JP2000212708A - ダイス端保温押出法、押出装置及びアルミニウム押出形材 - Google Patents
ダイス端保温押出法、押出装置及びアルミニウム押出形材Info
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Abstract
時効処理で400N/mm2 以上の高強度が付与された
押出形材を製造する。 【構成】 押出ダイスから出た直後の押出形材の温度が
540〜560℃となるように押し出し、アルミニウム
合金を所定形状に押し出した後、押出ダイス3から冷却
槽11に至る途中に配置されている保温槽13を通過さ
せて、冷却槽11の入口で520℃以上に維持し、冷却
槽で30℃/秒以上の冷却速度で焼入れする。アルミニ
ウム合金としては、Si:1.0〜1.5%,Cu:
0.5〜0.9%,Mn:0.2〜0.6%,Mg:
0.8〜1.5%,Cr:0.15〜0.9%,Ti:
0.03〜0.05%,B:0.0001〜0.01
%,必要に応じてZr:0.1〜0.2%を含み、Fe
含有量を0.2%以下、Mn+Crの合計含有量を1.
2%以下に規制したアルミニウム合金が使用される。
Description
めて溶体化処理することなく時効処理のみを施す、いわ
ゆるT5処理で高い機械的特性をもつアルミニウム押出
形材が得られる押出方法,押出装置及び得られたアルミ
ニウム押出形材に関する。
まま空冷した後、溶体化→水焼入れ→人工時効のT6処
理、又は押出後、冷却した後で人工時効するT5処理に
よって強度を調整している。押出後の冷却において、押
出直後のダイス端焼入れは、1種の溶体化及び焼入れを
押出中に兼ねる。この点、ダイス端焼入れで冷却する場
合のいわゆるT5処理は、押出後に改めて溶体化処理す
るT6処理に比較してコスト的に安価なことから、魅力
的な方法といえる。
合金の材質によっては押出中に溶体化現象が生じ難く、
冷却したアルミニウム押出形材を改めて溶体化するT6
処理が必要とされる材質もある。なかでも、400N/
mm2 以上の強度を必要とする組成になると、合金元素
の多量添加に伴って変形抵抗が上昇している。そのた
め、速い速度で押し出すことができず、押出中の押出形
材の冷却に伴って合金元素が析出する傾向が強く、溶体
化現象が生じ難い。
題を解消すべく案出されたものであり、押出直後の冷却
を抑制することにより、押出形材の後に溶体化条件を確
保すると共に、改めて溶体化処理を施す必要なく人工時
効だけで十分な強度をもつアルミニウム押出形材を得る
ことを目的とする。本発明のダイス端保温押出方法は、
その目的を達成するため、アルミニウム合金を所定形状
に押し出した後、押出ダイスから冷却槽に至る途中に配
置されている保温槽を通過させて押出形材の降温を抑制
し、次いで冷却槽に押出形材を導入して焼入れすること
を特徴とする。被押出し材としては、たとえばSi:
1.0〜1.5重量%,Cu:0.5〜0.9重量%,
Mn:0.2〜0.6重量%,Mg:0.8〜1.5重
量%,Cr:0.15〜0.9重量%,Ti:0.03
〜0.05重量%,B:0.0001〜0.01重量
%,必要に応じてZr:0.1〜0.2重量%を含み、
Fe含有量を0.2重量%以下、Mn+Crの合計含有
量を1.2重量%以下に規制したアルミニウム合金が使
用される。
均質化処理した後、押出用ビレットに切断し、ビレット
を500〜530℃に加熱し、押出ダイスから出た直後
の押出形材の温度が540〜560℃となるように押し
出し、形材温度を520〜560℃の範囲に維持した状
態で押出形材を冷却槽に導き、焼入れ温度から200℃
までの温度域における冷却速度が30℃/秒以上となる
ように冷却槽で押出形材を焼き入れる。押出速度は、3
〜7m/分の範囲に設定することが好ましい。得られた
押出形材は、155〜190℃×2〜20時間の時効処
理によって強度及び伸びが付与され、400N/mm2
以上の強度を示すことから、機械加工により寸法精度を
整えてトルクロッドの連結棒等として使用される。
所定形状に押し出す押出ダイスと、押し出された押出形
