JP2000191822A - 多孔性ポリマ―薄膜及び半導体装置 - Google Patents

多孔性ポリマ―薄膜及び半導体装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高絶縁性、高耐熱性、低誘電率、高密着性、
簡便な製造プロセス、均一な膜質、そして安定性という
絶縁膜に課されている要求特性のすべてを同時に満足さ
せることのできるポリマー薄膜を提供すること。 【解決手段】 多孔性のポリマー薄膜において、5,0
00以上の重量平均分子量を有しかつその構造中に親水
性基を有しない薄膜形成性ポリマーから形成されたもの
でありかつ前記ポリマー薄膜中に孔径5〜5,000Å
の微細な細孔が分散せしめられており、そして前記細孔
が、前記薄膜形成性ポリマーと分子レベルで均一に混合
可能でありかつ前記ポリマー薄膜の成膜中にその薄膜か
ら分離及び除去された細孔形成性化合物に由来している
ように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は多孔性ポリマー薄膜
に関し、さらに詳しく述べると、高絶縁性、高耐熱性、
そして低誘電率を有する多孔性ポリマー薄膜に関する。
本発明のポリマー薄膜は、特に、電子回路装置、半導体
装置など、例えば、多層回路基板、例えばMCM−L/
D基板、SCM−L/D基板、シングルチップパッケー
ジ基板など(以下、総称して「半導体装置」と呼ぶ)の
製造において層間絶縁膜、耐熱性保護膜などとして有利
に使用することができる。本発明は、また、このような
ポリマー薄膜を使用した半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】LSI等の半導体集積回路において、そ
の多層配線層間には絶縁膜(通常、「層間絶縁膜」と呼
ばれる)が積層されており、また、この絶縁膜の材料
に、半導体装置の製造プロセスに耐え得る高い耐熱性、
優れた膜強度、信号の高速化に必要な低い誘電率特性が
求められている。そして、実際の半導体集積回路では、
シリコーン系の材料が絶縁膜として用いられており、特
に、スピンオングラス(SOG)系の材料(誘電率=3
〜4)が、成膜が容易であるので、多くの分野で実用化
されている。
【0003】近年、絶縁膜のさらなる低誘電率化が求め
られるようになり、誘電率が3.0を下回る材料からな
る絶縁膜、例えば、フロロカーボン系の薄膜や、ゾル−
ゲル法により形成される多孔性シリコーン薄膜などが検
討されている(例えば、特開平8−46047号公報、
特開平8−64680号公報、特開平9−213797
号公報等を参照されたい)。しかし、フロロカーボン系
の薄膜は、配線やその他の部品との密着性が悪く、半導
体装置内の応力により剥がれを生じてしまう。また、エ
トキシシランモノマー類やシラノール類を出発物質とし
てゾル−ゲル法により形成される多孔性シリコーン薄膜
は、その薄膜形成プロセスが複雑であり時間を要するの
で、製造コストが増加するという問題や、吸水により誘
電率が上昇するという問題がある。
【0004】フロロカーボン系の薄膜や、ゾル−ゲル法
による多孔性シリコーン薄膜に代わるものとしては、例
えば、特開昭60−167394号公報において、微小
中空球体を含む樹脂層が開示されている。しかし、樹脂
層中の微小中空球体は、それらの中空において均一性が
悪く、静電特性に偏りが生じる等の問題があるので、L
SI等の微細電子回路装置のための絶縁膜として使用す
ることができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記したよ
うな従来の絶縁膜の問題点を解決することに向けられて
おり、その目的とするところは、高絶縁性、高耐熱性、
低誘電率、高密着性、簡便な製造プロセス、均一な膜
質、そして安定性という絶縁膜に課されている要求特性
のすべてを同時に満足させることのできるポリマー薄膜
を提供することにある。
【0006】また、本発明のもう1つの目的は、上記の
ような優れた特性を有するポリマー薄膜を使用した半導
体装置を提供することにある。本発明のこれらの目的及
びその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解す
ることができるであろう。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、その1つの面
