JP2000215420A - スピンバルブ型薄膜素子およびその製造方法とそのスピンバルブ型薄膜素子を備えた薄膜磁気ヘッド - Google Patents

スピンバルブ型薄膜素子およびその製造方法とそのスピンバルブ型薄膜素子を備えた薄膜磁気ヘッド

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JP2000215420A JP11019117A JP1911799A JP2000215420A JP 2000215420 A JP2000215420 A JP 2000215420A JP 11019117 A JP11019117 A JP 11019117A JP 1911799 A JP1911799 A JP 1911799A JP 2000215420 A JP2000215420 A JP 2000215420A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 反強磁性層2の材質を改良することにより、
交換結合磁界が大きく、ブロッキング温度が高く、耐久
性、耐熱性に優れ、比抵抗が大きく、良好な抵抗変化率
を有するスピンバルブ型薄膜素子およびその製造方法
と、前記スピンバルブ型薄膜素子を備えた薄膜磁気ヘッ
ドを提供することを課題としている。 【解決手段】 反強磁性層2が、X−Mn(ただし、X
は、Pt、Ni、Pd、Ru、Ir、Rhのうちから選
択される1種の元素を示す。)の式で示される合金また
はX’ーPt−Mn(ただし、X’は、Pd、Cr、R
u、Ni、Ir、Rh、Au、Agのうちから選択され
る1種または2種以上の元素を示す。)の式で示される
合金で形成されたものであり、アニールを施すことによ
り、反強磁性が示されるとともに比抵抗が増加されたス
ピンバルブ型薄膜素子とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固定磁性層の固定
磁化方向と外部磁界の影響を受けるフリー磁性層の磁化
の方向との関係で電気抵抗が変化するスピンバルブ型薄
膜素子およびその製造方法とそのスピンバルブ型薄膜素
子を備えた薄膜磁気ヘッドに関し、とくに、アニールを
施すことにより反強磁性が示されるとともに比抵抗が増
大されたものであり、耐久性、耐熱性に優れ、交換結合
磁界が大きく、良好な抵抗変化率を有するスピンバルブ
型薄膜素子およびその製造方法とそのスピンバルブ型薄
膜素子を備えた薄膜磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】図16は、従来の薄膜磁気ヘッドの一例
を示す斜視図である。この薄膜磁気ヘッドは、ハードデ
ィスク装置などの磁気記録媒体に搭載される浮上式のも
のである。この薄膜磁気ヘッドのスライダ251は、図
16において符号235で示す側がディスク面の移動方
向の上流側に向くリーディング側で、符号236で示す
側がトレーリング側である。このスライダ251のディ
スクに対向する面では、レール状のABS面(エアーベ
アリング面:レール部の浮上面)251a、251a、
251bと、エアーグルーブ251c、251cとが形
成されている。そして、このスライダ251のトレーリ
ング側の端面251dには、薄膜磁気素子250が設け
られている。
【0003】この例で示す薄膜磁気ヘッドの薄膜磁気素
子250は、図17および図18に示す構造の複合型磁
気ヘッドであり、スライダ251のトレーリング側端面
251d上に、MRヘッド(読出ヘッド)h1と、イン
ダクティブヘッド(書込ヘッド)h2とが順に積層され
て構成されている。
【0004】この例のMRヘッドh1は、基板を兼ねる
スライダ251のトレーリング側端部に形成された磁性
合金からなる下部シールド層253上に、下部ギャップ
層254が設けられている。そして、下部ギャップ層2
54上には、磁気抵抗効果素子層245が積層されてい
る。この磁気抵抗効果素子層245上には、上部ギャッ
プ層256が形成され、その上に上部シールド層257
が形成されている。この上部シールド層257は、その
上に設けられるインダクティブヘッドh2の下部コア層
と兼用にされている。このMRヘッドh1は、ハードデ
ィスクドライブのディスクなどの磁気記録媒体からの微
小の漏れ磁界の有無により、磁気抵抗効果素子層245
の抵抗を変化させ、この抵抗変化を読み取ることで記録
媒体の記録内容を読み取るものである。
【0005】また、インダクティブヘッドh2は、下部
コア層257の上に、ギャップ層264が形成され、そ
の上に平面的に螺旋状となるようにパターン化されたコ
イル層266が形成されている。前記コイル層266
は、第1の絶縁材料層267Aおよび第2の絶縁材料層
267Bに囲まれている。第2絶縁材料層267Bの上
に形成された上部コア層268は、ABS面251bに
て、その磁極端部268aを下部コア層257に、磁気
ギャップGの厚みをあけて対向させ、図17および図1
8に示すように、その基端部268bを下部コア層25
7と磁気的に接続させて設けられている。また、上部コ
ア層268の上には、アルミナなどからなる保護層26
9が設けられている。
【0006】このようなインダクティブヘッドh2で
は、コイル層266に記録電流が与えられ、コイル層2
66からコア層に記録電流が与えられる。そして、前記
インダクティブヘッドh2は、磁気ギャップGの部分で
の下部コア層257と上部コア層268の先端部からの
漏れ磁界により、ハードディスクなどの磁気記録媒体に
磁気信号を記録するものである。
【0007】前記MRヘッドh1に設けられている磁気
抵抗効果素子層245には、巨大磁気抵抗効果を示すG
MR(Giant Magnetoresistiv
e)素子などが備えられている。このGMR素子は、磁
気抵抗効果を示す複数の材料を組み合わせて形成された
多層構造のものである。巨大磁気抵抗効果を生み出す構
造には、いくつかの種類がある。その中で比較的構造が
単純で、外部磁界に対して抵抗変化率の高いものとして
スピンバルブ方式がある。スピンバルブ方式には、シン
グルスピンバルブ方式とデュアルスピンバルブ方式とが
ある。
【0008】図1は、スピンバルブ型薄膜素子の一例を
記録媒体との対向面側から見た場合の構造を示した断面
図である。図1に示すスピンバルブ型薄膜素子は、反強
磁性層、固定磁性層、非磁性導電層、フリー磁性層が一
層ずつ形成された、いわゆるボトム型のシングルスピン
バルブ型薄膜素子である。図1において符号1は、例え
ばTa(タンタル)などで形成された下地層を示してい
る。この下地層1の上には、反強磁性層2が形成され、
さらに前記反強磁性層2の上には、固定磁性層3が形成
されている。前記固定磁性層3は、前記反強磁性層2に
接して形成されることにより、前記固定磁性層3と反強
磁性層2との界面にて交換結合磁界(交換異方性磁界)
が発生し、前記固定磁性層3の磁化は、例えば、図示Y
方向に固定される。
【0009】前記固定磁性層3の上には、Cuなどで形
成された非磁性導電層4が形成され、さらに前記非磁性
導電層4の上には、フリー磁性層5が形成されている。
前記フリー磁性層5の両側には、例えば、Co一Pt
(コバルトー白金)合金で形成されたハードバイアス層
6,6が形成されている。前記ハードバイアス層6,6
が図示X1方向と反対方向に磁化されていることで、前
記フリー磁性層5の磁化が図示X1方向と反対方向に揃
えられている。これにより、前記フリー磁性層5の変動
磁化と前記固定磁性層3の固定磁化とが交差する関係と
なっている。なお、符号7は、Taなどで形成された保
護層を、符号8は、Cuなどで形成された導電層を示し
ている。
【0010】このスピンバルブ型薄膜素子では、ハード
ディスクなどの記録媒体からの洩れ磁界により、図示X
1方向と反対方向に揃えられた前記フリー磁性層5の磁
化が変動すると、図示Y方向に固定された固定磁性層3
の磁化との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の
変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界
が検出される。
【0011】このようなスピンバルブ型薄膜素子として
は、シャントロスが少ないものほど優れている。すなわ
ち、スピンバルブ型薄膜素子に与えられる電流のうち、
固定磁性層3と非磁性導電層4との界面および非磁性導
電層4とフリー磁性層5との界面に流れる電流の割合が
多いものほど好ましい。したがって、他の部分の比抵抗
が大きいことが望ましい。
【0012】また、スピンバルブ型薄膜素子としては、
記録媒体からの洩れ磁界が与えられたときに、抵抗変化
率(△MR)が大きくなればなるほど、これを備えた薄
膜磁気ヘッドの特性は良好になるため、抵抗変化率の大
きいスピンバルブ型薄膜素子が求められている。
【0013】また、前記スピンバルブ型薄膜素子におい
ては、従来から、前記反強磁性層2として、FeMn合
金、NiO合金、IrMn合金などの反強磁性材料が使
用されている。
【0014】しかしながら、前記FeMn合金は、腐食
しやすく、水分を含む空気中にさらしておくと急速に錆
を発生するという欠点がある。また、FeMn合金やN
iO合金は、ブロッキング温度が約200℃以下であ
り、熱的安定性に欠けた材料であるという欠点がある。
とくに近年では、記録媒体の回転数、あるいは、導電層
8から流れるセンス電流量の増大などにより、装置内の
素子温度が例えば200℃以上と高温になる。このた
め、スピンバルブ型薄膜素子の反強磁性層2として、ブ
ロッキング温度の低い反強磁性材料を使用すると、前記
反強磁性層2と固定磁性層3との界面に発生する交換結
合磁界(交換異方性磁界)が小さくなってしまい、固定
磁性層3の磁化を適正に図示Y方向に固定することがで
きず、△MR(抵抗変化率)の低下を招く。このブロッ
キング温度は、反強磁性層2に使用される反強磁性材料
のみで決定されるために、スピンバルブ型薄膜素子の構
造を改良したとしても、前記ブロッキング温度そのもの
を上昇させることはできない。
【0015】例えば、特開平9−16920号公報に
は、固定磁性層の構造を改良して、交換結合磁界を向上
させることができる発明について記載されている。しか
し、この発明では、反強磁性層としてNiOを使用して
いるため、ブロッキング温度は200度程度であり、た
とえ室温程度のときの交換結合磁界を大きくできたとし
ても、装置内温度が200度近く、あるいは、それ以上
の温度になると、記録媒体走行中でのスピンバルブ型薄
膜素子の交換結合磁界が小さくなり、あるいは、0にな
り、△MRを得ることが全くできなくなる。
【0016】また、IrMn合金は、十分な交換結合磁
界が得られないという問題がある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記事情に
鑑みてなされたもので、このような問題を解決し、反強
磁性層の材質を改良することにより、交換結合磁界を大
きくすることができ、ブロッキング温度が高く、耐久
性、耐熱性に優れ、比抵抗が大きく、良好な抵抗変化率
を有するスピンバルブ型薄膜素子を提供することを課題
としている。また、このスピンバルブ型薄膜素子の製造
方法を提供することを課題としている。さらに、このス
ピンバルブ型薄膜素子を備えた薄膜磁気ヘッドを提供す
ることを課題としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、本発明のスピンバルブ型薄膜素子は、反強磁性層
と、この反強磁性層と接して形成され、前記反強磁性層
との交換結合磁界により磁化方向が固定される固定磁性
層と、前記固定磁性層に非磁性導電層を介して形成さ
れ、前記固定磁性層の磁化方向と交差する方向に磁化が
揃えられるフリー磁性層とを有するスピンバルブ型薄膜
素子であり、前記反強磁性層が、X−Mn(ただし、X
は、Pt、Ni、Pd、Ru、Ir、Rhのうちから選
択される1種の元素を示す。)の式で示される合金また
はX’ーPt−Mn(ただし、X’は、Pd、Cr、R
u、Ni、Ir、Rh、Au、Agのうちから選択され
る1種または2種以上の元素を示す。)の式で示される
合金で形成されたものであり、アニールを施すことによ
り、反強磁性が示されるとともに比抵抗が増加されたも
のであることを特徴とするものである。
【0019】すなわち、反強磁性層が、耐熱性に優れた
ものにより形成されることにより、製造工程において高
温による悪影響を受けにくいものを得ることができると
ともに、装置内の素子温度が高温となる薄膜磁気ヘッド
などの装置に備えられた場合の耐久性が良好で、温度変
化による交換結合磁界の変動が少ない優れたものを得る
ことができる。また、反強磁性層のブロッキング温度が
高いものとなるため、反強磁性層と固定磁性層との境界
面に大きな交換結合磁界を発生させることができ、前記
固定磁性層の外部信号磁界に対する磁化の回転を良好に
ピン止めすることができる。さらにまた、反強磁性層の
比抵抗が大きいため、シャントロスを減少させることが
でき、良好な抵抗変化率を有するスピンバルブ型薄膜素
子とすることができる。
【0020】さらに、比抵抗および抵抗変化率が大きい
スピンバルブ型薄膜素子となるため、良好な出力電圧が
得られる高出力化に有利なスピンバルブ型薄膜素子とす
ることができる。したがって、反強磁性層が、NiO合
金、FeMn合金、IrMn合金などにより形成された
アニールを施さない従来のスピンバルブ型薄膜素子と比
較して、優れたものとすることができる。
【0021】また、上記のスピンバルブ型薄膜素子にお
いては、前記X−Mnの式または前記X’ーPt−Mn
の式で示される合金は、Mnが40〜54原子%の範囲
であることが望ましい。このようなスピンバルブ型薄膜
素子とすることで、高い比抵抗とより一層良好な交換結
合磁界を得ることができ、抵抗変化率をより向上させる
ことができる。
【0022】さらに、上記のスピンバルブ型薄膜素子に
おいては、前記X−Mnの式または前記X’ーPt−M
nの式で示される合金は、Mnが44〜52原子%の範
囲であることであることがより望ましい。このようなス
ピンバルブ型薄膜素子とすることで、200μΩcm以
上の高い比抵抗を有するものとすることができ、良好な
交換結合磁界が得られ、抵抗変化率をより向上させるこ
とができる。
【0023】また、上記のスピンバルブ型薄膜素子にお
いては、前記X−Mnの式または前記X’ーPt−Mn
の式で示される合金が、アニールを施すことにより、規
則化されてfct構造とされたものであることが望まし
い。このようなスピンバルブ型薄膜素子とすることで、
反強磁性層と固定磁性層との境界面に大きな交換結合磁
界を発生させることができる優れたスピンバルブ型薄膜
素子とすることができる。
【0024】さらにまた、上記のスピンバルブ型薄膜素
子においては、前記反強磁性層の比抵抗が、200μΩ
cm以上であることが望ましい。このようなスピンバル
ブ型薄膜素子とすることで、シャントロスを十分に減少
させることができ、高出力化に有利な大きい出力電圧を
得ることができるより優れたスピンバルブ型薄膜素子と
することができる。さらに、上記のスピンバルブ型薄膜
素子においては、比抵抗が、アニールを施すことによ
り、20%以上増加されたものであることが望ましい。
このようなスピンバルブ型薄膜素子とした場合も、シャ
ントロスを減少させることができ、大きい出力電圧が得
られるものとすることができる。
【0025】また、上記のスピンバルブ型薄膜素子にお
いては、前記フリー磁性層の厚さ方向両側に、各々非磁
性導電層と固定磁性層と反強磁性層とが形成されたデュ
アル型構造とされてなるものとしてもよい。このような
スピンバルブ型薄膜素子とすることで、フリー磁性層/
非磁性導電層/固定磁性層の3層の組合わせを2組有す
るものとなり、シングルスピンバルブ型薄膜素子と比較
