JP2000262963A - 親水性皮膜の形成方法および塗装物品 - Google Patents

親水性皮膜の形成方法および塗装物品

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JP2000262963A
JP2000262963A JP11075539A JP7553999A JP2000262963A JP 2000262963 A JP2000262963 A JP 2000262963A JP 11075539 A JP11075539 A JP 11075539A JP 7553999 A JP7553999 A JP 7553999A JP 2000262963 A JP2000262963 A JP 2000262963A
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hydrophilic
forming
coating film
various
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JP11075539A
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English (en)
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Tsutomu Minami
努 南
Seiji Tadanaga
清治 忠永
Atsunori Matsuda
厚範 松田
Masataka Ooka
正隆 大岡
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DIC Corp
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Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 親水化処理を施す前には高度の撥水性を有
し、且つ、親水化処理を施すことにより耐久性に優れる
高度の親水性を有する皮膜を簡便に調製する方法を提供
すること、および、かかる方法により得られる親水性皮
膜をトップコート層として設けてなる塗装物品を提供す
ること。 【解決手段】 基材上に、光分解触媒としての機能を有
する金属酸化物(A)の皮膜と、炭素数が5以上のフル
オロアルキル基が結合した珪素原子を有するポリシロキ
サン(B)の皮膜を順次形成せしめて複層皮膜を調製し
た後、当該複層皮膜に活性エネルギー線を照射する親水
性皮膜の形成方法、および、この方法により形成される
親水性皮膜をトップコート層として設けてなる塗装物
品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規にして有用な
る親水性皮膜の形成方法と、当該形成方法により得られ
る親水性皮膜をトップコート層として設けてなる塗装物
品とに関する。
【0002】さらに詳しくは、基材上に、光分解触媒と
しての機能を有する金属酸化物の皮膜と、特定のフルオ
ロアルキル基が結合した珪素原子を有するポリシロキサ
ンの皮膜を順次形成せしめて複層皮膜を調製した後、当
該複層皮膜に活性エネルギー線を照射することを特徴と
する、親水性皮膜の形成方法、ならびに当該形成方法に
より調製される親水性皮膜をトップコート層として設け
てなる塗装物品に関するものである。
【0003】そして、こうして調製される親水性皮膜
は、建築の外壁材、橋梁、タンク等の屋外構築物、ある
いは自動車等の車両類等の各種の屋外で使用される物品
の汚染防止用、クーラー等の熱交換用の室外機や室内機
に使用されるアルミニウムフィンの如きフィン類の親水
化用、屋内で使用される各種のガラスや鏡類の曇防止
用、さらには、画像形成用の媒体のパターン形成用等の
各種の用途に有効に利用できるものである。
【0004】
【従来の技術】これまでに、親水性皮膜の形成方法とし
ては、(1)カルボキシレート基、スルホネート基もし
くはポリオキシアルキレン基の如き親水性基を含有する
重合体を架橋することにより調製する方法であるとか、
(2)特許第2756474号公報に記載されている如
く、結晶性酸化チタンの如き光酸化触媒としての機能を
有する金属酸化物微粒子とシリコーン系等のバインダー
とからなるコーティング剤を基材に塗装したのちに、光
照射により親水化せしめる方法、等がある。
【0005】しかしながら、かかる方法のうち、(1)
の方法により得られる親水性皮膜は耐久性に劣り短期間
で親水性が損なわれてしまう問題点があるし、(2)の
方法では、予め、高温で焼成して得られる光酸化触媒と
しての機能を有する微粒子とバインダーとからコーティ
ング剤を調製するという煩雑な工程を経なけらばならな
い問題点とか、皮膜に親水部分と疎水部分のパターンを
形成した場合、疎水部分の撥水性が不十分で画像形成材
料等の用途には適用できないという問題点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、本発明者ら
は、上述したような従来型技術における種々の問題点
を、悉く、解消するべく、研究を開始した。
【0007】したがって、本発明が解決しようとする課
題は、親水化処理を施す前には高度の撥水性を有し、且
つ、親水化処理を施すことにより耐久性に優れる高度の
親水性を有する皮膜を簡便に調製する方法を提供するこ
とにあり、また、かかる方法により得られる親水性皮膜
をトップコート層として設けてなる塗装物品を提供する
ことにある。
【0008】本発明者らは、上述の課題を解決するべ
く、鋭意研究を重ねた結果、基材上に、光分解触媒とし
ての機能を有する金属酸化物の皮膜と、特定のフルオロ
アルキル基が結合した珪素原子を有するポリシロキサン
の皮膜を順次形成せしめて高度の撥水性を有する複層皮
膜を調製した後、当該複層皮膜に活性エネルギー線を照
射するこにより、高度の親水性を有する皮膜が得られる
こと、また、このようにして得られる親水性皮膜をトッ
プコート層として設けてなる塗装物品は、耐曝露汚染
性、防曇性、水流下性等の表面の高親水化に由来する各
種の性能と耐久性に優れること、さらに、活性エネルギ
ー線の照射時に部分的にマスキングする事により高撥水
部分と高親水性部分のパターンを形成出来ることを見い
出し、本発明が解決しようとする課題を、見事に、解決