材を焼入れする冷却槽と、押出ダイスと冷却槽との間に
配置され、押出形材の降温を抑制する保温槽とを備えて
いる。保温装置としては、断熱材,反射板又は反射箔を
貼り付けた断熱材でできたカバー及び/又は内側にヒー
タを設けたカバーを備えたものが好ましい。また、冷却
槽のダイス側開口部に冷媒阻止具を配置するとき、冷却
槽から飛散する冷媒が冷却前の押出形材に付着すること
が防止され、アルマイト処理後に均一な外観・色調をも
つ押出形材が得られ、機械的性質も均一化される。
す設備構成の装置が使用される。被押出材料であるアル
ミニウム合金のビレット1は、コンテナ2に収容され
る。コンテナ2には、押出ダイス3を挟んでボルスタ4
及びエンドプラテン5が対向している。ビレット1は、
ステム6の先端に固着されているダミーブロック7で加
圧され、押出ダイス3で区画される押出空間を通過する
際に所定形状に成形され、図1で左方向に押し出され
る。押出形材は、プラテンホール8をガイド9に沿って
送り出され、冷却槽11で冷却され、テーブル12を経
て送られる。通常、冷却槽11で冷却する場合をダイス
端焼入れといい、この時点で溶体化及び焼入れが完了す
る。ビレット1本分の押出が完了すると、切断機10で
押出形材を切断し、押出方向に沿って次工程に送り出し
た後、新しいビレットを用いて同様に押出を始める。
は、通常2〜4mである。この距離を通過する押出形材
の温度及び時間は、合金成分の析出又は溶体化に大きな
影響を及ぼす。押出ダイス3から冷却槽11に至る間で
溶体化される材質の押出形材は、後続する冷却槽11で
焼入れされる。溶体化処理は、アルミニウム合金のマト
リックス中に添加元素を固溶させることが目的であり、
押出ダイス3〜冷却槽11を移動する押出形材に所定の
移動時間及び温度が必要とされる。溶体化状態を維持し
て焼入れされるのに適したアルミニウム合金には、たと
えば6061合金(主要合金成分:Si0.4〜0.8
重量%,Mg0.8〜1.2重量%,Cu0.15〜
0.4重量%,Cr0.04〜0.35重量%)があ
る。実際、6061合金を使用した押出では、ダイス端
焼入れが採用されている。
される合金系では、材質改善のために添加される合金成
分の含有量が多くなり、大きな変形抵抗を示す材質にな
る。このような合金系では、押出速度が遅くなって冷却
槽11に至るまでに押出形材が冷却してしまい、溶体化
処理に必要な時間を確保できるものの温度が確保できな
い。そこで、本発明においては、溶体化処理に必要な温
度を確保するため、押出ダイス3から冷却槽11に送ら
れる押出形材を保温する。保温手段としては、加熱帯の
設置,押出形材を断熱材又は反射板で覆うこと等が採用
される。これにより、押出ダイス3から押し出された押
出形材の保有熱が放射,対流,伝導等で散逸することが
防止され、或いは積極的に加熱され、溶体化に必要な温
度が確保される。
イス3側の口径約350mm,出口側の口径約1000
mmのエンドプラテン5を配置する場合、図1に示すよ
うにプラテンホール8を経て冷却槽11に至る押出形材
の搬送路の一部となるプラテンホール8に保温槽13を
設けている。保温槽13を支持するガイド9は、伝導に
よる熱の散逸を防止するため、断熱材14(図2)を介
して保温槽13に接続することが好ましい。保温槽13
は、押出形材15の押出方向に垂直な面において半円形
断面(図2a),矩形断面(図2b)等の何れの断面形
状をもつものでも良く、押出形材15に合せて保温槽1
3の断面形状が適宜設定される。保温槽13は、カバー
16をガイド9で支持する構造をもっている。カバー1
6とガイド9との間に断熱材14を介装する(図2a)
と、ガイド9を介した押出形材15の保有熱の散逸が防
止される。或いは、カバー16の内側にヒータ17を配
置(図2b)し、押出形材15を積極的に加熱しても良
い。
散逸することを防止するため、断熱材,反射板等が使用
される。反射板としては、アルミニウム板がある。ま
た、断熱材にアルミニウム箔を貼り付けたカバー16を
使用すると、押出形材15の降温が一層効果的に抑制さ