において、多孔性のポリマー薄膜であって、5,000
以上の重量平均分子量(Mw)を有しかつその構造中に
親水性基を有しない薄膜形成性ポリマーから形成された
ものでありかつ前記ポリマー薄膜中に孔径5〜5,00
0Åの微細な細孔が分散せしめられており、そして前記
細孔が、前記薄膜形成性ポリマーと分子レベルで均一に
混合可能でありかつ前記ポリマー薄膜の成膜中にその薄
膜から分離及び除去された細孔形成性化合物に由来して
いることを特徴とする多孔性ポリマー薄膜にある。
【0008】本発明者らは、上記した目的を達成すべく
鋭意研究の結果、多孔性のポリマー薄膜を、ポリマー薄
膜の形成に関与する第1の成分と、多孔性の付与に関与
する第2の成分とを組み合わせて使用することによっ
て、すなわち、機能分離の条件の下でポリマー薄膜を形
成することによって、所期の優れた特性を有するポリマ
ー薄膜を提供し得るということを見い出した。具体的に
は、本発明の多孔性ポリマー薄膜の調製では、 ポリマー薄膜の形成に関与する第1の成分:5,000
以上の重量平均分子量を有しかつその構造中に親水性基
を有しないポリマー、及び 多孔性の付与に関与する第2の成分:第1の成分として
の薄膜形成性ポリマーと分子レベルで均一に混合可能で
ありかつポリマー薄膜の成膜中にその薄膜から分離及び
除去され得る化合物が一緒に用いられ、これらの成分の
混合物から所定の膜厚を有する薄膜を成膜した後、第2
の成分の全量もしくはほぼ全量を適切な処理によって選
択的に除去する。ここで、第1の成分としての薄膜形成
性ポリマーは、放射線照射や加熱などの架橋処理を行う
ことによって硬化させ、薄膜とすることができる。した
がって、引き続く工程で第2の成分を薄膜から除去する
際には、すでに形成されている薄膜を収縮させることな
く所期の細孔を形成することができる。この場合、した
がって、第2の成分である細孔形成性化合物は、薄膜形
成性ポリマーとは異なって、放射線照射や加熱などの架
橋処理によって硬化を起こさないような化合物であるこ
とが必要である。このようにして薄膜から溶出あるいは
分離された第2の成分のあとが空隙となり、孔径5〜
5,000Åの極めて微細な細孔群がポリマー薄膜中に
分散した状態で形成される。なお、ポリマー薄膜の膜厚
は、最近のLSI等の絶縁膜の傾向としてより薄いほう
が好ましいが、本発明の場合、そのような要求を満足し
得る約0.3〜1μmの極く薄いポリマー薄膜を何らの
問題もなく形成可能である。
【0009】また、本発明は、そのもう1つの面におい
て、本発明の多孔性ポリマー薄膜を含んでなる絶縁膜を
有することを特徴とする半導体装置にある。
【0010】
【発明の実施の形態】次いで、本発明をその好ましい実
施の形態を参照して説明する。本発明による多孔性ポリ
マー薄膜において、その第1の成分は、前記したよう
に、下記の要件: (1)5,000以上の重量平均分子量(Mw)を有す
ること、(2)構造中に親水性基を有しないこと、
(3)放射線照射、加熱などの架橋処理を行うことによ
って硬化可能であること、(4)硬化後、引き続く第2
の成分の除去のための処理によって悪影響を受けること
がないこと、を少なくとも満足させるようなポリマーで
あり、これらの要件が満足される限りにおいて特に限定
されるものではない。ここで、5,000以上の重量平
均分子量を有することは、得られるポリマー薄膜におい
て満足し得る耐熱性を得るために必須の要件である。参
考までに記載すると、下記の表に示すように、従来常用
のシリコーン含有ポリマーの典型例であるメチルラダー
シロキサンの軟化温度(℃)は分子量の変化に応じて変
動可能であり、また、本発明者らがすでに発明したもの
でありかつ本発明においても第1の成分として有利に使
用することのできるポリシルフェニレンシロキサン(T
SPS)の軟化温度は、分子量の変化にもかかわらず、
常に400℃を上回る高温である。
【0011】 分子量(Mw) メチルラダーシロキサン TSPS 5,000 150℃ >400℃ 10,000 210℃ >400℃ 50,000 360℃ >400℃ また、構造中に親水性基を有しないことは、誘電率の上
昇を防止するために必須の要件である。すなわち、もし
も絶縁膜の形成に使用するポリマーの構造中に親水性基
が含まれると、従来の絶縁膜と同様に成膜後に吸水して
しまい、誘電率の上昇を引き起こすからである。例え