出来ることを確信するに及んで、ここに、本発明を完成
させるに到った。
【0009】すなわち、本発明は、 1. 基材上に、光分解触媒としての機能を有する金属
酸化物(A)の皮膜と、炭素数が5以上のフルオロアル
キル基が結合した珪素原子を有するポリシロキサン
(B)の皮膜を順次形成せしめて複層皮膜を調製した
後、当該複層皮膜に活性エネルギー線を照射することを
特徴とする、親水性皮膜の形成方法、
【0010】2. 前記した、ポリシロキサン(B)の
皮膜が、加水分解性基の少なくとも1個と炭素数が5以
上のフルオロアルキル基が共に結合した珪素原子を有す
るオルガノシラン化合物を必須成分として含むシラン化
合物もしくはその加水分解生成物から形成されるもので
ある、上記1に記載の親水性皮膜の形成方法、
【0011】3. 光分解触媒としての機能を有する金
属酸化物(A)が、結晶性の酸化チタンである、上記1
または2に記載の親水性皮膜の形成方法、
【0012】4. 活性エネルギー線の照射により、親
水性皮膜と水との接触角を20度以下に低下せしめる、
上記1、2または3に記載の親水性皮膜の形成方法、
【0013】5. 前記した、活性エネルギー線が紫外
線である、上記1〜4のいずれか1つに記載の親水性皮
膜の形成方法、
【0014】6. 前記した基材が、基材上に予め花弁
状アルミナ膜が形成された基材である、上記1〜5のい
ずれか1つに記載の親水性皮膜の形成方法、および、
【0015】7. 上記1〜6のいずれか1つに記載の
方法により形成される親水性皮膜をトップコート層とし
て設けてなることを特徴とする、塗装物品、を提供する
ものである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を、さらに一層、
詳細に、説明することにする。先ず、本発明で云う親水
性皮膜とは、水との接触角として概ね50度以下、好ま
しくは40度以下、特に好ましくは20度以下の親水性
を有する皮膜を指称するものである。
【0017】かかる親水性皮膜を形成する際に使用され
る基材としては、公知慣用の各種のものを使用すること
が出来る。かかる基材の特に代表的なものとしては、各
種の金属基材、無機質基材もしくはプラスチック基材等
が挙げられる。
【0018】かかる各種の基材のうち、金属基材の代表
的なものとしては、鉄、ニッケル、アルミニウム、クロ
ム、亜鉛、錫、銅、鉛等の金属類や、ステンレススチー
ル、真鍮の如き、これらの各種金属の合金類、さらに
は、前掲したような各種の金属類であって、メッキや化
成処理などが施された各種の表面処理金属類が挙げられ
る。
【0019】また、無機質基材とは、セメント系、珪酸
カルシウム等の珪酸塩系、石膏系、石綿系もしくはセラ
ミックス系等で代表される無機質の材料を主成分とする
ものであり、その具体的なものとしては、コンクリー
ト、セメントモルタル、石膏プラスター、ドロマイトプ
ラスター、軽量気泡コンクリート(ALC)、石綿セメ
ント板、ガラス繊維強化の珪酸カルシウム板、石膏ボー
ド、陶器、磁器、アルミナパネル、シリカパネル、タイ
ル、ガラスなどの各種のものが挙げられる。
【0020】プラスチック基材の代表的なものとして
は、フッ素樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテ
ルケトン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレン
サルファイド、ポリイミドの如き耐熱性に優れる熱可塑
性樹脂のフィルムや成形品;不飽和ポリエステル樹脂、
フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂の如
き各種の熱硬化性樹脂から得られる耐熱性に優れる架橋
フィルムや架橋した成形品等が挙げられる。
【0021】本発明の方法の実施に当たって、光分解触
媒としての機能を有する金属酸化物(A)の皮膜を形成
する際に高温での焼成が可能である点から、一般的に
は、上述した各種の基材のうち、金属類、セラミックス
もしくはガラス等の耐熱性に優れる無機系の基材を使用
することが、特に好ましい。
【0022】また、上述した各種の基材類のうち各種の
金属とか、ガラス、セラミックス類等の耐熱性に優れる
基材を使用する場合には、かかる基材の上に予め、J.
Ceram.Soc.Japan,Vol.103,N
o.6,582−585(1995)、Proc.of
XVII,Inter.Congress onGl
ass,Vol.4,445−449(Beijin
g,China,1995)、New Glass,V
ol.12,No.2,42−45(1997)、特開
平9−202649号公報、特開平9−202650号
公報、特開平9−202651号公報等に開示されてい
る、花弁状アルミナ膜が設けられたものが、好ましい基
材の一つとして挙げられる。
【0023】そして、かかる花弁状のアルミナ膜とは、
アルミナ膜の表層部分が熱水または加熱水蒸気の解膠作
用を受けて、花弁状の構造を有するアルミナがランダム
に集合化した微小な孔状の空隙を持った膜を指称するも
のである。かかる、花弁状アルミナ膜は、例えば、アル
ミニウムトリイソプロポキサイド、アルミニウムトリ−
n−ブトキサイド、アルミニウムトリ−sec−ブトキ
サイド、アルミニウムトリ−tert−ブトキサイドの
如きアルミニウムアルコキサイド類を、アセト酢酸エス
テルもしくはアセチルアセトンの如き安定化剤として機
能するキレート化剤の存在下に加水分解して得られるゾ
ル液を、基材に塗布し高温で焼成してアルミナゲル膜を
調製した後に、熱水または加熱水蒸気で、処理し、さら
に高温で焼成することにより作製することが出来る。
【0024】こうした花弁状のアルミナ膜を設けると、
活性エネルギー線を照射する前の複層被膜の撥水性をよ
り高めることが出来るので、高撥水性部分と高親水性部
分を併有するパターン化された塗装物品を利用する用途
には、非常に有効である。
【0025】
さらに、本発明において、基材として、上述した如き
各種の基材に、水ガラス系、アルキルシリケート系、ポ
リシロキサン系等の耐熱性に優れる塗料を塗装して硬化
皮膜を形成せしめたものを使用することもできる。
【0026】本発明の方法において、基材上に、第一層
として光分解触媒としての機能を有する金属酸化物
(A)の皮膜が形成される。かかる、金属酸化物(A)
