JP2000202985A - 硬質皮膜を有する印刷用ドクタ― - Google Patents

硬質皮膜を有する印刷用ドクタ―

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JP2000202985A JP11001696A JP169699A JP2000202985A JP 2000202985 A JP2000202985 A JP 2000202985A JP 11001696 A JP11001696 A JP 11001696A JP 169699 A JP169699 A JP 169699A JP 2000202985 A JP2000202985 A JP 2000202985A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 長期の間、安定して使用することのできる印
刷用ドクターを提供する。 【構成】 ドクター本体、および、ドクター本体のうち
少なくとも版胴に圧しつけられるドクター末端面を被覆
する硬質皮膜を有するドクターであって、ドクター本体
および硬質皮膜表面上の、少なくともドクター末端面に
多数の凹部を有しており、該凹部の最大径が該末端面の
幅より充分短いことに特徴付られる、印刷用ドクター。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、印刷用ドクターに
関する。
【0002】
【従来の技術】印刷用ドクターの目的は、版胴(プレー
ト印刷用シリンダー)上から過剰のインクを除くことで
ある。ドクターは通常、薄い鋼鉄シート片で作成されて
いる。シート片の一方の端はホルダー内に保持されてお
り、もう一方の末端面は板胴に弾性を持って押し付けら
れる。この押し付けられている方の末端面の幅は非常に
狭く、通常0.1mmのオーダーまたはそれより短い
(長軸を横切る方向に測定)。EP−A-709 183
はドクターの典型的な例を開示する。使用に伴い、ドク
ターのこの末端面は擦り切れ、実際にはこの擦り切れる
ことによってドクターの寿命が短くなる。使用可能期間
を延ばすために、鋼鉄シート片から成るドクターの末端
面を、物理的蒸着(PVD)またはプラズマ活性化化学
蒸着(PA−CVD)法によって硬質材にて被覆するこ
とが知られている。これは例えばDE−A 40 24
514および特開平8-197711号の要約に開示さ
れている。PVD方法においては、原子もしくは粒子が
スパッタリングもしくはアークによってターゲットから
放出され、プラズマにより運ばれて処理すべき表面上に
蒸着される。PA−CVDの場合には、炭化水素含有ガ
スのプラズマ活性化によって、層蒸着が起こる。硬質皮
膜を形成する硬質材としてはダイヤモンド様炭素(DL
C)が好ましい。DLCとは一部本質的にダイアモンド
の結晶構造をとっており、ダイアモンドに匹敵する摩擦
強度を有している炭素層もしくは炭素の多い層をいう。
他の硬質材あるいはDLCと他の物質、特に金属との混
合物を用いてもよい。かかる皮膜によって版胴との摩擦
に起因する負荷がかかるドクター表面には、増強された
耐磨耗性と良好なすべり性が賦与される。適当な硬質被
覆はGB-A 2 128 551、WO 86/0730
9、DE-C 37 14 327、EP-B 087 83
6、DE−A 32 46 361に開示されている。ま
た、特開平4−296556の要約書には、CVD法を
用いてドクター面へ撥インク性物質を被覆することが開
示されている。
【0003】硬質材の層は脆弱である。したがって、衝
撃あるいは温度変化によりひび割れが生じる危険性があ
る。ひび割れが生じた場合、硬質材層内の密着性あるい
は、ドクターへの密着性が損なわれ、次いで、摩擦力の
下、被覆の一部が剥がれたり割れたりする。その結果、
ドクターの製品寿命が損なわれるばかりでなく、被覆の
欠損部分の鋭い端部がひっかいて、版胴の表面の製品寿
命をも短くする。また、印刷製品へのドクター筋の原因
ともなる。したがってドクターの末端面の上述のような
硬質被覆は実際には現在までは広く受け入れられていな
い。本発明はこの危険を克服することを目的として為さ
れたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、ドクター