れる。冷却槽11の押出ダイス3側の開口部には、冷却
槽11から外部に飛散する冷媒を阻止するためにアルミ
ニウム板,鋼板等で作られ、押出形材15の断面形状よ
りも若干大きな開口部を備えた冷媒阻止具18を配置す
ることが好ましい。冷却槽11から外部への冷媒の飛散
が冷媒阻止具18で阻止されるため、飛散した冷媒が冷
却槽11に入る前の押出形材の表面に付着して、表面部
分が局部的に降温することがない。その結果、均一な温
度分布をもった押出形材が冷却槽11に導入され、機械
的性質及び金属組織が均質化され、機械的性質が均一
で、製品にアルマイト処理した場合でもアルマイト処理
後の外観が均一な押出形材が得られる。
願人が特開平5−59477号公報(特許第26974
00号)で紹介したアルミニウム合金も使用される。特
開平5−59477号公報では該アルミニウム合金を常
法に従って押し出した後、T6処理を施して強度及び伸
びを付与しているが、本発明ではT6処理の溶体化及び
焼入れを押出時に完了する。
び含有量等は、次の通りである。Si:1.0〜1.5重量% Mg:0.8〜1.5重量% 時効処理によってMg2 Siとなって析出する合金成分
であり、強度及び伸びを付与する。Mg2 Si系析出物
による強度改善作用を効果的に発揮させる上では、1.
0〜1.5重量%のSi,0.8〜1.5重量%のMg
が必要である。 Cu:0.5〜0.9重量% マトリックスを固溶強化する合金成分であり、Mg2 S
i析出による強度の向上に加えて更なる向上に有効なA
l2 Cuとしても析出する。Cuの添加効果は、含有量
0.5〜0.9重量%の範囲で顕著に現れる。
的性質を向上させる作用を呈する。その結果、微細な結
晶粒からなる組織をもち、強度及び伸びが改善されたア
ルミニウム合金が得られる。このような効果は、Mn含
有量を0.2〜0.6重量%,Cr含有量を0.15〜
0.9重量%とし、更にMn+Crの合計含有量を1.
2重量%以下としたときに顕著になる。Zr:0.1〜0.2重量% 必要に応じて添加される合金成分であり、Mn,Crと
共同して押出時に再結晶粒の粗大化を抑制し、押出形材
の機械的性質を向上させる作用を呈する。また、押出工
程を経た鍛造品においても押出時に生じた繊維状組織を
残存させる作用があり、引張強さを向上させる。このよ
うな作用は、0.1〜0.2重量%のZrを添加すると
き顕著に現れる。
加は粗大晶出物の発生によりアルミニウム合金の靭性を
劣化させる。そこで、本発明においては、Ti含有量を
0.03〜0.05重量%,B含有量を0.0001〜
0.01重量%の範囲に設定した。Fe:0.2重量%以下 不純物として混入する成分であり、伸び及び耐食性に悪
影響を及ぼすAl−Fe−Si系化合物となってマトリ
ックスに分散する。そのため、Fe含有量は少ないほど
望ましく、本発明ではFe含有量の上限を0.2重量%
に設定した。
鋳造でビレットに鋳造された後、均質化処理される。均
質化処理では、Mg,Si,Cu等をマトリックスに均
一に固溶させるため、たとえば530〜550℃×5〜
10時間の加熱条件が採用される。均質化処理されたア
ルミニウム合金は、Mg2 Si等の析出を防止するため
強制空冷される。
0℃ 均質化処理されたビレットは、押出直後の押出形材の温
度が540〜560℃となるように、500〜530℃
に加熱される。ビレットの加熱温度が530℃を超える
と、押出直後に押出形材の温度が560℃を超えること
があり、押出形材が部分的に溶融する虞れがある。逆に
ビレットの加熱温度が500℃未満では、押出形材の温
度が540℃を下回ることがあり、冷却槽11に至る過
程で合金成分が析出し、後工程の時効処理段階で十分な
強度及び伸びが付与されない。なお、押出形材の温度
は、先端が尖った熱電対を押出形材に突き当てて測定さ
れる。このとき、熱電対の先端は、押出形材に約1mm
程度めり込んだ状態になる。
0℃ 押出形材の温度は、押出直後に540〜560℃の範囲
に管理される。押出直後の形材温度は、溶体化に重要な
条件であり、540〜560℃の範囲に維持することに
よりSi,Mg,Cu等がマトリックスに十分固溶し、