の代表的なものとしては、アナターゼ型の酸化チタン、
ルチル型の酸化チタンの如き結晶性の酸化チタン類、酸
化亜鉛、酸化錫、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸
化第二鉄の如きものが挙げられる。そしてこれらのうち
で、好ましいものは、結晶性の酸化チタンであり、特に
好ましいものはアナターゼ型の酸化チタンである。
【0027】基材上に、かかる金属酸化物(A)の皮膜
の一つとしての、結晶性酸化チタンの皮膜を形成するに
は、予め調製した、微粒子状の結晶性酸化チタンを必
須成分として含むコーティング剤を塗布して成膜させる
方法、結晶性酸化チタンの前駆体を基材表面に被覆
し、次いで、高温で焼成することにより結晶性酸化チタ
ンに変換させる方法、等を適用することができるが、よ
り均一な皮膜を形成せしめる点から、の方法が特に好
ましい。
【0028】前記したの方法により結晶性酸化チタン
被膜を形成させる方法としては、チタニウムアルコキ
サイドもしくはチタニウムキレート化合物からコーティ
ング剤を調製し、これを基材に塗布して、水酸化チタン
やチタニウムキレート化合物の薄膜を調製し、次いで、
約400℃以上の温度で焼成する方法、酸化雰囲気下
で金属チタンのターゲットに電子線を照射して生成する
無定型酸化チタンを基材上に被着させた後に約400℃
以上の高温で焼成する方法、等があるが、これらのうち
では、前者のなる方法が簡便である。
【0029】なる方法により結晶性酸化チタンを調製
するに際して使用される、チタニウムアルコキサイドの
代表的なものとしては、チタニウムテトラメトキサイ
ド、チタニウムテトラエトキサイド、チタニウムテトラ
イソプロポキサイド、チタニウムテトラ−n−プロポキ
サイド、チタニウムテトラ−n−ブトキサイド、チタニ
ウムテトラ−sec−ブトキサイドもしくはチタニウム
テトラ−tert−ブトキサイド、もしくは前記した各
種のチタニウムのアルコキサイド類を部分加水分解縮合
して得られるチタニウムアルコキサイドのオリゴマー類
等が挙げられる。
【0030】また、なる方法において使用されるチタ
ニウムキレート化合物の代表的なものとしては、チタニ
ウムモノ(アセチルアセトネート)トリ−n−ブトキサ
イド、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネー
ト)、チタニウムテトラキス(エチルアセトアセテー
ト)、チタニウムビス(アセチルアセトネート)ジイソ
プロポキサイド、チタニウムビス(エチルアセトアセテ
ート)ジ−n−ブトキサイドもしくはチタニウムモノ
(ベンゾイルアセトネート)トリ−n−ブトキサイドの
如き化合物等が挙げられる。
【0031】そして、上記した如きチタニウムアルコキ
サイドもしくはチタニウムキレート化合物からコーティ
ング剤を調製するには、上述した各種の化合物を公知慣
用の各種の有機溶剤に溶解してそのままコーティング剤
として使用することが出来る。また、各種のアルコール
類等のうちで、水溶性の溶剤類に上述した化合物を溶解
して得られる溶液に、水を添加して部分的にあるいは完
全に加水分解してコーティング剤を調製してもよい。
【0032】上述したコーティング剤を調製する際に使
用される有機溶剤としては、公知慣用の各種のものを使
用することができる。そして、その代表的なものとして
は、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピ
ルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチ
ルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブ
チルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコ
ール−モノ−n−プロピルエーテルの如きアルコール
類;n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、シ
クロペンタン、シクロオクタンの如き、各種の脂肪族系
ないしは脂環族系の炭化水素類;
【0033】トルエン、キシレン、エチルベンゼンの如
き、各種の芳香族炭化水素類;ギ酸エチル、酢酸エチ
ル、酢酸n−ブチル、エチレングリコールモノメチルエ
ーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエー
テルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチル
エーテルアセテートの如き、各種のエステル類;アセト
ン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シ
クロヘキサノンの如き、各種のケトン類;
【0034】ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、
ジオキサン、ジイソプロピルエーテルの如き、各種のエ
ーテル類;クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化
炭素、テトラクロロエタンの如き、各種の塩素化炭化水
素類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミ
ド、ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネートなど
の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。
【0035】また、かかるコーティング剤には、アルコ
キシ基の加水分解を促進したり、金属原子に結合した水
酸基同志の脱水縮合反応を促進したりすることで、皮膜
の形成を容易に進行させるために触媒を添加することが
できる。
【0036】かかる触媒の代表的なものとしては、塩
酸、硝酸、硫酸、燐酸の如き、各種の無機酸類;p−ト
ルエンスルホン酸、燐酸モノイソプロピル、酢酸の如
き、各種の有機酸類;アンモニウムハイドロキサイド、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの如き、各種の無機
塩基類;ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫の如
