JP2000246253A - 水溶性潤滑油剤の殺菌装置 - Google Patents

水溶性潤滑油剤の殺菌装置

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JP2000246253A
JP2000246253A JP11345139A JP34513999A JP2000246253A JP 2000246253 A JP2000246253 A JP 2000246253A JP 11345139 A JP11345139 A JP 11345139A JP 34513999 A JP34513999 A JP 34513999A JP 2000246253 A JP2000246253 A JP 2000246253A
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cathode
anode
water
sterilizing
lubricating oil
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JP11345139A
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English (en)
Inventor
Takayuki Hirayama
隆之 平山
Futoshi Sunada
太 砂田
Yoshinori Mizuta
美能 水田
Shusaku Sakata
修作 坂田
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Eneos Corp
Original Assignee
Nippon Mitsubishi Oil Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水溶性潤滑油剤に影響を与えることなしに、
安定的に殺菌及び細菌の増殖抑制効果が得られ、かつ経
済性の高い殺菌装置を提供する。 【解決手段】 通電される陰極9及び陽極8が設けられ
た殺菌容器2内を、水溶性潤滑油剤が入る陰極部7と導
電性溶液が入る陽極部6とに仕切り、この仕切りの少な
くとも一部に、電極9,8間に電流が流れるように隔膜
10を配設して、陽極8で発生するプロトンの潤滑油剤
への流出を防止する。前記陰極9を、通電により水溶性
潤滑油剤を殺菌処理する殺菌種を発生させる殺菌種発生
陰極で構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は工作機械で使用され
る水溶性潤滑油剤を殺菌する水溶性潤滑油剤の殺菌装置
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】切削、研削等の工作機械では、水溶性切
削油・水溶性研削油等の水溶性潤滑油剤を用いて切削、
研削等を行う場合も多い。水溶性潤滑油剤は、浄化しな
がら循環させて再利用、すなわち、工作機械からの水溶
性潤滑油剤を油剤中の切削くず等の除去後、タンクに入
れ、タンクから工作機械に戻して再利用している。とこ
ろで、水溶性潤滑油剤は循環等の際に大気に開放された
系である場合には、使用時に生じる熱や夏期では気温上
昇に伴う熱により適度な温度に保たれている等の理由に
より微生物が容易に繁殖する。微生物が繁殖すると、腐
敗臭を放つばかりでなく、pHが低下して潤滑油剤の外
観が変化(エマルジョン破壊、油水の分離、黒色化等)
し、錆止め性の低下、潤滑性の低下をきたす。例えば、
水溶性潤滑油剤中の細菌数が105〜106個/ml以上
に増えると腐敗が進み、悪臭を出すことが知られてお
り、その臭いは特に嫌気性細菌に由来している。このた
め、数週間おき、又は休日等の長時間の操業中断の度に
殺菌剤、防腐剤等を添加している。あるいは、設備的な
対策法として、タンクにエアレーションを行う方法、水
蒸気を吹き込む方法(特開昭56−95992号公
報)、オゾン含有ガスを散気する方法(特開昭60−1
15697号公報)、超音波照射する方法(特開昭63
−245494号公報)、放射線照射する方法(特開平
2−212597号公報)、紫外線を照射する方法(特
開平4−264199号公報)、銀イオンや銅イオン等
の金属陽イオンを添加する方法(特開昭62−2155
07号公報、特開平2−29496号公報、特開平5−
230492号公報、特開平9−135885号公報)
等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、殺菌剤を使用
する方法では、効果の持続性が短いこと及び人体に対す
る悪影響があること等の不具合がある。また、空気や水
蒸気を吹き込む方法では、微生物の増殖抑制効果及び効
果持続性が低い等の不具合がある。また、オゾン含有ガ
スを散気したり、放射線や超音波を照射する方法は、水
溶性潤滑油剤のエマルジョンが破壊され、変質し、潤滑
油剤としての本来の性能が失われる恐れがあるばかりで
なく、設備費及び運転経費がかさむ等の不具合がある。
同様に、紫外線照射したり金属陽イオンを添加する方法
も、増殖抑制効果が低く、設備費及び運転経費がかさむ
等の不具合がある。従って、従来の方法では、いずれも
潤滑油剤への影響や経済性の点から十分な殺菌方法とは
いえない。一方、一般的に水溶液の殺菌方法として電極
を使った通電処理を施すことが知られている。しかし、
この方法を水溶性潤滑油剤に適用した場合、電気的酸化
還元により潤滑油剤中の添加剤等が変質してしまい、潤
滑油剤本来の性能が失われるばかりでなく、通電によっ
て生じるH+等の酸性種によりpHの低下が促進され、
結果的に微生物が増殖しやすくなるということがある。
そこで、本発明は、このような実状に鑑みなされたもの
であり、その目的は、水溶性潤滑油剤に影響を与えるこ
となしに、安定的に殺菌及び細菌の増殖抑制効果が得ら
れ、かつ経済性の高い殺菌装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、過酸化水
素のオンサイト生成技術を応用した。即ち、炭素電極を
使って微弱電圧を印加すると以下のような反応が陰極部
で生じ、過酸化水素イオンが生成することが一般的に知
られている(例えば、須藤雅夫著,化学工学,vol.
51,No.6,p417−419(1987))。 O2 + H2O + 2e- → HO2 - + OH- (1) あるいは陰極室に酸化還元化合物又は酸化還元樹脂
(Q)の存在下通電すると、以下のような反応がターン
オーバーし、過酸化水素が生成することも知られている
(例えば、特開昭61−284591号公報)。 Q + nH+ + ne- → HnQ (2) HnQ +(n/2)O2 → Q +(n/2)H22 (3) 同様に導電性ポリアニリン(PA)を陰極電極上に担持
させて通電すると、以下のような反応がサイクルで進
み、過酸化水素が生成することも知られている(K.Mori
ta et.al, Chem. Lett., 1996, p615、又はibid,vol.
15,No.5(1997))。 PA + nH+ + ne- → HnPA (4) HnPA +(n/2)O2 → PA +(n/2)H22 (5) しかし、これらの反応を利用すべく、陽極電極及び陰極
電極を水溶性潤滑油剤に浸せきし、通電を続けると、陽
極電極から以下のような反応機構で生成するプ 2H2O → O2 + 4H+ + 4e- (6) ロトンが徐々に潤滑油剤のpHを低下させ、錆止め性能
や潤滑性能を悪化させるばかりでなく、微生物の増殖を
促進してしまい、結果的に殺菌効果の持続性が非常に短
いものになってしまう。また、陽極電極上では常に物質
の酸化反応が進行し、潤滑油剤に含まれる添加剤等成分
の酸化分解を併発してしまう。そこで、本発明者らは陽
極電極を隔膜で隔離することで、水溶性潤滑油剤にプロ
トンが流出し難くなるばかりでなく、潤滑油剤の変性を
防ぐことができ、前記問題点を克服することができるこ
とを見いだし、本発明を完成するに至ったのである。
【0005】すなわち、本発明の水溶性潤滑油剤の殺菌
装置は、通電される陰極及び陽極が設けられた殺菌容器
内を、水溶性潤滑油剤が入る陰極部と導電性物質が入る
陽極部とに仕切り、この仕切りの少なくとも一部に、電