後続するいわゆるT5処理における時効処理時に必要強
度が付与される。押出直後の形材温度が560℃を超え
ると、押出形材が部分的に溶融する虞れがある。逆に5
40℃未満の形材温度では、均質化処理後ビレット中に
析出していたMg2 Si等がマトリックスに十分固溶せ
ず、Si,Mg,Cu等の固溶量が不充分になる。その
結果、時効処理時に目標強度が確保できない。
るために比較的多量の合金成分を添加している。そのた
め、変形抵抗が大きくなっているので、押出圧力が上昇
する。押出圧力を少しでも低下させるため、ビレット温
度を上限温度近傍まで上げて変形抵抗を小さくした条件
下で押出加工する。ビレット温度を上昇させても押出速
度は3〜7m/分程度であり、6063合金に比較して
約1/5程度になっている。しかし、7m/分を超える
速い押出速度で押し出すと、加工熱により押出形材が昇
温して部分的に溶融する虞れがある。他方、3m/分に
達しない押出速度では、生産性が悪いばかりでなく、押
出ダイス3から冷却槽11に至る間で押出形材の温度低
下が大きくなる。
との間にはエンドプラテン5,切断機10等が配置され
ており、通常の仕様では押出ダイス3〜冷却槽11間の
距離は約3.5mである。押出速度を5m/分と仮定す
ると、押出ダイス3から冷却槽11までを押出形材が通
過するのに約40秒の時間がかかる。押出形材の温度低
下を小さくする上では、押出ダイス3〜冷却槽11間の
距離を短くすることが考えられるが、エンドプラテン
5,切断機10のサイズ等から距離の短縮には限界があ
る。したがって、押出形材の通過時間を短くすることに
は、実操業面からくる制約が加わる。
の距離:約3.5m,押出速度:3〜7m/分)を前提
にすると、押出直後の形材温度が540〜560℃であ
った押出形材が冷却槽11に達する時点では形材温度が
520℃未満に低下している。このように降温した押出
形材は、冷却槽11で急冷しても焼きが十分に入らな
い。そこで、押出ダイス3と冷却槽11との間に保温槽
13を設け、押出形材の降温を防止すると共に、冷却槽
11に導入される直前において押出形材の温度を520
〜560℃の範囲に維持している。また、Si,Mg,
Cu等の合金成分をマトリックスに十分固溶させるため
には、所定の時間が必要である。本発明者等の実験によ
ると、固溶化に要する時間は、520〜560℃の温度
域で10秒以上であることが判った。このことは、押出
速度を過度に上げて押出ダイス3〜冷却槽11を押出形
材が通過する所要時間を短くしても、時効処理による強
度確保に有効でないことを意味する。ただし、押出後に
10秒以上の時間及び520〜560℃の温度域が確保
できる条件下では、その位置で押出形材を焼き入れるこ
とも可能である。
(焼入れ温度):520〜560℃ 焼入れ温度から200℃までの押出形材の冷却速度:3
0℃/秒以上 540〜560℃で押し出した押出形材を保温槽13に
送り込んでも、保温槽13をでて冷却槽11に入るまで
の間で若干の温度低下が避けられない。そこで、冷却槽
11に入る押出形材の温度が520℃を下回らないよう
に温度管理する。押出形材が520℃未満に降温する
と、Mg2 Si,Al2 Cu等の析出が開始し、固溶し
ているMg,Si,Cu等の固溶量が不足する。その結
果、焼入れが不充分になり、図3に示す本発明者等の実
験結果から明らかなように、400N/mm2 以上の目
標強度が得られ難くなる。冷却槽11に入る直前の押出
形材の温度は、焼入れ温度に当たり、良好な焼入れ効果
を得るために520〜560℃の範囲に設定される。
る。焼入れ温度から200℃までの温度域における冷却
速度を30℃/秒以上に設定すると、400N/mm2
以上の強度が押出形材に付与される。強度に及ぼす冷却
速度の影響を考慮すると、冷却槽11における冷却方法
も重要なポイントであり、押出形材に歪みが発生しない
ような冷却方法で急冷する必要がある。冷却速度が強度
に及ぼす定量的な影響は、本発明者等により調査・研究
の結果から明らかにされたものであり、たとえば冷却槽
11の入口で形材温度520℃以上に維持して焼入れ
