JP2000233133A - バナジウム−リン触媒の活性化方法 - Google Patents

バナジウム−リン触媒の活性化方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 より高い収率で無水マレイン酸を製造するこ
とを可能とするバナジウム−リン触媒の活性化方法を提
供する。 【解決手段】 700Kにおいて800(10-4Wm-1
-1)以上の熱伝導率を有する不活性ガスを含有するガ
ス組成物によりバナジウム−リン触媒を活性化すること
により無水マレイン酸を高収率で製造し得る触媒を得る
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バナジウム−リン
触媒の活性化方法に関するものである。詳しく述べる
と、炭素原子数4以上の脂肪族炭化水素を分子状酸素含
有ガスにより接触気相酸化させて無水マレイン酸を製造
するのに好適なバナジウム−リン触媒の活性化方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】炭素数4以上の脂肪族炭化水素、例えば
n−ブタンをバナジウム−リン系触媒の存在下に気相酸
化して無水マレイン酸を製造することはよく知られてい
る。そして、使用するバナジウム−リン系触媒、反応条
件などについて多くの特許が提案されている。
【0003】酸化反応自体に関していえば、例えばn−
ブタンと分子状酸素とを含む原料ガスをバナジウム−リ
ン系触媒に接触させてn−ブタンを選択的に無水マレイ
ン酸に酸化することが行なわれている(例えば、特開昭
50−35088号、特公平4−4969号、特開平5
−115783号、特公平6−39470号、特開平9
−3053号、特開平7−171398号、特開平7−
227544号、特開平7−31883号等)。
【0004】しかしながら、このような方法で使用され
る触媒によっては、満足すべき転化率および選択率は得
られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】目的とする無水マレイ
ン酸の収率を高めることはコストダウンなど工業的に有
利になることは当然なことであり、無水マレイン酸の収
率を更に向上させることはこの技術分野の研究者の継続
的な研究テーマとなっている。
【0006】したがって、本発明の目的は、無水マレイ
ン酸の製造されるバナジウム−リン触媒の活性化方法を
提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、炭素原子数4以上の
脂肪族炭化水素をバナジウム−リン系触媒の存在下に気
相酸化して無水マレイン酸を製造する際に、より高い収
率で無水マレイン酸を製造することを可能とするバナジ
ウム−リン触媒の活性化方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】したがって、上記諸目的
は、下記(1)〜(8)により達成される。
【0009】(1) 700Kにおいて800(10-4
Wm-1-1)以上の熱伝導率を有する不活性ガスを含有
するガス組成物によりバナジウム−リン触媒を活性化す
ることを特徴とするバナジウム−リン触媒の活性化方
法。
【0010】(2) 該ガス組成物が窒素ガスおよび該
不活性ガスを含有してなる前記(1)に記載の方法。
【0011】(3) 該ガス組成物中の窒素ガスおよび
該不活性ガスの合計濃度が60〜94.5容量%である
前記(2)に記載の方法。
【0012】(4) 窒素ガスと該不活性ガスの割合
(窒素ガス/不活性ガスのモル比)が0.05/1〜1
/1である前記(3)または(4)に記載の方法。
【0013】(5) 該不活性ガスがヘリウムおよびネ
オンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の不活性ガ
スである前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の方
法。
【0014】(6) 該不活性ガスがヘリウムである前
記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の方法。
【0015】(7) 該ガス組成物がさらに炭素原子数
4以上の脂肪族炭化水素と分子状酸素とを含有してなる
ものである前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の
方法。
【0016】(8) 該活性化温度は300〜600℃
である前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の方
