JP2000176505A - スケール密着性に優れた熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

スケール密着性に優れた熱延鋼板の製造方法

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吉秀 石井
Nobuhito Shiotani
昇史 塩谷
Katsumi Nakajima
勝己 中島
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スケール(黒皮)付きの熱延鋼板ままで使用
される自動車部品、建材あるいはスケール付き熱延鋼板
のコイルを搬送し、酸洗工程を経て冷延素材等に用いら
れる、低コストで生産性が高く、しかも、スケール密着
性に優れた熱延鋼板を製造する。 【解決手段】 鋳片を粗圧延し、次いで、下記(1)
式、 400−300×logt≦V≦1140−890×l
ogt--- (1) 但し、上記(1)式において、 t:鋼板の仕上板厚(mm)、 V:仕上圧延ベース速度(mpm)(仕上圧延機の最終
スタンドに鋼板の先端部が噛み込むときの鋼板速度) で表される条件下で仕上圧延し、そして、巻き取る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、スケール密着性
に優れた熱延鋼板の製造方法、特に、スケール(黒皮)
付きの熱延鋼板ままで使用される自動車部品、建材ある
いはスケール付き熱延鋼板のコイルを搬送し、酸洗工程
を経て冷延素材等に用いられる、低コストで生産性が高
く、しかも、スケール密着性に優れた熱延鋼板の製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来からスケール付きの熱延鋼板は、自
動車部品や建材等に使用されている。従って、スケール
付きの熱延鋼板は、曲げ加工時のスケールの剥離し難
さ、押込み時の疵の発生し難さ、コイル搬送時のスケー
ルの剥離し難さ、そして、見栄えの良さ等の観点から、
スケールが均一で薄く密着性に優れていることが求めら
れる。
【0003】このようなスケール密着性に優れた熱延鋼
板の製造技術として、スケールを薄肉化する技術が下記
公報に開示されている。 (1)特開平4−228204号公報および特開平4−
266401号公報 上記公報に開示された技術は、仕上圧延機出側から巻取
機に至る間で、ローラーにより熱延鋼板をシールする
か、あるいは、不活性ガスや還元性ガス雰囲気下で冷却
することによって、スケールの生成を抑制し、これによ
りスケールを薄肉化する。以下、この方法を従来技術1
という。 (2)特開昭61−111701号公報 仕上圧延機入側の鋼板温度をAr3点以下に維持し、仕
上圧延機のスタンド間の冷却設備により冷却し、そし
て、仕上圧延機出側の鋼板温度を500℃以下に維持す
ることによって、スケールの生成を抑制し、これにより
スケールを薄肉化する。以下、この方法を従来技術2と
いう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来技術1および2は、以下のような問題点を有して
いた。
【0005】従来技術1は、莫大な設備投資が必要なこ
とやガスの使用に伴い、安全性の問題がより厳しく求め
られる。従来技術2は、鋼板の変形抵抗が高くなるため
に、通板性の阻害による生産性の低下を招き、しかも、
対象材の規格、品種および寸法が限定されてしまう。更
に、熱間圧延された鋼板自体も硬質化するため、後工程
の操業の効率が著しく低下する。
【0006】従って、この発明の目的は、上述の問題点
を解決し、低コストで生産性が高く、しかも、スケール
密着性に優れた熱延鋼板の製造方法を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
鋳片を粗圧延し、次いで、下記(1)式、 400−300×logt≦V≦1140−890×logt--- (1) 但し、上記(1)式において、 t:鋼板の仕上板厚(mm)、 V:仕上圧延ベース速度(mpm)(仕上圧延機の最終
スタンドに鋼板の先端部が噛み込むときの鋼板速度)で
表される条件下で仕上圧延し、そして、巻き取ることに
特徴を有するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】この発明のスケール密着性に優れ
た熱延鋼板の製造方法を更に詳細に説明する。
【0009】本願発明者等は、板厚の異なる鋼板面に生
成されたスケールの密着性に及ぼす圧延条件の影響につ
いて、詳細に検討した。この結果、図1に示すような2
本の曲線ととの間の領域で、スケール密着性に優れ
た熱延鋼板が得られることを見出した。スケール密着性
試験は、以下のようにして行った。
【0010】C:0.0020から0.80%、Si:
0.01から0.5%、P:0.01から0.10%、
S:0.001から0.015%、Al:0.01から
0.08%、N:0.0015から0.0035%、N
b:0から0.04、Ti:0から0.08%(何れ
も、質量%)、残部:鉄および不可避的不純物からなる
