JP2000178720A - 固体潤滑膜付き部材 - Google Patents
固体潤滑膜付き部材Info
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- JP2000178720A JP2000178720A JP35409098A JP35409098A JP2000178720A JP 2000178720 A JP2000178720 A JP 2000178720A JP 35409098 A JP35409098 A JP 35409098A JP 35409098 A JP35409098 A JP 35409098A JP 2000178720 A JP2000178720 A JP 2000178720A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 安価な固体潤滑膜を用いても固体潤滑膜と部
材との密着力が低下せず、長時間にわたって低摩擦係数
が得られ、しかも高い耐摩耗性が保持できる固体潤滑膜
付き部材を提供する。 【解決手段】 内径0.1〜3μmの微細な孔を多数有
する硬質膜の第1層と、固体潤滑膜の第2層が形成され
た固体潤滑膜付き部材。第2層形成前の第1層の表面粗
さRmaxを1μm以下とし、第2層の固体潤滑膜に
は、イオンプレーテイング法、スパッタリング法、また
は、ショットピーニング法でMoS2膜、WS2膜、Nb
S2膜、雲母膜、Sb2O3膜、BN膜、WSe膜、Mo
Se2膜、Au膜、または、Ag膜などを形成する。
材との密着力が低下せず、長時間にわたって低摩擦係数
が得られ、しかも高い耐摩耗性が保持できる固体潤滑膜
付き部材を提供する。 【解決手段】 内径0.1〜3μmの微細な孔を多数有
する硬質膜の第1層と、固体潤滑膜の第2層が形成され
た固体潤滑膜付き部材。第2層形成前の第1層の表面粗
さRmaxを1μm以下とし、第2層の固体潤滑膜に
は、イオンプレーテイング法、スパッタリング法、また
は、ショットピーニング法でMoS2膜、WS2膜、Nb
S2膜、雲母膜、Sb2O3膜、BN膜、WSe膜、Mo
Se2膜、Au膜、または、Ag膜などを形成する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、潤滑性及び耐摩耗
性に優れた固体潤滑膜付き部材に関し、より詳しくは、
摺動摩耗部品や工具などの機械部品用途として有用な、
低摩擦係数で耐摩耗性を向上した固体潤滑膜付き部材に
関する。
性に優れた固体潤滑膜付き部材に関し、より詳しくは、
摺動摩耗部品や工具などの機械部品用途として有用な、
低摩擦係数で耐摩耗性を向上した固体潤滑膜付き部材に
関する。
【0002】
【従来の技術】工具や機械部品の摩擦係数を低減して耐
摩耗特性を向上させる手段として、部材表面に固体潤滑
膜を形成する方法が知られている。例えば、機械部品表
面に油を塗布したり、潤滑微粒子を分散させたフィルム
やオイルで覆ったり、スパッタリング法でMoS2膜等
どを形成したりする。
摩耗特性を向上させる手段として、部材表面に固体潤滑
膜を形成する方法が知られている。例えば、機械部品表
面に油を塗布したり、潤滑微粒子を分散させたフィルム
やオイルで覆ったり、スパッタリング法でMoS2膜等
どを形成したりする。
【0003】しかしこれら従来の方法では、固体潤滑膜
が部材と拡散層を形成せず、部材と固体潤滑膜との密着
力が弱かった。また、膜自体は耐摩耗性を有しないの
で、長時間使用していると膜が摩耗し、部材表面から剥
離、摩耗して失われてしまうという欠点があった。
が部材と拡散層を形成せず、部材と固体潤滑膜との密着
力が弱かった。また、膜自体は耐摩耗性を有しないの
で、長時間使用していると膜が摩耗し、部材表面から剥
離、摩耗して失われてしまうという欠点があった。
【0004】また、MoS2などの固体潤滑膜は一般に