し、時効処理した場合では図4に示すように冷却速度が
増加するほど引張強さが向上している。
間の人工時効 以上に掲げた条件下で製造された押出形材は、十分量の
Mg,Si,Cu等がマトリックスに固溶しているた
め、改めて溶体化処理を施す必要なく、時効処理によっ
て400N/mm2 以上の強度,15%以上の伸びが付
与される。機械的特性の改善は、Ti,B等によって鋳
造結晶粒が微細化され、Cuで強化されたマトリックス
から析出するMg2 Si,Al2 Cu等の作用によるも
のである。水焼入れから時効処理までの経過時間も機械
的性質に影響を及ぼす。本発明の合金系においては、水
焼入れ後に常温に放置することなく、可能な限り速やか
に時効処理することが強度向上につながり、得られる強
度も安定化する。具体的には、自然時効時間を短くし、
水焼入れ後から4日以内に時効処理することが好まし
い。このようにして優れた機械的特性が付与され、40
0N/mm2 以上の引張強さをもつ押出形材は、トラッ
クのサスペンションに装備されるトルクロッドの連結棒
に要求される特性を十分に満足する。その結果、リング
状のエンド部材が両端に固着される連結棒をアルミニウ
ム化できるため、軽量で強度が保証されたトルクロッド
が提供される。
理した後、直径273mmの鋳塊にDC鋳造した。得ら
れた鋳塊を昇温速度80℃/時で加熱し、540℃×6
時間で均質化処理し、冷却速度200℃/時で強制空冷
し、押出用鋳塊を用意した。この押出用鋳塊は、Si:
1.11重量%,Mg:1.05重量%,Cu:0.7
1重量%,Mn:0.39重量%,Cr:0.39重量
%,Ti:0.03重量%,B:0.002重量%,Z
n:0.00重量%,Fe:0.17重量%,Mn+C
r:0.78重量%,残部実質的にAlの組成をもって
いた。
にビレットを加熱した後、押出速度5m/分で外径51
mm,内径30mmのパイプ状押出形材に押し出した。
このとき、押出形材の温度は、押出ダイス出口で550
℃であった。押出装置としては、厚み4mmのアルミニ
ウム板で作られ半径150mm,長さ2000mmの半
円状のカバー16を備えた保温槽13をプラテンホール
8に配置した設備構成を使用した。なお、カバー16と
ガイド9との間に断熱材14を介在させ、ガイド16と
カバー16との間を熱遮断した。また、カバー16は、
カバー16内の空気が対流によって外部に散逸しないよ
うに、出口側開口部の半円状上部を塞いだ。
したところ、545℃であった。すなわち、押出形材が
保温槽13を通過する間の温度低下は5℃に止まってい
た。長さ2000mmの保温槽13を押出形材が通過す
るのに24秒かかった。この通過所要時間は、10秒以
上あり、Mg,Si,Cu等をマトリックスに固溶させ
る上では十分な時間である。保温槽13の出口から冷却
槽11の入口までは、間に切断機10が配置されている
こともあって1.5mの距離となっている。そのため、
保温槽13〜冷却槽11を通過する間に押出形材が若干
温度低下し、冷却槽11の入口で押出形材の温度が52
5℃になったが、Mg,Si,Cu等の析出が生じるこ
となく固溶状態は十分に維持された。冷却槽11の入口
に、厚さ1mmの鋼板から作られ、押出形材の外径より
大きな開口部を設けた冷媒飛散防止用の冷媒阻止具18
を取り付けた。
トから10kgf/cm2 の圧力水を押出形材に吹き付
け、冷却槽11に満ちた冷却水を溢流させる直接水冷方
式を採用した。18℃の工業用水を冷却水として使用
し、押出形材を水冷したところ、冷却槽11から流出す
る水の温度は20℃になっていた。水冷中に押出形材の
温度を測定したところ、冷却槽11の入口から0.5m
の位置で押出形材の温度が200℃になっていた。押出
速度が5m/分であることから、冷却槽11の入口から
内部に0.5m入った位置までの所要時間は6秒であ
る。そして、冷却槽11の入口で形材温度が525℃で
あった押出形材が6秒の間に200℃に下がっているの
で、このときの冷却速度は54℃/秒と計算される。本
発明で規定している30℃/秒以上は、比較的速い冷却