法。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の特徴は、700Kにおい
て800(10-4Wm-1-1)以上の熱伝導率を有する
不活性ガスを含有するガス組成物によりバナジウム−リ
ン触媒を活性化することよりなるバナジウム−リン触媒
の活性化方法である。
【0018】このバナジウム−リン系触媒は、基本的に
はピロリン酸ジバナジル(VO)227の組成を有す
るものであるが、特に限定されるものではなく、その触
媒組成、バナジウムとリンとの原子比、ピロリン酸ジバ
ナジルの構造(例えば、α、βおよびγ型などの形
態)、活性化法などは適宜変更してもよく、また無水マ
レイン酸の製造に一般に使用されている、ないしは使用
できることが知られているものであればいずれも使用す
ることができる。したがって、本発明で用いるバナジウ
ム−リン系触媒は、反応促進などを目的とした種々の金
属などを含んでいてもよく、またシリカ、アルミナなど
の担体に担持して使用することもできる。
【0019】一例を挙げると、例えば特開昭59−13
2938号に記載されているように、X線回折スペクト
ル(対陰極Cu−Ka)において回折角2θが10.7
°、13.1°、21.4°、24.6°、28.4°
および29.5°の主要ピークを有することを特徴とす
るバナジウム−リン系酸化物触媒中間体があり、このよ
うな触媒は、(a)水性媒体中でバナジウム化合物、例
えば五酸化バナジウムとリン化合物、例えばオルトリン
酸および還元剤であるヒドラジンとをリンとバナジウム
の原子比が0.7〜1.25:1およびバナジウムの原
子価が3.9〜4.4の範囲になるような条件下で反応
させることにより前記触媒中間体組成物を沈殿させ、
(b)その後沈殿物を水性触媒体中より取出し、(c)
えられた沈殿物を有機触媒中、リン化合物の存在下50
〜200℃の温度で熱処理して触媒先駆体をえ、(d)
当該先駆体を有機媒体中より取出し、ついで(e)当該
先駆体を250〜550℃の温度で焼成する各段階の操
作からなることを特徴とするリン対バナジウムの原子比
1〜1.25:1の組成を有する触媒である。
【0020】また、特開平10−167711号に記載
されているように、X線回折スペクトル(対陰極Cu−
Kα)において、回折角2θ(±0.2°)が18.5
°、23.0°、28.4°、29.9°および43.
1°の主要ピークを有し、かつ回折角2θ(±0.2
°)=23.0°および28.4°のピークの強度比が
下記範囲内にあるバナジウム−リン系酸化物がある。
【0021】 0.3≦I(23.0)/I(28.4)≦0.7 ただし、I(23.0)およびI(28.4)は、それ
ぞれ、回折角2θ(±0.2°)=23.0°および2
8.4°のピーク強度を示す。
【0022】なお、好ましくは、0.35≦I(23.
0)/I(28.4)≦0.65であり、さらに好まし
くは0.4≦I(23.0)/I(28.4)≦0.6
である。また、バナジウム/リン(原子比)は1/0.
9〜1/1.2、好ましくは1/0.95〜1/1.1
である。
【0023】700Kにおいて800(10-4Wm-1
-1)以上の熱伝導率を有する不活性ガス(以下、単に不
活性ガスという)としては、例えばヘリウム(2800
(10-4Wm-1-1))、ネオン(880(10-4Wm
-1-1))等があり、これらの単独または混合物がある
が、特に好ましくはヘリウムである。
【0024】前記不活性ガス含有ガス組成物中には、窒
素ガスをも含有していることが好ましく、該ガス組成物
中の窒素および不活性ガスの合計濃度は、通常、60〜
94.5容量%であり、好ましくは75〜90容量%で
ある。窒素と不活性ガスとの割合(窒素/不活性ガス
(モル比))は、通常、0.05/1〜1/1であり、
好ましくは0.05/1〜0.6/1である。
【0025】また、前記ガス組成物中には、さらに無水
マレイン酸製造用の原料である炭素原子数4以上の脂肪
族炭化水素と分子状酸素とを含有していることが望まし
い。炭素原子数4以上、好ましくは4〜8の脂肪族炭化
水素の代表例としては、例えば、n−ブタン、1−ブテ
ン、2−ブテン、ブタジエンおよびこれらの混合物を挙
げることができる。通常、n−ブタンが用いられる。こ
のn−ブタンは少量のプロパン、ペンテン類などを含ん
でいてもよく、一般の工業用n−ブタンを用いることが
できる。
【0026】原料ガス中の炭素原子数4以上の脂肪族炭
化水素の濃度については、例えばn−ブタンの場合、通
常、0.5〜10容量%であり、好ましくは1〜5容量
%である。また、原料ガス中の分子状酸素濃度は、通
常、5〜30容量%であり、好ましくは10〜25容量