極間に電流が流れるように隔膜を配設し、かつ、前記陰
極が、通電により水溶性潤滑油剤を殺菌処理する殺菌種
を発生させる殺菌種発生陰極であるものである。
【0006】前記殺菌種発生陰極が炭素系電極であるこ
とが好ましい。前記殺菌種発生陰極が酸化還元能を有す
る有機化合物を担持させた電極であることが好ましい。
前記殺菌種発生陰極が酸化還元樹脂を担持させた電極で
あることが好ましい。前記殺菌種発生陰極が炭素系電極
又は酸化還元能を有する有機化合物を担持させた電極で
あることが好ましい。前記殺菌種発生陰極が炭素系電極
又は酸化還元樹脂を担持させた電極であることが好まし
い。前記殺菌種発生陰極が、炭素系電極又は酸化還元能
を有する有機化合物若しくは酸化還元樹脂を担持させた
電極であることが好ましい。前記酸化還元能を有する有
機化合物が、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキ
ノン、又はその誘導体であることが好ましい。前記酸化
還元樹脂がキノン系酸化還元樹脂であることが好まし
い。前記酸化還元樹脂がポリアニリンであることが好ま
しい。
【0007】前記陰極部に、水溶性潤滑油剤が導入され
る導入口と殺菌処理後の水溶性潤滑油剤を排出する排出
口とを設けることが好ましい。前記陰極部に、水溶性潤
滑油剤とその油剤に含まれる不純物を比重により分離
し、この分離した水溶性潤滑油剤を前記陰極と接触させ
る分離手段を設けることが好ましい。このように分離手
段を設けることにより、水溶性潤滑油剤の上層部に浮上
している、工作機械由来の機械油あるいは摺動面油が、
陰極電極や隔膜に付着するのを防ぐことが可能となる。
前記導電性物質はpH変動を抑制させるため緩衝液また
はアルカリ水溶液であることが好ましい。それらの導電
性溶液を陽極部に仕込んだ場合、電極から発生するプロ
トンが効率よく中和できるよう、溶液を撹拌する撹拌手
段を設けることが好ましい。前記アルカリ水溶液は、何
らかの障害で陽極部から漏れだしてしまうと人体にとっ
て非常に有害なことから、ゲル化剤を添加してゲル状に
して固体電解質とすることが好ましい。また、緩衝液は
ゲル化剤を添加してゲル状にして固体電解質として用い
てもよい。
【0008】前記陰極及び陽極への通電を行う電気制御
回路部に、電流の流れる方向を一時的に逆転させる極性
反転回路を設けることが好ましい。極性反転回路により
極性反転を行うことにより、運転中に電極や隔膜の表面
上に生じた汚れを除去することが可能となったり、ま
た、電流値が徐々に低下する場合にはその低下防止を図
れたりする。前記陰極部に前記水溶性潤滑油剤が連続的
に導入されると、陰極部に殺菌種が一定濃度以上蓄積さ
れず、完全な殺菌ができない状態が継続されることがあ
るため、使用途中から陰極上に微生物やカビが繁殖し、
最終的には殺菌種の発生効率が著しく低下してしまうこ
とがある。そこで、陰極部内を一定間隔で完全な無菌状
態に維持するため、陰極部内に一時的に高濃度の殺菌種
を蓄積させる方法として、陰極部への水溶性潤滑油剤の
供給は一定時間おきに一定時間だけ間欠的に行う間欠手
段を設けることが好ましい。前記殺菌容器において、そ
の寸法を小さくするため、1枚あるいは1本の陽極電極
に対して、その電極が中心に位置されるように隔膜を2
枚設置し、さらに陰極部の陰極を2枚の隔膜及び陽極を
挟むように2枚設置する構造の殺菌装置が好ましい。
【0009】このように、本発明は、陰極が殺菌種発生
陰極であるので、陰極から殺菌種が発生し、この殺菌種
により水溶性潤滑油剤が殺菌処理され、かつ、陰極と陽
極との間が隔膜で仕切られているので、陽極で発生する
プロトンの潤滑油剤への流出が防止されると共に、陰極
から発生した殺菌種が陽極で分解されることがないの
で、より安定して潤滑油剤の殺菌処理を行える。したが
って、水溶性潤滑油剤に影響を与えることなく、潤滑油
剤の殺菌処理を安定的に行えることになり、経済性が高
いものとなる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付
図面に基づいて詳述する。図1は本発明の水溶性潤滑油
剤の殺菌装置の第1の例を示す図である。図1におい
て、1は水溶性潤滑油剤の殺菌処理を行う殺菌装置を示
し、この殺菌装置1の容器2はどのような形状の容器で
も良く、例えば水平断面矩形、正方形状等の箱状(図
1、図6及び図7参照)、水平断面H型状(図5参照)
等のものが用いられる。容器2の材質は絶縁性でかつ水
溶性潤滑油剤に浸食されないものであれば、特に限定さ
れず、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化
ビニル、ポリアクリル、NBR等が用いられる。殺菌装
置1は、例えば、図9に示すように、切削、研削等の工
作機械に用いられている水溶性潤滑油剤の貯蔵タンク3
に送液ポンプ4を介して接続され、その送液ポンプ4に
より送られてくる水溶性潤滑油剤を殺菌処理した後、再
び貯蔵タンク3に戻すように配設される。本発明におけ
る水溶性潤滑油剤とは、鉱油系基油、合成油系基油、油
脂系基油若しくはこれらの中から選ばれる2種以上の混
合基油又はこれらに1種若しくは2種以上の機能性添加
剤を含有させた油剤を、必要に応じて乳化剤を用いるこ
とにより、水に分散、乳化又は可溶化させてなる潤滑油
剤のことであり、一般に、切削加工、研削加工、引き抜
き加工、圧延加工、絞り加工、しごき加工等の金属加工
油や、油圧作動油、工業用ギヤ油等として用いられるも
のである。
【0011】殺菌容器2内は図1に示すように陽極部6
と陰極部7とに区画形成され(仕切られ)、陽極部6と
陰極部7とは、液等の流出入が阻止されている。陽極部
6と陰極部7との形状すなわち仕切りの形状は、特に限
定されず任意の形状を選択することができ、例えば、殺
菌容器2が図1に示すように箱状に形成されている場合
には、陽極部6は、容器2内の一角(図1(a)では右上
角)に水平断面長方形状にその長手方向が容器の長手方
向に沿うように設けられていると共に、底面が容器2底
面より所定の高さ離間した位置に形成されている。陽極
部6内は、導電性物質が導入されていると共に、この導
電性物質に埋没するように陽極8が設けられている。導
電性物質としては陽極8から生成するプロトンによるp
H変動を小さく維持できるものであれば特に限定され
ず、たとえばpH領域がアルカリ性の緩衝液、アルカリ
水溶液等が好ましく利用される。具体的には、アルカリ
性の緩衝液については、例えば、pHを7以上に設定し
た硼酸+塩化カリウム+水酸化ナトリウム、グリシン+
水酸化ナトリウム、ほう砂+塩酸、ほう砂+水酸化ナト
リウム、ほう砂+炭酸ナトリウム、塩酸+炭酸ナトリウ
ム、リン酸水素二ナトリウム+水酸化ナトリウム、ジメ
チルグリシンナトリウム+塩酸、ほう砂+塩化カリウム
+炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム+炭酸水素ナトリウ
ム、リン酸水素二ナトリウム+リン酸水素二カリウム等
が挙げられるが、これらに限定されるものではない。こ
れらの電解質濃度は長期通電による析出がなければ、特
に限定はないが、好ましくは30質量%以下に設定され
る。また、緩衝液はゲル化剤を添加してゲル状にして固
体電解質として用いてもよい。一方、アルカリ水溶液に
ついては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基
性無機化合物を水に溶解させたもの等が使用できる。こ
れらの塩基性無機化合物濃度は長期通電による析出がな
ければ、特に限定はないが、5〜50質量%に設定さ
れ、好ましくは10〜40質量%に設定される。また、
アルカリ水溶液は、何らかの障害で陽極部6から漏れだ
してしまうと人体にとって非常に有害なことから、ゲル
化剤を添加してゲル状にし、流動性を低下させることが
好ましい。ゲル化剤としては、特に限定はないが、具体
的には例えば、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸
ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デンプン、
