JP2000270864A - イネの開頴角度に関与する染色体領域、該領域を含む栽培イネ及び該領域の識別法 - Google Patents

イネの開頴角度に関与する染色体領域、該領域を含む栽培イネ及び該領域の識別法

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JP2000270864A
JP2000270864A JP11083100A JP8310099A JP2000270864A JP 2000270864 A JP2000270864 A JP 2000270864A JP 11083100 A JP11083100 A JP 11083100A JP 8310099 A JP8310099 A JP 8310099A JP 2000270864 A JP2000270864 A JP 2000270864A
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chromosome
angle
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Atsushi Nakamura
淳 中村
Tatsuto Fujimura
達人 藤村
Yusaku Uga
優作 宇賀
Koi Sai
宏偉 才
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Mitsui Chemicals Inc
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Mitsui Chemicals Inc
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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 最大開頴角度が栽培イネよりも4度以上大き
い野生イネ由来の開頴角度に関与する染色体領域を提供
する。 【解決手段】 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよ
りも最大開頴角度が4度以上大きいイネに由来し、該イ
ネの第1,2,7,9及び11染色体上の2つの遺伝マ
ーカー、例えば、openPとMal3、RG322と
G275、C1057とRZ387、C506とR77
92a、acid2とG24で挟まれる位置に存在す
る、開頴角度に関与する染色体領域。 【効果】 本発明により裁培イネの開頴角度の改変が可
能となり、ハイブリッドライスの母親系統の改良育種が
効率化される。さらに、ハイブリッドライス種子の生産
効率の向上が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イネ、特にハイブ
リッドライスの親となるイネの育成方法ならびに判別方
法、さらに言えば、遺伝マーカーを用いた栽培イネより
も最大開頴角度が4度以上大きいイネ由来の開頴角度に
関与する染色体領域の識別方法に関する。
【0002】
【従来の技術】植物では、雑種(ハイブリッド、F1
(“エフワン”)=雑種第1代)世代が多くの形質にお
いて両親のいずれよりも強壮となり、収量および耐病虫
性、品質などの向上が認められる。この現象は雑種強勢
と呼ばれ、雑種強勢をイネに応用して得られたものとし
てハイブリッドライスが知られている。ハイブリッドラ
イスの種子は、父親となるイネから放出された花粉が母
親となるイネの雌しべの先端部分である柱頭に付着し、
付着した花粉から花粉管が伸長し、花柱内を下降した後
に胚嚢内で重複受精(卵の受精と極核の受精)すること
により形成される。このようにハイブリッドライスの種
子は、母親および父親となる2種類のイネの交雑、すな
わち他殖により生産される。イネは1つの雌しべと6本
の雄しべが1つの穎花に内在し、通常、同一頴花内の雌
しべと雄しべとの重複受精、すなわち自殖により種子を
形成する。
【0003】しかしながら、ハイブリッドライスの種子
は、父親となるイネの花粉が母親となるイネの雌しべの
先端部、すなわち柱頭に付着しなければ得ることができ
ない。一般に、イネの花粉の寿命は極めて短かく、人工
発芽試験で5分程度である。しかも開花時刻は環境条件
により大きく変動し、高温下では9時〜13時頃、低温
下では12時〜17時頃)。さらに亜種間(インド型と
日本型)もしくは水イネと陸イネ間で開花時刻に違いが
認められる。以上の様なイネの特性は、自殖性作物のイ