%である。なお、分子状酸素の供給源としては、通常、
空気が用いられる。
【0027】本発明において、バナジウム−リン触媒の
活性化方法は、通常、該触媒を充填した反応管内あるい
は焼成炉内において前記ガス組成物の気流中で熱処理を
行なうことにより実施される。通常、触媒を充填した反
応管に前記ガス組成物300〜600℃、好ましくは3
50〜550℃の温度、空間速度(SV)500〜1
0,000hr-1、好ましくは1,000〜3,000
hr-1で5〜200時間、好ましくは10〜100時間
流通させることにより行なわれる。
【0028】本発明における酸化反応条件には特に制限
はなく、原料ガス中に窒素および不活性希ガスを共存さ
せる点を除けば、無水マレイン酸の製造に一般的に採用
されている、ないしは採用できることが知られている条
件下に酸化反応を行なうことができる。
【0029】反応形式については、固定床方式および流
動床方式のいずれでもよく、例えば固定床方式の場合、
反応温度は、通常、300〜550℃であり、好ましく
は300〜450℃である。反応圧力は常圧および加圧
のいずれでもよいが、通常、常圧で反応を行なうのがよ
い。また、空間速度(STP)は、通常、500〜1
0,000hr-1であり、好ましくは1,000〜5,
000hr-1である。
【0030】
【実施例】以下、実施例および比較例を挙げて、本発明
をさらに具体的に説明する。なお、実施例および比較例
における転化率、選択率および収率はつぎのように定義
される。
【0031】転化率(モル%)=(反応したn−ブタン
のモル数/供給したn−ブタンのモル数)×100 選択率(モル%)=(生成した無水マレイン酸のモル数
/反応したn−ブタンのモル数)×100 収率(モル%)=(生成した無水マレイン酸のモル数/
供給したブタンのモル数)×100触媒の調製 (触媒−I)ベンジルアルコール4000mlに五酸化
バナジウム(V25)400gを懸濁させ、攪拌しなが
ら120℃に保ち、5時間還元した。99%オルトリン
酸435.4gを1000mlのベンジルアルコールに
溶解してリン酸溶液を調製した。還元したバナジウム溶
液にリン酸溶液を添加し、120℃に加熱保持して、1
0時間攪拌したところ濃青色沈殿物を生じた。反応液ス
ラリーを放冷した後、生成した沈殿物を分離し、これを
アセトンで洗浄し、140℃で12時間乾燥した。次い
で、長さ5mm、直径5mmに成型した。成型体を空気
気流下、480℃で4時間焼成して触媒−Iを得た。
【0032】(触媒−II)イソブチルアルコール400
0mlに五酸化バナジウム(V25)400gを懸濁さ
せ、攪拌しながら105℃に保ち、10時間還元した。
99%オルトリン酸435.4gを1000mlのイソ
ブチルアルコールに溶解してリン酸溶液を調製した。還
元したバナジウム溶液にリン酸溶液を添加し、105℃
に加熱保持して、10時間攪拌したところ濃青色沈殿物
を生じた。反応液スラリーを放冷した後、生成した沈殿
物を分離し、これをアセトンで洗浄し、140℃で12
時間乾燥した。次いで、長さ5mm、直径5mmに成型
した。成型体を空気気流下、500℃で4時間焼成して
触媒−IIを得た。
【0033】(触媒−III)蒸留水5000mlに85
%オルトリン酸3500gを加えて加熱し、80℃に保
持した後、五酸化バナジウム(V25)400gを添加
した。攪拌しながら12時間加熱還流したところ、黄色
沈殿物を生じた。生成した沈殿物を分離し、これをアセ
トンで洗浄した後、室温で乾燥した。乾燥物を4000
mlの2−ブチルアルコールに加え80℃に加熱保持し
て12時間攪拌したところ青色沈殿物を生じた。反応液
スラリーを放冷した後、生成した沈殿物を分離し、これ
をアセトンで洗浄し、140℃で12時間乾燥した。次
いで、長さ5mm、直径5mmに成型した。成型体を空
気気流下、500℃で4時間焼成して触媒−IIIを得
た。
【0034】(触媒−IV)蒸留水5000mlに85%
オルトリン酸507gと塩酸ヒドロキシルアミン310
gを加えて加熱し、80℃に保持した。五酸化バナジウ
ム(V25)400gを発泡に注意しながら少量ずつ添
加した。攪拌しながら12時間加熱還流したところ、濃
青色沈殿物を生じた。反応液スラリーを放冷した後、生
成した沈殿物を分離し、これをアセトンで洗浄し、14
0℃で12時間乾燥した。次いで、長さ5mm、直径5
mmに成型した。成型体を空気気流下、520℃で4時
間焼成して触媒−IVを得た。
【0035】実施例1〜16および比較例1〜4 条件1 各触媒10gを流通式反応器に充填し、これにn−ブタ
ン濃度1.5容量%、酸素濃度20容量%、窒素濃度2
0容量%およびヘリウム濃度58.5容量%の混合ガス