鋳片を用意し、この鋳片を粗圧延し、種々の仕上圧延板
厚:2から10mm、仕上圧延ベース速度(仕上圧延機
の最終スタンドに鋼板の先端部が噛み込むときの鋼板速
度):100から600mpmで熱間圧延を終了し、巻
き取ったコイルについて冷却後、板幅方向中央部相当の
2巻目部についてテープ剥離試験によって、スケール密
着性の評価を行った。
【0011】ここで、テープ剥離試験とは、鋼板の全幅
に粘着性テープを一定圧力で押し当てて、テープを剥が
した後、テープ面に付着したスケール量によってスケー
ル密着性を評価する方法である。
【0012】図1から明らかなように、図中の曲線
(V=400−300×logt)を境界として、仕上
圧延ベース速度を低下させすぎると、板厚の薄い鋼板で
は、鋼板温度の低下が著しく、巻取り後、冷却中に密着
性の高いマグネタイト(Fe3 4 )が十分に得られ
ず、一部ウスタイト(FeO)が残留してしまい密着性
が低下する。一方、板厚の厚い鋼板では、保有熱のため
に巻取り後、冷却中に十分にマグネタイトに変態する
が、一方で、スケール厚さが厚くなり、スケール密着性
が低下する。
【0013】また、図中の曲線(V=1140−89
0×logt)を境界として、仕上圧延ベース速度を増
大させすぎると、仕上圧延機出側温度および巻取り温度
が上昇し、特に、コイルエッジ近傍でスケールの厚さが
増加して、スケール密着性に劣る。
【0014】上記曲線およびにおいて、(t)は、
鋼板の仕上板厚(mm)を示し、(V)は、仕上圧延ベ
ース速度(mpm)を示す。上述した理由から、この発
明においては、スケール密着性に優れた熱延鋼板を製造
するために、鋼板の仕上板厚と仕上圧延ベース速度との
関係を、下記(1)式のように限定した。
【0015】 400−300×logt≦V≦1140−890×logt--- (1) なお、仕上圧延ベース速度(V)は、スケールの生成量
に最も影響を及ぼすランアウトテーブル上での平均通板
速度と比例しており、生産における制御の容易さから用
いた。
【0016】この発明により製造した鋼板は、冷延素材
としても使用することができる。この場合、冷延前に酸
洗工程を経ることになるが、この発明によれば、鋼板の
スケールの薄肉化が可能になることから、酸洗性の観点
からも好ましい。
【0017】この発明により鋼板を製造する際には、ス
ラブ加熱後、圧延する方法、連続鋳造後、短時間の加熱
処理を施すか、あるいは、この加熱工程を省略して、直
ちに圧延する方法の何れの方法を採用しても良い。しか
し、優れたスケール密着性を付与するためには、粗圧延
後、仕上圧延機直前において高圧水ジェットを用いて、
デスケーリングを行い、一次スケール(加熱により生成
されるスケール)を完全に鋼板面から除去するのが好ま
しい。なお、熱間圧延中においては、バーヒーターによ
り加熱しても良い。また、二次スケール(圧延中に生成
されるスケール)の生成を抑制するためには、仕上スタ
ンド間でデスケーリングを行うのが好ましい。
【0018】鋼板の仕上圧延機出側温度は、通板可能な
範囲内でできるだけ低く、且つ、鋼板の材質の均一性を
確保するためには、Ar3点以上の温度に設定すること
が好ましい。そのため、適正な仕上圧延機出側温度を確
保するために、仕上スタンド間における冷却を兼ねたデ
スケーリングは、仕上板厚および仕上圧延速度に応じ
て、水圧、水量を調整して行うのが好ましい。更に、熱
間圧延中において、不活性ガスあるいは還元性ガスを使
用しても、上述した特性を低下させる恐れはない。
【0019】次に、この発明を実施例により更に説明す
る。表1に示す化学成分組成を有する鋼を、連続鋳造し
て鋳片を調製した鋳片を粗圧延し、次いで、高圧水を用
いたデスケーリングを行った後、引き続き仕上圧延機に
より種々のベース速度で、種々の板厚になるまで圧延
し、コイルに巻き取った。次いで、このようにして得ら
れたコイルから試料A1からA4、B1からB4、C1
からC4、D1からD4およびE1からE4をそれぞれ
採取した。試料の採取位置は、スリッターラインあるい
はスキンパスラインにおいて、板幅方向中央部相当の2
巻目部(コイルボトム部より10mの位置)であった。
このようにして採取した試料を光学顕微鏡により観察し
てスケールの厚みを測定し、X線回折によりスケール組
成を調べ、そして、テープ剥離試験によりスケール密着
性について評価した。この結果を表2および図2に示
す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】表2から明らかなように、比較試料A1
は、仕上板厚と仕上圧延ベース速度との関係が曲線を
下回って外れているので、密着性に優れたマグネタイト
が十分に生成されず、一部ウスタイトが残留する結果、
スケール密着性が悪かった。また、比較試料A4は、仕
上板厚と仕上圧延ベース速度との関係が曲線を上回っ
て外れているので、保有熱のために、密着性に優れたマ
グネタイトが十分に生成されているが、スケール厚さが
厚くなって、スケール密着性が悪かった。
【0023】これに対して、本発明試料A2およびA3
は、何れも、仕上板厚と仕上圧延ベース速度との関係が