ネで交雑種子(ハイブリッドライス)を効率的に生産す
ることを困難にしている。
【0004】イネには栽培イネと野生イネが存在し、こ
れらの他殖率を見ると、栽培イネで5%以下であるのに
対して、野生イネでは5〜100%と変動が広く、野生
イネが栽培イネよりも他殖性に適した特性を保持すると
考えられている。特に、他殖率の高い野生イネの花器特
性は栽培イネと比較した場合以下のような点で相違す
る。 柱頭が長い。 穎花が閉じた後での雌しべの露出度が高い。 葯が長い。
【0005】また、他殖率の高い野性イネには、最大開
頴角度が栽培イネよりも大きくなるものがある。上記の
他殖率に適した形質をハイブリッドライスの母親となる
イネに導入することにより、ハイブリッドライス種子生
産の効率向上が望める。しかしながら、上記の形質は、
単一の遺伝子座による質的形質ではなく、複数の遺伝子
座が関与する量的形質と考えられている。ある形質に関
与する遺伝子座は、分離世代における形質の表現型によ
り推定される。質的形質に関与する遺伝子座は、上記の
方法で推定することができるが、量的形質に関与する遺
伝子座の推定はできない。ゆえに、従来は、上記の花器
特性に関する遺伝子座の位置情報を明らかにすることが
できなかった。
【0006】ところが、制限酵素断片長多型(RFL
P)をマーカーに用いた連鎖地図(Tanksleyら,1989,BI
O/TECHNOLOGY7:p.257-264.)がトマトやトウモロコシで
作出されて以来、分子レベルでの遺伝マーカー(DNA
マーカー)の検出技術が急速に進歩し、特にPCRによ
る任意増幅多型DNA(RAPD)をマーカーに利用す
る(Williamsら,1990,Nucleic Acids Research 18:p.65
31-6535.)ことで、多くの植物種における連鎖地図が作
成・報告されてきた。DNAマーカーを利用した連鎖解
析により、形態形質に関与する遺伝子の連鎖分析も進
み、従来の連鎖分析では解析が困難な量的形質(計量形
質)に関与する遺伝子座(Quantitative Trait Loci;
QTL)の解析においてもDNAマーカーが有効な道具
となった(Tanksley,1993,Annu. Rev. Genet.,27:p.205
-233.)。QTL解析の理論に関しては、多数の著書が
出ている(FalconerとMacKey,1989,Introduction to Qu
antitative Genetics. 4th Edition. Longman.、Knapp,
1994,In:DNA-based Markers in Plants. Ed. by Philli
ps R.L.とI.K.Vasil. Kluwer.、Liu,1998,Statistical
Genomics. CRC Press.、鵜飼,1999,育種学研究 1:p.25-
31.)。遺伝マーカー(DNA、タンパク質、アイソザ
イム、生理・形態形質)を用いたQTL解析では、ゲノ
ム全体に散在する遺伝マーカーと雑種集団における各個
体の遺伝子型と解析対象形質との関連性を個々の遺伝マ
ーカーについて調べ、その形質に関与する複数の遺伝子
座の座上染色体やその位置さらには遺伝子の作用を推定
することができる。該解析では、染色体上でLOD(lo
garithm of odds;対数オッズ比)が極大値となる位置
がQTLとして推定される。
【0007】上記の遺伝マーカーを用いたQTL解析に
より他殖率を向上しうる野生イネの花器特性に関与する
染色体領域を推定し、延いてはハイブリッドライスの親
となるイネの育種に利用することが可能と考えられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、最大
開頴角度が栽培イネよりも4度以上大きいイネ由来の開
頴角度に関与する染色体領域を提供し、かつ該染色体領
域を導入したハイブリッドライスの母親となるイネを育
成することにより、ハイブリッドライスの種子生産効率
を向上する技術を提供することにある。
【0009】また本発明は、イネの全染色体上に散在す
る栽培イネと野生イネで多型を示す遺伝マーカーを利用
して、栽培イネよりも最大開頴角度が4度以上大きいイ
ネに由来する開頴角度に関与する染色体領域をQTL解
析により推定することにより、該染色体領域を挟む2つ
の遺伝マーカーを利用して該染色体領域の有無を判別す
る方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、野生イネ