密着力が弱くて吸湿性が高いので、膜自身が水分を吸着
して粘性をもち、部材からすぐに剥離してしまいやすか
った。
密着力が弱くて吸湿性が高いので、膜自身が水分を吸着
して粘性をもち、部材からすぐに剥離してしまいやすか
った。
【0005】更に、高速回転するポンプの軸や軸受けな
どでは特に高い耐摩耗性と高い潤滑性(低摩擦係数)が
必要であり、さらに水中、熱水中で使用されるものは固
体潤滑膜のより高い密着力を必要とする。このため上記
従来の固体潤滑膜では特性が不十分であり、これまでは
高価なセラミックス材や溶射材などを使用せざるを得な
かった。
どでは特に高い耐摩耗性と高い潤滑性(低摩擦係数)が
必要であり、さらに水中、熱水中で使用されるものは固
体潤滑膜のより高い密着力を必要とする。このため上記
従来の固体潤滑膜では特性が不十分であり、これまでは
高価なセラミックス材や溶射材などを使用せざるを得な
かった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、安価
な固体潤滑膜を用いても固体潤滑膜と部材との密着力が
低下せず、長時間にわたって低摩擦係数が得られ、しか
も高い耐摩耗性が保持できる固体潤滑膜付き部材を提供
することを目的とする。
な固体潤滑膜を用いても固体潤滑膜と部材との密着力が
低下せず、長時間にわたって低摩擦係数が得られ、しか
も高い耐摩耗性が保持できる固体潤滑膜付き部材を提供
することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を解決するため
の本発明の固体潤滑膜付き部材は、内径0.1〜3μm
の微細な孔を多数有する硬質膜の第1層と、固体潤滑膜
の第2層が形成されたことを特徴とする。
の本発明の固体潤滑膜付き部材は、内径0.1〜3μm
の微細な孔を多数有する硬質膜の第1層と、固体潤滑膜
の第2層が形成されたことを特徴とする。
【0008】本発明の固体潤滑膜付き部材では、第2層
を形成する前の第1層の表面粗さRmaxが1μm以下
であることが望ましい。
を形成する前の第1層の表面粗さRmaxが1μm以下
であることが望ましい。
【0009】第1層の硬質膜は、カソードアークイオン
プレーティング法による窒化物膜、炭窒化物膜、また
は、炭化物膜であることが好ましい。カソードアークイ
オンプレーティング法では、バイアス電圧を−500〜
−1500Vとするとよい。
プレーティング法による窒化物膜、炭窒化物膜、また
は、炭化物膜であることが好ましい。カソードアークイ
オンプレーティング法では、バイアス電圧を−500〜
−1500Vとするとよい。
【0010】第2層の固体潤滑膜は、イオンプレーテイ
ング法、スパッタリング法、または、ショットピーニン
グ法で形成されたMoS2膜、WS2膜、NbS2膜、雲
母膜、Sb2O3膜、BN膜、WSe膜、MoSe2膜、
Au膜、または、Ag膜であることが好ましい。イオン
プレーテイング法、スパッタリング法、または、ショッ
トピーニング法では、バイアス電圧を−500〜−15
00Vとするとよい。
ング法、スパッタリング法、または、ショットピーニン
グ法で形成されたMoS2膜、WS2膜、NbS2膜、雲
母膜、Sb2O3膜、BN膜、WSe膜、MoSe2膜、
Au膜、または、Ag膜であることが好ましい。イオン
プレーテイング法、スパッタリング法、または、ショッ
トピーニング法では、バイアス電圧を−500〜−15
00Vとするとよい。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の固体潤滑膜付き部材の部
材には、従来から摺動摩耗部品や工具などの機械部品用
途に従来から用いられているものが適用できる。例え
ば、切削工具、金型用のSKD鋼、SKH鋼、SKS
鋼、機械構造用のSC鋼などである。
材には、従来から摺動摩耗部品や工具などの機械部品用