ポバール、寒天、ポリエチレングリコール、ポリビニー
ルピロリドン等が好ましく挙げられ、これらゲル化剤の
うち任意のものは適当な架橋剤で処理して架橋型ポリマ
ーに変性してから使用するようにしても良い。これらゲ
ル化剤は、1種類又は2種類以上のものを適当な量比で
混合したものを添加するが、その添加量は特に限定され
ず、例えば、電解液に対して0.1〜20質量%である
ことが好ましく、特に0.5〜10質量%であることが
より好ましい。
【0012】陽極8は、電解によって陰極9に過酸化水
素を発生させるための対極であり、特に制限されない
が、陽極物質が溶出すると隔膜10を汚染する恐れがあ
るため、アルカリ溶液中で溶出せず、かつ酸化反応に対
する耐性が高い金属を使用することが好ましい。陽極物
質としては、過電圧が小さく、しかも消耗が他の金属や
酸化物と比較して極めて小さく、従って長期間殆ど変化
することなく使用できる金、白金、イリジウム、ルテニ
ウム、ニッケル、チタン等の金属又はそれらの酸化物が
使用できる。さらに、単位面積当たりの表面積が大きい
金属ウエッブも使用することができる。金属ウェッブの
材質としては、ニッケル、ステンレススチール、鉄、
銅、白金、及びそれらの合金等が挙げられる。陽極8の
形状としては特に制限はないが、板状、網状あるいは棒
状のものが好ましく使用される。例えば矩形状の寸法安
定性電極板が使用され、この電極板が図1に示すように
立設されている。また、陽極部6には、緩衝液、アルカ
リ水溶液等の導電性溶液を仕込んだ場合、導電性溶液を
撹拌するための撹拌手段11を設置しても良い。この撹
拌手段11は溶液の撹拌を行えるならばどのようなもの
でも良く、例えば撹拌子とこの撹拌子を回転させるマグ
ネットスターラーとにより構成しても良く、又、図示す
るように陽極部6内に撹拌翼12を回転自在に設け、こ
の撹拌翼12を例えば交流電源13が接続された撹拌モ
ータ14により回転駆動させるようにしても良いし、さ
らにポンプ循環方式、通気撹拌方式等も好ましく採用す
ることができる。なお、図中、15は通気穴を示す。
【0013】陰極部7内はさらに殺菌室16と液流入室
17とに区画形成され(仕切られ)、これら殺菌室16
と液流入室17との形状は特に限定されず任意の形状を
選択することができる。例えば、殺菌室16は底面が陽
極部6と同じ高さで、陽極部6の2側面を囲繞するよう
に水平断面L字状に形成されている。すなわち、殺菌室
16と陽極部6とで全体として水平断面矩形状に形成さ
れている。殺菌室16と液流入室17との仕切り及び前
記陽極部6と陰極部7(殺菌室16)との仕切りは、液
等の流出入が阻止されるならばどのようなものを用いて
も良く、例えば絶縁性材料で形成された仕切り材で仕切
るようにしても良い。
【0014】殺菌室16内には、前記陽極8と対向する
ように陰極9が設けられている。この陰極9は通電によ
り過酸化水素、活性酸素等の殺菌種を発生させる電極で
あり、例えば、炭素系電極、酸化還元能を有する有機化
合物を担持させた電極、あるいは酸化還元樹脂を担持さ
せた電極等が用いられ、これら電極を用いることによ
り、20V以下の通電でも過酸化水素を発生させること
が可能となる。炭素系電極としては、オンサイト型の過
酸化水素製造に適用できるものであれば特に制限はな
く、例えば、グラファイトフェルト、黒鉛、炭素繊維材
料、多孔質の無定形炭素成形体等が挙げられる。黒鉛と
してはコークスを押出成形・焼成したものやモールド成
形したもの等が挙げられる。炭素繊維材料としては、炭
素繊維の編物を例示することができ、炭素繊維の編物と
しては、例えば市販のCFクロスを挙げることができ
る。CFクロス以外の炭素繊維材料であっても良い。多
孔質の無定形炭素成形体としては,グラッシーカーボン
(ガラス状炭素)を例示することができる。酸化還元能
を有する有機化合物としては、例えば、ベンゾキノン、
ナフトキノン、アントラキノン、又はその誘導体等が挙
げられる。その誘導体としては、例えば具体的に、メト
キシベンゾキノン、2−tert−ブチルベンゾキノ
ン、2,5−ジフェニルベンゾキノン、2,6−ジメチ
ルベンゾキノン、2,6−ジ−tert−ブチルベンゾ
キノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアント
ラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−
ニトロアントラキノン、1−(又は2−)クロロアント
ラキノン、1,5−(又は1,4−又は1,8−)ジク
ロロアントラキノン等が挙げられる。酸化還元樹脂とし
ては、例えば、キノン系酸化還元樹脂、ポリアニリン等
が挙げられる。キノン系酸化還元樹脂を担持させた電極
としては、ベンゾキノン系樹脂として、ヒドロキノン−
ホルムアルデヒド縮合樹脂(Manecke, Z. Elektroche
m., 57,189(1953))やヒドロキノン−(ジアゾ化ポリ−
p−アミノスチレン)縮合樹脂(Raoら,Chem. Ind.(Lo
ndon), 145(1961))、アントラキノン系樹脂として2−
ホルミルアントラキノン−ポリビニルアルコール縮合樹
脂(Izoretら,Ann. Chim., 254, 671(1962))等が挙げ
られるが、これらに限定されるわけではない。これらの
化合物又は樹脂を電極に担持するには、メタノール、イ
ソプロピルアルコール、アセトン、ハロゲン溶媒等に溶
解又は分散した後、その溶液に支持基板を浸せきして引
き上げ、風乾する方法や、その溶液をスプレー法等によ
り支持基板に塗布する手段がとられる。支持基板として
は導電性であれば特に制限はなく、グラファイト、CF
クロス、黒鉛等の炭素電極やチタン白金、銅メッシュ等
の金属電極が使われる。それらの支持基板は該有機化合
物の吸着力を引き上げるため、シラン系やチタニウム系
等のカップリング剤等で表面処理しても構わない。ま
た、導電性ポリマーポリアニリンを担持した電極は、市
販のポリアニリン分散溶液(ORMECON社製 ORMEC
ONTM Dispersion 900132)に支持基板を浸せきして引き
上げ、風乾する方法や、その溶液をスプレー法等により
支持基板に塗布して作製することができる。支持基板と
しては導電性であれば特に制限はなく、グラファイト、
CFクロス、黒鉛等の炭素電極やチタン白金、銅メッシ
ュ等の金属電極が使われる。それらの支持基板は該有機
化合物の吸着力を引き上げるため、シラン系やチタニウ
ム系等のカップリング剤等で表面処理しても構わない。
その他のポリアニリンの担持方法として、電解重合法
(材料技術,vol. 15,No.5,p165(1997))
も適用できる。
【0015】陰極9は、過酸化水素、活性酸素等の殺菌
種を発生させるものであり、表面積を大きくすればその
分過酸化水素の発生量が増えるので、表面積が大きい方
がよい。また、隔膜10の面積は、小さすぎると電流値
の低下が著しくなり、大きすぎると装置の耐久性が低下
するので、陰極9に対して1/10〜20/10が好ま
しく、特に5/10〜10/10が好ましい。また、陽
極8の陰極9に対する面積比は電流値が極端に低下しな
い範囲であれば特に限定はなく小さくできる。図示例で
は、陰極9は陽極8と同じ寸法形状に形成され、殺菌室
16内の長部(L字の長い部分(殺菌部))16aに立
設されている。隔膜10の面積が大きい場合、強度を補
強するために、殺菌室16側、隔膜10前面に支持体を
設けるようにしても良い。
【0016】この陰極9と前記陽極8とが電気制御回路
部18から供給される定電圧直流の電源に接続されて、
通電されるようになっている。直流電源の電圧は水溶性
潤滑油剤の性能に影響を与えない範囲であれば特に制限
なく少ない消費電力で良く、具体的には例えば20V以
下で良く、特に10V以下が好ましい。陰極9と陽極8
とへの通電は連続でも間欠でもよいが、電極表面上への
有機物付着を防ぐために、連続の方が好ましい。また、
電気制御回路部18には極性反転回路が備えられ、この
極性反転回路は、一時的に逆電流を流す、つまり、一定
時間毎に陽極−陰極間の電圧を、一定時間(短時間)、
自動的に反転させるものである。電流方向を逆転させる
時間は、特に制限はないが、長すぎると過酸化水素発生