(Oryza rufipogon Griff.)の最大開頴角度が、栽培イ
ネよりも4度以上大きいことに着目し、該野生イネと栽
培イネ(Oryza sativaL.;インド型)との組換型近交系
統(RILs;Recombinant Inbred lines)を用い、個体毎
の最大開頴角度の測定と、複数の遺伝マーカーの分離型
(野生型、栽培型、ヘテロ型)を解析した。該組換型近
交系統の個体毎の上記形質および遺伝マーカーの分離型
の結果をもとに、該野生イネ由来の開頴角度に関与する
染色体領域の上記QTL解析を行ない、第1染色体、第
2染色体、第7染色体、第9染色体ならびに第11染色
体に、それぞれ1つのLOD値が2.4以上となる該野
生イネ由来の開頴角度に関与するQTL領域を検出し
た。本発明者らは、該QTL解析に用いた複数の遺伝マ
ーカーの中から、検出した該野生イネ由来の開頴角度に
関与する5つのQTLを識別しうる遺伝マーカーを見出
し、これによって最大開頴角度が栽培イネよりも4度以
上大きい野生イネに由来する開頴角度に関与する染色体
領域を詳細かつ容易に判定することを可能とした。本発
明者らは以上の知見に基づき本発明を完成した。
【0011】則ち、本発明は以下のとおりである。 [1] 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよりも最
大開頴角度が4度以上大きいイネに由来し、該イネの第
1染色体上の2つの遺伝マーカーopenPとMal3
で挟まれる位置に存在する、開頴角度に関与する染色体
領域。 [2] 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよりも最
大開頴角度が4度以上大きいイネに由来し、該イネの第
2染色体上の2つの遺伝マーカーRG322とG275
で挟まれる位置に存在する、開頴角度に関与する染色体
領域。 [3] 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよりも最
大開頴角度が4度以上大きいイネに由来し、該イネの第
7染色体上の2つの遺伝マーカーC1057とRZ38
7で挟まれる位置に存在する、開頴角度に関与する染色
体領域。 [4] 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよりも最
大開頴角度が4度以上大きいイネに由来し、該イネの第
9染色体上の2つの遺伝マーカーC506とR7792
aで挟まれる位置に存在する、開頴角度に関与する染色
体領域。 [5] 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよりも最
大開頴角度が4度以上大きいイネに由来し、該イネの第
11染色体上の2つの遺伝マーカーacid2とG24
で挟まれる位置に存在する、開頴角度に関与する染色体
領域。 [6] 栽培イネがOryza sativa L.である上記[1]
〜[5]の何れか一項に記載の染色体領域。 [7] 栽培イネよりも最大開頴角度が4度以上大きい
イネが野生イネである上記[1]〜[5]の何れか一項
に記載の染色体領域。 [8] 野生イネがOryza rufipogon Griff.である上記
[7]に記載の染色体領域。 [9] 上記[1]〜[8]の何れか一項に記載の染色
体領域を導入し、最大開頴角度が大きくなった栽培イ
ネ。 [10] 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよりも
最大開頴角度が4度以上大きいイネの第1染色体上の2
つの遺伝マーカーopenPとMal3を利用して、上
記[1]に記載の開頴角度に関与する染色体領域を識別
する方法。 [11] 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよりも
最大開頴角度が4度以上大きいイネの第2染色体上の2
つの遺伝マーカーRG322とG275を利用して、上
記[2]に記載の開頴角度に関与する染色体領域を識別
する方法。 [12] 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよりも
最大開頴角度が4度以上大きいイネの第7染色体上の2
つの遺伝マーカーC1057とRZ387を利用して、
上記[3]に記載の開頴角度に関与する染色体領域を識
別する方法。 [13] 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよりも
最大開頴角度が4度以上大きいイネの第9染色体上の2