き、各種の錫カルボン酸塩類;鉄、コバルト、マンガ
ン、亜鉛の如き、各種の金属のナフテン酸塩あるいはオ
クチル酸塩の如き金属カルボン酸塩類;
【0037】1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウ
ンデセン−7(DBU)、トリ−n−ブチルアミン、ジ
メチルベンジルアミン、イミダゾール、1−メチルイミ
ダゾールの如き、各種のアミン化合物類;テトラメチル
アンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリメ
チル(2−ヒドロキシルプロピル)アンモニウム塩の如
き各種の4級アンモニウム塩類であって、しかも、対ア
ニオンとして、それぞれ、クロライド、ブロマイド、カ
ルボキシレート、ハイドロオキサイドなどを有する塩類
などがある。
【0038】かかる触媒類を添加する場合の、その使用
量としては、コーテイング剤に含有されるチタニウムア
ルコキサイドもしくはチタニウムキレート化合物100
重量部に対して、通常0.0001〜10重量部、好ま
しくは0.0005〜3重量部、特に好ましくは0.0
005〜1重量部となる範囲内である。
【0039】また、チタニウムアルコキサイドもしくは
チタニウムキレート化合物から得られるコーティング剤
は、着色剤を含まないクリヤーなコーティング剤として
使用することも出来るし、また、公知慣用の種々の有機
系あるいは無機系の顔料や染料を含有するコーティング
剤として、使用することもできる。さらに、かかるコー
ティング剤には、必要に応じて、レベリング剤、レオロ
ジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑
剤などの公知慣用の種々の添加剤、あるいは、アクリル
系樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の各種の
樹脂類をも配合せしめて、使用することもできる。
【0040】次いで、こうして調製されるコーティング
剤を公知慣用の方法により基材に塗装し、室温に放置す
るか、または60〜300℃程度の温度で強制乾燥もし
くは焼き付けを行うことにより、水酸化チタン、チタニ
ウムキレート化合物、無定型の酸化チタン等の皮膜を得
ることが出来る。その際に適用される塗装方法の代表的
なものとしては、ディップコート法、スピンコート法、
ノズルフローコート法、リバースコート法、フレキソ
法、印刷法、フローコート法、バーコート法、エアース
プレー法、エアレススプレー法等が挙げられる。
【0041】こうして得られる水酸化チタン、チタニウ
ムキレート化合物、無定型の酸化チタン等の皮膜を約4
00〜約600℃の温度で焼成することによりアナター
ゼ型の酸化チタンの皮膜を得ることができるし、約60
0℃より高い温度で焼成することによりルチル型の酸化
チタンの皮膜を得ることが出来る。そして、これらの結
晶性酸化チタンの皮膜の膜厚としては、高度の親水性を
発現させる点および耐クラック性の点から、0.5nm
〜10μm程度に設定するのが好ましい。
【0042】次に、上述のようにして基材上に形成され
る、光分解触媒としての機能を有する金属酸化物(A)
の皮膜の上に形成される、炭素数が5以上のフルオロア
ルキル基が結合した珪素原子を有するポリシロキサン
(B)の皮膜について説明する。
【0043】かかるポリシロキサン(B)に含有される
珪素原子に結合した、炭素数が5以上のフルオロアルキ
ル基としては、少なくとも3個、好ましくは5個以上の
フッ素原子が結合した、炭素数が5以上で概ね30程度
までの各種のフルオロアルキル基が挙げられる。
【0044】かかるフルオロアルキル基の代表的なもの
としては、CF3(CF2)2CH2CH2−、CF3(CF2)3CH2CH2−、CF
3(CF2)7CH2CH2−、CF3(CF2)9CH2CH2−、CF3(CF2)11CH2C
H2−、CF3(CF2)13CH2CH2−、CF3(CF2)15CH2CH2−、CF
3(CF2)17CH2CH2−、CF3(CF2)21CH2CH2−、CF3(CF2)25CH
2CH2−、CF3(CF2)27CH2CH2−の如きものが挙げられる。
【0045】上述した如き各種の珪素原子に結合したフ
ルオロアルキル基を含有するポリシロキサン(B)の皮
膜を形成せしめることにより複層皮膜が調製される。か
かる、ポリシロキサン(B)の皮膜を形成するにも公知
慣用の各種の方法を適用することが出来る。かかる方法
の具体的なものとしては、加水分解性基の少なくとも
1個と炭素数が5以上のフルオロアルキル基が共に結合
した珪素原子を有するオルガノシラン化合物を必須成分
として含むシラン化合物を含有するシラン系コーティン
グ剤を塗布して当該シラン化合物を加水分解縮合せしめ
る方法、珪素原子に結合した加水分解性基の少なくと
も1個と炭素数が5以上のフルオロアルキル基が共に結
合した珪素原子を有するシラン化合物を必須成分として
含むシラン化合物から、予め、その加水分解物もしくは
当該シラン化合物の加水分解縮合物であるポリシロキサ
ンの如き加水分解生成物を必須成分として含有するポリ
シロキサン系コーティング剤を調製し、次いで、これを
基材に塗布して、さらに縮合を進める方法、等が挙げら
れる。
【0046】上述したまたはなる方法において使用
される、加水分解性基の少なくとも1個と炭素数が5以
上のフルオロアルキル基が共に結合した珪素原子を有す
るオルガノシラン化合物に含有される、珪素原子に結合
した加水分解性基とは、アルコキシ基、置換アルコキシ
基、アルケニルオキシ基、イミノオキシ基、アリールオ
キシ基、アラルキルオキシ基、アセトキシ基、ハロゲン
原子、水素原子の如き、加水分解により珪素原子に結合
した水酸基、即ち、シラノール基、を生成する基を指称
する。かかる各種の加水分解性基のうちで、価格の点や
取り扱いの容易さの点から、メトキシ基、エトキシ基、
イソプロポキシ基の如きアルコキシが特に好ましい。
【0047】アルコキシ基を含有するシラン化合物の代
表的なものとしては、CF3(CF2)2CH2CH2-Si(OCH3)3、CF3
(CF2)3CH2CH2-Si(OCH3)3、CF3(CF2)7CH2CH2-Si(OC
H3)3、CF3(CF2)9CH2CH2-Si(OCH3)3、CF3(CF2)11CH2CH2-