ば、スピンオングラス(SOG)を例にとると、その誘
電率は、下記の表に示すように、含まれる水酸基(親水
性基)の量に応じて大きく変動可能である。
【0012】 水酸基(重量%) 30 20 10 誘電率 6.5 5.7 4.6 3.5 第1の成分としての薄膜形成性ポリマーは、スピンコー
ト可能で、耐熱性が高く、成膜性が良好であるので、そ
の構造中にシリコン(珪素)を含有するポリマー、すな
わち、シリコン含有ポリマーが有用である。なお、本願
明細書では、このシリコン含有ポリマーも含めて、「ポ
リマー」なる語を使用した場合には、端単独重合体はも
ちろんのこと、2成分共重合体、3成分共重合体などの
共重合体も包含するものとする。
【0013】第1の成分として有用なシリコン含有ポリ
マーは、さらに好ましくは、その構造中にシラノール基
及びアルコキシ基を有しないオルガノシリコーンポリマ
ーである。このようなオルガノシリコーンポリマーは、
以下に列挙するものに限定されないけれども、側鎖に有
機基又はハロゲン置換された有機基を有する線状シロキ
サンポリマー、ラダーシロキサンポリマー、ポリシルフ
ェニレンシロキサン(TSPS)、ポリシルアルキレン
シロキサンなどである。
【0014】第1の成分として特に有用なシリコン含有
ポリマーは、次式(I)により表されるシリコン含有ポ
リマーである。
【0015】
【化2】 上式において、R1は、同一もしくは異なっていてもよ
く、それぞれ、2価の有機基を表す。有機基R1は、種々
の置換基を包含するけれども、耐熱性の面から、C6
30アルキレン基及び(又は)環状アルキレン基である
のが好ましい。
【0016】また、上式中のXは、同一もしくは異なっ
ていてもよく、それぞれ、1価の有機基を表すかもしく
は1個もしくはそれ以上の有機基で置換されたトリオル
ガノシリル基を表す。ここで、有機基X又はトリオルガ
ノシリル基X上に置換基として存在する有機基は、もし
もそのような有機基が存在すると放射線による架橋が容
易であるので、好ましくは、C1 〜C5 アルケニル基、
6 〜C30アリール基、C1 〜C10アルキル基、C6
30ハロアリール基、C1 〜C10ハロアルキル基などで
ある。
【0017】さらに、上式中のm及びnは、それぞれ、
10〜100,000の整数を表す。さらに具体的に説
明すると、上記したような特に有用なシリコン含有ポリ
マーは、それぞれ、次式(II)、( III)、(IV)又は
(V)によって表すことができる。
【0018】
【化3】
【0019】
【化4】
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】 上式において、R2は、それぞれ、同一もしくは異なって
いてもよく、それぞれ、2価の有機基を表し、そして
R1、X、m及びnは、それぞれ、上記定義に同じであ
る。なお、本発明で第1の成分として有利に使用するこ
とのできるポリシルフェニレンシロキサンについては、
その製造も含めて詳細に記載されているので、特開平4
−181254号公報をあわせて参照されたい。
【0022】第2の成分として用いられる細孔形成性化
合物は、その化合物が上記した薄膜形成性ポリマーと分
子レベルで均一に混合可能であること、すなわち、良好
な相溶性を有していること、が必要である。細孔形成性
化合物と薄膜形成性ポリマーとを分子レベルで均一に混
合できない時には、塊状の混合物ができて、その混合物
を良好に塗布し、成膜することができない。さらに、得
られるポリマー薄膜の均一性を高めるため、薄膜形成性
ポリマーの分子構造に似通った分子構造を有する化合物
を、細孔形成性化合物として使用することが好ましい。
【0023】また、細孔形成性化合物は、上記した要件
に加えて、ポリマー薄膜の成膜中にその薄膜から分離及
び除去されて、所望とする微細な細孔を形成可能なもの
であることが必要である。ここで、細孔形成のための細
孔形成性化合物の分離及び除去の方法は、本発明の実施
においていろいろな種類のものを使用することができる
けれども、好ましくは、以下に列挙するようなものであ
る。 (A)細孔形成性化合物として、薄膜形成性ポリマーが
溶解しない溶媒に可溶性な化合物を使用し、ポリマー薄
膜の成膜後にその薄膜から細孔形成性化合物を溶媒(薄
膜形成性ポリマーが溶解しない溶媒)により溶解及び除
去すること。 (B)細孔形成性化合物として、その分子中に親水性基