つの遺伝マーカーC506とR7792aを利用して、
上記[4]に記載の開頴角度に関与する染色体領域を識
別する方法。 [14] 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよりも
最大開頴角度が4度以上大きいイネの第11染色体上の
2つの遺伝マーカーcid2とG24を利用して、上記
[5]に記載の開頴角度に関与する染色体領域を識別す
る方法。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明で言う栽培イネとは、Oryz
a sativa L.に属する、好ましくは、台湾のインド型栽
培品種“Pei-kuh”を指す。本発明でいう栽培イネより
も最大開穎角度が4度以上大きいイネとは、栽培イネと
同一栽培条件(土壌、水、温度、日照等の気候条件)で
栽培した場合、栽培イネの最大開穎角度よりも最大開穎
角度が更に4度以上大きくなるようなイネを指してい
る。そのようなイネは例えば野生イネであり、野生イネ
の中でもOryzarufipogon Griff.に属するイネ、好まし
くは、中国雲南省Chalingで収集した多年生の部分異系
交配系統“W1944”を好適なものとして例示できる。
【0013】本発明において染色体領域の供給源となる
イネの最大開穎角度は同条件で栽培した栽培イネよりも
4度以上大きければ十分であるが、最大開穎角度は好ま
しくは5度以上、より好ましくは6度以上大きいイネが
より好適である。
【0014】本発明で用いられる組換型近交系統とは、
例えば上記栽培イネ“Pei-kuh”と野生イネ“W1944”と
の交雑により育成した。組換型近交系統の育成方法につ
いて説明すれば以下のとおりである。栽培イネ“Pei-ku
h”を母親に、野生イネ“W1944”を父親としたF1種子
を得る。得られたF1種子を栽培し、F2種子を得る
(F1世代では部分不稔となった)。1990年に国立遺伝
学研究所(静岡県三島市)の研究水田にて、該F1より
得られた189のF2株を育成し、うち出穂・登熟した
158株の後代を選抜する。該選抜株は、単粒系統法
(1株から1粒採種し、その種子を系統とする方法)で
育成し、F8世代に107の該組換型近交系統を得た。
【0015】本発明で用いられる遺伝マーカーとは、公
知の114のRFLPマーカーおよび17のアイソザイ
ムマーカーおよび2つのタンパク質マーカー(塩可溶性
貯蔵タンパク質;APAGE1、2)および1つのRA
PDマーカーおよび6つの形態形質マーカー(株の開張
性(open P)、出穂後の新規分けつ(new T)、芒の有
無(Awn)、黄金色種子縦溝(gf)、黒色殻2(Bh2)、
褐色果皮(Rc))(森島 1998 イネの進化・適応に関わ
る遺伝子ネットワークの解析.平成8・9年度科学研究
費補助金(基盤研究B)研究成果報告書)を指す。該遺
伝マーカーの染色体上の位置および多型(Pei-kuh型あ
るいはW1944型あるいは両者のヘテロ型)は、森島(199
8 イネの進化・適応に関わる遺伝子ネットワークの解
析.平成8・9年度科学研究費補助金(基盤研究B)研
究成果報告書)の125の該組換近交系統(F6世代)
を用いた解析結果を指す。また、上記集団とは異なる集
団を用いた場合には、これらの遺伝的距離の変動が予想
されるが、相対位置関係を大きくはずれることはない。
従って、いかなる集団を用いた場合でも、これらの遺伝
マーカーは育種上有効に利用することができる。そのた
め、本発明に使用される遺伝マーカーとしては、イネ染
色体上で上記集団により挟まれた位置に存在する未知の
遺伝マーカーも使用することが出来る。
【0016】本発明におけるイネの最大開頴角度は、以
下の測定方法により求めることができる。107の該組
換近交系統(F8世代)毎に5個体を1/25000aポ
ットで裁培し、該各系統とも生育が揃った3個体を用
い、開花開始日(1個体内の穂に着生した頴花が咲き始
めた日)から2〜3日経過した、いわゆる開頴最盛期よ
り3日間連続して開頴角度の測定を行い、該各系統の頴
花の最大開頴角度をデジタルカメラで撮影した後、画像
解析ソフト(NIH image)により頴花の最大開頴角度を
解析することができる。野生イネ“W1944”由来の開頴
角度に関与する染色体領域は、該系統毎の測定した最大
開頴角度と該遺伝マーカーの分離型のデーターをQTL
解析ソフト(qGENE;interval mapping)に入力
し、算出されるLOD値により推定することができる。
すなわち、107の該組換近交系統毎の最大開頴角度と