して、大きな△MR(抵抗変化率)が得られ、高密度記
録化に対応できるものとすることができる。
【0026】また、上記のスピンバルブ型薄膜素子にお
いては、前記固定磁性層と前記フリー磁性層の少なくと
も一方が非磁性中間層を介して2つに分断され、分断さ
れた層どうしで磁化の向きが180゜異なるフェリ磁性
状態とされてなることを特徴とするものとしてもよい。
【0027】少なくとも固定磁性層が非磁性中間層を介
して2つに分断されたスピンバルブ型薄膜素子とした場
合、2つに分断された固定磁性層のうち一方が他方の固
定磁性層を適正な方向に固定する役割を担い、固定磁性
層の状態を非常に安定した状態に保つことが可能とな
る。一方、少なくともフリー磁性層が非磁性中間層を介
して2つに分断されたスピンバルブ型薄膜素子とした場
合、2つに分断されたフリー磁性層どうしの間に交換結
合磁界が発生し、フェリ磁性状態とされ、外部磁界に対
して感度よく反転できるものとなる。
【0028】また、前記課題は、基板上に、反強磁性層
と、この反強磁性層と接して形成され、前記反強磁性層
との交換結合磁界により磁化方向が固定される固定磁性
層と、前記固定磁性層に非磁性導電層を介して形成さ
れ、前記固定磁性層の磁化方向と交差する方向に磁化が
揃えられるフリー磁性層とを形成したのち、アニールを
施してなるスピンバルブ型薄膜素子の製造方法であっ
て、前記反強磁性層を、X−Mn(ただし、Xは、P
t、Ni、Pd、Ru、Ir、Rhのうちから選択され
る少なくとも1種の元素を示す。)の式で示される合金
またはX’ーPt−Mn(ただし、X’は、Pd、C
r、Ru、Ni、Ir、Rh、Au、Agのうちから選
択される1種または2種以上の元素を示す。)の式で示
される合金で形成し、前記アニールにより、反強磁性を
示させるとともに比抵抗を増加させることを特徴とする
スピンバルブ型薄膜素子の製造方法によって解決でき
る。このようなスピンバルブ型薄膜素子の製造方法によ
れば、上記のスピンバルブ型薄膜素子を容易に得ること
ができる。
【0029】さらにまた、前記課題は、上記のスピンバ
ルブ型薄膜素子が備えられてなることを特徴とする薄膜
磁気ヘッドによって解決できる。このような薄膜磁気へ
ッドとすることで、交換結合磁界を大きくすることがで
き、耐久性、耐熱性に優れ、良好な抵抗変化率を有する
薄膜磁気へッドとすることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明のスピンバルブ型薄
膜素子の実施形態について、図面を参照して詳しく説明
する。 [第1の実施形態]図1は、本発明の第1の実施形態の
スピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見
た場合の構造を示した断面図である。本発明のスピンバ
ルブ型薄膜素子が従来のスピンバルブ型薄膜素子と異な
るところは、前記反強磁性層2が、X−Mn(ただし、
Xは、Pt、Ni、Pd、Ru、Ir、Rhのうちから
選択される1種の元素を示す。)の式で示される合金ま
たはX’ーPt−Mn(ただし、X’は、Pd、Cr、
Ru、Ni、Ir、Rh、Au、Agのうちから選択さ
れる1種または2種以上の元素を示す。)の式で示され
る合金で形成されたものであり、アニールを施すことに
より、反強磁性が示されるとともに比抵抗が増加された
ものであるところである。このスピンバルブ型薄膜素子
では、ハードディスクなどの磁気記録媒体の移動方向
は、図示Z方向であり、磁気記録媒体からの洩れ磁界の
方向は、Y方向である。
【0031】図1において、符号1は、図示しない基板
上に設けられ、例えば、Ta(タンタル)などで形成さ
れた下地層を示している。この下地層1の上には、反強
磁性層2が形成され、さらに前記反強磁性層2の上に
は、固定磁性層3が形成されている。この固定磁性層3
の上には、非磁性導電層4が形成され、さらに、前記非
磁性導電層4の上には、フリー磁性層5が形成されてい
る。また、符号6、6は、ハードバイアス層を、符号7
は、Taなどで形成された保護層を、符号8、8は、導
電層を示している。
【0032】本発明の第1の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子において、前記反強磁性層2に使用されるX−
Mnの式で示される合金は、スパッタリングなどにより
成膜された後に、アニールを施すことにより、規則化さ
れてfct構造とされたものであることが望ましい。こ
のX−Mnの式で示される合金は、Mnが40〜54原
子%の範囲であることが望ましい。より好ましくは、4
4〜52原子%の範囲であり、最も好ましくは、43〜
49原子%である。前記Mnの組成範囲を40原子%未
満とした場合、あるいは、54原子%を越える場合、高
い比抵抗が得られないため好ましくない。また、X−M
nの式で示される合金としては、Mnの組成範囲は、良
好な交換結合磁界が得られる37〜63原子%とするこ
とが望ましい。500(Oe)以上の交換結合磁界が得
られるより好ましいMnの組成範囲は、43〜49原子
%である。
【0033】前記組成範囲のX−Mnの式で示される合
金は、スパッタリングなどの成膜法などにより形成され
た状態では、X原子およびMn原子の配列順序が不規則
な面心立方格子となっている。このため、反強磁性層2
と固定磁性層3との境界面において、交換結合磁界(H
ex)はほとんど発生しない。しかし、成膜されたX−
Mnの式で示される合金に対し、磁界中でアニール処理
することにより規則化し、fct構造とすることによ
り、反強磁性層2と固定磁性層3との境界面で大きな交
換結合磁界を発生させることが可能なものとされる。
【0034】また、反強磁性層2は、前記X’ーPt−
Mn合金で形成されたものであってもよい。前記X’ー
Pt−Mnの式で示される合金は、X−Mnの式で示さ
れる合金と同様に、スパッタリングなどにより成膜され
た後に、アニールを施すことにより規則化されてfct
構造とされたものであることが望ましい。このX’ーP
t−Mnの式で示される合金は、XーMnの式で示され
る合金と同様に、Mnが40〜54原子%の範囲である
ことが望ましい。より好ましくは、44〜52原子%の
範囲であり、最も好ましくは、43〜49原子%であ
る。前記Mnの組成範囲を40原子%未満とした場合、
あるいは、54原子%を越える場合、高い比抵抗が得ら
れないため好ましくない。
【0035】また、このX’ーPt−Mnの式で示され
る合金としては、Mnの組成範囲は、良好な交換結合磁
界が得られる37〜63原子%とすることが望ましい。
500(Oe)以上の交換結合磁界が得られるより好ま
しいMnの組成範囲は、43〜49原子%である。さら
に、前記X’ーPt−Mnの式で示される合金として
は、X’が0.2〜10原子%の範囲であることが望ま
しい。上記反強磁性層2がX’ーPt−Mnの式で示さ
れる合金で形成されたものである場合も、成膜後に、磁
界中でアニール処理を施すことにより、規則化されてf
ct構造とされ、固定磁性層3との境界面で大きな交換
結合磁界を発生させることが可能なものとされる。
【0036】また、前記反強磁性層2としては、比抵抗
は、200μΩcm以上であることが望ましい。前記比
抵抗が200μΩcm未満であるものとした場合、シャ
ントロスを十分に減少させることができないため、ま
た、前記シャントロスが△MR(抵抗変化率)に悪影響
を与える恐れがあるため好ましくない。また、スピンバ
ルブ型薄膜素子の比抵抗は、アニールを施すことによ
り、20%以上増加されたものであることが望ましい。
スピンバルブ型薄膜素子の比抵抗が、20%未満増加さ
れたものとした場合、シャントロスを十分に減少させる
ことができないものとなるため好ましくない。
【0037】前記固定磁性層3は、強磁性体の薄膜から
なり、例えば、Co、NiFe合金、CoNiFe合
金、CoFe合金などで形成されることが好ましい。ま
た、前記非磁性導電層4は、Cu、Cr、Au、Agな
どに代表される非磁性体からなり、通常、20〜40Å
程度の厚さに形成されている。
【0038】前記フリー磁性層5は、前記固定磁性層3
と同様の材質などで形成されることが好ましい。このこ
とは、非磁性導電層4を固定磁性層3とフリー磁性層5
とで挟む構造の巨大磁気抵抗効果発生機構にあっては、
固定磁性層3とフリー磁性層5とを同種の材質で構成す
る方が、異種の材質で構成するよりも、伝導電子のスピ
ン依存散乱以外の因子が生じる可能性が低く、より高い
磁気抵抗効果を得ることが可能であることに起因してい
る。
【0039】前記ハードバイアス層6,6は、例えば、
Co一Pt合金やCo一Cr一Pt合金などで形成され
ることが好ましい。また、導電層8は、例えば、Crや
CuやWなどで形成されることが好ましい。
【0040】図1に示すスピンバルブ型薄膜素子におい
ては、前記反強磁性層2は、固定磁性層3に接して形成
され、アニール(熱処理)を施すことにより、反強磁性
層2と固定磁性層3との界面にて、交換結合磁界が発生
し、例えば、図1に示すように、固定磁性層3の磁化が
図示Y方向に固定される。また、前記ハードバイアス層
6,6が、図示X1方向と反対方向に磁化されているこ
とで、前記フリー磁性層5の磁化が、図示X1方向と反
対方向に揃えられている。これにより、前記フリー磁性
層5の変動磁化と前記固定磁性層3の固定磁化とが交叉
する関係となっている。
【0041】このようなスピンバルブ型薄膜素子では、
前記導電層8からフリー磁性層5、非磁性導電層4、固
定磁性層3にセンス電流が与えられる。記録媒体から図
1に示す図示Y方向に磁界が与えられると、フリー磁性
層5の磁化は、図示X1方向と反対方向からY方向に変
動する。このときの非磁性導電層4とフリー磁性層5と
の界面、および非磁性導電層4と固定磁性層3との界面
で、スピンに依存した伝導電子の散乱が起こることによ
り、電気抵抗が変化し、記録媒体からの洩れ磁界が検出
される。
【0042】このようなスピンバルブ型薄膜素子を製造
するには、まず、下から下地層1、反強磁性層2、固定
磁性層3、非磁性導電層4、フリー磁性層5、保護層7
を成膜し、成膜後の工程において、アニール(熱処理)
を施す方法などによって行われる。ここでのアニール
は、200〜290℃程度の温度で行うことが好まし
い。前記温度を200℃未満とした場合、反強磁性層2
を形成するX−Mnの式で示される合金あるいはX’ー
Pt−Mnの式で示される合金の規則化に支障をきたす
ため好ましくない。一方、290℃を越える温度とした
場合、反強磁性層2以外の層に悪影響を与える恐れが生
じる。また、アニール温度は、240〜290℃程度の
温度で行うことがより好ましい。アニール温度を240
以上とすると、固定磁性層3が反強磁性層2の上側およ
び/または下側に配置されていても交換結合磁界が得ら
れるからである。アニール温度を240℃未満とした場
合、反強磁性層2の上に固定磁性層3が配置されている
ときは、交換結合が得られるが、反強磁性層2の下に固
定磁性層3が配置されているときは、交換結合磁界が得
られ難いものとなる。
【0043】このようなスピンバルブ型薄膜素子は、前
記反強磁性層2が、X−Mn(ただし、Xは、Pt、N
i、Pd、Ru、Ir、Rhのうちから選択される1種
の元素を示す。)の式で示される合金またはX’ーPt
−Mn(ただし、X’は、Pd、Cr、Ru、Ni、I
r、Rh、Au、Agのうちから選択される1種または
2種以上の元素を示す。)の式で示される合金で形成さ
れたものであり、アニールを施すことにより、反強磁性
が示されるとともに比抵抗が増加されたものであるた
め、反強磁性層が、NiO合金、FeMn合金、IrM
n合金などにより形成されたアニールを施さない従来の
スピンバルブ型薄膜素子と比較して、優れたスピンバル
ブ型薄膜素子とすることができる。
【0044】すなわち、反強磁性層2が、耐熱性に優れ
たものにより形成されることにより、製造工程において
高温による悪影響を受けにくいものを得ることができる
とともに、装置内の素子温度が高温となる薄膜磁気ヘッ
ドなどの装置に備えられた場合の耐久性が良好で、温度
変化による交換結合磁界の変動が少ない優れたものを得
ることができる。また、反強磁性層2のブロッキング温
度が高いものとなるため、反強磁性層2と固定磁性層3
との境界面に大きな交換結合磁界を発生させることがで
き、前記固定磁性層3の外部信号磁界に対する磁化の回
転を良好にピン止めすることができるスピンバルブ型薄
膜素子となる。さらにまた、反強磁性層2の比抵抗が大
きいため、シャントロスを減少させることができ、大き
な抵抗変化率を有するスピンバルブ型薄膜素子とするこ
とができる。
【0045】さらに、比抵抗および抵抗変化率が大きい
スピンバルブ型薄膜素子となるため、大きな出力電圧が
得られる高出力化に有利なスピンバルブ型薄膜素子とす
ることができる。ここで、反強磁性層2の比抵抗を変化
させた場合の出力変化を、数式を用いて詳しく説明す
る。
【0046】前記抵抗変化率△MRは、電圧変化量を△
V、電圧をVとしたとき、次の数式(i)で示される。 △MR=△V/V ・・・(i) したがって、電圧変化量△Vは、次の数式(ii)で示
される。 △V=V×△MR ・・・(ii)
【0047】ところで、前記電圧Vは、電流をI、抵抗
をRとしたときV=IRで示されるので、電圧変化量△
Vは、次の数式(iii)で示される。 △V=IR×△MR ・・・(iii)
【0048】したがって、アニールを施す前後の出力電
圧の比△V/△V0は、初期抵抗変化率を△MR0、初期
抵抗をR0とすると、次の数式(iv)で示される。 △V/△V0=(IR×△MR)/(IR0×△MR0
・・・(iv) また、アニールを施す前と後
での電流Iは等しいので、電圧の比△V/△V 0は、数
式(v)で示される。 △V/△V0=(R×△MR)/(R0×△MR0) ・・・(v) 前記数式(v)を書き換えると、次に示す数式(vi)
が得られる。 △V/△V0 =(△MR/△MR0)×(R/R0) ・・・(vi)
【0049】実際は、アニールを施して初めて、△MR
は測定し得るが、アニール前後で△MRが不変と仮定す
ると、アニール後にRが大きくなれば出力電圧△Vも大
きくなる。ここで、R、R0は、スピンバルブ型薄膜素
子トータルの抵抗値であるが、反強磁性層2は比較的膜
厚が厚いため、アニール後、反強磁性層2の比抵抗が増
加するとトータルの抵抗値の増加も比較的大きくなる。
すなわち、本発明のスピンバルブ型薄膜素子では、反強
磁性層2の比抵抗が大きいため、大きい出力電圧と大き
い抵抗変化とを有する優れたスピンバルブ型薄膜素子を
得ることができる。
【0050】また、前記X−Mnの式または前記X’ー
Pt−Mnの式で示される合金を、Mnが40〜54原
子%の範囲であるものとすることで、高い比抵抗とより
一層良好な交換結合磁界を得ることができ、抵抗変化率
をより向上させることができる優れたスピンバルブ型薄
膜素子となる。さらに、前記X−Mnの式または前記
X’ーPt−Mnの式で示される合金を、Mnが44〜
52原子%の範囲であるものとすることで、200μΩ
cm以上の高い比抵抗を有するものとすることができ、
良好な交換結合磁界が得られ、抵抗変化率をより向上さ
せることができる優れたスピンバルブ型薄膜素子とな
る。
【0051】また、前記X−Mnの式または前記X’ー
Pt−Mnの式で示される合金が、アニールを施すこと
により、規則化されてfct構造とされたものであるの
で、反強磁性層2と固定磁性層3との境界面に大きな交
換結合磁界を発生させることができる優れたスピンバル
ブ型薄膜素子となる。
【0052】さらにまた、反強磁性層2の比抵抗が、2
00μΩcm以上であるものとすることで、シャントロ
スを十分に減少させることができ、高出力化に有利な大
きい出力電圧を得ることができるより優れたスピンバル
ブ型薄膜素子となる。さらに、比抵抗が、アニールを施