を有する化合物を使用し、ポリマー薄膜の成膜後にその
薄膜から細孔形成性化合物を、11( cal-1cm-31/2
以上の溶解パラメータを有する溶媒により溶解及び除去
すること。 (C)細孔形成性化合物として揮発性化合物を使用し、
ポリマー薄膜の成膜中あるいはその後に(好ましくは、
成膜後)その薄膜から細孔形成性化合物を揮発せしめる
こと。 (D)細孔形成性化合物として昇華性化合物を使用し、
ポリマー薄膜の成膜中あるいはその後(好ましくは、成
膜後)にその薄膜から細孔形成性化合物を昇華せしめる
こと。
【0024】方法(A)及び(B)のような細孔形成性
化合物の溶解に依存する方法に有用な細孔形成性化合物
は、いろいろな化合物を包含することができる。例え
ば、使用する薄膜形成性ポリマーがシリコン含有ポリマ
ーであるような場合、シリコン化合物を使用することが
好ましい。具体的には、使用するシリコン含有ポリマー
が極性の低い官能基、例えばアルキル基、アルケニル
基、アリール基、ハロアルキル基、ハロアリール基等を
有するような場合には、シリコン化合物としては、極性
の高い官能基(例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、
フェノール基、アミノ基、アルコール基、シラノール基
等)を有する化合物を使用することが好ましい。また、
細孔形成性化合物のみを溶解し、薄膜形成性ポリマーが
溶解しない選択的溶解性を備えた溶媒で細孔形成性化合
物を選択的に溶解除去するような場合には、その溶媒と
して、11( cal-1cm-31/2 以上の溶解パラメータを
有する溶媒を使用することが好ましい。なお、このよう
な溶媒の使用は、特に、上記のように親水性の小さい薄
膜形成性ポリマーから親水性の大きな細孔形成性化合物
を溶解除去する際に顕著な効果を発揮することができ
る。具体的に説明すると、このような選択的溶解性を備
えた溶媒としては、特に以下に列挙するものに限定され
るわけではないけれども、アルコール類、ケトン類、エ
ーテル類、エステル類、酸類、アミン類、アミド類、ニ
トリル類、水、そしてそれらの混合物を挙げることがで
きる。
【0025】また、方法(A)及び(B)の場合では、
薄膜形成性ポリマーとしてシリコン含有ポリマー以外を
使用した組み合わせも実施可能である。例えば、薄膜形
成性ポリマーとしてポリスチレン、クロロメチル化ポリ
スチレン等を使用し、かつ細孔形成性化合物としてポリ
ビニルフェノール、ノボラック樹脂等を使用することも
できる。さらに、必要に応じて、シリコン含有ポリマー
と、上記のようなシリコンを含有しない樹脂との組み合
わせも使用することができる。
【0026】同様に、方法(C)及び(D)のような細
孔形成性化合物の揮発あるいは昇華に依存する方法に有
用な細孔形成性化合物も、いろいろな揮発性あるいは昇
華性化合物を包含することができる。このような方法の
実施においては、アダマンタン誘導体、セルロース誘導
体等の化合物を細孔形成性化合物として特に有利に使用
することができる。また、上記した方法の変形例とし
て、例えば、薄膜形成性ポリマーを溶解できる溶媒をそ
のまま細孔形成性化合物として使用して、薄膜形成性ポ
リマーが収縮しないような条件下で、細孔形成性化合物
としての溶媒を揮発させ、除去してもよい。
【0027】本発明の実施において、上記した2つの主
たる成分、すなわち、薄膜形成性ポリマー(第1の成
分)及び細孔形成性化合物(第2の成分)は、所望とす
る効果に応じて広い範囲の重量比で混合することができ
るというものの、好ましくは、薄膜形成性ポリマー/細
孔形成性化合物(以下「A/B比」と記す)で、1/1
00〜100/1の範囲であり、さらに好ましくは、1
/10〜10/1の範囲である。A/B比がこれらの範
囲よりも大きくなると、成膜性が低下するばかりでな
く、形成される細孔の体積が縮小し、低誘電率化の傾向
が低くなる。反対に、A/B比が上述の範囲よりも小さ
くなると、得られるポリマー薄膜の膜質が低下する。
【0028】本発明の多孔性ポリマー薄膜の成膜の際に
は、上記した2つの主たる成分に加えて、各種の添加剤
を任意に添加してもよい。適当な添加剤としては、例え
ば、無機又は有機のフィラー、例えばシリカ粉末、アル
ミナ粉末など、着色顔料、消泡剤、レベリング剤、酸化
防止剤などを挙げることができる。本発明の多孔性ポリ
マー薄膜の成膜は、上記したような成分を混合した後、