速度である。しかし、このような急冷を受けても、押出
形材の真円度及び真直度には悪影響がみられなかった。
実際、許容される寸法誤差は真円度で±0.3mm,真
直度で±0.3mm/300mm−長さであるが、前述
の冷却速度54℃/秒に起因する歪み変形は十分に許容
範囲に収められている。
5時間の時効処理を施した。時効処理後に押出形材の機
械的特性を調査したところ、強度が410N/mm2 ,
伸びが17%であった。トラック用トルクロッドの連結
棒に要求される強度が400N/mm2 以上であること
を考慮すると、時効処理された押出形材はトルクロッド
の連結棒として十分に使用可能であることが判る。強度
410N/mm2 ,伸び17%は、本出願人が特開平5
−59477号公報で紹介したようにT6処理で強度を
付与した押出形材の機械的特性に匹敵する。このこと
は、T6処理に替えて本発明法のようなT5処理を採用
することができ、改めて溶体化処理を必要としないこと
から製造コストが節減されることを意味する。
は同様な条件下で押出形材を製造した。この場合、押出
形材の温度は、押出ダイス3の出口で550℃であった
が、保温槽13の出口に当たる位置では520℃,冷却
槽11の入口では500℃と大きく温度低下した。ま
た、冷却槽11の入口から内部に0.5m入った個所で
は、水冷された押出形材の温度は190℃であり、この
ときの冷却速度は52℃/秒と算出された。冷却された
押出形材を同じ条件下で時効処理したところ、強度が3
80N/mm2 に過ぎず、トルクロッドの連結棒として
は強度不足であった。
足は、次のように推察される。押出ダイス3と冷却槽1
1との間に保温槽13を配置しない場合、押出形材の温
度は、押出速度5m/分のとき押出ダイス3〜冷却槽1
1の間で550℃―500℃=50℃の温度低下があ
り、焼入れ温度が500℃となる。そのため、押出ダイ
ス3から冷却槽11までを押出形材が通過する間にM
g,Si,Cu等がマトリックスに十分固溶できず、一
部がMg2 Si,Al2 Cu等として析出する。その結
果、マトリックスに固溶しているMg,Si,Cu等の
固溶量が少なくなり、後工程の時効処理時に強度向上に
有効なMg2 Si,Al2 Cu等の析出量が不足する。
これに対し、保温槽13を配置した場合、冷却槽11の
入口で520℃以上の温度が確保され、しかも押出直後
の押出形材に析出しているMg,Si,Cu等がマトリ
ックスに固溶する十分な時間がかせげる。その結果、改
めて溶体化処理を伴うT6処理を施す必要なく、時効処
理だけで十分な強度が付与される。
ダイスから送り出された押出形材が冷却槽に導入される
までの間で押出形材の温度を520℃以上に維持すると
共に、Mg,Si,Cu等がマトリックスに固溶するた
めに必要な時間を確保している。この押出形材を冷却槽
に導入して急冷すると、十分な固溶量のMg,Si,C
u等が固溶したままで押出形材が冷却され、時効処理に
よる強度向上に必要な固溶量が確保される。このように
押出直後の高温状態を溶体化処理に利用しているので、
処理コストの高いT6処理に比較して、必要強度を付与
した押出形材が安価に製造できる。しかも、時効処理後
の押出形材は、400N/mm2 以上の強度をもつた
め、トラック等のトルクロッドの連結棒として使用で
き、車両搭載部品に要求される軽量化を満足するトルク
ロッドが提供される。
響を表わしたグラフ
に及ぼす影響を表わしたグラフ
4:ボルスタ 5:エンドプラテン 6:ステム
7:ダミーブロック 8:プラテンホール 9:ガイド 10:切断機 11:冷却槽 1
2:テーブル 13:保温槽 14:断熱材 15:押出形材
16:カバー 17:ヒータ 18:冷媒阻止具
Claims (11)
- 【請求項1】 アルミニウム合金を所定形状に押し出し
た後、押出ダイスから冷却槽に至る途中に配置されてい
る保温槽を通過させて押出形材の降温を抑制し、次いで
冷却槽に押出形材を導入して焼入れするアルミニウム合
金のダイス端保温押出方法。 - 【請求項2】 Si:1.0〜1.5重量%,Cu:
0.5〜0.9重量%,Mn:0.2〜0.6重量%,