すことにより、20%以上増加されたスピンバルブ型薄
膜素子としたので、シャントロスを減少させることがで
き、大きい出力電圧が得られるものすることができる。
【0053】また、前記X−Mnの式または前記X’ー
Pt−Mnの式で示される合金を、Mnが37〜63原
子%の範囲であるものとすることで、より一層良好な交
換結合磁界を得ることができ、抵抗変化率をより向上さ
せることができる優れたスピンバルブ型薄膜素子とな
る。さらに、前記X−Mnの式または前記X’ーPt−
Mnの式で示される合金を、Mnが43〜49原子%の
範囲であるものとすることで、500(Oe)以上の良
好な交換結合磁界が得られ、抵抗変化率をより向上させ
ることができる優れたスピンバルブ型薄膜素子となる。
さらにまた、前記X’ーPt−Mnの式で示される合金
を、X’が0.2〜10原子%の範囲であるものとする
ことで、X’ーPt−Mnの式で示される合金を使用し
た場合、さらに良好な交換結合磁界を得ることができ、
抵抗変化率をより向上させることができる。
【0054】また、前記スピンバルブ型薄膜素子の製造
方法は、基板上に、反強磁性層2と、この反強磁性層2
と接して形成され、前記反強磁性層2との交換結合磁界
により磁化方向が固定される固定磁性層3と、前記固定
磁性層3に非磁性導電層4を介して形成され、前記固定
磁性層3の磁化方向と交叉する方向に磁化が揃えられる
フリー磁性層5とを形成したのち、アニールを施してな
るスピンバルブ型薄膜素子の製造方法であって、前記反
強磁性層2を、X−Mnの式または前記X’ーPt−M
nの式で示される合金で形成し、前記アニールにより、
反強磁性を示させるとともに比抵抗を増加させる製造方
法であるので、上述した優れたスピンバルブ型薄膜素子
を容易に得ることができる。
【0055】本発明の第1の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子においては、上述したように、非磁性導電層4
の厚さ方向上下に、固定磁性層3とフリー磁性層5をそ
れぞれ単層構造として設けたが、これらを複数構造とし
てもよい。巨大磁気抵抗変化を示すメカニズムは、非磁
性導電層4と固定磁性層3とフリー磁性層5との界面で
生じる伝導電子のスピン依存散乱によるものである。C
uなどからなる前記非磁性導電層4に対し、スピン依存
散乱が大きな組み合わせとして、Co層が例示できる。
このため、固定磁性層3をCo以外の材料で形成した場
合、固定磁性層3の非磁性導電層4側の部分を図1の2
点鎖線で示すように薄いCo層3aで形成することが好
ましい。また、フリー磁性層5をCo以外の材料で形成
した場合も固定磁性層3の場合と同様に、フリー磁性層
5の非磁性導電層4側の部分を図1の2点鎖線で示すよ
うに薄いCo層5aで形成することが好ましい。
【0056】[第2の実施形態]図2は、本発明の第2
の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対
向面側から見た場合の構造を示した断面図である。本発
明の第2の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子は、図1
に示した第1の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子の膜
構成を逆にして形成したトップ型のシングルスピンバル
ブ型薄膜素子である。
【0057】図2において、符号121は、図示しない
基板上に設けられている下地層を示している。この下地
層121の上には、フリー磁性層125が形成され、さ
らに前記フリー磁性層125の上には、非磁性導電層1
24が形成されている。この非磁性導電層124の上に
は、固定磁性層123が形成され、さらに、前記固定磁
性層123の上には、反強磁性層122が形成されてい
る。また、符号126、126は、ハードバイアス層
を、符号127は、保護層を、符号128、128は、
導電層を示している。
【0058】本発明の第2の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子では、下地層121、フリー磁性層125、非
磁性導電層124、固定磁性層123、ハードバイアス
層126、保護層127、導電層128の構成材料は、
上述した第1の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子と同
等とされる。また、反強磁性層122の構成材料も、上
述した第1の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子と同様
とされるが、良好な交換結合磁界が得られる好ましい組
成範囲が若干異なる。
【0059】すなわち、反強磁性層122を形成するX
−Mnの式で示される合金において、Mnは37〜63
原子%の範囲とすることが好ましく、500(Oe)以
上の交換結合磁界が得られる42〜47原子%の範囲と
することがより好ましい。また、X’ーPt−Mnの式
で示される合金においても、Mnは37〜63原子%の
範囲とすることが好ましく、500(Oe)以上の交換
結合磁界が得られる42〜47原子%の範囲とすること
がより好ましい。さらにまた、X−Mnの式で示される
合金またはX’ーPt−Mnの式で示される合金は、上
述した第1の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子と同様
に、アニールを施すことにより、反強磁性が示されると
ともに比抵抗が増加されたものとされることが好まし
い。
【0060】本発明の第2の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子においても、前記反強磁性層122が、X−M
nの式で示される合金またはX’ーPt−Mnの式で示
される合金で形成されたものであり、アニールを施すこ
とにより、反強磁性が示されるとともに比抵抗が増加さ
れたものであるので、耐熱性、耐久性に優れ、大きな交
換結合磁界を発生させることができ、良好な抵抗変化率
を有するスピンバルブ型薄膜素子とすることができる。
また、比抵抗および抵抗変化率が大きいスピンバルブ型
薄膜素子となるため、良好な出力電圧が得られる高出力
化に有利なスピンバルブ型薄膜素子とすることができ
る。
【0061】[第3の実施形態]図3は、本発明の第3
の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対
向面側から見た場合の構造を示した断面図である。本発
明の第3の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子は、フリ
ー磁性層を中心として、その上下に非磁性導電層、固定
磁性層、反強磁性層が1層ずつ形成された、いわゆるデ
ュアルスピンバルブ型薄膜素子である。このデュアルス
ピンバルブ型薄膜素子では、フリー磁性層/非磁性導電
層/固定磁性層の3層の組合わせが2組存在するため、
図1および図2に示したシングルスピンバルブ型薄膜素
子と比べて、大きな抵抗変化率を期待でき、高密度記録
化に対応できるものとなっている。
【0062】図3に示すスピンバルブ型薄膜素子は、図
示しない基板上に設けられ、下から下地層141、反強
磁性層142、固定磁性層(下)143、非磁性導電層
144、フリー磁性層145、非磁性導電層146、固
定磁性層147(上)、反強磁性層148、保護層14
9の順で積層されている。なお、図3に示すように下地
層141から保護層149までの積層体の両側には、ハ
ードバイアス層132、132と導電層133、133
が形成されている。
【0063】本発明の第3の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子では、下地層141、フリー磁性層145、非
磁性導電層144、146、固定磁性層143、14
7、ハードバイアス層132、保護層149、導電層1
33の構成材料は、上述した実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子と同等とされる。また、反強磁性層142、1
48の構成材料も、上述した実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子と同等とされる。
【0064】本発明の第3の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子においても、前記反強磁性層142、148
が、X−Mnの式で示される合金またはX’ーPt−M
nの式で示される合金で形成されたものであり、アニー
ルを施すことにより、反強磁性が示されるとともに比抵
抗が増加されたものであるので、耐熱性、耐久性に優
れ、大きな交換結合磁界を発生させることができ、大き
な抵抗変化率を有するスピンバルブ型薄膜素子とするこ
とができる。さらに、反強磁性層142、148の比抵
抗および抵抗変化率が大きいため、良好な出力電圧が得
られる高出力化に有利なスピンバルブ型薄膜素子とな
る。
【0065】[第4の実施形態]図4は、本発明の第4
の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子を模式図的に示し
た横断面図であり、図5は、図4に示したスピンバルブ
型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た場合の構造
を示した断面図である。図4および図5に示すスピンバ
ルブ型薄膜素子は、反強磁性層、固定磁性層、非磁性導
電層、及びフリー磁性層が一層ずつ形成された、いわゆ
るボトム型のシングルスピンバルブ型薄膜素子の一種で
ある。
【0066】図4および図5において、図示しない基板
上に形成された最も下の層は、Taなどの非磁性材料で
形成された下地層10である。前記下地層10の上に
は、反強磁性層11が形成され、前記反強磁性層11の
上には、第1の固定磁性層12が形成されている。そし
て、前記第1の固定磁性層12の上には、非磁性中間層
13が形成され、前記非磁性中間層13の上には、第2
の固定磁性層14が形成されている。前記第1の固定磁
性層12および第2の固定磁性層14は、例えば、Co
膜、NiFe合金、CoNiFe合金、CoFe合金な
どで形成されている。
【0067】本発明の第4の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子においては、上述の第1の実施形態のスピンバ
ルブ型薄膜素子と同様に、前記反強磁性層11が、X−
Mn(ただし、Xは、Pt、Ni、Pd、Ru、Ir、
Rhのうちから選択される1種の元素を示す。)の式で
示される合金またはX’ーPt−Mn(ただし、X’
は、Pd、Cr、Ru、Ni、Ir、Rh、Au、Ag
のうちから選択される1種または2種以上の元素を示
す。)の式で示される合金で形成されたものであり、ア
ニールを施すことにより、反強磁性が示されるとともに
比抵抗が増加されたものとされることが好ましい。ま
た、これら各合金の組成についても、上述の第1の実施
形態のX−Mnの式で示される合金およびX’ーPt−
Mnの式で示される合金と同等でよい。
【0068】ところで、図4に示す第1の固定磁性層1
2及び第2の固定磁性層14に示されている矢印は、そ
れぞれの磁気モーメントの大きさ及びその方向を表して
おり、前記磁気モーメントの大きさは、飽和磁化(M
s)と膜厚(t)とをかけた値で選定される。
【0069】図4および図5に示す第1の固定磁性層1
2と第2の固定磁性層14とは同じ材質で形成され、し
かも、第2の固定磁性層14の膜厚tP2が、第1の固
定磁性層12の膜厚tP1よりも大きく形成されている
ために、第2の固定磁性層14の方が第1の固定磁性層
12に比べ、磁気モーメントが大きくなっている。ま
た、第1の固定磁性層12および第2の固定磁性層14
が異なる磁気モーメントを有することが望ましい。した
がって、第1の固定磁性層12の膜厚tP1が第2の固
定磁性層14の膜厚tP2より厚く形成されていてもよ
い。
【0070】第1の固定磁性層12は、図4および図5
に示すように、図示Y方向、すなわち記録媒体から離れ
る方向(ハイト方向)に磁化されており、非磁性中間層
13を介して対向する第2の固定磁性層14の磁化は、
前記第1の固定磁性層12の磁化方向と反平行(フェリ
状態)に磁化されている。
【0071】第1の固定磁性層12は、反強磁性層11
に接して形成され、磁場中アニール(熱処理)を施すこ
とにより、前記第1の固定磁性層12と反強磁性層11
との界面にて交換結合磁界が発生し、例えば、図4およ
び図5に示すように、前記第1の固定磁性層12の磁化
が、図示Y方向に固定される。前記第1の固定磁性層1
2の磁化が、図示Y方向に固定されると、非磁性中間層
13を介して対向する第2の固定磁性層14の磁化は、
第1の固定磁性層12の磁化と反平行の状態で固定され
る。
【0072】このようなスピンバルブ型薄膜素子におい
ては、交換結合磁界が大きいほど、第1の固定磁性層1
2の磁化と第2の固定磁性層14の磁化を安定して反平
行状態に保つことが可能である。この例のスピンバルブ
型薄膜素子では、反強磁性層11として、ブロッキング
温度が高く、しかも第1の固定磁性層12との界面で大
きい交換結合磁界を発生させる、X−Mnの式で示され
る合金またはX’ーPt−Mnの式で示される合金を使
用することで、前記第1の固定磁性層12及び第2の固
定磁性層14の磁化状態を熱的にも安定して保つことが
できる。
【0073】以上のように、このようなスピンバルブ型
薄膜素子では、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性
層14との膜厚比を適正な範囲内に収めることによっ
て、交換結合磁界(Hex)を大きくでき、第1の固定
磁性層12と第2の固定磁性層14の磁化を、熱的にも
安定した反平行状態(フェリ状態)に保つことができ、
しかも、良好な△MR(抵抗変化率)を得ることが可能
である。
【0074】次に、図4および図5に示す第1の固定磁
性層12と第2の固定磁性層14との間に介在する非磁
性中間層13について説明する。本発明では、第1の固
定磁性層12と第2の固定磁性層14との間に介在する
非磁性中間層13は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、
Cuのうちl種あるいは2種以上の合金で形成されてい
ることが好ましい。
【0075】図4および図5に示すように、第2の固定
磁性層14の上には、Cuなどで形成された非磁性導電
層15が形成され、さらに前記非磁性導電層15の上に
は、フリー磁性層16が形成されている。図4および図
5に示すように、フリー磁性層16は、2層で形成され
ており、前記非磁性導電層15に接する側に形成された
符号17の層はCo膜で形成されている。また、もう一
方の層18は、NiFe合金や、CoFe合金、あるい
はCoNiFe合金などで形成されている。なお非磁性
導電層15に接する側にCo膜の層17を形成する理由
は、Cuにより形成された前記非磁性導電層15との界
面での金属元素等の拡散を防止でき、また、△MR(抵
抗変化率)を大きくできるからである。なお、符号19
はTaなどで形成された保護層である。
【0076】また、図4および図5に示すスピンバルブ
型薄膜素子の紙面垂直方向における両側には、例えばC
o一Pt合金やCo一Cr一Pt合金などで形成された
ハードバイアス層130、130及びCrやCuやWで
形成された導電層131、131が形成されており、前
記ハードバイアス層130のバイアス磁界の影響を受け
て、前記フリー磁性層16の磁化は、図示X1方向に磁
化された状態となっている。