途に従来から用いられているものが適用できる。例え
ば、切削工具、金型用のSKD鋼、SKH鋼、SKS
鋼、機械構造用のSC鋼などである。
【0012】部材表面には、第1層として内径0.1〜
3μmの微細な孔を多数有する硬質膜を形成するが、こ
れは硬質膜と固体潤滑膜との密着性を向上させることを
目的として形成するものである。
3μmの微細な孔を多数有する硬質膜を形成するが、こ
れは硬質膜と固体潤滑膜との密着性を向上させることを
目的として形成するものである。
【0013】硬質膜表面に0.1〜3μmの微細な孔
(凹み)を多数形成すれば、その凹みを核として固体潤
滑膜が付着し、アンカー効果によって密着力が向上する
のである。また、固体潤滑膜が摩耗されても、凹みに堆
積している固体潤滑膜が相手材と接触し、掘り起こさ
れ、染み出すことにより、部材表面の固体潤滑性が長時
間保たれることにもなる。
(凹み)を多数形成すれば、その凹みを核として固体潤
滑膜が付着し、アンカー効果によって密着力が向上する
のである。また、固体潤滑膜が摩耗されても、凹みに堆
積している固体潤滑膜が相手材と接触し、掘り起こさ
れ、染み出すことにより、部材表面の固体潤滑性が長時
間保たれることにもなる。
【0014】微細な孔の内径を0.1〜3μmとするの
は、この範囲の内径とすることで固体潤滑膜が孔に入り
込み、表面から容易に除去されないからである。また、
この微細な孔は、膜厚が5μmで面積当たり0.01
%、10〜20μmで0.001%程度の存在量が好ま
しい。
は、この範囲の内径とすることで固体潤滑膜が孔に入り
込み、表面から容易に除去されないからである。また、
この微細な孔は、膜厚が5μmで面積当たり0.01
%、10〜20μmで0.001%程度の存在量が好ま
しい。
【0015】硬質膜は、望ましくは窒化物、炭窒化物、
または、炭化物からなるもので、具体的にはCrN、T
iN、TiCN、TiAlNなどを用いることができ、
このような材質とすることで、耐摩耗性と低摩擦係数が
得られる。硬質膜は、例えばカソードアーク式イオンプ
レーティング法で形成することができる。
または、炭化物からなるもので、具体的にはCrN、T
iN、TiCN、TiAlNなどを用いることができ、
このような材質とすることで、耐摩耗性と低摩擦係数が
得られる。硬質膜は、例えばカソードアーク式イオンプ
レーティング法で形成することができる。
【0016】このカソードアーク式イオンプレーティン
グ法は、蒸発源である金属ターゲットを陰極とし、チャ
ンバーを陽極として、これらの間にアーク放電を起こし
て金属蒸気をイオン化させ、一方で反応ガスをイオンと
の衝突によりイオン化し、金属イオンと反応ガスイオン
とで生成した化合物を部材表面に積層させて膜を形成す
るものである。例えば窒化膜を形成する場合は、チャン
バー内に窒素原子を含む反応ガスを導入すればよい。
グ法は、蒸発源である金属ターゲットを陰極とし、チャ
ンバーを陽極として、これらの間にアーク放電を起こし
て金属蒸気をイオン化させ、一方で反応ガスをイオンと
の衝突によりイオン化し、金属イオンと反応ガスイオン
とで生成した化合物を部材表面に積層させて膜を形成す
るものである。例えば窒化膜を形成する場合は、チャン
バー内に窒素原子を含む反応ガスを導入すればよい。
【0017】カソードアーク式イオンプレーティング法
は、金属のイオン化率が高く、複数の蒸発源をチャンバ
ー内の上下左右に設置できるので、複合膜や、大型形状
や複雑形状の部材に均一な厚さの膜が形成でき、これら
部材の硬質膜形成に向いている。膜形成前に、ターゲッ
トと部材間にかけるバイアス電圧を−500〜−150
0Vとすると、金属が部材に付着し、最大粗さ5μmの
凹凸となる。この上に窒化膜等の硬質膜を成膜すれば、
内径0.1〜3μmの多数の孔が形成できる。
は、金属のイオン化率が高く、複数の蒸発源をチャンバ
ー内の上下左右に設置できるので、複合膜や、大型形状