得られた混合物、一般的にはワニス状の塗布液、を処理
基板(以下、特に電子回路基板を参照して説明する)上
へ塗布することによって実施することができる。ワニス
状の塗布液は、好ましくは、上記したような成分を所定
の組成比で適当な溶媒に溶解することによって調製する
ことができる。ここで使用する溶媒は、上記したもので
あってもよく、さもなければ、以下に列挙するものに限
定されるわけではないけれども、例えば、エチレングリ
コールモノエーテル類、アセテート類、メチルイソブチ
ルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、N
−メチルピロリドン等の有機溶剤であってもよい。
【0029】次いで、得られた塗布液を、例えばスクリ
ーン印刷、カーテンコート、ロールコート、スピンコー
ト、ディップコート、スプレーコートなどの常用の塗布
法により電子回路基板上に塗布する。形成される塗膜の
厚さは、任意に変更可能であるけれども、最近の薄膜化
に対応して、通常、20μmもしくはそれ以下であり、
0.3〜1μm程度の極薄であってもよい。塗膜の形成
後、使用する薄膜形成性ポリマーの種類に応じて、放射
線照射、加熱あるいはその組み合わせを適用して、ポリ
マーの架橋及び硬化を行わせる。このようにして所望と
するポリマー薄膜の原型(細孔を有していない)が得ら
れる。
【0030】上記のようにして非多孔性のポリマー薄膜
を形成した後、電子回路基板のうちの、引き続いて上層
に形成される電子回路と接続されるべき部位(ビアホー
ル部分)を、例えば、通常のフォトリソグラフィとドラ
イエッチングによる加工や、レーザー加工等により形成
する。レーザー加工機としては、例えば、炭酸ガスレー
ザー、エキシマレーザー、YAGレーザーなどを用いた
装置を使用することができる。
【0031】電子回路基板にビアホールを形成した後、
非多孔性のポリマー薄膜中に含まれる細孔形成性化合物
を除去するための処理を実施する。この処理は、先にも
説明したように、使用する細孔形成性化合物と基本とな
る細孔形成メカニズムに応じて、適切な処理方法を採用
することができる。目的とする多孔性のポリマー薄膜
(絶縁膜)が得られる。
【0032】引き続いて、多孔性のポリマー絶縁膜の上
に配線パターンを形成する。配線パターンの形成は、常
法に従って行うことができる。例えば、絶縁膜の表面を
清浄にした後、無電解メッキ、電解メッキなどにより導
体(例えば、銅)の薄膜を形成し、さらにこれをパター
ニングする。また、アルミニウムをCVD法により、所
望の配線パターンで堆積することもできる。このように
して、所望とする導体パターン(配線パターン)が得ら
れる。
【0033】さらに、上記のようにして導体パターンを
形成した後、最初の塗布液の塗布から導体パターンの形
成までの一連の工程を所定の回数にわたって繰り返す
と、複数の配線パターンが積層されてなる多層回路基板
が得られる。この多層回路基板は、本発明の多孔性ポリ
マー薄膜からなる層間絶縁膜を備えたことにより、配線
遅延が少なく、高速動作が可能であるという特徴を有し
ている。
【0034】
【実施例】以下、本発明の実施例を詳細に説明する。例1 絶縁膜塗布液1の調製 次式(VI)により表される重量平均分子量12,000
のポリシルフェニレンシロキサン:
【0035】
【化7】 (上式において、Phはフェニル基を表し、そしてXは等
モルのジフェニルビニルシリル基及びトリビニルシリル
基を表す)を本発明者らの論文〔K.Watanabe
et al.,ACS Symposium Ser
ies,537,194(1994)〕に記載の手法に
従って調製した。
【0036】また、同じ論文に記載の手法にしたがっ
て、次式(VII )により表される重量平均分子量9,0
00のポリシルフェニレンシロキサン:
【0037】
【化8】 (上式において、Phはフェニル基を表し、そしてXは等
モルのジフェニルビニルシリル基及びトリビニルシリル
基を表す)も調製した。
【0038】得られたポリマーをそれらの重量比が1:
1となるようにメチルイソブチルケトンに溶解し、さら
にポアサイズ0.1μmのメンブランフィルタで濾過し
た。絶縁膜塗布用の溶液(以下、「絶縁膜塗布液1」と
記す)が得られた。例2 絶縁膜塗布液2の調製 前記例1で調製した前式(VI)のポリシルフェニレンシ
ロキサン及び市販の酢酸セルロースをそれらの重量比が
