JP2000212592A - 無煙キャンドル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 無煙キャンドル及び香料入り無煙キャンドル
を提供する。 【解決手段】 パラフィンワックスとイボタロウとをキ
ャンドルのワックス成分としている。ワックス成分の内
でイボタロウが 5 - 60 重量% を占め、ワックス成分に
対して香料が 3 - 10 重量% を占めている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はキャンドル (蝋燭)
に係り、燃焼中に煤が殆ど乃至全く発生しない無煙キャ
ンドル及び着火して香りを楽しむための香料入り無煙キ
ャンドルに係る。

【０００２】

【従来の技術】従来、照明用キャンドルの原料としては
蜜蝋や木蝋が使用されてきたが、現在では石油系ワック
スであるパラフィンワックス又は該パラフィンワックス
にポリエチレンワックスやステアリン酸を配合したもの
が主として用いられている。

【０００３】和蝋燭を含むキャンドルとしては「無煙」
と称されているものが市販されており、無風状態におい
ては完全燃焼状態を呈し確かに煤の発生は認められない
が、風等により炎が揺れると僅かではあっても煤が瞬間
的に発生するのを裂けられないのが実状である。

【０００４】一方、着火して香りを楽しむ、所謂アロマ
・キャンドルとしては、特開平 9 -188893 号公報に、
パラフィンワックスを主体とし、これにポリエチレンワ
ックスと高級脂肪族カルボン酸を配合し、これらの蝋成
分に香料前駆体を配合して成形したロウソクであって、
着火により香料前駆体が分解して香りを放出するロウソ
クが開示されている。尚、最近では、1 種のアロマセラ
ピー (aroma therapy)の目的で、又 キャンドルの灯り
はヒトの心を和ませる効果があるので種々の香料入りキ
ャンドルが市販されるに至っている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題乃至発明の目的】パラフ
ィンワックス製キャンドル又はパラフィンワックスを主
たるワックス成分としているキャンドルは、着火して燃
焼させる場合に周囲が無風状態であれば完全燃焼に近い
状態となり、煤は殆ど発生しないが、下記の点に課題が
ある。 (1) 風等が当たって炎が揺れると瞬間的に煤が発生する
ので、室内環境を悪化させる、(2) 燃焼炎の長さが比較
的長いので、安全性に若干の問題があり且つ燃焼継続時
間が比較的短い、(3) 消火時に固有の比較的強い臭気
(異臭) が発生する、及び(4) 液状香料を用いる場合
に、香料の配合量を多くすると硬度が低下して脱型が困
難となり、従って香料の配合量を多く設定する場合には
融解させたワックスをガラス製等の容器に流し込む等の
手段を採用せざるを得ず、製品の形態が制限される。

【０００６】従って、本発明の主たる目的はパラフィン
ワックスを含有しているが、煤の発生が著しく抑制され
た乃至煤が全く発生しない無煙キャンドルを提供するこ
とにある。

【０００７】本発明の他の目的は、同じ体積の従来のパ
ラフィンワックス含有キャンドルと比較する場合に燃焼
炎の長さが短く、従って燃焼継続時間が著しく長い無煙
キャンドルを提供することにある。

【０００８】本発明の更に他の目的は液状香料の配合量
を多く設定しても脱型が容易であり、従って成形型を用
いて各種の形状に成型することのできる無煙キャンドル
を提供することにある。

【０００９】市販されているパラフィンワックス含有着
色キャンドルはパラフィンワックスと着色料との融和性
が低く、従って着色むらが生じるのを回避するためと考
えられるが着色料の使用量が多く、このために濃い色調
を呈しているものが見受けられるので、本発明の更に他
の目的は着色が容易であり、色調が淡くても着色むらが
なく、透明感を感じさせる美麗な無煙キャンドルを提供
することにある。

【００１０】

【課題を解決し目的を達成する手段】本発明によれば、
既述の課題は、パラフィンワックスとイボタロウとをワ
ックス成分としていることを特徴とする無煙キャンドル
により解決されると共に、上記の主目的が達成される。