や複雑形状の部材に均一な厚さの膜が形成でき、これら
部材の硬質膜形成に向いている。膜形成前に、ターゲッ
トと部材間にかけるバイアス電圧を−500〜−150
0Vとすると、金属が部材に付着し、最大粗さ5μmの
凹凸となる。この上に窒化膜等の硬質膜を成膜すれば、
内径0.1〜3μmの多数の孔が形成できる。
【0018】バイアス電圧を−500V未満と低くする
と、孔の数が減少し、本発明の効果が少なくなる。一
方、バイアス電圧を−1500Vを超えて高くすると、
孔の数は増加するが、部材の表面粗さも増加し、製品と
しての寸法精度が落ちてくる。
と、孔の数が減少し、本発明の効果が少なくなる。一
方、バイアス電圧を−1500Vを超えて高くすると、
孔の数は増加するが、部材の表面粗さも増加し、製品と
しての寸法精度が落ちてくる。
【0019】第2層には固体潤滑膜を第1層の上に形成
する。固体潤滑膜の材料には、硫化物のMoS2、W
S2、NbS2、酸化物の雲母、Sb2O3、窒化物のB
N、セレン化物のWSe、MoSe2、金属のAu、A
gなどが挙げられる。この固体潤滑膜は、例えばイオン
プレーティング法、スパッタリング法、ショットピーニ
ング法などで形成すればよい。
する。固体潤滑膜の材料には、硫化物のMoS2、W
S2、NbS2、酸化物の雲母、Sb2O3、窒化物のB
N、セレン化物のWSe、MoSe2、金属のAu、A
gなどが挙げられる。この固体潤滑膜は、例えばイオン
プレーティング法、スパッタリング法、ショットピーニ
ング法などで形成すればよい。
【0020】第2層を形成する前の第1層の表面粗さR
maxは、表面研磨処理等により、望ましくは1μm以
下とする。これにより、「ドロップレット」といわれる
硬質膜表面に形成される溶融金属を除去、減少でき、硬
質膜と固体潤滑膜との接触面積が増えて密着力が向上す
るからである。また、ドロップレットが膜から剥離して
固体潤滑膜を削ってしまうことも防げる。表面研磨処理
としては、ダイヤモンドペーパー研磨、平面研削機、バ
フ研磨等が利用できる。
maxは、表面研磨処理等により、望ましくは1μm以
下とする。これにより、「ドロップレット」といわれる
硬質膜表面に形成される溶融金属を除去、減少でき、硬
質膜と固体潤滑膜との接触面積が増えて密着力が向上す
るからである。また、ドロップレットが膜から剥離して
固体潤滑膜を削ってしまうことも防げる。表面研磨処理
としては、ダイヤモンドペーパー研磨、平面研削機、バ
フ研磨等が利用できる。
【0021】固体潤滑膜は、硬質膜に形成された孔の内
部に入り込み、部材と固体潤滑膜の密着力をアンカー効
果により機械的に結合する。この結合力は、従来方法よ
り強くなる。
部に入り込み、部材と固体潤滑膜の密着力をアンカー効
果により機械的に結合する。この結合力は、従来方法よ
り強くなる。
【0022】スパッタリング法で固体潤滑膜を形成場合
は更に、直流(DC)スパッタリングや、高周波(R
F)スパッタリング法を用いることができる。放電ガス
にはNe、Ar、Kr等の不活性ガスが利用できるが、
取り扱いが容易であるArガスが好ましい。例えば放電
ガス圧を1〜4Paに設定すれば、緻密で密着力が高い
固体潤滑膜が形成される。ターゲットに対する放電電力
は、ターゲット当たり100〜500Wとすればよい。
は更に、直流(DC)スパッタリングや、高周波(R
F)スパッタリング法を用いることができる。放電ガス
にはNe、Ar、Kr等の不活性ガスが利用できるが、
取り扱いが容易であるArガスが好ましい。例えば放電
ガス圧を1〜4Paに設定すれば、緻密で密着力が高い
固体潤滑膜が形成される。ターゲットに対する放電電力
は、ターゲット当たり100〜500Wとすればよい。
【0023】固体潤滑膜の膜厚は、0.1〜4μmとす
ることが望ましい。0.1μm未満では十分な潤滑性は
得られず、4μmを超えると膜のせん断が起こりやすく