140の該遺伝マーカーの分離型のデーターを該QTL
解析ソフトで解析し、LOD値が2.4以上を示す染色
体領域を第1、第2、第7、第9および第11染色体に
それぞれ1領域ずつ検出することができる。該染色体領
域は、それぞれ2つの遺伝マーカーで挟まれる。第1染
色体の該領域は遺伝マーカーopenPとMal3で、
第2染色体の該領域は遺伝マーカーRG322とG27
5で、第7染色体の該領域は遺伝マーカーC1057と
RZ387で、第9染色体の該領域は遺伝マーカーC5
06とRZ792aで、第11染色体の該領域は遺伝マ
ーカーG24とacid2でそれぞれ挟まれている。
【0017】以上のことから、それぞれの開穎角度に関
与する染色体領域を識別するためには、それぞれの染色
体領域を挿んでいる2つの遺伝マーカーを上述のQTL
解析等の手法に利用すればよい。
【0018】
【実施例】以下に本発明を実施例に基づき詳細に説明す
る。 [実施例1] (1) 最大開頴角度の解析 裁培イネ“Pei-kuh”と野生イネ“W1944”の組換近交系
統(F8世代)の107系統毎に5個体を1/2500
0aポットで裁培し、該各系統とも生育が揃った3個体
を用い、開花開始日(1個体内の穂に着生した頴花が咲
き始めた日)から2〜3日経過した、いわゆる開頴最盛
期より3日間連続して開頴角度の測定を行い、該各系統
の頴花の最大開頴角度をデジタルカメラで撮影した後、
画像解析ソフト(NIH image)により頴花の最大開頴角
度を解析した。
【0019】(2) 遺伝マーカーの分離型解析 上記107系統毎の遺伝マーカーの分離型を解析した。
DNAマーカーの分離型解析を以下に説明する。上記各
系統(5個体の中から任意の1個体)の新鮮葉よりそれ
ぞれDNAを抽出した。抽出したDNAを用いて、11
4のRFLPマーカー(森島,1998,イネの進化・適応に
関わる遺伝子ネットワークの解析.平成8・9年度科学
研究費補助金(基盤研究B)研究成果報告書)および1
つのRAPDマーカー(RAPDB1-1)に関する系統毎の分
離型を解析した。RFLPマーカーにおける、DNAの
抽出、切断、電気泳動、ササンブロッティングは、McCo
uchら(1988,Theor Appl Genet.,76:p.815-829.)に従
った。また、DNAのハイブリダイゼーションは、非ラ
ジオアイソトープラベルECLシステム(AmershamIn
t.)で行った。RAPDマーカーの分離型は、定法によ
り検出した。17のアイソザイムマーカーの分離型解析
は、Ishikawaら(1989,J. Fac.Agr.Hokkaido Univ.6
4:p.85-98.)の方法で行った。2つのタンパク質マーカ
ーの分離型解析は、CaiとMorishima(1997,Rice Geneti
cs Newsletter,14:p.76-78.)の方法で行った。6つの
形態形質マーカー(株の開張性(open P)、出穂後の新
規分けつ(new T)、芒の有無(Awn)、黄金色種子縦溝
(gf)、黒色殻2(Bh2)、褐色果皮(Rc))の分離型解
析は、生育の適時に肉眼観察により判別した。
【0020】(3) 開頴角度に関するQTL解析 系統別に得られた最大開頴角度と遺伝マーカーの分離型
データーをQTL解析ソフト(qGENE;interval m
apping)に入力し、開頴角度に関するLOD値を算出し
た。LOD値が2.4以上の開頴角度に関与するQTL
領域が5つの染色体にそれぞれ1領域ずつ検出された
(表1)。
【0021】
【表1】 表1.開頴角度に関与する染色体上のQTL領域 ────────────────────────────── 染色体番号 QTL領域(挟む遺伝マーカー) LOD値 ────────────────────────────── 1 openP―Mal3 2.59 2 RG322―G275 2.53 7 C1057―RZ387 2.77 9 C506 ―R7792a 3.37 11 acid2―G24 2.73 ──────────────────────────────
【0022】[実施例2]栽培イネ“IR8”と野生イ
ネ“W1944”の交雑F2世代の200個体を各々1/5
0000aポットで栽培し、個体毎に本発明の開頴角度
に関与する染色体領域を識別する遺伝マーカー(DNA
マーカー;Mal3、RG322、G275、C105
7、RZ387、C506、RZ792a、G24、a
cid2、形態マーカー;openP)の分離型を解析
した。DNAマーカーの分離型解析は、以下の方法で行