1:1となるようにメチルイソブチルケトンに溶解し、
さらにポアサイズ0.1μmのメンブランフィルタで濾
過した。絶縁膜塗布用の溶液(以下、「絶縁膜塗布液
2」と記す)が得られた。例3 絶縁膜塗布液3の調製 前記例1で調製した前式(VI)のポリシルフェニレンシ
ロキサン及び市販の1−アダマンタノンをそれらの重量
比が3:1となるようにメチルイソブチルケトンに溶解
し、さらにポアサイズ0.1μmのメンブランフィルタ
で濾過した。絶縁膜塗布用の溶液(以下、「絶縁膜塗布
液3」と記す)が得られた。例4 絶縁膜塗布液4の調製 前記例1で調製した前式(VI)のポリシルフェニレンシ
ロキサンをγ−ブチロラクトンに溶解し、さらにポアサ
イズ0.1μmのメンブランフィルタで濾過した。絶縁
膜塗布用の溶液(以下、「絶縁膜塗布液4」と記す)が
得られた。例5 多孔性絶縁膜の形成 前記例1で調製した絶縁膜塗布液1をシリコン基板上に
膜厚1μmでスピンコートし、110℃で1分間にわた
ってプリベークした。その後、シリコン基板上のポリマ
ー塗膜に対して低圧水銀ランプによる放射線露光(露光
量=5J/cm2)を行い、塗膜中の前式(VI)のポリシ
ルフェニレンシロキサンを架橋させた。引き続いて、硬
化後のポリマー薄膜を2.38%テトラメチルアンモニ
ウムヒドロキシド水溶液で洗浄し、前式(VII )のポリ
シルフェニレンシロキサンのみを溶解除去した。その
後、窒素雰囲気中で400℃で30分間の熱処理を行っ
た。微細な細孔を有するポリマー薄膜が得られた。
【0039】得られたポリマー薄膜の細孔を走査型電子
顕微鏡(SEM)により観察したところ、約500Å以
下の孔径を有することが確認された。また、このポリマ
ー薄膜の誘電率を測定したところ、1.9であった。例6 多孔性絶縁膜の形成 前記例2で調製した絶縁膜塗布液2をシリコン基板上に
膜厚1μmでスピンコートし、110℃で1分間にわた
ってプリベークした。その後、シリコン基板上のポリマ
ー塗膜に対して低圧水銀ランプによる放射線露光(露光
量=5J/cm2)を行い、塗膜中の前式(VI)のポリシ
ルフェニレンシロキサンを架橋させた。引き続いて、硬
化後のポリマー薄膜をアセトニトリルで洗浄し、酢酸セ
ルロースのみを溶解除去した。その後、窒素雰囲気中で
400℃で30分間の熱処理を行った。微細な細孔を有
するポリマー薄膜が得られた。
【0040】得られたポリマー薄膜の細孔を走査型電子
顕微鏡(SEM)により観察したところ、約500Å以
下の孔径を有することが確認された。また、このポリマ
ー薄膜の誘電率を測定したところ、2.1であった。例7 多孔性絶縁膜の形成 前記例3で調製した絶縁膜塗布液3をシリコン基板上に
膜厚1μmでスピンコートし、110℃で1分間にわた
ってプリベークした。その後、シリコン基板上のポリマ
ー塗膜に対して低圧水銀ランプによる放射線露光(露光
量=5J/cm2)を行い、塗膜中の前式(VI)のポリシ
ルフェニレンシロキサンを架橋させた。引き続いて、硬
化後のポリマー薄膜を窒素雰囲気中で400℃で30分
間の熱処理を行った。ポリマー薄膜中の1−アダマンタ
ノンが昇華した結果、微細な細孔を有するポリマー薄膜
が得られた。
【0041】得られたポリマー薄膜の細孔を走査型電子
顕微鏡(SEM)により観察したところ、約300Å以
下の孔径を有することが確認された。また、このポリマ
ー薄膜の誘電率を測定したところ、2.2であった。例8 多孔性絶縁膜の形成 前記例4で調製した絶縁膜塗布液4をシリコン基板上に
膜厚1μmでスピンコートした。その後、シリコン基板
上のポリマー塗膜に対して低圧水銀ランプによる放射線
露光(露光量=5J/cm2 )を行い、塗膜中の前式(V
I)のポリシルフェニレンシロキサンを架橋させた。引
き続いて、硬化後のポリマー薄膜を窒素雰囲気中に配置
し、徐々に温度を高めて、最後に400℃で30分間の
熱処理を行った。ポリマー薄膜中のγ−ブチロラクトン
が蒸発した結果、微細な細孔を有するポリマー薄膜が得
られた。
【0042】得られたポリマー薄膜の細孔を走査型電子
顕微鏡(SEM)により観察したところ、約200Å以
下の孔径を有することが確認された。また、このポリマ
ー薄膜の誘電率を測定したところ、2.0であった。例9 半導体装置の製造 図1(A)に示したように、シリコン基板1の表面にC
VD法により膜厚0.6μmのアルミニウム配線(下層
配線パターン)2を施した後、前記例5に記載の手法に