本体、および、ドクター本体のうち少なくとも版胴に圧
しつけられるドクター末端面を被覆する硬質皮膜を有す
るドクターであって、ドクター本体および硬質皮膜表面
上の、少なくともドクター末端面に多数の凹部を有して
おり、該凹部の最大径が該末端面の幅より充分短いこと
に特徴付られる、印刷用ドクターを提供する。本発明の
ドクターにおいては、硬質材による皮膜を適用する前
に、ドクター本体の末端面表面に多数の非常に小さな凹
部を設ける。凹部の最大幅は、ドクターの末端面の幅よ
り充分小さく、好ましくはこの幅の1/50以下であ
る。これらの凹部は、正確に硬質皮膜表面上に再現され
る。皮膜表面における凹部の最大幅は好ましくは10μ
m以下、より好ましくは2μm以下であり、特に好まし
くは0.5μm以下で0.1μm以上である。隣接する凹
部の中心間の距離は10μm未満が好ましい。凹部の最
大幅とは、ひとつの凹部の開口部において、端から端ま
でが最も長い部分の距離をいう。可能な限り、全ての凹
部の最大幅は上記制限内に収まっているのが好ましい。
しかしながら、少数の凹部の最大幅が制限値を上回って
いても、所望の効果に影響を及ぼさない場合、実質的に
影響を及ぼさない場合には、問題ない。
【0005】ドクター本体において、凹部の間の領域
は、本来平面であるドクター末端面の形状が本質的に保
たれているのが好ましい。凹部を設けた結果、凹部の間
の平面領域は、皮膜表面上に末端面全領域の20%未
満、より好ましくは10%未満が残っているのが好まし
い。しかしながら、ドクターの電機化学的研磨処理の結
果表面の凹部の間に全く平らな面が全く、あるいはほと
んどなくなっている場合にも、良好な結果を得ることが
できる。この場合、ドクター本体末端面を顕微鏡で観察
すれば、非常に波打って、また亀裂が入っているにもか
かわらず、末端面が非常に数多くの要素から構成され、
このサイズが末端面の総幅と比較すると非常に小さいと
いう事実は、例え見掛け上は粗面であっても末端面の幅
いっぱいにこれらの要素が組み合わさって、均一な表面
構造が構成されていることを意味するのである。
【0006】凹部は、EP−A728579に記載のご
とく、電機化学的研磨加工(ECM)工程によってドク
ターの末端面に形成すればよい。この文献は、鋼鉄製ド
クターの末端面をECM処理して、シリンダーの移動方
向に認められるような、末端面の後部エッジにかえり(b
urrs)ができるのを防止することを推奨している。かか
るかえりの形成は、ドクターの末端面がシリンダー表面
上を擦動する間に、原子もしくは粒子がドクター表面か
ら引き剥がされ、これらが相対的な移動によりに運ば
れ、異なる場所、最終的に上述のエッジかまたはエッジ
に形成されているかえりに蓄積されるのである。この現
象は、末端面が上述のような硬質材で被覆されている場
合には、この硬質皮膜から粒子が剥がれる事が無く、そ
の結果かかる粒子が所望しない部位に蓄積することがな
いため、生じない。本発明の硬質皮膜とドクター表面に
数多くの凹部が形成されているという形状との組み合わ
せの効果は、これとは異なるものである。凹部がドクタ
ー本体表面に多数存在していることによって、硬質皮膜
はよりこの表面に密着し得る。さらに、皮膜表面が平面
ではなく、多くの凹部の個所が曲面となっている。かか
る数多くの曲面により、末端面の幅方向に作用する力に
対してしなやかな対処が可能となっている。この結果、
熱ストレスにより強く、また衝撃に対して、より弾力性
を持って耐えることのできるドクターが提供される。即
ち、本発明のドクターは、熱または衝撃ストレス下でひ
び割れの形成される可能性が低い。クラックが生じたと
しても、被覆の一部が破壊されるという危険性もまた、
減少されている。従って、実用上からみて本発明のドク
ターは公知のドクターよりかなり強靭である。本発明の
被覆の前に行う凹部を形成するためのECM処理の効果
は、公知のECM処理の効果と全く異なっており、本発
明のECMと硬質材による被覆を組み合わせる効果は、
従来技術から開示も示唆もされていない。
【0007】本発明のドクターの末端面が非平面状であ
ることの更なる利点は、流体による潤滑作用が得られる
という事実にある。ドクターの末端面の凹部の間の平ら
な部分が本質的にシリンダー上対抗面への力を伝達して