量が低下するばかりでなく、既に生成した過酸化水素の
分解量が増加する。一方、短すぎると、陰極(陰極板)
の表面の汚れが十分にとれないため、装置寿命が短くな
ることがある。したがって、電流方向の逆転時間の総和
は、24時間あたり30秒以上、10時間以下であるこ
とが好ましく、より好ましくは、24時間あたり1分以
上、6時間以下である。なお、極性反転操作は24時間
あたり数回に分けて行っても良く、例えば4時間おきに
極性反転を10分間行う操作を繰り返し行っても良い。
このように極性反転させることにより、運転中に電極
8,9や隔膜10表面上に生じた汚れを除去することが
でき、また、電流値が徐々に低下する場合にはその低下
防止を図れる。さらに、極性反転の効果は、陰極表面に
吸着した水溶性潤滑油剤に含まれる添加剤(カチオン性
長鎖アルキル化合物)成分、あるいはそれらが含まれる
ミセルを脱離させることができると共に、電極表面への
カビ付着を防止することができる。これにより、腐敗液
を殺菌装置に導入した場合、工作機械タンク内の菌数が
減るまで電極表面にカビやスライムが付着するので、極
性反転は特に効果的である。
【0017】この陰極9と陽極8との間に位置する仕切
りの一部は隔膜10で形成されており、陰極9と陽極8
との間で電流が流れるようになっている。隔膜10とし
ては特に制限はないが、電子絶縁性で多孔質なフィルム
を好ましく使用でき、具体的には基材にポリ塩素化エチ
レン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はポリテ
トラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポ
バール(PVA)、セルロースを使ったもの等が使用で
きる。これらの基材は適当な量比で共重合させても良
い。また、それらの基材に添加剤を付与して化学修飾し
たものも好ましく使用される。陰極9の設置位置は、隔
膜10の正面に位置し、陰極9と隔膜10の間隔(距
離)は特に限定されないが、高い電流値が得られるよう
できるだけ短い方が良く、好ましくは0〜50cmであ
り、より好ましくは0〜20cmである。
【0018】殺菌室16の短部(L字の短い部分(流入
部))16bには、水溶性潤滑油剤に含まれる不純物
(工作機械等から持ち込まれたしゅう動面油、軸受け
油、ギヤ油等のマシン油等)の殺菌室16内への流入を
防止する分離手段19の主たる構成要素である液流入調
整器20が設けられている。液流入調整器20は、重力
方向に沿って延在し、下部が重力方向下方に向けて開口
されると共に、この開口部が殺菌室16の底面を貫通し
て液流入室17内に位置されている液流入管21と、そ
の液流入管21の上部にその長手方向(軸方向)に沿っ
て移動可能に設けられ、液流入管21内を上昇した液を
殺菌室16に流出させる流出調節部22とから主に構成
され、流出調節部22の重力方向の位置(高さ)を上下
に適宜調節することにより、殺菌室16内への液の流入
位置を調節することが可能である。また、殺菌室16に
は水溶性潤滑油剤を撹拌するための撹拌手段を設けるよ
うにしても良く、この場合、当然のことながら殺菌室1
6の上方は開放系になっている。撹拌手段は撹拌モータ
によって撹拌翼を回転させる方式をとることができる
が、これらに限定されるものではなく、例えば、マグネ
ットスターラー方式、ポンプ循環方式、通気撹拌方式等
も好ましく採用することができる。
【0019】殺菌容器2の側部には、前記送液ポンプ4
の送出系統に接続され、水溶性潤滑油剤を液流入室17
に導入する導入口23が設けられている。なお、導入口
に間欠手段を設けて、陰極部7内への水溶性潤滑油剤の
導入を一定時間おきに一定時間だけ間欠的に行うように
しても良い。液流入室17(殺菌容器2)には室17内
に溜まった液の上部を前記不純物と共に溢流させる分離
手段19の一構成要素である廃液排出口24が設けられ
ていると共に、殺菌室16(殺菌容器2)には殺菌処理
後の液が溢流する殺菌液排出口25が設けられている。
この殺菌液排出口25の設置位置は、殺菌室16内に流
入した水溶性潤滑油剤で陰極9が埋没するのに十分な位
置であり、廃液排出口24は殺菌液排出口25より重力
方向上方の適宜の位置に配置される。
【0020】また、陽極部6を交換可能なカートリッジ
式の箱状の陽極ボックスで形成しても良く、同様に、殺
菌室16も交換可能なカートリッジ式の箱状の殺菌室ボ
ックスで形成しても良い。これらカートリッジ式のボッ
クスの形状は箱状であれば特に限定されず任意の形状の
ものを選択することができる。このように交換可能なカ
ートリッジ式のボックスにすれば、陽極部6又は、陽極
部6及び殺菌室16の交換を容易に行えるようになる。
【0021】具体的には、例えば陽極ボックスは、図2
に示すように、ボックス本体50、パッキン51、隔膜
52、支持板53、フレーム54、及び固定手段である
ネジ55等により構成されている。ボックス本体50は
箱状に形成され、一側面に矩形状の開口部56が設けら
れている。ボックス本体50の上部には開閉可能なコッ
ク57が取り付けられ、このコック57は通電開始時に
は開状態に維持されてボックス本体50内のガス(酸素
ガス)がリークするようになっていると共に、導電性物
質を開口部56からフィードする際には閉状態に保持さ
れる。ボックス本体50内には、陽極8である電極板が
着脱自在に取り付けられ、この電極板と、ボックス本体
50の上部に突出している結線用端子58とが接続され
ている。ボックス本体50の開口部56の周囲には、前
記ネジ55と螺合するネジ孔59が多数穿設されてい
る。パッキン51、隔膜52、支持板53及びフレーム
54は、それぞれほぼ同一の形状、つまり前記ボックス
本体50の一側面より小さな矩形状に形成されている。
パッキン51は、中央部に前記開口部56と同形状の開
口部60を有すると共に、この開口部60の周囲に前記
ネジ孔59と同位置に前記ネジ55が貫通する孔61が
多数設けられている。支持板53には、前記ネジ55が
貫通する孔62が多数設けられていると共に、中央部に
複数の穴63が設けられている。これら穴63の形状
は、特に限定されず、図2に示すように円形穴63aで
も良いし、図3に示すように正方形穴63b又は長方形
穴63cでも良い。フレーム54は、パッキン51とほ
ぼ同形状、すなわち開口部64を有すると共に多数の孔
65が設けられている。フレーム54は液漏れを軽減で
きるよう、金属製のものが好ましく、ボックス本体5
0、支持板53は絶縁性の樹脂であることが好ましく、
もしそれらの材質を金属製のものにする場合には、結線
用端子58のボックス本体50との接触部分は絶縁材に
より保護しておくことにより好ましく使用することがで
きる。
【0022】ボックス本体50内に開口部56を介して
陽極8を取り付けると共に導電性物質を入れた後、ネジ
穴59の位置に合わせてパッキン51を重ね、その上に
隔膜52を重ねる。隔膜52の上には支持板53を重
ね、支持板53の上にはフレーム54を重ねる。そし
て、ネジ55によってこれら部材をボックス本体50に
固定して一体化することにより、外部に導電性物質が流
出しない陽極ボックス66が形成される。このように、
陽極部6を交換可能なカートリッジ式の箱状の陽極ボッ
クス66で形成した場合には、この陽極ボックス66を
図4に示す容器2内の所定の位置に取り付けることによ
り、図1に示すような殺菌装置1が得られる。
【0023】なお、隔膜の陽極ボックスへの固定手段は
液漏れが生じない方法であれば特に限定されず、前記の
ようにネジ止め方式等が挙げられる。また、前記カート
リッジは気相中で保存する際、隔膜からのアルカリの浸
みだしを防ぎ、また、物理的に損傷するのを防ぐため
に、保存中には隔膜表面または支持板表面に保護フィル
ムを貼り付けておくことが好ましい。
【0024】また、陽極ボックスの構造は図2に示す構
造を採用することができるが、他の構造を採用しても良
く、例えば箱形の場合、図8に示したような形態をとる
ことも可能である。図8は陽極ボックスの断面図であ
る。(a)は陽極1枚に対して片側の側面にのみ隔膜を
有する形態であり、図1に示す殺菌装置1に対応でき
る。陽極室100内の導電性物質の撹拌は、陽極ボック
ス101の底部に設置されたギヤ付き撹拌翼102によ