Si(OCH3)3、CF3(CF2)13CH2CH2-Si(OCH3)3、CF3(CF2)15C
H2CH2-Si(OCH3)3、CF3(CF2)17CH2CH2-Si(OCH3)3、CF3(C
F2) 21CH2CH2-Si(OCH3)3、CF3(CF2)25CH2CH2-Si(OC
H3)3、CF3(CF2)27CH2CH2-Si(OCH3)3、CF3(CF2)2CH2CH2-
Si(OC2H5)3、CF3(CF2)3CH2CH2-Si(OC2H5)3、CF3(CF2)7C
H2CH2-Si(OC2H5)3、CF3(CF2)9CH2CH2-Si(OC2H5)3、CF
3(CF2)7CH2CH2-Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)7CH2CH2-Si(C
H3)2(OCH3)、CF3(CF2)7CH2CH2-Si(CH3)(OC2H5)2の如
き、モノアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類も
しくはトリアルコキシシラン類が挙げられる。これらの
中でも、得られる親水性皮膜の耐久性の点から、ジアル
コキシシラン類もしくはトリアルコキシシラン類を主成
分として使用することが特に好ましい。
【0048】本発明において使用される上述したシラン
系のコーティング剤あるいはポリシロキサン系コーティ
ング剤を調製するに当たり、上述した炭素数が5以上の
フルオロアルキル基を含有するシラン化合物を単独で使
用してもよいし、また、これらと共加水分解縮合が可能
な、加水分解性基を有する各種のシラン化合物を併用す
ることもできる。
【0049】かかるシラン化合物の代表的なものとして
は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシ
ラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−オクチルト
リメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、
n−オクタデシルトリメトキシシラン、エチルトリメト
キシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピル
トリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシランも
しくはn−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメ
トキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルト
リメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル
トリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキ
シエトキシ)シランもしくはアリルトリメトキシシラ
ン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3
−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシ
ラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの
如き、各種のオルガノトリアルコキシシラン類;
【0050】ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエ
トキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニ
ルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラ
ン、メチルフェニルジエトキシシラン、3−(メタ)ア
クリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3
−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランの如
き、各種のジオルガノジアルコキシシラン類;トリメチ
ルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ter
t−ブチルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジ
メチルメトキシランの如き、トリオルガノモノアルコキ
シシラン類;
【0051】テトラアセトキシシラン、メチルトリアセ
トキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチ
ルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン
の如き、各種のアセトキシシラン類;トリメトキシシラ
ン、トリエトキシシラン、トリ−n−ブトキシシランの
如き各種のテトラアルコキシシラン類あるいはそれらの
部分加水分解縮合物などがある。
【0052】上述した各種のシラン化合物から、本発明
で使用されるシラン系コーティング剤あるいはポリシロ
キサン系コーティング剤を調製するには公知慣用の各種
の方法に従って行えばよい。即ち、上述した金属酸化物
(A)の皮膜を調製する際に使用されるものとして例示
した如き各種の溶剤類にシラン化合物を溶解せしめた
り、当該溶剤中でシラン化合物を部分加水分解縮合せし
めたり、加水分解せしめたり、あるいは加水分解縮合せ
しめるといった方法を適用することが出来る。また、こ
れらのコーティング剤を調製するに際して、上述した如
き各種の触媒類をも添加することもできる。
【0053】かかる触媒類を添加する場合の、その使用
量としては、コーテイング剤に含有されるシラン化合物
あるいはポリシロキサン100重量部に対して、通常
0.0001〜10重量部、好ましくは0.0005〜
3重量部、特に好ましくは0.0005〜1重量部とな
る範囲内である。
【0054】本発明で使用されるシラン系コーティング
剤あるいはポリシロキサン系コーティング剤には、必要
に応じて、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、
紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤などの公知慣用の種
々の添加剤、あるいは、アクリル樹脂系、ビニル樹脂系
もしくはポリウレタン樹脂系等の各種の樹脂類をも配合
せしめて、使用することができる。
【0055】また、本発明で使用される上述のコーティ
ング剤は、着色剤を含まないクリヤーなコーティング剤
として使用することも出来るし、また、公知慣用の種々
の有機系あるいは無機系の顔料や染料を含有するコーテ
ィング剤として、使用することもできる。
【0056】かくして調製されるコーティング剤は、上
述した金属酸化物(A)の皮膜を調製する際に適用され
るものとして例示した如き各種の方法を適用して、基材
上に形成された金属酸化物(A)の皮膜の上に塗布され
る。次いで、室温に1日〜10日間程度のあいだ放置し
て乾燥せしめたり、60〜300℃程度の温度で1分〜
3時間程度のあいだ強制乾燥もしくは焼き付けることに
よりポリシロキサン(B)の皮膜を得ることが出来る。
【0057】上述のようにして、形成されるポリシロキ
サン(B)の皮膜の膜厚としては、高度の親水性を発現
させる点および耐クラック性の点から、0.5nm〜1
0μmが好ましく、なかでも1nm〜5μmが特に好ま
しい。
【0058】かくして得られる複層皮膜に活性エネルギ
ー線を照射することにより親水性皮膜を形成することが
できるが、その際に照射される活性エネルギー線の種類
および照射時間等の照射条件は、水との接触角が、概ね
50度以下、好ましくは40度以下、最も好ましくは2
0度以下となるように設定すればよい。
【0059】かかる、活性活性エネルギー線としては、
公知慣用の各種のものを使用することができ、その代表
的なものとしては、可視光線、紫外線、エキシマレーザ
ー光線、半導体レーザー光線、電子線、X線の如きもの
が挙げられる。
【0060】かかる、活性エネルギー線を照射する線源
としては、それぞれの活性エネルギー線を発生させるこ
とができる公知慣用の装置を使用すればよいし、また、
太陽光をも線源として使用することができる。
【0061】上述した如き各種の活性エネルギー線のな
かでも、特に好ましいものとして紫外線が挙げられる。
【0062】活性エネルギー線を照射する時間は、皮膜
に付与しようとする親水性の程度、皮膜の厚さ、線源の
強度等に応じて、最適な時間を設定すればよいが、概ね
5秒から10時間程度でよい。但し、線源として太陽光
を使用する場合には、1日から1ヶ月に亘る曝露によっ
て初めて親水化できることもある。
【0063】本発明の方法により親水性の皮膜が形成さ
れるメカニズムは、未だ解明されてはいないが、金属酸
化物(A)の皮膜の光分解機能によりトップコート層の
ポリシロキサン皮膜に含有されるフルオロアルキル基の
分解が起きて親水性のシリカ系皮膜が形成されることに
よると推定される。
【0064】次に、本発明の親水性皮膜の形成方法によ
り得られる親水性皮膜をトップコート層として設けてな
る塗装物品について説明する。
【0065】かかる塗装物品のより具体的なものとして
は、それぞれ、基材として金属基材が使用された自動
車、自動二輪車、電車、自転車、船舶、飛行機あるいは
其の他の輸送関連機器類と、それらに使用される金属基
材、プラスチック基材等が使用された諸々の部品;基材
として、金属基材、プラスチック基材等が使用された、
テレビ、ラジオ、冷蔵庫、洗濯機、クーラー室外機、ク
ーラーの室内機あるいは室外機等に設置される熱交換用
のアルミニウムフィン等のフィン材、コンピュータある
いは其の他の家電製品類;金属基材が主に使用される各
種の画像形成用の媒体;フロントグラス、リヤーグラ
ス、サイドグラス、ドアミラー等の車両用のガラス製部
品類、鏡、建築物の窓ガラスの如きガラス製品類;
【0066】各種の無機質系の瓦、金属製の屋根材、無
機質系外壁材、金属製の壁材、金属製の窓枠、金属製の
ドア、内壁材の如き、種々の建材類;道路、道路標識、
ガードレール、橋梁、タンク、煙突、ビルディングの如
き、各種の屋外構築物;ポリイミド樹脂フィルム、フッ
素樹脂フィルム等の各種の有機フィルムに塗装した各種
の被覆フィルムなどが挙げられる。
【0067】そして、これらの各種の塗装物品のうち、
特に好ましいものとして、トップコート層を親水化せし
めて、耐曝露汚染性を向上せしめる点から、種々の外装
用建材類および各種の屋外構築物;親水化による水の流
下性や防曇性を活かせる点から、熱交換用のフィン材や
各種のガラス製品類;さらには、エネルギー線照射によ
り大幅な親水化を達成できることから、照射部分と未照
射部分の親水性の差を活かした画像形成材料用の素材等
が挙げられる。
【0068】
【実施例】次に、本発明を、参考例、実施例および比較
例により、一層、具体的に説明をするが、本発明は、決
して、これらの例のみに限定されるものではない。な
お、以下において、部および%は、特に断りの無い限
り、すべて、重量基準であるものとする。また、親水性
の尺度である水との接触角の測定は、皮膜上に1.7μ
lの水滴を載せ、エルマ(株)製の接触角計を使用し
て、大気中で25℃の温度条件下に測定したものであ
る。
【0069】参考例1〔結晶性酸化チタンの被膜形成用
のコーティング剤の調製例〕 攪拌機、温度計および滴下ロートを備えた反応容器に、
チタニウムテトラ−n−ブトキサイドの34.0グラム
(0.1モル)とエタノールの92.1グラム(2.0
モル)を仕込み、25℃で10分間のあいだ撹拌を行っ
て均一な溶液とした。ついで、エタノールの46.1グ
ラム(1.0モル)と1.2規定の塩酸水溶液の3.3
グラムからなる混合物を30分間で滴下した。さらに混
合物を同温度で30分間のあいだ撹拌を続行することに
よりチタニウムテトラ−n−ブトキサイドを加水分解・
重縮合せしめてコーティング剤を得た。以下、これをコ
ーティング剤(C−1)と略称する。
【0070】参考例2〔同上〕 参考例1と同様の反応容器に、チタニウムテトラ−n−
ブトキサイドの34.0グラム(0.1モル)とエタノ
ールの691.1グラム(15.0モル)を仕込み、2
5℃で30分間のあいだ撹拌を行った。ついで、アセチ
ルアセトンの10.0グラム(0.1モル)とエタノー
ルの46.1グラム(1.0モル)からなる混合物を3
0分間で滴下した。さらに混合物を2時間のあいだ25
℃で撹拌を続行してから0.01規定の硝酸水溶液の
1.8グラムを加えて1時間のあいだ撹拌を行って、キ