なり、膜中に多くのAr分子を含有するので潤滑特性も
劣化してくるからである。
ることが望ましい。0.1μm未満では十分な潤滑性は
得られず、4μmを超えると膜のせん断が起こりやすく
なり、膜中に多くのAr分子を含有するので潤滑特性も
劣化してくるからである。
【0024】ショットピーニング法で固体潤滑膜を形成
する場合は、固体潤滑剤粉末と合成樹脂粒子とを一定割
合で混合した混合体を、乾式ブラスト装置により部材表
面に噴射すればよい。固体潤滑剤粉末は部材表面に衝突
して付着し、樹脂粒子は表面に衝突すると同時に反発し
て気体流とともに飛び去る。このとき樹脂粒子は、表面
に付着した固体潤滑粉体を打ち込みかつ擦り込み、表面
との密着性の良い固体潤滑膜が形成される。なお、ショ
ットピーニング法においては固体潤滑膜の厚膜を形成し
にくいので、厚さ1μm以下が適当である。
する場合は、固体潤滑剤粉末と合成樹脂粒子とを一定割
合で混合した混合体を、乾式ブラスト装置により部材表
面に噴射すればよい。固体潤滑剤粉末は部材表面に衝突
して付着し、樹脂粒子は表面に衝突すると同時に反発し
て気体流とともに飛び去る。このとき樹脂粒子は、表面
に付着した固体潤滑粉体を打ち込みかつ擦り込み、表面
との密着性の良い固体潤滑膜が形成される。なお、ショ
ットピーニング法においては固体潤滑膜の厚膜を形成し
にくいので、厚さ1μm以下が適当である。
【0025】
【実施例】実施例1 ・・・ 厚さ2mm、20mm角
の工具鋼(SKH51)を部材とし、マルチアーク社製
カソードアーク式イオンプレーティング装置を用いて第
1層の膜を形成した。ターゲットにはCr金属を用い
た。部材をエタノール中で超音波洗浄した後、真空チャ
ンバー内にセットし、チャンバー内を2×10-5Tor
r以下まで排気した。ターゲットと部材間に−1000
Vのバイアス電圧を印加し、Cr金属のメタルボンバー
ドで部材表面を洗浄し、加熱してCrイオンの打ち込み
を行い、部材温度を450℃にした。
の工具鋼(SKH51)を部材とし、マルチアーク社製
カソードアーク式イオンプレーティング装置を用いて第
1層の膜を形成した。ターゲットにはCr金属を用い
た。部材をエタノール中で超音波洗浄した後、真空チャ
ンバー内にセットし、チャンバー内を2×10-5Tor
r以下まで排気した。ターゲットと部材間に−1000
Vのバイアス電圧を印加し、Cr金属のメタルボンバー
ドで部材表面を洗浄し、加熱してCrイオンの打ち込み
を行い、部材温度を450℃にした。
【0026】次に、チャンバー内にN2ガスを50mT
orrまで導入し、バイアス電圧−300VでCrN膜
を10μm形成し第1層とした。
orrまで導入し、バイアス電圧−300VでCrN膜
を10μm形成し第1層とした。
【0027】形成したCrN膜の表面を観察すると、1
mm2当たり、内径0.2〜3μmの孔が100〜20
0個形成されていた。
mm2当たり、内径0.2〜3μmの孔が100〜20
0個形成されていた。
【0028】続いて、RFマグネトロンスパッタリング
装置(日電アネルバ株式会社製、SPF530H)を用
いて、第2層の潤滑剤膜を形成した。装置内の所定位置
に、直径5インチの円盤型二硫化モリブデン(Mo
S2)ターゲットをセットし、チャンバー内の真空度が
5×10-4 Paになるまで真空引きし、Arガスを
0.4Paまで導入した。放電電力は300W(2.3
7W/cm2)投入し、MoS2をArガス雰囲気で1.
2μm形成して第2層とした。
装置(日電アネルバ株式会社製、SPF530H)を用
いて、第2層の潤滑剤膜を形成した。装置内の所定位置
に、直径5インチの円盤型二硫化モリブデン(Mo
S2)ターゲットをセットし、チャンバー内の真空度が
5×10-4 Paになるまで真空引きし、Arガスを
0.4Paまで導入した。放電電力は300W(2.3
7W/cm2)投入し、MoS2をArガス雰囲気で1.