いる。この平らな面にはそれぞれ凹部が隣接しており、
非常に数多くの部分に分かれているため、これら表面の
部分と対抗面の間の乾燥摩擦はほとんど生じない。とい
うのは、凹部が隣接する平らな部分のための流体潤滑剤
的に作用する液体フィルムを連続的に供給する給水槽の
役目を果たすからである。
【0008】好ましくは、硬質材料はなめらかな層状と
なるように被覆する。これは、標的をスパッタリングし
て、被覆材料が標的から、1個の原子のごとき微細さで
放出され、処理されるべき表面へその状態ではこばれる
ようにすることによって、成し得る。
【0009】滑らかさの低い、顕微鏡観察下では起伏の
あるつや消し状外観の皮膜はアーク方法と呼ばれる方法
またはその類似の方法にて得ることができる。この場合
には、皮膜粒子は標的から単一原子として放射されるの
ではなく、より大きな凝集体のまま放出される。滑らか
な層であるほうが、通常は好ましいが、起伏のある、も
しくはつや消し状表面のほうが好ましい場合もある。と
いうのは、この形状は砕片が生じる可能性が非常に低
く、またその顕微鏡レベルでの起伏が流体による潤滑効
果を増強するからである。
【0010】ドクターが300℃以下の温度で硬化およ
び焼戻しされた鉄鋼から成る場合、PVDまたはCVD
処理は、処理の最中にドクター本体が約250℃以下の
温度にとどまっているような方法で行うことが好都合で
ある。これによって、ドクター本体の質が被覆作業の間
の熱ストレスによって損なわれなくなる。
【0011】硬質材料による皮膜はドクター本体の末端
面だけではなく、その縁および末端面を規定している一
対の面の少なくとも当該縁に隣接する部分にも施すのが
有利である。
【0012】電機化学的研磨処理の局所により異なるエ
ッチング作用は、ドクター本体の結晶粒状態に依存して
生じることから、ドクター本体の合金および顕微鏡的状
態が、結晶粒が表面の凹部の所望の長さに合致するよ
う、選択するのが好ましい。ドクター本体の粒子の顕微
鏡的状態の隣接する粒子の中心から中心までの間の距離
は、表面における隣接する凹部の中心から中心までの距
離において好ましい距離と、ほぼ同じとすべきである。
好ましくはこの距離は0.05から1μmである。
【0013】本発明の詳細は、以下の説明のための実施
例によりさらに明確になるであろう。0.15×40m
mの寸法の鋼鉄の一端を、EP−A 728 579に記
載のごとく研削して1mm幅で0.6mmの厚さの薄板
を作成した。薄板の末端面は角度が60°となるように
削り、その末端面の幅が約0.7mmとなるようにし
た。末端面およびこの末端面をはさんでいる側面は、E
P−A 728 859に則って電機化学的研磨加工を行
い、末端面のおよそ90%がカバーされるような小さな
凹部を多数形成させた。
【0014】上記処理をされた鋼鉄製ドクターを、次い
でPVDチャンバーへ通した。
【0015】第1の実施例においては、チャンバー内の
条件を以下の処理パラメーターとした:放電圧約500
mPa、クロミウムをアルゴンガスおよび例えばC
26、C22、C24などの炭化水素ガス雰囲気下で原
子化する。クロミウム標的はおよそ1500WのDC電
流にて原子化する。このように低いパワーレベルとする
ことは、被覆されるべき部分の温度を200℃未満に保
つために必要である。滑らかで硬い層を得るためには、
さらにDC電圧または高周波電圧(13.56 MHz)、お
よそ(−100V)を、被覆される部分へかける。この
基質ホルダー部分と周囲の壁の間の電位の相違は、基
質、即ちクロミウム原子がアルゴンおよび炭化水素イオ
ンと共に放射され、これによって形成される層が緻密と
なるよう導かれる。この結果、皮膜層は厚みが1から1
0μm、好ましくは2から4μmとなり、顕微鏡下で観
察すると、基質の滑らかな表面がファセット面に形成さ
れ、そしてこの面を挟む隣接側面上へ幅およそ1mmの
オーダーで形成されていることが認められた。実際に使
用する場合と同様にして、版シリンダーに対してやさし
く圧した場合、すばらしい印刷結果が得られ、非常に長
期間の使用が可能となる。
【0016】プラズマ活性化CVDの第2の実施例にお
いては、チャンバー中を以下のパラメータに調整した:
およそ1000WのDCまたはHFおよびおよそ110
Vの同位電圧を基質ホルダーにかける。放電圧およそ4