Mg:0.8〜1.5重量%,Cr:0.15〜0.9
重量%,Ti:0.03〜0.05重量%,B:0.0
001〜0.01重量%を含み、Fe含有量を0.2重
量%以下、Mn+Crの合計含有量を1.2重量%以下
に規制したアルミニウム合金を使用する請求項1記載の
ダイス端保温押出方法。 - 【請求項3】 更にZr:0.1〜0.2重量%を含む
アルミニウム合金を使用する請求項2記載のダイス端保
温押出方法。 - 【請求項4】 アルミニウム合金を鋳造,均質化処理し
た後、押出用ビレットに切断し、ビレットを500〜5
30℃に加熱し、押出ダイスから出た直後の押出形材の
温度が540〜560℃となるように押し出し、形材温
度を520〜560℃の範囲に維持した状態で押出形材
を冷却槽に導き、焼入れ温度から200℃までの温度域
における冷却速度が30℃/秒以上となるように冷却槽
で押出形材を焼き入れる請求項1〜3の何れかに記載の
ダイス端保温押出方法。 - 【請求項5】 押出速度3〜7m/分でアルミニウム合
金を押し出す請求項1〜4の何れかに記載のダイス端保
温押出方法。 - 【請求項6】 請求項1〜5の何れかに記載の方法で製
造された押出形材を155〜190℃×2〜20時間の
加熱条件下で時効処理する押出形材の製造方法。 - 【請求項7】 請求項6記載の方法で製造され、機械加
工により寸法精度を整えたトルクロッドの連結棒。 - 【請求項8】 アルミニウム合金を所定形状に押し出す
押出ダイスと、押し出された押出形材を焼入れする冷却
槽と、押出ダイスと冷却槽との間に配置され、押出形材
の降温を抑制する保温槽とを備えているアルミニウム合
金の押出装置。 - 【請求項9】 断熱材,反射板又は反射箔を貼り付けた
断熱材でできたカバーを備えた保温槽が配置されている
請求項8記載の押出装置。 - 【請求項10】 内側にヒータを設けたカバーを備えた
保温槽が配置されている請求項8記載の押出装置。 - 【請求項11】 押出ダイス側開口部に冷媒阻止具を備
えた冷却槽が配置されている請求項8記載の押出装置。
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---|---|---|---|
JP11011444A JP2000212708A (ja) | 1999-01-20 | 1999-01-20 | ダイス端保温押出法、押出装置及びアルミニウム押出形材 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP11011444A JP2000212708A (ja) | 1999-01-20 | 1999-01-20 | ダイス端保温押出法、押出装置及びアルミニウム押出形材 |
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---|---|
JP2000212708A true JP2000212708A (ja) | 2000-08-02 |
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ID=11778278
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP11011444A Pending JP2000212708A (ja) | 1999-01-20 | 1999-01-20 | ダイス端保温押出法、押出装置及びアルミニウム押出形材 |
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JP (1) | JP2000212708A (ja) |
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- 1999-01-20 JP JP11011444A patent/JP2000212708A/ja active Pending
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