調べた結果
を、まとめて示すグラフである。
【図4】1200℃に1秒間保持したS45Cからなる鋼管
を、放冷装置および急冷装置により冷却した際の各種冷
却曲線を示すグラフである。
【図5】図3における4種のテストデータについて、放
冷時間と溶接部のピーク硬度との関係を示すグラフであ
る。
【図6】従来の高周波抵抗誘導溶接法による溶接工程お
よび冷却工程により製造された電縫鋼管について、高外
径縮小率での冷間絞り圧延が可能な3ロールレデューサ
を用いて冷間絞り圧延を行った場合の、外径縮小率と溶
接部横切れの発生との関係を、C量毎に示すグラフであ
る。
【図7】従来の高周波抵抗誘導溶接法および冷却工程を
経た後に、3ロールレデューサにより12%の外径縮小率
で外径を縮小した場合の、母材部および溶接部それぞれ
の増肉率を調査した結果を示すグラフである。
【図8】実施形態の高周波抵抗誘導溶接法および冷却工
程を経た後、3ロールレデューサにより12%の外径縮小
率で外径を縮小した場合の、母材部および溶接部それぞ
れの増肉率を調査した結果を示すグラフである。
【図9】材料の違いによる外径差と2ロール式定径機に
よる外径調整との結果の一例を示すグラフである。
【図10】製造された電縫鋼管の溶接部近傍を拡大して
示す説明図である。
【図11】予熱機による予熱および溶接機により加熱を
行う図1(a) に示す本発明法と、溶接機だけにより加熱
を行う従来法とにより製造された、外径:54.0mm、厚
さ:3.2 mmの0.21%C−1.43%Mn鋼と、外径:60.5mm、
厚さ:1.6 mmの0.17%C−1.25%Mn−0.3 %Mo鋼とにつ
いて、溶接後の製品における溶接部の熱影響部幅と、溶
接部最高硬度との関係を示すグラフである。
【図12】インピーダを挿入しないで溶接機により加熱
を行う図1(b) に示す本発明法と、インピーダを挿入し
て溶接機により加熱を行う従来法とにより製造された、
外径:45.0mm、厚さ:3.2 mmの0.21%C−1.43%Mn鋼
と、外径:31.8mm、厚さ:2.3 mmの0.22%C−0.65%Mn
−0.3 %Cr鋼とについて、溶接後の製品における溶接部
の熱影響部幅と、溶接部最高硬度との関係を示すグラフ
である。
【図13】実施例において、脆化割れを発生し易い材料
(S45C)からなる電縫鋼管(外径38.1mm、厚さ3.0
mm)を用いて、製管ままで90°および0°へん平試験を
行った結果を示すグラフである。
【符号の説明】
0 電縫鋼管 1 本発明の製造装置 2 予熱機 3 溶接機 4 放冷装置 5 水冷装置 6 3ロール式レデューサ 7 2ロール式定径機 8 オープンパイプ 9 スクイズロール 10 溶接線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 林 智隆 大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金 属工業株式会社内 (72)発明者 一入 啓介 和歌山市湊1850番地 住友金属工業株式会 社和歌山製鉄所内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高周波抵抗誘導溶接による溶接部の熱影
    響部の幅が3.5mm 以上であることを特徴とする電縫鋼
    管。
  2. 【請求項2】 素材であるオープンパイプの両エッジ部
    を突き合わせて、高周波抵抗誘導溶接した後にマルテン
    サイト率が50%未満となる所定時間以上の放冷と急冷と
    により冷却することにより溶接部の熱影響部の幅を3.5m
    m 以上としてから、整形加工を行うことを特徴とする電
    縫鋼管の製造方法。
  3. 【請求項3】 素材であるオープンパイプの両エッジ部
    を突き合わせて、下記(1) 式で規定される熱投入電力密
    度が2.5 kV・A/(cm3/sec) 以上である入熱により溶接温
    度を一定のままで溶接した後にマルテンサイト率が50%
    未満となる所定時間以上の放冷と急冷とにより冷却する
    高周波抵抗誘導溶接によって接合してから、整形加工を
    行うことを特徴とする電縫鋼管の製造方法。 【数1】 ただし、 Ep :ワークコイルのプレート電圧(kV) Ip :ワークコイルのプレート電流(A) A :オープンパイプの断面積(cm2) 、A=π×t×
    (D−t)×10-2 D :オープンパイプの外径 (cm) t :オープンパイプの肉厚 (cm) V :溶接速度(cm/sec) n :予熱機および溶接機の電源装置の使用数
  4. 【請求項4】 前記高周波抵抗誘導溶接を行う前に前記
    オープンパイプを予熱するとともに、前記熱投入電力密
    度は該予熱時における熱投入電力密度を加えた合計の熱
    投入電力密度であることを特徴とする請求項3に記載さ
    れた電縫鋼管の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記高周波抵抗誘導溶接は、前記オープ
    ンパイプの内部にインピーダを挿入しないで行われる請
    求項2から請求項4までのいずれか1項に記載された電
    縫鋼管の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記整形加工は、2スタンド以上の3ロ
    ール式レデューサを用いた冷間絞り圧延と、1セット以
    上の2ロール式定径機を用いた定径加工とを含む請求項
    2から請求項5までのいずれか1項に記載された電縫鋼
    管の製造方法。
  7. 【請求項7】 少なくとも、2.5 kV・A/(cm3/sec) 以上
    の熱投入電力密度を発生する電源装置を有し、オープン
    パイプを溶接する溶接機と、 該溶接機により溶接された鋼管を5秒間以上放冷する放
    冷装置と、 該放冷装置により放冷された鋼管を常温まで急冷する急
    冷装置とを備えることを特徴とする電縫鋼管の製造装
    置。
  8. 【請求項8】 前記電源装置の周波数は150 〜350 kHz
    である請求項7に記載された電縫鋼管の製造装置。
  9. 【請求項9】 さらに、前記溶接機により溶接される前
    の前記オープンパイプを予熱する予熱機を備えることを
    特徴とする請求項7または請求項8に記載された電縫鋼
    管の製造装置。
  10. 【請求項10】 前記予熱機の電源装置の周波数は20〜
    150 kHz である請求項9に記載された電縫鋼管の製造装
    置。
  11. 【請求項11】 さらに、前記水冷装置により水冷され
    た鋼管に、冷間で絞り圧延を行う2スタンド以上の3ロ
    ール式レデューサと、該絞り圧延を行われた前記鋼管に
    定径加工を行う1セット以上の2ロール式定径機とを備
    えることを特徴とする請求項7から請求項10までのい
    ずれか1項に記載された電縫鋼管の製造装置。
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