【0077】本発明の第4の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子においても、前記反強磁性層11が、X−Mn
の式で示される合金またはX’ーPt−Mnの式で示さ
れる合金で形成されたものであり、アニールを施すこと
により、反強磁性が示されるとともに比抵抗が増加され
たものであるので、耐熱性、耐久性に優れ、大きな交換
結合磁界を発生させることができ、良好な抵抗変化率を
有するスピンバルブ型薄膜素子となる。また、反強磁性
層11の比抵抗およびアニール後の抵抗増加が大きいた
め、良好な出力電圧が得られる高出力化に有利なスピン
バルブ型薄膜素子となる。
【0078】図4および図5におけるスピンバルブ型薄
膜素子では、前記導電層131、131からフリー磁性
層16、非磁性導電層15、及び第2の固定磁性層14
にセンス電流が与えられる。記録媒体から図4および図
5に示す図示Y方向に磁界が与えられると、フリー磁性
層16の磁化は、図示X1方向からY方向に変動し、こ
のときの非磁性導電層15とフリー磁性層16との界
面、及び非磁性導電層15と第2の固定磁性層14との
界面でスピンに依存した伝導電子の散乱が起こることに
より、電気抵抗が変化し、記録媒体からの洩れ磁界が検
出される。
【0079】ところで前記センス電流は、実際には、第
1の固定磁性層12と非磁性中間層13の界面および第
2の固定磁性層14と非磁性中間層13の界面などにも
流れる。前記第1の固定磁性層12は△MRに直接関与
せず、前記第1の固定磁性層12は、△MRに関与する
第2の固定磁性層14を適正な方向に固定するための、
いわば補助的な役割を担った層となっている。このた
め、センス電流が、第1の固定磁性層12及び非磁性中
間層13に流れることは、シャントロス(電流ロス)に
なるが、このシャントロスの量は非常に少なく、第4の
実施の形態では、従来とほぼ同程度の△MRを得ること
が可能となっている。
【0080】[第5の実施形態]図6は、本発明の第5
の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子を模式図的に示し
た横断面図であり、図7は、図6に示したスピンバルブ
型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た場合の構造
を示した断面図である。この例のスピンバルブ型薄膜素
子は、図4および図5に示したスピンバルブ型薄膜素子
の膜構成を逆にして形成したトップ型のシングルスピン
バルブ型薄膜素子である。すなわち、図6および図7に
示すスピンバルブ型薄膜素子では、図示しない基板上
に、下から下地層10、NiFe膜22、Co膜23
(NiFe膜22とCo膜23を合わせてフリー磁性層
21)、非磁性導電層24、第2の固定磁性層25、非
磁性中間層26、第1の固定磁性層27、反強磁性層2
8、及び保護層29の順で積層されている。
【0081】本発明の第5の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子においては、上述の第2の実施形態のスピンバ
ルブ型薄膜素子の反強磁性層11と同様に、前記反強磁
性層28が、X−Mnの式で示される合金またはX’ー
Pt−Mnの式で示される合金で形成されたものであ
り、アニールを施すことにより、反強磁性が示されると
ともに比抵抗が増加されたものとされていることが好ま
しい。また、これら各合金の組成についても、上述の第
2の実施形態のX−Mnの式で示される合金およびX’
ーPt−Mnの式で示される合金と同等でよい。
【0082】次に、図6および図7に示す第1の固定磁
性層27と第2の固定磁性層25との間に介在する非磁
性中間層26は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cu
のうち1種あるいは2種以上の合金で形成されているこ
とが好ましい。
【0083】図6および図7に示すスピンバルブ型薄膜
素子では、第1の固定磁性層27の膜厚tP1は、第2
の固定磁性層25の膜厚tP2と異なる値で形成され、
例えば、前記第1の固定磁性層27の膜厚tP1の方
が、第2の固定磁性層25の膜厚tP2よりも厚く形成
されている。また、前記第1の固定磁性層27の磁化
が、図示Y方向に磁化され、前記第2の固定磁性層25
の磁化は、図示Y方向と逆の方向に磁化されて、第1の
固定磁性層27と第2の固定磁性層25磁化は、フェリ
状態となっている。なお、図6および図7に示すよう
に、下地層10から保護層29までの積層体の両側に
は、ハードバイアス層130、130と導電層131、
131が形成されており、前記ハードバイアス層130
が図示X1方向に磁化されていることによって、フリー
磁性層21の磁化が図示X1方向に揃えられている。
【0084】図6および図7におけるスピンバルブ型薄
膜素子では、前記導電層131からフリー磁性層21、
非磁性導電層24、及び固定磁性層25にセンス電流が
与えられる。記録媒体から図6および図7に示す図示Y
方向に磁界が与えられると、フリー磁性層21の磁化
は、図示X1方向からY方向に変動し、このときの非磁
性導電層24とフリー磁性層21との界面、及び非磁性
導電層24と第2の固定磁性層25との界面でスピンに
依存した伝導電子の散乱が起こることにより、電気抵抗
が変化し、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0085】本発明の第5の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子においても、前記反強磁性層28が、X−Mn
の式で示される合金またはX’ーPt−Mnの式で示さ
れる合金で形成されたものであり、アニールを施すこと
により、反強磁性が示されるとともに比抵抗が増加され
たものであるので、耐熱性、耐久性に優れ、大きな交換
結合磁界を発生させることができ、良好な抵抗変化率を
有するスピンバルブ型薄膜素子となる。また、反強磁性
層28の比抵抗およびアニール後の抵抗増加が大きいた
め、良好な出力電圧が得られる高出力化に有利なスピン
バルブ型薄膜素子となる。
【0086】[第6の実施形態]図8は、本発明の第6
の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子を模式図的に示し
た横断面図であり、図9は、図8に示したスピンバルブ
型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た場合の構造
を示した断面図である。この例のスピンバルブ型薄膜素
子は、フリー磁性層を中心として、その上下に非磁性導
電層、固定磁性層、及び反強磁性層が1層ずつ形成され
た、いわゆるデュアルスピンバルブ型薄膜素子である。
このデュアルスピンバルブ型薄膜素子では、フリー磁性
層/非磁性導電層/固定磁性層の3層の組合わせが2組
存在するため、シングルスピンバルブ型薄膜素子に比べ
て大きな△MRを期待でき、高密度記録化に対応できる
ものとなっている。
【0087】図8および図9に示すスピンバルブ型薄膜
素子は、図示しない基板上に、下から下地層30、反強
磁性層31、第1の固定磁性層(下)32、非磁性中問
層(下)33、第2の固定磁性層(下)34、非磁性導
電層35、フリー磁性層36(符号37,39はCo
膜、符号38はNiFe合金膜)、非磁性導電層40、
第2の固定磁性層(上)41、非磁性中間層(上)4
2、第1の固定磁性層(上)43、反強磁性層44、及
び保護層45の順で積層されている。なお、図9に示す
ように、下地層30から保護層45までの積層体の両側
には、ハードバイアス層130と導電層131が形成さ
れている。
【0088】本発明の第6の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子において、前記反強磁性層31、44は、上述
の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子と同様に、X−M
nの式で示される合金またはX’ーPt−Mnの式で示
される合金で形成されたものであり、アニールを施すこ
とにより、反強磁性が示されるとともに比抵抗が増加さ
れたものとされることが好ましい。
【0089】また、図8および図9に示す第1の固定磁
性層(下)32,(上)43と第2の固定磁性層、
(下)34,(上)41との間に介在する非磁性中間層
33,42は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuの
うち1種あるいは2種以上の合金で形成されていること
が好ましい。
【0090】図8および図9に示すように、フリー磁性
層36よりも下側に形成された第1の固定磁性層(下)
32の膜厚tP1は、非磁性中間層33を介して形成さ
れた第2の固定磁性層(下)34の膜厚tP2に比べて
薄く形成されている。一方、フリー磁性層36よりも上
側に形成されている第1の固定磁性層(上)43の膜厚
tP1は、非磁性中間層42を介して形成された第2の
固定磁性層41(上)の膜厚tP2に比べ厚く形成され
ている。そして、第1の固定磁性層(下)32,(上)
43の磁化は、共に図示Y方向と反対方向に磁化されて
おり、第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化
は、図示Y方向に磁化された状態になっている。
【0091】図4〜図7に示す本発明の第4の実施形態
および第5の実施形態のシングルスピンバルブ型簿膜素
子の場合にあっては、第1の固定磁性層のMs・tP1
と第2の固定磁性層のMs・tP2が異なるように膜厚
などを調節し、第1の固定磁性層の磁化の向きは、図示
Y方向あるいは図示Y方向と反対方向のどちらでもよ
い。しかし、図8および図9に示すデュアルスピンバル
ブ型薄膜素子にあっては、第1の固定磁性層(下)3
2,(上)43の磁化が、共に同じ方向に向くようにす
る必要性がある。そのため、本発明では、第1の固定磁
性層(下)32,(上)43の磁気モーメントMs・t
1と、第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁
気モーメントMs・tP2との調整、及び熱処理中に印
加する磁場の方向及びその大きさを適正に調節すること
で、デュアルスピンバルブ型薄膜素子として満足に機能
させることができる。
【0092】ここで、第1の固定磁性層(下)32,
(上)43の磁化を共に同じ方向に向けておくのは、前
記第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化と反
平行になる第2の固定磁性層(下)34,(上)41の
磁化を、共に同じ方向に向けておくためであり、その理
由について以下に説明する。
【0093】前述したように、スピンバルブ型薄膜素子
の△MRは、固定磁性層の固定磁化とフリー磁性層の変
動磁化との関係によって得られるものである。本発明の
ように、固定磁性層が第1の固定磁性層と第2の固定磁
性層の2層に分断された場合にあっては、前記△MRに
直接関与する固定磁性層の層は、第2の固定磁性層であ
り、第1の固定磁性層は、前記第2の固定磁性層の磁化
を一定方向に固定しておくためのいわば補助的な役割を
担っている。
【0094】仮に図8および図9に示す第2の固定磁性
層(下)34,(上)41の磁化が互いに反対方向に固
定されているとすると、例えば、第2の固定磁性層
(上)41の固定磁化と、フリー磁性層36の変動磁化
との関係では、抵抗が大きくなっても、第2の固定磁性
層(下)34の固定磁化とフリー磁性層36の変動磁化
との関係では、抵抗が非常に小さくなってしまい、結
局、デュアルスピンバルブ型薄膜素子における△MR
は、図4〜図7に示す本発明の第4の実施形態および第
5の実施形態のシングルスピンバルブ型簿膜素子の△M
Rよりも小さくなってしまう。
【0095】この問題は、固定磁性層を非磁性中間層を
介して2層に分断したデュアルスピンバルブ型薄膜素子
に限ったことではなく、図3に示す第3の実施形態のデ
ュアルスピンバルブ型薄膜素子などであっても同じこと
であり、シングルスピンバルブ型薄膜素子に比ベ△MR
を大きくでき、大きな出力を得ることができるデュアル
スピンパルブ型薄膜素子の特性を発揮させるには、フリ
ー磁性層の上下に形成される固定磁性層を共に同じ方向
に固定しておく必要がある。
【0096】ところで、本発明では、図8および図9に
示すように、フリー磁性層36よりも下側に形成された
固定磁性層は、第2の固定磁性層(下)34のMs・t
2の方が、第1の固定磁性層(下)32のMs・tP1
に比べて大きくなっており、Ms・tP2の大きい第2
の固定磁性層(下)34の磁化が、図示Y方向に固定さ
れている。そして、第2の固定磁性層(下)34のMs
・tP2と、第1の固定磁性層(下)32のMs・tP1
とを足し合わせた、いわゆる合成磁気モーメントは、M
s・tP2の大きい第2の固定磁性層(下)34の磁気
モーメントに支配され、図示Y方向に向けられている。
【0097】一方、フリー磁性層36よりも上側に形成
された固定磁性層は、第1の固定磁性層(上)43のM
s・tP1の方が、第2の固定磁性層(上)41のMs
・tP2に比べて大きくなっており、Ms・tP1の大き
い第1の固定磁性層(上)43の磁化が、図示Y方向と
反対方向に固定されている。第1の固定磁性層(上)4
3のMs・tP1と、第2の固定磁性層(上)41のM
s・tP2とを足した、いわゆる合成磁気モーメント
は、第1の固定磁性層(上)43のMs・tP1に支配
され、図示Y方向と反対方向に向けられている。
【0098】すなわち、図8および図9に示すデュアル
スピンバルブ型薄膜素子では、フリー磁性層36の上下
で、第1の固定磁性層のMs・tP1と第2の固定磁性
層のMs・tP2を足して求めることができる合成磁気
モーメントの方向が、反対方向になっているのである。
このため、フリー磁性層36よりも下側で形成される図
示Y方向に向けられた合成磁気モーメントと、前記フリ
ー磁性層36よりも上側で形成される図示Y方向と反対
方向に向けられた合成磁気モーメントとが、図示左周り
の磁界を形成している。従って、前記合成磁気モーメン
トによって形成される磁界により、第1の固定磁性層
(下)32,(上)43の磁化と第2の固定磁性層
(下)34,(上)41の磁化とがさらに安定したフェ
リ状態を保つことが可能である。
【0099】更に、センス電流114は、主に比抵抗の
小さい非磁性導電層35,39を中心にして流れ、セン
ス電流114を流すことにより、右ネジの法則によって
センス電流磁界が形成されることになるが、センス電流
114を図3の方向に流すことにより、フリー磁性層3
6の下側に形成された第1の固定磁性層(下)32/非
磁性中間層(下)33/第2の固定磁性層(下)34の
場所にセンス電流が作るセンス電流磁界の方向を、前記
第1の固定磁性層(下)32/非磁性中間層(下)33
/第2の固定磁性層(下)34の合成磁気モーメントの
方向と一致させることができ、さらに、フリー磁性層3
6よりも上側に形成された第1の固定磁性層(上)43
/非磁性中間層(上)42/第2の固定磁性層(上)4
1の場所にセンス電流が作るセンス電流磁界を、前記第
1の固定磁性層(上)43/非磁性中間層(上)42/
第2の固定磁性層(上)41の合成磁気モーメントの方
向と一致させることができる。
【0100】センス電流磁界の方向と合成磁気モーメン
トの方向を一致させることのメリットに関しては後で詳
述するが、簡単に言えば、前記固定磁性層の熱的安定性
を高めることができることと、大きなセンス電流を流せ
ることができるので、再生出力を向上できるという、非
常に大きいメリットがある。センス電流磁界と合成磁気
モーメントの方向に関するこれらの関係は、フリー磁性
層36の上下に形成される固定磁性層の合成磁気モーメ
ントが、図示左周りの磁界を形成しているからである。