本発明の(1)式を満足しているので、即ち、曲線と
曲線との間に入っているので、密着性に優れたマグネ
タイトが十分に生成されており、スケール密着性に優れ
ていた。
【0024】比較試料B1およびB3は、何れも、仕上
板厚と仕上圧延ベース速度との関係が曲線を下回って
外れているので、密着性に優れたマグネタイトが十分に
生成されず、一部ウスタイトが残留する結果、スケール
密着性が悪かった。
【0025】これに対して、本発明試料B2およびB4
は、何れも、仕上板厚と仕上圧延ベース速度との関係が
本発明の(1)式を満足しているので、即ち、曲線と
曲線との間に入っているので、密着性に優れたマグネ
タイトが十分に生成されており、スケール密着性に優れ
ていた。
【0026】比較試料C4は、仕上板厚と仕上圧延ベー
ス速度との関係が曲線を上回って外れているので、保
有熱のために、密着性に優れたマグネタイトが十分に生
成されているが、スケール厚さが厚くなって、スケール
密着性が悪かった。
【0027】これに対して、本発明試料C1、C2およ
びC3は、何れも、仕上板厚と仕上圧延ベース速度との
関係が本発明の(1)式を満足しているので、即ち、曲
線と曲線との間に入っているので、密着性に優れた
マグネタイトが十分に生成されており、スケール密着性
に優れていた。
【0028】比較試料D1は、仕上板厚と仕上圧延ベー
ス速度との関係が曲線を下回って外れているので、密
着性に優れたマグネタイトが十分に生成されず、一部ウ
スタイトが残留する結果、スケール密着性が悪かった。
また、比較試料D4は、仕上板厚と仕上圧延ベース速度
との関係が曲線を上回って外れているので、保有熱の
ために、密着性に優れたマグネタイトが十分に生成され
ているが、スケール厚さが厚くなって、スケール密着性
が悪かった。
【0029】これに対して、本発明試料D2およびD3
は、何れも、仕上板厚と仕上圧延ベース速度との関係が
本発明の(1)式を満足しているので、即ち、曲線と
曲線との間に入っているので、密着性に優れたマグネ
タイトが十分に生成されており、スケール密着性に優れ
ていた。
【0030】比較試料E3は、仕上板厚と仕上圧延ベー
ス速度との関係が曲線を下回って外れているので、密
着性に優れたマグネタイトが十分に生成されず、一部ウ
スタイトが残留する結果、スケール密着性が悪かった。
【0031】これに対して、本発明試料E1、E2およ
びE4は、何れも、仕上板厚と仕上圧延ベース速度との
関係が本発明の(1)式を満足しているので、即ち、曲
線と曲線との間に入っているので、密着性に優れた
マグネタイトが十分に生成されており、スケール密着性
に優れていた。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、仕上圧延を、下式 400−300×logt≦V≦1140−890×l
ogt、但し、t:鋼板の仕上板厚(mm)、V:仕上
圧延ベース速度(mpm)(仕上圧延機の最終スタンド
に鋼板の先端部が噛み込むときの鋼板速度) を満足するように行うことによって、生成するスケール
厚さを薄肉化でき、このこの結果、スクール密着性に優
れるので、曲げ加工時のスケールの剥離、押込みによる
疵発生を防止することができ、かくして、表面性状に優
れた熱延鋼板の製造が可能となる。また、冷延用素材と
する場合には、酸洗性も向上するので、各板厚毎に仕上
圧延速度を適正化することによって、スケールの剥離、
押込みによる疵発生を防止することができるので、歩留
まりも向上し、スケール密着性に優れた熱延鋼板を低コ
ストで製造することが可能となるといった、有用な効果
がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】テープ剥離試験によるスケール密着性に及ぼす
仕上板厚と仕上圧延ベース速度の影響を示すグラフであ
る。
【図2】実施例の試験結果を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石井 吉秀 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 塩谷 昇史 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 中島 勝己 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4E002 AD02 AD04 CB03

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋳片を粗圧延し、次いで、下記(1)
    式、 400−300×logt≦V≦1140−890×logt--- (1) 但し、上記(1)式において、 t:鋼板の仕上板厚(mm)、 V:仕上圧延ベース速度(mpm)(仕上圧延機の最終
    スタンドに鋼板の先端部が噛み込むときの鋼板速度)で
    表される条件下で仕上圧延し、そして、巻き取ることを
    特徴とする、スケール密着性に優れた熱延鋼板の製造方
    法。
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