った。個体毎に新鮮葉よりDNAを抽出した。DNAの
抽出、切断、電気泳動、ササンブロッティングは、McCo
uchら(1988,Theor Appl Genet,76:p.815-829.)に従っ
た。DNAのハイブリダイゼーションは、非ラジオアイ
ソトープラベルECLシステム(Amersham Int.)で行
った。形態マーカー(openP)の分離型解析は、生
育の適時に肉眼観察した。上記遺伝マーカーがすべて野
生イネ型となった5個体とIR8、W1944について、開
花開始日(1個体内の穂に着生した頴花が咲き始めた
日)から2〜3日経過した、いわゆる開頴最盛期より3
日間連続して開頴角度の測定を行い、該各系統の頴花の
最大開頴角度をデジタルカメラで撮影した後、画像解析
ソフト(NIH image)により頴花の最大開頴角度を解析
した(表2)。上記遺伝マーカーがすべて野生イネ型と
なった個体は、すべて最大開頴角度がIR8よりも大き
くなり、開頴角度の改変に上記遺伝マーカーが有効であ
ることが確認された。
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】本発明により、同一条件で栽培した場合
に栽培イネよりも最大開頴角度が4度以上大きいイネ由
来の開頴角度に関与する染色体領域およびイネの開頴角
度に関与する染色体領域を識別する複数の遺伝マーカー
が提供される。本発明の遺伝マーカーの多型を開頴角度
に関与する染色体領域の識別に利用することで、同一条
件で栽培した場合裁培イネに裁培イネよりも最大開頴角
度が4度以上大きいイネ由来の開頴角度に関与する染色
体領域を簡便にしかも精度よく導入することができる。
【0025】本発明により裁培イネの開頴角度の改変が
可能となり、ハイブリッドライスの母親系統の改良育種
が効率化される。さらに、ハイブリッドライス種子の生
産効率の向上が可能となる。
フロントページの続き (72)発明者 才 宏偉 栃木県那須郡西那須野町東赤田388−5 社団法人日本飼料作物種子協会西那須野支 所内 Fターム(参考) 2B030 AA02 AB03 AD20 CA06 CA28 CB03 4B024 AA08 AA11 AA20 CA01 CA20 DA01 GA17 GA30 4B065 AA88X AA88Y AC20 BA30 CA53

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよ
    りも最大開頴角度が4度以上大きいイネに由来し、該イ
    ネの第1染色体上の2つの遺伝マーカーopenPとM
    al3で挟まれる位置に存在する、開頴角度に関与する
    染色体領域。
  2. 【請求項2】 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよ
    りも最大開頴角度が4度以上大きいイネに由来し、該イ
    ネの第2染色体上の2つの遺伝マーカーRG322とG
    275で挟まれる位置に存在する、開頴角度に関与する
    染色体領域。
  3. 【請求項3】 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよ
    りも最大開頴角度が4度以上大きいイネに由来し、該イ
    ネの第7染色体上の2つの遺伝マーカーC1057とR
    Z387で挟まれる位置に存在する、開頴角度に関与す
    る染色体領域。
  4. 【請求項4】 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよ
    りも最大開頴角度が4度以上大きいイネに由来し、該イ
    ネの第9染色体上の2つの遺伝マーカーC506とR7
    792aで挟まれる位置に存在する、開頴角度に関与す
    る染色体領域。
  5. 【請求項5】 同一条件下で栽培した場合に栽培イネよ
    りも最大開頴角度が4度以上大きいイネに由来し、該イ
    ネの第11染色体上の2つの遺伝マーカーacid2と
    G24で挟まれる位置に存在する、開頴角度に関与する
    染色体領域。
  6. 【請求項6】 イネの第1染色体上の2つの遺伝マーカ
    ーopenPとMal3で挟まれる位置にあり、同一条
    件下で栽培した場合に栽培イネよりも開頴角度が4度以
    上大きいイネで分離型を示す遺伝マーカーのうちの1つ
    と、イネの第1染色体上の2つの遺伝マーカーopen
    PとMal3のうちの一方とにより挟まれることを特徴