レート化剤としてアセチルアセトンが結合したチタニウ
ムキレート化合物を含有するコーティング剤を得た。以
下、これをコーティング剤(C−2)と略称する。
【0071】参考例3〔ポリシロキサン(B)の皮膜形
成用のコーティング剤の調製例〕 参考例1と同様の反応容器に、ヘプタデカフルオロデシ
ルトリメトキシシラン〔C8F17CH2CH2-SOCH3)3〕の5
6.8グラム(0.1モル)とイソプロパノールの12
02.0グラム(20.0モル)を仕込み、30℃で撹
拌しながら、0.01規定の塩酸水溶液の5.4グラム
を10分間で滴下した。引き続き、同温度で5時間のあ
いだ撹拌を続行してシラン系コーティング剤の溶液を得
た。以下、これをコーティング剤(C−3)と略称す
る。
【0072】参考例4〔花弁状アルミナ膜形成用のコー
ティング剤の調製例〕 参考例1と同様の反応容器に、アルミニウムトリ−se
c−ブトキサイドの24.6グラム(0.1モル)とイ
ソプロパノールの100.0グラム(1.66モル)を
仕込み、30℃で撹拌しながら、アセト酢酸エチルの1
3.0グラム(0.1モル)を10分間で滴下し、同温
度で1時間のあいだ撹拌を行った。次いで、同温度で撹
拌しながら、イソプロパノールの20グラム(0.33
モル)と水の7.2グラム(0.4モル)からなる混合
物を10分間で滴下し、さらに、同温度で3時間のあい
だ撹拌を行って、花弁状アルミナ膜形成用のコーティン
グ剤を調製した。以下、これをコーティング剤(C−
4)と略称する。
【0073】実施例1 参考例1で調製したコーティング剤(C−1)を、脱脂
処理を施した2.5cm×2.5cm×0.1cmのソ
ーダライムガラス板にディッピング装置を使用して、
2.0mm/秒の引き上げ速度でディップコーティング
を行って皮膜を形成させ、次いで500℃で30分間の
焼成を行って膜厚が80nmなる酸化チタンの皮膜を形
成せしめた。この皮膜についてX線回折による同定を行
ったところ、アナターゼ特有の回折ピークが観察され、
この皮膜はアナターゼ型酸化チタンであることが確認出
来た。
【0074】次いで、このようにして作成したアナター
ゼ型酸化チタンで被覆されたガラス板を、参考例3で調
製したコーティング剤(C−3)に浸漬してから引き上
げるディップコーティング法によりアナターゼ型酸化チ
タンの皮膜上にシラン系コーティング剤を塗布した。つ
いで、250℃で10分間の加熱処理を行って膜厚が2
nmなる珪素原子上にフルオロアルキル基を有するポリ
シロキサンの皮膜を形成せしめた。
【0075】このようにして調製された複層皮膜に、ウ
シオ電機(株)製の250W超高圧水銀灯「UIS−2
5102」(照射光の波長:250〜450nm)を使
用して5cmの距離から30分間の紫外線照射を行っ
た。紫外線照射前の、皮膜の水との接触角は110度で
あったが、照射後のそれは5度以下であり、皮膜が高度
に親水化したことが確認できた。
【0076】実施例2 参考例4で調製したコーティング剤(C−4)に浸漬し
てから引き上げるディップコート法により、実施例1と
同様のソーダライムガラス板上にアルミナゾル系のコー
ティング剤を塗装した。風乾後、400℃にて10分間
の焼成を行った後、沸騰水中に10分間浸漬した。次い
で、400℃で10分間の焼成を行って厚さ200nm
の花弁状のアルミナ層が形成されたガラス板を得た。
【0077】花弁状のアルミナ層が形成されたガラス板
に参考例2で調製したコーティング剤(C−2)をディ
ップコート法により塗装し、500℃で30分間の焼成
を行って膜厚が2nmなるアナターゼ型酸化チタンの皮
膜を形成せしめた。次いで、このようにして得られた被
覆ガラス板に、参考例3で調製したコーティング剤(C
−3)をディップコート法により塗装し、250℃で1
0分間の加熱処理を行って膜厚が2nmなる珪素原子上
にフルオロアルキル基を有するポリシロキサンの皮膜を
形成せしめて複層被膜を得た。こうして得られた複層被
膜の中心部分に2.0mm×2.0mmの遮光板を置
き、実施例1と同様の装置を使用し、且つ、同例と同様
の条件で紫外線照射を行った。紫外線照射前の、皮膜の
水との接触角は150度と非常に大きく、しかも、照射
後のそれは5度以下であり、照射により皮膜が高度に親
水化したことが確認できた。また、遮光板を置いた紫外
線の未照射部分の水との接触角も150度であった。従
って、部分的にマスキングして紫外線を照射することに
より、高撥水部分と高親水部分の両部分を併有するパタ
ーンを形成することが可能である。こうしたパターン形
成された塗装物品は画像形成用に有効に利用できるもの
である。
【0078】実施例3 基材として、脱脂処理を行った2.5cm×2.5cm
×0.01cmのステンレススチール板を使用して、参
考例1で調製したコーティング剤(C−1)をディップ
コート法により塗装し、次いで、500℃で30分間の
焼成を行って基材の両面に膜厚が80nmなるアナター
ゼ型酸化チタンの皮膜を形成せしめた。この酸化チタン
で被覆されたステンレススチール板に、参考例3で調製
したコーティング剤(C−3)をディップコート法によ
り塗装し、アナターゼ型酸化チタンの皮膜上にシラン系
コーティング剤を塗布した。ついで、250℃で10分
間の加熱処理を行って膜厚が2nmなる珪素原子上にフ
ルオロアルキル基を有するポリシロキサンの皮膜を形成
せしめた。
【0079】得られた複層被膜が形成されたステンレス
スチール板の両面に、実施例1と同様の装置を使用し、
且つ、同例と同様の条件で紫外線照射を行った。紫外線
照射前の、皮膜の水との接触角は105度で照射後のそ
れは5度以下であり、照射により皮膜が高度に親水化し
たことが確認できた。
【0080】このようにして調製したステンレススチー
ル板を5枚積層して、空調機用の熱交換機のモデル品を
作成した。このモデル品について、30℃の水中浸漬の
8時間と80℃での乾燥の16時間を1サイクルとする
繰り返し試験を5回行った後、霧吹き試験によるブリッ
ジ(ステンレススチール板間への水滴の滞留)を評価し
たところ、ブリッジの発生は全く認められず、水の流下
性に優れることが確認できた。従って、本発明の方法に
より調製される親水性皮膜をトップコート層として設け
てなるステンレススチール板は、熱交換機用のフィン材
として有効に利用出来るものである。
【0081】実施例4 脱脂処理を施したガラス板に代えて、2.5cm×2.