00mPa。アルゴン/炭化水素ガス比約1。プラズマ
アーク。硬質DLC層が析出するよう、処理する。標的
自体はこの系からは分離されており、純粋なプラズマ活
性化化学蒸着が生じるようにしている。プラズマを活性
化するため、クロミウム標的を通る低レベルの電力(約
300W)が供給される。
【0017】DLCに加えて、他の好ましい硬質材料と
しては窒化クロミウム、窒化チタニウム、窒化炭素、窒
化チタニウムアルミニウム、クロミウムカーバイド、窒
化チタニウムハフニウム、ホウ化チタニウムまたはホウ
化チタニウムカーバイドなどが例示され、これらの化合
物同志の混合物およびこれらの化合物と他の化合物との
混合物もまた好適に用いられる。被覆するための硬質材
料としては、下になる表面と、あるいは皮膜とドクター
表面との間に下敷き層もしくは分離層を設ける場合に
は、この層との関係において、腐食しないものを選択し
なくてはならない。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年1月13日(1999.1.1
3)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ドクター本体、および、ドクター本体の
    うち少なくとも版胴に圧しつけられるドクター末端面を
    被覆する硬質皮膜を有するドクターであって、ドクター
    本体および硬質皮膜表面上の、少なくともドクター末端
    面に多数の凹部を有しており、該凹部の最大径が該末端
    面の幅より充分短いことに特徴付られる、印刷用ドクタ
    ー。
  2. 【請求項2】 凹部の最大径が末端面の幅の1/50以
    下である、請求項1記載の印刷用ドクター。
  3. 【請求項3】 皮膜表面の凹部の最大径が10μm未満
    である、請求項1または2記載の印刷用ドクター。
  4. 【請求項4】 皮膜表面の凹部の最大径が0.1μmを
    超える、請求項1から3いずれかに記載の印刷用ドクタ
    ー。
  5. 【請求項5】 隣接する凹部の中心間の平均距離が10
    μm未満である、請求項1から4いずれかに記載の印刷
    用ドクター。
  6. 【請求項6】 硬質皮膜表面の凹部の間が本質的に平面
    である請求項1から5いずれかに記載の、印刷用ドクタ
    ー。 【請求時7】 凹部の間の本質的に平らな部分がドクタ
    ー末端面の全表面領域の20%未満である、請求項1か
    ら6いずれかに記載の、印刷用ドクター。
  7. 【請求項7】 末端面が本質的に完全に凹部で覆われて
    いる、請求項1から7いずれかに記載の印刷用ドクタ
    ー。
  8. 【請求項8】 皮膜が、末端面の縁および末端面を規定
    している両側表面の、少なくとも該縁を含む部分をも被
    覆している、請求項1から8いずれかに記載の印刷用ド
    クター。
  9. 【請求項9】 ドクター本体が鉄鋼または細微粒子構造
    の合金で形成されている、請求項1から9いずれかに記
    載の印刷用ドクター。
  10. 【請求項10】 硬質皮膜が本質的にダイアモンド様炭
    素にて形成されいる、請求項1から10いずれかに記載
    の印刷用ドクター。
  11. 【請求項11】 ドクター本体末端面へ予め電機化学的
    研磨処理を施し、次いでプラズマ化学蒸着法または物理
    的蒸着法によって硬質皮膜を形成することに特徴付けら
    れる、回転版シリンダーに対して圧しつけられる末端面
    を有し、該末端面上に硬質皮膜を有する印刷用ドクター
    を製造する方法。
  12. 【請求項12】 物理的蒸着または化学的蒸着処理の間
    にドクター本体の温度を250℃以下に保持することに
    特徴付られる、請求項12の方法。
  13. 【請求項13】 硬質皮膜が滑らかな表面を有する、請
    求項12または13記載の方法。
  14. 【請求項14】 硬質皮膜がつや消し状の表面を有す
    る、請求項12または13記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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