【００１１】この本発明による無煙キャンドルにおける
ワックス成分の内で「イボタロウ」とはカイガラムシ科
に属する昆虫であるイボタロウムシ (Ericerus pela)
の雄の幼虫が 2 令時から前蛹になるまでモクセイ科の
シナトネリコ (Franxinuschinensis) やトウネズミモチ
(イボタ) (Ligustrum lucidum) の幹や枝に分泌・付着
させるワックスであり、精製すると純白に近い色調を呈
する。このイボタロウをパラフィンワックスに配合して
キャンドルを製造すると、意外にも、(a) 炎が揺れても
煤の発生が著しく抑制され、(b) 着火しても燃焼炎の高
さが低く (1cm 弱程度であり、炎の長さはパラフィンワ
ックス製キャンドルの場合の約半分)、従って燃焼継続
時間が長い(本発明の主目的は照明用ではなく、香料が
配合されていて、着火・燃焼により香りを楽しむキャン
ドルを提供することにあるので、炎の長さが短いことは
欠点ではなく、安全性の面からは寧ろ利点である)、(c)
炎を吹き消す場合に格別の異臭を発しない、(d) 液状
香料を用いる場合に配合量を、ワックス成分に対して 1
0 重量% 程度までに設定しても成形型によるキャンドル
の製造に影響のない硬度を維持し、離型性も良好であ
り、従って種々の強度の香気を発するキャンドルを成形
型を用いて製造することが可能である、(e) 液状着色料
との融和性が良好であり、色むらがなく、透明感を感じ
させる美麗なキャンドルの製造が可能となる、(f) 燃焼
炎が従来のパラフィンワックス含有キャンドルの場合に
は先鋭であり、絶えず揺れていて不安定であるが、本発
明によるキャンドルの場合には先端が丸みを帯び、全体
として安定しており、従って穏やかな感じ乃至安心感を
与える等の利点のもたらされることが判明し、本発明が
完成するに至ったのである。

【００１２】本発明による無煙キャンドルにおいて、ワ
ックス成分の内でイボタロウは 5 -- 60 重量% を占め
ているのが好ましい。何故ならば、イボタロウの配合量
が 5重量% 程度で燃焼時に炎が揺れても煤発生の頻度は
激減し且つ燃焼炎の長さが短く、1cm 程度 (市販のパラ
フィンワックス含有アロマキャンドルの場合には2cm 又
はそれ以上) であるために、炎が揺れて場合により煤が
瞬間的に発生しても煤の量が極めて僅かに留まるからで
あり、又 60 重量% 程度以上であるとワックスの硬度が
高くなり過ぎ、成形型の形状が繊細乃至複雑な場合には
離型時にクラックや破損を生じる場合があり、更にはコ
スト的に好ましくないからである。

【００１３】香料は種類にも依存するが濃度が過剰であ
ると場合により不快感を与える可能性があり、既述の特
開平 9 - 188893 号公報においても段落番号 0007 の部
分には「ロウソクに配合する香料前駆体物質の使用量と
しては、用いる香料の種類により異なるが、ロウソクに
対して 0.01 - 20 重量%、より好ましくは 0.05 - 10重
量%、さらに好ましくは 0.1 - 5 重量% となるように配
合すればよい」旨記載されていて、香料の量は比較的少
なめに設定することが推奨されており、実施例では「燃
焼剤」と称しているワックス成分に対して僅かに 1 重
量% である。しかしながら、本発明による無煙キャンド
ルの場合には燃焼炎の長さが短く、従って香りの放出が
抑制される傾向にあるので、香料の種類によっては配合
量を高めに設定する必要性がある。従来のパラフィンワ
ックス製キャンドル又はパラフィンワックスを主たるワ
ックス成分とするキャンドルの場合には、液状香料の配
合量を高めると硬度が低下し、既述のように成型に課題
を生じるが、本発明によるキャンドルの場合には融点が
高い (80℃ 程度) イボタロウが配合されるので、脱型
時に変形等を生じることがなく、又燃焼時においても蝋
の流れが少なく型崩れし難い (継続して燃焼させた場合
の燃焼終了時に、パラフィンワックス製キャンドルにお
いては燃焼に供されなかったワックスが原形を留めない
状態で残留するが、本発明によるキャンドルの場合には
外殻部がほぼ原形を留めた固形状態で残留する)。

【００１４】

【実施例等】次に、試験例及び製造例により本発明を更
に詳細に且つ具体的に説明する。尚、これらの試験例及
び製造例において使用された原料等は下記の通りのもの
である。 パラフィンワックス :融点が 135°F のもの イボタロウ :株式会社セラリカ野田の精製市販品 赤色色素 :赤色 225 号 (使用色素濃度 : 0.3mg/ml) 青色色素 :青色 403 号 (使用色素濃度 : 0.3mg/ml) 緑色色素 :緑色 202 号 (使用色素濃度 : 0.3mg/ml) 黄色色素 :黄色 204 号 (使用色素濃度 : 0.1mg/ml)