2μm形成して第2層とした。
【0029】得られた固体潤滑膜付き部材を、直径6m
mのSUS440C製のボールを用い、荷重10N、周
速度0.5m/secとした直径12mmのボールオン
ディスク試験で、MoS2が無くなる回数を耐久摩擦回
数として評価した。耐久摩擦回数は450×102回
で、摩擦係数は0.1であった。また、ビッカース硬度
は1800HVであった。また、密着力を、部材表面に
カッターナイフを用いて間隔1mm、長さ約10mmの
傷を格子状に形成し、その部分に粘着テープを貼付し、
これを一気に剥がして膜の剥離を観察したところ、剥離
は一切見られなかった。
mのSUS440C製のボールを用い、荷重10N、周
速度0.5m/secとした直径12mmのボールオン
ディスク試験で、MoS2が無くなる回数を耐久摩擦回
数として評価した。耐久摩擦回数は450×102回
で、摩擦係数は0.1であった。また、ビッカース硬度
は1800HVであった。また、密着力を、部材表面に
カッターナイフを用いて間隔1mm、長さ約10mmの
傷を格子状に形成し、その部分に粘着テープを貼付し、
これを一気に剥がして膜の剥離を観察したところ、剥離
は一切見られなかった。
【0030】従来例1 ・・・ 実施例1と同じ部材
に、電子ビーム式イオンプレーティング装置を用いて孔
を形成せずに実施例1と同厚みの第1層を形成し、実施
例1と同様にしてMoS2の第2層を形成した。実施例
1と同様に評価したところ、耐久摩擦回数は270×1
02回で、摩擦係数は0.15であった。また、ビッカ
ース硬度は900HVであった。実施例1と同様の密着
力評価では、膜の約50%が剥離した。
に、電子ビーム式イオンプレーティング装置を用いて孔
を形成せずに実施例1と同厚みの第1層を形成し、実施
例1と同様にしてMoS2の第2層を形成した。実施例
1と同様に評価したところ、耐久摩擦回数は270×1
02回で、摩擦係数は0.15であった。また、ビッカ
ース硬度は900HVであった。実施例1と同様の密着
力評価では、膜の約50%が剥離した。
【0031】実施例2 ・・・ 厚さ2mm、20mm
角のステンレス鋼(SUS304)を部材とし、CrN
膜を20μmとした以外は実施例1と同様にして第1層
の膜を形成した。形成したCrN膜の表面を観察する
と、1mm2当たり、内径0.2〜2μmの孔が100
〜200個形成されていた。
角のステンレス鋼(SUS304)を部材とし、CrN
膜を20μmとした以外は実施例1と同様にして第1層
の膜を形成した。形成したCrN膜の表面を観察する
と、1mm2当たり、内径0.2〜2μmの孔が100
〜200個形成されていた。
【0032】この部材表面をバフ研磨して、表面粗さR
maxを0.08μmにした。この研磨した部材に、M
oS2粉末740gと50μmの樹脂ビーズ320gと
の混合粉を、噴射エアーガンと部材との距離を100m
m、噴射エアー圧を3kgf/cm2にして吹き付け、シ
ョットピーニング法によりMoS2膜からなる第2層膜
を形成した。第2層の膜厚は1μmであった。
maxを0.08μmにした。この研磨した部材に、M
oS2粉末740gと50μmの樹脂ビーズ320gと
の混合粉を、噴射エアーガンと部材との距離を100m
m、噴射エアー圧を3kgf/cm2にして吹き付け、シ
ョットピーニング法によりMoS2膜からなる第2層膜
を形成した。第2層の膜厚は1μmであった。
【0033】実施例1と同様の密着力評価では、膜の隔
離は一切見られなかった。
離は一切見られなかった。
【0034】また、荷重200kgf、回転速度50r
pmのファレックス試験では、回転開始から1000秒
経過してもトルク値はほとんどかわらず、固体潤滑膜も
剥離しなかった。
pmのファレックス試験では、回転開始から1000秒
経過してもトルク値はほとんどかわらず、固体潤滑膜も
剥離しなかった。
【0035】従来例1の部材を同様にファレックス試験
で評価したところ、回転開始後MoS2粉末が飛び散
り、800秒経過後からトルク値が徐々に増加した。
で評価したところ、回転開始後MoS2粉末が飛び散
り、800秒経過後からトルク値が徐々に増加した。
【0036】実施例3 ・・・ 実施例1と同様に第1
層としてCrN膜を10μm形成し、表面に発生してい
るドロップレットをバフ研磨で取り去って評価した。バ
フ研磨前の表面粗さRaは0.08μm、バフ研磨後は
0.03μmであった。
層としてCrN膜を10μm形成し、表面に発生してい