り行われる。ギヤ103は陽極ボックス101を殺菌室
に設置した際、殺菌室底部にある撹拌モータから突き出
している撹拌棒先端のギヤに接続されるように設置され
る。さらに(a)に示す陽極ボックス101における撹
拌翼102を除去した形態の陽極ボックスは図6に示す
殺菌装置に対応できる。また、(b)は陽極1枚に対し
て両側面に計2枚の隔膜を有する形態であり、図7に示
す殺菌装置に対応できる。さらに、(c)は陽極8を2
枚有する形態であり、各々の陽極8,8は中心の絶縁板
104により仕切られている。隔膜は各々の陽極8,8
に対して1枚ずつ、計2枚設置される。(b)に示した
構造より複雑になるが、(c)に示した構造をとると、
陰極板2枚に対して(b)に示した構造よりもより効率
的に電気を流すことが可能となる。なお、図中、105
はネジ、106はフレーム、107は支持板、108は
パッキンをそれぞれ示す。
【0025】次にこの殺菌装置1を用いて水溶性潤滑油
剤を殺菌する場合について述べる。まず、陽極部6内の
導電性物質が導電性溶液である場合には、図1に示すよ
うに撹拌手段11を設け、その撹拌翼12を回転駆動さ
せて導電性溶液を撹拌させると共に、水溶性潤滑油剤を
導入口23を介して容器2内の液流入室17に導入させ
る。水溶性潤滑油剤は液流入室17内に溜り、そして室
17内の底面近傍の液の一部が液流入調整器20を介し
て殺菌室16に導かれると共に、液流入室17内の上部
の液の一部が前記不純物と共に廃液排出口24に溢流し
て殺菌容器2外に排出される。水溶性潤滑油剤には、上
述したような不純物(工作機械等から持ち込まれたしゅ
う動面油、軸受け油、ギヤ油等のマシン油等)が混入し
ており、この不純物が殺菌室16内に流入すると、電極
9及び隔膜10に付着して過酸化水素の発生を阻害する
等の不具合が生じるが、不純物は廃液排出口24から殺
菌容器2外に排出されるので、その心配はない。すなわ
ち、マシン油等の不純物は水溶性潤滑油剤より比重が小
さいため、液流入室17に入ると上部に浮いて2層に分
離し、この上層の不純物が廃液排出口24から容器2外
に排出されるので、殺菌室16内には不純物が流入する
ことがない。
【0026】一方、水溶性潤滑油剤が流入した殺菌室1
6内には陰極9が配設されており、この陰極9及び陽極
8を通電する。これにより、陰極9から過酸化水素等の
殺菌種が発生し、この殺菌種により水溶性潤滑油剤が殺
菌されると共に微生物の増殖が抑制されて殺菌処理さ
れ、この殺菌処理された水溶性潤滑油剤が殺菌液排出口
25に溢流する。この際、陰極9と陽極8とは隔膜10
で仕切られているので、陽極8でプロトンが生成しても
このプロトンが殺菌室16に流入することがないので、
水溶性潤滑油剤のpHを低下させることがない。その結
果、錆止め性能や潤滑性能の悪化が防止できるばかりで
なく、微生物の増殖を促進してしまうことがない。ま
た、陰極9から発生した殺菌種が陽極8で分解されるこ
とがないので、より安定して潤滑油剤の殺菌処理を行え
る。また、陽極部6内の導電性物質が導電性溶液である
場合には、導電性溶液を撹拌することにより、陽極8か
ら発生するプロトンを効率よく中和することができる。
【0027】したがって、本発明は、陰極9から殺菌種
を発生させ、この殺菌種により水溶性潤滑油剤を殺菌処
理すると共に、陰極9と陽極8とを隔膜10で仕切り陽
極8で発生するプロトンの潤滑油剤への流出を防止した
ので、水溶性潤滑油剤に影響を与えることなく、潤滑油
剤の殺菌処理を安定的に行えることになり、経済性が高
いものである。また、殺菌室16内に流入した潤滑油剤
は流入部16bから殺菌部16aを介して殺菌液排出口
25に溢流する、つまり潤滑油剤は陰極9の前面を通る
ので、陰極9からの殺菌種により、より確実に殺菌処理
されることになる。さらに、導入口23の水溶性潤滑油
剤の上流側にベルト式やポンプ汲み上げ式のスキミング
装置等を設置するようにしてもよく、このようにすれば
マシン油との分離をより効果的に行えることになる。
【0028】また、陽極部6は、通電で生じたプロトン
により導電性物質に含有されるアルカリが中和されるの
に伴い電流値が低下するため、定期的に導電性物質を新
鮮なものと交換しなければならず、陽極部6を例えば図
2に示すように交換可能なカートリッジ式に形成するこ
とにより、容易に導電性物質を交換することができ、効
率がよくなる。さらに、前記カートリッジは隔膜部分が
取り外しできるので、容易に導電性物質を詰め替えられ
るばかりでなく、隔膜も新品と交換できる。
【0029】なお、本発明の実施の形態では、殺菌容器
内部は、導入された水溶性潤滑油剤に液溜まりができな
いような構造にしておき、工作機械等から持ち込まれた
しゅう動面油、軸受け油、ギヤ油等のマシン油等の不純
物が電極及び隔膜に付着するのを防ぐために、2槽式の
比重分離構造である分離手段を設けたが、水溶性潤滑油
剤にマシン油等の不純物が含まれていないならば、分離
手段を設けなくても良いことは勿論である。また、殺菌
装置の殺菌容器を図9に示すように貯蔵タンクとは別に
設けたが、その貯蔵タンクを殺菌容器として兼用するこ
とができるならば、その貯蔵タンクを用いて殺菌装置を
構成するようにしても良い。
【0030】図5は本発明の水溶性潤滑油剤の殺菌装置
の第2の例を示す図であり、この殺菌装置43は、殺菌
容器2の形状がH型状であるものである。殺菌容器2
は、一方が陽極26が配設される陽極部27に、他方が
陰極部28となるようなH型状に形成され、その連通部
29に隔膜30が設けられている。陽極部27内には連
通部29の近傍に陽極26が設置されていると共に導電
性溶液が入れられ、かつ、撹拌モータ31により回転駆
動される撹拌翼32が回転自在に設けられている。
【0031】陰極部28内には、連通部側(殺菌室3
3)とその反対側(液流入室34)とに仕切る隔壁35
が設けられ、この隔壁35の下部に殺菌室33と液流入
室34との流体の流出入が行えるように隙間が設けられ
ている。液流入室34(殺菌容器2)には導入口36が
設けられていると共に廃液排出口37が設けられてい
る。なお、導入口に間欠手段をを設けて、陰極部内への
水溶性潤滑油剤の導入を一定時間おきに一定時間だけ間
欠的に行われるようにしても良い。殺菌室33内には、
連通部29の近傍に前記陽極26に対向するように陰極
38が設けられ、この陰極38と陽極26との間に隔膜
30が位置されている。また、殺菌室33内の中央部に
は、液面レベル調整器39が設けられ、この液面レベル
調整器39は、重力方向に沿って延在し、下部が重力方
向下方に向けて開口されると共に、この開口部が殺菌室
33の底面を貫通して殺菌液排出口40となる液排出管
41と、その液排出管41の上部にその長手方向に沿っ
て移動可能に設けられ、殺菌室33内の液を液排出管4
1内に流出させる液面調節部42とから主に構成され、
液面調節部の重力方向の位置を上下に適宜調節すること
により、殺菌室33内の液面の高さが調節できるように
なっている。
【0032】このように構成しても、前述と同様の作用
効果を奏する。すなわち、陽極部27内の導電性物質が
導電性溶液である場合には、図5に示すように撹拌翼3
2を回転駆動させて導電性溶液を撹拌させると共に、導
入口から水溶性潤滑油剤を殺菌容器2内の液流入室34
に導入させつつ、陽極26と陰極38とに通電を行う。
液流入室34内に入った水溶性潤滑油剤のうち底面近傍
の液は、隔壁35の隙間から殺菌室33に流入し、そし
て殺菌室33内を上昇し、一方、液流入室34内に溜ま
った上部の液は不純物と共に廃液排出口37に溢流して
殺菌容器2外に排出される。これにより、水溶性潤滑油
剤に含まれる不純物が殺菌室33内に流入することが防
止され、電極38及び隔膜30に不純物が付着して過酸
化水素の発生阻止等の不具合が生ずることを防止でき
る。
【0033】殺菌室33内に流入した水溶性潤滑油剤は
室33内を上昇し、陰極38から発生する殺菌種により
殺菌処理され、処理後、液面調節部42に溢流して、液
排出管41を介して殺菌液排出口40から排出される。
この際、陰極38と陽極26とは隔膜30で仕切られて
おり、陽極26でプロトンが生成してもこのプロトンが
殺菌室33に流入することがないので、水溶性潤滑油剤
