JP2000240009A - 耐候性に優れた鈑桁橋 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 安価で、飛来塩分量が多くても鉄錆の発生し
難い耐候性に優れた鈑桁橋を提供する。 【解決手段】 ウェブ3とフランジ4から構成された鈑桁
2を複数有する鈑桁橋であって、複数の鈑桁2のうち、少
なくとも塩分の飛来を直接受ける断面側端部に位置する
鈑桁2のウェブ3部の下端より高さ1/3以内の部分に、複
数の孔5が設けられていることを特徴とする耐候性に優
れた鈑桁橋。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、塩分飛来の多い海
岸近傍などに架設される鈑桁橋に関する。

【０００２】

【従来の技術】鋼製の鈑桁橋においては、橋の長寿命化
を妨げる最大の要因は鉄錆であり、特に、鉄錆を促進す
る塩分の飛来の多い海岸近傍に架設された橋の鈑桁は、
以下に述べるような理由により鉄錆が発生し易い。

【０００３】図3に、従来の海岸近傍に架設された鈑桁橋
に吹き付ける風の流れを模式的に示す。図3の(a)は2主
鈑桁橋の例、(b)は3主鈑桁橋の例である。

【０００４】図3の(a)、(b)に示すように、床版1と、ウ
ェブ3とフランジ4から構成された複数の鈑桁2とからな
る一般的な鈑桁橋では、鈑桁2の下面を流れる風6は風上
側の橋側端部に位置する鈑桁2の下部フランジ4で剥離す
るため、鈑桁2の風下面の負圧が強くなり、鈑桁2間に巻
き込まれる風の流れ7が生じる。そのため、鈑桁2、特
に、その内面側では、風とともに運ばれてくる塩分が付
着するので、鉄錆が発生し易い。なお、風上側の橋側端
部に位置する鈑桁2の外面にも塩分が付着するが、この
部分は降雨により雨洗されるので鉄錆は発生し難い。

【０００５】こうした鈑桁橋の防錆対策として、一般的
には、塗料塗布する方法や、耐候性鋼材を橋梁部材に使
用する方法が採用されている。特に、耐候性鋼材を使用
する方法では、鋼材表面にその成分元素である銅、リ
ン、クロムなどの富化した安定錆が形成されるため、無
塗装で数十年の使用に耐えるといわれている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、塗料塗
布する方法には、数年毎に塗り替えを行う必要があり、
そのための足場仮設などを含めて多大のコストがかかる
といった問題が、また、耐候性鋼材を使用する方法に
は、飛来塩分量の多い海岸沿いの鈑桁橋や道路凍結防止
のために融雪塩の散布される鈑桁橋に対しては、安定錆
が形成され難く十分な耐候性が得られないといった問題
がある。

【０００７】本発明はこのような問題を解決するために
なされたもので、安価で、飛来塩分量が多くても鉄錆の
発生し難い耐候性に優れた鈑桁橋を提供することを目的
とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記課題は、ウェブとフ
ランジから構成された鈑桁を複数有する鈑桁橋であっ
て、前記複数の鈑桁のうち、少なくとも塩分の飛来を直
接受ける断面側端部に位置する鈑桁のウェブ部の下端よ
り高さ1/3以内の部分に、複数の孔が設けられているこ
とを特徴とする耐候性に優れた鈑桁橋により解決され
る。

【０００９】塩分の飛来を直接受ける橋側端部に位置す
る鈑桁のウェブ部の下端より高さ1/3以内の部分に複数
の孔を設けると、この鈑桁の風上面と風下面の圧力差が
緩和され、鈑桁間には風の巻き込みが起こり難くなり、
循環流が形成される。そのため、鈑桁内面側への塩分の
流入が抑制され、多量の塩分が付着することはないので
鉄錆の発生が抑制される。また、ウェブ部の下部に孔を
開ければよいだけなので安価である。

【００１０】

【発明の実施の形態】図1に、本発明の1実施の形態であ
る耐候性に優れた鈑桁橋に吹き付ける風の流れを模式的
に示す。図1の(a)は2主鈑桁橋の例、(b)は3主鈑桁橋の
例である。図1の(a)、(b)に示すように、塩分の飛来を
直接受ける断面側端部に位置する鈑桁2のウェブ3部の下
端より高さ1/3以内の部分に複数の孔5を設けると、鈑桁2
の下面を流れる風6の一部はこの孔5を通過するため、鈑
桁2の風上面と風下面の圧力差が緩和され、鈑桁２間に
は風の巻き込みが起こり難くなり、循環流8が形成され
る。そのため、鈑桁2内面側への塩分の流入が抑制さ
れ、多量の塩分が付着することはないので鉄錆の発生が
抑制される。

【００１１】図2に、本発明の鈑桁橋における鈑桁のウ
ェブ下端部に設けた複数の孔の１例を示す。図2の(a)は
矩形の孔の例、(b)は円形の孔の例である。

【００１２】ウェブ3部の下端より高さ1/3以内の部分に
設ける孔5の形状は、鈑桁の下面を流れる風の一部がこ
の孔5を通過できれば、特に、限定されないが、図のよ
うな矩形や円形の孔5が、加工上より簡便で、安価であ
る。

【００１３】なお、孔加工したときにできる切断面は、
塗料塗布などにより防錆処理することが好ましい。

【００１４】

【発明の効果】本発明は以上説明したように構成されて
いるので、安価で、飛来塩分量が多くても鉄錆の発生し
難い耐候性に優れた鈑桁橋を提供できる。

【００１５】また、流れの剥離を抑え、桁断面に沿った
流れを形成できるので、水平方向の風荷重の低減、渦放
出による空力振動（渦振動）の抑制にも効果的である。

【００１６】本発明の鈑桁橋の鈑桁に耐候性鋼材を用い
れば、塩分付着を抑制できるので安定錆が形成され易く
なるため、そのメリットを十分に発揮できる。

【００１７】本発明を鋼材に塗装を施した鈑桁橋に適用
すれば、塗装寿命の延長にも効を奏する。

【００１８】本発明により鈑桁橋の長寿命化が可能とな
るので、メンテナンスを容易に、低コストで行える。

【図面の簡単な説明】

【図1】本発明の1実施の形態である耐候性に優れた鈑桁
橋に吹き付ける風の流れを模式的に示す図である。

【図2】本発明の鈑桁橋における鈑桁のウェブ下端部に
設けた複数の孔の１例を示す図である。

【図3】従来の海岸近傍に架設された鈑桁橋に吹き付け
る風の流れを模式的に示す図である。

【符号の説明】 1 床版 2 鈑桁 3 ウェブ 4 フランジ 5 孔 6 鈑桁下面を流れる風 7 鈑桁間に巻き込まれる風の流れ 8 循環流

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項1】 ウェブとフランジから構成された鈑桁を
   複数有する鈑桁橋であって、前記複数の鈑桁のうち、少
   なくとも塩分の飛来を直接受ける断面側端部に位置する
   鈑桁のウェブ部の下端より高さ1/3以内の部分に、複数
   の孔が設けられていることを特徴とする耐候性に優れた
   鈑桁橋。