るドロップレットをバフ研磨で取り去って評価した。バ
フ研磨前の表面粗さRaは0.08μm、バフ研磨後は
0.03μmであった。
【0037】その上に、神港精機製ピアス式イオンプレ
ーティング装置により、Ag膜からなる固体潤滑膜を形
成した。銅−モリブデン製ルツボに台形型のAgインゴ
ットを入れ、電子ビーム出力10kW、40mV、イオ
ン化電流50mV、20A、バイアス電圧−200Vの
条件で30秒成膜し、Ag膜を0.5μm形成した。
ーティング装置により、Ag膜からなる固体潤滑膜を形
成した。銅−モリブデン製ルツボに台形型のAgインゴ
ットを入れ、電子ビーム出力10kW、40mV、イオ
ン化電流50mV、20A、バイアス電圧−200Vの
条件で30秒成膜し、Ag膜を0.5μm形成した。
【0038】荷重2N、半径6mm、約60000回転
のボールオンデイスク試験により、Ag膜が無くなる回
数を耐久摩擦回数として耐摩耗性を評価したところ、耐
久摩擦回数は250×102回、摩擦係数は0.45で
あった。実施例1と同様の密着力評価では、膜の隔離は
一切見られなかった。
のボールオンデイスク試験により、Ag膜が無くなる回
数を耐久摩擦回数として耐摩耗性を評価したところ、耐
久摩擦回数は250×102回、摩擦係数は0.45で
あった。実施例1と同様の密着力評価では、膜の隔離は
一切見られなかった。
【0039】従来例2 ・・・ 実施例2と同じ部材
に、電子ビーム式イオンプレーティング装置を用いて孔
を形成せずに実施例2と同厚みの第1層を形成し、実施
例2と同様にしてAg膜の第2層を形成した。実施例2
と同様に評価したところ、耐久摩擦回数は170×10
2回で、摩擦係数は0.5であった。また、実施例1と
同様の密着力評価では、膜の約30%が剥離した。
に、電子ビーム式イオンプレーティング装置を用いて孔
を形成せずに実施例2と同厚みの第1層を形成し、実施
例2と同様にしてAg膜の第2層を形成した。実施例2
と同様に評価したところ、耐久摩擦回数は170×10
2回で、摩擦係数は0.5であった。また、実施例1と
同様の密着力評価では、膜の約30%が剥離した。
【0040】実施例4 ・・・ 高速ポンプの軸受け及
び軸に、実施例1と同様にしてCrN膜を20μm形成
し、表面をSiCの粉が分散された研磨体で研磨した。
研磨前の表面粗さRaは0.20μm、研磨後は0.0
8μmであった。その上に実施例2と同様にしてMoS
2膜を1μm形成した。
び軸に、実施例1と同様にしてCrN膜を20μm形成
し、表面をSiCの粉が分散された研磨体で研磨した。
研磨前の表面粗さRaは0.20μm、研磨後は0.0
8μmであった。その上に実施例2と同様にしてMoS
2膜を1μm形成した。
【0041】これら軸受け及び軸をポンプに組み上げ、
加速試験として、常温水中で軸速度17m/sで回転さ
せた。その結果、24時間の加速試験後でも膜の損傷は
ほとんど観察されなかった。
加速試験として、常温水中で軸速度17m/sで回転さ
せた。その結果、24時間の加速試験後でも膜の損傷は
ほとんど観察されなかった。
【0042】比較例 ・・・ MoS2膜を形成しない
以外は実施例4と同様の軸受け及び軸をポンプに組み上
げ、実施例4と同様の試験をしたところ、試験後30分
で膜の摩耗が発生してガタが起き、性能が不十分だっ
た。
以外は実施例4と同様の軸受け及び軸をポンプに組み上
げ、実施例4と同様の試験をしたところ、試験後30分
で膜の摩耗が発生してガタが起き、性能が不十分だっ
た。
【0043】
【発明の効果】本発明により、安価な固体潤滑膜を用い
ても固体潤滑膜と部材との密着力が低下せず、長時間に
わたって低摩擦係数が得られ、なおかつ高い耐摩耗性が
保持できる固体潤滑膜付き部材を提供することができ
た。
ても固体潤滑膜と部材との密着力が低下せず、長時間に
わたって低摩擦係数が得られ、なおかつ高い耐摩耗性が
保持できる固体潤滑膜付き部材を提供することができ
た。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16C 33/10 F16C 33/10 D 33/12 33/12 Z 33/14 33/14 Z 33/24 33/24 Z
Claims (4)
- 【請求項1】 内径0.1〜3μmの微細な孔を多数有
する硬質膜の第1層と、固体潤滑膜の第2層が形成され
た固体潤滑膜付き部材。 - 【請求項2】 第2層を形成する前の第1層の表面粗さ