【００１５】試験例 1 (煤の発生試験) パラフィンワックスとイボタロウとの配合比率が異なる
キャンドルを作成し (型抜きが容易となるように単純な
円筒型枠を使用)、着火して燃焼させ、キャンドルの側
に白紙を配置すると共に、手で扇ぎ炎を揺らして煤の発
生の頻度を目視観察した。結果は下記の表 1 に示され
ている通りであった。

【００１６】

【表１】

【００１７】表 1 中において、 ☆☆☆☆☆ : 100 回以上試みても煤の発生が認められない ☆☆☆☆ : 100 回試みて 1 - 2 回程度の割合で煤が発生 ☆☆☆ : 50 回試みて 1 - 2 回程度の割合で煤が発生 ☆☆ : 25 回試みて 1 - 2 回程度の割合で煤が発生 ☆ : 10 回試みて 1 - 2 回程度の割合で煤が発生 × : 毎回のように煤が発生

【００１８】考察 :上記の結果からイボタロウを配合し
たキャンドルの場合には煤の発生頻度が激減することが
判り、その効果発現の下限値は 5 重量% 以下であり、
又コスト面等を考慮に入れるとイボタロウの実用的な配
合上限値は 60 重量% 程度と考えられる。尚、ワックス
成分がパラフィンワックス単独の場合には炎を吹き消す
場合に該ワックスに固有の強い臭気 (異臭) が感じられ
たが、イボタロウを配合したキャンドルに関してはパラ
フィンワックスに起因する異臭は殆ど感じられなかっ
た。

【００１９】試験例 2 (離型性と硬度) 後記の表 2 に示される通りの配合でワックスを採取し
てビーカーに入れ、湯煎により加熱融解させた。一方、
融解したパラフィンワックスにキャンドル用の綿芯を浸
漬させ、引き上げ、ワックス分を硬化させてワックス含
浸棒状綿芯となした。この綿芯を台座に取り付けた。該
台座はアルミニウム製の円形板であって中央部に小孔を
有しており、この小孔に上記の棒状綿芯を通すことによ
り該綿芯は台座に取り付けられる。次いで、ほぼ半球状
であって頂部に小孔を有する成形型に上記の台座付き棒
状綿芯をに取り付ける。この場合に、キャンドルとして
成型された場合の着火部を形成するために、棒状綿芯の
先端部が成形型における頂部の小孔から若干突出するよ
うになし、次いで成形型の頂部小孔部分に溶融蜜蝋を少
量付着させ固化させることにより、成形型に上記の台座
付き棒状綿芯を固定させた。

【００２０】上記の融解させたワックスにローズ香料を
場合により添加して攪拌した後に、上記の成形型を反転
させて流し込み、この場合にワックスの流し込み量は溶
融ワックスの表面レベルが台座面より若干上になるよう
に設定し、次いで流し込んだワックスの表面が固まった
時点で成形型を冷凍庫 (庫内温度 : -5℃) に 移送して
冷却することにより成形型内のワックスを完全に固化さ
せた。

【００２１】その後、冷凍庫から取り出して脱型させ、
その際の離型性 (型抜けが容易か否か) を評価した。結
果は後記の表 2 に示されており、又得られたキャンド
ル・サンプルの硬度をチェックするために針入度を JIS
K-2235 に従って測定した。この測定結果も後記の表 2
に示されている。

【００２２】尚、市販品 A 及び B に関しては購入した
キャンドルを削ってビーカーに入れ、湯煎により加熱融
解させ、その後は上記と同様にして対照キャンドル・サ
ンプルとしたものである。

【００２３】

【表２】

【００２４】表 2 中において、 ○ : 型抜きが容易 △ : 型抜きが若干困難 Ｘ : 型から抜けない

【００２５】評価 :イボタロウを配合したキャンドル・
サンプルは、ワックス成分に対して液状香料を 10 重量
% 添加しても市販品と比較して針入度が低く、成型操作
を行い、次いで引き抜きによりキャンドルを製造するに
充分な硬度を有している。又、イボタロウを配合した場
合には、離型性が市販品配合の場合やパラフィンワック
スを単独で用いる場合よりも明らかに優れている。

【００２６】尚、ワックス成分としてパラフィンワック
スを単独で用い、液状香料を配合し、型を用いて成型す
る場合に、ワックスに対して香料の配合量は 5 - 6 重
量%程度が限界であり、それ以上であると硬度が低過ぎ
るために型から引き抜く際に変形を生じたり、型の内面
にワックスが残留してしまうことも別途の試験で確認さ
れた。このことは、液状香料成分の多いパラフィンワッ
クス製キャンドルは型への流し込み成型に適さず、従っ
てガラス又は陶磁器製等の容器へ流し込み、該容器と共
に製品化せざるを得ないことを意味している。