従って多孔性絶縁膜3を膜厚1.0μmで形成した。次
いで、図1(B)に示したように、従来法レジストを用
いた工程によって、スルーホール4を形成した。引き続
いて、図1(C)に示したように、スルーホール4をア
ルミニウムで埋め込むとともに、図1(A)と同様な工
程で、絶縁膜3の上にCVD法により膜厚0.6μmの
アルミニウム配線(上層配線パターン)5を施した。な
お、本例の場合、ビアの黒ずみや導通不良などの不都合
はまったく観察されなかった。
【0043】比較のため、本発明によるポリマー絶縁膜
に代えて、融着型テフロンTM(W.L.Gore社製)
を使用して、上記の半導体装置の製造を行ったところ、
絶縁膜の上にレジストを施した時にレジストパターンに
剥がれが生じ、スルーホールへのアルミニウムの埋め込
みを行うことができなかった。例10 半導体装置の製造 図2(A)に示したように、シリコン基板1の表面にC
VD法により膜厚0.6μmのアルミニウム配線(下層
配線パターン)2を施した後、前記例5に記載の手法に
従って多孔性絶縁膜3を膜厚1.0μmで形成した。次
いで、図2(B)に示したように、絶縁膜3の上にCV
D法により膜厚1.5μmのシリコン酸化膜6を形成
し、さらに表面研磨を行った。平らな表面を有するシリ
コン酸化膜6を形成した後、図2(C)に示したよう
に、従来法レジストを用いた工程によってスルーホール
4を形成した。引き続いて、図2(D)に示したよう
に、スルーホール4をアルミニウムで埋め込むととも
に、図2(A)と同様な工程で、シリコン酸化膜6の上
にCVD法により膜厚0.6μmのアルミニウム配線
(上層配線パターン)5を施した。なお、本例の場合、
ビアの黒ずみや導通不良などの不都合はまったく観察さ
れなかった。例11 半導体装置の比較 前記例10に記載の手法に従って作製した本発明例の半
導体装置(MOSデバイス)と、同様な構成を有するけ
れども、本発明の層間絶縁膜の代わりにSiO 2 絶縁膜
を有する比較用の半導体装置(MOSデバイス)とを、
配線遅延の程度に関して比較した。評価の基準には、リ
ングオシュレータの発信周波数から換算し求めた信号遅
延時間を採用した。比較試験の結果、前記例10の半導
体装置では、配線遅延が少なく、約20%の速度の向上
があることが確認された。
【0044】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれ
ば、高絶縁性、高耐熱性、低誘電率、高密着性、簡便な
製造プロセス、均一な膜質、そして安定性という絶縁膜
に課されている要求特性のすべてを同時に満足させるこ
とのできる多孔性ポリマー薄膜が提供される。また、本
発明によれば、このような優れたポリマー薄膜を絶縁膜
として使用した半導体装置が提供される。特に、本発明
によれば、本発明のポリマー薄膜を層間絶縁膜として使
用することで、配線遅延の少ない高速動作の多層回路基
板の形成が可能となる。さらに、本発明の多孔性ポリマ
ー薄膜は、絶縁膜として半導体装置以外の各種の装置に
おいても利用することができ、また、場合によっては、
その優れた特性を利用して、絶縁膜以外の使途でもって
各種の装置で利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】例9に記載の本発明による半導体装置の製造方
法を順を追って示した断面図である。
【図2】例10に記載の本発明による半導体装置の製造
方法を順を追って示した断面図である。
【符号の説明】
1…シリコン基板 2…アルミニウム配線(下層配線パターン) 3…絶縁膜 4…スルーホール 5…アルミニウム配線(上層配線パターン) 6…シリコン酸化膜
フロントページの続き (72)発明者 矢野 映 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1番 1号 富士通株式会社内 (72)発明者 中田 義弘 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1番 1号 富士通株式会社内 (72)発明者 福山 俊一 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1番 1号 富士通株式会社内 Fターム(参考) 4F074 AA90 AB01 BA72 BA75 BA82 CB03 CB06 CB16 CB17 DA03 DA14 DA23 DA47 5F058 AA08 AA10 AC03 AF04 AG01 AH02 5H021 BB13 EE02 EE20 EE30 EE37 HH00