Rmaxが1μm以下である請求項1に記載の固体潤滑
膜付き部材。 - 【請求項3】 第1層の硬質膜が、カソードアークイオ
ンプレーティング法による窒化物膜、炭窒化物膜、また
は、炭化物膜である請求項1または請求項2に記載の固
体潤滑膜付き部材。 - 【請求項4】 第2層の固体潤滑膜が、イオンプレーテ
イング法、スパッタリング法、または、ショットピーニ
ング法で形成されたMoS2膜、WS2膜、NbS2膜、
雲母膜、Sb2O3膜、BN膜、WSe膜、MoSe
2膜、Au膜、または、Ag膜である請求項1〜請求項
3のいずれかに記載の固体潤滑膜付き部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35409098A JP2000178720A (ja) | 1998-12-14 | 1998-12-14 | 固体潤滑膜付き部材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35409098A JP2000178720A (ja) | 1998-12-14 | 1998-12-14 | 固体潤滑膜付き部材 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000178720A true JP2000178720A (ja) | 2000-06-27 |
Family
ID=18435229
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP35409098A Pending JP2000178720A (ja) | 1998-12-14 | 1998-12-14 | 固体潤滑膜付き部材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2000178720A (ja) |
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2002086182A1 (de) * | 2001-04-19 | 2002-10-31 | Deutsche Bahn Ag | Verfahren zur vermeidung von presssitzschäden an radsätzen, insbesondere an radsätzen von schienenfahrzeugen |
WO2003091474A1 (de) * | 2002-04-25 | 2003-11-06 | Unaxis Balzers Ag | Strukturiertes schichtsystem |
JP2004060742A (ja) * | 2002-07-29 | 2004-02-26 | Nidec Tosok Corp | ボールねじ |
US7687112B2 (en) | 2004-07-14 | 2010-03-30 | Kinetitec Corporation | Surface for reduced friction and wear and method of making the same |
CN102560354A (zh) * | 2010-12-28 | 2012-07-11 | 日立工具股份有限公司 | 耐蚀性优异的被覆物品的制造方法及被覆物品 |
JP2013076124A (ja) * | 2011-09-30 | 2013-04-25 | Hitachi Tool Engineering Ltd | 耐食性に優れた被覆物品の製造方法および被覆物品 |
JP2013082987A (ja) * | 2010-12-28 | 2013-05-09 | Hitachi Tool Engineering Ltd | 耐食性に優れた被覆物品の製造方法および被覆物品 |
WO2013145233A1 (ja) * | 2012-03-29 | 2013-10-03 | オーエスジー株式会社 | 切削工具用硬質被膜及び硬質被膜被覆切削工具 |
WO2013153640A1 (ja) * | 2012-04-11 | 2013-10-17 | オーエスジー株式会社 | 切削工具用硬質被膜及び硬質被膜被覆切削工具 |
-
1998
- 1998-12-14 JP JP35409098A patent/JP2000178720A/ja active Pending
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