【００２７】試験例 3 (連続燃焼試験) パラフィンワックスとイボタロウとの配合比率が異なる
キャンドル (各キャンドル・サンプルの重量 : 20g、サ
ンプルの形状 : 半球状) を製作して着火し、連続的に
燃焼させ、サンプルの経時的形状変化を観察すると共
に、芯が燃え尽きる迄の継続燃焼時間 (自然に消えた場
合には直ちに再着火) を計測した。上記の配合比率及び
累積燃焼時間は下記の表 3 に示されている通りであっ
た。

【００２８】

【表３】

【００２９】考察 :イボタロウの含有量が高くなるにつ
れて累積燃焼時間は段階的に長くなり、又ワックス成分
がパラフィンワックス単独であるサンプルの場合には試
験終了時において蝋が少量融解残留した状態を呈し、キ
ャンドル・サンプル成型時の原形を全く留めていなかっ
たが、イボタロウを配合したサンプルにおいては外殻部
が融解しないで残留する傾向を示し、殊にイボタロウ単
独のサンプルの場合には外殻部がほぼ完全に残留し、茶
碗状になった。

【００３０】製造例 1 パラフィンワックス 60g 及びイボタロウ 40g を採取し
てビーカーに入れ、湯煎により加熱融解させた。一方、
キャンドル用の綿芯を融解したパラフィンワックスに浸
漬させ、次いで前記の試験例 2 におけると同様に棒状
綿芯となし、該棒状綿芯を台座に取り付け、ほぼ半球状
のステンレス・スチール製成形型に上記の台座付き棒状
綿芯を取付けた。

【００３１】上記の融解させたワックスにローズ香料 3
又は 6g と赤色色素 3.2ml 又は青色色素 6.4ml を添
加して攪拌した後に、上記の成形型に流し込み、次いで
成形型を冷凍庫に移送してワックスを完全に固化させ、
次いで脱型することによりローズ香料入りキャンドルを
製造した。

【００３２】本製造例により得られたピンク又はブルー
のキャンドル・サンプルは後続の製造例において得られ
たキャンドル・サンプルと共に図 1 に示されている
が、該図から明らかなように。何れのキャンドル・サン
プルも色調が淡く且つ透明感を感じさせる美麗なもので
あった。

【００３３】製造例 2 製造例 1 と同様に、但し香料としてラベンダー香料を
3 又は 6g 使用し、色素として紫色色素 5.13ml (赤色
色素 2.37ml と青色色素 2.76ml とを混合して調製)を
用いて (香料 3g を用いた場合には色素を添加せずに)
ラベンダー香料入りキャンドルを製造した。得られたキ
ャンドルは純白又は淡いパープルの色調を呈していた。

【００３４】製造例 3 製造例 1 と同様に、但し香料としてローズ香料及びラ
ベンダー香料をそれぞれ 10g 使用し、色素として緑色
色素又は黄色色素をそれぞれ 3.2ml を用いてローズ及
びラベンダー香料入りキャンドルを製造した。得られた
キャンドルは淡い緑色又は黄色の色調を呈していた。

【００３５】

【発明の効果】本発明によるキャンドルは着火して燃焼
させた場合に炎が揺れても煤を殆ど或いは全く発生せ
ず、従って環境の悪化を最小限に留めることができる。
この無煙キャンドルは燃焼炎の長さが短く、従って安全
性が高く且つ燃焼継続可能時間が長い。更に、このキャ
ンドルには比較的多量の香料を含有させることもできる
ので、香気の強度調整も可能である。尚、成形は型への
流し込みであるために、キャンドルの形状を種々のもの
となすことができる。尚、色素の配合量を適切に設定す
れば、色調が淡く且つ透明感を感じさせ、美麗なものと
なる。

【図面の簡単な説明】

【図１】製造例により得られたキャンドル・サンプルを
缶に納めて撮影した図面代用写真である。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 パラフィンワックスとイボタロウとをワ
   ックス成分としていることを特徴とする、無煙キャンド
   ル。
2. 【請求項２】 ワックス成分の内でイボタロウが 5 - 6
   0 重量% を占めていることを特徴とする、請求項 1 に
   記載の無煙キャンドル。
3. 【請求項３】 ワックス成分 100g に対して香料を 3 -
   10g 含有していることを特徴とする、請求項 1 又は 2
   に記載の無煙キャンドル。
4. 【請求項４】 着色料を含有していることを特徴とす
   る、請求項 1 - 請求項 3 の何れか 1 つに記載の無煙
   キャンドル。