    とする請求項1に記載の染色体領域。
  7. 【請求項7】 イネの第2染色体上の2つの遺伝マーカ
    ーでRG322とG275挟まれる位置にあり、同一条
    件下で栽培した場合に栽培イネよりも開頴角度が4度以
    上大きいイネで分離型を示す遺伝マーカーのうちの1つ
    と、イネの第2染色体上の2つの遺伝マーカーRG32
    2とG275のうちの一方とにより挟まれることを特徴
    とする請求項2に記載の染色体領域。
  8. 【請求項8】 イネの第7染色体上の2つの遺伝マーカ
    ーC1057とRZ387で挟まれる位置にあり、同一
    条件下で栽培した場合に栽培イネよりも開頴角度が4度
    以上大きいイネで分離型を示す遺伝マーカーのうちの1
    つと、イネの第7染色体上の2つの遺伝マーカーC10
    57とRZ387のうちの一方とにより挟まれることを
    特徴とする請求項3に記載の染色体領域。
  9. 【請求項9】 イネの第9染色体上の2つの遺伝マーカ
    ーC506とR7792aで挟まれる位置にあり、同一
    条件下で栽培した場合に栽培イネよりも開頴角度が4度
    以上大きいイネで分離型を示す遺伝マーカーのうちの1
    つと、イネの第9染色体上の2つの遺伝マーカーC50
    6とR7792aのうちの一方とにより挟まれることを
    特徴とする請求項4に記載の染色体領域。
  10. 【請求項10】 イネの第11染色体上の2つの遺伝マ
    ーカーacid2とG24で挟まれる位置にあり、同一
    条件下で栽培した場合に栽培イネよりも開頴角度が4度
    以上大きいイネで分離型を示す遺伝マーカーのうちの1
    つと、イネの第11染色体上の2つの遺伝マーカーac
    id2とG24のうちの一方とにより挟まれることを特
    徴とする請求項5に記載の染色体領域。
  11. 【請求項11】 栽培イネがOryza sativa L.である請
    求項1〜10の何れか一項に記載の染色体領域。
  12. 【請求項12】 栽培イネよりも最大開頴角度が4度以
    上大きいイネが野生イネである請求項1〜11の何れか
    一項に記載の染色体領域。
  13. 【請求項13】 野生イネがOryza rufipogon Griff.で
    ある請求項12に記載の染色体領域。
  14. 【請求項14】 請求項1〜13の何れか一項に記載の
    染色体領域を導入し、最大開頴角度が大きくなった栽培
    イネ。
  15. 【請求項15】 同一条件下で栽培した場合に栽培イネ
    よりも最大開頴角度が4度以上大きいイネの第1染色体
    上の2つの遺伝マーカーopenPとMal3を利用し
    て、請求項1に記載の開頴角度に関与する染色体領域を
    識別する方法。
  16. 【請求項16】 同一条件下で栽培した場合に栽培イネ
    よりも最大開頴角度が4度以上大きいイネの第2染色体
    上の2つの遺伝マーカーRG322とG275を利用し
    て、請求項2に記載の開頴角度に関与する染色体領域を
    識別する方法。
  17. 【請求項17】 同一条件下で栽培した場合に栽培イネ
    よりも最大開頴角度が4度以上大きいイネの第7染色体
    上の2つの遺伝マーカーC1057とRZ387を利用
    して、請求項3に記載の開頴角度に関与する染色体領域
    を識別する方法。
  18. 【請求項18】 同一条件下で栽培した場合に栽培イネ
    よりも最大開頴角度が4度以上大きいイネの第9染色体
    上の2つの遺伝マーカーC506とR7792aを利用
    して、請求項4に記載の開頴角度に関与する染色体領域
    を識別する方法。
  19. 【請求項19】 同一条件下で栽培した場合に栽培イネ
    よりも最大開頴角度が4度以上大きいイネの第11染色
    体上の2つの遺伝マーカーcid2とG24を利用し
    て、請求項5に記載の開頴角度に関与する染色体領域を
    識別する方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003104452A1 (ja) * 2002-06-06 2003-12-18 日本たばこ産業株式会社 イネ柱頭露出率に関与する遺伝子の識別方法、及びイネ柱頭露出率の修飾方法

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