を空間速度1000hr-1で供給した。400℃から4
80℃までの1℃/分の割合で昇温し、480℃で12
時間活性化処理を行なった後、最大収率を示す反応温度
で、n−ブタンの気相酸化を行なった。
【0036】条件2 各触媒10gを流通式反応器に充填し、これにn−ブタ
ン濃度1.5容量%、酸素濃度20容量%、窒素濃度2
0容量%およびネオン濃度58.5容量%の混合ガスを
空間速度1000hr-1で供給した。400℃から48
0℃までの1℃/分の割合で昇温し、480℃で12時
間活性化処理を行なった後、最大収率を示す反応温度
で、n−ブタンの気相酸化を行なった。
【0037】条件3 各触媒10gを流通式反応器に充填し、これにn−ブタ
ン濃度1.5容量%、酸素濃度20容量%、窒素濃度2
0容量%およびヘリウム濃度58.5容量%の混合ガス
を空間速度1000hr-1で供給した。400℃から4
50℃までの1℃/分の割合で昇温し、450℃で20
時間活性化処理を行なった後、最大収率を示す反応温度
で、n−ブタンの気相酸化を行なった。
【0038】条件4 各触媒10gを流通式反応器に充填し、これにn−ブタ
ン濃度1.5容量%の空気混合ガスを空間速度1000
hr-1で供給した。400℃から480℃までの1℃/
分の割合で昇温し、480℃で12時間活性化処理を行
なった後、最大収率を示す反応温度で、n−ブタンの気
相酸化を行なった。
【0039】条件5 各触媒10gを流通式反応器に充填し、これにn−ブタ
ン濃度1.5容量%、酸素濃度20容量%、窒素濃度2
0容量%およびヘリウム濃度58.5容量%の混合ガス
を空間速度1000hr-1で供給した。400℃から4
80℃までの1℃/分の割合で昇温し、480℃で12
時間活性化処理を行なった。その後、n−ブタン濃度
1.5容量%の空気混合ガスに切り換え、空間速度10
0hr-1で反応を行なった。最大収率を示す反応温度
で、n−ブタンの気相酸化を行なった。
【0040】以上の試験結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、原料ガス中に窒素と7
00Kにおいて800(10-4Wm-1-1以上の熱伝導
率を有する不活性ガスを含有するガス組成物によりバナ
ジウム−リン触媒を活性化することにより目的とする無
水マレイン酸を高収率で製造し得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C037 KB02 KB04 4G069 AA02 BB06A BB06B BC54A BC54B BD07A BD07B BD17A BD17B CB07 CB14 DA06 FA08 FC04 FC07

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 700Kにおいて800(10-4Wm-1
    -1)以上の熱伝導率を有する不活性ガスを含有するガ
    ス組成物によりバナジウム−リン触媒を活性化すること
    を特徴とするバナジウム−リン触媒の活性化方法。
  2. 【請求項2】 該ガス組成物が窒素ガスおよび該不活性
    ガスを含有してなる請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 該ガス組成物中の窒素ガスおよび該不活
    性ガスの合計濃度が60〜94.5容量%である請求項
    2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 窒素ガスと該不活性ガスの割合(窒素ガ
    ス/不活性ガスのモル比)が0.05/1〜1/1であ
    る請求項3または4に記載の方法。
  5. 【請求項5】 該不活性ガスがヘリウムおよびネオンよ
    りなる群から選ばれた少なくとも1種の不活性ガスであ
    る請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
  6. 【請求項6】 該不活性ガスがヘリウムである請求項1
    〜5のいずれか一つに記載の方法。
  7. 【請求項7】 該ガス組成物がさらに炭素原子数4以上
    の脂肪族炭化水素と分子状酸素とを含有してなるもので
    ある請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
  8. 【請求項8】 該活性化温度は300〜600℃である
    請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
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