【0101】ハードディスクなどの装置内の環境温度ま
たはセンス電流の増大により素子温度は、約200℃程
度まで上昇し、さらに今後、記録媒体の回転数などの増
大によって、素子温度がさらに上昇する傾向にある。こ
のように環境温度が上昇すると、交換結合磁界は低下す
るが、本発明によれば、合成磁気モーメントで形成され
る磁界と、センス電流磁界により、熱的にも安定して第
1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化と第2の
固定磁性層(下)34,(上)41の磁化とをフェリ状
態に保つことができる。
【0102】前述した合成磁気モーメントによる磁界の
形成、及び、合成磁気モーメントによる磁界とセンス電
流磁界との方向関係は、本発明特有の構成であり、フリ
ー磁性層の上下に単層で形成され、しかも、同じ方向に
向けられ固定磁化された固定磁性層を有する従来のデュ
アルスピンバルブ型薄膜素子では、得ることができない
ものとなっている。
【0103】また、第6の実施形態では、フリー磁性層
36よりも下側に形成された第1の固定磁性層(下)3
2のMs・tP1を、第2の固定磁性層34のMs・t
2よりも大きくし、且つ、前記フリー磁性層36より
も上側に形成された第1の固定磁性層43のMs・tP
1を第2の固定磁性層41のMs・tP2よりも小さくし
てもよい。この場合においても、第1の固定磁性層
(下)32,(上)43の磁化を得たい方向、すなわち
図示Y方向あるいは図示Y方向と反対方向に5k(O
e)以上の磁界を印加することによって、フリー磁性層
36の上下に形成された第2の固定磁性層(下)34,
(上)41を同じ方向に向けて固定でき、しかも、図示
右回りのあるいは左回りの合成磁気モーメントによる磁
界を形成できる。
【0104】以上、図4〜図9に示したスピンバルブ型
薄膜素子によれば、固定磁性層を非磁性中間層を介して
第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との2層に分断
し、この2層の固定磁性層間に発生する交換結合磁界
(RKKY相互作用)によって前記2層の固定磁性層の
磁化を反平行状態(フェリ状態)にすることにより、従
来に比べて熱的にも安定した固定磁性層の磁化状態を保
つことができる。特に本実施の形態では、反強磁性層と
してプロッキング温度が非常に高く、また第1の固定磁
性層との界面で大きい交換結合磁界(交換異方性磁界)
を発生するX−Mnの式で示される合金またはX’ーP
t−Mnの式で示される合金を使用することにより、第
1の固定磁性層と第2の固定磁性層との磁化状態を、よ
り熱的安定性に優れたものにできる。
【0105】さらに本実施の形態では、第1の固定磁性
層のMs・tP1と第2の固定磁性層のMs・tP2とを
異なる値で形成し、さらに熱処理中の印加磁場の大きさ
及びその方向を適正に調節することによって、前記第1
の固定磁性層(及び第2の固定磁性層)の磁化を得たい
方向に磁化させることが可能である。
【0106】特に図8および図9に示すデユアルスピン
バルブ型薄膜素子にあっては、第1の固定磁性層(下)
32,(上)43のMs・tP1と第2の固定磁性層
(下)34,(上)41のMs・tP2を適正に調節
し、さらに熱処理中の印加磁場の大きさ及びその方向を
適正に調節することによって、△MRに関与するフリー
磁性層36の上下に形成された2つの第2の固定磁性層
(下)34,(上)41の磁化を共に同じ方向に固定で
き、且つフリー磁性層36の上下に形成される合成磁気
モーメントを互いに反対方向に形成できることによっ
て、前記合成磁気モーメントによる磁界の形成、及び、
前記合成磁気モーメントによる磁界とセンス電流磁界と
の方向関係の形成ができ、固定磁性層の磁化の熱的安定
性をさらに向上させることが可能である。
【0107】本発明の第6の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子においても、前記反強磁性層31、44が、X
−Mnの式で示される合金またはX’ーPt−Mnの式
で示される合金で形成されたものであり、アニールを施
すことにより、反強磁性が示されるとともに比抵抗が増
加されたものであるので、耐熱性、耐久性に優れ、大き
な交換結合磁界を発生させることができ、良好な抵抗変
化率を有するスピンバルブ型薄膜素子となる。また、反
強磁性層31、44の比抵抗およびアニールによる抵抗
増大が大きいため、良好な出力電圧が得られる高出力化
に有利なスピンバルブ型薄膜素子となる。
【0108】[第7の実施形態]図10は、本発明の第
7の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子を模式図的に示
した横断面図であり、図11は、図10に示したスピン
バルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た場合
の構造を示した断面図である。このスピンバルブ型薄膜
素子においても、図4〜図9に示すスピンバルブ型薄膜
素子と同様に、ハードディスク装置に設けられた浮上式
スライダのトレーリング側端部などに設けられて、ハー
ドディスクなどの記録磁界を検出するものである。な
お、ハードディスクなどの磁気記録媒体の移動方向は図
示Z方向であり、磁気記録媒体からの洩れ磁界の方向は
Y方向である。このスピンバルブ型薄膜素子は、固定磁
性層のみならず、フリー磁性層も非磁性中間層を介して
第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の2層に分断
されている。
【0109】本発明の第7の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子は、図10および図11に示すように、図示し
ない基板上に、下から下地層50、反強磁性層51、第
1の固定磁性層52、非磁性中間層53、第2の固定磁
性層54、非磁性導電層55、第1のフリー磁性層5
6、非磁性中間層59、第2のフリー磁性層60、及び
保護層61の順に積層されている。
【0110】本発明の第7の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子において、前記下地層50及び保護層61は、
例えばTaなどで形成されている。また、前記反強磁性
層51は、上述の第1の実施形態のスピンバルブ型薄膜
素子と同様に、X−Mnの式で示される合金またはX’
ーPt−Mnの式で示される合金で形成されたものであ
り、アニールを施すことにより、反強磁性が示されると
ともに比抵抗が増加されたものとされることが好まし
い。第1の固定磁性層52及び第2の固定磁性層54
は、Co膜、NiFe合金、CoFe合金、あるいはC
oNiFe合金などで形成されている。また、非磁性中
間層53は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのう
ち1種あるいは2種以上の合金で形成されていることが
好ましい。さらに、非磁性導電層55はCuなどで形成
されている。
【0111】前記第1の固定磁性層52の磁化と第2の
固定磁性層54の磁化は、互いに反平行に磁化されたフ
ェリ状態となっており、例えば、第1の固定磁性層52
の磁化は、図示Y方向に、第2の固定磁性層54の磁化
は、図示Y方向と反対方向に固定されている。このフェ
リ状態の安定性を保つためには、大きい交換結合磁界が
必要である。本実施の形態では、より大きな交換結合磁
界を得るために、以下に示す種々の適正化を行ってい
る。
【0112】図10および図11に示す非磁性導電層5
5の上には、第1のフリー磁性層56が形成されてい
る。図10および図11に示すように、前記第1のフリ
ー磁性層56は2層で形成されており、非磁性導電層5
5に接する側にCo膜57が形成されている。非磁性導
電層55に接する側にCo膜57を形成するのは、第1
に△MRを大きくできるため、第2に非磁性導電層55
との拡散を防止するためである。
【0113】前記Co膜57の上には、NiFe合金膜
58が形成されている。さらに、前記NiFe合金膜5
8上には、非磁性中間層59が形成されている。そし
て、前記非磁性中間層59の上には、第2のフリー磁性
層60が形成され、さらに、前記第2のフリー磁性層6
0上には、Taなどで形成された保護層61が形成され
ている。前記第2のフリー磁性層60は、Co膜、Ni
Fe合金、CoFe合金、あるいはCoNiFe合金な
どで形成されている。また、第1のフリー磁性層58
は、NiFe合金の他に、CoFe合金あるいはCoN
iFe合金などで形成されていてもよい。
【0114】図10および図11に示す下地層50から
保護層61までのスピンバルブ膜は、その側面が傾斜面
に削られ、前記スピンバルブ膜は台形状で形成されてい
る。前記スピンバルブ膜の両側には、ハードバイアス層
62,62及び導電層63,63が形成されている。前
記ハードバイアス層62は、Co一Pt合金やCo一C
r−Pt合金などで形成されている。また、前記導電層
63は、CuやCrなどで形成されている。
【0115】図10および図11に示す第1のフリー磁
性層56と第2のフリー磁性層60の間には、非磁性中
間層59が介在し、前記第1のフリー磁性層56と第2
のフリー磁性層60間に発生する交換結合磁界(RKK
Y相互作用)によって、前記第1のフリー磁性層56の
磁化と第2のフリー磁性層60の磁化は、互いに反平行
状態(フェリ状態)になっている。
【0116】図10および図11に示すスピンバルブ型
薄膜素子では、例えば、第1のフリー磁性層56の膜厚
tF1は、第2のフリー磁性層60の膜厚tF2よりも小
さく形成されている。そして、前記第1のフリー磁性層
56のMs・tF1は、第2のフリー磁性層60のMs
・tF2よりも小さく設定されており、ハードバイアス
層62から図示X1方向と反対方向にバイアス磁界が与
えられると、Ms・tF2の大きい第2のフリー磁性層
60の磁化が、前記バイアス磁界の影響を受けて、図示
X1方向と反対方向に揃えられ、前記第2のフリー磁性
層60との交換結合磁界(RKKY相互作用)によっ
て、Ms・tF1の小さい第1のフリー磁性層56の磁
化は、図示X1方向に揃えられる。
【0117】図示Y方向から外部磁界が侵入してくる
と、前記第1のフリー磁性層56と第2のフリー磁性層
60の磁化は、フェリ状態を保ちながら、前記外部磁界
の影響を受けて回転する。そして、△MRに寄与する第
1のフリー磁性層56の変動磁化と、第2の固定磁性層
54の固定磁化(例えば図示Y方向と反対方向に磁化さ
れている)との関係によって、電気抵抗が変化し、外部
磁界が電気抵抗変化として検出される。また、本実施の
形態では、第1のフリー磁性層56と第2のフリー磁性
層60との間に介在する非磁性中間層59は、Ru、R
h、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以
上の合金で形成されていることが好ましい。
【0118】本発明の第7の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子においても、前記反強磁性層51が、X−Mn
の式で示される合金またはX’ーPt−Mnの式で示さ
れる合金で形成されたものであり、アニールを施すこと
により、反強磁性が示されるとともに比抵抗が増加され
たものであるので、耐熱性、耐久性に優れ、大きな交換
結合磁界を発生させることができ、良好な抵抗変化率を
有するスピンバルブ型薄膜素子となる。また、反強磁性
層51の比抵抗および抵抗変化率が大きいため、良好な
出力電圧が得られる高出力化に有利なスピンバルブ型薄
膜素子となる。
【0119】[第8の実施形態]図12は、本発明の第
8の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子を模式図的に示
した横断面図、図13は、図12に示すスピンバルブ型
薄膜素子を記録媒体との対向面から見た場合の断面図で
ある。このスピンバルブ型薄膜素子は、図10および図
11に示すスピンバルブ型薄膜素子の積層の順番を逆に
したものである。すなわち、図示しない基板上に、下か
ら、下地層70、第2のフリー磁性層71、非磁性中間
層72、第1のフリー磁性層73、非磁性導電層76、
第2の固定磁性層77、非磁性中間層78、第1の固定
磁性層79、反強磁性層80、及び保護層81の順で積
層されている。
【0120】本発明の第8の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子において、前記下地層70及び保護層81は、
例えば、Taなどで形成されている。前記反強磁性層8
0は、上述の第2の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子
と同様に、X−Mnの式で示される合金またはX’ーP
t−Mnの式で示される合金で形成されたものであり、
アニールを施すことにより、反強磁性が示されるととも
に比抵抗が増加されたものとされることが好ましい。第
1の固定磁性層79及び第2の固定磁性層77は、Co
膜、NiFe合金、CoFe合金、あるいはCoNiF
e合金などで形成されている。また、非磁性中問層78
は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あ
るいは2種以上の合金で形成されていることが好まし
い。さらに、非磁性導電層76はCuなどで形成されて
いる。
【0121】図12および図13に示すスピンパルプ型
薄膜素子では、フリー磁性層が2層に分断されて形成さ
れており、非磁性導電層76に接する側に第1のフリー
磁性層73が形成され、もう一方のフリー磁性層が、第
2のフリー磁性層71となっている。図12および図1
3に示すように、第1のフリー磁性層73は、2層で形
成されており、非磁性導電層76に接する側に形成され
た層75は、Co膜で形成されている。また、非磁性中
間層72に接する側に形成された層74と、第2のフリ
ー磁性層71は、例えば、NiFe合金、CoFe合
金、あるいはCoNiFe合金などで形成されている。
【0122】図12および図13に示す下地層70から
保護層81までのスピンバルブ膜は、その側面が傾斜面
に削られ、前記スピンバルブ膜は台形状で形成されてい
る。前記スピンバルブ膜の両側には、ハードバイアス層
82,82及び導電層83,83が形成されている。前
記ハードバイアス層82は、Co一Pt合金やCo一C
r一Pt合金などで形成されている。また、前記導電層
83は、CrやCuやWなどで形成されている。
【0123】図12および図13に示す第1のフリー磁
性層73と第2のフリー磁性層71の間には、非磁性中
間層72が介在し、前記第1のフリー磁性層73と第2
のフリー磁性層71間に発生する交換結合磁界(RKK
Y相互作用)によって、前記第1のフリー磁性層73の
磁化と第2のフリー磁性層71の磁化は、反平行状態
(フェリ状態)となっている。図12および図13に示
すスピンバルブ型薄膜素子では、例えば、第1のフリー
磁性層73の膜厚tF1は、第2のフリー磁性層71の
膜厚tF2より大きく形成されている。そして、前記第
1のフリー磁性層73のMs・tF1は、第2のフリー
磁性層71のMs・tF2よりも大きくなるように設定
されており、ハードバイアス層82から図示X1方向に
バイアス磁界が与えられると、Ms・tF 1の大きい第
1のフリー磁性層73の磁化が、前記パイアス磁界の影
響を受けて図示X1方向に揃えられ、前記第1のフリー
磁性層73との交換結合磁界(RKKY相互作用)によ
って、Ms・tF2の小さい第2のフリー磁性層71の
磁化は、図示X1方向と反対方向に揃えられる。なお本
発明では、第1のフリー磁性層73の膜厚tF1が、第
2のフリー磁性層71の膜厚tF2よりも小さく形成さ