5cm×0.3cmの白色磁器タイルを基材として使用
する以外は実施例1と同様にして、膜厚が80nmなる
アナターゼ型酸化チタンの皮膜および膜厚が2nmなる
珪素原子上にフルオロアルキル基を有するポリシロキサ
ンの皮膜が順次形成された磁器タイルを得た。次いで、
得られた複層塗膜に実施例1と同様の装置を使用し、且
つ、同例と同様の条件で紫外線照射を行った。紫外線照
射前の、皮膜の水との接触角は107度で照射後のそれ
は5度以下であり、照射により皮膜が高度に親水化した
ことが確認できた。
【0082】得られた塗装板を、耐雨垂れ汚染性の促進
試験機にセットし、屋外での曝露試験を実施した。3ヶ
月間の曝露の後に皮膜の汚染は全く認められず、極めて
耐雨垂れ汚染性に優れることが確認できた。したがっ
て、本発明の方法により形成される皮膜をトップコート
層として設けてなる無機質系の基材は、建築外装や建材
用途に有効に利用できることが明らかとなった。
【0083】
【発明の効果】本発明の親水性被膜の形成方法は、高度
の撥水性を有する複層皮膜から耐久性に優れる高親水性
皮膜を簡便に得ることが出来るという点で極めて実用性
が高い。かかる親水性皮膜をトップコート層として設け
てなる塗装物品は、防曇性、水の流下性、耐曝露汚染性
等の皮膜の親水性に由来する優れた性能を有するもので
あり、さらに、高撥水性部分と高親水性部分の両パター
ンを併有する塗装物品として利用する用途にも非常に有
用であり、極めて利用価値が高いものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09D 5/00 C09D 5/00 Z L 183/04 183/04 Fターム(参考) 4D075 BB46Y CA34 CA37 CA39 DB07 DB13 DC03 DC05 DC13 DC16 EB43 EC02 4F006 AA04 AA11 AA18 AA31 AA33 AA35 AA39 AA40 AA42 AB39 AB68 AB74 BA10 BA11 CA04 CA08 DA04 EA03 4F073 AA01 BA33 BB02 CA45 HA07 HA09 4J038 AA011 DL071 HA211 HA216 KA04 NA06 PA17 PA19 PB05 PB06 PB07 PC02 PC04 PC08

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材上に、光分解触媒としての機能を有
    する金属酸化物(A)の皮膜と、炭素数が5以上のフル
    オロアルキル基が結合した珪素原子を有するポリシロキ
    サン(B)の皮膜を順次形成せしめて複層皮膜を調製し
    た後、当該複層皮膜に活性エネルギー線を照射すること
    を特徴とする、親水性皮膜の形成方法。
  2. 【請求項2】 前記した、ポリシロキサン(B)の皮膜
    が、加水分解性基の少なくとも1個と炭素数が5以上の
    フルオロアルキル基が共に結合した珪素原子を有するオ
    ルガノシラン化合物を必須成分として含むシラン化合物
    もしくはその加水分解生成物から形成されるものであ
    る、請求項1に記載の親水性皮膜の形成方法。
  3. 【請求項3】 光分解触媒としての機能を有する金属酸
    化物(A)が、結晶性の酸化チタンである、請求項1ま
    たは2に記載の親水性皮膜の形成方法。
  4. 【請求項4】 活性エネルギー線の照射により、親水性
    皮膜と水との接触角を20度以下に低下せしめる、請求
    項1、2または3に記載の親水性皮膜の形成方法。
  5. 【請求項5】 前記した、活性エネルギー線が紫外線で
    ある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の親水性皮膜
    の形成方法。
  6. 【請求項6】 前記した基材が、基材上に予め花弁状ア
    ルミナ膜が形成された基材である、請求項1〜5のいず
    れか1項に記載の親水性皮膜の形成方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方
    法により形成される親水性皮膜をトップコート層として
    設けてなることを特徴とする、塗装物品。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN111155051A (zh) * 2019-12-23 2020-05-15 浙江万合邦新材料科技有限公司 一种不锈钢、不锈钢表面处理工艺及其在水槽制备中的应用
CN114730023A (zh) * 2019-11-15 2022-07-08 日产化学株式会社 带防眩层的基材和图像显示装置以及带防眩层的基材的制造方法

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