のpHを低下させることがない。その結果、錆止め性能
や潤滑性能の悪化が防止できるばかりでなく、微生物の
増殖を促進してしまうことがない。また、陰極38から
発生した殺菌種が陽極26で分解されないので、より安
定して潤滑油剤の殺菌処理を行える。したがって、本発
明の第2の殺菌装置は、陰極38から殺菌種を発生さ
せ、この殺菌種により水溶性潤滑油剤を殺菌処理すると
共に、陰極38と陽極26とを隔膜30で仕切り陽極2
6で発生するプロトンの潤滑油剤への流出を防止したの
で、水溶性潤滑油剤に影響を与えることなく、潤滑油剤
の殺菌処理を安定的に行えることになり、経済性が高い
ものである。
【0034】図6は本発明の水溶性潤滑油剤の殺菌装置
の第3の例を示す図であり、この殺菌装置70と第1の
殺菌装置1との異なるところは、主に殺菌室71の形状
及び流路切替手段72を設けた点である。前記第1の殺
菌装置1と同一のものには同一の符号を付しその説明を
省略する。
【0035】陽極部6には、緩衝液、アルカリ水溶液等
の導電性溶液を陽極部6内に仕込んだ場合、図6に示す
ように導電性溶液を撹拌するための撹拌手段73を設置
しても良く、この場合、当然のことながら、陽極部6の
上方部は開放系になっている。撹拌手段73は撹拌モー
タ74によって撹拌翼75を回転駆動させる方式をとる
ことができるが、これらに限定されるものではなく、例
えば、マグネットスターラー方式、ポンプ循環方式、通
気撹拌方式等も好ましく採用することができる。また、
陽極部6を前述同様に交換可能なカートリッジ式の箱状
の陽極ボックスで形成しても良い。
【0036】殺菌室71は、陽極部6とほぼ同一の水平
断面矩形状に形成され、陽極部6の一側面に接するよう
に設けられている。殺菌室71内には、陰極9が陽極8
と対向するように設けられ、これら陰極9と陽極8との
間に隔膜10が配設されている。殺菌室71には水溶性
潤滑油剤を撹拌するための撹拌手段76が設けられ、こ
の撹拌手段76により電流値の低下を防ぐことが可能と
なり、この場合、当然のことながら殺菌室71の上方は
開放系になっている。撹拌手段76は撹拌モータ77に
よって撹拌翼78を回転駆動させる方式をとることがで
きるが、これらに限定されるものではなく、例えば、マ
グネットスターラー方式、ポンプ循環方式、通気撹拌方
式等も好ましく採用することができる。また、殺菌室7
1を交換可能なカートリッジ式の箱状のボックスで形成
しても良い。殺菌容器2の側部(液流入室79)に設け
られている導入口23には、三方電磁弁等の流路切替手
段72が介設されている。流路切替手段72はタイマ8
0を備え、通常は水溶性切削油剤を水溶性切削油排出口
81から貯蔵タンク3に戻すが、タイマ80により一定
時間おきに一定時間だけ流路(油剤の流れ)を切り替
え、液流入室79(殺菌容器2)に水溶性切削油剤が導
入されるようにする。このように間欠式にして一定時間
おきに殺菌室71に油剤を流入させる場合には、高濃度
の過酸化水素が殺菌室71内に蓄積されたときに極性反
転回路により極性を長時間反転させると、蓄積された過
酸化水素が大量に分解することがあるので、殺菌室71
内の油剤が循環している間に極性反転を行うようにする
ことが好ましい。極性反転の開始は、殺菌室71内の油
剤の循環が開始されたと同時に行っても良いが、好まし
くは、殺菌室71内の油剤の循環が開始され、殺菌室7
1内の過酸化水素濃度が水溶性潤滑油剤の貯蔵タンク内
の濃度と等しくなった後に行うようにする。
【0037】このように殺菌装置70を構成しても、前
述と同様の作用効果を奏する。すなわち、水溶性潤滑油
剤は導入口23から流路切替手段72を介して殺菌容器
2内の液流入室79に導入され、一定時間後に、流路切
替手段72により流路が切り替わり、水溶性切削油排出
口81から排出される。液流入室79内に入った水溶性
潤滑油剤は、底面近傍の液が液流入管21を通り流出調
節部22から殺菌室71に至りそこに溜められる。他
方、上層の液は廃液排出口24から容器2外に排出され
るので、水溶性潤滑油剤に不純物(工作機械等から持ち
込まれたしゅう動面油、軸受け油、ギヤ油等のマシン油
等)が混入しても、殺菌室71内には不純物が流入する
ことがない。このように、水溶性潤滑油剤に含まれる不
純物が殺菌室71内に流入することが防止されることに
より、電極9及び隔膜10に不純物の付着による過酸化
水素の発生阻止等の不具合が生ずることがなくなる。殺
菌室71内の水溶性潤滑油剤は、撹拌翼78の回転駆動
により撹拌され、他方、陽極部6内の導電性溶液は撹拌
翼75の回転駆動により撹拌される。これら殺菌室71
及び陽極部6内の陰極9及び陽極8への通電により、殺
菌室71内に蓄えられた水溶性潤滑油剤は、陰極9から
発生する殺菌種により殺菌処理される。殺菌処理された
一定時間後に流路切替手段72により流路(水溶性潤滑
油剤の流れ)が液流入室79側に切り替わり、容器2に
水溶性潤滑油剤が流入する。これにより、殺菌室71内
の殺菌処理された水溶性潤滑油剤が殺菌液排出口25か
ら排出される。
【0038】したがって、本発明の第3の殺菌装置70
は、陰極9から殺菌種を発生させ、この殺菌種により水
溶性潤滑油剤を殺菌処理すると共に、陰極9と陽極8と
を隔膜10で仕切り陽極8で発生するプロトンの潤滑油
剤への流出を防止したので、水溶性潤滑油剤に影響を与
えることなく、潤滑油剤の殺菌処理を安定的に行えるこ
とになり、経済性が高いものである。また、殺菌室71
に水溶性潤滑油剤が連続的に導入されると、殺菌種が一
定濃度以上蓄積されず、完全な殺菌ができない状態が継
続されることがある。この場合、使用途中から陰極上に
微生物やカビが繁殖し、最終的には殺菌種の発生効率が
著しく低下してしまうことがあるが、水溶性潤滑油剤の
導入は一定時間おきに一定時間だけ間欠的に行われるた
め、殺菌室71内では高濃度の殺菌種が蓄積され、流路
が切り替わって殺菌液排出口25から流出するまで殺菌
室71は完全な無菌状態を達成できるので、殺菌室71
のクリーニングも兼ね添えることができる。
【0039】図7は本発明の水溶性潤滑油剤の殺菌装置
の第4の例を示す図であり、この殺菌装置85と第1の
殺菌装置1との異なるところは、主に陽極(陽極電極
板)8が1つであるのに対して陰極(陰極電極板)9を
2つ設けた点及び流路切替手段72を設けた点である。
前記第1の殺菌装置1と同一のものには同一の符号を付
しその説明を省略する。また、流路切替手段72は第3
の殺菌装置70と同一であるので、同一の符号を付しそ
の説明を省略する。
【0040】陽極部86は、水平断面矩形状に形成さ
れ、この陽極部86内にその長手方向に延在するように
陽極(陽極電極板)8が配設されている。この陽極8を
挟む陽極部86の両面にはそれぞれ隔膜10,10が平
行に配設され、これら二枚の隔膜10,10、陽極8及
び陰極9,9は同じ寸法形状に形成されている。また、
陽極部86を交換可能なカートリッジ式の箱状の陽極ボ
ックスで形成しても良い。この場合には、隔膜10は陽
極ボックスの両面に配置され、具体的には図2及び図3
を用いて前述した手段が対称的に両面に施されることに
なる。さらに、陽極部86には導電性溶液を撹拌するた
めの撹拌手段を設置するようにしても良い。
【0041】殺菌室87は水平断面凹状に形成され、こ
の凹状の殺菌室87の二つの延出する側部87a,87
bの間に陽極部86が位置されて、殺菌室87と陽極部
86とが全体として水平断面矩形状に形成される。殺菌
室87の各側部87a,87b内には、前記陽極8(及
び隔膜10,10)と対向するように陰極(陰極電極
板)9がそれぞれ設けられ、陽極8と陰極9,9との各
間に電流が流れるようになっている。また、殺菌室87
の側部87a,87bには、それぞれ先端部に殺菌液の
排出口25a,25bが設けられていると共に、それぞ
れ水溶性潤滑油剤を撹拌するための撹拌手段88が設け
られている。撹拌手段88は撹拌モータ89によって撹
拌翼90を回転させる方式をとることができるが、これ
らに限定されるものではなく、例えば、マグネットスタ
ーラー方式、ポンプ循環方式、通気撹拌方式等も好まし
く採用することができる。また、殺菌室87の二つの側
部87a,87bを連結する中央部87cには液流入調