れ、前記第1のフリ一磁性層73のMS・tF1が第2
のフリー磁性層71のMS・tF2よりも小さく設定さ
れていてもよい。
【0124】図示Y方向から外部磁界が侵入してくる
と、前記第1のフリー磁性層73と第2のフリー磁性層
71の磁化はフェリ状態を保ちながら、前記外部磁界の
影響を受けて回転する。そして、△MRに奇与する第1
のフリー磁性層73の磁化方向と、第2の固定磁性層7
1の固定磁化との関係によって電気抵抗が変化し、外部
磁界の信号が検出される。また、本発明では、第1のフ
リー磁性層73と第2のフリー磁性層71との間に介在
する非磁性中間層72は、Ru、Rh、Ir、Cr、R
e、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成され
ていることが好ましい。
【0125】第1のフリー磁性層73と第2のフリー磁
性層71との合成磁気モーメントの絶対値を、第1の固
定磁性層79と第2の固定磁性層77との合成磁気モー
メントの絶対値よりも大きくすることにより、前記第1
のフリー磁性層79と、第2のフリー磁性層77の磁化
が、第1の固定磁性層79と第2の固定磁性層77との
合成磁気モーメントの影響を受けにくくなり、前記第1
のフリー磁性層73及び第2のフリー磁性層71の磁化
が外部磁界に対して感度良く、回転し、出力を向上させ
ることが可能になる。
【0126】本発明の第8の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子においても、前記反強磁性層80が、X−Mn
の式で示される合金またはX’ーPt−Mnの式で示さ
れる合金で形成されたものであり、アニールを施すこと
により、反強磁性が示されるとともに比抵抗が増加され
たものであるので、耐熱性、耐久性に優れ、大きな交換
結合磁界を発生させることができ、良好な抵抗変化率を
有するスピンバルブ型薄膜素子となる。また、反強磁性
層80の比抵抗およびアニール後の抵抗増加が大きいた
め、良好な出力電圧が得られる高出力化に有利なスピン
バルブ型薄膜素子となる。
【0127】[第9の実施形態]図14は、本発明の第
9の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子の構造を表す横
断面図であり、図15は、図14に示すスピンバルブ型
薄膜素子を、記録媒体との対向面側から見た断面図であ
る。このスピンバルブ型薄膜素子は、フリー磁性層を中
心にしてその上下に非磁性導電層、固定磁性層、及び反
強磁性層が積層されたデュアルスピンバルブ型薄膜素子
であり、前記フリー磁性層、及び固定磁性層が、非磁性
中間層を介して2層に分断されて形成されている。
【0128】図14および図15に示す最も下側に形成
されている層は、図示しない基板上に設けられた下地層
91であり、この下地層91の上に反強磁性層92、第
1の固定磁性層(下)93、非磁性中間層94(下)、
第2の固定磁性層(下)95、非磁性導電層96、第2
のフリー磁性層97、非磁性中間層100、第1のフリ
ー磁性層101、非磁性導電層104、第2の固定磁性
層(上)105、非磁性中間層(上)106、第1の固
定磁性層(上)107、反強磁性層108、及び保護層
109が形成されている。
【0129】まず、各層の材質について説明する。前記
反強磁性層92,108は、上述の実施形態のスピンバ
ルブ型薄膜素子と同様に、X−Mnの式で示される合金
またはX’ーPt−Mnの式で示される合金で形成され
たものであり、アニールを施すことにより、反強磁性が
示されるとともに比抵抗が増加されたものとされること
が好ましい。第1の固定磁性層(下)93,(上)10
7、及び第2の固定磁性層(下)95,(上)105
は、Co膜、NiFe合金、CoFe合金、あるいは、
CoNiFe合金などで形成されている。また、第1の
固定磁性層(下)93,(上)107と第2の固定磁性
層(下)95,(上)105間に形成されている非磁性
中間層(下)94,(上)106及び第1のフリー磁性
層101と第2のフリー磁性層97間に形成されている
非磁性中間層100は、Ru、Rh、Ir、Cr、R
e、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成され
ていることが好ましい。さらに、非磁性導電層96,1
04はCuなどで形成されている。
【0130】図14および図15に示すように、第1の
フリー磁性層101及び第2のフリー磁性層97は2層
で形成されている。非磁性導電層96,104に接する
側に形成された第1のフリー磁性層101の層103及
び第2のフリー磁性層97の層98は、Co膜で形成さ
れている。また、非磁性中間層100を介して形成され
ている第1のフリー磁性層101の層102及び第2の
フリー磁性層97の層99は、例えば、NiFe合金、
CoFe合金、あるいはCoNiFe合金などで形成さ
れている。非磁性導電層96,104側に接する層9
8,103をCo膜で形成することにより、△MRを大
きくでき、しかも非磁性導電層96,104との拡散を
防止することができる。
【0131】ところで、本実施の形態では、前述したよ
うに、反強磁性層92,108として、第1の固定磁性
層(下)93,(上)107との界面で、交換結合磁界
(交換異方性磁界)を発生させるためにアニールを施す
反強磁性材料を使用している。しかし、フリー磁性層よ
りも下側に形成されている反強磁性層92と第1の固定
磁性層(下)93との界面では、金属元素の拡散が発生
しやすく熱拡散層が形成されやすくなっているために、
前記第1の固定磁性層(下)93として機能する磁気的
な膜厚は、実際の膜厚tP1よりも薄くなっている。従
って、フリー磁性層よりも上側の積層膜で発生する交換
結合磁界と、下側の積層膜から発生する交換結合磁界を
ほぼ等しくするには、フリー磁性層よりも下側に形成さ
れている(第1の固定磁性層(下)93の膜厚tP1
第2の固定磁性層(下)95の膜厚tP2)が、フリー
磁性層よりも上側に形成されている(第1の固定磁性層
(上)107の膜厚tP1/第2の固定磁性層(上)1
05の膜厚tP2)よりも大きい方が好ましい。フリー
磁性層よりも上側の積層膜から発生する交換結合磁界
と、下側の積層膜から発生する交換結合磁界とを等しく
することにより、前記交換結合磁界の製造プロセス劣化
が少なく、磁気へッドの信頼性を向上させることができ
る。
【0132】ところで、図14および図15に示すデュ
アルスピンバルブ型薄膜素子においては、フリ一磁性層
の上下に形成されている第2の固定磁性層(下)95,
(上)105の磁化を互いに反対方向に向けておく必要
がある。これは、フリー磁性層が第1のフリー磁性層1
01と第2のフリー磁性層97の2層に分断されて形成
されており、前記第1のフリー磁性層101の磁化と第
2のフリー磁性層97の磁化とが反平行になっているか
らである。
【0133】例えば、図14および図15に示すよう
に、第1のフリー磁性層101の磁化が、図示X1方向
と反対方向に磁化されているとすると、前記第1のフリ
ー磁性層101との交換結合磁界(RKKY相互作用)
によって、第2のフリー磁性層97の磁化は、図示X1
方向に磁化された状態とされる。前記第1のフリー磁性
層101及び第2のフリー磁性層97の磁化は、フェリ
状態を保ちながら、外部磁界の影響を受けて反転するよ
うになっている。
【0134】図14および図15に示すデュアルスピン
バルブ型薄膜素子にあっては、第1のフリー磁性層10
1の磁化及び第2のフリー磁性層97の磁化は、共に△
MRに関与する層となっており、前記第1のフリー磁性
層101及び第2のフリー磁性層97の変動磁化と、第
2の固定磁性層(下)95,(上)105の固定磁化と
の関係で電気抵抗が変化する。シングルスピンバルブ型
薄膜素子に比べ大きい△MRを期待できるデユアルスピ
ンバルブ型薄膜素子としての機能を発揮させるには、第
1のフリー磁性層101と第2の固定磁性層(上)10
5との抵抗変化及び、第2のフリー磁性層97と第2の
固定磁性層(下)95との抵抗変化が、共に同じ変動を
見せるように、前記第2の固定磁性層(下)95,
(上)105の磁化方向を制御する必要性がある。すな
わち、第1のフリー磁性層101と第2の固定磁性層
(上)105との抵抗変化が最大になるとき、第2のフ
リー磁性層97と第2の固定磁性層(下)95との抵抗
変化も最大になるようにし、第1のフリー磁性層101
と第2の固定磁性層(上)105との抵抗変化が最小に
なるとき、第2のフリー磁性層97と第2の固定磁性層
(下)95との抵抗変化も最小になるようにすればよい
のである。
【0135】よって、図14および図15に示すデュア
ルスピンバルブ型薄膜素子では、第1のフリー磁性層1
01と第2のフリー磁性層97の磁化が反平行に磁化さ
れているため、第2の固定磁性層(上)105の磁化と
第2の固定磁性層(下)95の磁化を互いに反対方向に
磁化する必要性がある。以上のようにして、フリー磁性
層の上下に形成された第2の固定磁性層(下)95,
(上)105を反対方向に磁化することで、従来のデュ
アルスピンバルブ型薄膜素子と同程度の△MRを得るこ
とができる。
【0136】本発明の第9の実施形態のスピンバルブ型
薄膜素子においても、前記反強磁性層92,108が、
X−Mnの式で示される合金またはX’ーPt−Mnの
式で示される合金で形成されたものであり、アニールを
施すことにより、反強磁性が示されるとともに比抵抗が
増加されたものであるので、耐熱性、耐久性に優れ、大
きな交換結合磁界を発生させることができ、良好な抵抗
変化率を有するスピンバルブ型薄膜素子となる。また、
反強磁性層92,108の比抵抗およびアニール後の抵
抗増加が大きいため、良好な出力電圧が得られるスピン
バルブ型薄膜素子となる。
【0137】以上、図10から図15に示すスピンバル
ブ型薄膜素子では、固定磁性層のみならず、フリー磁性
層も、非磁性中間層を介して第1のフリー磁性層と第2
のフリー磁性層の2層に分断し、この2層のフリー磁性
層の間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)に
よって、前記2層のフリー磁性層の磁化を反平行状態
(フェリ状態)にすることにより、前記第1のフリー磁
性層と第2のフリー磁性層の磁化を、外部磁界に対して
感度良く反転できるようにしている。また、本発明で
は、第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層との膜厚
比や、前記第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層と
の間に介在する非磁性中間層の膜厚、あるいは第1の固
定磁性層と第2の固定磁性層との膜厚比や、前記第1の
固定磁性層と第2の固定磁性層との間に介在する非磁性
中間層の膜厚、及び反強磁性層の膜厚などを適正な範囲
内で形成することによって、交換結合磁界を大きくする
ことができ、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との
磁化状態を固定磁化として、第1のフリー磁性層と第2
のフリー磁性層との磁化状態を変動磁化として、熱的に
も安定したフェリ状態に保つことが可能であり、しかも
従来と同程度の△MRを得ることが可能となっている。
本発明では、さらにセンス電流の方向を調節すること
で、第1の固定磁性層の磁化と第2の固定磁性層の磁化
との反平行状態(フェリ状態)を、より熱的にも安定し
た状態に保つことが可能となっている。
【0138】スピンバルブ型薄膜素子では、反強磁性
層、固定磁性層、非磁性導電層、及びフリー磁性層から
成る積層膜の両側に導電層が形成されており、この導電
層からセンス電流が流される。前記センス電流は、比抵
抗の小さい前記非磁性導電層と、前記非磁性導電層と固
定磁性層との界面、及び非磁性導電層とフリー磁性層と
の界面に主に流れる。本発明では、前記固定磁性層は第
1の固定磁性層と第2の固定磁性層とに分断されてお
り、前記センス電流は、主に第2の固定磁性層と非磁性
導電層との界面に流れている。前記センス電流を流す
と、右ネジの法則によって、センス電流磁界が形成され
る。本発明では、前記センス電流磁界を第1の固定磁性
層の磁気モーメントと第2の固定磁性層の磁気モーメン
トを足し合わせて求めることができる合成磁気モーメン
トの方向と同じ方向になるように、前記センス電流の流
す方向を調節している。
【0139】[センス電流磁界の作用]次に、図4〜図
13に示す第4〜第9の実施形態の構造において、セン
ス電流磁界の作用について説明する。図4および図5に
示すスピンバルブ型薄膜素子では、非磁性導電層15の
下側に第2の固定磁性層14が形成されている。この場
合にあっては、第1の固定磁性層12及び第2の固定磁
性層14のうち、磁気モーメントの大きい方の固定磁性
層の磁化方向に、センス電流磁界の方向を合わせる。
【0140】図4に示すように、前記第2の固定磁性層
14の磁気モーメントは、第1の固定磁性層12の磁気
モーメントに比べて大きく、前記第2の固定磁性層14
の磁気モーメントは、図示Y方向と反対方向(図示左方
向)に向いている。このため前記第1の固定磁性層12
の磁気モーメントと第2の固定磁性層14の磁気モーメ
ントとを足し合わせた合成磁気モーメントは、図示Y方
向と反対方向(図示左方向)に向いている。
【0141】前述のように、非磁性導電層15は、第2
の固定磁性層14及び第1の固定磁性層12の上側に形
成されている。このため、主に前記非磁性導電層15を
中心にして流れるセンス電流112によって形成される
センス電流磁界は、前記非磁性導電層15よりも下側に
おいて、図示左方向に向くように、前記センス電流11
2の流す方向を制御すればよい。このようにすれば、第
1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14との合成磁
気モーメントの方向と、前記センス電流磁界の方向とが
一致する。
【0142】図4に示すように、前記センス電流112
は、図示X1方向に流される。右ネジの法則により、セ
ンス電流を流すことによって形成されるセンス電流磁界
は、紙面に対して右回りに形成される。従って、非磁性
導電層15よりも下側の層には、図示方向(図示Y方向
と反対方向)のセンス電流磁界が印加されることにな
り、このセンス電磁によって、第1の合成磁気モーメン
トを補強する方向に作用し、第1の固定磁性層12と第
2の固定磁性層14間に作用する交換結合磁界(RKK
Y相互作用)が増幅され、前記第1の固定磁性層12の
磁化と第2の固定磁性層14の磁化の反平行状態をより
熱的に安定させることが可能になる。
【0143】特に、センス電流を1mA流すと、約30
(Oe)程度のセンス電流磁界が発生し、また素子温度
が約15℃程度上昇することが判っている。さらに、記
録媒体の回転数は、1000rpm程度まで速くなり、
この回転数の上昇により、装置内温度は、約100℃ま
で上昇する。このため、例えば、センス電流を10mA
流した場合、スピンバルブ型薄膜素子の素子温度は、約
250℃程度まで上昇し、さらにセンス電流磁界も30
0(Oe)と大きくなる。このような、非常に高い環境
温度下で、しかも、大きなセンス電流が流れる場合にあ
っては、第1の固定磁性層12の磁気モーメントと第2
の固定磁性層14とを足し合わせて求めることができる
合成磁気モーメントの方向と、センス電流磁界の方向と
が逆向きであると、第1の固定磁性層12の磁化と第2
の固定磁性層14の磁化との反平行状態が壊れ易くな
る。また、高い環境温度下でも耐え得るようにするに
は、センス電流磁界の方向の調節の他に、高いブロッキ
ング温度を有する反強磁性材料を反強磁性層11として
使用する必要がある。そのため、本発明では、ブロッキ
ング温度が高いX−Mnの式で示される合金またはX’