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔性のポリマー薄膜であって、5,0
    00以上の重量平均分子量を有しかつその構造中に親水
    性基を有しない薄膜形成性ポリマーから形成されたもの
    でありかつ前記ポリマー薄膜中に孔径5〜5,000Å
    の微細な細孔が分散せしめられており、そして前記細孔
    が、前記薄膜形成性ポリマーと分子レベルで均一に混合
    可能でありかつ前記ポリマー薄膜の成膜中にその薄膜か
    ら分離及び除去された細孔形成性化合物に由来している
    ことを特徴とする多孔性ポリマー薄膜。
  2. 【請求項2】 前記薄膜形成性ポリマーがシリコン含有
    ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の多孔
    性ポリマー薄膜。
  3. 【請求項3】 前記シリコン含有ポリマーが、その構造
    中にシラノール基及びアルコキシ基を有しないオルガノ
    シリコーンポリマーであることを特徴とする請求項2に
    記載の多孔性ポリマー薄膜。
  4. 【請求項4】 前記オルガノシリコーンポリマーが、次
    式(I)により表されるポリマー: 【化1】 (上式において、 R1は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、2
    価の有機基を表し、 Xは、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、1
    価の有機基を表すかもしくは有機基で置換されたトリオ
    ルガノシリル基を表し、そしてm及びnは、それぞれ、
    10〜100,000の整数を表す)であることを特徴
    とする請求項3に記載の多孔性ポリマー薄膜。
  5. 【請求項5】 前記細孔形成性化合物が、前記薄膜形成
    性ポリマーが溶解しない溶媒に可溶性な化合物であり、
    そして前記細孔が、前記ポリマー薄膜の成膜後にその薄
    膜から前記細孔形成性化合物を前記溶媒により溶解及び
    除去することによって形成されたものであることを特徴
    とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多孔性ポリ
    マー薄膜。
  6. 【請求項6】 前記細孔形成性化合物が、その分子中に
    親水性基を有する化合物であり、そして前記細孔が、前
    記ポリマー薄膜の成膜後にその薄膜から前記細孔形成性
    化合物を、11( cal-1cm-31/2 以上の溶解パラメー
    タを有する溶媒により溶解及び除去することによって形
    成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のい
    ずれか1項に記載の多孔性ポリマー薄膜。
  7. 【請求項7】 前記細孔形成性化合物が揮発性化合物又
    は昇華性化合物であり、そして前記細孔が、前記ポリマ
    ー薄膜の成膜中あるいはその後にその薄膜から前記細孔
    形成性化合物を揮発又は昇華せしめることによって形成
    されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいず
    れか1項に記載の多孔性ポリマー薄膜。
  8. 【請求項8】 多孔性のポリマー薄膜であって、5,0
    00以上の重量平均分子量を有しかつその構造中に親水
    性基を有しない薄膜形成性ポリマーから形成されたもの
    でありかつ前記ポリマー薄膜中に孔径5〜5,000Å
    の微細な細孔が分散せしめられており、そして前記細孔
    が、前記薄膜形成性ポリマーと分子レベルで均一に混合
    可能でありかつ前記ポリマー薄膜の成膜中にその薄膜か
    ら分離及び除去された細孔形成性化合物に由来している
    多孔性ポリマー薄膜を含んでなる絶縁膜を有することを
    特徴とする半導体装置。
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