整器20が設けられている。また、殺菌室87を交換可
能なカートリッジ式の箱状のボックスで形成しても良
い。液流入室91の底面は、液流入調整器20が設けら
れている部分が殺菌室87の底面より所定の高さ低けれ
ば良く、他の部分、例えば図示のように電極8,9,9
が位置される部分は殺菌室87とほぼ同じにしてもよ
い。すなわち、容器2の底面は、殺菌室87設置の高さ
に合わせて、2段構造に形成するようにしても良い。
【0042】このように殺菌装置85を構成しても、前
述と同様の作用効果を奏する。すなわち、水溶性潤滑油
剤は導入口23から流路切替手段72を介して殺菌容器
2内の液流入室91に導入され、一定時間後に、流路切
替手段72により流路(水溶性潤滑油剤の流れ)が切り
替わり、水溶性切削油排出口81から排出される。液流
入室91内に入った水溶性潤滑油剤のうち底面近傍の液
は、液流入管21内を通り流出調節部22から殺菌室8
7に至り、そこに溜められる。他方、上層の液は廃液排
出口24から容器2外に排出されるので、水溶性潤滑油
剤に不純物(工作機械等から持ち込まれたしゅう動面
油、軸受け油、ギヤ油等のマシン油等)が混入しても、
殺菌室87内には不純物が流入することがない。また、
水溶性潤滑油剤に含まれる不純物が殺菌室87内に流入
することが防止されることにより、電極9,9及び隔膜
10,10に不純物の付着による過酸化水素の発生阻止
等の不具合が生ずることがなくなる。殺菌室87内の水
溶性潤滑油剤は、撹拌翼90の回転駆動により撹拌され
る。陰極9,9及び陽極8への通電により、殺菌室87
内に蓄えられた水溶性潤滑油剤は、陰極9,9から発生
する殺菌種により殺菌処理される。殺菌処理された一定
時間後に流路切替手段72により流路が液流入室91側
に切り替わり、容器2に水溶性潤滑油剤が流入する。こ
れにより、殺菌室87内の殺菌処理された水溶性潤滑油
剤が殺菌液排出口25a,25bから排出される。
【0043】したがって、本発明の第4の殺菌装置85
は、陰極9,9から殺菌種を発生させ、この殺菌種によ
り水溶性潤滑油剤を殺菌処理すると共に、陰極9,9と
陽極8とを隔膜10,10で仕切り陽極8で発生するプ
ロトンの潤滑油剤への流出を防止したので、水溶性潤滑
油剤に影響を与えることなく、潤滑油剤の殺菌処理を安
定的に行えることになり、経済性が高いものである。ま
た、殺菌室87に水溶性潤滑油剤が連続的に導入される
と、殺菌種が一定濃度以上蓄積されず、完全な殺菌がで
きない状態が継続されることがある。この場合、使用途
中から陰極上に微生物やカビが繁殖し、最終的には殺菌
種の発生効率が著しく低下してしまうことがあるが、水
溶性潤滑油剤の導入は一定時間おきに一定時間だけ間欠
的に行われるため、殺菌室87内では高濃度の殺菌種が
蓄積され、流路が切り替わって殺菌液排出口25から流
出するまで殺菌室87は完全な無菌状態を達成できるの
で、殺菌室87のクリーニングも兼ね添えることができ
る。また、この殺菌装置85は、1枚あるいは1本の陽
極8に対して、その電極8が中心に位置されるように隔
膜10を2枚設置し、さらに陰極9を2枚の隔膜10,
10及び陽極8を挟むように2枚設置する構造となって
いるため、陽極1枚に対して陰極1枚の場合に比してそ
の寸法を小さくすることができ、装置の小型化を図れ
る。
【0044】
【実施例】以下、実施例及び比較例により本発明の内容
をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限
定されるものではない。 (実施例1)陽極にチタン白金板、陰極にCFクロス、
隔膜としてポリフッ化ビニリデン系の「デュラポアメン
ブレンフィルターVVLP14250」(MILLIP
ORE社製)を使って、図5に示した装置を組み上げ
た。陽極室には10質量%リン酸水素二ナトリウム−リ
ン酸水素二カリウム緩衝液(pH9.0)を充填した。
装置内部に、10倍希釈した水溶性切削油剤「ユニソル
ブルEM−L」(日石三菱(株)製)を毎分1Lの流速
で通し、2.0Vで連続通電した。切削油剤は、液温を
30℃に保ち、通電開始前にトウモロコシ粉と鋳鉄粉と
を1質量%添加した。その結果、1ヶ月間過ぎても油剤
のpHは殆ど低下せず、微生物の増殖は認められなかっ
た。その結果を図10に示した。JIS K2241−
1986「切削油剤」の5.4.8「金属腐食試験方
法」に準拠して錆止め性の試験を行ったが、すべての金
属板(鋼板、銅板、アルミニウム板)において、変色は
全く認められなかった。
【0045】(比較例1)陽極にチタン白金板、陰極に
CFクロスを使い、図5に示した装置の陽極室を取り外
し、フランジ部位にめくらを施した。陽極、陰極は接触
しないよう、対峙させて殺菌室に組み込んだ。その他の
条件は実施例1と同じにして殺菌を行ったが、pHの低
下が著しく、20〜30日後には生菌数が105個/ml
以上になり、殺菌能力が不十分であることが分かった。
その結果を図10に示した。また、実施例1と同様に錆
止め性の試験を行ったが、鋼板及び銅版において変色が
生じることが確認され、錆止め性能が低下していた。
【0046】(実施例2)電極の作製 アセトンの2−エチルアントラキノン5質量%溶液にC
Fクロスを2分間浸せきした後、ゆっくり引き上げ、乾
燥させた。浸せき前後の重量変化から、約4質量%の2
−エチルアントラキノンが担持されていることを確か
め、この電極をQ−1とした。Izoretの文献に従い、ポ
リビニルアルコールに2−ホルミルアントラキノンを作
用させて合成した酸化還元性のポリビニルアセタール
を、DMSO中に5質量%溶解した。この溶液にCFク
ロスを2分間浸せきした後、ゆっくり引き上げ、減圧乾
燥した。浸せき前後の重量変化から約5質量%のポリマ
ーが担持されたとし、この電極をQ−2とした。CFク
ロス上にポリアニリンを電解重合した。すなわち、0.
1Mアニリン、,0.5M硫酸及び0.2M硫酸ナトリ
ウムを含む水溶液中で、CFクロスを作用極、チタン白
金板を対極とし、N2雰囲気下で20mAの電流を20
分間流した。CFクロスを引き上げ水洗し、0.1質量
%炭酸ナトリウム溶液に2時間浸してから、再び水洗し
常温で乾燥させた。電解重合前後の重量変化から約0.
8質量%のポリアニリンが担持されたと判断し、この電
極をA−1とした。殺菌性能評価 前述のように作成した電極Q−1、Q−2、A−1と黒
鉛板EG−30X(日本カーボン(株)製)とをそれぞ
れ陰極に用いて前記実施例1と同一の水溶性切削油剤の
各種の殺菌実験を行った。殺菌装置は図5に示したもの
を使用し、陽極は全てチタン白金板を使った。隔膜とし
て前記実施例1と同一のものを用い、陽極室には10質
量%リン酸水素二ナトリウム−リン酸水素二カリウム緩
衝液(pH9.0)を充填した。装置内部に水溶性切削
油剤を毎分1Lの流速で通し、1.2Vで連続通電し
た。その結果、表1に示したように、対照とした水溶性
切削油剤中の生菌数は3日目以降にほぼゼロとなり、1
ヶ月以上殺菌効果が保持された。また、対照とした水溶
性切削油剤そのものの性能も変化していないことが確認
された(表2)。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】(比較例2)陽極、陰極ともチタン白金板
を用い、図5に示した装置で殺菌を行った。隔膜として
前記実施例1と同一のものを用い、陽極室には10質量
%リン酸水素二ナトリウム−リン酸水素二カリウム緩衝
液(pH9.0)を充填した。装置内部に前記実施例1
と同一の水溶性切削油剤を毎分1Lの流速で通し、1.
2Vで連続通電した。その結果、対照とした水溶性切削
油剤中の生菌数は3日目以降にほぼゼロとなり、1ヶ月
以上殺菌効果が保持された(表1)が、水溶性切削油剤
自身の性能が大幅に劣化し、不適当であった(表2)。
【0050】(実施例3)陰極に黒鉛板EG−30X
(日本カーボン(株)製)、陽極にチタン白金板を用い
て10倍希釈した水溶性切削油剤「ユニソルブルEM−
L」(日石三菱(株)製)の殺菌実験を行った。殺菌装
置としては、間欠的に殺菌装置内に切削油剤が導入され
る方式をとる図6の装置を用いた。隔膜は前記実施例1
と同一のものを用い、陽極室には10質量%リン酸水素
二ナトリウム−リン酸水素二カリウム緩衝液(pH9.