ーPt−Mnの式で示される合金を使用している。
【0144】なお、図4に示す第1の固定磁性層12の
磁気モーメントと第2の固定磁性層14の磁気モーメン
トとで形成される合成磁気モーメントが、図示右方向
(図示Y方向)に向いている場合には、センス電流を図
示X1方向と反対方向に流し、センス電流磁界が紙面に
対し左回りに形成されるようにすればよい。
【0145】次に、図6および図7に示すスピンバルブ
型薄膜素子のセンス電流方向について説明する。図6お
よび図7に示す構造では、非磁性導電層24の上側に第
2の固定磁性層25及び第1の固定磁性層27が形成さ
れている。図6に示すように、第1の固定磁性層27の
磁気モーメントの方が第2の固定磁性層25の磁気モー
メントよりも大きくなっている。また、前記第1の固定
磁性層27の磁気モーメントの方向は、図示Y方向(図
示右方向)を向いている。このため、前記第1の固定磁
性層27の磁気モーメントと第2の固定磁性層25の磁
気モーメントとを足し合わせた合成磁気モーメントは、
図示右方向を向いている。
【0146】図6に示すように、センス電流113は、
図示X1方向に流される。右ネジの法則により、センス
電流113を流すことによって形成されるセンス電流磁
界は、紙面に対して右回りに形成される。非磁性導電層
24よりも上側に第2の固定磁性層25及び第1の固定
磁性層27が形成されているので、前記第2の固定磁性
層25及び第1の固定磁性層27には、図示右方向(図
示Y方向と反対方向)のセンス電流磁界が侵入してくる
ことになり、合成磁気モーメントの方向と一致し、従っ
て、第1の固定磁性層27の磁化と第2の固定磁性層2
5の磁化との反平行状態は壊れ難くなっている。
【0147】なお、前記合成磁気モーメントが図示左方
向(図示Y方向と反対方向)に向いている場合には、セ
ンス電流113を図示X1方向と反対方向に流し、前記
センス電流113を流すことによって、形成されるセン
ス電流磁界を紙面に対し左回りに発生させ、第1の固定
磁性層27と第2の固定磁性層25の合成磁気モーメン
トの向きと、前記センス電流磁界との向きを一致させる
必要がある。
【0148】図8および図9に示すスピンバルブ型薄膜
素子は、フリー磁性層36の上下に第1の固定磁性層
(下)32,(上)43と第2の固定磁性層(下)3
4,(上)41が形成されたデュアルスピンバルブ型薄
膜素子である。このデユアルスピンバルブ型薄膜素子で
は、フリー磁性層36の上下に形成される合成磁気モー
メントが互いに反対方向に向くように、前記第1の固定
磁性層(下)32,(上)43の磁気モーメントの方向
及びその大きさと第2の固定磁性層(下)34,(上)
41の磁気モーメントの方向及びその大きさを制御する
必要がある。
【0149】図8に示すように、フリー磁性層36より
も下側に形成されている第2の固定磁性層(下)34の
磁気モーメントは、第1の固定磁性層(下)32の磁気
モーメントよりも大きく、また、前記第2の固定磁性層
(下)34の磁気モーメントは、図示右方向(図示Y方
向)を向いている。従って、前記第1の固定磁性層
(下)32の磁気モーメントと第2の固定磁性層(下)
34の磁気モーメントを足し合わせて求めることができ
る合成磁気モーメントは、図示右方向(図示Y方向)を
向いている。また、フリー磁性層36よりも上側に形成
されている第1の固定磁性層(上)43の磁気モーメン
トは、第2の固定磁性層(上)41の磁気モーメントよ
りも大きく、また、前記第1の固定磁性層(上)43の
磁気モーメントは、図示左方向(図示Y方向と反対方
向)に向いている。このため、前記第1の固定磁性層
(上)43の磁気モーメントと第2の固定磁性層(上)
41の磁気モーメントを足し合わせて求めることができ
る合成磁気モーメントは、図示左方向(図示Y方向と反
対方向)を向いている。このように本発明では、フリー
磁性層36の上下に形成される合成磁気モーメントが互
いに反対方向に向いている。
【0150】本実施の形態では、図8に示すように、セ
ンス電流114は、図示X1方向と180゜反対方向に
流される。これにより、前記センス電流114を流すこ
とによって形成されるセンス電流磁界は、図8の矢印で
示すように、紙面に対し左回りに形成される。前記フリ
ー磁性層36よりも下側で形成された合成磁気モーメン
トは、図示右方向(図示Y方向)に、フリー磁性層36
よりも上側で形成された合成磁気モーメントは、図示左
方向(図示Y方向と反対方向)に向いているので、前記
2つの合成磁気モーメントの方向は、センス電流磁界の
方向と一致しておりフリー磁性層36の下側に形成され
た第1の固定磁性層(下)32の磁化と第2の固定磁性
層(下)34の磁化の反平行状態、及びフリー磁性層3
6の上側に形成された第1の固定磁性層(上)43の磁
化と第2の固定磁性層(上)41の磁化の反平行状態
を、熱的にも安定した状態で保つことが可能である。
【0151】なお、フリー磁性層36よりも下側に形成
された合成磁気モーメントが図示左方向に向いており、
フリー磁性層36よりも上側に形成された合成磁気モー
メントが図示右側に向いている場合には、センス電流1
14を図示X1方向に流し、前記センス電流を流すこと
によって形成されるセンス電流磁界の方向と、前記合成
磁気モーメントの方向とを一致させる必要がある。
【0152】また、図10及び図11は、フリー磁性層
が非磁性中間層を介して第1のフリー磁性層と第2のフ
リー磁性層の2層に分断されて形成されたスピンバルブ
型薄膜素子の実施例であるが、図10に示すスピンバル
ブ型薄膜素子のように、非磁性導電層55よりも下側に
第1の固定磁性層52及び第2の固定磁性層54が形成
された場合にあっては、図4に示すスピンバルブ型薄膜
素子の場合と同様のセンス電流方向の制御を行えばよ
い。
【0153】また、図12および図13に示すスピンバ
ルブ型薄膜素子のように、非磁性導電層76よりも上側
に、第1の固定磁性層79と第2の固定磁性層77が形
成されている場合にあっては、図6に示すスピンバルブ
型薄膜素子の場合と同様のセンス電流方向の制御を行え
ばよい。
【0154】以上のように、上述の各実施の形態によれ
ば、センス電流を流すことによって形成されるセンス電
流磁界の方向と、第1の固定磁性層の磁気モーメントと
第2の固定磁性層の磁気モーメントを足し合わせること
によって求めることができる合成磁気モーメントの方向
とを一致させることにより、前記第1の固定磁性層と第
2の固定磁性層間に作用する交換結合磁界(RKKY相
互作用)を増幅させ、前記第lの固定磁性層の磁化と第
2の固定磁性層の磁化の反平行状態(フェリ状態)を熱
的に安定した状態に保つことが可能である。とくに、本
実施の形態では、より熱的安定性を向上させるために、
反強磁性層にブロッキング温度の高い反強磁性材料を使
用しており、これによって、環境温度が、従来に比べて
大幅に上昇しても、前記第1の固定磁性層の磁化と第2
の固定磁性層の磁化の反平行状態(フェリ状態)を壊れ
難くすることができる。
【0155】また、高記録密度化に対応するためにセン
ス電流量を大きくして再生出力を大きくしようとする
と、それに従ってセンス電流磁界も大きくなるが、本発
明の実施の形態では、前記センス電流磁界が、第1の固
定磁性層と第2の固定磁性層の間に働く交換結合磁界を
増幅させる作用をもたらしているので、センス電流磁界
の増大により、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の
磁化状態は、より安定したものとなる。なお、このセン
ス電流方向の制御は、反強磁性層にどのような反強磁性
材料を使用した場合であっても適用でき、例えば、反強
磁性層と固定磁性層(第1の固定磁性層)との界面で交
換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させるために、熱
処理が必要であるか、あるいは必要でないかを問わな
い。さらに、図1〜図3に示す第1〜第3の実施の形態
のように、固定磁性層が単層で形成されていたシングル
スピンバルブ型薄膜素子の場合であっても、前述したセ
ンス電流を流すことによって形成されるセンス電流磁界
の方向と、固定磁性層の磁化方向とを一致させることに
より、前記固定磁性層の磁化を熱的に安定化させること
が可能である。
【0156】次に、本発明の薄膜磁気へッドについて詳
しく説明する。図17は、本発明の薄膜磁気ヘッドの一
例を示した図である。本発明の薄膜磁気へッドが従来の
薄膜磁気ヘッドと異なるところは、磁気抵抗効果素子層
245に、上述したスピンバルブ型薄膜素子が備えられ
てなる薄膜磁気へッドであるところである。前記スピン
バルブ型薄膜素子は、薄膜磁気へッド(再生用ヘッド)
を構成する最も重要な箇所である。
【0157】本発明の薄膜磁気へッドを製造するには、
まず、図17に示す磁性材料製の下部シールド層253
上に下部ギャップ層254を形成した後、磁気抵抗効果
素子層245を形成する前記スピンバルブ型薄膜素子を
成膜する。その後、前記スピンバルブ型薄膜素子の上に
上部ギヤップ層256を介して上部シールド層257を
形成すると、MRヘッド(読出ヘッド)h1が完成す
る。続いて、前記MRヘッドh1の上部シールド層25
7と兼用である下部コア層257の上に、ギャップ層2
64を形成し、その上に螺旋状のコイル層266を、第
1の絶縁材料層267Aおよび第2の絶縁材料層267
Bで囲むように形成する。さらに、第2絶縁材料層26
7Bの上に上部コア層268を形成し、上部コア層26
8の上に、保護層269を設けることによって薄膜磁気
へッドとされる。
【0158】このような薄膜磁気へッドは、上述したス
ピンバルブ型薄膜素子が備えられてなる薄膜磁気へッド
であるので、交換結合磁界を大きくすることができ、耐
久性、耐熱性に優れ、良好な抵抗変化率を有する薄膜磁
気へッドとなる。
【0159】なお、薄膜磁気ヘッドのスライダ部分の構
成およびインダクティブヘッドの構成は、図16〜図1
8に示すものに限定されず、その他の種々の構造のスラ
イダおよびインダクティブヘッドを採用することができ
るのは勿論である。
【0160】
【実施例】以下、本発明を実施例を示して詳しく説明す
る。 [試験例1]Siからなる基板上に、スパッタ装置を用
いてAl23からなる厚さ0.1μmのアルミナ層を設
けたのち、スパッタ装置を用いて、Taからなる厚さ3
0Åの下地層を形成し、ついで、厚さ300ÅのPtM
n膜からなる反強磁性層を形成し、さらに、厚さ25Å
のCo膜からなる固定磁性層を形成し、その上に、厚さ
25ÅのCu膜からなる非磁性導電層を形成し、その上
に、厚さ10ÅのCo膜と厚さ70ÅのNiFe膜とか
らなるフリー磁性層を形成し、さらに、厚さ50ÅのT
aからなる保護層を形成して積層体を得た。
【0161】このように形成された積層体の積層構造を
略記すると、(Si基板/Al23層/Ta層30Å/
PtMn層300Å/Co層25Å/Cu層25Å/C
o層10Å/NiFe層70Å/Ta層50Å)で示さ
れる積層体構造となる。
【0162】[試験例2]試験例1と同様のアルミナ層
を設けたSi基板上に、スパッタ装置を用いて、Taか
らなる厚さ50Åの下地層を形成し、ついで、厚さ70
ÅのNiFe膜と厚さ10ÅのCo膜とからなるフリー
磁性層を形成し、その上に、厚さ30ÅのCu膜からな
る非磁性導電層を形成し、さらに、厚さ25ÅのCo膜
からなる固定磁性層を形成し、その上に、厚さ300Å
のPtMn膜からなる反強磁性層を形成し、さらに、厚
さ50ÅのTaからなる保護層を形成して積層体を得
た。
【0163】このように形成された積層体の積層構造を
略記すると、(Si基板/Al23層/Ta層50Å/
NiFe層70Å/Co層10Å/Cu層30Å/Co
層25Å/PtMn層300Å/Ta層50Å)で示さ
れる積層体構造となる。
【0164】このようにして得られた試験例1および試
験例2の積層体それぞれに、真空中245℃の温度で4
時間アニールを施し、その交換結合磁界と反強磁性層中
のMn濃度との関係を調べた。試験例1の積層体の結果
を図19に示し、試験例2の積層体の結果を図20に示
す。図19より、交換結合磁界が500(Oe)以上の
好ましい値となる反強磁性層中のMn濃度の好ましい範
囲は、43〜49原子%程度であることが確認できた。
図20より、交換結合磁界が500(Oe)以上の好ま
しい値となる反強磁性層中のMn濃度の好ましい範囲
は、42〜47原子%程度であることが確認できた。
【0165】次に、試験例1および試験例2の積層体に
それぞれについて、アニール温度と交換結合磁界の関係
を調べた。その結果を図21に示す。図21より、試験
例1では、アニール温度の上昇とともに交換結合磁界が
緩やかに増加し、比較的低いアニール温度でも、500
(Oe)以上の好ましい交換結合磁界が得られることが
確認できた。また、試験例2では、260℃以上のアニ
ール温度で、500(Oe)以上の好ましい交換結合磁
界が得られることが確認できた。
【0166】次に、試験例1および試験例2の積層体そ
れぞれについて、アニール前の抵抗値およびアニール温
度と抵抗値の関係を調べた。その結果を図22に示す。
図22より、試験例1および試験例2においては、アニ
ールを施すことによって、抵抗値が増大することがあき
らかとなった。また、アニール温度の上昇とともに抵抗
値が増加することが確認できた。
【0167】[試験例3]試験例1と同様のアルミナ層
を設けたSi基板上に、スパッタ装置を用いて、厚さ1
μmのPtMn層を形成して試験体を得た。このように
して得られた試験体の比抵抗とPtMn層中のMn濃度
との関係を調べた。また、この試験体に、真空中245
℃の温度で4時間アニールを施した場合の比抵抗とPt
Mn層中のMn濃度との関係を調べた。結果を図23に
示す。
【0168】図23より、アニールを施すことによっ
て、比抵抗が増大することがあきらかとなった。また、
PtMn層中のMn濃度の好ましい範囲は、40〜54
原子%程度であり、より好ましい比抵抗が200μΩ・
cm以上となる範囲は、44〜52原子%程度であり、
最も好ましい範囲は、43〜49原子%程度であること
が確認できた。
【0169】[試験例4]試験例1と同様の積層体にお
いて、反強磁性層以外の抵抗値を20Ωとしたときの比
抵抗と△MR(抵抗変化率)との関係を調べた。結果を
図24に示す。図24より、比抵抗が増大すると、それ
に伴って△MRも増大することが確認できた。このこと
から、反強磁性層に比抵抗の大きい材料を用いることに
より、△MRの大きい積層体を得ることが可能であるこ
とがあきらかとなった。
【0170】[試験例5]試験例1と同様のアルミナ層
を設けたSi基板上に、スパッタ装置を用いて、厚さ3
0ÅのNiFe膜を形成し、その上に、厚さ300Åの
PtMn膜からなる層を形成して積層体を得た。また、
試験例1と同様のアルミナ層を設けたSi基板上に、ス
パッタ装置を用いて、厚さ1000ÅのPtMn膜から
なる層を形成して試験体を得た。 [試験例6]試験例5と同様にして、PtMn膜に代え
てNiMn膜とした積層体および試験体を得た。 [試験例7]試験例5と同様にして、PtMn膜に代え
てCrPtMn膜とした積層体および試験体を得た。 [試験例8]試験例5と同様にして、PtMn膜に代え
てPdPtMn膜とした積層体および試験体を得た。 [試験例9]試験例5と同様にして、PtMn膜に代え
てRhPtMn膜とした積層体および試験体を得た。
【0171】[試験例10]試験例5と同様にして、P
tMn膜に代えてIrMn膜とした積層体および試験体
を得た。 [試験例11]試験例5と同様にして、PtMn膜に代
えてFeMn膜とした積層体および試験体を得た。 [試験例12]試験例1と同様のアルミナ層を設けたS
i基板上に、スパッタ装置を用いて、厚さ300ÅのN
iO膜からなる層を形成し、その上に、厚さ30ÅのN
iFe膜を形成して積層体を得た。また、試験例5と同