0)を充填した。殺菌室内に、10時間間隔で1時間だ
け、毎分1Lの流速で切削油剤が導入されるようにし、
2.0Vで連続通電を行った。切削油剤は液温を30℃
に維持し、通電開始前に腐敗を目的にトウモロコシ粉と
鋳鉄粉を1質量%ずつ添加した。その結果、表3に示し
たように、1ヶ月以上経過しても陰極表面にカビが付着
せず、殺菌効果が保持された。
【0051】
【表3】
【0052】(実施例4)陽極にチタン白金板、陰極に
CFクロス、隔膜としてポリフッ化ビニリデン系の「デ
ュラポアメンブレンフィルターVVLP14250」
(MILLIPORE社製)を使って、図7に示した装
置を組み上げた。陽極室には5質量%水酸化ナトリウム
水溶液を充填した。装置に各種の水溶性切削油剤を毎分
1Lの流速で通した。殺菌室内へは10時間間隔で1時
間だけ、毎分1Lの流速で切削油剤が導入されるように
設定し、電圧は2.0V印加し、23時間毎に1時間だ
け極性を反転させた。水溶性切削油剤としてはJIS規
格W1種エマルジョン型のユニソルブルEM−L、ユニ
ソルブルEM−B(いずれも日石三菱(株)製)を水道
水で10倍希釈したもの、同規格W2種ソリューブル型
ユニソルブルSB、ユニソルブルSC(いずれも日石三
菱(株)製)を水道水で30倍希釈したものを使用し
た。切削油剤は液温を30℃に維持し、腐敗を目的に、
通電開始前にトウモロコシ粉と鋳鉄粉を1質量%ずつ添
加した。その結果、いずれの油種も2ヶ月以上経過して
も菌は繁殖せず、JIS K2241−1986「切削
油剤」の5.4.8「金属腐食試験方法」に準拠して錆
止め性の試験を行ったが、すべての金属板(鋼板、銅
板、アルミニウム板)において、変色は全く認められな
かった。
【0053】(比較例3)図7の装置から陽極室を取り
外し、陽極板だけを2枚の陰極の中心に設置した。装置
に各種の水溶性切削油剤を毎分1Lの流速で通した。殺
菌室内へは10時間間隔で1時間だけ、毎分1Lの流速
で切削油剤が導入されるように設定し、電圧は2.0V
印加し、23時間毎に1時間だけ極性を反転させた。実
施例4に記載した全ての油剤を使用し、調製法、腐敗方
法を同一条件にして、各々1ヶ月後の生菌数を調べたと
ころ、全ての切削油剤に対して生菌数が10 5個/ml
以上検出され、腐敗していた。
【0054】(実施例5)陽極にチタン白金板、陰極に
黒鉛板EG−30X(日本カーボン(株)社製)、隔膜
としてポリフッ化ビニリデン系の「デュラポアメンブレ
ンフィルターVVLP14250」(MILLIPOR
E社製)を使って、図7に示した装置を組み上げた。陽
極室には5質量%水酸化ナトリウム水溶液を充填した。
装置には工場で使用済みのユニソルブルEM−L腐敗液
(生菌数107個/ml以上)を毎分1Lの流速で通し
た。殺菌室内へは5時間間隔で1時間だけ、毎分1Lの
流速で切削油剤が導入されるように設定し、電圧は2.
0V印加し、図11に示したように23時間毎に1時間
だけ極性を反転させた。その結果、図12に示したよう
に電流値はほぼ一定値を示し、生菌数も約30日後には
105個/ml以下になった。
【0055】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、水溶性潤
滑油剤に影響を与えることなしに、安定的に殺菌及び細
菌の増殖抑制効果が得られ、かつ経済性の高い殺菌装置
が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水溶性潤滑油剤の殺菌装置の第1の例
を示した図であり、(a)はその上面図、(b)はその
断面図である。
【図2】本発明の陽極ボックスの一例を示す図である。
【図3】本発明の支持板の他の例を示す図である。
【図4】本発明の水溶性潤滑油剤の殺菌装置から陽極ボ
ックスを取った状態を示す上面図である。
【図5】本発明の水溶性潤滑油剤の殺菌装置の第2の例
を示した図であり、(a)はその上面図、(b)はその
断面図である。
【図6】本発明の水溶性潤滑油剤の殺菌装置の第3の例
を示した図であり、(a)はその上面図、(b)はその
断面図である。
【図7】本発明の水溶性潤滑油剤の殺菌装置の第4の例
を示した図であり、(a)はその上面図、(b)はその
断面図である。
【図8】本発明の陽極ボックスの他の例を示す図であ
る。
【図9】本発明の水溶性潤滑油剤の殺菌装置の一配置例
を示した概念図である。
【図10】pH,生菌数と日数との関係を示した図であ
る。
【図11】電流値と時間との関係を示した図である。
【図12】pH,生菌数と日数との関係を示した図であ
る。
【符号の説明】
1 殺菌装置 2 殺菌容器 3 水溶性潤滑油剤の貯蔵タンク 4 送液ポンプ 6 陽極部 7 陰極部 8 陽極 9 陰極 10 隔膜 11 撹拌手段 12 撹拌翼 13 交流電源 14 撹拌モータ 15 通気穴 16 殺菌室 17 液流入室 18 電気制御回路部 19 分離手段 20 液流入調整器 21 液流入管 22 流出調節部 23 導入口 24 廃液排出口 25 殺菌液排出口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 水田 美能 神奈川県横浜市中区千鳥町8番地 日石三 菱株式会社中央技術研究所内 (72)発明者 坂田 修作 東京都港区西新橋一丁目3番12号 日石三 菱株式会社技術開発部内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 通電される陰極及び陽極が設けられた殺
    菌容器内を、水溶性潤滑油剤が入る陰極部と導電性物質
    が入る陽極部とに仕切り、該仕切りの少なくとも一部
    に、前記電極間に電流が流れるように隔膜を配設し、か
    つ、前記陰極が、通電により水溶性潤滑油剤を殺菌処理
    する殺菌種を発生させる殺菌種発生陰極であることを特
    徴とする水溶性潤滑油剤の殺菌装置。
  2. 【請求項2】 前記殺菌種発生陰極が、炭素系電極又は
    酸化還元能を有する有機化合物若しくは酸化還元樹脂を
    担持させた電極である請求項1に記載の殺菌装置。
  3. 【請求項3】 前記酸化還元能を有する有機化合物が、
    ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、又はそ
    の誘導体である請求項2に記載の殺菌装置。
  4. 【請求項4】 前記酸化還元樹脂が、キノン系酸化還元
    樹脂又はポリアニリンである請求項2に記載の殺菌装
    置。
  5. 【請求項5】 前記陰極部に、前記水溶性潤滑油剤が導
    入される導入口と前記殺菌処理後の水溶性潤滑油剤を排
    出する排出口とを設けた請求項1乃至4のいずれか1項
    に記載の殺菌装置。
  6. 【請求項6】 前記陰極部に、水溶性潤滑油剤とその油
    剤に含まれる不純物を比重により分離し、この不純物を
    分離した水溶性潤滑油剤を前記陰極と接触させる分離手
    段を設けた請求項1乃至5のいずれか1項に記載の殺菌
    装置。
  7. 【請求項7】 前記導電性物質が、緩衝液、その固体電
    解質、アルカリ水溶液又はアルカリ性固体電解質である
    請求項1乃至6のいずれか1項に記載の殺菌装置。
  8. 【請求項8】 前記導電性物質が導電性溶液であると共
    に、前記陽極部に導電性溶液を撹拌する撹拌手段を設け
    た請求項1乃至7のいずれか1項に記載の殺菌装置。
  9. 【請求項9】 前記陰極及び陽極への通電を行う電気制
    御回路部に、電流の流れる方向を一時的に逆転させる極
    性反転回路を設けた請求項1乃至8のいずれか1項に記
    載の殺菌装置。
  10. 【請求項10】 前記陰極部への水溶性潤滑油剤の供給
    を間欠的に行う間欠手段を設けた請求項1乃至9のいず
    れか1項に記載の殺菌装置。
  11. 【請求項11】 前記陰極部内に2つの陰極を配設する
    と共に、これら陰極間に前記陽極を配設し、かつ、これ
    ら陰極と陽極との各間の仕切りの少なくとも一部に、各
    電極間に電流が流れるように隔膜を配設した請求項1乃
    至10のいずれか1項に記載の殺菌装置。
JP11345139A 1998-12-28 1999-12-03 水溶性潤滑油剤の殺菌装置 Pending JP2000246253A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009022612A1 (ja) * 2007-08-10 2009-02-19 Yukinobu Mori 水素発生装置

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