様にして、PtMn膜をNiO膜とした試験体を得た。 [試験例13]試験例12と同様にして、NiO膜に代
えてαーFe23膜とした積層体および試験体を得た。
【0172】このようにして得られた試験例5〜試験例
13の積層体に対し、交換結合磁界およびブロッキング
温度の測定を行った。また、試験例5〜試験例13の試
験体に対し、比抵抗の測定を行った。各項目の測定結果
は、好ましい範囲を○、使用可能な範囲を△、好ましく
ない範囲を×として評価した。各項目における評価範囲
を以下に示す。 [交換結合磁界]500(Oe)を越えるものを○、2
00〜500(Oe)のものを△、200(Oe)未満
のものを×として評価した。 [ブロッキング温度]300(℃)を越えるものを○、
250〜300(℃)のものを△、250(℃)未満の
ものを×として評価した。 [比抵抗]200(μΩ・cm)以上のものを○、15
0(μΩ・cm)を越えるもので200(μΩ・cm)
未満のものを△、150(℃)以下のものを×として評
価した。結果を表1に示す。
【0173】
【表1】
【0174】表1より、本発明のスピンバルブ型薄膜素
子の反強磁性層に用いられる合金を使用した試験例5〜
試験例9では、交換結合磁界、ブロッキング温度、比抵
抗ともに使用可能という結果となった。とくに、PtM
nを使用した試験例5は、全ての項目において好ましい
という結果となった。一方、従来の反強磁性層に用いら
れている合金を使用した試験例10〜試験例13では、
交換結合磁界、ブロッキング温度、比抵抗のいずれかが
好ましくないという結果となった。
【0175】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のスピンバ
ルブ型薄膜素子は、前記反強磁性層が、X−Mn(ただ
し、Xは、Pt、Ni、Pd、Ru、Ir、Rhのうち
から選択される1種の元素を示す。)の式で示される合
金またはX’ーPt−Mn(ただし、X’は、Pd、C
r、Ru、Ni、Ir、Rh、Au、Agのうちから選
択される1種または2種以上の元素を示す。)の式で示
される合金で形成されたものであり、アニールを施すこ
とにより、反強磁性が示されるとともに比抵抗が増加さ
れたものであるので、以下のような優れた効果を有する
ものとすることができる。
【0176】すなわち、反強磁性層が、耐熱性に優れた
ものにより形成されることにより、製造工程において高
温による悪影響を受けにくいものを得ることができると
ともに、装置内の温度が高温となる薄膜磁気ヘッドなど
の装置に備えられた場合の耐久性が良好で、温度変化に
よる交換結合磁界の変動が少ない優れたものを得ること
ができる。また、反強磁性層のブロッキング温度が高い
ものとなるため、反強磁性層と固定磁性層との境界面に
大きな交換結合磁界を発生させることができ、前記固定
磁性層の外部信号磁界に対する磁化の回転を良好にピン
止めすることができる。さらにまた、反強磁性層の比抵
抗が大きいため、シャントロスを減少させることがで
き、良好な抵抗変化率を有するスピンバルブ型薄膜素子
とすることができる。
【0177】さらに、比抵抗および抵抗変化率が大きい
スピンバルブ型薄膜素子となるため、良好な比電圧が得
られる高出力化に有利なスピンバルブ型薄膜素子とする
ことができる。したがって、反強磁性層が、NiO合
金、FeMn合金、IrMn合金などにより形成された
アニールを施さない従来のスピンバルブ型薄膜素子と比
較して、優れたスピンバルブ型薄膜素子とすることがで
きる。
【0178】また、本発明のスピンバルブ型薄膜素子に
おいては、前記X−Mnの式または前記X’ーPt−M
nの式で示される合金が、Mnが40〜54原子%の範
囲であるものとすることで、高い比抵抗とより一層良好
な交換結合磁界を得ることができ、抵抗変化率をより向
上させることができる。さらに、前記X−Mnの式また
は前記X’ーPt−Mnの式で示される合金が、Mnが
44〜52原子%の範囲であることであるものとするこ
とで、高い比抵抗を有するものとすることができ、良好
な交換結合磁界が得られ、抵抗変化率をより向上させる
ことができる。
【0179】また、本発明のスピンバルブ型薄膜素子に
おいては、前記X−Mnの式または前記X’ーPt−M
nの式で示される合金が、アニールを施すことにより、
規則化されてfct構造とされたものであるものとする
ことで、反強磁性層と固定磁性層との境界面に大きな交
換結合磁界を発生させることができる優れたスピンバル
ブ型薄膜素子とすることができる。
【0180】さらにまた、前記反強磁性層の比抵抗が、
200μΩcm以上であるスピンバルブ型薄膜素子とす
ることで、シャントロスを十分に減少させることがで
き、高出力化に有利な大きい出力電圧を得ることができ
るより優れたスピンバルブ型薄膜素子とすることができ
る。さらに、前記反強磁性層の比抵抗が、アニールを施
すことにより、20%以上増加されたものとした場合
も、シャントロスを減少させることができ、大きい出力
電圧が得られるものとすることができる。
【0181】また、本発明のスピンバルブ型薄膜素子に
おいては、前記フリー磁性層の厚さ方向両側に、各々非
磁性導電層と固定磁性層と反強磁性層とが形成されたデ
ュアル型構造とされてなるものとすることで、フリー磁
性層/非磁性導電層/固定磁性層の3層の組合わせを2
組有するものとなり、シングルスピンバルブ型薄膜素子
と比較して、大きな△MR(抵抗変化率)が得られ、高
密度記録化に対応できるものとすることができる。
【0182】また、本発明のスピンバルブ型薄膜素子に
おいては、前記固定磁性層と前記フリー磁性層の少なく
とも一方が非磁性中間層を介して2つに分断され、分断
された層どうしで磁化の向きが180゜異なるフェリ磁
性状態とされてなることを特徴とするものとしてもよ
い。少なくとも固定磁性層が非磁性中間層を介して2つ
に分断されたスピンバルブ型薄膜素子とした場合、2つ
に分断された固定磁性層のうち一方が他方の固定磁性層
を適正な方向に固定する役割を担い、固定磁性層の状態
を非常に安定した状態に保つことが可能となる。一方、
少なくともフリー磁性層が非磁性中間層を介して2つに
分断されたスピンバルブ型薄膜素子とした場合、2つに
分断されたフリー磁性層どうしの間に交換結合磁界が発
生し、フェリ磁性状態とされ、外部磁界に対して感度よ
く反転できるものとなる。
【0183】また、本発明のスピンバルブ型薄膜素子の
製造方法は、反強磁性層を、X−Mnの式で示される合
金またはX’ーPt−Mnの式で示される合金で形成
し、アニールにより、反強磁性を示させるとともに比抵
抗を増加させる製造方法であるので、本発明のスピンバ
ルブ型薄膜素子を容易に得ることができる。
【0184】さらにまた、本発明の薄膜磁気ヘッドは、
上記のスピンバルブ型薄膜素子が備えられてなるもので
あるので、交換結合磁界を大きくすることができ、耐久
性、耐熱性に優れ、良好な抵抗変化率を有する薄膜磁気
へッドとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における第1の実施形態のスピンバル
ブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た場合の構
造を示した断面図である。
【図2】 本発明における第2の実施形態のスピンバル
ブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た場合の構
造を示した断面図である。
【図3】 本発明における第3の実施形態のスピンバル
ブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た場合の構
造を示した断面図である。
【図4】 本発明における第4の実施形態のスピンパル
ブ型薄膜素子を模式図的に示した横断面図である。
【図5】 図4に示したスピンバルブ型薄膜素子を記録
媒体との対向面側から見た場合の構造を示した断面図で
ある。
【図6】 本発明における第5の実施形態のスピンパル
ブ型薄膜素子を模式図的に示した横断面図である。
【図7】 図6に示したスピンバルブ型薄膜素子を記録
媒体との対向面側から見た場合の構造を示した断面図で
ある。
【図8】 本発明における第6の実施形態のスピンパル
ブ型薄膜素子を模式図的に示した横断面図である。
【図9】 図8に示したスピンバルブ型薄膜素子を記録
媒体との対向面側から見た場合の構造を示した断面図で
ある。
【図10】 本発明における第7の実施形態のスピンパ
ルブ型薄膜素子を模式図的に示した横断面図である。
【図11】 図10に示したスピンバルブ型薄膜素子を
記録媒体との対向面側から見た場合の構造を示した断面
図である。
【図12】 本発明における第8の実施形態のスピンパ
ルブ型薄膜素子を模式図的に示した横断面図である。
【図13】 図12に示したスピンバルブ型薄膜素子を
記録媒体との対向面側から見た場合の構造を示した断面
図である。
【図14】 本発明における第9の実施形態のスピンパ
ルブ型薄膜素子を模式図的に示した横断面図である。
【図15】 図14に示したスピンバルブ型薄膜素子を
記録媒体との対向面側から見た場合の構造を示した断面
図である。
【図16】 薄膜磁気ヘッドの一例を示す斜視図であ
る。
【図17】 図16に示した薄膜磁気ヘッドの磁気コア
部を示した断面図である。
【図18】 図17に示した薄膜磁気ヘッドを示した概
略斜視図である。
【図19】 試験例1の交換結合磁界と反強磁性層中の
Mnの濃度との関係を示したグラフである。
【図20】 試験例2の交換結合磁界と反強磁性層中の
Mnの濃度との関係を示したグラフである。
【図21】 アニール温度と交換結合磁界の関係を示し
たグラフである。
【図22】 アニール温度と抵抗値の関係を示したグラ
フである。
【図23】 抵抗値とPtMn層中のMnの濃度との関
係を示したグラフである。
【図24】 比抵抗と△MR(抵抗変化率)との関係を
示したグラフである。
【符号の説明】
1、10、30、50、70、91、121、141
下地層 2、11、28、31、44、51、80、92、10
8、122、142、148 反強磁性層 3、123 固定磁性層 143 固定磁性層(下) 147 固定磁性層(上) 12、27、52、79 第1の固定磁性層 13、26、33、42、53、59、72、78、9
4、100、106 非磁性中間層 14、25、54、77 第2の固定磁性層 4、15、24、35、40、55、76、96、10
4、124、144、146 非磁性導電層 5、16、21、36、125、145 フリー磁性層 7、19、29、45、61、81、109、127、
149、269 保護層 32、93 第lの固定磁性層(下) 34、95 第2の固定磁性層(下) 41、105 第2の固定磁性層(上) 43、107 第19固定磁性層(上) 56、73、101 第1のフリー磁性層 60、71、97 第2のフリー磁性層 6、62、82、110、126、130、132 ハ
ードバイアス層 8、63、83、111、128、131、133 導
電層 112、113、114 センス電流

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に、反強磁性層と、この反強磁性
    層と接して形成され、前記反強磁性層との交換結合磁界
    により磁化方向が固定される固定磁性層と、前記固定磁
    性層に非磁性導電層を介して形成され、前記固定磁性層
    の磁化方向と交差する方向に磁化が揃えられるフリー磁
    性層とを有するスピンバルブ型薄膜素子であり、 前記反強磁性層が、X−Mn(ただし、Xは、Pt、N
    i、Pd、Ru、Ir、Rhのうちから選択される1種
    の元素を示す。)の式で示される合金またはX’ーPt
    −Mn(ただし、X’は、Pd、Cr、Ru、Ni、I
    r、Rh、Au、Agのうちから選択される1種または
    2種以上の元素を示す。)の式で示される合金で形成さ
    れたものであり、アニールを施すことにより、反強磁性
    が示されるとともに比抵抗が増加されたものであること
    を特徴とするスピンバルブ型薄膜素子。
  2. 【請求項2】 前記X−Mnの式または前記X’ーPt
    −Mnの式で示される合金は、Mnが40〜54原子%
    の範囲であることを特徴とする請求項1記載のスピンバ
    ルブ型薄膜素子。
  3. 【請求項3】 前記X−Mnの式または前記X’ーPt
    −Mnの式で示される合金は、Mnが44〜52原子%
    の範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2
    に記載のスピンバルブ型薄膜素子。
  4. 【請求項4】 前記X−Mnの式または前記X’ーPt
    −Mnの式で示される合金が、アニールを施すことによ
    り、規則化されてfct構造とされたものであることを
    特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスピ
    ンバルブ型薄膜素子。
  5. 【請求項5】 前記反強磁性層の比抵抗が、200μΩ
    cm以上であることを特徴とする請求項1〜請求項4の
    いずれかに記載のスピンバルブ型薄膜素子。
  6. 【請求項6】 比抵抗が、アニールを施すことにより、
    20%以上増加されたものであることを特徴とする請求
    項1〜請求項5のいずれかに記載のスピンバルブ型薄膜
    素子。
  7. 【請求項7】 前記フリー磁性層の厚さ方向両側に、各
    々非磁性導電層と固定磁性層と反強磁性層とが形成され
    たデュアル型構造とされてなることを特徴とする請求項
    1〜請求項6のいずれかに記載のスピンバルブ型薄膜素
    子。
  8. 【請求項8】 前記固定磁性層と前記フリー磁性層の少
    なくとも一方が非磁性中間層を介して2つに分断され、
    分断された層どうしで磁化の向きが180゜異なるフェ
    リ磁性状態とされてなることを特徴とする請求項1〜請
    求項7のいずれかに記載のスピンバルブ型薄膜素子。
  9. 【請求項9】 基板上に、反強磁性層と、この反強磁性
    層と接して形成され、前記反強磁性層との交換結合磁界
    により磁化方向が固定される固定磁性層と、前記固定磁
    性層に非磁性導電層を介して形成され、前記固定磁性層
    の磁化方向と交差する方向に磁化が揃えられるフリー磁
    性層とを形成したのち、アニールを施してなるスピンバ
    ルブ型薄膜素子の製造方法であって、 前記反強磁性層を、X−Mn(ただし、Xは、Pt、N
    i、Pd、Ru、Ir、Rhのうちから選択される少な
    くとも1種の元素を示す。)の式で示される合金または
    X’ーPt−Mn(ただし、X’は、Pd、Cr、R
    u、Ni、Ir、Rh、Au、Agのうちから選択され
    る1種または2種以上の元素を示す。)の式で示される
    合金で形成し、前記アニールにより、反強磁性を示させ
    るとともに比抵抗を増加させることを特徴とするスピン
    バルブ型薄膜素子の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜請求項8のいずれかに記載
    のスピンバルブ型薄膜素子が備えられてなることを特徴
    とする薄膜磁気ヘッド。
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CN109716547A (zh) * 2016-08-10 2019-05-03 阿尔卑斯阿尔派株式会社 交换耦合膜以及使用该交换耦合膜的磁阻效应元件及磁检测装置

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